ムギセンノウ 麦仙翁
Flora of Mikawa
ナデシコ科 Caryophyllaceae ムギセンノウ属
別 名 | ムギナデシコ、アグロステンマ・ギタゴ |
中国名 | 麦仙翁 mai xian weng |
英 名 | common corncockle, corncockle , nielle |
学 名 | Agrostemma githago L.
or Agrostemma brachylobum (Fenzl) K.Hammer |
花 期 | 6~8月 |
高 さ | 60~90㎝ |
生活型 | 1年草 |
生育場所 | 畑、小麦畑、道端の草地 |
分 布 | 外来種 地中海沿岸地域原産 |
撮 影 | 浜名湖ガーデンパーク 24.4.17 |
ムギセンノウは1年草、高さ60~90(~150)cmで、長く縮れた灰色がかった毛がある。茎は分枝せず、しばしば、上部で腋生の2出(axillary dichasia)がある。 葉は対生し、無柄、毛があり、線形または線状披針形、長さ4~13㎝×幅(2~)5~10㎜、中脈が顕著、ときに不明瞭な3脈があり、基部はわずかに合着し、先は鋭形、縁は全縁。花序は頂生、緩い集散花序または花が単生し、ほとんどが腋生する。苞はあれば対になり、草質。花序柄(小花柄を含めて)は長さ7~23㎝。小花柄は直立し、非常に長く、長さ5~20㎝。花は上向きに咲き、両性、まれに単性で雌性、放射相称、直径約3㎝。萼筒は長さ1.2~1.5cm、果時の萼筒が中央で明らかに太く(壺形)、脈は脈間より狭く、外面に絨毛がある。萼歯は花弁より長く、長さ2~3(5)㎝。花弁は長さ1.4~1.8(~4)cm、3~5脈(外側の2脈は短いか不明瞭)が点線になり、萼歯より短い。花弁の爪部は白色、狭い楔形。拡大部はピンク色~赤紫色~暗赤色、倒卵形、まれに青紫色、先はほぼ不明瞭~浅い凹形。雄しべと花柱はほぼ同じ高さ、開花時に露出する。雄しべは通常10本、2輪(列)につく。花柱は5本。蒴果は卵形、長さ1.2~1.8(2.4)cm、萼よりわずかに長い。種子は多数、黒色(まれに褐色)、卵形または腎形、やや不定形、長さ2.5~3(3.5)㎜、明瞭な鋭い疣状突起があり、平均乾燥重量は数に応じて約8~26mg。花期は6~8月。果期は7~9月。2n=24, 48。
多数の変種や亜種などに分類されていたがAgrostemma brachylobum (Fenzl) K.Hammer以外はsynonymとされ、POWOでは現在では下位分類は認められていない。
アグロステンマ・ブラチロブム(Agrostemma brachylobum (Fenzl) K.Hammer)は小型で花の大きいGithago gracilis (Boiss.) Boiss.をsynonymとし、英名はslender corncockle、narrow corncockle、graceful corncockle。全体に細く、萼筒も細い。萼片が花弁より長く、花弁が大きく、幅も広い。
ムギセンノウ属
family Caryophyllaceae - genus Agrostemma1年草。 直根は丈夫。茎は単純または分枝し、円柱形。葉は下部で鞘状に合着し、無柄、托葉は無い。葉身は1脈または不明瞭な3脈があり、線形~狭披針形、先は鋭形。花序は頂生、緩い集散花序、または単生、ほとんどが花が腋生する。苞がある場合は対になり、葉状。総苞の小苞は無い。小花柄は直立する。花は両性、またはまれに単性で、雌性。萼片は下部で筒状に合着し、長さ25~62㎜。萼筒は緑色、10脈があり、円筒形~卵形、円柱状、萼片間の接合は1脈となり、草質。萼片は緑色、1脈があり、線状披針形、萼筒より[短いかまたは]長く、しばしば、花弁と同長またがそれより長く、縁は緑色、草質、先は鋭形。花弁は5枚、赤紫色または白色、爪部があり、耳はなく、副冠の付属体はなく、花弁の先は鈍形、全縁または短く凹形。蜜腺は花糸の基部近くにあり、萼片に対生する。雄しべは10本、5本は花弁に付着し、5本は雌しべの基部にある。花糸は離生。仮雄しべは存在しない。花柱は(4~)5本、こん棒形、長さ10~12㎜、下部に密に硬い斜上する毛がある。柱頭は(4~)5個、ほぼ頂生、パピラ(30倍で見える)がある。蒴果は卵形で、(4~)5個の斜上する歯により裂開する。果柄(carpophore)は無い。 種子は約30~60個、黒色、腎形、横方向に扁平、いぼ状突起があり、縁に翼は無く、付属体は無い。胚は周辺(peripheral)、湾曲する。 x=12。
世界に2種があり、ユーラシアに分布する。Flora of ChinaやFlora of North Americaでは3種としていた。掲載されていないが、おそらく、Agrostemma brachylobum、Agrostemma githago、Agrostemma gracileの3種であり、POWOではAgrostemma gracileはAgrostemma brachylobumのsynonymとされた。
ムギセンノウ属の主な種と園芸品種
1 アグロステンマ・ブラチロブム
synonym Agrostemma gracile Boiss.synonym Githago gracilis (Boiss.) Boiss.
