キブシ 木五倍子

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Flora of Mikawa

キブシ科 Stachyuraceae  キブシ属

学 名 Stachyurus praecox Sieb. et Zucc.
キブシの花序
キブシの花
キブシの花3
キブシ両性花の内部
キブシの雌花の雌しべと雄しべ
キブシの幹
キブシ
キブシ枝先
キブシ葉と果実
キブシ萼片と苞
花 期 3~4月
高 さ 2~4m
生活型 落葉低木~小高木
生育場所 山地の林縁、道端
分 布 在来種(日本固有種) 北海道(西南部)、本州、四国、九州
撮 影 新城市  16.3.16
樹皮は赤褐色~灰褐色、ときに暗褐色、皮目がある。枝は赤褐色、皮目が目立ち、無毛、2稜がある。冬芽の頂芽は大きい。側芽は広卵形、長さ1.5~3㎜、先鋭形。芽鱗は2~4個、無毛、赤褐色~暗褐色。葉痕は半円形、維管束痕は3個。葉は互生し、葉柄は長さ1~3㎝。葉身は長さ6~12㎝、幅3~6㎝の長楕円形でサクラの葉に似ている。雌雄異株。雄株、雌株、両性株があり、それぞれ、雄花、雌花、両性花がつく。花は葉の展開前に、開花し、雄株の方が開花が早い。花序は長さ3~20㎝の総状花序(花柄が短いため穂状ともいわれる)、垂れ下がってつき、雄花序は長く、雌花序や両性花序は短い。花は長さ7~9㎜の鐘形、黄色4弁花。花柄は短く、長さ約0.5㎜。萼片は4個で、内側の2個は大きく花弁状であるため、一見すると花弁6個に見える。その外側に萼片を小さくしたような2個の苞がある。花弁は4個。雄しべ8個と雌しべ1個は花の奥にあり覗き込まないと見えない。雄花は雄しべが長く、子房が小さい。雌花は雄しべが短く、子房が大きい。両性花は両者の中間。液果は直径7~12㎜の楕円状球形、堅く、黄褐色に熟す。種子は長さ約2㎜。

キブシ属

  family Stachyuraceae - genus Stachyurus

  低木又は小高木、ときによじ登り、落葉又は常緑。枝は髄が目立ち、ほとんど無毛、たまに若いときに微軟毛がある。冬芽は小さく、2~4個の芽鱗をもつ。葉は単葉、互生。托葉は早落性、線状披針形。葉身は膜質~革質、鋸歯縁。総状花序又は穂状花序は腋生、直立又は下向き。花は小さく、放射相称、両性、又は雌雄異株。花柄は短又は無。小苞は基部で合着する。萼片は4個、覆瓦状。雄しべは8本、2列につく。花糸は錐形。葯は多方向、内向きに縦に裂開する。子房は上位、4室、胚珠は貫入側膜胎座(intrusive-parietal placentae)の上に多数。花柱は短い。柱頭は頭状、浅く4裂。果実は液果、果皮は革質。種子は多数、小さく、柔らかい仮種皮をもち、胚乳は肉質。胚は真っすぐ。子葉は楕円形、幼根は短い。2n=24。(科に1属だけ、科と同じ解説)
 世界に約8種あり、東アジアに分布する。

キブシ属の主な種と園芸品種

1 Stachyurus chinensis Franch. タイワンキブシ 台湾木五倍子

  synonym Stachyurus himalaicus auct. non Hook.f. et Thomson ex Benth.

