牧草として栽培され、チモシーと呼ばれる。世界に広く分布し、オーストラリア、南北アメリカなどに帰化している。
　多年草、緩いまたは密な茂み(tussocks)を形成する。 稈は直立または膝状(geniculately)に曲がって斜上し、高さ40～120㎝、5～6節があり、最も低い節は普通、膨れ、トウモロコシに似る。葉鞘は無毛、緩い。葉身は長さ10～50㎝×幅3～8㎜、無毛、表面と縁の両方がザラつき、先は尖鋭形。葉舌(ligule)は長さ2～5㎜、円形。円錐花序は狭円筒形、長さ4～15㎝×幅0.5～1㎝、灰緑色。枝は中軸につく。小穂は倒卵状長円形、長さ3～3.5㎜。花軸(rachilla)は伸展がない。苞頴(glume)は長円形、膜質、細かくザラつき、下部は縁に柔らかい毛があり、竜骨には目立つ櫛状縁毛(pectinate-ciliate)があり、先は切形で、丈夫な長さ0.5～1.5㎜のザラつく芒がある。護頴=外花穎(lemma)は長さ約2㎜、7脈があり、微軟毛があり、とくに脈にあり、先は鈍形。葯は長さ1.5～2㎜。穎果(caryopsis)は長さ約1㎜。花期および果期は6～8月。2n=28, 42。
品種)　'Adrienne'PBR , 'Anahita'PBR , 'Aturo'PBR , 'Aureum' , 'Claire' , 'Climax' , 'Comer'PBR , 'Crescendo'PBR , 'Diandra'PBR , 'Dorothy'PBR , 'Maestoso'PBR , 'Presto'PBR , 'Rubato'PBR

アワガエリ属

　 family　Poaceae － genus Phleum

　一年草または多年草、しばしば短い根茎がある。葉身は線形、平ら。花序は穂状花序状、円筒形の円錐花序、細長～卵形または頭状。枝は短く、ときに花序軸につき、小穂は密集し、ほぼ無柄。 小穂は強く側部が扁平、小花の1個は、苞頴(glume)の上の関節で離れる(disarticulating)。花軸(rachilla)は伸長が有または無。苞頴(glume)は等形、側面から見ると長円形または倒卵形、小花より長く、小花を包み、草質で3脈があり、強い竜骨があり、竜骨にはしばしば櫛状縁毛(pectinate-ciliate)があり、縁は重なるが、合着せず、先は切形～鋭形、丈夫な微突または短い堅い芒がある。護頴=外花穎(lemma)は広長円形または卵形、薄い膜質、背側が凸面状で、3～7脈があり、先は切形～ほぼ鋭形、芒は無くまたは微突形。内頴=内花頴(palea)は護頴よりわずかに短く、竜骨に沿って縁毛がある。鱗被(lodicule)は2個。雄しべは3本。穎果(caryopsis)は楕円形～卵形。
　世界に15種あり、北半球の温帯および寒冷地域に分布し、アメリカ南部に広がり、山岳地帯に沿ってチリに伸びる。

アワガエリ属の主な種と園芸品種

1 Phleum alpinum L.　ミヤマアワガエリ　深山粟還り
　　synonym　Phleum commutatum Gaudin
　日本(北海道、本州の中部以北)、中国、台湾、ロシア、モンゴル、アフガニスタン、ブータン、インド（シッキム）、カシミール、カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、タジキスタン、南西アジア、北ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ（アンデス）原産。中国名は高山梯牧草 gao shan ti mu cao。英名はalpine cat's-tail , alpine timothy , mountain timothy 。湿った高山の牧草地、茂みの周りの湿った土壌、川沿いに生える。
　多年草、短い根茎がある。 稈は緩く房状になり、基部で直立または傾伏し、高さ5～40(～60)cm、3～4節がある。 葉鞘は無毛、上部はわずかに膨らむ。 葉身は広線形、長さ2～13 cm×幅2～9 mm、上部の葉は下部の葉より短く、無毛、先は鋭形。葉舌は長さ2～3㎜、鈍形。円錐花序は広円筒形～卵形、長さ1～6㎝×幅0.6～1.2㎝、普通、帯紫色。枝は花序軸につく。小穂は長円形、長さ3～4 mm(芒を除く)。花軸は伸びない。苞頴(glume)は長円形、膜質、ザラつき、下部の縁に柔らかい毛があり、竜骨は目立つ櫛状縁毛(pectinate-ciliate)があり、先は切形、鋭く堅い先端があり(cuspidate)、丈夫な長さ1.5～3㎜の無毛または縁毛のある芒がある。護頴(lemma)は長さ約2㎜、5脈があり、脈に微軟毛があり、先は切形。葯は長さ1～1.5mm。穎果は長さ約1.5mm。花期および果期は6～10月。2n=14, 28。

