秋に山道を通ると、細かい小穂を密につけたきれいな円錐花序の群生が斜面などでよく見かけられる。
　茎はやや硬く、基部から短い根茎を出し、根茎と種子により群生する。葉は幅0.5～1㎝の線形、途中でねじれることが多い。葉は普通、無毛だが、変異が多く、毛があるものもある。葉舌は長さ約5㎜。葉鞘は無毛。幅の狭い円錐花序に淡緑～淡紫色の小穂を多数上向きにつける。小穂は長さ4～5㎜の披針形、1小花からなり、先が尖る。苞頴は小穂とほぼ同長、第1苞頴の方がやや大きく、長さ5～6㎜、第2苞頴は長さ4～5㎜。小花の基部に環状に毛（基毛）があり、護頴の基部から出る芒（のぎ）がある。基毛の長さは小花の2/3より短い。芒は折れ曲がり、小穂より長くて先が突き出る。果実は長さ1.8～2㎜、乳白色～褐色、無光沢。小穂は果実が熟す頃まで緑色のままであり、熟すと苞頴に包まれたまま落ちる。果実が乳白色で柔らかいうちに落ちる小穂が多く、乾くと褐色になる。
　類似の高山地帯に生育するヒナノガリヤス Calamagrostis nana は芒が短くて小穂の外に出ない。
　ヤマアワ Calamagrostis epigeios は花序が乳白色を帯び、小花に芒が無く、小花の基部の毛が長い。

ノガリヤス属

　 family　Poaceae － genus Calamagrostis

　多年草。しばしば叢生し、普通、根茎がある。稈は高さ10～210 cm、不分枝または分枝し、多少、平滑、節は1～8個。葉鞘は開いており、平滑またはザラつき、葉耳はない。葉舌は膜質、普通、切形～鈍形、ときに鋭形、全縁または切り裂かれ、切り裂きがしばしば形状を覆い隠す。葉身は平ら～内巻き、平滑またはザラつき、まれに毛がある。花序は円錐花序、開期または狭まり、ときに穂状花序状になる。枝は多少、垂れ下がり、長さ1cm以上の枝もある。小穂は小梗があり、側部が弱く扁平、1(2)個の小花がつく。小軸は上部の小花の基部を超えて伸び、普通、毛があり、苞穎の上で関節離断する。両苞穎は、膜質、ほぼ同長、護穎と同長またはそれより長く、丸みがあるかまたは竜骨があり、背部は平滑またはザラつき、まれに、長くザラつき、曲がった突起があり、脈は不明瞭～明瞭、先は鋭傾～尖鋭形、まれに先端に芒があり漸尖する。第1苞穎は1(3)脈がある。第2苞穎は3脈がある。カルスは毛があり、毛は長さ0.2～6.5 mm、疎～密。護穎は3(5)脈があり、平滑またはザラつき、先は普通、4歯に向かって先細りになり、芒があり、芒は基部の近く～先端近くから生じ、真っすぐまたは曲がり、ときに繊細で、カルスの毛から不明瞭になり、ときに護穎の縁を越えて突き出る。内穎はよく発達し、護穎の長さとほとんど同じ～わずかに長く、薄く、2脈がある。葯は3個、ときに不稔。穎果は護穎よりも短く、熟すと隠され、長円形、普通、無毛。x=7。
　世界に約180種あり、世界中の温帯、亜熱帯、および熱帯の山地に分布する。

ノガリヤス属の主な種と園芸品種

1 Calamagrostis adpressiramea Ohwi　コバナノガリヤス　小花の野刈安

　　synonym　Calamagrostis arundinacea (L.) Roth var. adpressiramea (Ohwi) Ohwi

　　synonym　Calamagrostis arundinacea (L.) Roth subsp. adpressiramea (Ohwi) T.Koyama

　日本固有種。九州(大分県、熊本県)に分布する。山地の草原に生える。
　葉は線形。葉舌は長さ2～5mm。花序枝は多く、やや斜開する。小穂は多数つき、長さ4～5(6)㎜。護穎は5脈､側脈は縁に達する。

2 Calamagrostis angustifolia Kom.　ハクトウイワガリヤス　
　　synonym　Calamagrostis paishanensis Nakai
　朝鮮、モンゴル、ロシア原産。

3 Calamagrostis arundinacea (L.) Roth　ホダチノガリヤス　広義
　　synonym　Deyeuxia arundinacea (L.) Jansen

　　synonym　Deyeuxia arundinacea (Linn.) Beauv. var. arundinacea

　　synonym　Calamagrostis heterogluma (Nakai) Honda　 チョウセンノガリヤス　

　　synonym　Calamagrostis hymenoglossa Ohwi　 ホクセンノガリヤス

　日本、ニューギニア、ユ－ラシアに広く分布。中国名は野青茅。英名はKorean feather reed grass。
　多年草、叢生し、根茎は短い。稈は直立し、長さ60～150㎝、側枝は無い。葉舌は縁毛が無く、膜質、長さ2～4㎜、切形または鈍形。葉身は長さ8～50㎝×幅1.8～10㎜、表面はザラつき、上面は粗く、基部の近くを除いて無毛、先は漸尖形。花序は円錐花序。花序柄は上部が細かくザラつく。円錐花序は開き、披針形、連続または断続的、密集または緩く、長さ8～18㎝×幅1～4㎝。花序の枝はザラつく。小穂は単生。稔性の小穂は小梗がある。小穂は1個の稔性の小花からなり、不毛の小軸が伸長する。小穂は披針形、側部が扁平、長さ4～6㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。小花のカルスは毛があり、毛は護穎の長さの0.2～0.25倍。両苞穎は宿存し、似ていて、小花の先を超え、稔性の護穎よりも堅く、裂け目がある(gaping)。第1苞穎は披針形、長さ4～6㎜、第2苞穎の長さと同長、膜質、紫色、1竜骨、1脈があり、側脈はなく、表面は顕微鏡的に粗面(asperulous)、先は尖鋭形。第2苞穎は披針形、長さ4～6㎜、隣接する稔性の護穎の長さの1.5倍、膜質、紫色、1竜骨、3脈があり、表面は顕微鏡的に粗面、先は尖鋭形。稔性の護穎は長円形、長さ4～4.5㎜、膜質、竜骨はなく、5脈があり、先は2歯があり、切形で1芒がある。主要な護穎の芒は背側につき、護穎の背の上0.1～0.25から生じ、膝状に曲がり、全体の長さは4～9㎜、下部の柱は捻じれる。内穎は透明、2脈がある。小軸の伸長には直軟毛がある。鱗被は2個。葯は3個、長さ2.4～2.7㎜。柱頭は2個。穎果は果皮が付着性。へそは点状。
品種)　'Autumn Tints' , 'Gold Hue , 'Mona'
※(3) Deyeuxia arundinacea Phil.
　　synonym　Deschampsia eminens var. eminens　[Kewscience]
　南アメリカ(アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルー)原産。
3-1 Calamagrostis arundinacea (L.) Roth var. densa Honda ex Miyabe et Kudô 　ホダチノガリヤス
　別名はホソホノガリヤス。Calamagrostis arundinacea (L.) Rothの異名とされている。

