ナツフジ 夏藤

mark

Flora of Mikawa

マメ科 Fabaceae ウィステリオプシス属

別 名 ドヨウフジ(土用藤)
学 名

Wisteriopsis japonica (Siebold & Zucc.) J.Compton & Schrire

 synonym Millettia japonica (Siebold et Zucc.) A.Gray
 synonym Wisteria japonica Siebold et Zucc.
ナツフジ
ナツフジ花
ナツフジ萼
ナツフジ果実
ナツフジ
ナツフジ種子
ナツフジの葉
花 期 7~8月
高 さ つる性
生活型 落葉低木
生育場所 山地の林内、林縁
分 布 在来種 本州(東海道以西)、四国、九州、朝鮮
撮 影 三ヶ根山(幸田町)  09.7.13
和名は夏に花が咲き、フジによく似ていることに由来する。別名も同様に夏の土用の頃咲くことから。三河地方には多い。学名はWisteria(フジ属)またはMillettia(旧ナツフジ属)とされていたが、POWOやYListではWisteriopsis属とされている。
 落葉低木、蔓性、蔓は右旋性(dextrorsely:下から見て右巻き=上から見て左巻き)、緩く短毛が生えるが、すぐに無毛になる。托葉は錐形、小さく、宿存する。葉は互生し、長さ10~25㎝の奇数羽状複葉、ほぼ無毛。小葉は11~17個、卵形~狭楕円形、長さ1.5~4cm×幅1~2cm、全縁、鈍形の先に向かい次第に狭まり、基部は円形、下面はわずかに淡色となり、両面にやや脈があり、ほぼ無毛で、上面は濃緑色。総状花序は腋生、短い花序柄を含めて長さ10~20cm、花は密に多数つき、垂れ下がる。花はフジに似た蝶形花、長さ約15mm、淡黄白色~緑白色、小花柄がある。萼は長さ約4mm、緩く伏した微軟毛があり、花とほぼ同色、先が浅く5裂し、萼歯は凹んだ三角形、縁が赤色を帯びることが多い。苞と小苞は針状、長さ1mm未満、宿存する。子房は平滑、無毛、多数の胚珠がある。豆果は長さ約10cm×幅8mm[長さ6~12(15)㎝×幅約1㎝]、広線形、わずかに扁平、果皮が厚く、くびれがあり、褐色に熟して遅く裂開する。種子は扁平、直径約8㎜のほぼ円形。花期は7~8月。

ウィステリオプシス属(ナツフジ属)

  family Fabaceae - genus Wisteriopsis

 つる性木本。葉は奇数羽状複葉、葉軸には上面に浅い溝がある。托葉は宿存または早落し、突起(gibbosities)が托葉の下に突出する。葉軸は上面に浅い溝があり、毛がある。小葉は5~15個、対生する。小托葉は残存または早落する。花序は腋生または頂生、円錐花序またはときに総状花序となる。小苞は宿存する。萼は筒形または鐘形、5裂する。萼片のほぼ等長、上側の萼片は鈍形または三角形、下側の萼片は鈍いく鋭形。花冠は白色、ときに淡ピンク色、緑白色、ピンク色または暗紫色。旗弁はわずかに後方に後屈し、基部のカルス(callosities)は鈍い鋭形、外側は無毛。翼弁は竜骨弁と同長、爪部があり、花後は竜骨弁から離れる。竜骨弁は無毛、爪部がある。雄しべは10本で、2束雄しべ(diadelphous:2束になった)、ときに旗弁雄しべ=遊離雄しべ(vexillary stamen:10本中、9本の花糸が融合して1束になった、残りの1本)は雄しべ筒の基部にわずかに付着する。花盤(disc)があり、筒形。子房は無毛。莢は線形、卵形または狭楕円形、扁平、膨れ、遅れて裂開し、表面には細かい波がある。種子は1~8個、レンズ形、ほぼ円形~扁球形、平滑。へそは楕円形。
 世界に5種あり、日本、韓国、中国、台湾、ラオス、タイ、ベトナムに分布する。

ウィステリオプシス属の種と園芸品種

1 Wisteriopsis championii (Benth.) J.Compton & Schrire ウィステリオプシス・チャンピオニー

  synonym Callerya championii (Benth.) X.Y.Zhu [Flora of China]

  synonym Callerya reticulata var. championii (Benth.) H.Sun
  synonym Millettia championii Benth.
  synonym Phaseoloides championii (Benth.) Kuntze
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区)原産。標高200~800mの岩だらけの谷の峡谷沿いの茂みに生える。茎と根は有毒だが、薬用としても利用される。
 つる植物、長さ2mまで、花序以外は無毛。茎は赤褐色、散在する皮目がある。葉は5(または7)小葉、葉軸は葉柄を含み長さ10~20cm、葉柄は長さ長さ3~5cm。小葉は卵形~卵状長円形、長さ(3~)4~6cm×幅1.5~2(~3)cm、紙質、両面とも無毛で光沢があり、乾くと淡緑色、二次脈と三次脈は明瞭で両面に隆起し、基部は円形、先は尖鋭形~尾状。円錐花序は頂生、長さ15~20cm、花のついた小枝は長さ6~8cm、斜上し、真っ直ぐで堅く、節は密にある。花は長さ約1.2cm。花冠は黄白色、ピンク色の光輪(halo)がある。旗弁は円形、無毛、基部にカルスはない。子房は無毛で、多数の胚珠がある。豆果は線形、長さ6~12cm×幅0.5~1.2cm、扁平。バルブは薄い。種子は1豆果につき2~3個、未熟時はレンズ形。花期は5~8月。果期は7~11月。