2 Phleum paniculatum Huds.　アワガエリ　粟還り
　日本(本州、四国、九州)、中国、アフガニスタン、北西インド、カシミール、カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、ロシア、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は鬼蜡烛 gui la zhu。山の斜面、川沿い、畑の縁、道端に生える。
　1年草、房状になる。稈は直立または基部で膝状(geniculately)に曲がり、細く、高さ3～45㎝、3～5節がある。葉鞘は無毛、上部はわずかに膨らむ。葉身は柔らかく、長さ1.5～15㎝×幅2～6㎜、無毛、縁はザラつき、先は鋭形。葉舌は長さ2～4㎜、鈍形。円錐花序は狭円筒形、長さ1～10㎝×幅0.4～0.8㎝、黄緑色。 枝は花序軸から離れる。小穂は倒卵状くさび形、長さ2～3㎜。花軸は伸びる。苞頴(glume)は先が膨らみ、基部が狭くなり、脈の間が深い樋状になり、ザラつき、竜骨は無毛または短い櫛状になり、先は切形、鋭く堅い先端があり(cuspidate)、硬い長さ0.3～0.6㎜の微突がある。護頴(lemma)は長さ1.3～2㎜、5脈があり、まばらに伏した毛があり、先はほぼ鈍形。葯は長さ0.4～0.8㎜。穎果は長さ約1㎜。花期および果期は4～8月。2n=28。

3 Phleum phleoides (L.) H.Karst.　イヌアワガエリ　犬粟還り
　中国、カザフスタン、キルギスタン、ロシア、タジキスタン、ウズベキスタン、北西アフリカ、南西アジア（コーカサス）、ヨーロッパ原産。中国名は假梯牧草 jia ti mu cao。英名はBoehmer's cat's-tail , purple-stem cat's-tail。草が茂った山の斜面、低木林内、林縁に生える。
　多年草、密に房状になる。稈は直立するか、しばしば基部で膝状(geniculately)に曲がり、高さ15～75㎝、2～4節がある。葉鞘は平滑で緩い。 葉身は長さ2～20㎝×幅1～5㎜、上部の葉は下部のものより短く、上面と縁はザラつき、先は尖鋭形。葉鞘は長さ1～3㎜、鈍形。円錐花序は狭円筒形、先が徐々に先細になり、長さ2.5～10㎝×幅0.4～0.7㎝、灰緑色。枝は花序軸から離れる。小穂は長円形、長さ2～3㎜、花軸は伸びる。苞頴(glume)は長円形、膜質、竜骨はザラつき、先は鈍形、急に狭くなり、長さ0.3～0.7㎜のザラつき微突になる。護頴(lemma)は長さ1.5～2㎜、5脈があり、無毛または微軟毛があり、先は鈍形。葯は長さ1～1.5㎜。 穎果は長さ1.3～1.5㎜。花期および果期は6～9月。2n=14。

4 Phleum pratense L.　 オオアワガエリ　大粟粟還り
　中国、ロシア、モンゴル、西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ原産。中国名は梯牧草 ti mu cao。英名はmeadow cat's-tail , timothy , timothy grass。別名はチモシー。草原、林縁に生える。
　多年草、緩いまたは密な茂み(tussocks)を形成する。 稈は直立または膝状(geniculately)に曲がって斜上し、高さ40～120㎝、5～6節があり、最も低い節は普通、膨れ、トウモロコシに似る。葉鞘は無毛、緩い。葉身は長さ10～50㎝×幅3～8㎜、無毛、表面と縁の両方がザラつき、先は尖鋭形。葉舌(ligule)は長さ2～5㎜、円形。円錐花序は狭円筒形、長さ4～15㎝×幅0.5～1㎝、灰緑色。枝は中軸につく。小穂は倒卵状長円形、長さ3～3.5㎜。花軸(rachilla)は伸展がない。苞頴(glume)は長円形、膜質、細かくザラつき、下部は縁に柔らかい毛があり、竜骨には目立つ櫛状縁毛(pectinate-ciliate)があり、先は切形で、丈夫な長さ0.5～1.5㎜のザラつく芒がある。護頴=外花穎(lemma)は長さ約2㎜、7脈があり、微軟毛があり、とくに脈にあり、先は鈍形。葯は長さ1.5～2㎜。穎果(caryopsis)は長さ約1㎜。花期および果期は6～8月。2n=28, 42。
品種)　'Adrienne'PBR , 'Anahita'PBR , 'Aturo'PBR , 'Aureum' , 'Claire' , 'Climax' , 'Comer'PBR , 'Crescendo'PBR , 'Diandra'PBR , 'Dorothy'PBR , 'Maestoso'PBR , 'Presto'PBR , 'Rubato'PBR
4-1 Phleum pratense L. f. viviparum (Gray) Louis-Marie　コモチオオアワガエリ　
　小穂の胎生形、小花が葉化し、子持ちになるもの。

参考

1) Flora of China
　Phleum 2) Plants of the World Online| Kewscience
　Phleum 3) World Flora Online
　Phleum 4) World Checklist of Vascular Plants
　Phleum 5) 植物研究雑誌 39(1): 7–11(1964)
　館岡亜緒：ミヤマアワガエリについて 6) 植物研究雑誌 47巻 2号, p.43-43(1972-02)
　コモチオオアワガエリ(新称)について