和名は木曽川の支流の味噌川に由来する。茎には4稜があり、直立し、分枝しない。葉は対生し、長さ6～14㎝の卵形～広披針形、縁には鋸歯がある。葉裏には腺点が密生する。茎の上部の葉腋の上に青紫色～紫色の唇形花を多数つける。花冠は長さ25～30㎜、下唇は3裂し、中央の裂片は白色、長く、紫色の斑点がある。萼は筒状、多数の縦脈があり、先は5裂して尖る。2n=18。

イヌハッカ属

　 family Lamiaceae － genus Nepeta

　亜低木又は多年草、又は1年草、普通、芳香があり、たまに、雌花両性花同株(gynomonoecious)又は雌花両性花異株(gynodioecious)。穂状花序状の輪散花序又は対生の集散花序からなる総状花序～円錐花序。花序の葉(floral leaves)は苞状。苞は狭く、花の長さより短又は長。萼は(13～)15(～17)脈があり、筒状～鐘形、わずかに曲がるか真っすぐ、のど部は斜めか又は真っすぐ、拡大部は2唇形又は2唇形では無い。萼歯は5個、等長又は不等長、錐形又は狭披針形～長円状三角形、先は尖鋭形～刺のある尖鋭形。花冠は2唇形。花冠筒部は基部が狭く、±急に広がり、のど部は十分広くなる。上唇は±平ら～凹面、2裂又は凹形。下唇は大きく、3裂し、中裂片は大きく、凹面又は ±平ら、縁は波打つか又は歯がある。側裂片は小さく、真っすぐ又は後屈し、卵形～半円形。雄しべは4本、平行に近く、無毛、花冠の上唇の下で斜上し、後ろ側の2本は前側の2本より長く、突き出ないか又は突き出し、稔性。雌花の雄しべは 未発達、突き出ない。葯室は2個、楕円形、散開し、先は合流しない。花柱は突き出し先はほぼ等しく2裂する。小堅果は長円状卵形、楕円形、卵形、又は倒卵形、内側にわずかにうねがあり、平滑又はいぼがある。英名はcatmint。
　世界に約250種があり、温帯のアジア、北アフリカ、ヨーロッパに分布し、地中海沿岸地域と南西アジア、中央アジアに多い。

イヌハッカ属の主な種と園芸品種

1 Nepeta cataria L.　イヌハッカ　犬薄荷
　中国、アフガニスタン、アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は荆芥 jing jie。別名はキャットニップ、チクマハッカ、西洋マタタビ。帰化したものが長野県筑摩郡で発見されたためチクマハッカと呼ばれ、猫にマタタビと同じような作用があるため、西洋マタタビとも呼ばれる。ハーブティーとしても利用される。
　多年草、茎は高さ40～150㎝、毛がある。葉柄は長さ0.73㎝、細い。葉身は卵形～三角状心形、長さ2.5～7㎝ ×幅2.1～4.7㎝、上面は黄緑色、微細剛毛があり、下面は帯白色の毛があり、とくに脈上にあり、基部は心形～切形、縁は粗い円鋸歯～歯があり、先は鈍形～鋭形。集散花序は基部に腋生、上部の集散花序は緩く、小型、間隔の開いた頂生の円錐花序。苞と小苞は錐形、小さい。萼は筒状、約・長さ6mm×幅1.2mm、白色の毛がある。萼歯は内側に粗毛があり、錐形、長さ1.5～2㎜、後ろ側の歯は長く、果時につぼ形になる。花冠は白色、咲いた唇の上に紫色の斑点があり、白色の絨毛がある。のど部は内側に毛があり、長さ約7.5㎜。花冠筒部は細く、直径約0.3㎜、急に広がり、広いのど部になる。上唇は約・長さ2mm×幅3mm、先は凹形。下唇の中裂片はほぼ円形、約・長さ3㎜×幅4㎜, 心形、縁は粗い歯がある。雄しべは突き出ない。小堅果は三稜形に近い卵形、約・長さ1.7mm×幅1㎜。花期は7～9月。果期は9～10月。
品種)　'Citriodora' , 'Lemon' , 'Lemony'

