コシロネ 小白根

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Flora of Mikawa

シソ科 Lamiaceae シロネ属

別 名 イヌシロネ
中国名 小叶地笋 xiao ye di sun
学 名 Lycopus cavaleriei H.Lév.

 synonym Lycopus ramosissimus (Makino) Makino var. japonicus (Matsum. et Kudô) Kitam.

 synonym Lycopus ramosissimus (Makino) Makino
 synonym Lycopus japonicus Matsum. et Kudô
コシロネ花
コシロネ花
コシロネ花
コシロネ花
コシロネ果実
コシロネ葉裏の腺点
コシロネ茎
コシロネ
コシロネの葉表
コシロネの葉裏
コシロネの分果
花 期 8~10月
高 さ 15~60㎝
生活型 多年草
生育場所 丘陵、川岸、畑の縁、湿地
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国
撮 影 新城市 09.10.1
コシロネはシソ科シロネ属の湿地などに生える多年草。
 根茎は横向きで、先が拡大した長い地下茎を生じ、鱗片状葉をもつ。茎は直立し、あまり分枝せず、高さ15~60㎝、微軟毛があるか無毛、節には±軟毛がある。葉は無柄で、(広披針形~)長円状倒卵形~卵形、長さ1.5~3(4)㎝×幅0.6~1.5(2)㎝、ほぼ無毛、下面に腺点があり、基部は楔形~楔状漸尖形、縁は波うつ歯があるかまたは不規則な円鋸歯状歯があり、先は鋭形。輪散花序は球形で直径5~7㎜、小苞は線状錐形、うねがあり、長さ1.5~2.5㎜、刺がある。萼は長さ2.5~3㎜、微軟毛があり、不明瞭な10~15本の脈がある。萼歯は長さ4~5個、長さ約1㎜、三角状披針形、先に刺があり、腺点が多い。花冠は白色、わずかに突き出し、長さ3~3.5㎜、拡大部は腺があり、内部には複雑な白色の縁毛がある。拡大部は幅約5㎜、不明瞭な2唇形、唇は長さ約1㎜、ほぼ等長。上唇は円形で、凹形、下唇の裂片はほぼ等長。前側の雄しべは花冠と同長で、後側の2本は欠落しているか、糸状の仮雄しべに退化している。果実は4分果。分果(小堅果)は長さ約1.5㎜、倒卵形、4角(かど)があり、背側がわずかに膨らみ、周囲に翼があり、腺がある。基部の着点(areole)は白色。2n=22。花期は7~8(10)月。果期は8~9(10)月。
 類似のヒメシロネは葉が細く、葉の基部が楔形とならない。シロネは大型、茎が直径3㎜以上と太く、葉の幅が15㎜以上ある。

シロネ属

 familiy Lamiaceae - genus Lycopus

 低木又は小高木、まれに亜低木又は草本、直立又はまれによじ登り、落葉又は常緑。小枝は若いときに普通、4角(かど)がある。葉は単葉、対生又はまれに輪生。花序は疎な集散花序又は頭状花序、頂生又はまれに腋生の円錐花序状の密穂花序。萼は鐘形又は杯形、約5歯又は深く5裂する。花冠は細い筒部をもち、先は5裂し、裂片は広がる。雄しべは4個、突き出す。子房は4室、胚珠は下垂又は側着。花柱は先が2裂して尖り、柱頭の裂片になる。萼は果時に膨らむ。果実は核果、それぞれに1種子が入る4個の核をもつ。ときに2室の2個の分果又は1室の4個の分果に分かれることもある。
 世界に約19種があり、ヨーロッパ、アジア、北アメリカに分布する。

