コウホネ 河骨

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Flora of Mikawa

スイレン科 Nymphaeaceae コウホネ属

英 名 East Asian yellow water-lily
中国名 日本萍蓬草 ri ben ping peng cao
学 名 Nuphar japonica DC.
コウホネの花2
コウホネの花
コウホネの葉
コウホネ
花 期 6~9月
高 さ 水面に出る
生活型 多年草
生育場所 浅い池沼
分 布 在来種  北海道、本州、四国、九州、朝鮮
撮 影 岡崎市 05.6.25
和名の由来は根茎が白く、骨のように見えることから。
 多年草。水中葉は膜質で細長く、水上葉は光沢があり、長さ20~30㎝の長卵形、浅い水深では鋭角に立って長い抽水葉(水上に出る葉)となる。花は直径4~6㎝のわん形。花弁状に見えるのが萼片で、5個。花弁はへら状で小さく、多数が1列に並ぶ。雄しべは多数。花糸は幅が広く、葯の長さの1~2倍。葯は長さ3~8mm。雌しべの先は広がり、柱頭盤を形成し、柱頭は放射状に並ぶ。果実は緑色、長さ3~6㎝。種子は長さ4~5.5mm。花期は6~9月。
 ヒメコウホネ Nuphar subintegerrima は小型、葉が長さ4~17㎝、円形~広卵形。花が直径2.5~4㎝。
 サイコクヒメコウホネはヒメコウホネに含められていたが、多少とも稔性がみられ、広く分布するため、独立種とされた。ヒメコウホネ、コウホネ、オグラコウホネの3種が関連した複雑な交雑によって起源したと推定されている。葉が広卵形~狭卵形、長さ10~30㎝×幅7~20㎝とヒメコウホネより大きい。

コウホネ属

  family Nymphaeaceae - genus Nuphar

 多年草。 根茎は匍匐し、分枝する。葉は2形、厚い革質の葉身で長い葉柄の浮葉(水上葉)、又は薄い紙質で短い葉柄の沈水葉(水中葉)。葉身は卵形~楕円形、葉脈は主に羽状、基部は心形、縁は全縁、盾状ではない。花は子房下生(hypogynous)、抽水植物(emergent )、花被は±上向き。萼片は(4~)5(~7)個、黄色またはオレンジ色、花弁状、長円形~倒卵形、宿存性。 花弁は多数、黄色、小さく、雄しべ状。 雄しべは萼片とほぼ同じ長さで、子房の基部につく。花糸は紐状。葯は黄色、葯隔はない。心皮は完全に統合する。花柱は無い。柱頭は無柄、平らな柱頭の円盤の上に放射状に広がり、縁に付属体はない。果実は卵形~つぼ形、不規則に裂開する。種子は平滑、仮種皮は無い。x=17。英名はspatterdock, cow-lily, yellow pond-lily。
 世界に約10種があり、北半球に広く分布する。

コウホネ属の主な種と園芸品種

1 Nuphar japonica DC.  コウホネ 河骨
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮原産。英名はEast Asian yellow water-lily。和名の由来は根茎が白く、骨のように見えることから。  多年草。水中葉は膜質で細長く、水上葉は光沢があり、長さ20~30㎝の長卵形、浅い水深では鋭角に立って長い抽水葉(水上に出る葉)となる。花は直径4~6㎝のわん形。花弁状に見えるのが萼片で、5個。花弁はへら状で小さく、多数が1列に並ぶ。雄しべは多数。花糸は幅が広く、葯の長さの1~2倍。葯は長さ3~8mm。雌しべの先は広がり、柱頭盤を形成し、柱頭は放射状に並ぶ。果実は緑色、長さ3~6㎝。種子は長さ4~5.5mm。花期は6~9月。
1-1 Nuphar japonica DC. f. rubrotincta (Casp.) Kitam.  ベニコウホネ 紅河骨
  synonym Nuphar subintegerrima (Casp.) Makino f. rubrotincta (Casp.) Makino
  synonym Nuphar japonica DC. var. rubrotincta (Casp.) Ohwi
 花被片が初め黄色、2~3日後に橙赤色に変わる。
1-2 Nuphar japonica DC. var. stenophylla Miki  ナガバコウホネ 長葉河骨
 沈水葉が細長く、長さが幅の3~4倍あるもの。