2 Nepeta cyanea Steven　ネプタ・キアネア　広義
　コーカサス(ロシア、アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア)原産。

2-1 Nepeta cyanea subsp. biebersteiniana (Trautv.) A.L.Budantzev　ネプタ・ビエベルステイニアナ

　　synonym　Nepeta biebersteiniana (Trautv.) Pojark.
　　synonym　Nepeta cyanea var. biebersteiniana Trautv.
　北コーカサス(ロシア)原産。標高150～2000mの開けた砂利と岩の多い斜面、山岳草原に生える。 　多年草。茎は強く分岐し、全体が灰色がかった、または帯白色、密に短い毛がある。根は木質、繊維質、捻じれ、太さ2㎝まで、分岐する。茎は高さ20～50㎝、太さ1.5～3㎜、非常に短い巻き毛の伏毛があり(ときに上部にわずかに隙間がある)、短い長さ1.3～3.3(4)㎝の節間の多数(最大 20)の枝が基部にあり、腋生の枝は脱落性、すべて花がつき、おそらく枝分かれし、アーチ状になり、下部の枝は長く、多くの場合茎と同長であり、残りは茎の上部に近づくにつれて長くなり、徐々に短くなり、これにより腋生の枝の上部が茎から同じ距離になる。葉は両面に帯黄色または帯灰色の非常に短い毛のほぼフェルト状の毛があり、下面ではかなり密にあり、黄色の腺点があり、通常は上面で埋め込まれ、下面に突き出る脈があり、しわがある。茎葉は長さ9～30(40)mm。幅は6～25(35)mmで、長円形、卵状長円形、または披針形、先は鈍形または尖鋭形、基部はくさび形またはたまに切形、縁に小さな伏した歯がある。葉柄は下部の葉では葉身の長さの1/1.5～1/2.5、上部の葉の葉柄は葉身の1/3.5と短くなる。腋生の枝の葉はより小さく、しばしば狭い。苞葉は下部のものは上部の茎葉と似ており、より上部の苞葉は小さく、尖り、全縁、上部のもの(半散形花序を覆う葉)は小苞状である。最上部を除くほとんどすべての苞は花序柄より長い。仮輪は3～9個の花がついた半散形花序であり、茎頂と枝腋につき、まばらな、総状花序または円錐花序になる。花序柄は長さ0.3～1.5㎝(上部)から長さ1.5～2.5㎝まで、ほとんどは半散形花序の枝が1～2回分岐し、ほとんどが1次の軸を持つ。苞は卵状披針形または披針形、長さ1.5～2.5㎜、先は尖る。萼は長さ8～11㎜、帯白色または淡緑色、開出する毛が密集に生え、短毛が生えていることは少ないが、無柄または短柄の帯白色の腺があり、歯は細くなって長くとげのない尖った先端になっており、上側の2歯は長さ3㎜、萼筒の長さの1/1.5～1/2、下側の2個は最も短く、長さ0.8～1(2)mm。花冠は長さ10～13㎜、帯白色～薄青白色、下唇は上面に紫赤色の斑点があり、花冠筒部は短くてふわふわしていて、ほぼ曲がり角まで萼に囲まれている。筒部の拡大部は急激に拡張され、長さ2.2～2.7㎜、幅2.7～3.5㎜の倒円錐形の首になる。上唇は長さ2.8～3mm、2裂し、鈍形の裂片が直立する。下唇は3裂し、中裂片は大きく、長さ2.5～3.5㎜×幅3.5～5.5㎜。側裂片は広三角形、長さ0.6～1.2㎜、幅1.8～2.7 mm、中裂片と同様に幅1.8～2.7㎜、紫赤色の斑点がある。小堅果は楕円形の倒卵形、褐色、長さ2.2～2.5㎜×幅1～1.2㎜、腹側が凸状になるが肋はなく、非常に細かく (ほぼ点状の) 平らな疣状突起がある。