synonym Githago brachyloba Fenzl
synonym Agrostemma githago subsp. thessalum (Bornm.) Greuter
synonym Agrostemma thessalum (Formánek) Hayek
synonym Githago thessala Formánek
ギリシャ、レバノン・シリア、パレスチナ、トルコ原産。英名はslender corncockle、narrow corncockle、graceful corncockle。花が大きく、観賞用に栽培される。
1年草、茎は直立し、高さ30~70(100)㎝。全体にムギセンノウより細く毛が少ない(多い場合もある)。葉は対生し、無柄、線形~狭披針形、灰緑色、基部は合着する。萼筒は円筒形、果時にも太くならず、ほぼ円筒形で、溝の幅は脈より狭い。萼片が萼筒より短く、花弁より短い。花はピンク色でまれに白色、漏斗形。ムギセンノウと花もよく似ているが、ムギセンノウより花弁が大きく、斑点の線がある花弁の拡大部は萼片より長く、ほとんどが5脈あり、広く丸みを帯びる。表皮細胞の大きさにも違いがありAgrostemma githagoは大きく、Agrostemma gracileは小さい。平均値は上面の表皮細胞が92.5 µm(Agrostemma githago)、29.5 µm (Agrostemma gracile)、下面の表皮細胞は92.5 µm(A. githago)と35.62 µm (A. gracile)。花は午前中だけ開き、午後に閉じる。花期は6~8(9)月。
アグロステンマ・ブラチロブム(Agrostemma brachylobum)はムギセンノウ(Agrostemma githago)の亜種Agrostemma githago subsp. thessalumと分類されることもあり、ムギセンノウ(Agrostemma githago)にアグロステンマ・ブラチロブムを含めて広義に扱われることが多い。園芸品種はほとんどがAgrostemma githagoの園芸品種とされているが、萼片が長いものは少なく、ほとんどがAgrostemma brachylobum(Agrostemma gracile)の系統のものと思われる。
2 Agrostemma gracile Boiss. アグロステンマ・グラキリス⇒Agrostemma brachylobum
synonym Githago gracilis (Boiss.) Boiss.ギリシャ中部、トルコに分布する。英名はslender corncockle, graceful corncockle。スウェーデン、ドイツ、デンマークなどに帰化している。トルコで白花が記録されている(Dony 1953)。草丈が高く、花が直径約5㎝またはそれ以上ある園芸品種もある。現在ではAgrostemma brachylobumのsynonymとされている。
全体に小型、毛が少なく、冬季1年生(winter annual)で根生のロゼット葉がある。萼筒が萼歯と同じ長さかそれより長く、萼筒にはわずかに毛が生え、ほとんどの毛は非常に短く、より密着して脆い。萼片は錐形で裏面の脈と縁の脈が盛り上がり、間隔が狭く、それらの間に明確な溝があり、裏面の脈が2溝状になる。花弁が萼片より長い。蒴果が小さい。(Will denowia 25:1995)
品種) Agrostemma gracilis 'Queen Mix'
3 Agrostemma githago L. ムギセンノウ 麦仙翁
synonym Agrostemma githago var. nicaeense (Link) Willd.