シロネ属の主な種と品種

1 Lycopus americanus W.P.C. Barton アメリカ白根
 USA,カナダ原産。英名はAmerican water horehound , American bugleweed。北アメリカに広く分布し、標高1000m以下の湿った場所、湿地、川岸に生える。  多年草、根茎は細く、先端は太くならず、塊茎はない。しばしば根茎からクローン植物のコロニーが形成される。茎は直立し、高さ20~80㎝、通常、無毛、節に短毛がある。葉は通常、短い葉柄があり、葉柄は長さ2~8(10)㎝、葉身は長楕円形~披針形、特に下部 1/2 は深く裂けて切れ込み、無毛~葉脈に微軟毛がある。葉も花も特に香りはない。輪散花序は茎の中間から上部の葉が茎と結合する部分につき、花が密につく。花は白色長さ2~3㎜。萼は明るい緑色、萼歯は狭い三角形で、幅の約2倍の長さがあり、短い芒がある。花冠は短い筒状、長さ2~3㎜、萼とほぼ同長、白色。花冠裂片は4個、広がる。 小堅果は長さ1~1.5㎜、先端は丸く、平滑、萼より短い。2n=22。花期は8~9月。

2 Lycopus cavaleriei H.Lév. コシロネ 小白根

  synonym Lycopus ramosissimus (Makino) Makino var. japonicus (Matsum. et Kudô) Kitam.

  synonym Lycopus ramosissimus (Makino) Makino
  synonym Lycopus kurilensis Prob.
  synonym Lycopus ramosissimus (Makino) Makino var. ramosissimus
  synonym Lycopus coreanus H.Lév., p. p.
  synonym Lycopus coreanus H.Lév. var. ramosissimus (Makino) Nakai

  synonym Lycopus coreanus H.Lév. var. cavaleriei (H.Lév.) C.Y.Wu et H.W.Li

  synonym Lycopus japonicus Matsum. et Kudô
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(安徽省、貴州省、江西省、吉林省、四川省、雲南省、浙江省)原産。中国名は小叶地笋 xiao ye di sun。別名はイヌシロネ。標高900~1700mの丘陵、川岸、畑の縁、湿地に生える。
 多年草、根茎は横向きで、先が拡大した長い地下茎を生じ、鱗片状葉をもつ。茎は直立し、あまり分枝せず、高さ15~60㎝、微軟毛があるか無毛、節には±軟毛がある。葉は無柄で、(広披針形~)長円状倒卵形~卵形、長さ1.5~3(4)㎝×幅0.6~1.5(2)㎝、ほぼ無毛、下面に腺点があり、基部は楔形~楔状漸尖形、縁は波うつ歯があるかまたは不規則な円鋸歯状歯があり、先は鋭形。輪散花序は球形で直径5~7㎜、小苞は線状錐形、うねがあり、長さ1.5~2.5㎜、刺がある。萼は長さ2.5~3㎜、微軟毛があり、不明瞭な10~15本の脈がある。萼歯は長さ4~5個、長さ約1㎜、三角状披針形、先に刺があり、腺点が多い。花冠は白色、わずかに突き出し、長さ3~3.5㎜、拡大部は腺があり、内部には複雑な白色の縁毛がある。拡大部は幅約5㎜、不明瞭な2唇形、唇は長さ約1㎜、ほぼ等長。上唇は円形で、凹形、下唇の裂片はほぼ等長。前側の雄しべは花冠と同長で、後側の2本は欠落しているか、糸状の仮雄しべに退化している。果実は4分果。分果(小堅果)は長さ約1.5㎜、倒卵形、4角(かど)があり、背側がわずかに膨らみ、周囲に翼があり、腺がある。基部の着点(areole)は白色。2n=22。花期は7~8(10)月。果期は8~9(10)月。