2-2 Nepeta cyanea subsp. cyanea　ネプタ・キアネア
　　synonym　Nepeta kubanica Pojark.
　コーカサス(ロシア、アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア)原産。英名はLarge-flowered catmint, blue-flowered catmint。標高1250～3300(4200)mの岩場やガレ場に生える。別名はネプタ・クバニカ。
　多年草、高さ50～100㎝。茎は帯灰色または緑色、木質で暗褐色のひげ根を持つ。茎は高さ20～50㎝。下部の太さは2～4㎜、下部には密に毛があり、短い伏毛があり、上部には通常、長い突き出た毛があり、花序の下はしばしばふわふわの毛むくじゃらで、分枝またはしばしばではないが、単純で、中間の節間は長さ6～8㎜以下。枝は分枝せず(まれに葉腋に未熟な小枝がある)、上向きに突き出し、ほとんどの場合すべて短く、下部の枝は不稔で、上部の枝には花序で終わるが、それほど多くはないが、長い花序柄がある。葉は緑色、両面に密に、まれに密またはまばらに伏毛の粗い毛があり、または下部に半突き出た毛があり、さらに下部にしばしば、まばらに黄色の腺点があり、ほとんどの場合しわはないが、まれにわずかにしわがある。茎葉は広卵形～長円形～披針形、長さ2～4.5㎝×幅は0.8～2.5㎝、基部は切形またはくさび形、先は鈍形または鋭形、縁に明瞭な鋭いまたは鈍い歯がある。葉柄は下部の葉では短く、葉身の長さの1/2～1/3、上部の葉では1/6～1/8まで短くなる。下部の苞葉は上部の茎の苞葉と同形、上部の苞は長く尖り、全縁、無柄。半散形花序の苞は線状錐形。花序は茎頂と枝腋につき、狭いピラミッド形または円筒形の円錐花序になり、その上部は非常に密で、ほとんど穂状花序状で、半輪生または半散形に集まった数対から構成され、2～4対(茎の)または1～2対(枝の)の下部の花序は離れた半散形花序になり、長さ0.6～2㎝の短い花序柄をもつ。半散形花序は複合で密、外観は半輪生に似ている。花序軸と花序は短い。苞葉(прицв)は線形またはほぼ糸状、長さは2～3㎜。萼(чшч)は暗紫色、長さ9～12㎜、綿毛または綿毛状の毛むくじゃらの毛が突き出し、淡色または下部が白色の長い6～10個の細胞の毛があり、短柄と無柄の帯白色の腺があり、非常に強く曲がり、上側の歯は狭い披針形で長く尖り、長さ2.8～4.2㎜、花冠の上唇の基部に達し、萼筒の長さの1/2～1/2.5で、広い基部から中央の歯と下側の歯は鋭く狭まって長く前方に曲がった尖った先端になっており、中央の歯は上側の歯よりわずかに0.3～0.7mm短く、下側の2歯は短く、1/1.5以下に短くなる。花冠は紫青色、長さ(12.5)13～15㎜、萼に包まれて曲がり、首が広く、長さ2.3～2.5㎜×幅3.5～4㎜。上唇は長さ3～3.5㎜、中間～2/3まで切り裂かれ、鈍く上向きに広がった裂片は幅2.1～2.4㎜。下唇は中裂片が幅が広く、長さ3～4㎜×幅5～6㎜、側裂片はほぼ円形～三角形、長さ1.8～2㎜×幅2.5㎜。上側の雄しべ(тыч.)は明瞭に花冠の上唇よりも1～1.5㎜短い。小堅果は長さ2.2～2.4㎜×幅1.1～1.2㎜の楕円形、熟すと褐黒色、両面に平らでかなり大きい丸い不規則な形の乳頭状突起がある。花期は夏。
　品種の'Bokratune'が広く栽培されている。
品種)　Neptune®= 'Bokratune'

