和名の由来はヨシ（アシ）に似ていて草質であることから。茎は叢生して直立し、地下に長い走出枝を伸ばして川の中などに群生する。葉は柔らかく、長さ20～30㎝、幅0.8～2.5㎝、縁がざらつく。葉舌は質が薄く、白色、長さ3～5㎜の切形。葉鞘は平滑。花序は直立し、長さ10～15㎝、花が開くまでは緑色の円柱状、花時は枝が開き、円錐状になり、果時には戻り、幅が狭くなる。小穂は長さ4～5㎜、3小花からなる。両苞頴は同形、鋭い竜骨があり、折れ曲がり、鋭頭。第1小花及び第2小花は極端に退化して小さく、第3小花の基部の毛束のように見える。第3小花は長さ3～3.5㎜、護頴に短毛がある。雄しべは3個つき、葯は橙黄色。小穂は熟すと第3小花の護頴が褐色になり、苞頴は緑色のままである。黒穂病に罹る小穂も多く、小穂が伸びてしまったように見える。果実は光沢がなく、長さ1.6～2㎜、暗灰褐色、先端は黒色を帯びる。2n=28

クサヨシ属

　 family　Poaceae － genus Phalaris

　一年草または多年草、株立(房状)または根茎がある。葉身は線形、平ら。葉舌は膜質。花序は狭まるか(contracted)または穂状花序状の円錐花序。小穂は強く側部が扁平、小花は3個あり、下部2の個の小花は普通、不稔の護穎に退化し、最上部の小花は両性、苞穎の上で関節が離れ(disarticulating)、小軸(rachilla)は伸びず、ごくまれに最上部の小花を超えて伸びる。両苞穎はほぼ等長、舟形、小穂の長さと同長で、小花を包み、草質、明瞭な3脈があり、強い竜骨があり、しばしば中脈に沿って翼がある。不稔の護穎(sterile lemmas)は稔性の護穎(fertile lemma)の長さの1/2以下、狭く、しばしば毛があり、または1個または両方が、稔性の小花の基部で痕跡の肉質の鱗片に退化する。稔性の小花は苞穎より短く、革質しばしば軟骨質になり、光沢があり、背中が丸く、不明瞭な5脈があり、芒は無い。内穎は護穎に似ており、2脈がある。穎果は護穎と内穎にしっかりと包まれる。胚は小さく、へそは線形。x=6, 7。
　世界に約18種あり、主に地中海地域と新世界の温帯地域に分布し、1種は周北植物である。数種が外来種として広く分布している。

クサヨシ属の主な種と園芸品種

1 Phalaris aquatica L.　オニクサヨシ　鬼草葦
　地中海沿岸地域原産。中国名は水草 shui ge cao。英名はbulbous canary grass。日本にも帰化している。
　多年草、株立(房状)。稈は高さ50～150㎝、根元が球根状に厚くなることがよくある。 最上部の葉鞘は膨れない。葉身は幅3～8㎜。葉舌は長さ3～7㎜。円錐花序は穂状花序状、円筒形、長さ1.5～11㎝、ときに基部で分岐する。小穂は楕円状長円形。苞穎は長さ5～7㎜、翼があり、翼の縁は全縁、先は鋭形。不稔の護穎は1(～2)個つき、錐形、長さ0.2～2.2㎜、毛がある。第2小花の護穎(second lemma)は長さ0.5㎜以下まで(存在する場合)。稔性の護穎(fertile lemma)は披針形、長さ3～4.6㎜、密に毛がある。葯は長さ3～3.5㎜。2n=28。
品種)　'Australia' , 'Uneta'

2 Phalaris arundinacea L.　クサヨシ　草葦
　北海道、本州、四国、九州、北半球に広く分布。中国名は草 ge cao。英名はreed canarygrass , alpiste roseau , phalaris roseau , roseau , gardener's garters。別名はリードカナリーグラス。水辺、湿地、休耕水田に生える。
　多年草。高さ70～180㎝。茎は叢生して直立し、地下に長い走出枝を伸ばして川の中などに群生する。葉は柔らかく、長さ20～30㎝、幅0.8～2.5㎝、縁がざらつく。葉舌は質が薄く、白色、長さ3～5㎜の切形。葉鞘は平滑。花序は直立し、長さ10～15㎝、花が開くまでは緑色の円柱状、花時は枝が開き、円錐状になり、果時には戻り、幅が狭くなる。小穂は長さ4～5㎜、3小花からなる。両苞頴は同形、鋭い竜骨があり、折れ曲がり、鋭頭。第1小花及び第2小花は極端に退化して小さく、第3小花の基部の毛束のように見える。第3小花は長さ3～3.5㎜、護頴に短毛がある。雄しべは3個つき、葯は橙黄色。小穂は熟すと第3小花の護頴が褐色になり、苞頴は緑色のままである。黒穂病に罹る小穂も多く、小穂が伸びてしまったように見える。果実は光沢がなく、長さ1.6～2㎜、暗灰褐色、先端は黒色を帯びる。2n=28。花期は5～6月。
品種)　'Picta' シマヨシ(var. picta L. 葉が斑入)['Arctic Sun' (v) , 'Aureovariegata' (v) , 'Feesey' (v) , 'Luteopicta' (v) , 'Luteovariegata' (v) , 'Streamlined' (v) , 'Tricolor' (v) ]
'Bamse'PBR , 'Cream Form' , 'Dwarf Garters' , 'Elegantissima' , 'Feesey' , 'Feesey's Form' , 'Luteo-picta' , 'Strawberries & Cream' , 'Turkey Red' , 'Variegata' , 'Yugoslavian'

