カントウマムシグサ 関東蝮草
Flora of Mikawa
サトイモ科 Araceae テンナンショウ属
別 名 | ムラサキマムシグサ(紫色のカントウマムシグサ) , アオマムシグサ(緑色のカントウマムシグサ) , トウゴクマムシグサ , カミヤマテンナンショウ |
英 名 | arisaema , Japanese cobra lily |
学 名 | Arisaema serratum (Thumb.) Schott synonym Arisaema serratum var. serratum |
花 期 | 4~6月 |
高 さ | 30~120㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 林縁、林内 |
分 布 | 在来種 日本(本州、四国、九州[南九州を除く)、千島列島、朝鮮、ロシア原産 |
撮 影 | 設楽町 02.5.25 |
普通に見られ、極めて変異に富む。
高さ30~120㎝。雌雄偽異株で、雄株から雌株に転換する。偽茎部は長く、葉柄部はかなり短い。葉は鳥足状複葉、2(又は1)個つく。葉軸は発達する。小葉は7~17個、長楕円形、先は鋭形、縁は全縁、ときに鋸歯がある。花序柄は葉柄とほぼ同長か又は長い。仏炎苞は葉と同時または遅れて展開する。仏炎苞は普通、葉の上に位置する。仏炎苞は紫褐色~緑色で白色の縦縞(白筋)がある。仏炎苞の筒口辺部はやや開出(~広く外曲)する。舷部は卵形、先は次第に細くなり、長く尖り、内面に隆起する細脈が著しい。花序付属体は有柄、棒状、時に太い棍棒状~頭状。花期は4~6月。(日本産テンナンショウ属図鑑:邑田仁等著、北隆館、2018年)
カントウマムシグサの基準標本産地は箱根とされている。基準標本(狭義)の特徴は、小葉の縁に細鋸歯があること、花序付属体の先がこん棒状(頭状)に肥大することである。このような特黴を含め、基準標本によく一致するような個体は関東平野の山林を中心に埼玉県、東京都、群馬県、茨城県、千葉県、神奈川県で採集されているが、細鋸歯の有無、花序付属体の肥大の程度には変異がある。関東地域のこのような特徴を持つものは花序が葉よりも明らかに遅く展開する。葉は普通、2枚、葉軸は発達する。
現在ではカントウマムシグサを広義にとらえ、ムラサキマムシグサ(仏炎苞が紫色のカントウマムシグサ)、アオマムシグサ(仏炎苞が緑色のカントウマムシグサ)、トウゴクマムシグサなどを含めて変異の多いものとし、分布域も広いものとされている。カントウマムシグサはマムシグサ節に属し、子葉が3小葉で、胚珠数が少ない(4.1~7.9)ペダティセクタ亜節(subsect. Pedatisecta)の中のマムシグサ群に分類されている。マムシグサ群には早咲きのものと遅咲きのものがあり、マムシグサ(Arisaema japonicum)は早咲きであり、カントウマムシグサは遅咲きである。マムシグサ群に属す他種もいくつかあるが、コウライテンナンショウやヤマトテンナンショウなどはKwscienceやThe Plant Listではカントウマムシグサのsynonymとされている。
草本、塊茎又は根茎をもち、副雌雄異株又は雌雄偽異株(paradioecious:幼時に雄性、後に雌性(又は栄養状態により、栄養が悪いと雄性、良いと雌性又は両性に、年ごとに変わり)、性転換とも呼ばれる。。塊茎は普通、季節ごとに更新され、周りに小塊茎を生じる。成長シーズンの終わりに古い塊茎から分かれる。根茎は普通、円筒形、多数の節をもち、毎年ごとに更新されない。普通、常緑又は冬緑の葉を先行する。根は普通、低出葉(cataphylls:小さい鱗片状の葉、鞘状葉ともいわれる)の周りの塊茎の先か根茎の新しい節に出る。低出葉は3~5個、草質又は膜質、シュートの基部を取り囲む。偽茎(pseudostem)は葉柄の基部の鞘の円筒形の部分からなる。葉は1~3枚、長い葉柄がある。葉柄(基部の葉鞘の上端~最下の小葉基部)は普通、まだら、丈夫で、平滑又はいぼ状 。葉身は3小葉、掌状複葉、鳥足状複葉、又は放射状複葉。花序は葉の展開と同時又は前に出る。花序は単生、花序柄(最上部の葉柄の付け根~仏炎苞基部)があり、塊茎植物又は根茎をもつ植物の偽茎、又は、ある根茎植物では葉柄から離れて、直接、低出葉に取り囲まれる偽茎から生じる。花序柄(peduncle:偽茎の中を除いた部分を指すことが多い)は直立、丈夫、葉柄より普通、短く又はときに等しく、又は長い(偽茎を作る部分は除く)。仏炎苞(spathe)は下部が筒状、上部は広がった拡大部(舷部 limb) 、脱落性、枯れ又は半宿存性。仏炎苞の筒部ののど部はしばしば外側へ広く広がり、各側に耳があるか又は無い。のど部の縁に縁毛が有又は無。仏炎苞の舷部はたまに、先に長い尾をもつ。肉穂花序(spadix)は無柄、単性又は両性(見かけ上雄雌異株、または雄株と両性株がある)。花は花被片のない単性花。両性の肉穂花序は下部が雌性、上部が雄性、雌花群と雄花群が接してつく。中性(不稔の)花が肉穂花序にときにある。肉穂花序の上部には花をつけない花軸が剥き出しになっており、花序の付属体(appendix)と呼ばれる。付属体(appendix)は形が様々で基部に柄が有又は無、先はときに長い鞭毛(flagellum)で終わる。子房は基部に1個の室があり、数個の直生胚珠をもつ。花柱は普通、不明瞭。柱頭は盾状、パピラがある。融合雄しべ群(synandria)は2~6個の雄しべからなり、無柄又は統合した花糸につく。葯は2個の先端の孔又は1個の馬蹄形の隙間から裂開、もしくは輪状に横周裂開する。中性花は糸状、錐形。果序は直立又は下向き。液果は帯赤色、種子を数個もつ。英名はarisaema , Cobra Lily , Jack in the Pulpit 。
世界に約180種があり、主にアジアに分布する。中国に約80種、インド・ヒマラヤに約25種、インドシナ・マレーシアに約25種、北東アフリカ~アラビアに約10種、北アメリカに約3種が分布し、日本には少なくとも30種以上(約60分類群)があり、ほとんどがマムシグサ節であり、他にはマイヅルテンナンショウ節に2種(マイヅルテンナンショウ、ウラシマソウ)、アマミテンナンショウ節に2種(アマミテンナンショウ、シマテンナンショウ)があるだけである。広域分布する種はほとんどなく、形態差の小さな近縁と考えられる種が集中していることが特徴である。マムシグサ節は種間の中間形があり識別が困難であることから、Ohashi とMurata(1980)は当時最善の策としてマムシグサArisaema serratumただ1種(マムシグサ群と呼ばれる)を認め、20種以上をその異名とした。その後のマムシグサ群内で形態的差異の著しい集団についてアロザイム解析研究によっても、それらの集団間ではほとんど分化が認められないことが確認されている。ヒトツバテンナンショウなどはマムシグサ群からの分化がほとんど認めらいが、マムシグサ群とは形態的にはっきりと識別できる特徴を持った種であり、これらをサテライト群として区別する報告もある。日本国内のテンナンショウ属の染色体数は2n = 26, 28, 39, 42, 52, 56, 65, 72, 168 の9種類が知られており、最も多いのがは 2n = 28、次が2n = 26である。
広く使われているMurata(1984)説では地下茎の形状を主な分類形質とし、12節に分類している。Hetterscheid andGusman(2003)節では地下茎が根茎状であることを主な区別点として Anomala 節を認め,球茎を持つ Fimbriata 節から独立させ13節とした。
1 sect. Anomala(sect. Fimbriata(1,3)) ネッタイマムシグサ節
2 sect. Fimbriata(sect. Fimbriata(2)) フデボテンナンショウ節
3 sect. Tortuosa(sect. Tortuosa) マイヅルテンナンショウ節 2種(マイヅルテンナンショウ、ウラシマソウ)
4 sect. Flagellarisaema(subsect. Flagellarisaema) ウラシマソウ節 :
5 sect. Dochafa(sect. Dochafa) キバナテンナンショウ節
6 sect. Clavata(sect. Clavata) アマミテンナンショウ節 2種
7 sect. Sinarisaema(sect. Sinarisaema) クルマバテンナンショウ節