3 Nepeta grandiflora M.Bieb.　ネプタ・グランディフロラ
　ヨーロッパ東部、ロシア原産。
　常緑多年草、高さ40～80㎝。単純または枝分かれしており、上部にだけ短毛があり、不快な臭いがする。葉は長楕円形～披針形、長さ1～4㎝、縁に鋸歯～深い鋸歯があり、灰緑色～緑色、先は円形。花序は枝別れの多い、穂状花序。半輪生に3～20個の花がつく。花序柄は長さ0.5～2.5cm。花は唇形、桃色～青紫色、または白色、偏側生、長さ10～12㎜。小花柄は長さ3～15㎜。下部の花の萼は長さ4～7㎜。下側の萼歯は長さ1～4㎜で、上側の3歯よりも長い。2n=20。花期は春～初夏。 品種)　'Blue Danube' , 'Blue Elf' , 'Border Ballet' , 'Bramdean' , 'Dawn to Dusk' , 'Pool Bank' , 'Summer Magic' , 'Wild Cat' , 'Zinser's Giant'

4 Nepeta latifolia DC.　ネプタ・ラティフォリア
　　synonym　Nepeta grandiflora Lapeyr.

　　synonym　Nepeta nuda subsp. latifolia (DC.) O.Bolòs & Vigo

　フランス、スペイン原産。英名はbroad-leaved catmint。標高900～1900mのピレネー山脈の中央部と東部の両方の斜面に生える。
　多年草、雌雄同体(hermaphrodite)、+水平根茎を持ち、塊根はない。茎は長さ35～79(120)cm、中空(fistulous)、長さ0.2～1.2㎜の多数の腺毛と長さ0.1～0.5㎜の小さな保護毛(tector hairs)が散在し、±開出する。葉は長さ5.5～8.4㎝×幅2.4～4.2㎝、卵形、基部は心形、縁には鋸歯があり、先は鈍形、両面に毛が散在し、帯緑色。葉柄は長さ0.2～0.6㎝、保護毛と腺毛が散在し、開出する。中間と上部の葉は無柄、一般に先は鋭形。花序はわずかに分枝し、無柄の球状の腺がある。輪散花序は長さ9.5～26.2㎜、花序柄は長さ3.3～5.5㎜、少なくとも下部では離れている。苞は長さ10～32㎜×幅5.7～16.3㎜、長さ0.7～1.5㎜の柄があり、下部の苞は葉状、上部の苞はほぼ披針形、縁に±鋸歯があり、草質、帯緑色。小苞は長さ2.6～3.6㎜×幅0.4～0.6㎜、線状披針形、萼より短く、小苞の長さ/萼の長さ・比は0.44～0.65、1脈があり、草質、帯緑色、青みがかった縁を持ち、外側には毛がある。雌雄同体の花(両性花)。萼は長さ5～6.3㎜×幅1.2～2.2㎜、放射相称、萼筒は真っすぐ、萼歯は披針形、ほぼ均等、上側の歯は長さ1.6～2.6㎜、下側の歯は長さ1.3～1.9㎜、萼筒より短く、上側の歯長/筒長・比は0.45～0.83 、長さ0.2～1.2㎜の腺毛が多数あり、小さな長さ0.1～0.3㎜の保護毛があり、±開出する。花冠は長さ9.1～12.4㎜、腺毛は長さ0.2～0.9㎜、保護毛は0.1～0.6㎜、外面に±開出し、帯白色または薄青色。花冠筒部は長さ6.7～9.8㎜、萼より長く、花冠筒長／萼長・比は1.2～1.6。雄しべは花糸が長さ2.2～3.9㎜、上側の花糸は下側の花糸の上部に挿入され、無毛、帯白色。葯は長さ0.4～0.6㎜、紫色。花柱は長さ8.5～12.6㎜、帯白色。柱頭は長さ0.3～0.5㎜。小堅果は長さ1.7～2.2㎜×幅1.1～1.2㎜、±いぼ状突起があり、わずかに目立つ隆起があり、頂点に向かって非常に短い毛があり、暗褐色。n=18。花期は7～9月。
品種)　'Super Cat'