synonym Agrostemma githago var. macrospermum (Levina) K.Hammer
synonym Agrostemma githago var. linicola (Terechov) K.Hammer
synonym Agrostemma linicola Terechov
synonym Agrostemma macrospermum Levina
synonym Agrostemma githago var. microcalyx Döll in Fl. Baden: 1232 (1862)
synonym Agrostemma githago var. minor Cout. in Fl. Portugal: 213 (1913)
synonym Agrostemma githago var. nicaeense (Link) Willd.地中海沿岸地域原産。中国名は麦仙翁 mai xian weng。英名はcommon corncockle, corncockle , nielle。別名はムギナデシコ、アグロステンマ・ギタゴ。畑、小麦畑、道端の草地の雑草。ヨーロッパに広く帰化し、穀物やその他の耕作作物の種子に多数含まれる雑草であったが、主に種子洗浄の改良の結果、1910年から1960年の間に減少した。現在では耕作地で見かけるのは珍しく、生け垣や採石場などの荒れた生息地で時折見られる。日本には明治時代初期の頃に渡来し、北海道、本州に帰化している。薬用に使われ、茎、葉、種子には毒性がある。
1年草、高さ60~90(100~150)cmで、長く縮れた灰色がかった毛がある。茎は分枝せず、しばしば、上部で腋生の2出(axillary dichasia)がある。 葉は対生し、無柄、毛があり、線形または線状披針形、長さ4~13㎝×幅(2~)5~10㎜、中脈が顕著、ときに不明瞭な3脈があり、基部はわずかに合着し、先は鋭形、縁は全縁。花序は頂生、緩い集散花序または花が単生し、ほとんどが腋生する。苞はあれば対になり、草質。花序柄(小花柄を含めて)は長さ7~23㎝。小花柄は直立し、非常に長く、長さ5~20㎝。花は上向きに咲き、両性、まれに単性で雌性、放射相称、直径約3㎝。萼筒は長さ1.2~1.5cm、果時の萼筒が中央で明らかに太く(壺形)、脈は脈間より狭く、外面に絨毛がある。萼歯は花弁より長く、長さ2~3(5)㎝。花弁は長さ1.4~1.8(1.5~4)cm、3~5脈(外側の2脈は短いか不明瞭)が点線になり、萼歯より短い。花弁の爪部は白色、狭い楔形。拡大部はピンク色~赤紫色~暗赤色、倒卵形、まれに青紫色、先はほぼ不明瞭~浅い凹形。雄しべと花柱はほぼ同じ高さ、開花時に露出する。雄しべは通常10本、2輪(列)につく。花柱は5本。蒴果は卵形、長さ1.2~1.8(2.4)cm、萼よりわずかに長い。種子は多数、黒色(まれに褐色)、卵形または腎形、やや不定形、長さ2.5~3(3.5)㎜、明瞭な鋭い疣状突起があり、平均乾燥重量は数に応じて約8~26mg。花期は6~8月。果期は7~9月。2n=24, 48。
多数の変種や亜種などに分類されていたがsynonymとされ、POWOでは現在では下位分類は認められていない。
【広義のAgrostemma githago L.】
1年草、高さ(10)30~100[40~60:Florece de Abril]cm。茎は直立し、長い、帯白色の毛で覆われる。葉は対生し、長さ5~13㎝×幅3~12㎜、基部は合着し、毛が生え、鋭形または下部の葉ではほぼ鈍形。花序柄(小花柄を含めて)は長さ7~23㎝、毛がある。萼筒は長さ1.5~3㎝×幅0.7~1.5(1.8)㎝、卵形または卵状長円形。萼片は長さ1.7~4.5(1.4~5:Florece de Abril, 1.2~5:OregonFlora)㎝×幅1~3(4)cm、線形、先は鋭形、長毛と短毛があり、しばしば脱落する。花弁は長さ2.5~5(0.8~1.7:Florece de Abril, 2.4~4:OregonFlora)㎝×幅1~1.5㎝、全縁または凹形、無毛。蒴果は長さ15~18㎜[12~18㎜、平滑、無毛:Acta Plantarum]×幅10~12mm、楕円形。種子は長さ2.5~3.5㎜×幅2~3㎜、黒色、ときに角張り、微細突起がある[2.5~3㎜、卵形または腎形:Acta Plantarum]。2n=24, 48。[Flora Iberica]
品種) 'Cockle Shells' , 'Milas'(='Rose Queen') , 'Milas Purple Queen' , 'Milas Snow Queen' , 'Ocean Pearl' オーシャンパール , 'Pink Pearl' , 'Queen Formula'
