ミミカキグサ 耳掻草

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Flora of Mikawa

タヌキモ科 Lentibulariaceae タヌキモ属

中国名 挖耳草 wa er cao
英 名 bladderwort, common yellow bladderwort
学 名 Utricularia bifida L.
ミミカキグサの花序
ミミカキグサの花
ミミカキグサの花
ミミカキグサの花2
ミミカキグサ
ミミカキグサ2
花 期 8~10月
高 さ 5~15㎝
生活型 1年草
生育場所 湿地
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、インド、ネパール、スリランカ、カンボジア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア、グアム、オーストラリア
撮 影 黒河湿地  01.9.29
和名の由来は花後の萼が耳掻きに似ていることから。湿地に生える小さな食虫植物。捕虫嚢は約1㎜と小さく、地下茎などについて泥中にあり、微生物を捕食する。
 細い白色の地下茎を泥中に伸ばし、水深のあるところではところどころに線形の水中葉をつける。水深がないと気中葉を泥上に出す。気中葉は長さ5~8㎜でやや幅が広い。水上に出した花茎の上部に幅3~5㎜の黄色い2唇形の花を数個つける。上唇は小さく、先が浅く2裂し、下唇は大きく、中央に膨らみがある。距は下向きにつき、先が尖る。萼片や花柄は橙色を帯びる。花後に萼が大きくなり、果実は萼に包まれて扁平になり、耳掻きのような形になる。

タヌキモ属

  family Lentibulariaceae - genus Utricularia

 多年草または1年草、陸生、着生、または水生、真の根は無い。茎は仮根(rhizoids)と匍匐茎(stolons)に変わり、まれにしか発達しない。仮根、匍匐茎、および/または葉の上のトラップ(捕虫嚢 bladder)は小さく、嚢状(bladderlike)。嚢には口部があり、付属体がつき、内面と外面に腺があり、内面につく腺(内腺:internal glands=bladders glands)が種の電子顕微鏡的な判別に使われる。葉は互生し、または根生のロゼットにつき、単葉~多数、分裂し、脈は1~3本、不分枝、二又分枝、または羽状分枝する。花序は総状花序または花が単生し、花序柄があり、普通、単純で、めったに分枝せず、直立~絡みつき、苞がある。苞と小苞がしばしばあり、鱗片状で、ときに中部着生(basisolute:挿入点より下に基部が伸びている)。萼片は基部から深裂し、2つの等しいまたは等しくない裂片に分かれ、裂片葉はときに先で2深裂する。花冠の下唇は上唇よりも大きい。下唇は全縁または2または3(~6)裂し、距があり、口蓋(palate)がさまざまに隆起する。上唇は全縁または2または3裂する。葯の半葯(thecae)は合流するか(confluent)または分離。蒴果は内側が胞背裂開、外側および内側の両方で胞背裂開、または横周裂開(circumscissile)、まれに非裂開。種子は各蒴果に少数、多数、まれに1個、様々な付属体がある。英名はbladderwort。浮遊性の水生植物タヌキモ類は種子による有性繁殖に加えて、植物体の断片(切れ藻)やシュートの先端に形成される未展開の葉の集まり(殖芽)による栄養繁殖を行う。
 世界に約220種あり、全世界に分布するが、主に熱帯地域にあり、温帯地域北部にもいくつかある。

タヌキモ属の主な種と園芸品種

1 Utricularia alpina Jacq. ウトリクラリア・アルピナ
 ブラジル、コロンビア、ガイアナ、ジャマイカ、リーワード諸島、スリナム、トリニダード・トバゴ、ベネズエラ、ウィンドワード諸島原産。熱帯の高山地帯の樹幹上や岩の上に生える着生植物。
 着生の多年草。匍匐茎は糸状またはわずかに肉質、花序の基部から放射状に広がり、それらのいくつかは起点またはその近くで膨れ、長さ1.5~2.0㎝の楕円形の塊茎を形成する。光合成器官は葉状で、花序の基部から1~2個、全長は6~25㎝。葉身は狭倒卵状楕円形または楕円形、先は鈍形~ほぼ鋭形、革質、多数の脈があり、脈は明瞭に乾燥せず、基部は強く沿下する。偽葉柄は普通、葉身より短い。トラップは糸状の匍匐茎につき、卵形、柄があり、長さ約1㎜、口部の基部、上唇に2個の錐形の反り返った付属体がつく。花序は長さ10~35㎝。花序柄は太さ1~2㎜、花が1~3個つく。苞は線状披針形、先は鋭形または尖鋭形、長さ5~7㎜。小苞は似ているが、普通、狭く、わずかに短く、不稔の鱗片が花序柄に2~4個つき、苞と似るが短い。花柄は直立し、苞の4~6倍の長さがある。 花は萼片の葉が等しくなく、卵形で、鈍く、基本的に丸みを帯びて下垂している花、長さ2~3㎝×幅1.2~2.0㎝。花冠は通常白く、口蓋(palate)は黄色で、長さ4~6㎝、無毛または微細なパピラがあり、特に距の先にあり、上唇は横長の長円形で、先は丸く、幅は長さの2~3倍で、上部の萼片と同長かまたはそれより長い。下唇は大きく、幅5㎝以下、扇形、先は丸く、全縁、口蓋はギボス形(gibbous)、明瞭で、距は錐形、上向きに曲がり、下唇とほぼ同長。蒴果は卵形、長さ約10㎜、壁は比較的厚く、1本の外側の隙間から縦に裂開する。種子は多数、狭円筒状紡錘形、長さ0.35~0.5㎜。花期は3~6月。
品種) 'Pittier Moon'

2 Utricularia aurea Lour. ノタヌキモ 野狸藻
  synonym Utricularia pilosa (Makino) Makino
 日本(本州新潟以南、四国、九州、沖縄)、韓国、中国、台湾、カンボジア、インド、インドネシア、カシミール、ラオス、ネパール、パキスタン、パプアニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、オーストラリア原産。中国名は黄花狸藻 huang hua li zao。
 多年草または1年草、半固着性水生植物(suspended aquatic)。仮根(rhizoids)は普通、あり、花序柄の基部または基部のすぐ上で垂直になり、紡錘形、膨らみ、糸状の枝をもつ。匍匐茎(stolons)は糸状~比較的太く、分枝する。葉片のトラップは柄があり、斜めの卵形、長さ1~4㎜、口部は側生または底につく。付属体は2またはときに、無く、背側につき、まばらに分枝し、剛毛状。葉は匍匐茎に多数つき、長さ2~8㎝、基部から分裂し、3または4個(または5個)の1次裂片が半輪生する。1次裂片は外形が卵形~長円状披針形、幅1.5~3㎝、羽状に2次裂片に分裂する。2次裂片は、基部からさらに多数の裂片に二分される。最終の裂片は毛細管状、わずかに扁平で、側部および先に小剛毛がある。托葉状の耳が普通、1次裂片の基部にあり、外形が半円形、2裂して、まばらな小剛毛のある糸状の裂片になる。花序は直立し、長さ5~25㎝、花が3~10個つき、無毛。花序柄は円柱形、太さ0.5~1.5㎜、鱗片は無い。苞は底着し、広卵形~円形、長さ1~2㎜、先は円形。花柄は花時に直立し、果次に鋭く後屈し、太くなり、長さ0.4~2㎝、背腹方向に扁平になる。小苞は無い。萼片は卵形、はぼ等長、先は円形~ほぼ鋭形、下側の萼片はしばしば上側の萼片よりわずかに広く、花時に長さ2~3㎜、果時に肉質になり、長さ7~9㎜、開出~後屈する。花冠は淡黄色、長さ1~1.5㎝、有毛または無毛。下唇は横方向に楕円形で、基部には明瞭な2裂片の膨らみがあり、先は円形~凹形。距は狭い円錐形の基部から円筒形になり、±下唇とほぼ同長で平行、真っ直ぐまたはわずかに曲がり、先は鈍形~ほぼ鋭形。口蓋(palate)は毛がある。上唇は広卵形、先は丸い。花糸は長さ1~1.5㎜、曲がる。葯の半葯(thecae)は±合流する。子房は卵形。花柱は明瞭。柱頭は下唇が半円形、上唇は廃れる。蒴果は球形、直径4~5㎜、横周裂開。花柱は宿存し、大幅に大きく長くなり、しばしば、蒴果の長さと同長またはそれを超える。種子は角柱状で、幅1~2㎜、5角または6角、すべての角(かど)に幅が狭い翼がある。種皮は ±等直径の不明瞭な網目がある。花期は6~11月。果期は7~12月。2n=80。
2-1 Utricularia aurea Lour. f. immaculata Tamura モンナシノタヌキモ 
 花冠下唇に橙色班のないもの。