5 Nepeta manchuriensis S.Moore　チョウセンミソガワソウ　朝鮮味噌川草

　　synonym　Nepeta stewartiana Diels
　　synonym　Nepeta koreana Nakai
　朝鮮、中国(黒龍江省)、ロシア原産。中国名は黑龙江荆芥 hei long jiang jing jie。川岸の砂利質土壌に広がる混合林に生える。Flora of Chinaでは日本が分布域に含まれる。
　多年草。茎は高さ1mまで、直径4～5㎜まで、堅く、直立し、基部は暗紫色で、ほぼ無毛またはまばらに短い単毛があり、先に密に細柔毛(pilose)があり、微細な腺毛がある。葉柄は長さ3～5㎜、葉身は披針形、長さ15㎝×幅3.5～4(～7)㎝・まで、薄く、乾くと紙のような質感になり、上面は暗緑色、無毛またはまばらに単毛があり、下面は緑灰色、まばらに細柔毛(pilose)があり、密に黄色の腺毛あり、基部は円形～楔形またはまれに鈍形、縁は鋸歯状で、上部の葉では全縁、先は尖鋭形または鋭形。輪散葉序は4～7個つき、長さ2～6(～9)cmの穂状花序を形成する。花序柄は長さ0.4～3cm。苞は狭披針形、長さ4～7㎜。小花柄は長さ1.5cmまで。萼片は長さ8.5～9.5mm、細かい腺が密生する。萼歯は披針形、先は尖鋭、後側の萼歯は筒部の長さの約2/5で、前側の萼歯は筒部より長い。花冠は長さ1.7～2㎝、短い腺毛が密生し、花冠筒部の最も狭い部分は長さの1/3まで突出し、徐々に広がって幅5～7㎜×幅5～7㎜の広い喉部になる。上唇は長さ2.5～3.5㎜、中裂片は腎形、長さ3～4㎜×幅7～7.5㎜、先は広く凹形、側裂片は三角形、長さ2～2.2㎜×幅2.8～3㎜。小堅果は褐色、楕円形～倒卵形、長さ2.5～2.6㎜×幅1～1.2㎜、外側に不明瞭な肋がある。花期は6～7月。果期は8月。
品種)　'Manchu Blue'

6 Nepeta nepetella L.　ネペタ・ネペテッラ
　アルジェリア、フランス、イタリア、モロッコ、スペイン原産。英名はnepetella , lesser cat-mint。
　多年草、高さ20～98cm、雌雄同体、根茎は±垂直、塊根はない。茎は中実、長さ0.1～2.5㎜の開出毛または鉤状毛があり、ときに長さ約0.2㎜の腺毛を伴う。 葉は長さ1～5.2幅(0.3)0.7～1.2(2.1)㎝、披針形～三角形、基部はくさび形、切形、または心形、縁はわずかに円鋸歯～深い歯があり、先は鋭形～鈍形、両面は帯白色～帯緑色。葉柄は長さ0.2～2㎝、毛があり、ほぼ開出する。上部の葉はやや小さく、葉柄は非常に短い。花序は分枝し、無茎の楕円形の腺がある。輪散花序は長さ8.1～28.5mm、花序柄は長さ2.4～26.7㎜、少なくとも下部では離れる。苞は長さ3.7～22.8㎜×幅0.9～9.5mm、長さ0.3～2.2㎜の柄をもち、下部の苞はは葉に似ており、上部の苞は±披針形、全縁または歯があり、草質、帯緑色。小苞は長さ1.3～3.7㎜×幅0.3～0.9㎜、線形～披針形、1脈があり、草質、帯緑色、少なくとも下面に毛があり、萼より短い。小苞の長さ/萼の長さの比は= 0.21～0.49。両性花は萼が長さ3.3～9.2㎜×幅1～2.4mm、左右相称、萼筒が曲がり、、豊富な長さ0.1～1.7mmの毛があり、±開出する。萼歯は披針形、ほぼ等長、上側の歯は長さ1～2.7mm、下側の歯は長さ0.8～2.5mm、外側の咢筒よりも短く、上側の歯の長さ/咢筒の長さ= 0.17～0.56。花冠は長さ8～15.4㎜、帯白色、ピンク色または帯青色、一般的にピンク色または紫色の斑点があり、長さ0.2～1.2㎜の毛が密に、±開出する。花冠筒部は長さ6.6～11.8㎜、萼より少し短いものからはるかに長いものまである。花冠筒部の長さ/萼の長さ= 0.9～1.9。雄しべは花糸が長さ1.8～4.6㎜。花糸は花冠筒部のほぼ同じ高さに生じ、無毛又は帯白色または帯青色の毛が散在する。葯は長さ0.3～0.8㎜、暗青色。花柱は長さ7～14.2mm、帯青色。柱頭は長さ0.2～0.9mm。小堅果は長さ1.7～2.6㎜×幅0.7～1.7㎜、±いぼ状突起があり、形状と密度が非常に変化し、無毛または先端にごく短い毛があり、黒色。2n=34(n=17)。[Flora Iberica]