3-1 Agrostemma githago var. githago
高さ30~100㎝、開出する直軟毛があり、絨毛がある。葉身は長さ4~15㎝(、全縁)。花序は単生で腋生。小花柄は長さ5~20㎝。花:萼片は長さ2.5~6.2㎝、萼筒は長さ1.2~1.7㎝、(太い10脈があり、脈上に密に)開出する直軟毛がある。萼片は線形~線状披針形、長さ1.2~4.5㎝(縁に開出する直軟毛があり、面に伏せ毛がある)。花弁は赤紫色~ピンク色、まれに白色、(unspotted:図には5本の短い点線がある)、長さ1.5~4㎝、萼片の長さと同じかそれより短い。蒴果は長さ16~24㎜。種子は幅3~4㎜。2n=48(ヨーロッパ)[FNA]。
3-2 Agrostemma githago var. macrospermum (Levina) K.Hammer
synonym Agrostemma macrospermum Levina
主に南ヨーロッパで見られ、種子が大きい。
3-3 Agrostemma githago var. linicola (Terechov) K.Hammer
synonym Agrostemma linicola Terechov
ロシアの麻畑で見られる。英名はdwarf corncockle。
小型で高さ30~40㎝。Agrostemma githagoと似てるが、茎はずっと短く、葉は細く、毛が生える。花は、淡いバラ色の中心と紫色の縞模様のある、かなり大きくて目立つバラ色。種子は小さくてほぼ平滑。
3-4 Agrostemma githago subsp. thessalum (Bornm.) Greuter⇒Agrostemma brachylobum (Fenzl) K.Hammer
synonym Agrostemma gracile var. thessalum Bornm.synonym Agrostemma thessalum (Formánek) Hayek
POWOではAgrostemma brachylobumにAgrostemma gracileとともに含め、独立種としている。類似のAgrostemma gracile(graceful corncockle)は、A. githago とは、その錐形の萼片が、隆起した縁脈と中脈により背面で二溝になっていること、より短く、より密着して脆い被毛、冬季一年生植物であるため基部にロゼット葉があること、および蒴果が小さいことなどの点で区別されていた。
ギリシャ東中部の山地の固有種。英名はnarrow corncockle、slender corncockle。スウェーデンで一時的に野生化している。
萼筒の幅は果時でも中間が太くならずほぼ同じで、その脈は膜質の隙間と同じくらい広い。萼片は萼筒と同長以下で、花弁より短い。花弁はほとんどが5脈あり、広く丸みを帯びる。
1. 果時の萼は壺形(urceolate)、溝の幅は少なくとも脈と同じ。萼片は萼管より明らかに(しばしば2~3倍)長く、花弁より長く、花弁はほとんどが3脈あり、凹む。...subsp. githago
1. 果時の萼はほぼ円筒形(cylindrical)で、溝の幅は脈より狭い。萼片は最大でも萼筒と同長で、花弁より短い。花弁はほとんどが5脈あり、広く丸みを帯びる.....subsp. thessalum(⇒Agrostemma brachylobum)
ムギセンノウ属とされていた類似種
(1) Agrostemma tomentosum hort.⇒Silene coronaria (L.) Clairv. スイセンノウ
(2) Agrostemma coronaria⇒Silene coronaria (L.) Clairv. スイセンノウ
(3) Agrostemma coeli-rosa⇒Eudianthe coeli-rosa (L.) Fenzl ex Endl.Silene coeli-rosa (L.) Godron コムギセンノウ
(4) Agrostemma flos-jovis⇒Silene flos-jovis (L.) Greuter & Burdet シレネ・フロスヨウィス
(5)Agrostemma × walkeri G.F.Dicks. ex Düesbergy⇒unplaced name
synonym Agrostemma × hybridum Pépin参考
1) Flora of ChinaAgrostemma
Agrostemma
Agrostemma
Agrostemma
Agrostemma githago L.