マルバノキ 丸葉の木

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Flora of Mikawa

マンサク科 Hamamelidaceae マルバノキ属

別 名 ベニマンサク 紅満作
学 名 Disanthus cercidifolius Maxim.subsp. cercidifolius
マルバノキの花
マルバノキの実
マルバノキの葉
マルバノキ
マルバノキ葉
花 期 10~11月
高 さ 2~4m
生活型 落葉低木
生育場所 山地
分 布 在来種(日本固有種)  本州(中部、近畿、広島県)
撮 影 豊田市(旧小原村)  05.11.20
マルバノキは和名のとおり葉が丸く、別名のように紅花である。花、果実、紅葉が秋に一緒に見られる。紅葉の美しさと花のかわいらしさが好まれ、庭木としてよく栽培されている。自生のものが見られるところは少ない。
 落葉低木、高さ2~4m。和名のとおり葉が丸く、別名のように紅花である。樹皮は灰褐色、皮目がある。葉は互生し、長さ5~12㎝×幅10cm以下、卵円形~卵心形、全縁、5~7本の掌状の脈がある、下面は蝋質の青色で、秋には鮮やかなオレンジ色や赤色に紅葉する。花は腋生で2個ずつ背中合わせにつき、直径10~15(約12)mm、暗紫色~鈍い赤色、両性花で、わずかに芳香がある。花序柄は長さ3~10mm。萼片は5枚で、毛があり、後方に湾曲している。花弁は5枚。心皮は1個。子房は上部に2室がある。蒴果は長さと幅は15~17mm、頭が窪んだ倒円心形、翌年の秋に熟すと2裂する。種子は各室に数個、長さ7~8㎜、光沢のある黒色。花期は10~11月。
品種) 'Ena Nishiki' , 'Liku' , 'Mine no Yuki' , 'Mine-no-zausetu' , 'Rikiv'
 中国に自生する subsp. longipes は花柄が長く、9~22.5㎜あり、果時には22.5㎜以上になる。

マルバノキ属

  family Hamamelidaceae - genus Disanthus

 5数性の両性花。果実1つにつき数個の種子。花序1つにつき花と果実が2個しか付かないことが多く、花と果実は背中合わせに非常に接近してる(そのため「Disanthus」(二重花)の名がつけられた。)。花弁は暗赤色で、長く細く、尖る(マンサク科では細くなく、長さに沿って幅が等しく、尖らず、鈍い)。蕾は不規則に内側に湾曲し、先端に向かって縮む(マンサク科では規則的に丸まっている。)。仮雄しべはない。葯は豆形で、裂開せず、単純な縦裂がある(バルブはない)。植物は成熟した部分ではほとんど無毛で、若い芽にのみ被毛がある[Disanthus Maxim.(1866: 485)(Endress 1989)]。
 世界に2種あり、日本、中国、ベトナムに分布する。

マルバノキ属の主な種と園芸品種

1 Disanthus cercidifolius Maxim. マルバノキ 丸葉の木 広義

 日本、中国原産。
 低木、落葉性、ほとんどの部分が無毛。芽は鱗片があり、先は鋭形。長い葉柄がある。托葉は大きく、線形、早落性。葉身は広卵形~倒卵形、薄い革質または膜質、縁は全縁、掌状に5~7脈がある。花序は花序柄の先に2個の対生する花をもち、短い側枝に腋生。花序柄は非常に短い~長い。総苞片は数個、縁を除いて無毛。花の苞(小苞)は毛がある。花は両性、無柄、子房下(hypogynous)。花冠は短くて幅が広く、毛がある。萼片は5個、幅は長さよりも幅が広く、花時に後ろに反り返り、細柔毛がある。花弁は5個、赤色、線状披針形、蕾中では巻く。雄しべは5本、花糸は非常に短い。 葯は外向き、半葯は2胞子嚢(2-sporangiate)、それぞれが曲がった縦の隙間によって裂開する。子房は上位。胚珠は各室に5~6個。花柱は短い。柱頭は小さい。蒴果は木質、2バルブによって胞背裂開する。内果皮は骨質、外果皮から分離する。種子は楕円形、等しくない。2n=16。
 2亜種がある。

