ミズトラノオ 水虎尾

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Flora of Mikawa

シソ科 Lamiaceae ミズトラノオ属

中国名 水蜡烛 shui la zhu
別 名 ムラサキミズトラノオ
学 名 Pogostemon yatabeanus (Makino) Press
 synonym Eusteralis yatabeana (Makino) Panigrahi
 synonym Dysophylla yatabeana Makinom
ミズトラノオの花序
ミズトラノオの雄しべ
ミズトラノオの茎
ミズトラノオ
ミズトラノオ2
ミズトラノオの葉表
ミズトラノオの葉裏
花 期 8~10月
高 さ 30~50(60)㎝
生活型 多年草
生育場所 湿地、休耕田
分 布 在来種  本州、四国、九州、朝鮮、中国
撮 影 新城市  14.9.22
地下茎が横に広がり、群生する 茎は柔らかく、丸みを帯びた4稜形、先を除いて無毛。葉は3~4個、輪生し、長さ3~7㎝、幅2~5(7)㎜の線形~狭披針形、ほぼ無柄。葉縁は全縁~先に不明瞭な鋸歯。茎頂に長さ2~8㎝、幅約1.5㎝の穂状花序を1個つける。花は多数つく。苞は紫色を帯び、花冠と同長。萼は長さ1.6~2㎜、萼歯は萼の1/2長、三角形。花冠は紅紫色、萼の約2倍の長さ。雄しべは4個、長さ7~8㎜、花冠から突き出し、花糸の中部に長毛が密生する。2n=34。

ミズトラノオ属(広義のPogostemon)

 1年草又は多年草、芳香は有又は無、密毛は単純、腺が無い毛であり、又はほとんど無毛。葉は対生又は3個以上輪生し、線形~卵形、ほぼ全縁~鋸歯状縁、葉柄は有又は無。輪散花序は6個~多数の花があり、密集又は離れ、頂生の穂状花序又は総状花序につく。苞と小苞は線形~卵形、宿存する。花は小さいか又はごく小さく、白色~帯紫色。萼は筒形、鐘形、卵形、2唇形でなく又はかすかに2唇形。萼歯は5個、ほぼ等長。萼筒ののど部は無毛。花冠は2唇形又はかすかに2唇形で裂片は±等長。上唇は全縁。雄しべは4本、ほぼ等長又は前側の対が長く、真っすぐ又は傾く。花糸は中間又は基部近くに長い帯紫色の毛を普通、もち、花冠裂片から突き出す。花粉嚢は1室。花糸は先が深く2裂する。小堅果は平滑、卵形~長円形、3稜形では無い。
 Pogostemon とDysophylla(Eusteralis)は類似の属として独立と認められていた。 Pogostemonは葉が対生し、乾いた場所に普通あり、Dysophyllaは葉が3個以上輪生し、湿った場所に生える。外観では異なっている。Press (1982)は属の合体が現実的であるとの世界的な再調査に着手したときに、多くの中間体があることを示している。Keng(1977)は2つの分類群をPogostemonの節として認め、sect. Pogostemonとsect. Eusteralis (Rafin.)Keng.とした(Flora of Pakistan)。現在ではPogostemonに統合されている。
 世界に約93種あり、カメルーンからチャド、南熱帯アフリカ、熱帯・亜熱帯のアジアから北西太平洋まで広く分布する。

ミズトラノオ属(広義)の主な種

1 Pogostemon auricularius (L.) Hassk. オオネコノオ 大猫の尾
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、江西省、雲南省)、台湾、インド、スリランカ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン原産。中国名は水珍珠菜 shui zhen zhu cai。標高300~1700mの疎林の湿地、川岸に生える。
 1年草。茎は高さ0.4~2m、基部で匍匐し、節から根を張り、斜上し、先でよく分岐し、密に黄色の開出毛がある。葉柄はまれにあり、長さ1.2㎝以下で、茎上部の葉はほぼ無柄。葉身は長円形~卵状長円形、長さ2.5~7㎝×幅1.5~2.5㎝、黄色の伏剛毛があり、散在する圧痕腺(impressed glands)があり、基部は円形~浅い心形、まれに楔形、縁は鋸歯状、先は鈍形~鋭形、側脈は5対または6対あり、下面で目立つ。穂状花序は長さ6~18㎝、先は尾状尖鋭形、花時に直径約1㎝、連続または基部で途切れる。苞は卵形披針形、花冠と同長、縁には伏剛毛がある。萼は鐘形、長さ約・長さ1㎜×幅1㎜、無毛、黄色の腺がある。萼歯は広三角形、萼筒の長さの約1/4、縁には毛がある。花冠は紫白色で、萼の長さの約2.5倍で無毛。雄しべは大きく突き出し、突き出した部分にはひげがある。小堅果は褐色、ほぼ球形、直径約0.5㎜、無毛。花期は4月~11月。

