ミミカキグサ 耳掻草

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Flora of Mikawa

タヌキモ科 Lentibulariaceae タヌキモ属

中国名 挖耳草 wa er cao
英 名 bladderwort, common yellow bladderwort
学 名 Utricularia bifida L.
ミミカキグサの花序
ミミカキグサの花
ミミカキグサの花
ミミカキグサの花2
ミミカキグサ
ミミカキグサ2
花 期 8~10月
高 さ 5~15㎝
生活型 1年草
生育場所 湿地
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、インド、ネパール、スリランカ、カンボジア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア、グアム、オーストラリア
撮 影 黒河湿地  01.9.29
和名の由来は花後の萼が耳掻きに似ていることから。湿地に生える小さな食虫植物。捕虫嚢は約1㎜と小さく、地下茎などについて泥中にあり、微生物を捕食する。
 細い白色の地下茎を泥中に伸ばし、水深のあるところではところどころに線形の水中葉をつける。水深がないと気中葉を泥上に出す。気中葉は長さ5~8㎜でやや幅が広い。水上に出した花茎の上部に幅3~5㎜の黄色い2唇形の花を数個つける。上唇は小さく、先が浅く2裂し、下唇は大きく、中央に膨らみがある。距は下向きにつき、先が尖る。萼片や花柄は橙色を帯びる。花後に萼が大きくなり、果実は萼に包まれて扁平になり、耳掻きのような形になる。

タヌキモ属

  family Lentibulariaceae - genus Utricularia

 多年草または1年草、陸生、着生、または水生、真の根は無い。茎は仮根(rhizoids)と匍匐茎(stolons)に変わり、まれにしか発達しない。仮根、匍匐茎、および/または葉の上のトラップ(捕虫嚢 bladder)は小さく、嚢状(bladderlike)。嚢には口部があり、付属体がつき、内面と外面に腺があり、内面につく腺(内腺:internal glands=bladders glands)が種の電子顕微鏡的な判別に使われる。葉は互生し、または根生のロゼットにつき、単葉~多数、分裂し、脈は1~3本、不分枝、二又分枝、または羽状分枝する。花序は総状花序または花が単生し、花序柄があり、普通、単純で、めったに分枝せず、直立~絡みつき、苞がある。苞と小苞がしばしばあり、鱗片状で、ときに中部着生(basisolute:挿入点より下に基部が伸びている)。萼片は基部から深裂し、2つの等しいまたは等しくない裂片に分かれ、裂片葉はときに先で2深裂する。花冠の下唇は上唇よりも大きい。下唇は全縁または2または3(~6)裂し、距があり、口蓋(palate)がさまざまに隆起する。上唇は全縁または2または3裂する。葯の半葯(thecae)は合流するか(confluent)または分離。蒴果は内側が胞背裂開、外側および内側の両方で胞背裂開、または横周裂開(circumscissile)、まれに非裂開。種子は各蒴果に少数、多数、まれに1個、様々な付属体がある。英名はbladderwort。浮遊性の水生植物タヌキモ類は種子による有性繁殖に加えて、植物体の断片(切れ藻)やシュートの先端に形成される未展開の葉の集まり(殖芽)による栄養繁殖を行う。
 世界に約220種あり、全世界に分布するが、主に熱帯地域にあり、温帯地域北部にもいくつかある。

タヌキモ属の主な種と園芸品種

1 Utricularia alpina Jacq. ウトリクラリア・アルピナ
 ブラジル、コロンビア、ガイアナ、ジャマイカ、リーワード諸島、スリナム、トリニダード・トバゴ、ベネズエラ、ウィンドワード諸島原産。熱帯の高山地帯の樹幹上や岩の上に生える着生植物。
 着生の多年草。匍匐茎は糸状またはわずかに肉質、花序の基部から放射状に広がり、それらのいくつかは起点またはその近くで膨れ、長さ1.5~2.0㎝の楕円形の塊茎を形成する。光合成器官は葉状で、花序の基部から1~2個、全長は6~25㎝。葉身は狭倒卵状楕円形または楕円形、先は鈍形~ほぼ鋭形、革質、多数の脈があり、脈は明瞭に乾燥せず、基部は強く沿下する。偽葉柄は普通、葉身より短い。トラップは糸状の匍匐茎につき、卵形、柄があり、長さ約1㎜、口部の基部、上唇に2個の錐形の反り返った付属体がつく。花序は長さ10~35㎝。花序柄は太さ1~2㎜、花が1~3個つく。苞は線状披針形、先は鋭形または尖鋭形、長さ5~7㎜。小苞は似ているが、普通、狭く、わずかに短く、不稔の鱗片が花序柄に2~4個つき、苞と似るが短い。花柄は直立し、苞の4~6倍の長さがある。 花は萼片の葉が等しくなく、卵形で、鈍く、基本的に丸みを帯びて下垂している花、長さ2~3㎝×幅1.2~2.0㎝。花冠は通常白く、口蓋(palate)は黄色で、長さ4~6㎝、無毛または微細なパピラがあり、特に距の先にあり、上唇は横長の長円形で、先は丸く、幅は長さの2~3倍で、上部の萼片と同長かまたはそれより長い。下唇は大きく、幅5㎝以下、扇形、先は丸く、全縁、口蓋はギボス形(gibbous)、明瞭で、距は錐形、上向きに曲がり、下唇とほぼ同長。蒴果は卵形、長さ約10㎜、壁は比較的厚く、1本の外側の隙間から縦に裂開する。種子は多数、狭円筒状紡錘形、長さ0.35~0.5㎜。花期は3~6月。
品種) 'Pittier Moon'