7 Nepeta nervosa Royle ex Benth.　ネペタ・ネルボーサ
　パキスタン、カシミール、インド北西部原産。英名はNerved Catmint , prominently-veined catmint/RHS Gardening。
　多年草。茎は直立し、高さ30～60㎝、4稜形、分枝はしないか又はほとんど無、 無毛又はごく短い毛があり、腺毛はない。葉は線状披針形～線状楕円形、長さ80mm×幅10㎜・以下、質は硬く、上面は無毛、下面は無毛で直軟毛が散在するか、又は密に毛があり、いくつかの無柄の小油球をもつ。葉の縁は全縁～細かい小鋸歯があり、葉先は切形～鋭形、葉の下面の脈は明瞭。葉柄は無いか、長さ約3mm以下。花序は短いか又は長い密集した穂状花序、長さ20～70mmx幅15～25㎜。外側の苞は広卵形で尖鋭形、普通、帯紫色。内側の苞は線形、縁毛があり、萼の長さと同長。花柄はほぼ無い。萼は質が薄く、長さ6～10mm、狭倒三角形、腺の無い直軟毛～絨毛があり、又はパピラ状の腺があり、少数の無柄の油小球(oil globules)をもち、のど部はわずかに斜め、歯は線状錐形、萼筒より短いか同長。花冠は青色、濃藤色、又は黄色(var. lutea Hook. f.)、 長さ12～15mm、花冠筒部は曲がり、やや萼から突き出す。熟した小堅果は見られないが、未熟なものは褐色で、顆粒状のいぼ状突起がある[Flora of Pakistan]。花期は6～8(10)月。
品種)　'Blue Carpet' , 'Blue Moon'ブルームーン , 'Forncett Select' , 'Nevita White' , 'Pink Cat' , 'Schneehäschen'
7-1 Nepeta nervosa var. lutea J. D. Hooker
　中国(西蔵)、インド、パキスタン原産。中国名は黄花具脉荆芥 huang hua ju mai jing jie。草原に生える。
　多年草。茎は直立又は斜上し、高さ30～60㎝。葉は無柄又は短柄があり、線状披針形、さ5～10㎝×幅0.8～1.7㎝、緑色又は下面に灰色の毛があり、基部は円形～心形、縁は鋸歯縁、先は尖鋭形。穂状花序は円筒形、強健、長さ2.5～7.5㎝。苞は萼より長く、卵形～披針形、先は小突起があり、縁毛がある。花は無柄。萼は長さ約6mm、のど部は類切形、萼歯は錐状尖鋭形、萼筒と同長、まばらに絨毛がある。花冠は黄色、長さは萼の長さの約2倍。(標本は見られない)。

8 Nepeta nuda L.　ネペタ・ヌーダ
　　synonym　Nepeta pannonica L.
　中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ヨーロッパ原産。中国名は直齿荆芥 zhi chi jing jie。英名は hairless catmint , catnip
　多年草、茎は直立、高さ50～120㎝、直径3～5mm、堅い。葉柄は長さ0～10mm。葉身は長円状卵形～長円状楕円形～披針形、長さ3.8～6.5㎝×幅1.8～2.5㎝、上面は帯緑色、まばらに微軟毛があるか、ほぼ無毛、下面は淡色、毛があり、基部は切形又は浅い心形、縁は円鋸歯又は鋸歯、先は鈍形～鋭形～尖鋭形。集散花序は多数、腋生、花が多数つき、頂生の円錐花序になり、長さ3～8.5㎝×幅約2.5㎝。苞と小苞は線形、長さ1.5～2.5mm。花柄は長さ0.3～0.5mm。萼は筒状、長さ3～4mm×幅1～1.2mm、毛があり、内側に腺のある微軟毛がある。萼歯はほぼ等長、錐形、長さ1.1～1.3mm、縁は狭く膜質。花冠は帯紫色、長さ5.5～8.5mm、まばらに毛がある。花冠筒部は基部の幅約0.9mm、急にのど部で広がり、長さ1.5～2mm ×幅約2.5mm。上唇は真っすぐ、長さ1.8～2mm、深く2裂し、裂片は卵形。下唇は広がり、長さ4～6mm、下唇の中裂片は広卵状心形、縁はわずかに波打ち、先は凹形。小堅果は褐色、長円形、約・長さ1.6mm×幅1.1mm、内側にうねがあり、無毛、先には微細ないぼ状突起があり、まばらに毛がある。花期は7～9月。果期は8～10月。
品種)　'Accent' , 'Alba' , 'Anne's Choice' , 'Grandiflora' , 'Isis' , 'Lake Sevan' , 'Nacre' , 'Purple Cat' , 'Romany Dusk' , 'Snow Cat' , 'Two Tone'