8 sect. Tenuipistillata(sect. Tenuipistillata) ムカシマムシグサ節
9 sect. Arisaema(sect. Trisecta) ヒマラヤテンナンショウ節
10 sect. Nepenthoidea(sect. Arisaema) テンナンショウ節
11 sect. Franchetiana(sect. Franchetiana) ウンナンマムシグサ節
12 sect. Pedatisecta(sect. Pedatisecta) マムシグサ節 3亜節
13 sect. Decipientia(sect. Decipienti) ユキミテンナンショウ節
1 sect. Anomala ネッタイマムシグサ節
2 sect. Attenuata ミナミマムシグサ節(A.lamminatum)
3 sect. Tortuosa マイヅルテンナンショウ節
マイヅルテンナンショウ (A. heterophyllum)
4 sect. Tenuipistillata ムカシマムシグサ節
5 sect. Dochafa キバナテンナンショウ節
6 sect. Odorata ニオイマムシグサ節 [Murata (2011)]
(A. prazeri , A. lidaence , A.aridum , A. mairei , A. quinequelobatum , A. yunanense)
7 sect. Clavata アマミテンナンショウ節
花序付属体に柄が無い。
アマミテンナンショウ(A. heterocephalum ) , オオアマミテンナンショウ(A. heterocephalum subsp. majus) , シマテンナンショウ(A. negishii)
8 sect. Flagellarisaema (=旧sect. Tortuosa subsect. Flagellarisaema) ウラシマソウ節
遅咲き
ヒメウラシマソウ(A. kiushianum ) , ナンゴクウラシマソウ(A. thunbergii subsp. thunbergii) , ウラシマソウ(A. thunbergii subsp. urashima) ,
9 sect. Arisaema ヒマラヤテンナンショウ節
10 sect. Decipientia ユキミテンナンショウ節(A decipiense)
11 sect. Franchetiana ウンナンマムシグサ節
12 sect. Nepenthoidea テンナンショウ節
13 sect. Sinarisaema クルマバテンナンショウ節
14 sect. Pistillata =Pedatisecta sect. L マムシグサ節(A.serratum)
肉穂花序の付属体は柄がある。葉身は3小葉又は鳥足状複葉。 葉序は螺旋状2列(spiro-distichous)
14-1 subsect. Pistillata, 亜節 子葉が単葉(心形)、胚珠が多い又は単葉(鉾型)
(1) ヒガンマムシグサ群(ナガバマムシグサ群)
発芽第一葉は心形の単葉。平均胚珠数は12.3~21.3(10.6以上)。早咲き。
ウワジマテンナンショウ(A. undulatifolium subsp. uwajimense)平均胚珠数は20以上 , ハリママムシグサ(A. minus) , ミミガタテンナンショウ(A. limbatum) , ヒガンマムシグサ(A. aequinoctiale ) , ナガバマムシグサ(A. undulatifolium subsp. undulatifolium) , タカハシテンナンショウ(A. nambae)
(2) セッピコテンナンショウ群
発芽第一葉は浅裂する単葉。平均胚珠数は10.9~11.1。
セッピコテンナンショウ(A. seppikoense) , ホロテンナンショウ(A. cucullatum)
(3) ユモトマムシグサ群
発芽第一葉は心形の単葉。平均胚珠数は9.3~10.7。早咲き。
オオミネテンナンショウ(A. nikoense subsp. australe) , イシヅチテンナンショウ(A. ishizuchiense ) , ユモトマムシグサ(nikoense subsp. nikoense)
(4) ヒロハテンナンショウ群
発芽第一葉は浅裂する単葉。平均胚珠数は8.0~9.2。
仏炎苞基部に明瞭な縦の隆起条がある。染色体の基本数x=13。
ヒロハテンナンショウ(A. ovale) , ナギヒロハテンナンショウ(A. nagiense) , イナヒロハテンナンショウ(A. inaense )
(5) シコクヒロハテンナンショウ群
発芽第一葉は浅裂する単葉。平均胚珠数は7.8。
仏炎苞基部に明瞭な縦の隆起条が無い。染色体の基本数x=14。
シコクヒロハテンナンショウ(A. longipedunculatum)
(6) 未分類群
ミツバテンナンショウ(A. ternatipartitum)早咲き , オガタテンナンショウ(A. ogatae)
14-2 subsect. Ringentia ムサシアブミ亜節 子葉が単葉(心形)、胚珠が少ない
ムサシアブミ(A. ringens)
14-3 subsect. Pedatisecta ペダティセクタ亜節 子葉が3小葉、胚珠が少ない(4.1~7.9)
(1) ヒトツバテンナンショウ群
オモゴウテンナンショウ(A. iyoanum. subsp. iyoanum) , シコクテンナンショウ(A. iyoanum subsp. nakaianum) , ヒトツバテンナンショウ(A. monophyllum) , ツクシマムシグサ(A. maximowiczii )
(2) ムロウテンナンショウ群
ムロウテンナンショウ(A. yamatense subsp. yamatense )やや早咲き , スルガテンナンショウ(A. sugimotoi ) , ツルギテンナンショウ(A. abei )
(3) マムシグサ群
ホソバテンナンショウ(A. angustatum)やや早咲き , アオオニテンナンショウ(Arisaema peninsulae var. masadanum) , カントウマムシグサ(A. serratum) , オオマムシグサ(A. takedae) , ヤマトテンナンショウ(A. longilaminum) , ハチジョウテンナンショウ(A. hatizyoense ) , コウライテンナンショウ(A. peninsulae)遅咲き , マムシグサ(A. japonicum) , ヒトヨシテンナンショウ(A. mayebarae)。
(4) アオテンナンショウ群
アオテンナンショウ(A. tosaense) , エヒメテンナンショウ(A. ehimense ) , ムロウマムシグサ(A. kishidae)
(5) 未分類群
ヒュウガヒロハテンナンショウ(A. minamitanii) , オドリコテンナンショウ(A. aprile)早咲き , タシロテンナンショウ(A. tashiroi ) , アマギテンナンショウ(A. kuratae) , キリシマテンナンショウ(A. sazensoo) , ユキモチソウ(A. sikokianum) , トクノシマテンナンショウ(A. kawashimae)。
ムロウテンナンショウ群 2n=28
日本固有種(四国の愛媛県、徳島県)。仏炎苞は薄緑色、白色の筋があり、先が前に曲がる。花序付属体は細い根棒形、先が仏炎苞に沿って前に曲がる。
2 Arisaema aequinoctiale Nakai et F.Maek. ヒガンマムシグサ 彼岸蝮草
synonym Arisaema undulatifolium auct. non Nakai
synonym Arisaema limbatum Nakai et F.Maek. var. aequinoctiale (Nakai et F.Maek.) Seriz.
synonym Arisaema undulatifolium Nakai var. yoshinagae (Nakai) Seriz. ヨシナガマムシグサ
-Arisaema yosinagae Nakai ヨシナガマムシグサ
synonym Arisaema stenophyllum Nakai et F.Maek.
synonym Arisaema limbatum Nakai et F.Maek. var. stenophyllum (Nakai et F.Maek.) Seriz.