2 Pogostemon cablin (Blanco) Benth. パチョリ
  synonym Mentha cablin Blanco
  synonym Pogostemon patchouly Pellet.
 スリランカ、マレーシア、フィリピン、インドネシア(ジャワ島、小スンダ島、スラウェシ島、スマトラ島)、ニューギニア原産。中国南東部、フィジー、ドイツ、海南、サモア、台湾、タイ、トンガ、トリニダード・トバゴ、ベトナムで栽培されている。中国名は广藿香 guang huo xiang 。英名はpatchouli-plant , patchouly 。葉から得られるパチョリ油(patchouly oil)の原料。精油のパチョリ油が石鹸や香水に使われる。
 多年草または亜低木、芳香がある。茎は直立し、高さ30~100㎝、綿毛がある。葉柄は長さ1~6㎝。葉身は円形~広卵形、長さ2~10.5㎝× 幅1~8.5㎝、草質、上面は濃緑色、まばらに綿毛があり、下面にも綿毛があり、基部は楔形~漸尖形、縁は不規則に切れ込み、先は鈍形~鋭形、側脈は約5対。穂状花序は長さ4~6.5㎝× 幅1.5~1.8㎝、綿毛が密に生え、頂生および腋生。輪散花序は花が10~多数つき、基部はやや緩い。花序柄は長さ0.5~2㎝。苞および小苞は線状披針形、萼よりやや短いか同じ長さで、綿毛が密にある。萼は筒形、長さ7~9㎜、外側には綿毛があり、内側には微細な綿毛があり。萼歯は錐状披針形、萼筒の長さの約1/3の長さ。花冠は紫色、長さ約1㎝、花冠裂片は外側に絨毛がある。雄しべはひげがある。花期は4月。

3 Pogostemon formosanus Oliv. ヒゲオシベ 髭雄しべ
 台湾原産。中国名は台湾刺蕊草 tai wan ci rui cao。
 亜低木、高さ1mまで。茎は分枝し、茎と枝には毛があり、無毛になる。葉柄は長さ4.5㎝以下。葉身は菱状披針形~卵形、長さ4~10㎝×幅1~5㎝、± 膜質、細かく硬毛、表側に無毛、裏側には目立たない腺毛、基部は楔形細く、縁は基部で全縁、先に向かって不規則に切れ込み、先は鋭形から短い尖鋭形、側脈は2または3対。穂状花序は長さ2~8㎝、頂生または腋生し、集散花序は花が(1~)5~8個つき、花序柄は短いかまたは無柄、集散花序は茎と枝の先端に3個つく。苞と小苞は線状披針形~線形、長さ2~3㎜、縁毛がある。花は小花柄が無またはほぼ無。萼は筒形、長さ約4㎜、膜質、外側にまばらに毛がある。萼歯は錐状披針形、、長さは均等、縁毛があり、萼筒の長さの約1/3の長さである。花冠は帯紫色、長さ約5mm、わずかに突き出る。雄しべのひげ状部分は突き出ず含まれる。小堅果は卵形。

4 Pogostemon stellatus (Lour.) Kuntze ミズネコノオ 水猫尾
  synonym Dysophylla stellata (Loureiro) Bentham [Flora of China]
 日本(本州、四国、九州)、中国、インド、ブータン、カンボジア、バングラデシュ、ラオス、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、オーストラリア原産。中国名は水虎尾 shui hu wei 。水田、小川に沿う湿った場所に生える。
 1年草。茎は直立、高さ15~40㎝、基部の直径1㎝以下、無毛、節にはときに、灰色の絨毛があり、下部の節間は短い。葉は4~8個、輪生し、線形~披針形、長さ2~7㎝×幅1.5~4(~7.5)㎜、無毛、下面は灰色、基部は漸尖し、縁は間隔の開いた細鋸歯又は全縁、反曲又は平ら、先は鋭形。穂状花序は長さ0.5~7(~9)㎝×幅4~6.5(~8)㎜、連続し、小型。苞は披針形、萼より明瞭に長い。萼は外側に密に灰色の綿毛があり、約長さ1.2㎜×幅1㎜、果時の萼は長さ1.8㎜以下。花冠は紫赤色、長さ1.8~2㎜、裂片は類等長。小堅果は褐色、倒卵形。花期と果期は通年、日本では8~10月。