3 Utricularia australis R.Br. ウトリクラリア・オーストラリス
  synonym Utricularia mairii Cheeseman in Man. New Zealand Fl.: 560 (1906)
  synonym Utricularia protrusa Hook.f.
ニューサウスウェールズ州、ニュージーランド北部、ニュージーランド南部、ノーザンテリトリー、クイーンズランド州、南オーストラリア州、タスマニア州、ビクトリア州、西オーストラリア州原産。英名はyellow bladderwort。
 完全に水中に沈む浮遊性の食虫性水生植物で、冬には枯れて休眠芽(休眠中の芽)になる。茎は緑色~緑黄色で、長さ400㎜以上、糸状で、まばらに分岐する。葉は水中に沈み、多数あり、緑色から緑黄色で、多裂し、長さ30~40㎜、裂片は毛細管で長さ10㎜まで。捕虫嚢は多数あり目立ち、成熟すると長さ1~4㎜、斜めの卵形、口部には2本の長い剛毛があり、成熟すると全体の構造が暗青色~紫色になり、葉裂片の基部近くに短い柄で付着する。花序はめったに見られないが、ある場合は長さ170㎜までの暗緑色の花茎に花が2~4(~5)個付き、花茎は基部が幅広く、先細りになる。萼片は長円形~楕円形。花は暗黄色、ときに口蓋に暗オレンジ色の斑紋がある。花冠の上唇は3裂し、下唇は全縁、幅7~9㎜、幅が広く、口蓋は突出し、距は短く、鈍形。蒴果は直径1.5~2㎜、球形。ニュージーランドでは種子は知られていない。

4 Utricularia bifida L. ミミカキグサ 耳掻草
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、インド、ネパール、スリランカ、カンボジア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア、グアム、オーストラリア原産。中国名は挖耳草 wa er cao。英名はbladderwort, common yellow bladderwort。湿地に生える。和名の由来は花後の萼が耳掻きに似ていることから。湿地に生える小さな食虫植物。捕虫嚢は約1㎜と小さく、地下茎などについて泥中にあり、微生物を捕食する。
 1年草。陸生、高さ5~15㎝。細い白色の地下茎を泥中に伸ばし、水深のあるところではところどころに線形の水中葉をつける。水深がないと気中葉を泥上に出す。気中葉は長さ5~8㎜でやや幅が広い。水上に出した花茎の上部に幅3~5㎜の黄色い2唇形の花を数個つける。上唇は小さく、先が浅く2裂し、下唇は大きく、中央に膨らみがある。距は下向きにつき、先が尖る。萼片や花柄は橙色を帯びる。花後に萼が大きくなり、果実は萼に包まれて扁平になり、耳掻きのような形になる。花期は8~10月。

5 Utricularia bisquamata Schrank ウトリクラリア・ビスクアマタ
 南アフリカ、アンゴラ、レソト、マダガスカル、ナミビア原産。英名はSouth African bladderwort。海抜1200~2250mの湿った岩の上の砂質または泥炭質土壌の小川沿いや湿った場所、苔の間に生える。
 小型の1年草、陸生、長さ12㎝まで。仮根は少数、毛細管状、単純、長さ数㎜、太さ0.1㎜以下。匍匐茎は少数、毛細管状、分岐し、長さ数㎝、太さ0.2㎜以下。葉は花序柄の基部に少数つき、匍匐茎上に散在し、葉柄があり、葉身は極めて狭い倒卵形~線形、先は丸く、幅1㎜以下、1 脈があり、全長は1.5㎝まで。捕虫嚢は匍匐茎と葉柄に多数つき、卵形、柄があり、長さ1~1.5㎜、口部の端に背の丸い付属体があり、付属体と口部の後退した腹側の唇には放射状の列の有柄の腺が縁につく。花序は総状花序、直立し、単純、単生、長さ1.5~2.5㎝。花序柄は円柱形、太さ0.2~0.5㎜、全体に無毛または下側にはパピラがある。鱗片は少数または無く、苞に似ているが小さい。苞は底着生で卵形、先は鋭形、長さ1㎜以下。小苞は線形、先は鋭形または鈍形、苞とほぼ同長。花は1~6個、離れてつき、小花柄は毛細管状で円柱形、長さ1~3㎜。萼片はほぼ均等、広卵形、上側の萼片の先は円形または短い3歯があり、下側の萼片の先は円形または短い2歯または3歯となり、長さ1~2.5㎜、膜質、通常、単脈に沿って少数の襞を形成する。花冠は長さ(2~)5~10(~16)㎜、ライラック色またはすみれ色で下唇の基部に黄色の斑紋があり、ときに白色またはまれに全体または大部分が黄色の場合があり、中央より下で狭まり(2部分かれ、縦に並ぶ)、下部は広卵形、上部は卵形で先端は±深く凹形。下唇はるかに大きく、拡大部はほぼ円形または横長の楕円形で、基部に顕著な丸い膨らみがあり、先端は丸く、±顕著に3~5個の円鋸歯がある。口蓋(palate)は黄色、縁に短い軟毛が生える。距は狭い円筒形または錐形、先は鈍形から鋭形、真っ直ぐまたはわずかに湾曲しているか、異常に袋状で、通常は下唇とほぼ同長だが、ときに、はるかに短いか、かなり長い場合もある。花糸は湾曲し、長さ0.3~0.7㎜、柱頭の下唇は半円形、上唇はずっと小さく三角状。蒴果は球形、長さ1.5~2㎜、壁は硬く、腹側の縁が厚くなった縦の裂目から裂開する。種子は横長の楕円形、長さ約0.25㎜。花期は南アフリカでは8~1月(主に9月)、アンゴラでは2~4月。
品種) 'Betty's Bay'

6 Utricularia breviscapa C.Wright ex Griseb. ウトリクラリア・ブレビスカパ

  synonym Utricularia lagoensis Warm.
  synonym Utricularia quinqueradiata Spruce ex Kamieński
 アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、パラグアイ、ベネズエラ、キューバ原産。、  葉は二又分岐の毛細管状、1脈がある、捕虫嚢(トラップ)は卵形、捕虫嚢の開口部の位置は側生。付属体(appendix)は捕虫嚢の背側につき、分枝する。花序の鱗片および苞は底着して基部に耳は無く、縁は全縁。小苞は無い。花は上側の萼片が倒卵形、下側の萼片も倒卵形。萼は縁が全縁、脈は明瞭又は不明瞭。花冠は黄色、 花冠の凸状(gibbose)の口蓋(palate)は黄色または橙色。花冠の下唇は3裂し、円鋸歯がある。距は円錐形、真っすぐで、下唇の長さと同長、先は2裂または4裂。果実は横周裂開(Ccrcumcissile)。種子はレンズ形。Utricularia breviscapaは花序の基部に浮葉(floats)を輪生する点で、でU.benjaminianaおよびU.platensisに似るが、U.benjaminianaとは異なり、栄養部分が無毛、花茎が膨れ、花が黄色である(栄養部分に絨毛があり、花茎が細く、花冠が白色)。U.platensisとは異なり、葉の1次裂片および2次裂片が3個つき、花冠が小さく、長さ6~12㎜、花冠の上唇が円形である(これに対しU.platensisは葉の1次裂片および2次裂片が2個つき、花冠が大きく長さ20~25mmで上唇は横に楕円形)。

7 Utricularia caerulea L. ホザキノミミカキグサ 穂咲の耳掻草
  synonym Utricularia racemosa Wall. ex Walp.
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、インド、ネパール、スリランカ、カンボジア、ラオス、マレーシア、ミャンマータイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア、オーストラリア、マダガスカル、グアム原産。中国名は短梗挖耳草 duan geng wa er cao。英名はblue bladderwort。
 1年草。陸生、高さ10~30㎝。葉はほとんど見えないほど小さなへら形、長さ2~4㎜の鱗片葉。捕虫嚢は長さ1㎜ほどで葉柄や地下茎につき、動物性プランクトンを捕食する。花は細長い花茎に数段につく。花は長さ4~5㎜、紅紫色、小花柄は短く、ほとんどない。花弁は2唇形、上唇は小さく、下唇は大きく、くし型の白い斑紋があり、花の基部には前方へ突き出した先のとがった大きな距がある。果実はほぼ球形の蒴果、横向きにつく。種子は多数。2n= 36, 40。花期は6~9月。