ヒガンマムシグサ群(=ナガバマムシグサ群)
日本固有種(本州の関東以西、四国)
ヒガンマムシグサ群には非常に変化が多く、マムシグ サと紛らわしいものがあるが、子房1個あたりの胚珠数がマムシグサ群よりも多いことによって区別できるとされている。
多年草。高さ40~90cm。葉は2枚つき、ほぼ高さが同じで、花序より低い。葉は鳥足状複葉、小葉は7~13枚つき、中央の小葉が最も大きく、外側が小さく、披針形~楕円形、ときに鋸歯があり、しばしば中脈に沿って白班が入る。新葉の展開前に花序が出る。仏炎苞は紫褐色~黄褐色、まれに黄緑色、筒部は長さ3~6.5㎝、口辺部は耳状に開出し、拡大部(舷部)は卵形~狭倒卵形で鋭尖頭、前に曲がる。花柄は花時には葉柄より長く、偽茎とほぼ同長、雌株はでは特に長くなる。付属体は棒状で有柄、先がやや膨らみ、直径2~5mm。花期は3中旬~4月。果期は7~8月。2n=26。
3 Arisaema amurense Maxim. アムールテンナンショウ
synonym Arisaema komarovii Tzvelev
synonym Arisaema amurense Maxim. var. robustum Engl.
マムシグサ節
朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は东北南星 dong bei nan xing
やや小形で花茎が長い。 品種) 'Dersu Uzala' , 'Green Form' , 'Nakhodka' , 'Splitter Splatter' , 'Vostok'
3-1 Arisaema amurense Maxim. f. purpureum (Nakai) Kitag. ムラサキアムールテンナンショウ
synonym Arisaema amurense Maxim. var. violaceum Engl.
synonym Arisaema amurense Maxim. f. violaceum (Engl.) Kitag.
4 Arisaema angustatum Franch. et Sav. ホソバテンナンショウ 細葉天南星
synonym Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott
マムシグサ群
日本固有種(本州の関東地方~近畿地方)。山地の林内、林縁に生える。愛知県の絶滅危惧Ⅱ類
葉は普通、2枚つき、下側につく葉は上側の葉より大きい。葉柄基部は偽茎となり、偽茎は長さ20~80cm。偽茎や葉柄には淡紫褐色~紫褐色の条線と斑紋があり、蛇紋のように見える。小葉は9~19個、披針形~線状披針形、長さ8~20cm×幅1.5~4cm。花茎は長さ4~15cm。仏炎苞は緑色(まれに紫色)に白色の縦筋がある。筒部は幅1~1.5cm、口辺部は広くなり、やや幅広く反り返る。舷部は幅が広く卵形、筒部より短く、先が前に曲がり、先は鋭形~長い鋭形。付属体は細い棒状で、白色~淡緑色、基部が最も太く、基部に柄があり、先端はやや太くなり、普通、筒口部からあまり突き出ない。花期は4~5月。果期は10~11月。 2n=28。
5 Arisaema aprile J.Murata オドリコテンナンショウ 踊子天南星
synonym Arisaema nikoense Nakai f. variegatum Sugim.
マムシグサ亜節 群未分類
日本固有種( 静岡県、山梨県、神奈川県)。
ユモトマムシグサに酷似するが、偽茎開口部が襟状に開出する点で異なる。
高さ15~30(40)cm。葉は鳥足状複葉、普通、2(1)個、同大。葉軸はあまり発達しない。葉柄と偽茎部はほぼ同長、普通緑色、葉柄基部の偽茎部の境が開口し、襟状に開出する。小葉は普通、5枚、楕円形~広楕円形、葉先と基部は漸尖し、縁は全縁、ときに不規則な粗い鋸歯があり、ときに中脈沿いに白斑が生じる。花序は葉の展開より前に展開する。花序柄は花時には葉柄とほぼ同長になる。仏炎苞は緑色、白色の条は目立たず、ときに縁が紫色を帯びる。仏炎苞の筒口辺部はやや開出する。舷部は長卵形、先は漸尖し、次第に細まりとがる。花序付属体は柄があり、淡い色で棒状になり、先端がふくらむことはない。子房は胚珠が6~9個。果実は秋遅くに赤く熟す。花期は4~5月。果期は11~12月。2n=28。
6 Arisaema candidissimum W. W. Smith モモイロテンナンショウ 桃色天南星
中国原産。中国名は白苞南星 bai bao nan xing。英名はstriped cobra lily , Chinese cobra lily , Chinese Jack-in-the-pulpit , pink cobra Lily. 日本でよく栽培されているのは仏炎苞がピンク色になる選抜種。
雌雄異株。塊茎は扁球形、直径3~5㎝。低出葉は3~4個、ピンク色を帯びた褐色、まばらに白色の斑点があり、長5~24㎝×幅4~5㎝、膜質、先は鈍形、偽茎を巻く。葉は1枚。葉柄は全体に緑色、長さ15~35㎝、基部は偽茎を作り、直径約1.2㎝、平滑。葉身は3小葉複葉。小葉柄は無柄、卵形又はほぼ円形、先は円形~鋭形。中央の小葉は長さ6~8㎝×幅7~9㎝(花時より後はもっと広くなる)、基部は短いくさび形。側小葉はわずかに斜め、長さ5~6㎝×幅4~8㎝。花序は葉の展開より前に展開する。仏炎苞は淡緑色又は白色で緑足又は紫色の縦の線がある。筒部は円筒形、長さ3~4㎝×幅約2㎝、のどの縁は反曲する。舷部は卵形~卵状披針形、長さ5~6㎝×幅3~4㎝、先に長さ2~3㎝の尾をもつ。肉穂花序は単性。雌ゾーンは長円形、長さ2㎝×幅」1㎝程度。子房は緑色、卵形。柱頭はほぼ無柄、丸い。雄ゾーンは円筒形、長さ1.6~2㎝×幅3~4mm。融合雄しべ群(synandria)2~3個の葯からなる。半葯は黄色、ほぼ球形、先端の孔から裂開する。花序保続帯はほぼ直立又は直立、白色又は淡緑色、漏斗形、ほぼ円筒形、長さ3~4.5㎝×幅2~5mm、裸か、基部は漸尖し、ほぼ無柄~有柄、先は鋭形又は鈍形。花期は6~7月。
品種) 'White Flower Form'
7 Arisaema ciliatum H. Li
中国原産。中国名は缘毛南星 yuan mao nan xing。英名はChinese Cobra Lily。
品種) 'Liubaense'
8 Arisaema consanguineum Schott キールンテンナンショウ 広義
synonym Arisaema erubescens (Wallich) Schott in Schott & Endlicher [Flora of China]
中国、台湾、ブータン、インド、ラオス、ミャンマー、ネパール、タイ、ベトナム原産。中国名は一把伞南星 yi ba san nan xing。英名はHimalayan cobra lily , Jack in the Pulpit 。
品種) 'J. Balis' , 'Qinling' , Silver Center' , 'The Perfect Wave' , 'Wild Blue Yonder'
8-1 Arisaema consanguineum Schott subsp. kelunginsulare (Hayata) G.Gusman キールンテンナンショウ
synonym Arisaema kelunginsulare Hayata
9 Arisaema concinnum Schott