5 Pogostemon yatabeanus (Makino) Press ミズトラノオ 水虎尾
  synonym Dysophylla yatabeana Makino [Flora of China]
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国原産。中国名は水蜡烛 shui la zhu 。別名はムラサキミズトラノオ
多年草、高さ30~50(60)㎝。地下茎が横に広がり、群生する 茎は柔らかく、丸みを帯びた4稜形、先を除いて無毛。葉は3~4個、輪生し、長さ3~7㎝、幅2~5(7)㎜の線形~狭披針形、ほぼ無柄。葉縁は全縁~先に不明瞭な鋸歯。茎頂に長さ2~8㎝、幅約1.5㎝の穂状花序を1個つける。花は多数つく。苞は紫色を帯び、花冠と同長。萼は長さ1.6~2㎜、萼歯は萼の1/2長、三角形。花冠は紅紫色、萼の約2倍の長さ。雄しべは4個、長さ7~8㎜、花冠から突き出し、花糸の中部に長毛が密生する。2n=34。花期は8~10月。

PogostemonとDysophyllaを別属とする場合

 Dysophyllaは一般的にはPogostemon(ポゴステモン )のsynonymとされている。Flora of Chinaでは刺蕊草属(Pogostemon)と水蜡烛属属 (Dysophylla)を分けている。

狭義のPogostemon(刺蕊草属)

 family Lamiaceae - genus Pogostemon

 草本又は亜低木。茎は中実。葉は葉柄があるか又はほぼ無柄、卵形~狭卵形、まれに線形~かま形、縁は歯状、±有毛又は綿毛がある。輪散花序は規則的又は偏側性、連続した又は間隔の開いた(途切れた)穂状花序、密穂花序、又は円錐花序になる。苞と小苞は線形~卵形。萼は卵状筒形又は鐘形、等長~ほぼ等長の5歯があり、結晶をもつ。花冠の拡大部は2唇形に近く、上唇は3裂、下唇は全縁、上唇の長さと同長~わずかに長い。雄しべは4本、突き出し、直立、分離。花糸は中間に髭がある。葯は球形、1室、先から裂開する。花柱は先が2裂、裂片は錐形、等長又はほぼ等長。小堅果は卵形~球形、扁平、平滑。
 世界に約 (40~)60種があり、アフリカ、アジアに分布する。中国に16種がある。

Dysophylla(水蜡烛属 shui la zhu shu)

 family Lamiaceae - genus Dysophylla

 草本。茎は中空。。葉は3~10個、輪生、まれに対生、無柄、線形~倒披針形、縁は全縁又は間隔の開いた歯状、普通、ほぼ無毛。輪散花序は花が多数つき、連続又は途切れた頂生の穂状花序になる。苞は花の長さよりわずかに短い。花柄は無い。萼は鐘形、外側は有毛、内側は無毛、短い5萼歯があり、普通、結晶はもたない。花冠は突き出し、筒部は先で次第に幅広くなり、拡大部は4裂。花冠裂片はほぼ等長、後ろ側の裂片は全縁又は凹形。雄しべは4本。花糸は長く、ほぼ等長、真っすぐ、ひげがある。葯は類球形、1室。花柱は雄しべとほぼ同長、先は2裂し、裂片は等長、錐形。花盤は輪状、類全縁。小堅果は類球形、平滑。
 世界に約27種があり、アジア(主にインド)に分布し、オーストラリアに1種分布する。中国には7種ある。

参考

1) Flora of Pakistan
 Pogostemon
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=5&taxon_id=126277
2) Flora of China
 Pogostemon
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=126277
 Dysophylla
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=111134
3) GRIN
 Pogostemon
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=9662
4) Plants of the World Online | Kew Science
 Pogostemon
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:326037-2