4 Calamagrostis autumnalis Koidz.　キリシマノガリヤス　霧島野刈安
　　synonym　Deyeuxia autumnalis (Koidz.) Ohwi
　　synonym　Calamagrostis kirishimensis Honda
　日本固有種。本州、九州に分布。別名はムラサキノガリヤス。
　多年草、叢生し、緩く房状になり(clumped)、根茎は短い。稈は膝状に曲がり、斜上し、長さ20～70㎝、直径0.7～1.2㎜、3～5節がある。葉は主に根生葉。葉鞘は平滑、表面が無毛または直軟毛があり、口部に縁毛があり、葉耳が直立する。葉舌は縁毛がなく、膜質、長さ1～2㎜。葉身は長さ10～30㎝×幅3～10㎜、堅く、粉白色、葉脈が明瞭、表面が平滑。花序は円錐花序。円錐花序は開き、披針形、長さ5～15㎝×幅1～2㎝。一次の花序枝は2～4本つき、長さ2～3.5㎝、平滑～ザラつく。小穂は単生。稔性の小穂は小梗がある。小梗は糸状。小穂は1個の稔性の小花からなり、不毛の小軸が伸長する。小穂は披針形、側部が扁平、長さ3.5～5㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。小花のカルスは毛があり、毛は護穎の長さ0.5倍。両苞穎は宿存し、似ていて、小花の先を超え、稔性の護穎より堅い。第1苞穎は披針形、長さ3.5～5㎜、第2苞穎の長さと同長、膜質、1竜骨、1脈があり、一次脈はザラつき、側脈は無く、表面は顕微鏡的に粗面(asperulous)、先は尖鋭形。第2苞穎は披針形、長さ3.5～5㎜、隣接する稔性の護穎と同長、膜質、1竜骨があり、一次脈はザラつき、表面は顕微鏡的に粗面、先は尖鋭形。稔性の護穎は卵形、長さ3～4.5 mm、膜質、竜骨はなく、5脈があり、側脈は先近くまで伸び、先は微細不整歯があり、鈍形、1芒がある。主要な護穎の芒は背側につき、護穎の背の上0.5～0.66から生じ、真っ直ぐ、全体の長さは3～4㎜、柱(下部)は無い。鱗被は2個。葯は3個、長さ1.8～2㎜。柱頭は2個、穎果は果皮が付着性、長さ2～2.2㎜。へそは点状。花期は8～10月。
4-1 Calamagrostis autumnalis Koidz. subsp. insularis (Honda) Tateoka　シマノガリヤス
　　synonym　Calamagrostis insularis Honda
　芒は短く、その先は護穎のより下になる。両包穎はほぼ同長。小花のカルスの毛がキリシマノガリヤスに比べると長い。花期は6～7月。

5 Calamagrostis brachytricha Steud.　ノガリヤス　野刈安
　　synonym　Deyeuxia brachytricha (Steud.) Chang
　　synonym　Deyeuxia sylvatica Kunth var. hirsuta (Franch. et Sav.) Rendle
　　synonym　Deyeuxia sylvatica Kunth var. brachytricha (Steud.) Rendle
　　synonym　Deyeuxia pyramidalis auct. non (Host) Veldkamp
　　synonym　Deyeuxia matsudana (Honda) Keng
　　synonym　Deyeuxia formosana (Hayata) C.C.Hsu
　　synonym　Deyeuxia arundinacea auct. non P.Beauv.

　　synonym　Deyeuxia arundinacea P.Beauv. var. sciuroides (Franch. et Sav.) P.C.Kuo et S.L.Lu

　　synonym　Deyeuxia arundinacea P.Beauv. var. hirsuta (Hack.) P.C.Kuo et S.L.Lu

　　synonym　Deyeuxia arundinacea P.Beauv. var. brachytricha (Steud.) P.C.Kuo et S.L.Lu

　　synonym　Deyeuxia arundinacea P.Beauv. var. robusta (Franch. et Sav.) P.C.Kuo et S.L.Lu

　　synonym　Deyeuxia sylvatica Kunth var. sciuroides (Franch. et Sav.) Rendle
　　synonym　Calamagrostis chassanensis Probat.
　　synonym　Calamagrostis arundinacea auct. non (L.) Roth

　　synonym　Calamagrostis arundinacea (L.) Roth var. brachytricha (Steud.) Hack.

　　synonym　Calamagrostis arundinacea (L.) Roth subsp. brachytricha (Steud.) Tzvelev

　日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は類蘆野青茅　lei lu ye qing mao。英名はKorean feather reed grass。山野の丘陵地、草地に生える。
　多年草。高さ60～150㎝。茎はやや硬く、基部から短い根茎を出し、根茎と種子により群生する。葉は幅0.5～1㎝の線形、途中でねじれることが多い。葉は普通、無毛だが、変異が多く、毛があるものもある。葉舌は長さ約5㎜。葉鞘は無毛。幅の狭い円錐花序に淡緑～淡紫色の小穂を多数上向きにつける。小穂は長さ4～5㎜の披針形、1小花からなり、先が尖る。苞頴は小穂とほぼ同長。第1苞頴は第2苞頴よりやや大きく、長さ5～6㎜、縁が無毛。第2苞頴は長さ4～5㎜。小花の基部に環状に毛(カルスの毛）があり、護頴の基部から出る芒（のぎ）がある。カルスの毛(基毛)は護穎の長さの1/3～1/2(小花の長さの2/3より短い)。芒は折れ曲がり、小穂より長くて先が突き出る。果実は長さ1.8～2㎜、乳白色～褐色、無光沢。小穂は果実が熟す頃まで緑色のままであり、熟すと苞頴に包まれたまま落ちる。果実が乳白色で柔らかいうちに落ちる小穂が多く、乾くと褐色になる。花期は8～10月。
品種)　'Mona'
5-1 Calamagrostis brachytricha Steud. var. ciliata (Honda) Ibaragi et H.Ohashi　タイワンサイトウガヤ
　日本、韓国、中国、台湾に分布する。別名はタイワンサイドガヤ。
　第1苞穎の縁に長い毛がある。
5-2 Calamagrostis brachytricha Steud. var. inaequata (Hack. ex Honda) Yonek.　サイシュウノガリヤス
　　synonym　Calamagrostis arundinacea (L.) Roth var. inaequata Hack. ex Honda
　両苞穎は長さが異なり、第1苞穎は先が尾状尖鋭形。

6 Calamagrostis canescens (Weber) Roth
　　synonym　Calamagrostis calamagrostis (L.) H.Karst.
　ヨーロッパ、ウクライナ、ベラルーシ、ユーゴスラビア、北コーカサス、ロシア、カザフスタン、トルコ原産。英名はpurple small reed
品種)　'Variegata'

7 Calamagrostis deschampsioides Trin.　イトノガリヤス　糸野刈安
　ロシア、アラスカ、カナダ原産。英名はcircumpolar reedgrass , calamagrostide fausse-deschampsie。

8 Calamagrostis epigejos (L.) Roth　ヤマアワ　山粟
　　synonym　Deyeuxia epigeios (L.) Mabb.
　　synonym　Calamagrostis extremiorientalis (Tzvelev) Probat.

　　synonym　Calamagrostis epigeios (L.) Roth var. extremiorientalis (Tzvelev) Kitag.

　　synonym　Calamagrostis epigeios (L.) Roth var. densiflora Griseb.
　　synonym　Calamagrostis epigeios (L.) Roth subsp. extremiorientalis Tzvelev
　日本全土、中国、ロシア、アジア西南部、ヨーロッパ中国名は拂子茅 fu zi mao。英名はchee reedgrass , feather reed grass。河原、海岸、山地の草地に生える。
　多年草。高さ45～150㎝。海岸近くに多く、開花の初期の頃は淡黄色、繊細で、次第に褐色を帯び、棒状になる。根茎は長く、横に這う。茎は直径約5㎜、平滑。葉は無毛、長さ30～60㎝、葉裏は白色を帯びる。葉舌は長さ4～6㎜、厚い膜質。花序は直立し、淡黄緑色の小穂を密につけ、はじめは円柱状に近いが、次第に穂が開いて、長さ20～30㎝の細い円錐花序となる。ときに、小穂の先端部が茶褐色～紫色を帯び、花序が開く前に、花序の先が汚れて見える。小穂は長さ6～7㎜の線状披針形、1小花からなる。包頴はやや不同長、第1苞頴の方がやや長いことが多い。小花は苞頴より著しく短く、小花の基部（基盤）には長白毛があり、護頴よりかなり長い。長白毛は苞頴に隠れるようにつく。護頴は膜質。葯は黄色。2n=28。花期は7～9月。
品種)　'Hortorum'