2 Utricularia aurea Lour. ノタヌキモ 野狸藻
  synonym Utricularia pilosa (Makino) Makino
 日本(本州新潟以南、四国、九州、沖縄)、韓国、中国、台湾、カンボジア、インド、インドネシア、カシミール、ラオス、ネパール、パキスタン、パプアニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、オーストラリア原産。中国名は黄花狸藻 huang hua li zao。
 多年草または1年草、半固着性水生植物(suspended aquatic)。仮根(rhizoids)は普通、あり、花序柄の基部または基部のすぐ上で垂直になり、紡錘形、膨らみ、糸状の枝をもつ。匍匐茎(stolons)は糸状~比較的太く、分枝する。葉片のトラップは柄があり、斜めの卵形、長さ1~4㎜、口部は側生または底につく。付属体は2またはときに、無く、背側につき、まばらに分枝し、剛毛状。葉は匍匐茎に多数つき、長さ2~8㎝、基部から分裂し、3または4個(または5個)の1次裂片が半輪生する。1次裂片は外形が卵形~長円状披針形、幅1.5~3㎝、羽状に2次裂片に分裂する。2次裂片は、基部からさらに多数の裂片に二分される。最終の裂片は毛細管状、わずかに扁平平で、側部および先に小剛毛がある。托用状の耳が普通、1次裂片の基部にあり、外形が半円形、2裂して、まばらな小剛毛のある糸状の裂片になる。花序は直立し、長さ5~25㎝、花が3~10個つき、無毛。花序柄は円柱形、太さ0.5~1.5㎜、鱗片は無い。苞は底着し、広卵形~円形、長さ1~2㎜、先は円形。花柄は花時に直立し、果次に鋭く後屈し、太くなり、長さ0.4~2㎝、背腹方向に扁平になる。小苞は無い。萼片は卵形、はぼ等長、先は円形~ほぼ鋭形、下側の萼片はしばしば上側の萼片よりわずかに広く、花時に長さ2~3㎜、果時に肉質になり、長さ7~9㎜、開出~後屈する。花冠は淡黄色、長さ1~1.5㎝、有毛または無毛。下唇は横方向に楕円形で、基部には明瞭な2裂片の膨らみがあり、先は円形~凹形。距は狭い円錐形の基部から円筒形になり、±下唇とほぼ同長で平行、真っ直ぐまたはわずかに曲がり、先は鈍形~ほぼ鋭形。口蓋(palate)は毛がある。上唇は広卵形、先は丸い。花糸は長さ1~1.5㎜、曲がる。葯の半葯(thecae)は±合流する。子房は卵形。花柱は明瞭。柱頭は下唇が半円形、上唇は廃れる。蒴果は球形、直径4~5㎜、横周裂開。花柱は宿存し、大幅に大きく長くなり、しばしば、蒴果の長さと同長またはそれを超える。種子は角柱状で、幅1~2㎜、5角または6角、すべての角(かど)に幅が狭い翼がある。種皮は ±等直径の不明瞭な網目がある。花期は6~11月。果期は7~12月。2n=80。
2-1 Utricularia aurea Lour. f. immaculata Tamura モンナシノタヌキモ 
 花冠下唇に橙色班のないもの。

3 Utricularia australis R.Br. イヌタヌキモ 犬狸藻
  synonym Utricularia vulgaris L. var. tenuicaulis (Miki) F.T.Kuo
  synonym Utricularia vulgaris L. var. japonica (Makino) Tamura f. tenuicaulis (Miki) Komiya
  synonym Utricularia tenuicaulis Miki
  synonym Utricularia australis R.Br. f. tenuicaulis (Miki) Komiya et C.Shibata
  synonym Utricularia vulgaris auct. non L.
 日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、韓国、中国、台湾、モンゴル、アフガニスタン、ブータン、インド、インドネシア、カシミール、ミャンマー、ネパール、パキスタン、パプアニューギニア、フィリピン、ロシア(サハリン)、スリランカ。 アフリカ、南西アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、太平洋諸島(ニュージーランド)原産。中国名は南方狸藻 nan fang li zao。
 南北アメリカを除く世界中に分布し、種子を形成しないものが多く、稔性のあるものをU. australis f. tenuicaulis 、不稔のものをUtricularia australisと分けていたこともある。
 多年草、半固着性水生植物(suspended aquatic)。仮根(rhizoids)は普通、あり、糸状で、多数の短い二又分枝の枝をもつ。匍匐茎(stolons)は糸状、分枝する。葉片(leaf segments)のトラップは、柄があり、卵形、長さ0.5~2.5㎜、口部は側生または底につき、付属体は2個、背側につき、単純または分枝し、剛毛状、より短い単純な側剛毛をもつ。葉は多数、長さ1.5~4cm、基部から2個のほぼ等しい1次裂片に分割される。1次裂片は外形が卵形、楕円形、または卵状長円形、羽状に2次裂片に分裂する。2次裂片はさらに2分裂する。最終裂片は毛細管状で、わずかに扁平、縁はまばらに小歯があり、先と歯には小剛毛がある。花序は直立し、長さ(5~)10~30 cm、花が3~8個つき、無毛。花序柄は円柱形、太さ1~2㎜、鱗片は1~3個つき、苞に似る。苞は底着、ほぼ円形、直径2~5mm、基部に耳があり、先は円形で不明瞭な3歯がある。花柄は花時に直立し、果時に反曲し、円柱形、長さ1~2.5cm。小苞は無い。萼片は卵形、長さ3~4㎜、ほぼ等長。下側の萼歯は凹形。上側の萼歯は先が円形。花冠は黄色、長さ1.2~1.5cm、下唇は横方向に楕円形、基部は明瞭に膨れ、先は円形~鈍形、距は広円錐形、花冠の下唇よりも明瞭に短く、わずかに曲がり、先は鈍形。口蓋(palate)は無毛。上唇は広卵形になり、先は小凹形。花糸は長さ約2mm、曲がる。葯の半葯(thecae)は分離。子房は球形、無柄の腺で密に覆われる。花柱は明瞭。柱頭は下唇が半円形で縁毛があり、上唇は非常に短いか、廃れる。蒴果は球形、直径3~4㎜、横周裂開。種子は角柱状、長さ0.5~0.6㎜×幅0.5~0.7㎜、4~6の角(かど)があり、すべての角(かど)に狭い翼がある。種皮は小さな明瞭なわずかに細長い網目がある。花期は6~11月。果期は7~12月。2n=40 , 44。
3-1 Utricularia australis R.Br. f. fixa (Komiya) Komiya et C.Shibata チョウシタヌキモ
  synonym Utricularia vulgaris L. var. japonica (Makino) Tamura f. fixa Komiya 異分類
 本州、九州に分布。沈水生。