9 Nepeta racemosa Lam.　キャットミント
　　synonym　Nepeta mussinii Henckel [Persian Cat Mint]
　　synonym　Nepeta transcaucasica Grossh
　トルコ、イラン、アルメニア、アゼルバイジャン原産。英名はcatmint , dwarf catnip , raceme catnip , racemed catnip , Persian catmint , Mussin's catmint。別名はネペタ・ラセモーサ。野生の観賞用植物であり、荒野地域、牧草地に生える。
　多年草、高さ25～50(～75)㎝。茎は平伏～斜上し、枝分かれし、灰色の毛が密生する。葉は対生し、葉柄が短く、葉身は15～35㎜、楕円形～卵形、基部は心形、縁には鈍鋸歯～円鋸歯があり、葉の表面にしわが多く、両面に毛が多い。イヌハッカ catmintのように猫に誘引性があるが、弱い。やや集散花序的な輪散花序に花を多数つける。花は青色～青紫色、長さ9～15㎜の唇形。花期は(4)6～8月。[Flora Helvetica]
品種)　'Alba , 'Amelia' , 'Blauknirps' , 'Blue Ice' , 'Blue Infinity' , 'Blue Wonder' , 'Felix' , 'Grog' , 'Karen's Blue' , 'Leporello' (v) , 'Little Titch' , 'Odeur Citron' , 'Senior' , 'Six Hills Gold' , 'Superba' , 'Toria' , 'Walker's Low' , 'White Wonder'

10 Nepeta sibirica L.　ネペタ・シビリカ
　中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は大花荆芥 da hua jing jie。英名はsiberian catmint flower。
　多年草。茎は多数、高さ約40㎝、微軟毛があり、腺がある。葉柄は長さ3～7mm、根生葉の葉柄は長さ1.5～1.7㎝。葉身は三角状長円形～三角状披針形、長さ3.4～9㎝×幅1.2～2.2㎝、上面にまばらに微軟毛があり、下面に密に黄色の腺があり、脈に毛があり、基部は浅い心形、縁は小歯があり、先は鋭形。輪散花序は緩く、茎の上部につき、長さ9～15㎝。花序柄は長さ5～8㎜。苞は線形、長さ2.5～3㎜、毛があり、縁毛がある。花柄は長さ約1㎜。萼は長さ9～10㎜、密に腺毛があり、のど部は強く斜め、歯はその長さの1/3～1/2が結合し、披針状三角形、先は尖鋭形。下唇の歯は基部まで分かれ、長く、狭く、先は鋭形。花冠は青色～帯青色、長さ2～2.9㎝、まばらに毛があり、花冠筒部は真っすぐに近く、狭く、急に広がり、のど部になり、約・長さ6㎜×幅6㎜。上唇の裂片は上唇の長さの約1/2、楕円形、先は鈍形。下唇の中裂片は腎形、深く切れ込み、縁は粗い円鋸歯、側裂片は卵形～卵状三角形。小堅果は知られていない。花期は8～9月。
品種)　'Altai' , 'Souvenir d'Andre Chaudron'

11 Nepeta subsessilis Maxim.　 ミソガワソウ　味噌川草
　　synonym　Nepeta subsessilis Maxim. var. yesoensis Franch. et Sav.
　　synonym　Nepeta yesoensis (Franch. et Sav.) Probat.
　日本固有種(北海道、本州、四国)。亜高山～高山の草地、河原に生える。
　多年草、50～100㎝。茎には4稜があり、直立し、分枝しない。葉は対生し、長さ6～14㎝の卵形～広披針形、縁には鋸歯がある。葉裏には腺点が密生する。茎の上部の葉腋の上に青紫色～紫色の唇形花を多数つける。花冠は長さ25～30㎜、下唇は3裂し、中央の裂片は白色、長く、紫色の斑点がある。萼は筒状、多数の縦脈があり、先は5裂して尖る。2n=18。花期は7～8月。
品種)　'Blue Dreams'ブルードリーム , 'Blue Panther' , 'Candy Cat' , 'Cool Cat' , 'Grandview Mix' , 'Laufen' , Nimbus ('Yanim') , 'Pink Dreams' , 'Pink Panther' , 'Sweet Dreams' , 'Washfield' , 'Yanim'