3 Lycopus charkeviczii Prob. ヤマシロネ 山白根
 朝鮮、ロシア原産。ロシアは沿海地方、韓国は済州島を除き広く分布。
 多年草、高さ40~160㎝。根茎は節があり、匍匐する。匍匐茎は数本あり、節から根を出し、葉はない。茎は直立し、単茎または通常は分枝し、四角形で無毛またはまばらに毛がある。節は赤紫色で毛がある。葉は対生し、緑色、紙質。葉柄は不明瞭で、長さ2~7㎜または無柄。葉身は狭披針形~長円状披針形、長さ7~17㎝×幅2~4㎝、先は尖鋭形または鋭形、基部は漸尖し、半抱茎、縁は鋭鋸歯状、上面は無毛またはまばらに毛があり、下面には脈にまばらに毛があり、腺点がある、花序は球形、直径1.0~1.5㎝、中間から上部の葉腋に密にある。小苞は線状披針形~披針形、長さ2.5~7.0㎜、先は芒のある尖鋭形。萼は鐘形、長さ3.0~5.5㎜、腺点があり、先は深く5裂する。萼片は披針形、長さ1.5~5.0㎜、先に刺があり、繊毛がある。花冠は筒状鐘形、白色、長さ3.4~7.5㎜、外側に腺点があり、喉部には内側に白色の毛がある。拡大部は不明瞭な2唇形。上唇はほぼ円形、長さ1.5~5.5㎜、凹形、外側に毛がある。下唇は3裂し、円形、中裂片は大きい。雄しべは2本、前側の雄しべは稔性、長さ2.5~4.2㎜、ほとんど突出しない。仮雄しべは2本、後側にあり、線形、先は棍棒状または頭状。花糸は糸状で無毛。葯は2室、楕円形、平行。雌しべは1本、子房は4室。花柱は肥大した花托があり(gynobasic)、長さ3.1~6.2㎜、突き出し、先は2裂し、裂片は平ら。小堅果は倒卵形、長さ2.3~3.0㎜×幅1.0~1.5㎜、角(かど)があり、先は不規則に波打つ、基部はほぼ漸尖し、背側は無毛、黒褐色。花期は8~10月。

4 Lycopus lucidus Turcz. ex Benth. シロネ 白根
 日本、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、陝西省、山東省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア原産。中国名は地笋 di sun。イタリアに帰化している。標高300~2600mの湿地、草原、川岸に生える。
 多年草。根茎は先が膨らみ、ときには長い匍匐茎を持ち、鱗片状の葉を持つ。茎は直立し、高さ20~70㎝、通常は分枝せず、節は紫赤色±を帯びる。葉はほぼ無柄または短い葉柄があり、線形~長円状披針形、±弓状に曲がり、長さ4~8㎝×幅1.2~2.5㎝、無毛~微細な剛毛状粗毛(hispid-hirsute)があり、下面に凹んだ腺があり、基部は漸尖し、縁は±羽状深裂~±全縁になり、先は尖鋭形。輪散花序は球形、直径1.2~1.5㎝。小苞は卵形~披針形、繊毛があり、棘があり、最も外側の苞は長さ5㎜まで、3脈がある。内側の苞は長さ2~3㎜、1脈がある。萼は長さ約3㎜、無毛、腺がある。萼歯は5個、披針状三角形、長さ約2㎜、先に棘があり、繊毛がある。花冠は白色、長さ約5㎜、腺があり、喉部には白色の軟毛があり、花冠筒部は長さ約3㎜。拡大部は不明瞭な2唇形、上唇はほぼ円形。下唇は3裂し、中裂片は大きい。小堅果は倒卵形、4面があり、約・長さ1.6㎜×幅1.2㎜、外面は平らになり、腺があり、基部はほぼ漸尖形。花期は6~9月。果期は8~11月。

4-1 Lycopus lucidus var. hirtus (Regel) Makino & Nemoto ケシロネ 毛白根

  synonym Lycopus lucidus Turcz. ex Benth. var. hirtus Regel

  synonym Lycopus lucidus Turcz. ex Benth. f. hirtus (Regel) Kitag.

  synonym Lycopus lucidus f. hirtus Regel
  synonym Lycopus formosanus (Hayata) Sasaki
 日本、朝鮮、中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、河北省、黒竜江省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、陝西省、山東省、山西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、ロシア原産。中国名は硬毛变种 ying mao bian zhong。標高300~2400mの湿地帯に生える。
 茎は角(かど)に沿って微細粗毛があり(hirtellous)、節には密に粗毛(hirsute)がある。葉身は披針形で、暗緑色、上面には密に微細な剛毛状粗毛(hispid-hirsute)があり、下面には主に葉脈に密にあり、基部は漸尖し、縁は鋸歯状で縁毛があり、先は漸尖する。
4-2 Lycopus lucidus var. lucidus
  synonym Lycopus lucidus var. hirtus Regel
 日本、朝鮮、中国(貴州省、河北省、黒龍江省、吉林省、遼寧省、山西省、四川省、雲南省)、ロシア原産。中国名は地笋 di sun。標高300~2600mの湿地、川岸に生える。根茎は茹で野菜として調理され、塩漬けにもされる。薬用として使用される。  茎は丈夫で、高さ60~70㎝、節は無毛またはまばらに微細粗毛がある。葉身は長円状披針形、無毛、縁は粗い歯~鋸歯がある。