4 Utricularia bifida L. ミミカキグサ 耳掻草
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、インド、ネパール、スリランカ、カンボジア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア、グアム、オーストラリア原産。中国名は挖耳草 wa er cao。英名はbladderwort, common yellow bladderwort。湿地に生える。和名の由来は花後の萼が耳掻きに似ていることから。湿地に生える小さな食虫植物。捕虫嚢は約1㎜と小さく、地下茎などについて泥中にあり、微生物を捕食する。
 1年草。陸生、高さ5~15㎝。細い白色の地下茎を泥中に伸ばし、水深のあるところではところどころに線形の水中葉をつける。水深がないと気中葉を泥上に出す。気中葉は長さ5~8㎜でやや幅が広い。水上に出した花茎の上部に幅3~5㎜の黄色い2唇形の花を数個つける。上唇は小さく、先が浅く2裂し、下唇は大きく、中央に膨らみがある。距は下向きにつき、先が尖る。萼片や花柄は橙色を帯びる。花後に萼が大きくなり、果実は萼に包まれて扁平になり、耳掻きのような形になる。花期は8~10月。

5 Utricularia bisquamata Schrank ウトリクラリア・ビスクアマタ
 南アフリカ、アンゴラ、レソト、マダガスカル、ナミビア原産。英名はSouth African bladderwort。
品種) 'Betty's Bay'

6 Utricularia caerulea L. ホザキノミミカキグサ 穂咲の耳掻草
  synonym Utricularia racemosa Wall. ex Walp.
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、インド、ネパール、スリランカ、カンボジア、ラオス、マレーシア、ミャンマータイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア、オーストラリア、マダガスカル、グアム原産。中国名は短梗挖耳草 duan geng wa er cao。英名はblue bladderwort。
 1年草。陸生、高さ10~30㎝。葉はほとんど見えないほど小さなへら形、長さ2~4㎜の鱗片葉。捕虫嚢は長さ1㎜ほどで葉柄や地下茎につき、動物性プランクトンを捕食する。花は細長い花茎に数段につく。花は長さ4~5㎜、紅紫色、小花柄は短く、ほとんどない。花弁は2唇形、上唇は小さく、下唇は大きく、くし型の白い斑紋があり、花の基部には前方へ突き出した先のとがった大きな距がある。果実はほぼ球形の蒴果、横向きにつく。種子は多数。2n= 36, 40。花期は6~9月。
6-1 Utricularia caerulea L. f. leucantha (Komiya) Komiya シロバナホザキノミミカキグサ 
 白花品種。

7 Utricularia dimorphantha Makino フサタヌキモ 房狸藻
 日本固有種(本州)。で、湖沼やため池に生育する。
 多年草。浮葉性(半固着性)の水草。茎は長さ30~80cm、ややまばらに分枝する。葉は線形で長さ2~6cm、多数の細裂片に分かれ、非常に柔らかい。他のタヌキモ類に比べて、捕虫嚢はごく少なく、全く捕虫嚢をつけないことがある。花は通常の開放花のほかに閉鎖花をつけ、開放花は少ない。開放花は水面上に伸びた7~14cmの花茎の総状花序につく。総状花序に花は3~5(10)個つき、花茎に鱗片葉は無い。花柄は長さ約1㎝。萼片は2個、広卵形、長さ2~3mm、先は凹形、果時に大きくなる。花は淡黄色~橙黄色、2唇形、上唇より下唇が大きく、横に広い楕円形、長さ約6㎜、幅約8㎜、距は卵状長楕円形、長さ3~4㎜、前方に真っすぐ伸びる。閉鎖花は水中茎につき、数節おきに1個づつ単生し、蕾の状態のまま自家受粉する。蕾は球形、直径1~2(~4)mm、ごく短い花柄がある。蒴果は球形、直径2~3(14)㎜。種子は角柱形、稜があり、両端は切形、中央部は膨れる。殖芽(球芽)は秋遅くに枝先に形成され、ほぼ球形で緑色、長さ12~20mm×幅10~15㎜。花期は7~8月(開放花)、6~9月(閉鎖花)。

8 Utricularia gibba L. オオバナイトタヌキモ 大花糸狸藻
  synonym Utricularia exoleta R.Br.  ミカワタヌキモ
  synonym Utricularia gibba subsp. exoleta (R.Br.) P.Taylor
 日本、中国、台湾、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、パプアニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、太平洋諸島(ニューカレドニア、パラオ)、南西アジア、ヨーロッパ、アフリカ、マダガスカル、熱帯アメリカ、インド洋諸島(モーリシャス)、南北アメリカ原産。中国名は少花狸藻 shao hua li zao。Flora of Chin , Kew Science , GBIFではUtricularia exoletaはUtricularia gibbaとされている。  1年草または多年草、固着性(affixed)または半固着性(suspended)水生植物。仮根(rhizoids)は無または有、糸状、分枝する。匍匐茎(stolons)は糸状、多数、分枝し、しばしばマット状になる。捕虫嚢(traps)は葉の裂片の側部につき、柄があり、卵形、長さ1~2.5㎜、開口部は側部につく。付属体は2個、背側につき、分枝し、剛毛状で短い剛毛をつける。葉は匍匐茎に多数つき、長さ0.5~1.5㎝。1次裂片は(1または)2個、分枝しいないか、またはまばらに二又分枝して3~8個の最終裂片になる。最終r鉄片は毛細管状で、わずかに扁平、縁は全縁またはまばらに歯があり、先と歯には小剛毛がある。花序は直立し、長さ2~15㎝、花が1~3(~6)個つく。花序柄は円柱形、太さ0.3~0.5㎜、無毛、鱗片が1個つき、苞に似る。苞は底着、半円形、長さ約1㎜、細かい腺があり、先は切形で不明瞭な歯がある。花柄は直立~開出し、長さ2~12㎜、糸状。小苞は無い。萼片はほぼ等長、広卵形~円形、長さ1.5~2㎜、先は円形。花冠は黄色、長さ4~8㎜。下唇は上唇よりわずかに小さく、基部には明瞭な膨れた2裂片があり、先は円形。距は狭円錐形~円筒形、基部は円錐形、花冠の下唇よりも短いかまたは長く、上部にはまばらに有柄の腺があり、先は鈍形。口蓋には密に毛がある。上唇は、広卵形~ほぼ円形、上側の萼片の長さの約2倍、先は不明瞭に3裂する。花糸は長さ1~1.5㎜、曲がる。半葯は合流する。子房は球形、花柱は明瞭。柱頭は下唇が横方向に楕円形で、上唇は廃れる。蒴果は球形、直径2~3㎜、2バルブがある。種子はレンズ形、直径0.8~1㎜、縁に広い翼があり、翼には浅く不規則な歯がある。種皮は小さな目立つ網目がある。花期は4~11月。果期は5~12月。2n=28。