7-1 Utricularia caerulea L. f. leucantha (Komiya) Komiya シロバナホザキノミミカキグサ 

 白花品種。

8 Utricularia dimorphantha Makino フサタヌキモ 房狸藻
 日本固有種(本州)。で、湖沼やため池に生育する。
 多年草。浮葉性(半固着性)の水草。茎は長さ30~80cm、ややまばらに分枝する。葉は線形で長さ2~6cm、多数の細裂片に分かれ、非常に柔らかい。他のタヌキモ類に比べて、捕虫嚢はごく少なく、全く捕虫嚢をつけないことがある。花は通常の開放花のほかに閉鎖花をつけ、開放花は少ない。開放花は水面上に伸びた7~14cmの花茎の総状花序につく。総状花序に花は3~5(10)個つき、花茎に鱗片葉は無い。花柄は長さ約1㎝。萼片は2個、広卵形、長さ2~3mm、先は凹形、果時に大きくなる。花は淡黄色~橙黄色、2唇形、上唇より下唇が大きく、横に広い楕円形、長さ約6㎜、幅約8㎜、距は卵状長楕円形、長さ3~4㎜、前方に真っすぐ伸びる。閉鎖花は水中茎につき、数節おきに1個づつ単生し、蕾の状態のまま自家受粉する。蕾は球形、直径1~2(~4)mm、ごく短い花柄がある。蒴果は球形、直径2~3(14)㎜。種子は角柱形、稜があり、両端は切形、中央部は膨れる。殖芽(球芽)は秋遅くに枝先に形成され、ほぼ球形で緑色、長さ12~20mm×幅10~15㎜。花期は7~8月(開放花)、6~9月(閉鎖花)。

9 Utricularia gibba L. オオバナイトタヌキモ 大花糸狸藻
  synonym Utricularia exoleta R.Br. ミカワタヌキモ
  synonym Utricularia gibba subsp. exoleta (R.Br.) P.Taylor
 日本、中国、台湾、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、パプアニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、太平洋諸島(ニューカレドニア、パラオ)、南西アジア、ヨーロッパ、アフリカ、マダガスカル、熱帯アメリカ、インド洋諸島(モーリシャス)、南北アメリカ原産。中国名は少花狸藻 shao hua li zao。Flora of Chin , Kew Science , GBIFではUtricularia exoletaはUtricularia gibbaとされている。  1年草または多年草、固着性(affixed)または半固着性(suspended)水生植物。仮根(rhizoids)は無または有、糸状、分枝する。匍匐茎(stolons)は糸状、多数、分枝し、しばしばマット状になる。捕虫嚢(traps)は葉の裂片の側部につき、柄があり、卵形、長さ1~2.5㎜、開口部は側部につく。付属体は2個、背側につき、分枝し、剛毛状で短い剛毛をつける。葉は匍匐茎に多数つき、長さ0.5~1.5㎝。1次裂片は(1または)2個、分枝しいないか、またはまばらに二又分枝して3~8個の最終裂片になる。最終r鉄片は毛細管状で、わずかに扁平、縁は全縁またはまばらに歯があり、先と歯には小剛毛がある。花序は直立し、長さ2~15㎝、花が1~3(~6)個つく。花序柄は円柱形、太さ0.3~0.5㎜、無毛、鱗片が1個つき、苞に似る。苞は底着、半円形、長さ約1㎜、細かい腺があり、先は切形で不明瞭な歯がある。花柄は直立~開出し、長さ2~12㎜、糸状。小苞は無い。萼片はほぼ等長、広卵形~円形、長さ1.5~2㎜、先は円形。花冠は黄色、長さ4~8㎜。下唇は上唇よりわずかに小さく、基部には明瞭な膨れた2裂片があり、先は円形。距は狭円錐形~円筒形、基部は円錐形、花冠の下唇よりも短いかまたは長く、上部にはまばらに有柄の腺があり、先は鈍形。口蓋には密に毛がある。上唇は、広卵形~ほぼ円形、上側の萼片の長さの約2倍、先は不明瞭に3裂する。花糸は長さ1~1.5㎜、曲がる。半葯は合流する。子房は球形、花柱は明瞭。柱頭は下唇が横方向に楕円形で、上唇は廃れる。蒴果は球形、直径2~3㎜、2バルブがある。種子はレンズ形、直径0.8~1㎜、縁に広い翼があり、翼には浅く不規則な歯がある。種皮は小さな目立つ網目がある。花期は4~11月。果期は5~12月。2n=28。
【PlantNET - FloraOnlineの解説】
 固着性(affixed)または半固着性(suspended)水生植物、1年草または多年草。葉は糸状、長さ0.5~1.5cm、1次裂片は2個、まれに1個あり、1次裂片はまばらに4分岐し、まれに8個の最終裂片に分岐する。葉の捕虫嚢(traps)は卵形、長さ1~2.5㎜、口部は側面につく。総状花序は直立し、水面状に突き出しまたはまれに水没し、単生または2個以上が一緒にまたは連続して発生し、長さ1~20㎝、花が2~6個つき、花序軸が短い~細長く、鱗片は1個まれに2個、しばしば無くなり、花序柄のほぼ中間につき、苞に似ている。苞は底着し、長さ約1mm。小苞は無い。萼片はほぼ等長、広卵形または円形、長さは1~3㎜。花冠は長さ4~25㎜、黄色、しばしば、赤褐色の脈がある。距は狭円錐形または円筒形、下唇よりもわずかに短く~明らかに長くなる。花期は11~4月(オーストラリア)。
 YListで分類されているミカワタヌキモ(Utricularia exoleta)はPOWOではsynonymとされている。

(1) Utricularia gibba subsp. exoleta (R.Br.) P.Taylor ミカワタヌキモ 三河狸藻

  synonym Utricularia exoleta R.Br. ミカワタヌキモ 
  synonym Utricularia nagurae Makino
  synonym Utricularia gibba L. [Kew Science]
 日本(本州の関東から近畿地方、九州、南西諸島)、台湾、インド、オーストラリア、アフリカ。水中葉はあまり発達せず、水中の泥の上を這い、地下にも茎状の地下葉を伸ばし、あちこちに捕虫嚢をつける。別名はイトタヌキモ。愛知県の絶滅危惧ⅠB類 (国の絶滅危惧Ⅱ類)。
 ミカワタヌキモはオオバナイトタヌキモ(U. gibba)と同種に扱われることが普通であり、POWOではオオバナイトタヌキモのsynonymとしている。イトタヌキモの花は全幅3~4mmで小さいが、オオバナイトタヌキモの花は幅12~18mmと明らかに異なるとして、分類されている。
 多年草、常緑性の水草。茎は糸状、水中の泥の表面を這い、捕虫嚢をつけた地中葉で固着する(固着性)が、水中を浮遊することもある(半固着性)。殖芽や冬芽は作らない。水中葉は茎につき、葉は根のように見え、まばらに互生し、長さ約1㎝、1~5裂し、裂片は幅0.1~0.2mm、縁には疎に細鋸歯があり、疎に捕虫嚢をつける。花茎は高さ5~8㎝、直立し、水上に1~3個の花をつける。花冠は黄色、直径5~6㎜。距は前向き、下唇と同長かまたはやや長い。萼は長さ約2㎜、花後にほとんど大きくならない。花柄は花後に3~6mmに伸び、曲がるが下向きにはならない。蒴果は長さ約3㎜。花期は8~9月。

(2) Utricularia exoleta R.Br. f. natans (Komiya) Komiya ナガレイトタヌキモ 

  synonym Utricularia gibba L. subsp. exoleta (R.Br.) P.Taylor f. natans Komiya
 ナガレイトタヌキモは水中に浮遊する。葉に捕虫嚢が1個で、節間が短く、生長も遅い。

10 Utricularia inflata Walter ウトリクラリア・インフラタ
 USA(アラバマ州、アーカンソー州、デラウェア州、フロリダ州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ミシシッピ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ノースカロライナ州、オクラホマ州、ペンシルベニア州、サウスカロライナ州、テネシー州、テキサス州、バージニア州、ワシントン州)原産。浅瀬に自由に浮遊するか、堆積物に緩く付着する。英名はswollen bladderwort , floating bladderwort , large floating bladderwort。別名はウトリクラリア・インフラタ。日本、ドイツに帰化している。アメリカでは有害雑草(Noxious Weed)とされている。
 Utricularia radiata Smallに似るが、はるかに大きい。浮遊性、抽水性、あるいは一部が這う。浮葉(floats)は4~10個、独特のスポークのように輪生し、くさび形、長さ4~9㎝、普通、中央をはるかに超えて最も太く、上半分に細かく切り裂かれた裂片がある。花序柄は長さ10~25㎝、花序は花が3~14(~17)個つき、水面上に直立する。 苞は長さ3~4mmで、幅より長く、分裂しない。下部の花柄は長く、花柄は果時にしばしば長さ3.5㎝になる。花は黄色、幅約2㎝、キンギョソウに似る。萼片は長さ4~7mm。下唇は長さ10~15mm、分裂しない。果実は蒴果、多数の種子をもつ。2n=18, 36。海岸平野に沿った池に生える。花期は5~7月。