中国原産。中国名は皱序南星 zhou xu nan xing。英名はChinese Cobra Lily。
品種) 'Sikkim' ,'Yellow Spathe Form'
10 Arisaema cucullatum M.Hotta ホロテンナンショウ 幌天南星
セッピコテンナンショウ群
日本固有種(近畿地方)。 高さ20~45cm。塊茎は扁球形。葉は普通1枚。偽茎部は短い。小葉は7~13個、狭披針形~狭楕円形、全縁、先が尾状に細長く伸びる。葉軸はあまり発達しない。花序は葉より低い。仏炎苞が幌(ほろ)状に内巻きし、先が細長く長い尾状に伸びる。背側の半透明の白条と黒褐色の縞模様が目立つ。花序附属体は細棒状、先端はやや膨らむ。花期は5月。果期は9月中旬~10月。2n=28。
11 Arisaema decipiens Schott ユキミテンナンショウ
中国、インド、ミャンマー、ベトナム原産。中国名は雪里见 xue li jian
12 Arisaema ehimense J.Murata et J.Ohno エヒメテンナンショウ 愛媛天南
アオテンナンショウ群
マムシグサ群。アオテンナンショウとマムシグサの中間的な性質を示し、雑種起源と推定されている。
四国(愛媛県)に分布。山地の林内に生える。
小葉の先と仏炎苞の先は長く伸び、アオテンナンショウに似ているが、付属体は紫色を帯びるものが多い。葉は鳥足状複葉普通、2枚つく、小葉は7~ 11枚個、長楕円形、先が糸状に伸びる。仏炎苞は緑色で先が細長く糸状に下がる。花期は4~5月。果期は10月。2n=28。
13 Arisaema flavum (Forssk.) Schott キバナテンナンショウ 黄花天南星
キバナテンナンショウ節
中国、インド、ブータン、ヒマラヤ (アフガニスタン~ネパール) 、アラビア、アフリカ原産。
13-1 Arisaema flavum subsp. subsp. flavum (2n = 56)
アフリカ、アラビア原産。
13-2 Arisaema flavum subsp. abbreviatum (Schott) J. Murata (2n = 56)
ヒマラヤ (アフガニスタン~ネパール) 、アラビア (Oman)
13-3 Arisaema flavum (Forsskål) Schott subsp. tibeticum J. Murata, (2n = 28)
中国、インド、ブータン原産。中国名は黄苞南星 huang bao nan xing
14 Arisaema formosanum (Hayata) Hayata アリサンテンナンショウ
synonym Arisaema erubescens (Wallich) Schott in Schott & Endlicher [Flora of China]<
クルマバテンナンショウ節
台湾原産。中国名は一把伞南星 yi ba san nan xing。Flora of Chinaではキールンテンナンショウにまとめている。
15 Arisaema galeiforme Seriz. ヤマザトマムシグサ 山里蝮草
マムシグサ群
本州(群馬県、長野県、山梨県、静岡県、愛知県、岐阜県)に分布。低山地から山地の林床に生える。花序を除いた形態はカントウマムシグサに似ている。
高さ30~120cm。葉柄や葉軸、偽茎は淡緑色か又は淡紫褐色で、班がある。葉は2個、小葉は7~17個の鳥足状複葉。小葉は先が尖鋭形、白斑がある。葉軸は発達する。仏炎苞は筒部が太く、筒部の口辺部は広がり、雄花序では上に向かってやや幅広となり、外面が淡色。舷部は内面の縁や縞が濃紫褐色で目立ち、著しい縦皺があり、幅広く、三角状広卵形で著しくもり上がり、ほぼ直角に前に曲がり、先端は急に尖り、筒部とほぼ同長。付属体はやや太い棒状で普通先が頭状にならず、濃紫褐色、筒部からあまり突き出さず、隠れて見にくい。花と葉はほぼ同時に開く。花期は5~6月。
15-1 Arisaema galeiforme Seriz. f. viride Seriz. ミドリヤマザトマムシグサ
仏炎苞が緑色のもの。
16 Arisaema grapsospadix Hayata フデボテンナンショウ
synonym Arisaema nanjenense T.C.Huang et M.J.Wu
ネッタイマムシグサ節
台湾原産。中国名は毛笔南星 mao bi nan xing。
17 Arisaema griffithii Schott
東ヒマラヤ、ネパール、チベット原産。英名はGriffith's Cobra Lily。
葉は3小葉の複葉、2枚つく。小葉は大きく、広卵形、縁は波内、先は鋭形、下面の脈は明瞭。仏炎苞は長さ約20㎝。舷部は横幅が非常に広く、前側に曲がり、内側に巻き込み、先は切形~浅い凹形、先端に短~長の尾状突起があり、横に張り出した部分はコブラの頭のようにも見え淡~暗紫褐色の網状紋があり、中央部分は、筒部と同じように縦の淡~暗紫褐色の縞模様になる。花序付属体は尾状、長さ20~80㎝、先は仏炎苞から長く突き出し、垂れる。
品種) 'Numbuq'
18 Arisaema hatizyoense Nakai ハチジョウテンナンショウ 八丈天南星
synonym Arisaema japonicum Blume var. hatizyoense (Nakai) Sugim.
synonym Arisaema japonicum Blume var. yasuii Sugim.
マムシグサ群。遅咲き系の性質を持つが、仏炎苞は葉よりやや早く開く。全体が緑色のカントウマムシグサという印象を与える。
日本固有種(八丈島)。林縁に生える。
葉は鳥足状複葉、2個つき、ほぼ同大。小葉は7~15個、小葉間の葉軸はやや発達する。仏炎苞は葉よりやや早く開く。仏炎苞は通常は緑色、まれに紫色を帯び、白色の縦筋がある。舷部は筒部よりやや長く、口辺部はやや耳状に開出する。花序付属体は棒状で先が膨らまない。染色体数が他のマムシグサ群より2本少ない2n=26である。花期は3~4月。果期は9月中旬~11月。
19 Arisaema heterocephalum Koidz. アマミテンナンショウ 奄美天南星 (広義)
アマミテンナンショウ節
南西諸島に分布する。常緑の林内に生え、しばしば石灰岩地に生える。
塊茎はやや扁球形、子球をつける。葉は2枚つき、鳥足状複葉。花序の付属体は棒状で、基部に柄がなく、数個の退化した花をつける。花期は1~3月。果期は7~8月。
19-1 Arisaema heterocephalum Koidz. subsp. heterocephalum アマミテンナンショウ
奄美大島、徳之島に分布。林内に生える。
19-2 Arisaema heterocephalum Koidz. subsp. majus (Seriz.) J.Murata オオアマミテンナンショウ
synonym Arisaema heterocephalum Koidz. var. majus Seriz.
徳之島に分布。低地に生える。
仏炎苞が緑色で付属体が太い。
19-3 Arisaema heterocephalum Koidz. subsp. okinawense H.Ohashi et J.Murata オキナワテンナンショウ
synonym Arisaema heterocephalum Koidz. var. okinawense (H.Ohashi et J.Murata) Seriz.