2 Wisteriopsis eurybotrya (Drake) J.Compton & Schrire ウィステリオプシス・エウリボトリア

  synonym Callerya eurybotrya (Drake) Schot [Flora of China]

  synonym Millettia eurybotrya Drake
 中国(広東省、広西チワン族自治区、貴州省、湖南省、雲南省)、ラオス、タイ、ベトナム原産。中国名は宽序鸡血藤 kuan xu ji xue teng。標高100~1200m谷間や峡谷の茂みに生える。この植物は有毒であり、薬用としても用いられる。
 低木、枝は斜めに伸び、高さ4~10m。樹皮は平滑。小枝は淡黄色で、うねがあり、伏毛があり、無毛になり、不明瞭な皮目が散在する。葉は5~7小葉、葉軸は葉柄を含めて長さ20~25(~40)cm、葉柄は長さ(3~)5~6(~7)cm。小葉身は卵状長円形~楕円状披針形、長さ6~16cm×幅2.5~8cm、紙質、両面とも暗緑色で無毛、基部は広楔形~円形、先は鋭形。頂生の円錐花序は長さ約30cm、花のつく小枝は長さ8~10cm、広がり、黄褐色の綿毛がある。花は長さ1.4~1.5cm。萼は毛がある。花冠は紫色で、中央に黄緑色の斑点がある。旗弁は円形、基部にカルスはなく、基部は狭まり、爪部になる。子房は無毛、多数の胚珠を持つ。豆果はは乾くと紅色になり、長円形、長さ10~11cm×幅2~3cm、膨らみ、木質、種子間はくびれ、縫合線は厚くなる。種子は豆果1個につき2~7個、褐色、楕円形、長さ約2cm。へそは白色。花期は7~8月。果期は9~11月。

3 Wisteriopsis japonica (Siebold & Zucc.) J.Compton & Schrire ナツフジ 夏藤

  synonym Millettia japonica (Siebold et Zucc.) A.Gray
  synonym Wisteria japonica Siebold et Zucc

  synonym Millettia japonica f. alborosea Sakata アケボノナツフジ

 本州(東海道以西)、四国、九州、朝鮮原産。別名はドヨウフジ(土用藤)。和名は夏に花が咲き、フジによく似ていることに由来する。別名も同様に夏の土用の頃咲くことから。低地の雑木林に生える。
 落葉低木、蔓性、蔓は右旋性(dextrorsely:下から見て右巻き=上から見て左巻き)、緩く短毛が生えるが、すぐに無毛になる。托葉は錐形、小さく、宿存する。葉は互生し、長さ10~25㎝の奇数羽状複葉、ほぼ無毛。小葉は11~17個、卵形~狭楕円形、長さ1.5~4cm×幅1~2cm、全縁、鈍形の先に向かい次第に狭まり、基部は円形、下面はわずかに淡色となり、両面にやや脈があり、ほぼ無毛で、上面は濃緑色。総状花序は腋生、短い花序柄を含めて長さ10~20cm、花は密に多数つき、垂れ下がる。花はフジに似た蝶形花、長さ約15mm、淡黄白色~緑白色、小花柄がある。萼は長さ約4mm、緩く伏した微軟毛があり、花とほぼ同色、先が浅く5裂し、萼歯は凹んだ三角形、縁が赤色を帯びることが多い。苞と小苞は針状、長さ1mm未満、宿存する。子房は平滑、無毛、多数の胚珠がある。豆果は長さ約10cm×幅8mm[長さ6~12(15)㎝×幅約1㎝]、広線形、わずかに扁平、果皮が厚く、くびれがあり、褐色に熟して遅く裂開する。種子は扁平、直径約8㎜のほぼ円形。花期は7~8月。

4 Wisteriopsis kiangsiensis (Z.Wei) J.Compton & Schrire ウィステリオプシス・キアングシエンシス

  synonym Callerya kiangsiensis (Z.Wei) Z.Wei & Pedley [Flora of China]