11 Utricularia intermedia Heyne コタヌキモ 小狸藻
 北半球の温帯に広く分布。日本では北海道、本州に分布。中国名は异枝狸藻 yi zhi li zao。英名はflatleaf bladderwort , intermediate bladderwort。
 多年草、普通、固着性水生植物(affixed aquatic)。仮根(rhizoids)は普通、あり、糸状、二又分枝の短い枝がある。匍匐茎(stolons)は糸状で、まばらに分枝し、緑色のものもあれば、クロロフィルのないものもある。無色の匍匐茎の削減された葉の上につく捕虫嚢(traps)は柄があり、卵形、長さ1.5~4㎜、口部は側部につく。付属体は2個、背側につき、分岐し、剛毛状、側部に少数の単純な剛毛がある。葉は緑色の匍匐茎に多数つき、外形がほぼ円形~楕円形、長さ0.3~1.5(~2)㎝×幅0.4~1.8㎝、基部から掌状に分岐し、2または3個の1次裂片に分割される。1次裂片は基部から2~5個の裂片に二又分岐する。最終裂片は扁平で狭い線形、幅0.2~0.7㎜、縁は全縁またはまばらに小歯があり、側部および先部に小剛毛がある。花序は直立し、長さ8~20㎝、花が2~5個つき、無毛。花序柄は円柱形、太さ0.4~0.8㎜、鱗片が1~3個つき、苞に似る。苞は底着、広卵形~卵状三角形、長さ2~4㎜、基部には明瞭に耳があり、先は鋭形。花柄は直立し、円柱形、長さ0.5~1.5㎝。小苞は無い。萼片は卵形、長さ3~5㎜。下側の萼片は上側の萼片よりわずかに短く、先が鈍形、短く2裂または切形。上側の萼片は先が鋭形。花冠は黄色、長さ0.9~1.5㎝。下唇は横方向に楕円形で、基部は明瞭に丸く膨れ、先は円形。距は錐形、花冠の下唇よりわずかに短く、先は鋭形。口蓋は無毛、上唇は広卵形、先は円形。花糸は長さ約2㎜、曲がる。半葯は±合流する。子房は球形、腺がある。花柱は比較的長い。柱頭は下唇が円形で縁毛があり、上唇は三角形で先が鋭形または2裂する。蒴果は球形、直径2.5~3㎜、横周裂開(circumscissile)。種は見られない。花期は6~9月。2n=44。

12 Utricularia × japonica Makino タヌキモ 狸藻

  synonym Utricularia vulgaris L. var. japonica (Makino) Tamura

  synonym Utricularia australis auct. non R.Br.
 タヌキモは遺伝子解析の結果、オオタヌキモ(Utricularia macrorhiza)とイヌタヌキモ(Utricularia tenuicaulis)の雑種起源であることが明らかになった(Kameyama et al. 2005)。タヌキモは結実しない。
 緑色の多年草、主茎と枝の先端にある塊茎のような冬芽によって毎年繁殖する。茎は浮遊し、通常、根はないが稀に少数の根がある。放射状に伸びず、花茎が発生する中心点を持たず、緩く枝分かれし、全体に葉があり、長さ約2m、最大のもので直径32㎜に達することもあるが、通常はそれより短く細い。葉は多数、しばしば密生し、双生(binate)、無柄、卵形、卵状長円形、または長円形で、2~3回羽状分裂し、最大のものでは長さ約62㎝に達し、多数の捕虫嚢(bladders)が散在する。最終裂片はほぼ糸状または糸状で、緩く微細な棘があり、先端には鋭い細棘がある。嚢には短い柄があり、葉の裂片の基部と上に位置し、最大の柄は長さ約42㎜。花茎は直立し、数個の苞状鱗片を持ち、総状花序を含めて長さ約9~20㎝、またはそれ以上になる。鱗片は離れて位置し、密着し、卵形または広卵形、先は鋭形、基部はほぼ耳状、全縁、膜質、多数の脈があり、長さ3~4㎜。総状花序は直立し、約2~13個の花がつく。苞は卵形または楕円状卵形、鋭形、基部はほぼ耳状円形~鈍形、全縁、膜質、多数の脈があり、長さ32~42㎜。花は明るい黄色、直径約2㎝になる。小花柄は基部に苞を持ち、萼の長さの3~6倍の長さがあり、花後に反り返らない。萼は長さ約4㎜、宿存する。萼片は全縁、多数の脈があり、凹面である。上側の萼片は楕円形、短く突出し、先は鋭形。下側の萼片はそれよりわずかに短く、卵状楕円形、先は2裂する。花冠は上唇が直立し、長さが口蓋(palate)よりはるかに長く、広卵形。下唇は下降して開出し、はるかに幅が広く、半円形である。口蓋は半球形、約・幅7㎜、高さ4㎜、先端は切形または微凹形、黄色、黄褐色の脈状の不規則な線がある。距は花冠の下唇より短いかわずかに短く、円錐形、先は鈍形または鋭形、ほぼ水平で、わずかに上向きに弓状になる。雄しべは2本、直立し、長さ2㎜。花糸は丈夫で、下方に湾曲している。葯は丸い。雌しべは萼より短い。子房は球形、平滑、幅12㎜。花柱は丈夫、まっすぐ。柱頭は広がり、円形で縁毛があり、長さと幅は1㎜。胚珠は多数、小さい。果実は不明。[Bot. Mag. (Tokyo) 28: 28 (1914)]
 この種はオオタヌキモ(Utricularia vulgaris)に非常に近縁で、主に花冠の上唇がはるかに長いこと、茎が長いこと、葉に捕虫嚢がより多くあること、葉の裂片が先細りになっていること、葉裂片の窪みに縁毛の房がないことなどで異なる。花はUtricularia neglecta にかなり似ている。日本にはない外来種である。

13 Utricularia macrorhiza Leconte オオタヌキモ 大狸藻

  synonym Utricularia vulgaris L. subsp. macrorhiza (Leconte) R.T.Clausen 

  synonym Utricularia vulgaris L. var. americana A. Gray
  synonym Utricularia siakujiiensis S.Nakaj.
 日本、中国、モンゴル、ロシア、北アメリカ原産。中国名は弯距狸藻 wan ju li zao。英名はcommon bladderwort。静かで、浅いかまたは深い、めったに流れない、酸性の水に生える。
 浮遊性水生。茎は葉がよく発達し、中央の匍匐茎(stolons)が弱く分枝し、捕虫嚢(bladder)をもつ。冬芽は長さ1~2㎝、剛毛がある。葉は長さ15~90 mm、基部で1~2深裂し、各部分は上部で不等長に羽状に全裂される。最終裂片は密で、30~150個、糸状、縁の剛毛は長さ0.1~0.3㎜。基部近くの捕虫嚢は先端近くのものよりも大きい。捕虫嚢の背と腹面の両方に内腺(internal glands=bladders glands)がある。花序は花が5~20個つく。 花序柄は長さ10~40㎝、丈夫で、直径1~3㎜。花柄は果時に反り返る。花冠は長さ1~2㎝、下唇は上唇より大きい。距は円筒形、[花冠の下唇とほぼ同長、先が顕著に上向きに曲がり]先端近くに上向きの鈎がある。果実は横周裂開(circumscissile)。種子は4~6面をもち、翼がある。2n=±40 , 44。花期は6~9月。

14 Utricularia minor L. ヒメタヌキモ 姫狸藻
  synonym Utricularia minor L. f. terrestris Glück
  synonym Utricularia minor L. f. stricta Komiya
  synonym Utricularia minor L. f. natans Komiya
  synonym Utricularia multispinosa (Miki) Miki
 日本(北海道、本州、四国、九州 )、中国、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、ブータン、インド、カシミール、キルギスタン、ミャンマー、ネパール、パキスタン、パプアニューギニア、ウズベキスタン、 南西アジア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は细叶狸藻 xi ye li zao。
 多年草、普通、固着性水生植物(affixed aquatic)。仮根(rhizoids)は無い。匍匐茎(stolons)は糸状、円柱形、まばらに分枝し、いくつかは緑色、その他はクロロフィルがない。捕虫嚢(traps)は葉の裂片の側部につき、短い柄があり、卵形、長さ0.8~2.5mm、開口部は側部につく。付属体は2個、背側につき、長く、分枝し、剛毛状、側部に少数の単純な剛毛がつく。葉は緑色の匍匐茎に多数つき、外形は半円形~ほぼ円形、長さ2~15mm×幅3~15mm、掌状に基部から分裂し、2または3個の1次裂片に分割される。1次裂片は基部からさらに2~11個の裂片に二又分岐される。最終裂片は扁平で、幅が狭い線形で、幅が0.1~0.5mm、縁は全縁またはまばらに小歯があり、先は鋭形、先および歯には微視的小剛毛がある。花序は直立し、長さ5~20(~25)cm、花が2~8個つき、無毛。花序柄は円柱形、太さ0.3~1mm、苞に似た鱗片が2~4個つく。苞は底着、広卵形~卵状三角形、長さ1.5~2mm、基部には明瞭に耳があり、先は鋭形~鈍形。花柄は花時に直立し、果時に広がり、下向きに曲がり、円柱形、長さ4~8mm。小苞は無い。萼片は広卵形、長さ2~3 mm、不等長。下側の萼片は小さく、先は狭い切形。上側の萼片は先が類鋭形。花冠はレモンイエロー、長さ6~8mm。下唇は広倒卵形、縁は反曲し、先は円形~小凹形。距は袋状~鈍い広円錐形。口蓋は長く、縁のへりが隆起し、上部は狭く、腺がある。上唇は卵形~卵状長円形、先は小凹形。花糸は長さ約1.5mm、曲がる。半葯は±分離。子房は広楕円形です。花柱は比較的長い。柱頭は下唇が広卵形で縁毛があり、上唇は三角形で先が鋭形または2~3裂する。蒴果は球形、直径2~3 mm、横周裂開。種子はレンズ形~プリズム形、長さ0.3~0.4mm×幅約1mm、角(かど)に翼はほとんどない。種皮は小さな明瞭な±等直径の網目をもつ。花期は8~9月。果期は9~10月。2n=40,44。