2 Nuphar lutea (Linnaeus) Smith セイヨウコウホネ 西洋河骨
 中国、ロシア、カザフスタン、南西アジア、ヨーロッパ、アフリカ原産。中国名は欧亚萍蓬草 ou ya ping peng cao。湖や池に生える。
 根茎は丈夫で直径3~8㎝。葉柄は長さ約50㎝、無毛。浮葉は葉身が楕円形、長さ15~30㎝×幅10~22㎝、革質、下面は無毛又は毛があり、上面は無毛、基部は心形で基部の裂片は広がる。花は直径4~5㎝。花序柄は長さ約50㎝以下。萼片は黄色、広卵形~円形、長さ2~3㎝。 花弁は線形、長さ1~1.5㎝、先は切形~円形。葯は黄色、長さ4~7㎜。柱頭盤は全縁、直径7~19 mm、放射状の線は5~25本。果実は直径約2.5㎝。種子はオリーブグリーン、卵形、長さ約5mm。花期は7~8月。2n=34。
品種) 'Rubra'

3 Nuphar oguraensis Miki  オグラコウホネ 小倉河骨
  synonym Nuphar pumila L. subsp. oguraensis (Miki) D.Padgett
  synonym Nuphar shimadae Hayata  タイワンコウホネ
 日本(本州の近畿地方、四国、九州)、朝鮮原産。貧栄養~中栄養の溜池、河川、水路などに生える。  オグラコウホネは葉柄の中心に穴が空き葉柄が細く、水位が浅い場所でも抽水葉とならない。  多年草。浮葉生。根茎は白色、地中を横に伸び、やや堅くて太く、分枝し、頂部に水中葉と浮葉(水上葉)をつける。葉柄は細長く、直径1~3(~5)mm、断面は三角形で中央に大きな間隙がある。沈水葉の葉身は広卵形~円心形、長さ8~14㎝×幅6~12㎝。浮葉の葉身は緑色、長さ(5~)7.5~11.5(~14)㎝×幅(4~)6~9(~12)㎝(縦横比は1.1~1.45)、側脈は10~12対、下面には普通、短毛が密にある。花は直径1.7~2.5(~3.5)㎝。葯は長さ1~2.5mm。柱頭盤は直径5~6(~9.5)㎜、縁が浅い歯状。果実は長さ2.5~3㎝×幅1.5~2㎝。種子は黄褐色~褐色、長さ 2.5~4㎜、平滑、光沢がある。花期は6~10月
3-1 Nuphar oguraensis Miki var. akiensis M.Shimoda  ベニオグラコウホネ 
 花被片の外側が橙赤色になるもの。

4 Nuphar pumila (Timm) DC. ネムロコウホネ 広義
 日本、韓国、中国、モンゴル、ロシア、 ヨーロッパ原産。中国名は萍蓬草 ping peng cao。
 根茎は丈夫で、直径1~3cm。 葉柄は長さ20~50cm、有毛。浮葉の葉身は広く卵形から卵形になり、楕円形になることはめったになく、長さ6~17cm×幅6~12cm、下面は無毛~密に毛があり、上面は無毛、基部は心形で基部の裂片が互いに離れる。 花は直径1~4.5(~6)cm。花序柄は長さ40~50cm、毛がある。萼片は黄色、長円形~楕円形、長さ1~2.5cm。花弁は狭いくさび形~線形、長さ5~7mm、先は凹形。葯は黄色、長さ1~6mm。柱頭盤は深裂し、直径4~7.5mm、放射状の線は8~13(~14)本。果実は直径1~2cm。 種子は褐色、長円形~卵形、長さ3~5mm。花期は5~9月。2n=34。
4-1 Nuphar pumila (Timm) DC. var. pumila ネムロコウホネ 根室河骨
 日本(北海道と本州北部)、韓国、中国、モンゴル、ロシア、 ヨーロッパ原産。中国名は萍蓬草 ping peng cao。
 根茎は直径2~3cm。葉柄は20~50cm。抽水葉は出さない。浮葉の葉身は広卵形~卵形、楕円形になることはめったになく、長さ6~17cm×幅6~12 cm、下面は無毛~密に毛がある。花は直径1~2.5cm。花柄長さ40~50㎝、毛がある。萼片は黄色、長円形から楕円形、長さ1~2cm。花弁は長さ5~7㎜。葯は長さ1~2.5㎜。柱頭盤は淡黄色、直径4~7.5㎜、放射状の線は8~13本。 果実は直径1~2cm。種子は長円形、長さ約5㎜。花期と果期は5~9月。2n=34。
4-2 Nuphar pumila (Timm) DC. var. ozeensis H.Hara  オゼコウホネ 尾瀬河骨
 尾瀬(福島県・新潟県・群馬県)、月山(山形県)、秋田県、北海道に分布。
 ベニオグラコウホネ同様に花の柱頭盤が赤くなる。ただし花の柱頭盤はほとんど淡黄色でわずかに紅色を帯びる程度のネムロコウホネに近いものから深紅色のものまで連続的な変異が確認されている。
4-2-1 Nuphar pumila (Timm) DC. var. ozeensis H.Hara f. rubro-ovaria Koji Ito ex Hideki Takah., M.Miyazaki et J.Sasaki  ウリュウコウホネ 雨竜河骨
 北海道の雨竜沼湿原に自生する。
 ウリュウコウホネは子房が赤褐色。オゼコウホネは子房が緑色である。
4-3 Nuphar pumila subsp. sinensis (Handel-Mazzetti) D. Padgett
 中国原産。中国名は中华萍蓬草 zhong hua ping peng cao。池に生える。
 根茎は直径1~3㎝。葉柄は長さ約40㎝。浮遊葉の葉身は卵形、長さ9~15㎝×幅7~12㎝、下面の縁に密に毛があある。花は直径2~4.5(~6)㎝。萼片は黄色、長円形~倒卵形、長さ2.5㎝以下。 花弁は長さ約7mm。葯は長さ3.5~6mm。柱頭盤は直径5~6㎝、放射状の線は8~13本。 果実は直径1.5~2㎝。種子は卵形、長さ約3mm。花期と果期は5~9月。