9 Calamagrostis fauriei Hack.　カニツリノガリヤス　蟹釣野刈安
　　synonym　Deyeuxia fauriei (Hack.) Ohwi
　日本固有種。本州(中部以北に多く、近畿以西にまれ)。日本海沿岸の山地の向陽地に生える。
　多年草。叢生し、房は緩い。明瞭な低出葉がある。根茎は短い。稈は膝状に曲がり、斜上し、長さ20～60㎝×直径0.8～1.7㎜、2～3節がある。葉は主に根生葉。葉鞘は平滑、表面は無毛。葉舌は縁毛が無く、膜質、長さ2～4㎜。葉身は長さ10～20㎝×幅2～4㎜、白粉で覆われ、表面はザラつき、上面は粗い。花序は円錐花序。花序は開き、披針形または卵形、長さ5～10㎝。一次の花序枝は広がり、ほとんどの節で輪生する。小穂は単生。稔性の小穂は小梗がある。小梗は糸状。小穂は1(～2)個の稔性の小花からなり、先端の小花はなくなる。小穂は披針形、側部が扁平、長さ5～7㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。小花のカルスには毛があり、毛は護穎の長さ0.25～0.33倍。両苞穎は宿存し、似ていて、小花の先を超え、稔性の護穎より堅く、光沢があり、先は反曲する。第1苞穎は披針形、長さ5～7㎜、第2苞穎の長さと同長、膜質、1竜骨、1脈があり、一次脈はザラつき、側脈はなく、先は尖鋭形。第2苞穎は披針形、長さ5～7㎜、隣接する稔性の護穎の長さの1.1倍、膜質、1竜骨があり、一次脈はザラつき、先は尖鋭形。稔性の護穎は卵形、長さ4.5～6.5㎜、膜質、竜骨はなく、5脈があり、側脈は突き出し、表面は点状で、先は4歯があり、芒があり、5芒となる。主要な護穎の芒は背側につき、護穎の背の上0.75から生じ、膝状に曲がり、全体の長さは15～20㎜、柱(基部)は捻じれる。側部の護穎の芒は裂片の先端につき、長さ1～4㎜。先の不稔の小花は1個、未発達。先端の不稔の護穎には1芒があり、芒は長さ5～7㎜。鱗被は2個。葯は3個、長さ2.2～2.5mm。柱頭は2個。穎果は果皮が付着性。へそは点状。花期は5～6月。

10 Deyeuxia gigas (Takeda) Ohwi　オニノガリヤス　鬼野刈安
　　synonym　Deyeuxia gigas (Takeda) Ohwi var. aspera (Honda) Ohwi
　　synonym　Calamagrostis gigas Takeda var. aspera (Honda) Ohwi
　　synonym　Calamagrostis gigas Takeda
　日本固有種。北海道、本州（兵庫県以北の日本海側）に分布する。別名はエゾノガリヤス。山地に生える。
　多年草。根茎は短い。稈は長さ80～200㎝、 5～7節があり、節間は平滑または細かくザラつく。葉鞘は平滑または細かくザラつき、毛がある。葉舌は縁毛がなく、膜質、長さ1～3㎜、外側に毛がある。葉身は長さ20～35㎝×幅4～12㎜、堅く、表面は平滑またはザラつき、両面が粗い。花序は円錐花序。花序柄は上部で前向きにザラつく。円錐花序は開き、披針形または卵形、長さ12～30㎝×幅7～15㎝。花序の枝はざらつく。小穂は単生。稔性の小穂は小梗がある。小梗は糸状。小穂は1個の稔性の小花からなり、不毛の小軸が伸長する。小穂は披針形、側部が扁平、長さ4～6㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。小花のカルスは毛があり、毛は護穎の長さの0.5～0.75倍。両苞穎は宿存し、似ていおり、小花の先を超え、稔性の護穎より堅く、光沢がある。第1苞穎は披針形、長さ4～6㎜、第2苞穎の長さと同長、膜質、1竜骨があり、1脈があり、一次脈はザラつき、側脈は無く、先は尖鋭形。第2苞穎は披針形、長さ4～6㎜、隣接する稔性の護穎の長さの1.1倍、膜質、1竜骨があり、一次脈はザラつき、先は尖鋭形。稔性の護穎は卵形、長さ3.5～5.5㎜、膜質、竜骨はなく、3～5脈があり、側脈は先端近くに伸び、先は4歯があり、1芒がある。主要な護穎の芒は背側につき、護穎の背の上0.3～0.5から生じ、真っすぐまたは膝状に曲がり、全体の長さは5～6㎜、基部の柱は無く、または真っすぐまたはわずかに捻じれた柱がある。鱗被は2個。葯は3個、長さ2㎜。柱頭は2個。穎果は果皮が付着性、長円形、長さ2㎜。へそは点状。花期は7月。
10-1 Calamagrostis gigas Takeda f. alpicola (Ohwi) Koji Ito　オクエゾオニノガリヤス　奥蝦夷鬼野刈安
　地理分布が北方に偏り、葉鞘が無毛である。

11 Deyeuxia hakonensis (Franch. et Sav.) Keng　ヒメノガリヤス　姫野刈安
　　synonym　Calamagrostis hakonensis Franch. et Sav.
北海道、本州、四国、九州、中国、ロシア原産。中国名は中国名は箱根野青茅 xiang gen ye qing mao。山地の渓谷、斜面に生える。
　多年草。高さ25～75㎝。根茎は短く、茎は直立し、細い。葉は途中でねじれ、表裏反転することが多い。葉鞘口部の背に毛叢がある。長さ5～8㎝の円錐花序に各節2本程度の枝を出し、小穂をまばらにつける。小穂は淡黄緑色、ときに紫色を帯び長さ3～5㎜で、1小花からなり、柄に小刺がある。苞頴は小花よりやや長く、第1苞頴は1脈。第2苞頴は3脈、両苞頴はほぼ同長。小花の基毛は小花より短い。芒（のぎ）は護頴の基部近くから出て、護頴と同長以下、小穂から突き出ない。花期は7～10月。

12 Calamagrostis korotkyi Litv.　キタノガリヤス　北野刈安

　　synonym　Deyeuxia korotkyi (Litv.) S.M.Phillips et Wen L.Chen　[Flora of China]

　　synonym　Deyeuxia turczaninowii (Litv.) Y.L.Chang ex S.L.Lu
　　synonym　Calamagrostis turczaninowii Litv.
　　synonym　Calamagrostis sugawarae Ohwi

　　synonym　Calamagrostis korotkyi Litv. subsp. turczaninowii (Litv.) Tzvelev

　　synonym　Calamagrostis arundinacea (L.) Roth subsp. sugawarae (Ohwi) Tzvelev

　中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は兴安野青茅 xing an ye qing mao。

13 Calamagrostis lapponica (Wahlenb.) Hartm.　コガリヤス　小刈安
　　synonym　Deyeuxia confinis (Willd.) Kunth
　　synonym　Deyeuxia lapponica (Wahlenb.) Kunth
　中国、モンゴル、ロシア、ヨーロッパ(フィンランド、ノルウエー、スウェーデン)、北アメリカ(アラスカ、カナダ、USA,グリーンランド)原産。中国名は欧野青茅 ou ye qing mao。英名はLapland reedgrass , Calamagrostide de lapponie。草が茂った斜面、林内、川岸の低木の間などに生える。
　多年草、緩く房状になり、短い根茎がある。稈は基部で膝状に曲がり、直立し、高さ60～130㎝、直径2～3㎜、平滑、3節がある。葉鞘は平滑。葉身は平らまたは内巻き、長さ10～30㎝×幅2～6㎜、上面は緩く毛があり、下面はザラつく。葉舌は長さ2～4(～6)㎜、切り裂かれる。円錐花序は緩く狭まり、長さ(5～)10～25㎝×幅2～3(～8)㎝、枝は直立または斜上し、長さ1～3(～4)㎝、ザラつき、下部の1/3は裸出する。小穂は長さ4～6㎜、紫褐色または黄緑色。両苞穎は卵状披針形、ほぼ等しく、長さ4～5㎜。第1苞穎は1脈があり、第2苞穎は3脈があり、背の上部と脈がザラつき、先は尖鋭形。カルスの毛は護穎の長さの3/4～4/5。護穎は長さ3～4(～5)㎜、先は歯状。芒は護穎の下部1/3から生じ、芒は長さ約3㎜、弱く膝状に曲がり、わずかに捻じれる。内穎は護穎の長さの2/3。小軸は長さ1～1.5㎜、毛を含めて長さ3～4㎜。葯は長さ約2㎜。花期は7～8月。