【PlantNET - FloraOnlineの解説】  固着性(affixed)または半固着性(suspended)水生植物、1年草または多年草。葉は糸状、長さ0.5~1.5cm、1次裂片は2個、まれに1個あり、1次裂片はまばらに4分岐し、まれに8個の最終裂片に分岐する。葉の捕虫嚢(traps)は卵形、長さ1~2.5㎜、口部は側面につく。総状花序は直立し、水面状に突き出しまたはまれに水没し、単生または2個以上が一緒にまたは連続して発生し、長さ1~20㎝、花が2~6個つき、花序軸が短い~細長く、鱗片は1個まれに2個、しばしば無くなり、花序柄のほぼ中間につき、苞に似ている。苞は底着し、長さ約1mm。小苞は無い。萼片はほぼ等長、広卵形または円形、長さは1~3㎜。花冠は長さ4~25㎜、黄色、しばしば、赤褐色の脈がある。距は狭円錐形または円筒形、下唇よりもわずかに短く~明らかに長くなる。花期は11~4月(オーストラリア)。
8-1 Utricularia gibba subsp. exoleta (R.Br.) P.Taylor ミカワタヌキモ 三河狸藻
  synonym Utricularia exoleta R.Br. ミカワタヌキモ 
  synonym Utricularia nagurae Makino
  synonym Utricularia gibba L. [Kew Science]
 Utricularia exoletaはUtricularia gibba subsp. exoletaを含めてUtricularia gibbaに含めるのが普通であるが、World Flora Onlineではこの亜種を認めている。
 日本(本州の関東から近畿地方、九州、南西諸島)、台湾、インド、オーストラリア、アフリカ。水中葉はあまり発達せず、水中の泥の上を這い、地下にも茎状の地下葉を伸ばし、あちこちに捕虫嚢をつける。別名はイトタヌキモ。愛知県の絶滅危惧ⅠB類 (国の絶滅危惧Ⅱ類)。
 ミカワタヌキモはオオバナイトタヌキモ(U. gibba)と同種に扱われることが普通であり、Kew Scienceではオオバナイトタヌキモのsynonymとしている。イトタヌキモの花は全幅3~4mmで小さいが、オオバナイトタヌキモの花は幅12~18mmと明らかに異なるとして、分類されている。
 多年草、常緑性の水草。茎は糸状、水中の泥の表面を這い、捕虫嚢をつけた地中葉で固着する(固着性)が、水中を浮遊することもある(半固着性)。殖芽や冬芽は作らない。水中葉は茎に葉は根のように見え、まばらに互生し、長さ約1㎝、1~5裂し、裂片は幅0.1~0.2mm、縁には疎に細鋸歯があり、疎に捕虫嚢をつける。花茎は高さ5~8㎝、直立し、水上に1~3個の花をつける。花冠は黄色、直径5~6㎜。距は前向き、下唇と同長かまたはやや長い。萼は長さ約2㎜、花後にほとんど大きくならない。花柄は花後に3~6mmに伸び、曲がるが下向きにはならない。蒴果は長さ約3㎜。花期は8~9月。

8-2 Utricularia exoleta R.Br. f. natans (Komiya) Komiya ナガレイトタヌキモ 
  synonym Utricularia gibba L. subsp. exoleta (R.Br.) P.Taylor f. natans Komiya
 ナガレイトタヌキモは水中に浮遊する。葉に捕虫嚢が1個で、節間が短く、生長も遅い。

9 Utricularia intermedia Heyne コタヌキモ 小狸藻
 北半球の温帯に広く分布。日本では北海道、本州に分布。中国名は异枝狸藻 yi zhi li zao。英名はflatleaf bladderwort , intermediate bladderwort。
 多年草、普通、固着性水生植物(affixed aquatic)。仮根(rhizoids)は普通、あり、糸状、二又分枝の短い枝がある。匍匐茎(stolons)は糸状で、まばらに分枝し、緑色のものもあれば、クロロフィルのないものもある。無色の匍匐茎の削減された葉の上につく捕虫嚢(traps)は柄があり、卵形、長さ1.5~4㎜、口部は側部につく。付属体は2個、背側につき、分岐し、剛毛状、側部に少数の単純な剛毛がある。葉は緑色の匍匐茎に多数つき、外形がほぼ円形~楕円形、長さ0.3~1.5(~2)㎝×幅0.4~1.8㎝、基部から掌状に分岐し、2または3個の1次裂片に分割される。1次裂片は基部から2~5個の裂片に二又分岐する。最終裂片は扁平で狭い線形、幅0.2~0.7㎜、縁は全縁またはまばらに小歯があり、側部および先部に小剛毛がある。花序は直立し、長さ8~20㎝、花が2~5個つき、無毛。花序柄は円柱形、太さ0.4~0.8㎜、鱗片が1~3個つき、苞に似る。苞は底着、広卵形~卵状三角形、長さ2~4㎜、基部には明瞭に耳があり、先は鋭形。花柄は直立し、円柱形、長さ0.5~1.5㎝。小苞は無い。萼片は卵形、長さ3~5㎜。下側の萼片は上側の萼片よりわずかに短く、先が鈍形、短く2裂または切形。上側の萼片は先が鋭形。花冠は黄色、長さ0.9~1.5㎝。下唇は横方向に楕円形で、基部は明瞭に丸く膨れ、先は円形。距は錐形、花冠の下唇よりわずかに短く、先は鋭形。口蓋は無毛、上唇は広卵形、先は円形。花糸は長さ約2㎜、曲がる。半葯は±合流する。子房は球形、腺がある。花柱は比較的長い。柱頭は下唇が円形で縁毛があり、上唇は三角形で先が鋭形または2裂する。蒴果は球形、直径2.5~3㎜、横周裂開(circumscissile)。種は見られない。花期は6~9月。2n=44。