15 Utricularia minutissima Vahl ヒメミミカキグサ 姫耳掻草
  synonym Utricularia nipponica Makino
 日本(本州中部の愛知県、三重県)、中国、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、パプアニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、北オーストラリア原産。中国名は斜果挖耳草 xie guo wa er cao。愛知県の絶滅危惧ⅠB類(国の絶滅危惧ⅠB類)に指定されている。
 1年草、陸生。仮根(rhizoids)は毛細管状、単純。匍匐茎(stolons)は毛細血状、まばらに分枝する。捕虫嚢(traps)は仮根、匍匐茎、および葉につき、柄があり、卵形、長さ約0.2㎜、開口部は側部につく。付属体は1個、背側につき、錐形、毛状突起が1~2列に腹側に対につく。葉は少数、花序柄の基部と匍匐茎につき、無毛。葉身は狭倒卵形~線形、長さ0.3~2㎝×幅0.4~0.8㎜、膜質、1脈があり、基部は葉柄上で漸尖し、縁は全縁、先はわずかに鈍形。花序は直立し、長さ3~12㎝、花が1~10個つき、無毛。花序柄は円柱形、太さ0.2~0.4㎜、少数の鱗片があり、苞に似ている。苞は底着、狭卵形で、長さ0.5~1 mm、先は鋭形。花柄は直立し、苞とほぼ同長、糸状。小苞は苞に似るが、ときに狭く、またはそれほど鋭形ではない。萼片は凸面状、長さ1.5~2㎜、不等長、無毛。下側の萼片は先が凹形。上側の萼片は卵形で、先が鈍形。花冠はバイオレット色または白色、長さ3~7㎜。下唇はほぼ円形、基部に膨れた円形の4裂片があり、縁は明瞭に3裂する。距は錐形、花冠の下唇よりもはるかに長く、先は鋭形。上唇は長円形~倒卵形、先は凹形~円形。花糸は長さ約0.8㎜、わずかに曲がる。葯の半葯は分離。子房は卵形、花柱は短い。柱頭は下唇が横方向に楕円形、上唇は三角形。蒴果は斜めの楕円形、長さ1.5~2㎜、1本の縦の腹側の隙間から裂開する。種子は球形~広楕円形、長さ2~3㎜。種子は網目が目立つ。花期は9~11月。果期は11~12月。2n=16。

15-1 Utricularia minutissima Vahl f. albiflora Komiya  シロバナヒメミミカキグサ 

 白花品種。

16 Utricularia × neglecta Lehm. チョウシタヌキモ 銚子狸藻

  synonym Utricularia × siakujiiensis S.Nakaj. ex H.Hara シャクジイタヌキモ

  synonym Utricularia vulgaris subsp. neglecta (Lehm.) Bonnier & Layens
  synonym Utricularia vulgaris var. neglecta (Lehm.) Coss. & Germ.

  synonym Utricularia australis f. fixa (Komiya) Komiya & C.Shibata チョウシタヌキモ

  synonym Utricularia vulgaris var. formosana J.Kuo
 日本(本州の新潟県、秋田県、九州)、韓国、中国、台湾、千島列島、サハリン、ロシア、インド、パキスタン、アフガニスタン、スリランカ、ミャンマー、ネパール、ブータン、フィリピン、ジャワ、スマトラ、ニューギニア、イラン、イラク、パレスチナ、オマーン、イエメン、トルコ、ヨーロッパ(アルバニア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ブルガリア、チェコスロバキア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イギリス、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、クリム、オランダ、北コーカサス、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、スウェーデン、スイス、ユーゴスラビア)、アフリカ(アルジェリア、ウガンダ、ガボン、ケニア、スーダン、モロッコ、タンザニア、ザンビア、ザイール、ジンバブエ、ボツワナ、南アフリカ、モーリタニア、ルワンダ)原産。英名はyellow bladderwort, bladderwort。標高900~1860mの淡水池、湖沼などに生える。沈水生。イヌタヌキモ(Utricularia tenuicaulis)とUtricularia vulgarisの交雑種である。古い記載ではUtricularia australisのsynonymとされている。
 水生草本で、冬芽(膨れ茎)で越冬する。匍匐茎は花茎の基部から2~3本、糸状で円柱形、無毛、長さ50㎝以上、太さ0.5~1.5㎜、節間は3~10㎜。仮根は花茎の基部から少数(2~4本)出て、毛細管、長さ1~2㎝。葉は非常に多く、基部から2分枝し、各枝は長さ1~5㎝、輪郭は卵形~披針形、羽状分枝。羽片は互生し、繰り返し二股に分かれる。最終裂片は毛細管状、小剛毛がある。捕虫嚢(traps)は通常多数あり、分岐点のすぐ上の葉裂片の側面に生え、斜め卵形、柄があり、長さ1~2㎜、口部は側部につき、斜め。上唇には細くて±分枝した毛が2本ある。下唇には単毛が不定数ある。花序は直立し、高さ15cm以下。花茎は開花時には通常真っすぐだが、非常に屈曲し、太さ1~2㎜、平滑、無毛。花は4~6個で、花時に±密集し、花序軸は花後に伸長する。鱗片は1~2(3)個、最下の花のすぐ下にあり、苞に似る。苞は底着生、円形、長さ±3㎜、沿下する。小苞はない。小花柄は糸状、長さ1~2㎝、花時に直立し、花後に伸長して広がるか屈曲する。萼片はほぼ等長、卵形、長さ±3㎜。上側の萼片は先が丸く無色。下側の萼片は切形または凹形。花冠は淡黄色、長さ±15㎜。上唇は円形または広卵形、先は切形、上部の萼裂片の2~3倍の長さ。下唇は扁平または腎形、上唇とほぼ同長、長さは幅の2倍まで。口蓋は盛り上がり、凸形。距は太く、円錐形で、わずかに湾曲し、鈍形で、通常下唇より短く、内側の背面にのみ短い有柄の腺がある。花糸は糸状、葯・半鞘は合流する。子房は球形、わずかにカサカサする(lepidote)。花柱は明瞭で、子房とほぼ同じ長さ。柱頭は下唇が半円形、縁には縁毛があり、上唇はほとんど廃れている。蒴果は生成されない。
(1) Utricularia × siakujiiensis S.Nakaj. ex H.Hara シャクジイタヌキモ 石神井狸藻

 浮遊植物。呼吸枝(respiratory branches)は存在しない。葉は羽状分裂し、裂片は細く、不明瞭な鋸歯があるか、またはほぼ全体で、棘は非常に短い。捕虫嚢(bladders)は少数。花茎は長さ10~20㎝、かなり太い。鱗片葉は少数つき、膜質、狭卵形、長さ約2㎜、鈍形。花は5~10個つき、苞は広卵形、長さ3~3.5㎜、鈍形で、基部で抱茎。小花柄は斜上し、長さ約2㎝、細い。上側の萼片は下部の萼片よりわずかに大きく、卵形、長さ約3㎜、先は鈍形~円形。花冠は直径約10㎜、黄色、距は長さ約8㎜、下唇よりも長く、下唇の下に下がり、真っ直ぐで先が鈍形。蒴果は球形。本州(東京近郊)に分布する。花期は8~9月。