14 Calamagrostis longiseta Hack.　ヒゲノガリヤス　髭野刈安
　　synonym　Deyeuxia longiseta (Hack.) Ohwi
　日本固有種。本州（中部以北に多く、近畿以西にまれ）に分布する。山地の向陽地に生える。
　多年草、叢生、基部の鞘(butt sheaths)は宿存し、稈の基部の特性になり、繊維状の死んだ鞘を持つ。稈は直立するか、または膝状に曲がり斜上し、長さ20～80㎝、直径1.2～1.5㎜、2～3節がある。葉は主に根生葉。葉鞘は平滑、表面が無毛。葉舌は縁毛がなく、膜質、長さ1～3㎜。葉身は内巻き、長さ15～30cm×幅2～6㎜、表面に直軟毛があり、まばらに毛があり、上面に毛がある。花序は円錐花序。円錐花序は開き、卵形、長さ8～15㎝×幅2.5～4㎝。一次の花序枝は4～8本つき、長さ1～3cm。円錐花序の枝はザラつく。小穂は単生。稔性の小穂は小梗がある。小梗は糸状。小穂は1個の稔性の小花からなり、不毛の小軸の伸長がある。小穂は披針形、側部が扁平、長さ4～5㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。小花のカルスは毛があり、毛は護穎の長さの0.66～0.75倍。苞穎は宿存し、、両苞穎が似ており、小花の先を超え、稔性の護穎より堅く、光沢がある。第1苞穎は披針形、長さ4～5㎜、第2苞穎の長さと同長、膜質、縁ははるかに薄く、1竜骨、1脈があり、一次脈はザラつき、側脈は無く、先は尖鋭形。第2苞穎は披針形、長さ4～5㎜、隣接する稔性の護穎の長さの1.1倍、膜質、縁が透明、1竜骨があり、一次脈はザラつき、先は尖鋭形。稔性の護穎は卵形、長さ3.5～4.5㎜、膜質、竜骨はなく、5脈があり、側脈は先近くまで伸び、先は4歯があり、1芒がある。主要な護穎の芒は背側につき、護穎の背の上0.5～0.6に生じ、膝状に曲がり、全体の長さは7～10㎜、真っすぐまたは柱がわずかに捻じれる。内穎は護穎の長さの0.75倍。鱗被は2個。葯は3個、長さ2㎜。柱頭は2個。穎果は果皮が付着性。へそは点状。花期は7～8月。

15 Calamagrostis macrolepis Litv.　オオヤマアワ　大山粟
　　synonym　Calamagrostis gigantea Roshev.
　中国、モンゴル、ロシア、タジキスタン、南西アジア（コーカサス）原産。中国名は大拂子茅 da fu zi mao。山地の草が茂った斜面、川の近くの砂地、荒地に生える。
　多年草、密に房状になり、根茎が広がる。 稈は直立し、高さ90～120㎝、直径3～4㎜、4～5節あり、円錐花序の下がザラつく。葉鞘は平滑。葉身は平らまたは縁が内巻きし、灰緑色、長さ15～40㎝×幅5～10㎜、ザラつく。葉舌は長さ5～12㎜、先がボロボロ。円錐花序はかなり密で、分岐し、長さ15～25㎝×幅3～4.5㎝。枝は直立し、長さ1～3㎝、ザラつく。小穂は長さ7～11㎜、帯緑色、帯紫色、または黄緑色。苞穎は披針上錐形、不等長。第1苞穎は長さ7～11㎜、第2苞穎は長さが1～1.5㎜短く、竜骨はザラつく。カルスの毛は護穎の長さの1.5倍。護穎は長さ3～5㎜、3脈があり、平滑またはザラつき、先はわずかに2裂する。芒は護穎の背の真ん中近くに生じ、長さ3～4㎜、真っすぐまたはわずかに曲がる。内穎は護穎の長さの2/3の長さ。小軸の伸長は普通、ない。雄しべは3個、葯は長さ2.5～3㎜。 花期および果期は7～9月。

16 Calamagrostis masamunei Honda　ヤクシマノガリヤス　屋久島野刈安
　　synonym　Deyeuxia masamunei (Honda) Ohwi

　　synonym　Calamagrostis niitakayamensis Honda subsp. masamunei (Honda) T.Koyama

　　synonym　Calamagrostis longiseta Hack. var. masamunei (Honda) T.Koyama
　日本固有種。屋久島の山地の高所に生える。
　稈は基部の太さ1～2㎜。茎葉は少なく、1～4枚つく。葉鞘は節間よりも長い。花序は散開する。小穂は長さ4～5㎜、小軸の突起は短く、小穂内にとどまる。 小花のカルスの基毛は護穎より短い。護穎は5脈あり、先は側脈が突き出し、5歯になる。芒は護穎の1/5～1/3から出る。護穎の芒は長く、小穂の外に突き出し、ときに捻じれる。

17 Calamagrostis matsumurae Maxim.　ムツノガリヤス　陸奥野刈安
　　synonym　Deyeuxia matsumurae (Maxim.) Ohwi
　日本固有種。本州北部の高山または山地に生える。
　多年草。低出葉(cataphylls)は明瞭。根茎は短い。稈は長さ50～120㎝、直径1.8～2㎜。葉は茎葉。葉鞘は固くつき、平滑、表面は無毛。葉舌は縁毛がなく、膜質、長さ2～6㎜。葉身は長さ15～30㎝×幅3～8㎜、表面は細かくザラつき、上面は粗い。花序は円錐花序。円錐花序は開き、披針形、密集し、長さ7～15㎝×幅2～3㎝。一次の花序枝は1～6本つき、長さ1～4㎝、小穂はほぼ基部につく。円錐花序の枝はザラつく。小穂は単生。稔性の小穂は小梗がある。小梗は糸状。小穂は1個の稔性の小花からなり、不毛の小軸の伸長(突起)がある。小穂は披針形、側部が扁平、長さ3～5㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。小花のカルスは毛があり、毛は護穎の長さの0.33～0.5倍。両苞穎は宿存し、似ており、小花の先を超え、稔性の護穎より堅い。第1苞穎は披針形、長さ3～5㎜、第2苞穎の長さと同長、紙質、1竜骨、1脈があり、一次脈はザラつき、側脈は無く、先は尖鋭形。第2苞穎は披針形、長さ3～5mm、隣接する稔性の護穎の長さの1.2倍、紙質、1竜骨があり、一次脈はザラつき、先は尖鋭形。稔性の護穎は卵形、長さ2.5～4㎜、膜質、竜骨はなく、3脈があり、側脈は先の近くまで伸び、表面はザラつき、先は全縁、鋭形、芒が無い。鱗被は2個。葯は3個、長さ2㎜。柱頭は2個。穎果は果皮が付着性。へそは点状。花期は7～9月。

18 Calamagrostis nana Takeda　ヒナガリヤス　雛刈安
　日本固有種。　本州の中部以北に分布。
18-1 Calamagrostis nana Takeda subsp. nana　ヒナガリヤス　狭義
　　synonym　Calamagrostis deschampsioides auct. non Trin.
　多年草。葉は稈の基部に集まる。葉身上面の脈は細く、あまり隆起しない。花序の枝や小穂の柄は平滑。包穎は平滑。小花の基毛は護穎より短い。護穎は5脈があり、芒はないか短く、小穂の外に出ない。花期は8～9月。
18-2 Calamagrostis nana Takeda subsp. ohminensis Tateoka　 オオミネヒナノガリヤス　
　花序の枝や小穂の柄はザラつく。芒は長く、長さ3～5mm、先端は護穎より高くなる。
18-3 Calamagrostis nana Takeda subsp. hayachinensis (Ohwi) Tateoka　 ザラツキヒナガリヤス　
　　synonym　Calamagrostis deschampsioides Trin. var. hayachinensis Ohwi
　本州(青森県・岩手県・群馬県)に分布する。高山の岩礫地に生える。
　高さ20～40cm。根茎は長く伸び、節ごとに発根し、稈は房状になる。茎の基部の低出葉はやや少なく、分解した繊維に覆われる。円錐花序は直立し、花序の枝や小穂の柄はザラつく。両苞穎は等しく、やや光沢がある。護穎は苞穎と同長で、芒は短く、長さ1.5～3.5mmで，先端は護穎より低い。花期は7～8月。