10 Utricularia japonica Makino タヌキモ 狸藻
  synonym Utricularia vulgaris L. var. japonica (Makino) Tamura
  synonym Utricularia australis auct. non R.Br.
 World Flora Online , Kew Science , GBIFではUtricularia australis R.Br.のsynonymとされている。
 タヌキモは遺伝子解析の結果、オオタヌキモとイヌタヌキモの雑種起源であることが明らかになった(Kameyama et al. 2005)。タヌキモは結実しない。

11 Utricularia macrorhiza Leconte  オオタヌキモ 大狸藻
  synonym Utricularia vulgaris L. subsp. macrorhiza (Leconte) R.T.Clausen 
  synonym Utricularia vulgaris L. var. americana A. Gray
  synonym Utricularia siakujiiensis S.Nakaj.
 日本、中国、モンゴル、ロシア、北アメリカ原産。中国名は弯距狸藻 wan ju li zao。英名はcommon bladderwort。静かで、浅いかまたは深い、めったに流れない、酸性の水に生える。
 浮遊性水生。茎は葉がよく発達し、中央の匍匐茎(stolons)が弱く分枝し、捕虫嚢(bladder)をもつ。冬芽は長さ1~2㎝、剛毛がある。葉は長さ15~90 mm、基部で1~2深裂し、各部分は上部で不等長に羽状に全裂される。最終裂片は密で、30~150個、糸状、縁の剛毛は長さ0.1~0.3㎜。基部近くの捕虫嚢は先端近くのものよりも大きい。捕虫嚢の背と腹面の両方に内腺(internal glands=bladders glands)がある。花序は花が5~20個つく。 花序柄は長さ10~40㎝、丈夫で、直径1~3㎜。花柄は果時に反り返る。花冠は長さ1~2㎝、下唇は上唇より大きい。距は円筒形、[花冠の下唇とほぼ同長、先が顕著に上向きに曲がり]先端近くに上向きの鈎がある。果実は横周裂開(circumscissile)。種子は4~6面をもち、翼がある。2n=±40 , 44。花期は6~9月。

12 Utricularia minor L. ヒメタヌキモ 姫狸藻
  synonym Utricularia minor L. f. terrestris Glück
  synonym Utricularia minor L. f. stricta Komiya
  synonym Utricularia minor L. f. natans Komiya
  synonym Utricularia multispinosa (Miki) Miki
 日本(北海道、本州、四国、九州 )、中国、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、ブータン、インド、カシミール、キルギスタン、ミャンマー、ネパール、パキスタン、パプアニューギニア、ウズベキスタン、 南西アジア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は细叶狸藻 xi ye li zao。
 多年草、普通、固着性水生植物(affixed aquatic)。仮根(rhizoids)は無い。匍匐茎(stolons)は糸状、円柱形、まばらに分枝し、いくつかは緑色、その他はクロロフィルがない。捕虫嚢(traps)は葉の裂片の側部につき、短い柄があり、卵形、長さ0.8~2.5mm、開口部は側部につく。付属体は2個、背側につき、長く、分枝し、剛毛状、側部に少数の単純な剛毛がつく。葉は緑色の匍匐茎に多数つき、外形は半円形~ほぼ円形、長さ2~15mm×幅3~15mm、掌状に基部から分裂し、2または3個の1次裂片に分割される。1次裂片は基部からさらに2~11個の裂片に二又分岐される。最終裂片は扁平で、幅が狭い線形で、幅が0.1~0.5mm、縁は全縁またはまばらに小歯があり、先は鋭形、先および歯には微視的小剛毛がある。花序は直立し、長さ5~20(~25)cm、花が2~8個つき、無毛。花序柄は円柱形、太さ0.3~1mm、苞に似た鱗片が2~4個つく。苞は底着、広卵形~卵状三角形、長さ1.5~2mm、基部には明瞭に耳があり、先は鋭形~鈍形。花柄は花時に直立し、果時に広がり、下向きに曲がり、円柱形、長さ4~8mm。小苞は無い。萼片は広卵形、長さ2~3 mm、不等長。下側の萼片は小さく、先は狭い切形。上側の萼片は先が類鋭形。花冠はレモンイエロー、長さ6~8mm。下唇は広倒卵形、縁は反曲し、先は円形~小凹形。距は袋状~鈍い広円錐形。口蓋は長く、縁のへりが隆起し、上部は狭く、腺がある。上唇は卵形~卵状長円形、先は小凹形。花糸は長さ約1.5mm、曲がる。半葯は±分離。子房は広楕円形です。花柱は比較的長い。柱頭は下唇が広卵形で縁毛があり、上唇は三角形で先が鋭形または2~3裂する。蒴果は球形、直径2~3 mm、横周裂開。種子はレンズ形~プリズム形、長さ0.3~0.4mm×幅約1mm、角(かど)に翼はほとんどない。種皮は小さな明瞭な±等直径の網目をもつ。花期は8~9月。果期は9~10月。2n=40,44。