1-1 Disanthus cercidifolius Maxim. subsp. cercidifolius マルバノキ 丸葉の木

 日本(本州(中部、近畿、広島県)に分布する。別名はベニマンサク 紅満作。花、果実、紅葉が秋に一緒に見られる。紅葉の美しさと花のかわいらしさが好まれ、庭木としてよく栽培されている。
 落葉低木、高さ2~4m。和名のとおり葉が丸く、別名のように紅花である。樹皮は灰褐色、皮目がある。葉は互生し、長さ5~12㎝×幅10cm以下、卵円形~卵心形、全縁、5~7本の掌状の脈がある、下面は蝋質の青色で、秋には鮮やかなオレンジ色や赤色に紅葉する。花は腋生で2個ずつ背中合わせにつき、直径10~15(約12)mm、暗紫色~鈍い赤色、両性花で、わずかに芳香がある。花序柄は長さ3~10mm。萼片は5枚で、毛があり、後方に湾曲している。花弁は5枚。心皮は1個。子房は上部に2室がある。蒴果は長さと幅は15~17mm、頭が窪んだ倒円心形、翌年の秋に熟すと2裂する。種子は各室に数個、長さ7~8㎜、光沢のある黒色。花期は10~11月。
品種) 'Ena Nishiki' , 'Liku' , 'Mine no Yuki' , 'Mine-no-zausetu' , 'Rikiv'

1-2 Disanthus cercidifolius Maximowicz subsp. longipes (H. T. Chang) K. Y. Pan

  synonym Disanthus cercidifolius var. longipes H.T.Chang

 中国(湖南省、江西省、浙江省)原産。中国名は长柄双花木 chang bing shuan hua mu。英名はlong-stiped disanthus。標高450~1200mの常緑広葉樹と落葉広葉樹の混合林に生える。
 低木、高さ2~4m。小枝は褐色、無毛、皮目がある。葉柄は長さ3~5㎝。 葉身は広卵状円形、長さ5~10㎝×幅5~9㎝、膜質、乾くと下面は灰白色、上面は緑色、無毛、基部がわずか~深く心形、まれに切形、縁は全縁、先は凹形、まれに鈍形、尖鋭形。花序柄は長さ(3~)9~22.5㎜、果時には長さ最大25㎜。花杯(花托筒:floral cup)は長さ約1㎜、外側に褐色の毛がある。萼片は卵形、長さ1~1.5㎜。花弁は赤色、幅の広い基部から線形、長さ7~21)mm、それぞれに2個の蜜腺がある。雄しべは花弁よりもはるかに短い。葯は卵形。子房は無毛。花柱は長さ1~1.5㎜。蒴果は倒卵形、長さ1.2~1.4㎝×幅1~1.3㎝、先は切形。種子は黒色、光沢があり、不規則な楕円形、長さ4~7㎜×幅3~4㎜。花期は10~11月。果期は翌年の9~10月。