19 Calamagrostis onibitoana Tateoka　 ウンゼンノガリヤス　雲仙野刈安
　日本固有種。別名はオニビトノガリヤス 、キジンノガリヤス。岩上、崖地、樹幹に着生して群生する。
　葉身は線形～披針形、幅3～6㎜。円錐花序に小穂は20個ほどつく。両包穎は長さが異なる。小花の基毛は護穎より短い。護穎に5脈があり、先は浅く2裂する。護穎の芒は長く、小穂の外に突き出し、ときに捻じれる。

20 Calamagrostis pseudophragmites (Haller f.) Koeler　ホッスガヤ　 払子茅
　日本(北海道、本州の近畿地方以東、九州)、韓国、中国、モンゴル、ロシア、ブータン、インド（ダージリン）、カザフスタン、パキスタン、トルクメニスタン、キルギスタン、タジクスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は假苇拂子茅 jia wei fu zi mao。川沿いの湿った斜面の草地に生える。
　多年草、房状になり、根茎が広がる。稈は直立し、高さ40～150㎝、直径1.5～4㎜、2～6節があり、円錐花序の下がザラつく。葉鞘は平滑またはザラつく。葉身は平らまたは弱く内巻きし、長さ10～30㎝×幅2～5(～7)㎜、上面および縁はザラつき、下面は平滑。葉舌は長さ4～10㎜、鈍形または切り裂かれる。円錐花序は長円状披針形、やや緩く、長さ10～30㎝×幅2～5㎝、一次の枝は明瞭、うなずき、枝は密に輪生し、ザラつく。小穂は長さ5～9㎜、黄緑色または紫色。苞穎は線状披針形、不等長、第2苞穎は第1苞穎の長さの2/3～3/4、竜骨はザラつき、先は尖鋭状錐形。カルスの毛は護穎の長さの2～3倍の長さがある。護穎は苞穎の長さの約1/2で、長さ3～4㎜、3脈があり、先は全縁または2歯がある。芒は護穎の先端のすぐ下に生じ、長さ1～3㎜、護穎からほとんど突き出ず、真っすぐ。内穎は護穎の長さの1/2～2/3。雄しべは3個、葯は長さ1～2㎜。小軸は伸びない。花期および果期は7～9月。

21 Calamagrostis purpurea (Trin.) Trin.
　　synonym　Deyeuxia angustifolia (Kom.) Y. L. Chang
　日本、韓国、中国、モンゴル、ロシア、 ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は大叶章 da ye zhang。湿った牧草地、草が茂った斜面、森林地帯に生える。
　多年草、房状になり(tussocky)、根茎があり、根茎は短または長。稈は直立し、細くて丈夫で、高さ1.5m以下、直径1～4㎜、普通、枝分かれし、(4～)6～8節がある。葉鞘は平滑、無毛。葉身は線形、平ら、長さ10～30㎝×幅4～20(～40)㎜、ザラつく。葉舌は長円状楕円形、長さ3～10㎜、鈍形または切り裂かれる。円錐花序は緩く、狭まり、外形が狭楕円形、長さ5～20㎝×幅2.5～8㎝。枝は細く、斜上または広がり、長さ2～8㎝、ザラつき、中間より下が裸出する。小穂は長さ3.5～5㎜、黄緑色、帯紫色、または黄褐色。両苞穎は披針形、ほぼ同長、第1苞穎は1脈、第2苞穎は3脈があり、ザラつき、中脈に沿って繊毛があり、先は鋭形または尖鋭形。カルスの毛は護穎の長さと同じかそれよりわずかに長い。護穎は長さ3～4㎜、膜質、先は2小歯がある。芒は護穎の中央付近または中央より上に生じ、長さ1～4㎜、細く、真っすぐ。内穎は護穎の長さの1/2～2/3。小軸は長さ0.5～1㎜、毛を含めると長さ2～4㎜。葯は長さ2～2.5㎜。花期は7～9月。
21-1 Calamagrostis purpurea (Trin.) Trin. subsp. amurensis (Probat.) H.Sato et Hideki Takah.　 アムールイワノガリヤス　
　　synonym　Calamagrostis amurensis Probat.
　北海道に多いイワノガリヤスとは葉鞘に密な毛があることおよび苞穎の竜骨上の突起が長く毛状になる点で異なる。
21-1-1 Calamagrostis purpurea (Trin.) Trin. subsp. amurensis (Probat.) H.Sato et Hideki Takah. f. akkeshiensis H.Sato et Hideki Takah.　 アッケシイワノガリヤス
　小穂と花柄の接続部や花序の軸と枝との接続部にある小刺針が長く毛状になる点でアムールイワノガリヤスと明らかに異なる。
21-2 Calamagrostis purpurea (Trin.) Trin. subsp. langsdorfii (Link) Tzvelev　イワノガリヤス　岩野刈安

　　synonym　Calamagrostis purpurea (Trin.) Trin. subsp. barbata (V.Vassil.) Tzvelev

　　synonym　Calamagrostis langsdorfii (Link) Trin. var. punctulata Ohwi
　　synonym　Calamagrostis langsdorfii (Link) Trin.

　　synonym　Calamagrostis canadensis (Michx.) P.Beauv. var. langsdorfii (Link) Inman

　　synonym　Calamagrostis canadensis (Michx.) P.Beauv. subsp. langsdorfii (Link) Hultén

　KewscienceなどではCalamagrostis purpurea (Trin.) Trin.の異名としている。
　北海道、本州、四国に分布。英名は Langsdorf's reedgrass。別名はネムロガヤ。湿地や草地に生える。
多年草。高さ80～120㎝。根茎は横に這い群生する。葉は長さ10～25㎝×幅3～8㎜、線形。灰緑色、先が尖鋭形、縁はザラつく。茎は普通、単生。円錐花序は長さ10～25㎝、枝は半輪生状につき、小穂をやや密につける。小穂は1個の小花からなる。小花の基部のカルスに小花と同長の白色の毛がある。小穂は紫褐色を帯び、花序の先は垂れ下がる。苞穎は微細な突起毛が密生する。護穎の芒は苞穎の外に突き出ない。花期は7～9月。

22 Deyeuxia pyramidalis (Host) Veldkamp　マンシュウノガリヤス　満州野刈安
　　synonym　Deyeuxia arundinacea auct. non P.Beauv.
　　synonym　Deyeuxia sylvatica Kunth
　　synonym　Calamagrostis distantiflora Lucznik
　　synonym　Calamagrostis arundinacea (L.) Roth
　日本、韓国、中国、台湾、カシミール、パキスタン、ロシア、ヨーロッパ原産。中国名は野青茅 ye qing mao。草が茂った斜面、開けた林内に生える。
　多年草、房状、ときに短い根茎がある。稈は直立し、細く、丈夫で、高さ(40～)100～150㎝、直径2.5～5㎜、2～3節がある。葉鞘は無毛～密に毛があり、または鞘～襟に直軟毛がある。葉身は平らまたは内巻きし、長さ5～60㎝×幅2～12㎜、平滑、ザラつきまたは毛がある。葉舌は長さ4～13㎜、鈍形または切り裂かれる。円錐花序は狭まる～わずかに開き、外形が披針状卵形、長さ6～35㎝×幅1～10㎝、枝は輪生し、斜上し、直立または圧着し、長さ1～2㎝。小梗はザラつく。小穂は長さ3～5(～6.5)㎜、黄緑色または紫緑色。苞穎は披針形、ほぼ同長または第1苞穎が第2苞穎よりわずかに長く、1～3脈があり、ザラつき、先は鋭形。カルスの毛は護穎の長さの1/5～2/5。護穎は長さ3.8～6.5㎜、苞穎の長さにほぼ等しく、ザラつき、先には微細不整歯があり、芒は護穎の下部約1/5から生じ、長さ7～12㎜、膝状に曲がり、柱(下部)が捻じれる。内穎は護穎の長さと同長かそれよりわずかに短い。小軸は長さ(0.5～)1.5～2㎜、毛を含めると長さ2.5～4㎜。葯は長さ(1.3～)2～3㎜。花期および果期は6～10月。

