結婚式で花嫁のブーケに使われる。葉はユーカリに似た強い芳香があり、「マートル」という名のハーブとして使われる。果実や葉はミルト（Mirto）という酒になる。最近、庭木として使われることが多く、よく目にする。
　常緑低木、高さ2～6m。幹は灰色～橙褐色。小枝は若い時に腺毛がある。葉は対生（又は3輪生）し、長さ(0.8～)2.5～5㎝×幅約1.5㎝の卵形～披針形、全縁、無毛、薄い革質、半透明の点で覆われ、先は鋭形～尖鋭形、基部は広楔形、上面は暗緑色、光沢があり、下面は淡色、もむと強い芳香がある。花は直径2.5～3㎝、甘い香りがあり、葉腋に単生する。花柄は細く長さ3㎝以下。小苞は2個、小さく、早落性。花弁は類円形～卵形、白色～ピンク白色、5個、花後に花弁はすぐに落ちる。雄しべは多数、普通、花弁より長い。果実は液果、広楕円形～類球形、長さ7～10（12）㎜×幅6～8(9)㎜、黒紫色に熟し食べられる。花期は6～7月。果期は10～11月。

プリニア属

　 family 　Myrtaceae － genus Plinia
　
　高木又は低木。樹皮は普通、粗い。花序は腋生又は幹につく。花序は団散花序(glomerule)、密散花序(fascicle)、穂状花序(spike)、ブドウ房形花序(botryoid =botrióide)、または円錐花序。花は4数性。苞は離生。咢片は花芽中で離生又は完全に合着。子房の上の花托筒は花後に宿存する。子房は2室、胚珠は各室に2～4個。果実は咢が宿存し、種子が1～2個。胚は黄色。子葉は平凸形。
　世界に約79種があり、南アメリカ、中央アメリカ、西インド諸島に分布する。
　以前はキブドウ属(Myrciaria)の中に分類されていた。このため、ジャボチカバは現在でもキブドウ属に分類されるMyrciaria glazioviana(イエロージャボチカ)にも使われている。

プリニア属の主な種と園芸品種

1 Plinia cauliflora (Mart.) Kausel 　キブドウ　木葡萄
　　synonym　Plinia callosa Sobral
　　synonym　Plinia jaboticaba (Vell.) Kausel
　　synonym　Myrciaria cauliflora Berg.
　　synonym　Eugenia cauliflora DC.
　学名は一般にはPlinia caulifloraとされているがFlora Brazil 2020ではPlinia callosa を採用している。Plinia callosaは大型で葉が長さ30～50㎝、果実が直径5～10㎝。このため、Plinia caulifloraを学名とした。
　ブラジル、ボリビア原産。英名はjaboticaba（Spanish spelling） , jabuticaba(Portuguese spelling) , Brazilian grape tree , grauda。別名はブドウノキ(葡萄の木)、ジャボチカバ、ブラジリアングレープツリー、ジャブチカバ、ジャボチカ、グアペルー、ヒバプルー、イバプルー、サバラ。果実はマーマレード、ゼリー、ワインなどに使われる。
　常緑低木又は高木、高さ3～7.5(～12)m、樹冠が密に、藪状に丸くなる。葉は対生し、革質、披針形～楕円形、長さ2.5～10㎝、表面は光沢があり、暗緑色。茎生花(cauliflorous)であり、花や果実が幹や太い枝に直接つく。花柄はごく短い。花は1～数個、束生し、白色～黄白色。花弁は4個。雄しべは約60本、長さ4mm以下。果実は球形の紫色(緑色、赤紫色、褐紫色、暗紫色、黒色)、直径約2.5(2～2.5)㎝、ブドウのような甘い、ジューシーなゼリー状の白色の果肉をもつ。果実の皮は丈夫で、タンニンが多く含まれる。種子は1～5個、楕円形～ほぼ円形、扁平、淡褐色、長さ6～12.5mm、しばしば未熟になる。花や果実はブラジルでは通年、見られ、1年に5～6回咲く。
品種)　 'Ass'アッスー、アッスーワン(中葉披針形、円～鈍脚、鋭尖頭、実は直径3～3.5㎝) , 'Mineira' , 'Paulista' , 'Ponhema' , 'Rajada' , 'Roxa' , 'Rujada' , 'Sabará'[大葉系。四季なり種。葉は長卵形、円脚、短尖頭、長さ約3～10cm。果実は2～2.5cm] ,
2 Plinia phitrantha (Kiaersk.) Sobral　ジャボチカバ・ブランカ
　　synonym　Myrciaria phitrantha (Kiaersk.) Mattos 　　synonym　Myrciaria aureana Mattos　(white jaboticaba) 　　synonym　Plinia aureana (Mattos) Mattos 　ブラジル原産。英名はJabuticaba branca (white jaboticaba) , ibatinga 。別名はホワイト・ジャボチカバ
　果実が淡緑色、赤みがかった果実は甘く美味。

3 Plinia edulis (Vell.) Sobral　プリニア・エドゥリス
　　synonym　Marlierea edulis Nied.
ブラジル原産。英名はcambuca。ブラジルではcambucáと呼ばれる。
　常緑高木、高さ5～10m。樹冠はピラミッド形。樹皮は皮革質、幹は平滑。葉は楕円形～倒卵形、長さ5.5～10㎝、基部がくさび形、先は尖鋭形、無毛。花序は茎につく団散花序(glomerule)。咢片は融合し、無毛。小苞は果実に宿存し、花芽より小さい。果実は球形、無毛、長さ5～10㎝、直径10～15㎝、オレンジ色に熟し、甘酸っぱく食べられる。種子は1個。

4 Plinia inflata McVaugh　プリニア・インフラータ
　エクアドル、ブラジル原産。エクアドルではmulchiと呼ばれ、ブラジルではEcuadorian cambucáと呼ばれる。
　常緑高木、高さ4～10m。樹皮は紙質、裂ける。葉は楕円形～長円形、基部はくさび形、先は尾状、縁は平坦、主脈に綿毛があり、長さ9～15㎝×幅4～6㎝。花は幹、枝、又は葉腋に1～8個束生し、白色、幅約1㎝。果実はナシ形、熟すと黄橙色、直径2～5㎝、微軟毛がある。果皮は革質、果肉は白色、ジューシーで甘く種子は大きく、1～4個。
品種)　'Giant'(果実の直径8～10㎝)

5 Plinia peruviana (Poir.) Govaerts 　ジャボチカバ・ミウーダ
　　Plinia trunciflora (O.Berg) Kausel
　　synonym　Myrciaria trunciflora O.Berg
　アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ペルー原産。英名はJaboticaba De Cabinho。
　葉は小型、披針形、両端は鋭形。果実は小型、直径2.0cm以下。果柄が長く、3～10個が束生。

参考

1) Morton, J. 1987. Jaboticabas. p. 371–374. In: Fruits of warm climates. Julia F. Morton, Miami, FL.
　Jaboticabas 2) GRIN
　Plinia
3）Plants of the World Online | Kew Science
　Plinia Plum. ex L. 4）Flora Brazil 2020
　Plinia 5）Plant Finder - Missouri Botanical Garden
　Plinia cauliflora