沖縄本島に分布。山地に生える。
小葉が広披針形でやや数が少なく、仏炎苞の内面が紫褐色。
20 Arisaema heterophyllum Blume マイヅルテンナンショウ 舞鶴天南星
マイヅルテンナンショウ節
日本(本州、四国、九州)、朝鮮南部、中国、台湾に分布する。中国名は天南星 tian nan xing。低地の水辺の草地、湿地、疎林下に生える。
雌雄同株と雄株。塊茎は扁球形、直径2~6㎝、多数の子球をつける。高さ60~120cm。低出葉は4~5個、膜質。葉は普通、1枚。葉柄は粉白色を帯、長さ30~60㎝、下部の3/4は鞘状、偽茎になる。葉身は鳥足状複葉。小葉は11~19(~21)個つく、短い小葉柄があるか又は無く、下面は帯淡緑色、上面は鈍い緑色、形は様々、倒披針形、長円形、又は線状長円形、基部はくさび形、先は尖鋭形。中央の小葉は長さ3~15㎝×幅0.7~5.8㎝、しばしば側小葉よりかなり短い。外側1番目の小葉は長さ7.7~24.2(~31)㎝×幅(0.7~)2~6.5㎝、最も外側の小葉まで次第に小さくなり、小葉の間の距離は0.5~5㎝。花序柄は普通、葉柄より長く長さ50~80㎝。仏炎苞の筒部は外側が粉白色、内側は白緑色、円筒形、長さ3.2~8(10)㎝×幅1~2.5㎝、のど部はわずかに反曲する。舷部は強く内側に曲がり、外面が淡緑色~淡帯黄色、内面は濃緑色、卵形、長さ2.5~8㎝×幅4~9㎝。肉穂花序は両性又は雄性。両性の肉穂花序は雌ゾーンが下部にあり、長さ1~2.2㎝。子房は球形。花柱は明瞭。柱頭は点状。胚珠は3~4個。雄ゾーンは上部にあり、長さ1.5~3.2㎝、融合雄しべ群(synandria)は疎。たまに刺のある中性花をもつ。雄性の肉穂花序は雄ゾーンが長さ3~5㎝×幅3~5mm。融合雄しべ群(synandria)は柄があり、2~3個の葯からなり、各2半葯をもち、先端の隙間から裂開する。肉穂花序は斜上し、S字状(sigmoid)になり、淡帯白色、無柄の基部から細い鋭形の先まで次第に先細になり、長さ20(~30)㎝×基部の直径5~11mm。液果は黄橙色又は赤色、円筒形、長さ約5mm。種子は普通、1個、こん棒形。花期は4~5月。果期は7~9月。2n=168。
品種) 'Baguo(Dancing Crane Cobra Lily )
21 Arisaema ilanense J.C.Wang ピヤナンテンナンショウ
アマミテンナンショウ節
台湾原産。中国名は宜兰南星 yi lan nan xing
22 Arisaema inaense (Seriz.) Seriz. ex K.Sasamura et J.Murata イナヒロハテンナンショウ 伊那広葉天南星
synonym Arisaema ovale Nakai var. inaense (Seriz.) J.Murata
synonym Arisaema amurense Maxim. var. inaense Seriz.
ヒロハテンナンショウ群
日本(岐阜県東部~長野南部)、サハリン、朝鮮に分布。
高さ20~50cm。塊茎はよく子球をつける。葉は1個つき、花序柄が短く花序の高さが葉より低い。小葉は5~7個つき、葉軸は発達しない。仏炎苞や花序附属体の形態が特徴的である。仏炎苞の筒部は長さ4.5~5.5cm、口辺部はやや広く開出し、多少耳垂状になる。舷部は五角状長卵形、長さ8~9cm×幅3.5~5.4cm、紫色で多数の白色の縦条線が目立つ。花序附属体は長さ3~3.5㎝、太く短い円柱形、先端はやや頭状になり、直径7~9mm。花期は5~7月。2n=26。
23 Arisaema ishizuchiense Murata イシヅチテンナンショウ 石鎚天南星
synonym Arisaema nikoense Nakai var. ishizuchiense (Murata) M.Hotta ex Seriz.
ユモトマムシグサ群
日本固有種(四国の石鎚山山系:高知県、徳島県)。ユモトマムシグサによく似ていて、地理的変異とも考えられる。
高さ10~20㎝。葉は1個まれに2個、葉軸は発達せず、やや掌状の鳥足状複葉、小葉は普通5個、まれに6~7個。仏炎苞は内面と外面が紫褐色~緑褐色、白色の条線があり、筒部は長さ4.5~7.5㎝、舷部は長さ6~13c×幅約5㎝になり、前側に垂れ下がり、先は鋭形。花序付属体は太い根棒状で先はやや膨らみ、直径6~10㎜、紫褐色、筒部から突き出る。花期は5月下旬~6月上旬。果期は10月。2n=28。
24 Arisaema iyoanum Makino オモゴウテンナンショウ 面河天南星 (広義)
ヒトツバテンナンショウ群
日本固有種(本州の広島県。山口県、四国の愛媛県・高知県・徳島県)。 24-1 Arisaema iyoanum Makino subsp. iyoanum オモゴウテンナンショウ 面河天南星
synonym Arisaema akiense Nakai アキテンナンショウ
本州(広島・山口県)、四国(高知・愛媛県)に分布する。流沿いの山地の林下に生える。垂れ下がる舷部の外側(上側))が緑色になるのが特徴。
。仏炎苞は花序付属体は棒状で先はやや膨れる。 高さ20~60(80)cm。偽茎は葉柄より長い。葉は1個、鳥足状複葉で葉軸が発達する。小葉は7~15個つき、長円形~狭楕円形、縁は全縁又は細鋸歯があり、先は尖鋭形。花序は垂直に立ってつき、葉の展開後に仏炎苞が開く。仏炎苞は長さ11~20㎝、淡緑白色で、細かい紫色の斑点が幾筋にも入る。舷部の外側(上面)は汚緑色で紫色の斑紋がなく、内側はほぼ紫色、先は初め上向き、後に長く垂れ下がる。花序付属体は円柱状。花序は葉に遅れて開く。花期は5月。2n=28。
24-2 Arisaema iyoanum Makino subsp. nakaianum (Kitag. et Ohba) H.Ohashi et J.Murata シコクテンナンショウ
synonym Arisaema akiense Nakai var. nakaianum Kitag. et Ohba
synonym Arisaema nakaianum (Kitag. et Ohba) M.Hotta
synonym Arisaema iyoanum Makino var. nakaianum (Kitag. et Ohba) Kitag. et Ohba
四国(愛媛県・高知県・徳島県)に分布する。山地の林下に生える。全体に基本種より大きく、仏炎苞が濃紫色~帯紫色。 高さ30~80(100)cm。基準種のオモゴウテンナンショウ A. iyoanum subsp. iyoanum より全体に大きい。偽茎は葉軸の約2~3倍長い。葉は1個、葉軸が発達する。小葉は7~15個。仏炎苞は長さ12~23㎝、濃紫色~赤紫色で、白色の縦縞が目立ち、縁は外曲し、筒の口辺部は耳垂れ状に広く開出する。舷部は幅広く、卵形~広卵状三角形、幅3.5~6㎝、前側に曲がり垂れ下がる。花序付属体は先端がやや膨らんだ根棒状。花期は5月。
25 Arisaema izuense Nakai イズテンナンショウ 伊豆天南星
synonym Arisaema serratum var. izuense (Nakai) Gusman & L.Gusman [Kewscience]
Kewscience、The Plant Listでは変種としている。オオマムシグサの1葉型といわれ、オオマムシグサに含める見解もある。KewscienceではオオマムシグサもArisaema serratumの別品種としている。伊豆半島では変異が大きく、オオマムシグサともカントウマムシグサとも判定できないような個体が多い。
本州(静岡・山梨県)に分布。湿った草地や疎林の林下、林縁に生える。
高さ20〜40cm、時に100cm。偽茎や花序柄は短く、かわりに葉柄が長くなり、植物体の全高の2分の1に達する。鞘状葉や偽茎は淡緑色か淡紫褐色で、班がほとんどない。葉は普通1個(まれに2個)、小葉は7~9(15)個。花序は形状がオオマムシグサに似て、仏炎苞の舷部が長く垂れ下がるが、仏炎苞筒部はほとんど白色を帯びない。仏炎苞は紫褐色で緑色が混じり、舷部は内面に隆起脈があり、やや外曲して前に垂れ下がる。付属体は棍棒状で黄白色から紫白色で紫の班があり、白色になることはほとんどない。花期は5月。
26 Arisaema japonicum Blume マムシグサ 蝮草 (狭義)
synonym Arisaema takesimense Nakai タケシママムシグサ
synonym Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott
synonym Arisaema koshikienseNakai コシキジマテンナンショウ
synonym NakaiArisaema yakusimense Nakai ヤクシマテンナンショウ
synonym Arisaema pseudojaponicum Nakai
synonym Arisaema serratum var. serratum [The Plant List]
マムシグサ群。Iwatsuki, K., Boufford, D.E. & Ohba, H. (2016). Flora of Japan IVb: 1-335. Kodansha Ltd., Tokyo.