23 Deyeuxia sachalinensis (F.Schmidt) Rendle　タカネノガリヤス　高嶺野刈安
　　synonym　Calamagrostis sachalinensis F.Schmidt
　日本(北海道、本州の北部～中部、四国の石鎚山系)、千島列島、サハリン、カムチャツカ、ハバロフスク原産。別名はオノエガリヤス。高山の荒原や草原に生える。
　多年草、叢生し、低出葉が明瞭にある。根茎は短い。稈は直立し、長さ30～60㎝×直径0.8～1.2㎜、4～5節がある。稈は節間が前向きにザラつく。葉は茎葉。葉鞘はしっかりつき、平滑、表面は無毛。葉舌は縁毛がなく、膜質、長さ1～1.5mm。葉身は長さ10～30cm×幅3～6㎜、表面は平滑。花序は円錐花序。花序柄は上部が細かくザラつく。円錐花序は開き、披針形、長さ5～10㎝×幅1.5～2.5㎝。一次の花序枝は2～6本つき、長さ1～3.5㎝、ザラつく。小穂は単生。稔性の小穂は小梗があり、小梗は糸状。小穂は1個の稔性の小花からなり、不毛の小軸の伸長がある。小穂は披針形、側部が扁平、長さ3.5～5.5㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。小花のカルスには毛(基毛)があり、毛は護穎の長さの長さ0.66～0.75。両苞穎は宿存し、似ていて、小花の先を超え、稔性の護穎よりも堅く、先は反曲し、または、裂け目がある(gaping)。第1苞穎は披針形、長さ3～5㎜、第2苞穎の長さの0.75倍、膜質、1竜骨、1脈があり、一次脈はザラつき、側脈はなく、先は尖鋭形。第2苞穎は披針形、長さ3.5～5.5㎜、隣接する稔性の護穎の長さの1.4～1.8倍、膜質、1竜骨、3脈があり、一次脈はザラつき、先は尖鋭形。稔性の護穎は卵形、長さ2.5～3㎜、膜質、竜骨はなく、3～5脈があり、側脈は先近くまで伸び、先は全縁、鈍形、1芒がある。主要な護穎の芒は背側につき、護穎の背の上0.25～0.5から生じ、真っ直ぐで、全体の長さは2～3㎜、柱(基部)は無い。鱗被は2個。葯は3個。柱頭は2個。穎果は果皮が付着性。へそは点状。散布体(disseminule)は1個の小花からなる。花期は8～9月。

24 Calamagrostis sesquiflora (Trin.) Tzvelev　 ミヤマノガリヤス　深山野刈安

　　synonym　Calamagrostis sesquiflora (Trin.) Tzvelev subsp. urelytra (Hack.) Probat.

　　synonym　Calamagrostis urelytra Hack.

　　synonym　Calamagrostis purpurascens auct. non R.Br. ex Richards.

　　synonym　Calamagrostis purpurascens R.Br. subsp. arctica auct. non (Vasey) Hultén

　日本(北海道、本州中・北部)、ロシア、北アメリカ(アラスカ、カナダ、USA)原産。英名はOne-and-a-half-flowered reedgrass。開けたヒース、牧草地、開けた森林、岩の崖、丘、湿った斜面、高山の草地などに生える。
　花の無い稈の株はめったにない。強く叢生し、普通、根茎はなく、ときに長さ1～2㎝、直径1～2mmの根茎をもつ。稈は高さ(15)30～46(50)㎝、分枝せず、普通、平滑、まれに花序の下でわずかにザラつき、1～2(3)節がある。葉鞘と襟は平滑。葉舌は長さ(0.5)2～5(6)㎜、普通、切形、ときに鈍形、普通、全縁、ときに切り裂かれる。葉身は長さ(3)8～25(31)㎝×幅(2)3～7㎜、平ら、下面は普通、ザラつき、まれに平滑、上面は平滑またはわずかにザラつき、無毛またはまばらに毛がある。円錐花序は長さ4～11(12)㎝×幅0.8～2.5(2.8)㎝、直立し、狭まり～やや開き、普通、紫色を帯び、ときに褐色または緑色。枝は長さ1.5～3(4)㎝、ザラつき、刺はときにほとんど毛状になり、普通、小穂は基部につき、最下の枝はときにそうではない。小穂は長さ(5)5.5～8.5(9.5)㎜、小軸の延長は長さ(1)1.5(2.2)㎜、毛は長さ1～2.2㎜。苞穎は竜骨があり、竜骨は普通、全長にわたってザラつき、ときに表面もザラつき、側脈が明瞭、先は長い尖鋭形、普通、上部で捻じれる。カルスの毛は長さ (0.8)1.2～1.8(3)㎜、護穎の長さの0.1～0.4倍の長さがあり、豊富につく。護穎は長さ(3.5)4～4.5(6)㎜、苞穎の長さより(0.5)1～2.5(4.5)㎜短い。芒は長さ(5.4)7～11(13)㎜、護穎の下部1/10～2/5につき、2㎜以上突き出し、丈夫で、カルスの毛と簡単に区別でき、曲がる。葯は長さ(1.2)2.2～3(3.4)㎜。 2n=28。

25 Calamagrostis stricta (Timm) Koeler　チシマガリヤス　千島野刈安
　北半球の温帯と極地に広く分布し、南半球のチリー、ペルーにも分布する。英名はslimstem reedgrass , slipstem reed grass , narrow small reed。牧草地、草地、湿地、砂浜の海岸線、砂丘などに生える。
　不稔の稈を持つ株はめったにない。叢生する。根茎は普通、長さ5㎝以下、直径1～1.5㎜。稈は高さ(10)35～90(120)cm、通常は枝分かれしておらず、平滑またはわずかにザラつき、1～3(4)節がある。葉鞘は普通、平滑、襟は普通、平滑で、ときにザラつき、まれに毛がある。葉舌は長さ(0.5)1～5.5(6)mm、切形～鈍形、普通、全縁、ときに切り裂かれる。葉身は長さ(5)11-25(34)c×幅(1)1.5-5(6) mm、平らまたは内巻き、普通、ザラつき、まれに平滑、ときに微軟毛がある。円錐花序は長さ(2)4～18(29)cm×幅(0.7)1～2(2.8)cm、直立し、狭まり、ときに途切れ、淡緑色～紫色。枝は長さ1.4～5(9.5)mm、平滑またはザラつき、普通、基部またはその近くに小穂をつけ、ときに中間だけにつく。小穂は長さ2～4(5)mm、小軸の延長(突起)は長さ0.5～1.5 mm、毛は長さ1.5～3mm。苞穎は普通、長さが幅の3倍未満で、丸くなるかまたは竜骨があり、普通、平滑、まれにザラつき、竜骨は平滑またはザラつき、脈は明瞭～不明瞭、先は鋭形。カルスの毛は長さ(1)1.5～3(4.5)mm、護穎の長さの(0.5)0.7～0.9(1.3)倍の長さ、多数つく。護穎は長さ2～4(5)mm、苞穎より0.1～1.5mm短い。芒は長さ1.5～2.5 mm、普通、護穎の下部1/10～1/2につき、まれに中間点を超えてつき、苞穎の縁と同じかまたはわずかに超えて突き出し、真っすぐまたは曲がる。葯は長さ(0.9)1.2～1.8(2.4)mm、しばしば不稔になる。
　Kewscienceなどは亜種、変種を認めていないが、 Flora of North Americaなどでは認めている。
25-1 Calamagrostis stricta (Timm) Koeler subsp. stricta。
　アラスカ～ニューファンドランド、ラブラドール、グリーンランド、USA南部(西部のカリフォルニアなど、東部のニューヨークなど)まで広がり、ヨーロッパでは北緯50度～スイス、南コーカサスまで分布する。湿った牧草地や沼地に生え、まれに沼地ではあまり生えず、砂丘の近くに生えることもある。
　まれに、不稔の稈をもつ。稈は高さ(10)35～90(100)cm、普通、平滑、ときに花序の下がわずかにザラつく。葉鞘と襟は平滑。葉舌は長さ (0.5)1～3.5(4)mm。葉身は長さ(9)13～25cm×幅(1)1.5～2.5(3)mm、平らまたはしばしば内巻き。円錐花序は長さ(2)8～10(13)cm×幅(0.7)1～2(2.5)cm、ときに途切れ、紫色を帯る。枝は長さ(1.4)2～2.5(4)cm、小穂は中間の下につき、ときに基部につく。小穂は長さ2～2.5(3)mm、小軸の延長(rachilla prolongations)は長さ0.5～1mm。苞穎は竜骨がある。カルスの毛は長さ(1)1.5～2(3)mm、護穎の長さの(0.5)0.7～0.8(1)倍の長さ。護穎は長さ2～3 mm、苞穎0.1～1.5mm短い。芒は長さ1.5～2.5mm、護穎の下部1/10～1/2から出て、まれに細く、普通、真っ直ぐで、ときに曲がる。葯は長さ(1.1)1.2～1.4(1.7)mm、普通、稔性で花粉を十分にもち、裂開する。2n=28, 42, 56, +70。
25-2 Calamagrostis stricta (Timm) Koeler subsp. inexpansa (A.Gray) C.W.Greene　チシマガリヤス　千島野刈安
　　synonym　Calamagrostis stricta (Timm) Koeler var. aculeolata Hack.