17 Utricularia × ochroleuca R.Hartm. ヤチコタヌキモ 谷地小狸藻

  synonym Utricularia intermedia Heyne f. ochroleuca (R.Hartm.) Komiya

  synonym Utricularia stygia G. Thor
  synonym Utricularia × bentensis Komiya ベンテンコタヌキモ
 日本(北海道、本州)、韓国、ロシア(カムチャッカ、マガダン)、アフガニスタン、イラン、ヨーロッパ(ベルギー、チェコスロバキア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イギリス、ノルウェー、ポーランド、スウェーデン)、アラスカ、USA(オハイオ州、オレゴン州、ブリティッシュコロンビア州、カリフォルニア州、コロラド州、ミシガン州、ミネソタ州、モンタナ州、ニューヨーク州、ワシントン州、ワイオミング州)、カナダ(ラブラドル半島、マニトバ州、ノバスコシア州、ヌナブト準州、ノースウエスト準州、オンタリオ州、ケベック州)、グリーンランド、アイルランド原産。英名はyellowishwhite bladderwort , pale bladderwort , cream-flowered bladderwort。別名はヤチマタヌキモ。浅い(一般的に水深30cm以下)、酸性水の湿地などに生える。ヒメタヌキモとコタヌキモ雑種起源と推定されている(Utricularia minor×Utricularia intermedia)。
 根付く水生生物(固着性、半固着性水生)。 茎は2種類あり、1種は自由に浮遊し、緑色、葉があり、少数の捕虫嚢(traps)がつき、他は泥に根を出し、白色、葉が無く、捕虫嚢をもつ。冬芽は剛毛がある。葉は長さ5~15mm、基部で3深裂し、上部で様々に全裂し、最終の裂片は20個以下、ほぼ線形、扁平、縁の2~7(10)の歯にそれぞれに1本の剛毛があり、先端は鋭い。 花序は花が2~5個つく。花序柄は長さ15cm以下、直径1㎜以下。花冠は長さ10~15mm、下唇は上唇長さの約2倍、円錐形の距(先端が円筒形の場合もある)の長さの約2倍。果実は見られない。種子は見られない。2n=±40~48。花期は6~9月。
(1) Utricularia × bentensis Komiya ベンテンコタヌキモ 弁天小狸藻
 北海道苫小牧の弁天沼のみに分布する。
 ヒメタヌキモとコタヌキモの雑種起源である。葉の最終裂片はやや扁平で、先端は尖る。捕虫嚢は水中茎の葉にも生じ、吸収毛は細長くややπ字状を示す。花茎は紅紫色を帯び、花はやや小型で橙黄色、距は短い円錐形。

18 Utricularia platenis Speg. ウトリクラリア・プラテンシス

 南アメリカ南部(アルゼンチン、ブラジル南部、パラグアイ、ウルグアイ)原産。
 葉は二又分岐の毛細管状、1脈がある、捕虫嚢(トラップ)は卵形、捕虫嚢の開口部の位置は側生。付属体(appendix)は捕虫嚢の背側につき、分枝又は真っすぐ。花序の鱗片および苞は底着して基部に耳は無く、縁は全縁。小苞は無い。花は上側の萼片が円形、下側の萼片も円形。萼は縁が全縁、脈は明瞭又は不明瞭。花冠は黄色、 花冠の凸状(gibbose)の口蓋(palate)は黄色または橙色。花冠の下唇は3裂し、円鋸歯がある。距は円筒形、真っすぐで、下唇より短く、先は鈍形。果実は横周裂開(Ccrcumcissile)。種子はレンズ形。
 Utricularia platensisはU. foliosaやU. breviscapaに似る。U.foliosaとは異なり、花茎の基部に浮葉が輪生し、花冠の下唇が3裂し、ときに円鋸歯がある。(U.foliosaは浮葉が無く、花冠の下唇が2裂とは異なる)。U. breviscapaとは、葉の1次および2次裂片が2個つき、花冠は大きく、長さ20~25mmで、上唇が横に長い楕円形(これに対し、U. breviscapaは葉の1次および2次裂片が3個つき、花冠は小さく、長さ6~12mm、上唇は円形)。

19 Utricularia reticulata Sm. アミメミミカキグサ 網目耳掻草
 インド、スリランカ原産。 英名はnet-veined bladderwort。沼地、川沿いに生える。
 1年草、細く、絡み合う。仮根は毛状で、よく分枝する。花時に葉が枯れるかは不明。捕虫嚢は不明。花茎は糸状で絡み合い、長さ30㎝までになる。鱗片は少数、鋸歯状で小さい。花は1~2個、離れてつく。苞は卵形、先が尖り、長さ2㎜(1 lin.)。小苞は披針形~錐形、苞より短いかまたは同長。花序柄は糸状、長さ14~20㎜、開花後は硬く直立する。萼片は等長で、上側の萼片は広楕円状卵形、鈍形またはほぼ鋭形、長さ4㎜以上、下側の萼片は楕円形、鈍形。花冠は濃い紫色で、長さ18~20㎜(上唇の先端から距の先端まで)、上唇はバイオリン形、長さ10㎜以上、狭窄の上の卵状円形までは7~8.5㎜。下唇は円状楔形、長さ8~10㎜。口蓋(palate)は大きく、上唇とほぼ平行で、横方向に圧縮され、側面から見るとほぼ三角形、上側の角度はほぼ鋭角、口部の縁には繊毛があり状、繊毛は前方で小さな房に集まる。距は細く、円錐形で、鋭形、長さ8㎜以上。葯は長さ1㎜以上。花粉は球形、4~5個の短い隙間と孔がある。花糸は長さ約2㎜、倒卵状長円形。雌しべは円筒形、柱頭はほぼ無柄。上唇は不明瞭で、下唇は短く、幅広く、切形。​​蒴果と果実は不明。

20 Utricularia sandersonii Oliv. ウサギゴケ 兎苔
 南アフリカ原産。
 小型の多年草、陸生。仮根(rhizoids)は少なく、毛細管状、単純。 匍匐茎は多数、長さ5.0㎝以上、太さ0.25㎜。葉は多数つき、葉身は長さ15㎜×6㎜・以下、くさび形~倒卵形~扇形、葉柄がある。トラップは仮根、匍匐茎、や葉に多数つき、長さ1~1.5㎜、卵形、柄がある。花序は長さ2~6㎝、直立、単生し、単純。花序柄は直径約0.6㎜、円柱形、無毛。 苞は長さ約1㎜、底着、三角形または長円形。花は1~4個つき、離れる。花柄は長さ1.5~3㎜、花時に広がり、果時に下向き曲がる。萼は長さ2㎜。花冠は長さ10~15㎜、ごく薄い藤色または白色、暗藤色の斑紋があり、花冠の上唇は深裂し、2個の散開した裂片をもち、うさぎの耳に似る。距は錐形、下唇の長さの2~3倍。蒴果は長さ約2㎜、球形、縦の隙間から裂開する。種子は帰化した個体群ではできないようである。 品種) 'Blue'

21 Utricularia sp. aff. platenis Speg. エフクレタヌキモ 
  synonym Utricularia inflata Walter
 原産地不明、南アメリカの可能性が高いと推定されている。日本国内のものはの学名は U. inflata とされてきたが、分類について再検討された結果、ウトリクラリア・インフラタとは形態的、遺伝的に違いがある(葉緑体のDNA分析の結果、エフクレタヌキモとウトリクラリア・インフラタの間に4領域で違いがみられた)、一方で、ウトリクラリア・プラテンシスと多くの特徴が共通するが、捕虫嚢のつき方が異なることから、2018 年に学名が変更された。
 池,湿地,水路等に生える水生食虫植物。成長が早いうえに、分枝が立体的で、葉の密度が高いために容易に水中の空間を占有する。また、植物体のまま水中を浮遊して越冬し、水流に乗って広がり水面を占有するので、国の特定外来生物に指定され、重点対策外来種として警戒されている。すでに静岡県、兵庫県、大阪府,愛知県で確認されている。
 ウトリクラリア・インフラタ(現在ではウトリクラリア・ブレビスカパの異名)とは花の距の先端が鈍頭で凹状にならないこと、花粉が異常で全く結実しないことなどが異なる。
 多年草。食虫植物(carnivorous plant)。茎は水中で分枝して長さ2m以上になる。葉は放射状に輪生する。植物体のまま越冬し,水中を浮遊して広く占有する.春と秋の2回、に4~9枚の浮き袋に変化した浮葉を放射状に輪生し、花茎を水上に伸ばし、花をつける。花茎は長さ4~20cm。花冠は鮮黄色、長さ1.5~2.5cm、距は長さ約8mmと大きく、距の先端が鈍頭で凹状にならない。花粉が異常で全く結実しない。