2 Disanthus ovatifolius Aver., P.K.Endress, B.H.Quang & K.S.Nguyen ディサンサス・オバティフォリウス

 ベトナム原産。標高1850~2000mの砂岩上の常緑広葉樹の湿潤原生林および混合林に生える。葉が狭卵形。
 幹の高さ5m、直径15cmに達する小型の常緑高木、両全性(hermaphrodite:両性花のみの雌雄同株)。樹冠は不規則な形状で、ゆるやかである。幹は暗く汚れた褐灰色~明るい灰色で、細かくザラつく樹皮を持つ。若い茎、托葉、葉は成長初期には明るい黄緑色~薄いピンク色で、全体に密につき、長く柔らかく真っすぐな羊毛状毛の脱落毛があるが、後に完全に無毛になる。若い枝は明るい緑色で、真っすぐ~わずかにジグザグ、古い枝は明るい鈍褐色、不規則に湾曲していることが多い。芽は芽鱗があり(perulate)、紫色、卵形、長さ(2)2.5~4(5)mm、鋭形~鈍形、芽鱗は(2)3(4)枚つき長さ2~4mm×幅2.5~3.5mm、硬い皮質、無毛。托葉は対につき、大きく、草質、広披針形~狭卵形、長さ(6.5)8~12(13.5)mm×幅(1.5)2~3(4)mm、わずかに凹面形、早落し、小さな葉痕を残す。葉は互生し、2列生、葉柄がある。葉柄は硬く、ほぼ円柱形、鈍い緑色~紫色、長さ(1.5)2~2.5(3.5)cm×直径(1)1.2~1.4(1.6)mm、基部と先端は膨らみ、わずかに湾曲する。葉身は単葉、革質、狭卵形、長さ(5)7~10(13)cm×幅(2.5)3~4.5(5.5)cm、縁は全縁、基部は心形~ほぼ円形、先は短く漸尖形、上面は光沢のある暗緑色、下面は淡い粉白緑色~ほぼ白色、葉脈は羽状で、2本以上または以下の基部のほぼ対生の側脈が多少目立つ。3次脈は両面で明瞭、主脈にほぼ垂直につく。花序の花茎(花序柄)は裸または苞があり、頭状、腋生、花が1~3個つく。花茎(花序柄)は長さ(2)4~6(8)mm、密に毛があり、(0)3~6(7)枚の不稔の苞がある。不稔の苞は2列生、ほぼ対生またほぼ輪生(3個)、卵形~狭卵形、先は鋭形で長さ5mm以下、下面はほぼ無毛、上面は密に毛があり、縁に沿って縁毛がある。花序軸は長さ0.5mm以下。花の苞は(2)3(4)個つく、ほぼ輪生で、卵形、広卵形~横向きの腎形、長さ(0.5)1~2(2.2)mm×幅(0.5)1~3(3.5)mm、先は鋭形、鈍形または切形で、先端はしばしば小円鋸歯があり、わずかに凹面、上面は無毛、下面には密に毛があり、縁に縁毛がある。花は無柄で、互いに密に密着し、放射相称、両性、5数性、2輪生の花被を持つ。花托筒(floral cup=hypanthium)はほぼ平らまたはほとんど凹面がなく、外側は無毛、雄しべと心皮の間の内側には密に毛があり、長く真っすぐな硬い白毛があり、果時には広カップ形で無毛。萼片は5枚、赤色~ピンク色で、覆瓦状になり、狭卵形~卵形、長さ(2.8)3~3.2(3.4)mm×幅(1.6)1.8~2(2.2)mm、反り返り、しばしば縁に沿って外巻きし、両面とも無毛、縁は縁毛があり、先には柔らかい綿毛の房がある。花弁は5枚、赤色~ピンク色で、基部の縁はときに帯白色になり、無毛、覆瓦状になり、長さ(8)9~11(12)mm、(蕾では環状)、基部の幅(0.8)1~1.2(1.4)mm、上部は細くなって幅0.4~0.5mmの長いリボン状に長くなり、広がり、真っ直ぐまたは波打ち、縁は細かく不規則な小円鋸歯状または欠刻状に切れ込み、しばしば波状で外巻きする。雄しべ群は5本の雄しべを持ち、仮雄しべはない。雄しべは離生、1つの輪に並ぶ。花糸は円筒形で反り返り、長さ(0.8)1~1.2(1.4)mm×直径0.3~0.4mm。葯は背着し、突出し、長さ0.6~0.7mm×幅0.4~0.5mm。半葯(thecae)は胞子嚢(sporangiate)が2個あり、裂開前は豆形。各半葯は1本の縦の隙間より裂開し、結合突起(connective protrusion)はない。雌しべは2個の心皮を持つ。子房は半下位で2室性、心皮は先端で自由、基部で融合する。胚珠は心皮あたり8(10)個で、癒合した心皮縁によって形成された中軸胎座に垂れ下がる。花柱は2本、円筒形、長さ0.8~1mm、紫色でわずかに反り返り、それぞれ不明瞭な切形の柱頭を持つ。果実は半木質で、淡黄色~鈍帯褐色、無柄、半合生心皮(syncarpous)は2心皮からなる蒴果、長さと幅は(1.2)1.4~1.6(1.8)cmで、下部は木質の花托筒(floral cup)に包まれる。各心皮の自由な先端は直立し、小突起形。果時の心皮には先端に角(つの)がある(cornute)。個々の蒴果は互いに融合して2~3蒴果からなるコンパクトな果序を形成し、中間より上で先が鋭形で直立する2バルブに胞間裂開(dehiscing septicidally)する。木質の内果皮は半木質の外果皮から分離する。種子は心皮あたり(6)8(10)個で放出され、不明瞭な卵形~不明瞭な角(かど)があり、長さ(3.5)4~5(5.5)mm×幅(2)2.2~2.6(3)mm、翼はなく、種皮は黒色で厚く、硬く、骨質で光沢がある。花期は3~4月。果期は10~11月。

参考

1) Flora of China
 Disanthus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110535
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Disanthus
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:19586-1
3) World Flora Online
 Disanthus
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000012112;jsessionid=03BAD3BBF8A934A366296247AAA8A22A
4) BHL|Flora of Japan:in English
 Disanthus p516
https://www.biodiversitylibrary.org/item/95083#page/544/mode/1up
5) August Biologia 64(4):731-736 (2009)
Pollination biology of Disanthus cercidifolius var. longipes, an endemic and endangered plant in China
https://www.researchgate.net/publication/225378137_Pollination_biology_of_Disanthus_cercidifolius_var_longipes_an_endemic_and_endangered_plant_in_China
6) Phytotaxa 308 (1): 104–110 (2017)
 Disanthus ovatifolius (Hamamelidaceae), a new species from northwestern Vietnam
https://ruffordorg.s3.amazonaws.com/media/project_reports/Phytotaxa%20308%20%281%29%20104-110.pdf