  synonym Millettia kiangsiensis Z.Wei
  synonym Millettia kiangsiensis f. purpurea Z.H.Cheng
 中国(安徽省、福建省、湖北省、湖南省、江西省、浙江省)原産。中国名は江西鸡血藤 jiang xi ji xue teng。標高200~600mのまばらな藪、斜面の藪に生える。
 つる植物。茎は赤褐色、円柱形で細く、微細な皮目が密集している。葉は7~9小葉、葉軸は葉柄を含んで長さ6~18cm、葉柄は長さ2~3cm。小葉の葉身は卵形、長さ(1.5~)3~5(~6)cm×幅1~2.5cm、紙質、両面とも無毛、乾くと下面は鈍い灰緑色、上面は暗緑色、二次脈と三次脈は不明瞭、基部は円形、先は鋭形。総状花序は腋生、長さ8~12cm、基部につく葉と同長、微軟毛がある。花は長さ1.2~1.5cm。花冠は白色または紫色、先は縁がわずかにバラ色。旗弁は長円形、無毛、基部にカルスはない。子房は柄があり無毛、多数の胚珠を持つ。豆果は線形、約・長さ10cm×幅1.2cm、扁平、真っすぐ、基部は細くなり、長さ約3mmまでの柄がつき、先には短い鉤状の嘴を持つ。種子は1豆果あたり5~9個、黒色でレンズ形、約・長さ7mm×幅5mm。花期は6~8月。果期は9~10月。

5 Wisteriopsis reticulata (Benth.) J.Compton & Schrire ムラサキナツフジ 紫夏藤

  synonym Millettia reticulata Benth.
  synonym Callerya reticulata (Bentham) Schot [Flora of China]

  synonym Callerya reticulata var. stenophylla (Merr. & Chun) X.Y.Zhu

  synonym Wisteriopsis reticulata var. stenophylla (Merr. & Chun) J.Compton & Schrire

 中国(安徽省、福建省、広東省、広西省、貴州省、海南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、陝西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ベトナム。中国名は网络鸡血藤 wang luo ji xue teng。別名はサクコウ。標高100~1200mの斜面や谷間の茂み、渓流沿いの茂みに生える。
 蔓植物、長さ2~10m。茎は太く、多数枝分かれし、細くうねがあり、褐色の毛があり、無毛になる。葉は(5または)7または9小葉。葉軸は葉柄を含んで長さ10~20cm、葉柄は長さ2~5cm。小葉身は卵状楕円形、長円形、線形、または狭披針形、長さ(3~)5~6(~8)cm×幅(0.5~)1.5~4 cm、紙質、両面とも無毛または稀にまばらに微軟毛があり、基部は円形、先細りまたは楔形、先は鈍形、尖鋭形、または微凹形。円錐花序は頂生または小枝の先付近に腋生し、長さ10~20cm、しばしば垂れ下がり、褐色の毛がある。花のつく小枝は密集している。小花柄は長さ3~5mm。花は長さ1.3~1.7mm。萼は長さ3~4mm×幅約5mm、無毛になる。萼歯は短く、縁には黄色の縁毛がある。花冠は紫色。旗弁は卵状長円形、無毛、基部にカルスはなく、基部は短い爪部がある。子房は無毛で、多数の胚珠を持つ。豆果は乾くと黒色化し、線形で、長さ約15cm×幅1~1.5cm、扁平、薄い革質、縫合部は肥厚しない。種子は豆果1個につき3~6個、黒色、長円形、約・長さ11mm×幅7mm。花期は4~8月。果期は6~11月。

ミレッティア(旧ナツフジ)属

  family Fabaceae - genus Millettia

 低木又はつる性木。托葉はあり、宿存又は早落性。葉は奇数羽状複葉。小托葉は有又は無。小葉の葉身は対生又はまれに類互生。花序は偽総状花序、分枝せず(Millettia ichthyochtonaでは分枝する)、花序軸には花のつく側枝をもち、各節ではノブ又は短い距になり、花は各節に2~5個、束生する。苞と小苞がある。萼筒は広く、短い5歯があり、内側の2歯は±合着する。花冠は旗弁が大きく、基部にカルス(callus)は有又は無。旗弁の雄しべは蕾では分離し、ときに、成熟すると他の9本に付着する。子房は線形。花柱は真っすぐ又は内側に曲がる。豆莢は2バルブ、平ら、ときに円筒形又は楕円形の種子の周りだけ膨れ、ゆっくり裂開し、翼は無く、又は外側又は両縫合線に垂直な2翼をもつ。種子は豆莢に1個~数個、レンズ形又は球形、珠柄(funicle)は肉質、内側が膨れ、短い輪状の仮種皮としてへそを取り囲んで抱く。
 世界に約174種あり、亜熱帯、熱帯のアフリア、アジア、オーストラリアに分布する。
1 Millettia pulchra (Bentham) Kurz,
 中国、インド、ラオス、ミャンマー原産。中国名は印度崖豆 yin du ya dou
1-1 Millettia pulchra Kurz var. microphylla Dunn  ボタンフジ
 台湾原産。チュ国名は台湾小叶崖豆 tai wan xiao ye ya dou 。

参考

1) Flora of China
 Millettia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=120724
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Millettia
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:327012-2
3) GRIN
 Millettia
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=1156
4) Flora of Pakistan
 Millettia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=5&taxon_id=120724
5) e-Flora of Thailand
 Wisteriopsis
https://botany.dnp.go.th/eflora/floragenus.html?factsheet=Wisteriopsis
6) BHL | Flora of Japan 1953
 Millettia p572
https://www.biodiversitylibrary.org/item/95083#page/600/mode/1up