  synonym Stachyurus sigeyosii Masam.  タロコキブシ
 中国(安徽省、重慶省、福建省、甘粛省、広東省、広西省、貴州省、河南省、湖北省、湖南省、江西省、陝西省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾原産。中国名は中国旌节花 zhong guo jing jie hua。英名はChinese stachyurus。標高400~3000mの森林、雑木林、林縁に生える。
 落葉低木、高さ2~4m。葉柄は長さ1~2㎝。 葉身は卵形~長円状卵形~長円状楕円形、またはほぼ円形、長さ5~12㎝×幅3~7㎝、紙質~膜質、下面は無毛または中脈および側脈に沿ってまばらに毛があり、上面は無毛、側脈は5~6対、両面に隆起し、基部は通常はほぼ心形または鈍形、縁は円鋸歯状鋸歯があり、先は尖鋭形~短い尾状尖鋭形、またはまれに微凹形。穂状花序は長さ5~10cm。花は葉の展開前に開き、黄色、長さ約7㎜、ほぼ無柄または短柄がある。苞は三角状卵形、長さ約3㎜、先は鋭形。小苞は卵形、長さ約2㎝。萼片は黄緑色、卵形、長さ約3.5㎜、先は鈍形。花弁は卵形、長さ約6.5㎜、先は円形。子房は瓶形、微軟毛がある。花柱は長さ約2mm。果実は球形、直径6~7㎜、無毛。花期は3~4月。果期は5~7月。2n=24。
 タロコキブシは別種とする見解もあったがStachyurus chinensis に含められている。
品種) 'Celina' , 'Goldbeater' , 'Joy Forever' (v) , 'Magpie' , 'Senna' , 'Wonderful Image'

2 Stachyurus himalaicus Hook.f. et Thomson ex Benth. ヒマラヤキブシ
 中国( 雲南省西蔵市)、インド、ネパール、ブータン、ミャンマー原産。中国名は西域旌节花 xi yu jing jie hua。標高400~3000mの広葉樹林、雑木林に生える。
 高さ3~5mの低木または小高木。葉柄は長さ0.5~1.5㎝。 葉身は槍状から長楕円状の披針形、長さ8~13㎝×幅3.5~5.5㎝、紙質~薄い革質、側脈は5~7対で両面に隆起し、基部は鈍形、縁は密に小鋸歯状で、先は尖形~長い尖鋭形。穂状花序は通常うなずき、長さ5~13㎝、無柄。花は黄色、長さ約6㎜、ほぼ無柄。 苞は3角形、長さ約2㎜。小苞は広卵形、先は鋭形。萼片は広卵形、長さ約3㎜、先は鈍角。花弁は倒卵形、約・長さ5㎜×幅3.5㎜。子房は卵状長円形、毛がある。花柱は長さ約1.5㎜。果実はほぼ球形、直径7~8㎝、±無毛。花期は3~4月。果期は5~8月
品種) 'Dolly' , 'Slender Lady'

3 Stachyurus praecox Siebold et Zucc. キブシ 木五倍子
 日本固有種(北海道の西南部、本州、四国、九州)。英名委はearly stachyurus。山地の林縁、道端に生える。古くは黄藤、豆藤と呼ばれたが、木本であって藤本でないため藤は使わず、ぬるで五倍子のフシの名を使っている。
 落葉低木~小高木。高さ2~4m。樹皮は赤褐色~灰褐色、ときに暗褐色、皮目がある。枝は赤褐色、皮目が目立ち、無毛、2稜がある。冬芽の頂芽は大きい。側芽は広卵形、長さ1.5~3㎜、先鋭形。芽鱗は2~4個、無毛、赤褐色~暗褐色。葉痕は半円形、維管束痕は3個。葉は互生し、葉柄は長さ1~3㎝。葉身は長さ6~12㎝、幅3~6㎝の長楕円形でサクラの葉に似ている。雌雄異株。雄株、雌株、両性株があり、それぞれ、雄花、雌花、両性花がつく。花は葉の展開前に、開花し、雄株の方が開花が早い。花序は長さ3~20㎝の総状花序(花柄が短いため穂状ともいわれる)、垂れ下がってつき、雄花序は長く、雌花序や両性花序は短い。花は長さ7~9㎜の鐘形、黄色4弁花。花柄は短く、長さ約0.5㎜。萼片は4個で、内側の2個は大きく花弁状であるため、一見すると花弁6個に見える。その外側に萼片を小さくしたような2個の苞がある。花弁は4個。雄しべ8個と雌しべ1個は花の奥にあり覗き込まないと見えない。雄花は雄しべが長く、子房が小さい。雌花は雄しべが短く、子房が大きい。両性花は両者の中間。液果は直径7~12㎜の楕円状球形、堅く、黄褐色に熟す。種子は長さ約2㎜。花期は3~4月。
品種) 'Aureomarginata' , 'Dappled Dawn' , 'Devon Purple' , 'Diane' , 'Gracilis' (f) , 'Oriental Sun' , 'Palmengarten' , 'Petra' , 'Rubriflora' , 'Sterling Silver' , 'Sterling Star' , 'Variegata' (v) , アカキブシ