　　synonym　Calamagrostis neglecta (Ehrh.) G.Gaertn., B.Mey. et Scherb. var. aculeolata (Hack.) Miyabe et Kudô

　　synonym　Calamagrostis neglecta (Ehrh.) G.Gaertn., B.Mey. et Scherb. subsp. inexpansa (A.Gray) Tzvelev

　　synonym　Calamagrostis neglecta (Ehrh.) G.Gaertn., B.Mey. et Scherb. subsp. aculeolata (Hack.) T.Koyama

　　synonym　Calamagrostis inexpansa A.Gray
　　synonym　Calamagrostis aculeolata (Hack.) Ohwi
　北アメリカ、北東アジアに分布する、英名はNorthern reedgrass , Calamagrostide contractee。湿った牧草地、ミズゴケの沼地、川や小川に関連する草地に生える。湿地ではなく、湿地の端で成長する。
　不稔の稈は見られない。稈は高さ(29)35～75(120)㎝、普通、ザラつき、ときに平滑。葉鞘と襟は普通、平滑、襟はときにザラつき、まれに毛がある。葉舌は長さ(0.5)2～5.5(6)㎜。葉身は長さ(5)11～24(34)㎝×幅(1.5)2～5(6)㎜、平ら、普通、堅く、ときに微軟毛がある。円錐花序は長さ(6)8～11(29)㎝×幅(0.8)1～2(2.8)㎝、淡緑色、ときに紫色を帯びる。枝は長さ(1.5)1.6～5(9.5)㎝、小穂は基部につく。小穂は長さ 3～4(5)㎜、小軸の延長(rachilla prolongations：突起)は長さ1～1.5㎜。苞穎は広く竜骨があり、または丸みがある。カルスの毛は長さ(2)2.5～3(4.5)㎜、護穎の長さの(0.5)0.7～0.9(1.3) 倍の長さ。護穎は長さ2.5～3.5(5)㎜、苞穎より0.1～1(1.4)㎜短い。芒は長さ2～2.5㎜、護穎の下部1/10～2/5に取り付けられ、まれに中間点を超え、真っすぐまたはやや強く曲がる。葯は長さ(0.9)1.5～1.8(2.4)㎜、しばしば発達が不十分で、不稔で裂開しない。2n=28, 56, 58, 70, 84～±120。

26 Calamagrostis subacrochaeta Nakai　
　朝鮮原産。

27 Deyeuxia suizanensis (Hayata) Ohwi　スイザンヌカボ　水山糠穂
　　synonym　Calamagrostis suizanensis (Hayata) Honda
　　synonym　Calamagrostis filifolia auct. non Merr.
　台湾、ニューギニア、フィリピン原産。中国名は水山野青茅 shui shan ye qing mao。

28 Deyeuxia tashiroi (Ohwi) Ohwi　タシロノガリヤス　田代野刈安
　　synonym　Calamagrostis tashiroi Ohwi
　日本固有種。四国、九州(大分県、宮崎県、鹿児島県)に分布する。低山地や山地の岩場、林内に生える。
　多年草、叢生し、ゆるく房状になり(clumped)、低出葉は目立たない。根茎は短い。稈は長さ20～40㎝、直径0.7～1㎜、4～5節がある。稈の節間は長さ2～5cm。葉は茎葉。葉鞘は隣接する稈の節間よりもほとんどが短く、平滑、表面は無毛。葉鞘は口部の毛が無いかまたは毛がある。葉舌は縁毛がなく、膜質、長さ1～2mm。葉身は線形または披針形、長さ8～13cm×幅4～10mm、白粉を帯び、表面はザラつく。花序は円錐花序。円錐花序は開き、披針形、長さ5～8cm×幅1.5～2.5cm。一次の花序枝は2～3本つき、長さ1～3cm。小穂は単生。稔性の小穂は小梗があり、小梗は糸状。小穂は1個の稔性の小花からなり、不毛の小軸の延長(突起)がある。小穂は披針形、側部が扁平、長さ5～6 mm、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。小花のカルスは毛があり、毛は護穎の長さの0.25～0.66倍である。両苞穎は似ており、宿存し、小花の先を超え、稔性の護穎より堅い。第1苞穎は披針形、長さ5～6 mm、第2苞穎の長さと同長、膜質、1竜骨、1脈があり、一次脈は細かくザラつき、側脈は無く、先は尖鋭形。第2苞穎は披針形、長さ5～6 mm、隣接する稔性の護絵里の長さの1.1倍、膜質、1竜骨があり、一次脈は細かくザラつき、先は尖鋭形。稔性の護穎は卵形、長さ4.5～5.5 mm、膜質、竜骨はなく、5脈があり、側脈は、先近くまで伸び、先は2歯があり、1芒がある。主要な護穎の芒は背側につき、護穎の上0.1から出て、膝状に曲がり、全体の長さは1～2mm、柱(下部)が捻じれる。鱗被は2個。葯は3個、長さ2.5mm。柱頭は2個。穎果は果皮が付着性。へそは点状。花期は8～9月。

29 ハイブリッド
(1) Calamagrostis × acutiflora (Schrad.) DC.
　ヨーロッパ、ロシア原産。英名はfeather reed grass。
　Calamagrostis arundinacea と Calamagrostis epigejosとの自然交雑種。
品種)　'Apple Court' (v) , 'Avalanche' , 'Eldorado' (v) , 'England' (v) , 'Karl Foerster' , 'Overdam' (v) , 'Stricta' , 'Waldenbuch'
(2) Calamagrostis x aristata Ohwi　シコクガリヤス　四国野刈安
　　synonym　Calamagrostis tashiroi Ohwi subsp. sikokiana (Ohwi) Tateoka
　ヒメノガリヤス×イワノガリヤスの交雑種。四国、九州に分布する。別名はイシヅチノガリヤス。山地に生える。
　多年草、高さ20～40㎝。円錐花序に小穂をまばら(普通、約20個)につける。小穂は淡緑色、長さ4～6㎜、芒と小花のカルスに白毛がある。タシロノガリヤスに似るが、芒が小花よりも短く、小穂外に出ない。花期は8～9月。
(3) Calamagrostis x goyozanensis M.Kikuchi　ゴヨウザンガリヤス　
　イワノガリヤス×タカネノガリヤスの交雑種。
(4) Calamagrostis x grandiseta Takeda　 オオヒゲガリヤス
　　synonym　Calamagrostis fauriei Hack. var. intermedia T.Shimizu

　　synonym　Calamagrostis longiseta Hack. var. longearistata (Takeda) Ohwi

　　synonym　Calamagrostis longiseta Hack. subsp. longearistata (Takeda) T.Koyama

　別名はナガヒゲガリヤス、シロウマガリヤス。
(5) Calamagrostis x microtis (Ohwi) Ohwi　 クジュウノガリヤス　
　　synonym　Calamagrostis autumnalis Koidz. var. microtis Ohwi

　　synonym　Calamagrostis autumnalis Koidz. subsp. microtis (Ohwi) T.Koyama

　コバナノガリヤス C. adpressiramea Ohwi とキリシマノガリヤス C. autumnalis Koidz.の交雑種。
(6) Calamagrostis x muramatsui Ohwi　 ムラマツノガリヤス　
　イワノガリヤス×ムツノガリヤスの交雑種。
(7) Calamagrostis x yatabei Maxim.　 ヤマアワモドキ　

　　synonym　Calamagrostis x acutiflora Rchb.f. nothovar. yatabei (Maxim.) Sugim.