(マムシグサ亜群)マムシグサに代表される「早咲き系」の性質を強く示すもの。葉は普通、2枚。花序柄(花梗)は長く、花序は葉より著しく早く開く。仏炎苞は緑または紫色を帯び、両面ともに平滑。九州のマムシグサは変異が大きく、四国のマムシグサは比較的変異が少ない。
日本(四国、九州)、朝鮮に分布。山地の林下、林縁に生える。
高さ30~120cm。低出葉や偽茎部の班は赤紫褐色。葉は2個つく。小葉は9~17個、披針形~楕円形、縁は全縁、細鋸歯がある。まれに葉軸が発達する。花序柄(花梗)は葉柄部とほぼ同長または長い。花序は葉より著しく早く開く。仏炎苞は緑色(四国では緑色が多い)又は淡緑褐色~紫褐色、やや半透明で白色の縦縞がある。舷部は筒部と同長または長く、卵形~狭卵形、鋭頭~鋭尖頭、内面に隆起する細脈がなく平滑。筒の口辺部はやや開出する。花序付属体は直立し、有柄、淡緑色で、棒状~太い棒状。花期は3~4(5)月。果期は9中旬~11月。
27 Arisaema kawashimae Seriz. トクノシマテンナンショウ 徳之島天南星
マムシグサ亜節 群未定 2n=28
日本固有種(徳之島)。別名はホソバテンネンショウ。山地部の林内に生える。
葉は鳥足状複葉。2枚つく。小葉は7~13枚、披針形、先は鋭線形。仏炎苞は淡紫褐色の縞があり、筒部が長く、筒部に上側が徐々にやや広くなり、筒の口辺部は狭く開出する。舷部は前側に筒部の上に曲がり、先は尖鋭形。花序の展開は葉の展開と同時。花期は2~3月。
28 Arisaema kishidae Makino ex Nakai ムロウマムシグサ 室生蝮草
アオテンナンショウ群
日本固有種(本州の愛知県、近畿地方)。別名ははキシダマムシグサ。和名は奈良県室生山に由来する。低山地の林内に生える。
高さ30~50㎝。葉は1~2個と少なく、鳥足状につく。小葉は長さ5~15㎝の倒卵形~長楕円形で、先がとがり、全縁又は鋸歯がある。花序柄(花梗)の長さは性転換に伴って変化し、葉柄に対する長さが雄より雌の方が短い。仏炎苞は汚紫褐色で、細かい斑紋がつく。舷部の先は糸状に長く伸びる。内側にはパピラがなく、ざらつかない。花序の付属体は長さ4.5~8cm、基本的に赤紫褐色で微細な紫斑があり、先端が曲らない。花期は4~6月。果期は11~1月。2n=28。
名前がよく似て混同されることがあるムロウテンナンショウArisaema yamatenseは舷部が短く、先は尖鋭形、内面にパピラがある。
29 Arisaema kiushianum Makino ヒメウラシマソウ 姫浦島草
synonym Flagellarisaema kiushianum (Makino) Nakai
ウラシマソウ節
日本固有種(本州の山口県、九州)。低山地の暗い林下に生える。 高さ30~50㎝。葉は1枚、鳥足状複葉。小葉は7~13枚、狭卵形形~卵形、頂小葉は長さ10~20㎝×幅2~5㎝、先は尖鋭形。花序は葉柄の基部に単生。花序柄は短く、葉柄は長い。花序の仏炎苞は濃紫褐色、白色の縦縞があり、筒部と舷部はほぼ同長。のど部は左右に大きく耳状に張り出し、前から見ると耳部がほぼ円形になる。舷部は筒部を被って前側に曲がり、三角状、先は尖鋭形で垂れる。舷部の内面にはT字形の白紋があるのが特徴。花序付属体はウラシマソウのように糸状に長くなって、突き出し、長さ15~20㎝。2n=56。花期は5月。果期は11月。
品種) 'Kikkou-fu'
30 Arisaema kuratae Seriz. アマギテンナンショウ 天城天南星
synonym Arisaema serratum var. serratum
マムシグサ亜節 群未定 。KewscienceではArisaema serratum var. serratumのsynonymとしている(Gusman, G. & Gusman, L. (2006))。
日本固有種(静岡県伊豆半島)。山地の林下に生える。
高さ15〜30cm。葉は1〜2個、小葉は5〜7枚、葉軸はやや発達する。仏炎苞は紫褐色、または緑色で白い縦条がある。緑色の仏炎苞を持つ個体は全体の1/3ほどである。仏炎苞口辺は狭く反曲し、舷部中央は盛りあがる。付属体は白色で太い棒状。花期は4〜5月。果期は10月。2n=28。
31 Arisaema limbatum Nakai et F.Maek. ミミガタテンナンショウ 耳形天南星
synonym Arisaema limbatum Nakai et F.Maek. var. conspicuum Seriz.