3-1 Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. bicolor Sakata ニシキキブシ 錦木五倍子

 九州(鹿児島県)で1958年に発見された。
 花弁は大部分が帯褐紫色であり、上部が黄色。過去の文献(享保4年(1719)版広益地錦抄巻ーの二丁 伊藤伊兵衛)に記載があるかき色のキブシと同じような色変化ではないかと推定されている。

3-2 Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. lancifolius (Koidz.) H.Hara ナンバンキブシ 南蛮木五倍子

  synonym Stachyurus lancifolius Koidz.
 本州(山口県)、四国、九州に分布。
 枝が太い。葉は硬く大きく、葉柄は長さ2.5~4㎝。葉身は長卵形、長さ10~15㎝×幅7~8㎝、基部は円形~浅い心形、先は尖鋭形~長尖鋭形。花は淡黄色、やや大きく、長さ8~10㎜。果実はやや大きく、幅10~15㎜。

3-3 Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. leucotrichus (Hayashi) H.Hara ケキブシ 毛木五倍子

  synonym Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. leucotrichus Hayashi

 日本海側の多雪地に這える。
 葉の下面の脈上に密に白毛がある。

3-4 Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. macrocarpus (Koidz.) Tuyama ex H.Ohba ナガバキブシ

  synonym Stachyurus macrocarpus Koidz.

  synonym Stachyurus macrocarpus Koidz. var. prunifolius Tuyama

 小笠原諸島固有種。別名はハザクラキブシ。花期は1月。

3-5 Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. marginatus Hiyama フクリンキブシ 覆輪木五倍子

3-6 Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. microphyllus (Nakai) H.Hara コバノキブシ 小葉の木五倍子

  synonym Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. microphyllus Nakai

 東海地方に分布する。葉が小型のもの。

3-7 Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. rotundifolius (Tuyama) Tuyama ex H.Hara マルバキブシ 丸葉木五倍子

 九州に分布する、葉が卵形になるもの。

3-8 Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. matsuzakii (Nakai) Makino ex H.Hara ハチジョウキブシ 八丈木五倍子

  synonym Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. ovalifolius (Nakai) Ohba, comb. nud.

  synonym Stachyurus matsuzakii Nakai 
 関東南部(伊豆諸島)と東海地方に分布する。別名はエノシマキブシ。
 全体に大型。葉が大きく、厚くなり、花序も長い。花は直径約1㎝。
品種) 'Issai' , 'Scherzo' (v)

3-9 Stachyurus praecox Siebold et Zucc. var. parviflorus Makino ex H.Hara ヒメキブシ 姫木五倍子

 広島県西部の花崗岩地帯に見られる葉の小さなもの。基準種と連続する。

4 その他ハイブリッド
品種)  'Magpie' (v) , 'Rubriflorus' , 'Silver Wolf'

参考

1)Flora of China
 Stachyurus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=131157
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Stachyurus
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:39125-1
3)GRIN
 Stachyurus
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxon/taxonomysimple
4)植物研究雑誌 1(4): 102-106(1917)
 牧野富太郎 : 断枝片葉(其二)キブシは雌雄異株の植物なり
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/1/4/1_1_4_52/_pdf/-char/ja
5)植物研究雑誌 33(10): 313-313(1958)
 佐方敏男 : キブシの一新種について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/33/10/33_33_10_4315/_pdf/-char/ja