13 Utricularia minutissima Vahl ヒメミミカキグサ 姫耳掻草
  synonym Utricularia nipponica Makino
 日本(本州中部の愛知県、三重県)、中国、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、パプアニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、北オーストラリア原産。中国名は斜果挖耳草 xie guo wa er cao。愛知県の絶滅危惧ⅠB類(国の絶滅危惧ⅠB類)に指定されている。
 1年草、陸生。仮根(rhizoids)は毛細管状、単純。匍匐茎(stolons)は毛細血状、まばらに分枝する。捕虫嚢(traps)は仮根、匍匐茎、および葉につき、柄があり、卵形、長さ約0.2㎜、開口部は側部につく。付属体は1個、背側につき、錐形、毛状突起が1~2列に腹側に対につく。葉は少数、花序柄の基部と匍匐茎につき、無毛。葉身は狭倒卵形~線形、長さ0.3~2㎝×幅0.4~0.8㎜、膜質、1脈があり、基部は葉柄上で漸尖し、縁は全縁、先はわずかに鈍形。花序は直立し、長さ3~12㎝、花が1~10個つき、無毛。花序柄は円柱形、太さ0.2~0.4㎜、少数の鱗片があり、苞に似ている。苞は底着、狭卵形で、長さ0.5~1 mm、先は鋭形。花柄は直立し、苞とほぼ同長、糸状。小苞は苞に似るが、ときに狭く、またはそれほど鋭形ではない。萼片は凸面状、長さ1.5~2㎜、不等長、無毛。下側の萼片は先が凹形。上側の萼片は卵形で、先が鈍形。花冠はバイオレット色または白色、長さ3~7㎜。下唇はほぼ円形、基部に膨れた円形の4裂片があり、縁は明瞭に3裂する。距は錐形、花冠の下唇よりもはるかに長く、先は鋭形。上唇は長円形~倒卵形、先は凹形~円形。花糸は長さ約0.8㎜、わずかに曲がる。葯の半葯は分離。子房は卵形、花柱は短い。柱頭は下唇が横方向に楕円形、上唇は三角形。蒴果は斜めの楕円形、長さ1.5~2㎜、1本の縦の腹側の隙間から裂開する。種子は球形~広楕円形、長さ2~3㎜。種子は網目が目立つ。花期は9~11月。果期は11~12月。2n=16。
13-1 Utricularia minutissima Vahl f. albiflora Komiya  シロバナヒメミミカキグサ 
 白花品種。

14 Utricularia ochroleuca R.Hartm. ヤチコタヌキモ 谷地小狸藻
  synonym Utricularia intermedia Heyne f. ochroleuca (R.Hartm.) Komiya
  synonym Utricularia stygia G. Thor
 日本(北海道、本州)、韓国、アフガニスタン、イラン、ベルギー、チェコスロバキア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イギリス、グリーンランド、アイルランド、カムチャッカ、ラブラドール、マガダン、マニトバ、ノルウェー、ノバスコシア、ヌナブト、スウェーデン、アラスカ、北アメリカ(USA、カナダ)原産。英名はyellowishwhite bladderwort , pale bladderwort , cream-flowered bladderwort。別名はヤチマタヌキモ。浅い(一般的に水深30cm以下)、酸性水の湿地などに生える。
 おそらくヒメタヌキモとコタヌキモ雑種起源であろうと推定されている(Utricularia minor×Utricularia intermedia)。
 根付く水生生物(固着性、半固着性水生)。 茎は2種類あり、1種は自由に浮遊し、緑色、葉があり、少数の捕虫嚢(traps)がつき、他は泥に根を出し、白色、葉が無く、捕虫嚢をもつ。冬芽は剛毛がある。葉は長さ5~15mm、基部で3深裂し、上部で様々に全裂し、最終の裂片は20個以下、ほぼ線形、扁平、縁の2~7(10)の歯にそれぞれに1本の剛毛があり、先端は鋭い。 花序は花が2~5個つく。花序柄は長さ15cm以下、直径1㎜以下。花冠は長さ10~15mm、下唇は上唇長さの約2倍、円錐形の距(先端が円筒形の場合もある)の長さの約2倍。果実は見られない。種子は見られない。2n=±40~48。花期は6~9月。

15 Utricularia reticulata Sm. アミメミミカキグサ 
 インド、スリランカ原産。 英名はnet-veined bladderwort。

16 Utricularia sandersonii Oliv. ウサギゴケ 兎苔
 南アフリカ原産。
 小型の多年草、陸生。仮根(rhizoids)は少なく、毛細管状、単純。 匍匐茎は多数、長さ5.0㎝以上、太さ0.25㎜。葉は多数つき、葉身は長さ15㎜×6㎜・以下、くさび形~倒卵形~扇形、葉柄がある。トラップは仮根、匍匐茎、や葉に多数つき、長さ1~1.5㎜、卵形、柄がある。花序は長さ2~6㎝、直立、単生し、単純。花序柄は直径約0.6㎜、円柱形、無毛。 苞は長さ約1㎜、底着、三角形または長円形。花は1~4個つき、離れる。花柄は長さ1.5~3㎜、花時に広がり、果時に下向き曲がる。萼は長さ2㎜。花冠は長さ10~15㎜、ごく薄い藤色または白色、暗藤色の斑紋があり、花冠の上唇は深裂し、2個の散開した裂片をもち、うさぎの耳に似る。距は錐形、下唇の長さの2~3倍。蒴果は長さ約2㎜、球形、縦の隙間から裂開する。種子は帰化した個体群ではできないようである。 品種) 'Blue'