synonym Arisaema undulatifolium Nakai var. ionostemma (Nakai et F.Maek.) H.Ohashi et J.Murata
synonym Arisaema undulatifolium Nakai var. limbatum (Nakai et F.Maek.) H.Ohashi
ヒガンマムシグサ群
日本固有種(本州の東北地方、関東地方、中部地方東部、兵庫県淡路島、四国の沖の島、九州の大分県)。落葉樹林下や林縁に生える。仏炎苞が大きく、暗紫色で、口辺部が耳状に著しく開出する特徴をもつ。br> 塊茎は扁球形。高さ70cm以下。葉は普通、2個、鳥足状複葉、葉柄は短く、葉軸がやや発達する。小葉は7~11個つき、披針形~楕円形、長さ10~17㎝、縁は全縁又はときに微細な鋸歯縁、中脈に沿って白斑が生じることがある。偽茎は長さ4~42cm。葉の展開より前に花序が伸びて仏炎苞が開く。花序柄は花時には葉柄より長い。仏炎苞は黒紫色~紫褐色~黄褐色、まれに緑色、白色の縦縞があり、長さ13~16㎝。仏炎苞の筒部は口辺部が耳状に広く張り出し、これが名の由来である。舷部は卵形、先は鋭形。雌雄偽異株。雄株から雌株に完全に性転換する。花序付属体は長さ6.8~7.7cm×直径3~10mm、棒状~やや棍棒状、先端は太く丸くなり、仏炎苞の筒部から完全に外に出る。花序付属体の柄は長さ約6mm。雌花の子房の中には胚珠が10~16個(四国産は29個)。2n=26。花期は3月中旬~5月。果期は7~8月。
31-1 Arisaema limbatum Nakai et F.Maek. f. viridiflavum Hayashi キイロミミガタテンナンショウ
synonym Arisaema undulatifolium Nakai var. limbatum (Nakai et F.Maek.) H.Ohashi f. viridiflavum H.Ohashi et J.Murata
仏炎苞など全体に着色色素を欠き、花序が黄色~黄緑色になるもの。
32 Arisaema lobatum Engler
中国原産。中国名は花南星 hua nan xing。
品種) 'Mount Emei'
33 Arisaema longilaminum Nakai ヤマトテンナンショウ 大和天南星
synonym Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott
synonym Arisaema sinanoense Nakai
マムシグサ群 br> 日本固有種(中部地方~近畿地方)。基準標本は奈良。林縁などに生える。愛知県の絶滅危惧ⅠB類。 br> 葉は2個。マムシグサに似ているが小葉は細く、苞片の先は長く伸びる。仏炎苞は舷部が狭三角形で細長く伸び、のどぶの縁がほとんど反曲しない。花序附属体が細い。それ以外の性質はオオマムシグサやヤマザトマムシグサに似ている。花はこの類では最も遅く、5月下旬~6月中旬。果期は11月。 2n=28<
34 Arisaema longipedunculatum M.Hotta シコクヒロハテンナンショウ 四国広葉天南星
synonym Arisaema robustum (Engl.) Nakai var. shikokumontanum H.Ohashi
シコクテンナンショウ群:仏炎苞の筒部に隆起条はない。染色体の基本数は14。
日本固有種(本州の山梨県・静岡県、四国、九州)。ヒロハテンナンショウからは花序柄が長いこと、仏炎苞が小さいこと、仏炎苞の筒部に隆起条がないこと。雄花の葯が融合することで容易に区別できる。
全体に小形。塊茎はよく子球をつける。葉は普通、1枚、まれに2枚。小葉は5枚、白斑はなく、縁は全縁または鋸歯縁、葉軸は短い。外側の側小葉は内側のものとほぼ同大のこともあるが、小さいこともある。葉鞘部は長さ25~35cm、ほぼ直立、葉柄全長の1/6~2/3を占め変異が著しいが、一般的には半分よりやや短い程度。葉鞘の先は斜めの切形、普通、広がらない。花序柄は長く、葉鞘内の部分を除いて5~20㎝、概して葉鞘部の短いものは長く、長いものは短い。花序は葉面より低い位置につく。仏炎苞は普通、短く、普通、緑色、筒部は長さ2~4(4.5)㎝、隆起条はない。筒の口辺部は普通ごく狭く開出する。舷部は三角形~三角状長卵形、長さ3.5~5.5(7.5)㎝、先は鋭形又は尖鋭形。雄花の葯は融合し、普通、黄白色。花序付属体は円柱状、先端は直径1.5~4(~6)mm。2n=28 , 56。花期は6月上旬~7月上旬。果期は9月中旬~10月。
34-1 Arisaema longipedunculatum M.Hotta var. yakumontanum Seriz. ヤクシマヒロハテンナンショウ 屋久島広葉天南星
高さ20~40㎝。葉は1枚。小葉は同大、5(~7)枚、狭卵形~長楕円形、中央小葉は小さい株を除き、小葉柄がある。花序柄は長く、偽茎内の部分を除いて5~32㎝、花序は葉面より高い位置につく。仏炎苞はやや大きく、淡緑色、紫色の斑点がある。筒部は長さ3~3.5㎝。舷部は卵形~三角状卵形、長さ4~7.5㎝×幅2.5~3.8㎝。雄花の葯は融合する。花序付属体は太く、直径3~7mm。花期は5月下旬~6月上旬。
35 Arisaema maekawae J.Murata et S.Kakishima ウメガシマテンナンショウ 梅ヶ島天南星
日本固有種(本州の山梨県・静岡県・長野県)。太平洋側の山地の林下、林縁に生える。最近では中国地方に分布する中国型ホソバテンナンショウ(兵庫県・岡山県・島根県・鳥取県・広島県・山口県)と呼ばれてきたものも含めている。 ホソバテンナンショウに近縁。コウライテンナンショウに似るが、仏炎苞の開口部が広く、偽茎が赤色を帯びる点で異なる。 高さ30~80cm。低出葉や偽茎は淡褐色、帯赤色の班が強く、偽茎は長い。葉は2枚、中国地方では1枚のこともある。小葉は7~15枚。仏炎苞は葉よりもやや早く展開し、明るい緑色、白色の条線が目立たない。筒口辺部は耳状に広がらない。舷部は短く、垂れ下がらない。内面は粉白色でしばしばパピラ状の細突起がある。花序付属体は太い棒状、先端がやや膨れるものが多い。花期は4~5月。
36 Arisaema maximowiczii (Engl.) Nakai ツクシマムシグサ 筑紫蝮草
マムシグサ亜節 ヒトツバテンナンショウ群(旧ツクシマムシグサ群)
日本固有種(本州の三重県、九州)。
葉は通常1枚であるが、大形の株ではしばしば2枚になる。小葉は7~19枚。葉軸は比較的よく発達し、長いものではllcmに達する。葉縁は全縁または細鋸歯‘がある。葉鞘部は長さ15~60㎝、葉柄全長の3/5~9/10を占める。花序柄は葉鞘内の部分を除くと短く、普通、1~5cm、まれに15㎝以上。仏炎苞は葉の展開とほぼ同時に開き、緑色又は紫色。筒部は長さ3.5~7cm、口辺部の開出の程度にはかなり変異があり、わずかに開出するだけのものからやや耳垂状になるものまである。舷部は長さ5.5~1.5㎝(先端の尾を含めて)、卵形、前側に曲がり、やや椀状に膨らみ、先端は尾状に長く伸びる。舷部は普通、中央部の基部全体が白色半透明になる(ただし,この白色部が白色の縦条線のものやよく発達して周囲にわずかに緑色又は紫色が残るだけのものもある)。花序附属体は棒状、上半部はときに前側に傾き、先端は直径1~2.5mm。花期は(4)5月中旬~6月上旬。
37 Arisaema mayebarae Nakai ヒトヨシテンナンショウ 人吉天南星
synonym Arisaema serratum (Thunb.) Schott var. mayebarae (Nakai) H.Ohashi et J.Murata
マムシグサ群。仏炎苞が黒紫色で、舷部が盛り上がることが特徴。
日本固有種(九州の熊本県、宮崎県、鹿児島県)。 山地の林下に生える。
高さ50~100㎝。葉は鳥足状複葉、2個、まれに1個。小葉は7~13個つき、狭長楕円形~楕円形、縁は全縁又は鋸歯縁、表面に光沢がある。花序は葉よりも高くなる。仏炎苞は黒色に近い濃紫色でやや光沢があり、白色の細い縦条線がほとんど無い。口辺部は開出し舷部は広卵形。花序付属体は太い棒状で、先端は直径5~15mm、黄白色、下半部が濃紫色。花期は4~5月。
38 Arisaema minamitanii Seriz. ヒュウガヒロハテンナンショウ 日向広葉天南星
マムシグサ亜節 群未定 2n=28
九州に分布する。主として沢沿いの林内に生える。
塊茎は子球をつけない。葉は1枚、小葉は5~7枚、中央の小葉が最も大きい。小葉は白斑がなく、縁は鋸歯縁、又は全縁。葉軸は短く普通1.5cm以下、ときに約4cmになる。偽茎(葉鞘)は斜上し、長さ12~30cm、葉柄全長の2/3~3/4を占める。葉鞘の口辺部は開出し、波状になる。花序柄は短く、葉鞘内の部分を除いて長さ1~4cm。仏炎苞は緑色、筒部は長さ4~6cm、隆起条はなく、口辺部は明瞭に開出するが耳垂状にはならない。舷部は卵形~長卵形、長さ6.5~10.5cm、先端は鋭尖頭、下半部は脈に沿って半透明の白色の条線が目立つ。雄花の葯は紫色、融合しない。花序附属体は円柱状、先端で直径2~7mm。花期は5月旬~下旬。
39 Arisaema minus (Seriz.) J.Murata ハリママムシグサ 播磨蝮草
synonym Arisaema kishidae Makino ex Nakai var. minus Seriz.