　ノガリヤス×ヤマアワの交雑種。
(8) その他ハイブリッド
品種)　'Glenorchy Fireworks' , 'Hortorum' , 'Kyrgyz Giant' , 'Lightning Strike' , 'Stricta' , 'Waldenbuch'

デイエウクシア属

　 family　Poaceae － genus Deyeuxia

　多年草、房状になりまたは根茎がある。葉身は線形、普通、平らで、ときに内巻きする。葉舌は膜質。花序は円錐花序、緩く穂状花序状に狭まり、まれに開く。小穂は1個の小花(ごくまれに2個)をもち、小軸が苞穎の上で関節離断し、ほうき状の延長(突起)が内穎に横たわる。両苞穎は等しくなく、普通、小花よりわずかに長く、まれにわずかに短く、膜質、1～3脈があり、先は鋭形または尖鋭形。小花のカルスは毛があり、毛は普通、小花の長さの1/3～ほぼ同長。護穎は薄く～堅く、膜質、(3～)5脈があり、背側に芒がありまたは芒がなく、先は微細不整歯があるかまたは小歯があるか、または2～4歯がある。芒は膝状に曲がりまたは真っ直ぐで、つく位置は基部近くから先近くまで変化し、普通、目立たず、護穎の長さの2倍以下であり、たまに、ほぼ先端の微突起になるか、無くなる。内穎は護穎の長さの2/3～ほぼ同長まで。雄しべは普通、3個、まれに2または1個になる。
　世界に約200種あり、世界中の温帯地域、熱帯の山地に分布する。
　DeyeuxiaはCalamagrostisに含められるようになった。南半球の約110種とする説もある。

　YListでデイエウクシア属とされている種は次のとおり。

デイエウクシア属の主な種と園芸品種

1 Deyeuxia autumnalis (Koidz.) Ohwi　キリシマノガリヤス　霧島野刈安
　　synonym　Calamagrostis kirishimensis Honda
　　synonym　Calamagrostis autumnalis Koidz.
2 Deyeuxia brachytricha (Steud.) Chang　ノガリヤス　野刈安
　　synonym　Deyeuxia sylvatica Kunth var. hirsuta (Franch. et Sav.) Rendle
　　synonym　Deyeuxia sylvatica Kunth var. brachytricha (Steud.) Rendle
　　synonym　Deyeuxia pyramidalis auct. non (Host) Veldkamp
　　synonym　Deyeuxia matsudana (Honda) Keng
　　synonym　Deyeuxia formosana (Hayata) C.C.Hsu
　　synonym　Deyeuxia arundinacea auct. non P.Beauv.

　　synonym　Deyeuxia arundinacea P.Beauv. var. sciuroides (Franch. et Sav.) P.C.Kuo et S.L.Lu

　　synonym　Deyeuxia arundinacea P.Beauv. var. hirsuta (Hack.) P.C.Kuo et S.L.Lu

　　synonym　Deyeuxia arundinacea P.Beauv. var. brachytricha (Steud.) P.C.Kuo et S.L.Lu

　　synonym　Deyeuxia arundinacea P.Beauv. var. robusta (Franch. et Sav.) P.C.Kuo et S.L.Lu

　　synonym　Deyeuxia sylvatica Kunth var. sciuroides (Franch. et Sav.) Rendle

　　synonym　Calamagrostis chassanensis Probat.
　　synonym　Calamagrostis brachytricha Steud.
　　synonym　Calamagrostis arundinacea auct. non (L.) Roth

　　synonym　Calamagrostis arundinacea (L.) Roth var. brachytricha (Steud.) Hack.

　　synonym　Calamagrostis arundinacea (L.) Roth subsp. brachytricha (Steud.) Tzvelev

3 Deyeuxia epigeios (L.) Mabb.　ヤマアワ　山粟
　　synonym　Calamagrostis extremiorientalis (Tzvelev) Probat.

　　synonym　Calamagrostis epigeios (L.) Roth var. extremiorientalis (Tzvelev) Kitag.

　　synonym　Calamagrostis epigeios (L.) Roth var. densiflora Griseb.

　　synonym　Calamagrostis epigeios (L.) Roth subsp. extremiorientalis Tzvelev

　　synonym　Calamagrostis epigeios (L.) Roth

4 Deyeuxia fauriei (Hack.) Ohwi　カニツリノガリヤス　蟹釣野刈安
　　synonym　Calamagrostis fauriei Hack.

5 Deyeuxia gigas (Takeda) Ohwi　オニノガリヤス　鬼野刈安
　　synonym　Deyeuxia gigas (Takeda) Ohwi var. aspera (Honda) Ohwi
　　synonym　Calamagrostis gigas Takeda var. aspera (Honda) Ohwi
　　synonym　Calamagrostis gigas Takeda

6 Deyeuxia hakonensis (Franch. et Sav.) Keng　ヒメノガリヤス　姫野刈安
　　synonym　Calamagrostis hakonensis Franch. et Sav.

7 Deyeuxia korotkyi (Litv.) S.M.Phillips et Wen L.Chen　キタノガリヤス　北野刈安
　　synonym　Deyeuxia turczaninowii (Litv.) Y.L.Chang ex S.L.Lu
　　synonym　Calamagrostis korotkyi Litv.
　　synonym　Calamagrostis turczaninowii Litv.
　　synonym　Calamagrostis sugawarae Ohwi

　　synonym　Calamagrostis korotkyi Litv. subsp. turczaninowii (Litv.) Tzvelev

　　synonym　Calamagrostis arundinacea (L.) Roth subsp. sugawarae (Ohwi) Tzvelev

8 Deyeuxia longiseta (Hack.) Ohwi　ヒゲノガリヤス　髭野刈安
　　synonym　Calamagrostis longiseta Hack.

9 Deyeuxia masamunei (Honda) Ohwi　ヤクシマノガリヤス　屋久島野刈安

　　synonym　Calamagrostis niitakayamensis Honda subsp. masamunei (Honda) T.Koyama

　　synonym　Calamagrostis masamunei Honda

　　synonym　Calamagrostis longiseta Hack. var. masamunei (Honda) T.Koyama

10 Deyeuxia matsumurae (Maxim.) Ohwi　ムツノガリヤス　陸奥野刈安
　　synonym　Calamagrostis matsumurae Maxim.

11 Deyeuxia pyramidalis (Host) Veldkamp　マンシュウノガリヤス　満州野刈安
　　synonym　Deyeuxia arundinacea auct. non P.Beauv.
　　synonym　Deyeuxia sylvatica Kunth
　　synonym　Calamagrostis distantiflora Lucznik
　　synonym　Calamagrostis arundinacea (L.) Roth

12 Deyeuxia sachalinensis (F.Schmidt) Rendle　タカネノガリヤス　高嶺野刈安
　　synonym　Calamagrostis sachalinensis F.Schmidt

13 Deyeuxia suizanensis (Hayata) Ohwi　スイザンヌカボ　水山糠穂
　　synonym　Calamagrostis suizanensis (Hayata) Honda
　　synonym　Calamagrostis filifolia auct. non Merr.

14 Deyeuxia tashiroi (Ohwi) Ohwi　タシロノガリヤス　田代野刈安
　　synonym　Calamagrostis tashiroi Ohwi

参考

1) Flora of China
　Calamagrostis 　Deyeuxia 2) Plants of the World Online| Kewscience
　Calamagrostis 3) World Flora Online
　Calamagrostis 4) World Checklist of Vascular Plants
　Calamagrostis 5) Jepson eFlora: Taxon page
　Calamagrostis stricta 6) FNA - Flora of North America
　Calamagrostis 7) 植物研究雑誌 (Journal of Japanese Botany) 76巻 4号231-236 2001年
　イネ科タイワンサイトウガヤの分類と分布 8) 植物研究雑誌 (Journal of Japanese Botany) 91(1), 61-64, 2016
9) Flora of Victoria
　Calamagrostis 　Deyeuxia