17 Utricularia sp. aff. platenis Speg. エフクレタヌキモ 
  synonym Utricularia inflata Walter
 原産地不明、南アメリカの可能性が高いと推定されている。日本国内のものはの学名は U. inflata とされてきたが、分類について再検討された結果、ウトリクラリア・インフラタとは形態的、遺伝的に違いがある(葉緑体のDNA分析の結果、エフクレタヌキモとウトリクラリア・インフラタの間に4領域で違いがみられた)、一方で、ウトリクラリア・プラテンシスと多くの特徴が共通するが、捕虫嚢のつき方が異なることから、2018 年に学名が変更された。
 池,湿地,水路等に生える水生食虫植物。成長が早いうえに、分枝が立体的で、葉の密度が高いために容易に水中の空間を占有する。また、植物体のまま水中を浮遊して越冬し、水流に乗って広がり水面を占有するので、国の特定外来生物に指定され、重点対策外来種として警戒されている。すでに静岡県、兵庫県、大阪府,愛知県で確認されている。
 ウトリクラリア・インフラタ(現在ではウトリクラリア・ブレビスカパの異名)とは花の距の先端が鈍頭で凹状にならないこと、花粉が異常で全く結実しないことなどが異なる。
 多年草。食虫植物(carnivorous plant)。茎は水中で分枝して長さ2m以上になる。葉は放射状に輪生する。植物体のまま越冬し,水中を浮遊して広く占有する.春と秋の2回、に4~9枚の浮き袋に変化した浮葉を放射状に輪生し、花茎を水上に伸ばし、花をつける。花茎は長さ4~20cm。花冠は鮮黄色、長さ1.5~2.5cm、距は長さ約8mmと大きく、距の先端が鈍頭で凹状にならない。花粉が異常で全く結実しない。
(1) Utricularia breviscapa C.Wright ex Griseb. ウトリクラリア・ブレビスカパ
  synonym Utricularia inflata  ウトリクラリア・インフラタ
  synonym Utricularia biovularioides (Kuhlm.) P.Taylor 詳細不明
 ウトリクラリア・インフラタはUSA原産。英名はswollen bladderwort , floating bladderwort , large floating bladderwort。アメリカでは有害雑草(Noxious Weed)とされている。日本定着の情報はない。World Flora Onlineでは南アメリカ産のUtricularia breviscapa C.Wright ex Griseb.のsynonymとしている。
 葉は二又分岐の毛細管状、1脈がある、捕虫嚢(トラップ)は卵形、捕虫嚢の開口部の位置は側生。付属体(appendix)は捕虫嚢の背側につき、分枝する。花序の鱗片および苞は底着して基部に耳は無く、縁は全縁。小苞は無い。花は上側の萼片が倒卵形、下側の萼片も倒卵形。萼は縁が全縁、脈は明瞭又は不明瞭。花冠は黄色、 花冠の凸状(gibbose)の口蓋(palate)は黄色または橙色。花冠の下唇は3裂し、円鋸歯がある。距は円錐形、真っすぐで、下唇の長さと同長、先は2裂または4裂。果実は横周裂開(Ccrcumcissile)。種子はレンズ形。Utricularia breviscapaは花序の基部に浮葉(floats)を輪生する点で、でU.benjaminianaおよびU.platensisに似るが、U.benjaminianaとは異なり、栄養部分が無毛、花茎が膨れ、花が黄色である(栄養部分に絨毛があり、花茎が細く、花冠が白色)。U.platensisとは異なり、葉の1次裂片および2次裂片が3個つき、花冠が小さく、長さ6~12㎜、花冠の上唇が円形である(これに対しU.platensisは葉の1次裂片および2次裂片が2個つき、花冠が大きく長さ20~25mmで上唇は横に楕円形)。
【アメリカのウトリクラリア・インフラタ】  アメリカ南東部、東海岸沿い、ワシントンなどに分布する。浅瀬に自由に浮遊するか、堆積物に緩く付着する。  Utricularia radiata Smallに似るが、はるかに大きい。浮遊性、抽水性、あるいは一部が這う。浮葉(floats)は4~10個、独特のスポークのように輪生し、くさび形、長さ4~9㎝、普通、中央をはるかに超えて最も太く、上半分に細かく切り裂かれた裂片がある。花序柄は長さ10~25㎝、花序は花が3~14(~17)個つき、水面上に直立する。 苞は長さ3~4mmで、幅より長く、分裂しない。下部の花柄は長く、花柄は果時にしばしば長さ3.5㎝になる。花は黄色、幅約2㎝、キンギョソウに似る。萼片は長さ4~7mm。下唇は長さ10~15mm、分裂しない。果実は蒴果、多数の種子をもつ。2n=18,36。海岸平野に沿った池に生える。花期は5~7月。
(2) Utricularia platenis Speg. ウトリクラリア・プラテンシス
 南アメリカ南部(アルゼンチン、ブラジル南部、パラグアイ、ウルグアイ)原産。
 葉は二又分岐の毛細管状、1脈がある、捕虫嚢(トラップ)は卵形、捕虫嚢の開口部の位置は側生。付属体(appendix)は捕虫嚢の背側につき、分枝又は真っすぐ。花序の鱗片および苞は底着して基部に耳は無く、縁は全縁。小苞は無い。花は上側の萼片が円形、下側の萼片も円形。萼は縁が全縁、脈は明瞭又は不明瞭。花冠は黄色、 花冠の凸状(gibbose)の口蓋(palate)は黄色または橙色。花冠の下唇は3裂し、円鋸歯がある。距は円筒形、真っすぐで、下唇より短く、先は鈍形。果実は横周裂開(Ccrcumcissile)。種子はレンズ形。UtriculariaplatensisはU.foliosaやU.breviscapaに似るが、U。foliosaとは異なり、花茎の基部に浮葉が輪生し、花冠の下唇が3裂し、ときに円鋸歯がある。(浮葉が無く、花冠の下唇が2裂とは異なる)。U. breviscapaとは、葉の1次および2次裂片が2個つき、花冠は大きく、長さ20~25mmで、上唇が横に長い楕円形(これに対し、葉の1次および2次裂片が3個つき、花冠は小さく、長さ6~12mm、上唇は円形)。

18 Utricularia striatula Sm.  マルバミミカキグサ 丸葉耳掻き草
  synonym Utricularia orbiculata Wall. ex A.DC.
 中国、台湾、ブータン、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、パプアニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、熱帯アフリカ、インド洋の島々(北アンダマン諸島)原産。中国名は圆叶挖耳草 yuan ye wa er cao。英名はstriped-stemmed bladderwort。