5 Nuphar saikokuensis Shiga et Kadono  サイコクヒメコウホネ 西国姫河骨
 本州(中部日本以西)、四国、九州に分布。湖沼、溜池、水路、河川などに生える。
 ヒメコウホネ、コウホネ、オグラコウホネの3種が関連した複雑な交雑によって起源したと推定されている。長い間、ヒメコウホネに含められていたが、多少とも稔性がみられる。形態的に変異に富む種である。2015年に報告され、Kewscienceに反映されている。
 葉柄は中実。浮葉、抽水葉ともに広卵形~狭卵形、長さ10~30㎝、幅7~20㎝、浅い水深では抽水葉となり、まれに沈水葉をほとんど欠く。花は直径3~4㎝。柱頭盤は黄色。葯は長さ4~6mm。花糸は葯の長さの1~2倍。果実は緑色、長さ3~5㎝。種子は長さ3.5~5mm。花期は6~10月。

6 Nuphar subintegerrima (Casp.) Makino  ヒメコウホネ 姫河骨
 日本固有種(愛知県、岐阜県、三重県)。 湖沼、池、川の浅い場所に生える。
 根茎は太く、白色、水底の地中を這い、横へ 広がる。葉は束生し、長い直径7~8㎜程度の円筒状の葉柄がある。水中葉(沈水葉)は質が薄く、縁が波打つ。水上葉(浮葉)は水面に浮かび、水面が低下すると、水面から出て抽水葉となり、質がやや厚く、全縁、無毛、表面に光沢があり、基部は深く切れ込む。浮葉と抽水葉の葉身は長さ4~17㎝×幅4~15㎝の円形~広卵形、花柄は長く、水面から上に出て、花を1個上向きにつける。花は黄色、直径2.5~4㎝。花弁状に見える萼片は普通5個。花弁は小さく、多数。柱頭の先端は鈍頭、柱頭盤から突き出さない。果実は長さ約3㎝。種子は長さ5.5~6.5mm。花期は5~9月。

7 Nuphar submersa Shiga et Kadono  シモツケコウホネ 
 栃木県に分布。2005年に報告された新種。沈水性で浮葉や抽水葉を形成せず沈水葉のみで、黄色の花だけを水面上に突き出して咲く。水中葉はワカメようなに流線形、。柱頭盤は赤色。花期は6~9月。

8 Nuphar x fluminalis Shiga et Kadono  ナガレコウホネ 
 コウホネ×シモツケホウホネ

9 Nuphar x hokkaiensis Shiga et Kadono  ホッカイコウホネ 
 コウホネ x ネムロコウホネ

10 Nuphar x saijoensis (M.Shimoda) Padgett et M.Shimoda  サイジョウコウホネ 
  synonym Nuphar japonica DC. var. saijoensis M.Shimoda
  コウホネ×ベニオグラコウホネ
 ベニオグラコウホネ同様に花の柱頭盤が赤色。

11 その他ハイブリッド
品種) 'Shirley Bryne'
 

参考

1) Flora of China
 Nuphar
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=122507
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Nuphar
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:331808-2
3) World Flora Online
 Nuphar
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000026383;jsessionid=24ED4FE5B4F639DA7840DB9ADCADE35F
4) Flora of North America
 Nuphar
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=122507
5) 植物研究雑誌 第90巻 第1号 22–28 (2015)
 中部日本から西日本に分布するコウホネ属(スイレン科)の1新種サイコクヒメコウホネ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_090_22_28_abstract.pdf