22 Utricularia striatula Sm. マルバミミカキグサ 丸葉耳掻き草
  synonym Utricularia orbiculata Wall. ex A.DC.
 中国(安徽省、重慶、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖北省、湖南省、江西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、ブータン、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、パプアニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、熱帯アフリカ、インド洋の島々(北アンダマン諸島)原産。中国名は圆叶挖耳草 yuan ye wa er cao。英名はstriped-stemmed bladderwort。標高400~3600mの湿った岩、木の幹に生える。
 多年草、着生または岩生。仮根と匍匐茎は毛細管で単純。仮根と匍匐茎の捕虫嚢は柄があり、卵形、長さ0.6~0.8㎜、口部は側方に出る。付属体は1個、背側にあり、深く2裂し、多細胞の有柄の腺で縁取られる。葉は多数あり、花序柄の基部と匍匐茎から成り、ほぼ無柄~葉柄がある。葉身は倒卵形、円形、または横長野楕円形、長さ3~10㎜×幅2~6㎜、薄い肉質、葉脈は二股に分岐し、基部は楔形、漸尖形、または円形、縁は全縁、先は円形。花序は直立し、長さ1~15㎝、花が1~10個つく。花序柄は円柱形、太さ0.2~0.4㎜、無毛。鱗片は少数、苞に似る。苞は中部着生(basisolute)、狭卵形~長円形、長さ1~1.5㎜、腺があり、基部は切形、縁は不規則な小円鋸歯状~小歯状、先はほぼ鋭形~円形。小花柄は花時に広がるが、果時ではしばしば垂れ下がって萎んでいることが多く、長さ2~6㎜、毛細管状で、わずかに背腹方向が扁平になる。小苞は苞に似ているが、わずかに小さい。萼片の下側の裂片は長円形で、上側の裂片よりはるかに小さく、先は円形~凹形である。上側の裂片はほぼ円形~広倒心形、長さ1.5~2.5㎜、先は円形~凹形である。花冠は白色または紫色、下唇の基部に黄色の斑点があり、長さ3~10 ㎜、 閉花受粉(cleistogamous)の場合はさらに小さい。下唇は横長の楕円形~ほぼ円形、先は5裂する。距は錐形、下唇とほぼ同長で、直線または湾曲し、先は鋭形。口蓋(palate)は毛で縁取られる。上唇はほぼ卵形、萼よりはるかに短く、先は短く2裂する。花糸は長さ約0.6㎜、直線。葯は半葯が明瞭。子房は卵形~扁球形。花柱は非常に短い。下唇柱は半円形で、上唇は退化している。蒴果は球形、直径約2.5㎜、背腹方向に扁平、1個の縦の腹側の隙間から裂開する。種子は倒卵形、直径0.2~0.4㎜。基端を除いて密に刺のある剛毛(glochidiate processes)で覆われる。花期は6~10月。果期は7~11月。

23 Utricularia tenuicaulis Miki イヌタヌキモ 犬狸藻
  synonym Utricularia australis f. tenuicaulis (Miki) Komiya & C.Shibata i   synonym Utricularia vulgaris f. tenuicaulis (Miki) Komiya   synonym Utricularia vulgaris var. tenuicaulis (Miki) J.Kuo  日本、満州、ロシア、フランス原産。POWOではU. australisとUtricularia tenuicaulisを別種として扱っている。分布域も狭い。田んぼや池の浅い場所に生える。別名はイトタヌキモ
 冬芽で越冬する。直径0.8㎜、1層の皮下組織をもつ。葉はまばらにつく(葉は平面的に羽状に細裂する)。捕虫嚢は長さ1.4mm、幅1.2mm、4裂した吸収毛(absorptive hairs)がU. japonicaのものより短い。花茎は2~3個の鱗片があり、長さ10㎝×直径1.5㎜、U. vulgaris Lと同様に中空(central lacunae)ではなく、中実。花は黄色、距は下唇より短い(殖芽は楕円形で帯褐色)。果実は球形、果時の小花柄は反り返る。果実は球形、直径約4㎜、先は短い嘴状。種子は多角形、幅0.5㎜×厚さ0.4mm。発芽は初生葉が5~6枚(U. vulgarisでは9~13枚)。この植物はしばしば分枝するが、気中シュートはない。夏以降、短い側枝のそれぞれの先端に、秋には主シュートの先端に長楕円形の殖芽ができる。
 花の形や茎の発達は、U. × japonica 、U. × neglecta 、U. vulgaris に似ているが、反り返った果時の小花柄と小さな長楕円形の殖芽を持つことで前者の2種とは区別される。U. japonica とは、殖芽が帯褐色で花茎より狭く長楕円形(U. japonicaは球形)、花茎中央に中空がないこと、Ut, vulgaris とは、シュートが繊細で、初生葉が 9~13 枚ではなく 5~6 枚であることで区別される。また、葉と花が多数分岐することで U. pilosa=U. aurea とは区別でき、気中シュートがないことでも容易に区別される。
【Flora of Japanの解説 】
 Utricularia tenuicaulis Miki 和名はイトタヌキモとされているが、ミカワタヌキモとは異なる。
 シャクジイタヌキモ(Utricularia siakujiiensis, )に似ている。植物は自由に浮遊し、細く、呼吸枝(respiratory branches)はない。葉は羽状分裂し、裂片は細かく、棘状の歯がある。捕虫嚢は少数。花茎は長さ10~15㎝、少数の卵形、膜質の鱗片葉がある。花は3~7個つく。苞は広卵形、膜質、先は円形、長さ約3㎜。小花柄は長さ1.5~2㎝、斜上し、果時には後屈し、ときに上部でわずかに太くなる。萼片は膜質、広卵形、長さ3~4㎜、先は鈍形、上側の萼片はわずかに長いかまたはほぼ同長。花冠は直径約1㎝、淡黄色、距は下唇より短い。蒴果は球形、直径約4㎜、先端に嘴状の短い花柱がある。種子は角(かど)があり、端が切形。花期は8~9月。池に生える。本州、四国、九州に分布する。

Utricularia tenuicaulisとUtricularia australisを同一とする説


 イヌタヌキモはYListやFlora of ChinaではUtricularia australis R.Br.とし、Utricularia tenuicaulis Mikiをsynonymとしている。
【Flora of Chinaの解説】
 Utricularia × japonica MakinoやU. × neglecta Lehmannを含めたものである。
(1) Utricularia australis R.Br

  synonym Utricularia vulgaris L. var. tenuicaulis (Miki) F.T.Kuo

  synonym Utricularia vulgaris L. var. japonica (Makino) Tamura f. tenuicaulis (Miki) Komiya

  synonym Utricularia tenuicaulis Miki

  synonym Utricularia australis R.Br. f. tenuicaulis (Miki) Komiya et C.Shibata

  synonym Utricularia vulgaris auct. non L.
 日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、韓国、中国、台湾、モンゴル、アフガニスタン、ブータン、インド、インドネシア、カシミール、ミャンマー、ネパール、パキスタン、パプアニューギニア、フィリピン、ロシア(サハリン)、スリランカ。 アフリカ、南西アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、太平洋諸島(ニュージーランド)原産。中国名は南方狸藻 nan fang li zao。南北アメリカを除く世界中に分布し、種子を形成しないものが多く、稔性のあるものをU. australis f. tenuicaulis 、不稔のものをUtricularia australisと分けていたこともある。
 多年草、半固着性水生植物(suspended aquatic)。仮根(rhizoids)は普通、あり、糸状で、多数の短い二又分枝の枝をもつ。匍匐茎(stolons)は糸状、分枝する。葉片(leaf segments)のトラップは、柄があり、卵形、長さ0.5~2.5㎜、口部は側生または底につき、付属体は2個、背側につき、単純または分枝し、剛毛状、より短い単純な側剛毛をもつ。葉は多数、長さ1.5~4cm、基部から2個のほぼ等しい1次裂片に分割される。1次裂片は外形が卵形、楕円形、または卵状長円形、羽状に2次裂片に分裂する。2次裂片はさらに2分裂する。最終裂片は毛細管状で、わずかに扁平、縁はまばらに小歯があり、先と歯には小剛毛がある。花序は直立し、長さ(5~)10~30 cm、花が3~8個つき、無毛。花序柄は円柱形、太さ1~2㎜、鱗片は1~3個つき、苞に似る。苞は底着、ほぼ円形、直径2~5mm、基部に耳があり、先は円形で不明瞭な3歯がある。花柄は花時に直立し、果時に反曲し、円柱形、長さ1~2.5cm。小苞は無い。萼片は卵形、長さ3~4㎜、ほぼ等長。下側の萼歯は凹形。上側の萼歯は先が円形。花冠は黄色、長さ1.2~1.5cm、下唇は横方向に楕円形、基部は明瞭に膨れ、先は円形~鈍形、距は広円錐形、花冠の下唇よりも明瞭に短く、わずかに曲がり、先は鈍形。口蓋(palate)は無毛。上唇は広卵形になり、先は小凹形。花糸は長さ約2mm、曲がる。葯の半葯(thecae)は分離。子房は球形、無柄の腺で密に覆われる。花柱は明瞭。柱頭は下唇が半円形で縁毛があり、上唇は非常に短いか、廃れる。蒴果は球形、直径3~4㎜、横周裂開。種子は角柱状、長さ0.5~0.6㎜×幅0.5~0.7㎜、4~6の角(かど)があり、すべての角(かど)に狭い翼がある。種皮は小さな明瞭なわずかに細長い網目がある。花期は6~11月。果期は7~12月。2n=40 , 44。