19 Utricularia uliginosa Vahl  ムラサキミミカキグサ 紫耳掻草
  synonym Utricularia affinis Wight
  synonym Utricularia yakusimensis Masam.
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、スリランカ、タイ、ベトナム、オーストラリア、太平洋諸島原産。中国名は齿萼挖耳草 chi e wa er cao。英名はbladderwort。湿地に生える小さな食虫植物。
 多年草、高さ5~15㎝。細い地下茎を伸ばし、ところどころに捕虫嚢をつける。葉は水深により沈水葉と気水葉の2形となる。気水葉は長さ3~8㎜のへら形~倒披針形。深い水深の沈水葉は線形で大きい。花茎の上部に直径3~4㎜の花を数個つける。花は淡青色~紫紫色、濃色の条線がある。上唇弁が下唇弁よりやや小さく、上唇弁と下唇弁が上に向き、距は長さ2~3㎜、下方へ突き出て、上からよく見えないことが多い。萼は広卵形、花とほぼ同色でやや濃色。果実は萼が大きくなり、耳掻きのような形になる。花期は8~10月。
19-1 Utricularia uliginosa Vahl f. albida (Makino) Komiya et C.Shibata  シロバナミミカキグサ 
  synonym Utricularia yakusimensis Masam. f. albida (Makino) H.Hara
 白花品種。

20 Utricularia vulgaris L.
 中国、アフガニスタン、カザフスタン、モンゴル、パキスタン、ロシア、ウズベキスタン、南西アジア、 北アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は狸藻 li zao。
 多年草、浮遊性水生植物。仮根(rhizoids)は普通、糸状で、二又分枝の枝をもつ。匍匐茎(stolons)は糸状、分枝する。葉の裂片のトラップは柄があり、卵形、長さ1.5~5mm、口部は側生、付属体は2個、背側につき、単純または分枝し、剛毛状、より短い単純な側部の剛毛をもつ。葉は匍匐茎の上に多数つき、長さ1.5~6㎝、基部から2個の不等長の1次列片に分割され、1次裂片は、外形が卵形、楕円形、または卵状長円形、羽状に2次裂片に分裂する。2次裂片はさらに二又分裂して、多数の裂片に分割される。最終の裂片は毛細管状で、わずかに扁平、先および側部に細かい小剛毛があり、ときに縁に短い歯があるか、または無い。花序は直立し、長さ10~30 cm、花が3~12個つき、無毛。花序柄は円柱形、太さ1~2.4㎜、鱗片は1~4個つき、苞に似る。苞は底着し、広卵形、長さ3~7㎜、基部は心形~耳があり、先は鋭形~鈍形。花柄は花時に直立し、果時に下向きに曲がり、円柱形、長さ0.6~1.5cm。小苞は無い。萼片は卵形、長さ2.5~5㎜、腺がある。下側の萼片は上側の萼片よりわずかに短く、先は鈍形~凹形。上側の萼片は先が鋭形~ほぼ鋭形。花冠は黄色、長さ1.2~2cm。下唇は横方向に楕円形~広卵形になり、基部は明瞭に膨れ、縁は強く下曲し、先は小凹形。距は狭い円錐形~狭い筒形、基部は円錐形、花冠の下唇よりも短いかまたはほぼ同長で、真っ直ぐまたは上向きに曲がり、先はわずかに鈍形。口蓋は上部の1/2が短毛と有柄の腺で覆われる。上唇は広卵形、上側の萼片の長さの約2倍、先は小凹形~切形。花糸は長さ約2㎜、曲がる。葯の半葯(thecae)は分離。子房は球形、密に腺がある。花柱は明瞭。柱頭は下唇がほぼ円形で縁毛があり、上唇は切形~広三角形。蒴果は球形、直径約5㎜、横周裂開。種子はプリズム形、長さ0.3~0.4㎜×幅0.5~0.7㎜、4~6角(かど)があり、すべての角(かど)に狭い翼がある。種皮は小さい明瞭なわずかに細長い網目がある。花期は6~8月。果期は7~9月。
20-1 Utricularia vulgaris subsp. vulgaris
 中国、アフガニスタン、カザフスタン、パキスタン、ロシア、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ原産。
 距は花冠の下唇よりも著しく短く、±真っ直ぐ、背面のみに内腺(internal glands)がある。2n=(36-) , 40 , 44。
20-2 Utricularia vulgaris L. subsp. macrorhiza (Leconte) R.T.Clausen オオタヌキモ
  synonym Utricularia macrorhiza Leconte
 日本、中国、モンゴル、ロシア、北アメリカ原産。中国名は弯距狸藻 wan ju li zao。英名はcommon bladderwort
 距は花冠の下唇とほぼ同長、顕著に上側に曲がる。捕虫嚢の背と腹面の両方に内腺(internal glands=bladders glands)がある。2n=44。

参考

1) Flora of China
 Utricularia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=134270
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Utricularia
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30001688-2
3) World Flora Online
 Utricularia
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000039907
 Utricularia alpina Jacq.
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-0000415718
4) Flora of China
 Utricularia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110810
5) NEW SOUTH WALES FLORA ONLINE
 Utricularia gibba L.
https://plantnet.rbgsyd.nsw.gov.au/cgi-bin/NSWfl.pl?page=nswfl&lvl=sp&name=Utricularia~gibba
6) 日本歯科大学紀要. 一般教育系 23巻 105-123 1994
 総説ヒメミミカキグサ
東海丘陵要素の植物地理1.定義植物分類・地理 40:190~192. 1994
file:///C:/Users/haovo/Downloads/23-12.pdf
7) 日本生態学会誌 57:245-250(2007)
 浮遊植物タヌキモ類の繁殖様式と集団維持
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seitai/57/2/57_KJ00004717033/_pdf
8) 植物分類・地理分類研究 67(1) 59-61 2019
 四国新産のイトタヌキモ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/67/1/67_0671-08/_pdf/-char/ja
9) 特定外来生物等の選定作業が必要と考えられる 外来外来生物 - 環境省
 エフクレタヌキモ、ウトリクラリア・インフラタ、ウトリクラリア・プラテンシス
https://www.env.go.jp/nature/intro/4document/data/sentei/plant08/002s_shiryou.pdf
10) Acta Phytotax. Geobot. 70 (2): 129–134 (2019)
 日本国内で野生化した外来タヌキモ属植物の同定 角野康郎
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/67/2/67_0672-15/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/70/2/70_201820/_pdf
11)Flora do Brasil 2020
 Utricularia platenis Speg.
http://floradobrasil.jbrj.gov.br/reflora/listaBrasil/ConsultaPublicaUC/ConsultaPublicaUC.do#CondicaoTaxonCP
12) The Jepson Herbarium
 Utricularia macrorhiza
https://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=47607