2-1 Phalaris arundinacea L. var. japonica (Steud.) Hack.　ホソボクサヨシ　
　基本種のsynnymとされている。葉は幅3～10㎜。花序が細く､長さ5～12㎝。苞穎は長さ4.5～5.5㎜、平滑または小刺があり、背の翼は幅0.2～0.3mm。

3 Phalaris canariensis L.　カナリークサヨシ　
　地中海沿岸、南西アジア原産。中国名は加那利草 jia na li ge cao。英名はbirdseed grass , canary grass . annual canarygrass。別名はカナリヤクサヨシ。江戸時代末期にカナリヤの餌として導入されたものである。市街地の道端などに生える。
　1年草。高さ20～120㎝。葉は柔らかく無毛、幅3～10㎜。葉舌は高さ3～5㎜。花序は小穂状で、茎頂に1個ずつつき、長さ1.5～4㎝の卵形～楕円状卵形。小穂は長さ7～10㎜の扁平な倒卵形。3小花からなり、不稔の2小花は長さ2.5～4㎜の鱗片状。稔性の小花は長さ5～6㎜。包頴（ほうえい）は白緑色で、中脈が濃い緑色になるのが特徴。2n=12。花期は5～8月。
品種)　'Bastia' , 'Cantate' , CDC Togo , 'Elias' , 'Keet' , 'Maria' , 'Togo'

4 Phalaris minor Retz.　ヒメカナリークサヨシ　
　ブータン、インド、パキスタン、南西アジア、ヨーロッパ南部、北アフリカ原産。中国名は中国名は细草 xi ge cao。英名はlesser canarygrass。麦畑の雑草。
　1年草、房状になり、稈は高さ20～100㎝。最上部の葉鞘は膨れない。葉身は幅3～9㎜。葉舌は長さ4～6㎜。円錐花序は密、卵形～長円形、長さ1～6cm。小穂は楕円形、長さ4.5～5.5㎜、苞穎は竜骨の上部の上に翼があり、翼の縁はギザギザの小歯状。不稔の護穎は1個、長さ約1mm、伏した直軟毛がある。稔性の護穎は披針状卵形、長さ2.7～4㎜、毛があり、軟骨性で光沢がある。葯は長さ1.5～1.8㎜。2n=28。

5 Phalaris paradoxa L.　セトガヤモドキ　
　南西アジア、ヨーロッパ南部、北アフリカ原産。中国名は奇草 qi ge cao。英名はhooded canarygrass , awned canary grass。日本にも帰化している。
　1年草、株立(房状)になり、稈は高さ15～100㎝。 最上部の葉鞘が膨らむ。葉身は幅2～9㎜。葉舌は長さ2～8㎜。円錐花序はは密で、狭長円形、長さ4～10㎝、基部は最上部の葉鞘に包まれる。小穂は6個の不稔の小穂に囲まれた1個の稔性の小穂からなる集団(clusters)に配置され、集団全体が一緒に落下し、不稔の小穂はときに、苞穎が棍棒形の集団に退化する。稔性の小穂は護穎が長さ4.5～6㎜、明瞭な7～9脈があり、狭い翼があり、翼は中間近くで大きな歯に広がり、淡緑色またはわら色で、歯の上部に暗緑色の縞模様があり、先は漸尖する。不稔の護穎は未成熟で、稔性の護穎の基部にある2個の小さな肉質の鱗片になる。稔性の護穎は楕円形、長さ2.8～3.2㎜、軟骨質、光沢があり先にまばらに直軟毛がある。葯は長さ1～1.8㎜。2n=14。
5-1 Phalaris paradoxa L. var. praemorsa (Lam.) Coss. et Dur.　アレチクサヨシ　
　基本種のsynnymとされている。不稔小穂に厚い棍棒状に退化したもの混じるもの。

参考

1) Flora of China
　Phalaris 2) Plants of the World Online| Kewscience
　Phalaris 3) World Flora Online
　Phalaris 4) World Checklist of Vascular Plants
　Phalaris 5) FNA - Flora of North America
　Phalaris