11-1 Nepeta subsessilis Maxim. f. albiflora Tatew.　シロバナエゾミソガワソウ　白花蝦夷味噌川草

　白花品種。

12 Nepeta x faassenii Bergmans ex Stearn　ネペタ・ファーセニー
　栽培品種。英名はblue catmint , Faassen's Catmint , nepeta 。別名はブルーキャットミント
　Nepeta racemosa と Nepeta nepetellaの人工交雑種。
　多年草、群落を形生し、通常、傾伏～斜上、直立し、高さ45～60㎝。葉や花に芳香がある。葉は対生し、楕円形、灰緑色、先は鈍形、縁に鈍鋸歯～円鋸歯があり、網状脈が上面で窪み、しわ状になる。花は穂状花序に多数つき、2唇形、トランペット形、柔らかいラベンダー色。花期は春～秋。種子は不稔、できない。 品種)　'Alba' , 'Angel's Wings' , 'Balpurrlu' , 'Blauknirps' , 'Blue Ice' , 'Blue Wonder' , 'Cats Meow'PBR , 'Crystal Cloud' , 'Dawn to Dusk' , 'Dropmore' , 'Felix' , 'Gletschereis' , 'Junior Walker' ('Novanepjun'PBR) , 'Kit Cat' , 'Kitten Around' , 'Lavender Blue' , 'Limelight' , 'Novanepjun'PBR , 'Purrsian Blue' (Catmint) , 'Pool Bank' , 'Purrsian Blue' , 'Select' , 'Select Blue' , 'Senior' , 'Six Hills Giant' , 'Snowflake' , 'Snowflake' , 'Superba' , 'Walker's Low' , Whispurr Blue ('Balpurrlu') (Whispurr Series) , Whispurr™ Pink


13 その他ハイブリッド
品種)　'Ani' , 'Balneplud' , 'Bide-a-Wee Variegated' (v) , 'Blue Danube' , 'Blue Dragon' , 'Blue Lagoon' , 'Blue Panther' , Blue Prelude ('Balneplud') , 'Bokratune' , Cat's Meow , 'Cat's Pajamas' , CC6870 , 'Chettle Blue' , 'Cool Cat' , 'Dropmore' , 'Dropmore Blue' , 'Early Bird' , 'Florina' , 'Gottfried Kühn' , 'Happy Days' , 'Harrogate' , Helderblauw 1 , Helderblauw 2 , 'Hill Grounds' , 'Joanna Reed' , 'Lamendi' , 'Leeds Castle' , 'Lilac Cloud' , 'Limelight' , Little Trudy ('Psfike') , 'Maurice' , Neptune ('Bokratune') , 'Pink Candy' ピンクキャンディ, 'Pink Dawn' , 'Pink Panther' , 'Pink Pixie' , 'Pool Bank' , 'Porzellan' , 'Poseidon' , 'Prattii' , 'Psfike' , 'Purple Blotch' , 'Purple Cat' , 'Purple Haze' , 'Purrsian Blue'PBR , 'Rae Crug' , 'Rotherbridge Blue' , 'Six Hills Giant' , 'Six Hills Gold' (v) , 'Thornbury' , 'Valerie Finnis' , 'Veluw's Blauwtje' , 'Veluwse Wakel' , 'Walker's Deep Blue' , 'Weinheim Big Blue' , 'Weinheim Summer Blues' , 'Wild Cat'

参考

1) Flora of China
　Nepeta 2) Flora of Pakistan
　Nepeta 3) Plants of the World Online | Kew Science
　Nepeta 4) World Flora Online
　Nepeta 5) List of species records in GRIN
　Nepeta 6) Flora of the USSR, v. 20,p.353-354
　Nepeta cyanea Steven 7) Flora of the USSR, v. 20, p.357-358
　Nepeta biebersteiniana (Trautv.) Pojark.