24 Utricularia uliginosa Vahl ムラサキミミカキグサ 紫耳掻草
  synonym Utricularia affinis Wight
  synonym Utricularia yakusimensis Masam.
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、スリランカ、タイ、ベトナム、オーストラリア、太平洋諸島原産。中国名は齿萼挖耳草 chi e wa er cao。英名はbladderwort。湿地に生える小さな食虫植物。
 多年草、高さ5~15㎝。細い地下茎を伸ばし、ところどころに捕虫嚢をつける。葉は水深により沈水葉と気水葉の2形となる。気水葉は長さ3~8㎜のへら形~倒披針形。深い水深の沈水葉は線形で大きい。花茎の上部に直径3~4㎜の花を数個つける。花は淡青色~紫紫色、濃色の条線がある。上唇弁が下唇弁よりやや小さく、上唇弁と下唇弁が上に向き、距は長さ2~3㎜、下方へ突き出て、上からよく見えないことが多い。萼は広卵形、花とほぼ同色でやや濃色。果実は萼が大きくなり、耳掻きのような形になる。花期は8~10月。

24-1 Utricularia uliginosa Vahl f. albida (Makino) Komiya et C.Shibata シロバナミミカキグサ 

  synonym Utricularia yakusimensis Masam. f. albida (Makino) H.Hara

 白花品種。

25 Utricularia vulgaris L. ウトリクラリア・ブルガリス
  synonym Utricularia major St.-Lag.
  synonym Utricularia officinalis Thornton
  synonym Utricularia vulgaris subsp. major (L.) Ehrh.
 中国(甘粛省、河北省、黒龍江省、河南省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、寧夏回族自治区、青海省、陝西省、山東省、山西省、四川省、新疆ウイグル自治区、西蔵)、アフガニスタン、カザフスタン、モンゴル、パキスタン、ロシア、ウズベキスタン、南西アジア、 北アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は狸藻 li zao。英名はgreater bladderwort, common bladderwort。海抜3700m付近までの湖、池、溝、川、水田に生える。
 多年草、浮遊性水生植物。仮根(rhizoids)は普通、糸状で、二又分枝の枝をもつ。匍匐茎(stolons)は糸状、分枝する。捕虫嚢は葉の裂片の上につき、柄があり、卵形、長さ1.5~5㎜、口部は側生、付属体は2個、背側につき、単純または分枝し、剛毛状、側部の剛毛はより短く単純。葉は匍匐茎の上に多数つき、長さ1.5~6㎝、基部から2個の不等長の1次裂片に分割され、1次裂片は外形が卵形、楕円形、または卵状長円形で、羽状に2次裂片に分裂する。2次裂片はさらに2又分裂して、多数の裂片に分割される。最終の裂片は毛細管状で、わずかに扁平、先および側部に細かい小剛毛(setulose)があり、ときに縁に短い歯があるか、または無い。花序は直立し、長さ10~30 cm、花が3~12個つき、無毛。花序柄は円柱形、太さ1~2.4㎜、鱗片は1~4個つき、苞に似る。苞は底着し、広卵形、長さ3~7㎜、基部は心形~耳があり、先は鋭形~鈍形。小花柄は花時に直立し、果時に下向きに曲がり、円柱形、長さ0.6~1.5㎝。小苞は無い。萼片は卵形、長さ2.5~5㎜、腺がある。下側の萼片は上側の萼片よりわずかに短く、先は鈍形~凹形。上側の萼片は先が鋭形~ほぼ鋭形。花冠は黄色、長さ1.2~2㎝。下唇は横長の楕円形~広卵形になり、基部は明瞭に膨れ、縁は強く下曲し、先は小凹形。距は狭い円錐形~狭い筒形、基部は円錐形、花冠の下唇よりも著しく短く、±真っ直ぐ、背面のみに内腺(internal glands)があり、先はわずかに鈍形。口蓋は上部の1/2が短毛と有柄の腺で覆われる。上唇は広卵形、上側の萼片の長さの約2倍、先は小凹形~切形。花糸は長さ約2㎜、曲がる。葯の半葯(thecae)は分離。子房は球形、密に腺がある。花柱は明瞭。柱頭は下唇がほぼ円形で縁毛があり、上唇は切形~広三角形。蒴果は球形、直径約5㎜、横周裂開。種子はプリズム形、長さ0.3~0.4㎜×幅0.5~0.7㎜、4~6角(かど)があり、すべての角(かど)に狭い翼がある。種皮は小さい明瞭なわずかに細長い網目がある。花期は6~8月。果期は7~9月。2n=(36~), 40, 44。

参考

1) Flora of China
 Utricularia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=134270
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Utricularia
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30001688-2
3) World Flora Online
 Utricularia
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000039907
 Utricularia alpina Jacq.
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-0000415718
 Utricularia bisquamata Schrank
https://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-0000415695
4) Flora of China
 Utricularia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110810
5) NEW SOUTH WALES FLORA ONLINE
 Utricularia gibba L.
https://plantnet.rbgsyd.nsw.gov.au/cgi-bin/NSWfl.pl?page=nswfl&lvl=sp&name=Utricularia~gibba
6) 日本歯科大学紀要. 一般教育系 23巻 105-123 1994
 総説ヒメミミカキグサ
東海丘陵要素の植物地理1.定義植物分類・地理 40:190~192. 1994
file:///C:/Users/haovo/Downloads/23-12.pdf
7) 日本生態学会誌 57:245-250(2007)
 浮遊植物タヌキモ類の繁殖様式と集団維持
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seitai/57/2/57_KJ00004717033/_pdf
8) 植物分類・地理分類研究 67(1) 59-61 2019
 四国新産のイトタヌキモ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/67/1/67_0671-08/_pdf/-char/ja
9) 特定外来生物等の選定作業が必要と考えられる 外来外来生物 - 環境省
 エフクレタヌキモ、ウトリクラリア・インフラタ、ウトリクラリア・プラテンシス
https://www.env.go.jp/nature/intro/4document/data/sentei/plant08/002s_shiryou.pdf
10) Acta Phytotax. Geobot. 70 (2): 129–134 (2019)
 日本国内で野生化した外来タヌキモ属植物の同定 角野康郎
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/67/2/67_0672-15/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/70/2/70_201820/_pdf
11)Flora do Brasil 2020
 Utricularia platenis Speg.
http://floradobrasil.jbrj.gov.br/reflora/listaBrasil/ConsultaPublicaUC/ConsultaPublicaUC.do#CondicaoTaxonCP
12) The Jepson Herbarium
 Utricularia macrorhiza
https://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=47607
13) JSTOR
 Utricularia reticulata
https://plants.jstor.org/compilation/utricularia.reticulata
 Utricularia neglecta
https://plants.jstor.org/compilation/utricularia.neglecta
14) 国立情報学研究所(NII)nii.ac.jp
 日本における食虫植物の都道府県別分布 一文献を主として
https://ndu-rep.repo.nii.ac.jp/record/581/files/31-14.pdf
15) New Zealand Plant Conservation Network
 Utricularia australis
https://www.nzpcn.org.nz/flora/species/utricularia-australis/
16) NEW SOUTH WALES FLORA ONLINE
 Utricularia australis
https://plantnet.rbgsyd.nsw.gov.au/cgi-bin/NSWfl.pl?page=nswfl&lvl=sp&name=Utricularia~australis
17) 日本の水生植物
 水生植物図譜
https://waterplants.web.fc2.com/zufu_tanukimo.html
18) 化学同人
 【付録】日本の食虫植物
https://www.kagakudojin.co.jp/files/c00106/c00106-03.pdf
19) Wild plants in and around Shimane 島根とその周辺の野生植物
 Utricularia tenuicaulis / Inutanukimo イヌタヌキモ
http://wildplantsshimane.jp/Plates/Utricularia_tenuicaulis.htm
20) Flora of Japan
 Utricularia
https://www.biodiversitylibrary.org/item/95083#page/846/mode/1up
21) 水草研会報 Na8 (1982)
 シャクジイタヌキモに就いて
https://mizukusakenjp.sakura.ne.jp/PDF/BWPSJ008_5.pdf