4-3 Lycopus lucidus var. maackianus Maxim. ex Herder ヒメシロネ 姫白根

  synonym Lycopus maackianus (Maxim. ex Herder) Makino
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(黒龍江省)、ロシア原産。中国名は异叶变种 yi ye bian zhong。湿地に生える。
 多年草、高さ(20~)30~70㎝。茎は細く、直立し、あまり分枝しない。葉は無柄、対生し、やや厚く、長さ4~8㎝×幅.5~15㎜、基部は急に幅が狭まり、楔形にならず、茎下部の葉は楕円形~披針形、縁は±羽状深裂、中間の葉は鋭い鋸歯状、上部の葉は線状披針形で全縁、下面には密に腺点がある。花は直径約5㎜。花冠は上唇の中央が浅くくびれ、下唇は3裂する。下唇には赤紫色の斑紋があることもある。萼片の先は刺状に尖る。果実は4分果。2n=22, 33。花期は8~10月。

5 Lycopus uniflorus Michx. エゾシロネ 蝦夷白根

  synonym Lycopus uniflorus Michx. var. parviflorus (Maxim.) Kitag.

  synonym Lycopus parviflorus Maxim. [Flora of China]
 北海道、本州、四国、九州、千島列島、朝鮮、中国(黒龍江省、吉林省)、ロシア、北アメリカ原産。中国名は小花地笋 xiao hua di sun。英名はnorthern bugleweed, slender bugleweed。標高約600m~2000m以下の湿地、沼地、泉の近くに生える。北アメリカにも広く分布し、根が食用とされる。
 多年草、高さ10~50㎝。根茎が細く先が急に太く紡錘形の塊茎状になり、地下茎を伸ばし、湿地に広がる。茎は通常は分枝せず、斜上~直立し、高さ10~50㎝、4稜形、密に微軟毛~微細剛毛がある。葉は対生し、葉柄は短く、長さ2~6(8)㎝。葉身は楕円形~披針形、茎の中間の葉が最も大きく、他の葉は長さ3~5.5㎝×幅1.2~2.5㎝、基部は楔状漸尖形、ほぼ無毛または葉脈にまばらに微軟毛があり、縁は通常、約±4~6個の鋸歯があるかまたは全縁、葉の両面にまばらに帯黄色の腺点がある。輪散花序は花が7~10個つき、明瞭な球形ではなく、2~3個の小苞が基部につく。小苞は線状披針形、長さ約1㎜、縁毛がある。花は長さ約2㎜の小さな唇形花。萼片は長さ約2㎜、毛がある。萼歯は5個、1個の歯がわずかに小さく、卵形、長さ約0.8㎜、先はあまり尖らず、鈍形~鋭形、繊毛がある。花冠は長さ2~4㎜、白色、萼片より長く、花冠筒部は長さ約1㎜、拡大部は不明瞭な2唇形、上唇は真っすぐ、下唇は広がる。雄しべは花冠よりわずかに長い。小堅果は長さ1~2㎜、先は切形、細かい歯がある。2n=22。花期は7~9月。

参考

1)Michigan Flora - University of Michigan Herbarium
 Lycopus
https://michiganflora.net/genus/lycopus
2) Flora of China
 Lycopus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=119161
3) Plants of the World Online (POWO)
 Lycopus
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30028551-2
4) Korean J. Pl. Taxon. 46(1): 117-123 (2016)
 A new record of Lycopus charkeviczii Prob. (Lamiaceae) in Korea
https://koreascience.kr/article/JAKO201611962056788.pdf
5) Jepson Herbarium
 Lycopus key to species, California Flora, Jepson eFlora
https://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_keys.php?key=9455
6) Illinois Wildflowers
 American Bugleweed (Lycopus americanus)
https://www.illinoiswildflowers.info/wetland/plants/am_bugleweed.htm