日本固有種(兵庫県)。丘陵地~山地の林縁、やや明るい林下に生える。
ヒガンマムシグサ群 2n=26
初めはムロウマムシグサに似ているが、仏炎苞が小さく、紫色味が少なく、舷部先端はほとんど尾状に伸びないことで変種とされた。その後の研究で偽茎が短く、小葉の数が少なく、側小葉が発達せず、胚珠が多いことでヒガンマムシグサ群とされた。
葉は2枚、普通、2枚の葉はほぼ同じ大きさ。偽茎が普通、全高の約1/2と短い。低出葉や葉鞘は淡茶褐色、多少透明感があり、紫褐色の短い条線がまばらにあるものが多い。小葉は5~9枚、側小葉があまり発達せず、葉軸もあまり発達しない。仏炎苞は葉の展開より前に展開する。仏炎苞は緑がかった紫褐色であるが、舷部は半透明で指が透けて見え、短く、内側は平滑。花序付属体は長さ2.7~4.5cm、細い棒状、淡緑色、紫色を帯びることがあっても班はなく、先は少し太く、筒部から突き出る。胚珠数は11個程度とムロウマムシグサより多い。花期は3月下旬~4月。2n=26
40 Arisaema monophyllum Nakai ヒトツバテンナンショウ 一つ葉天南星
マムシグサ亜節 ヒトツバテンナンショウ群
日本固有種(本州の中北部)。愛知県の絶滅危惧ⅠA類。山地の林内に生える。
高さ20~60㎝。塊茎はは扁球形。葉鞘は長さ15~60㎝。葉は鳥足状複葉、普通1枚(まれに2枚)。小葉は 5~9枚、葉軸はときに直角について発達するため互いに離れてつき、楕円形~長楕円形、縁は全縁または細歯状、先は尖鋭形。、仏炎苞は葉の展開と同時に開き、葉とほぼ同じ高さにつき、緑色~白緑色。筒部は長さ 3~5cm、口辺部は狭く開出する。舷部は長三角形、前屈してまっすぐ伸び、長さ 4~8cm 、黄緑色で光沢があり、普通、内面の中央近くに八の字形の濃紫色の斑紋がある。偽雌雄異株。小型の株は花序に雄花だけがつき、大型の株は雌花をつける。花序付属体は棒状、上部は前方に曲がり、先端はやや扁平で幅1.5~3mm。花期は4~6月。2n=26。
40-1 Arisaema monophyllum Nakai f. akitense (Nakai) H.Ohashi アキタテンナンショウ 秋田天南星
synonym Arisaema monophyllum Nakai var. akitense (Nakai) H.Ohashi
synonym Arisaema monophyllum Nakai f. variegatum (Honda) H.Ohashi et J.Murata
ヒトツバテンナンショウの特徴の舷部の内側にある濃紫色の斑紋がないもの。
40-2 Arisaema monophyllum Nakai f. atrolinguum (F.Maek.) Kitam. ex H.Ohashi et J.Murata クロハシテンナンショウ
synonym Arisaema monophyllum Nakai var. atrolinguum (F.Maek.) Sa.Kurata
舷部の内側全体が暗紫色のもの。
41 Arisaema nagiense T.Kobay., K.Sasamura et J.Murata ナギヒロハテンナンショウ 那岐広葉天南星
ヒロハテンナンショウ群
日本固有種(本州の兵庫県、岡山県、鳥取県)。主にネマガリダケが生える温帯林の林縁に生える。 高さ10~40㎝。地下茎に副芽をつけない。葉は鳥足状複葉、普通1枚。小葉は5~7枚、線形~狭披針形、全縁、先は鋭形。偽茎部分を除く葉柄は偽茎部分よりやや長い。花序は葉の展開より早く展開し、花序柄は葉柄より長い。仏炎苞は外側が緑色を帯びた紫褐色。内側は濃紫褐色で光沢がある。筒部は外面に明瞭に隆起する白色の条線があり、口辺部は狭く開出する。舷部は長く、狭三角状卵形、筒部より長い。花序付属体は棒状、仏炎苞筒部からほとんど出ず、紫褐色で先は色が薄く黄色を帯びる。花期は5~6月。果期は10月。2n=26。
42 Arisaema nambae Kitam. タカハシテンナンショウ 高梁天南星
synonym Arisaema undulatifolium Nakai subsp. nambae (Kitam.) H.Ohashi et J.Murata
ヒガンマムシグサ群(ナガバマムシグサ群)
日本(本州の岡山県、広島県)に分布する。山地の林下、林縁に生える。和名は岡山県高梁市に因む。
高さ15〜50cm。花は葉より先に開く。葉は1〜2個、小葉は5〜7枚で葉軸がやや発達する。偽茎と葉柄はほぼ同長。仏炎苞はふつう淡紫色〜紫色で白条は目立たない。稀に淡緑色のものがあり、モエギタカハシテンナンショウ f. viride H.Ikeda, T.Kobay. & J.Murata と呼ばれる。稀と言われるが広島県で観察した個体群は15株中、3株が淡緑色であった。仏炎苞口辺は狭く開出し、反曲する。舷部は先端がしばしば反り返る。花序付属体は棒状。花期は3月中旬~4月。果期は6月中旬~8月。ヒガンマムシグサ群であるが2n=28。ナガバマムシグサ群とする見解もある。
42-1 Arisaema nambae Kitam. f. viride H.Ikeda, T.Kobay. et J.Murata モエギタカハシテンナンショウ
仏炎苞と付属体帯が淡緑色。
43 Arisaema negishii Makino シマテンナンショウ 島天南星
アマミテンナンショウ節
伊豆諸島固有種。
多年草。葉がウラシマソウとは異なり、偽茎があり、偽茎に2枚の葉が対生に近くつき、長い葉柄のある鳥足状複葉。小葉はほぼ円形になるよう7~15個つき、縁に鋸歯があり、先はやや尾状に長く尖る。雌雄偽異株。花序は葉とほぼ同じ高さ~やや高くなる。仏炎苞は緑色、白色の縦筋がある。ウラシマソウによく似ていて、花序付属体2枚つき、の先が釣り糸を垂らしたように長くなる。花期は1~3月。果期は7~8月。
44 Arisaema nikoense Nakai ユモトマムシグサ 湯元蝮草 広義
ユモトマムシグサ群
日本固有種(本州の中部地方以北)。山地~亜高山帯の林内に生える。愛知県の絶滅危惧ⅠB類。
高さ50cmになる多年草。葉は鳥足状複葉、2個又は1個。葉軸は発達しない。小葉は普通5枚、まれに7枚、倒卵形~楕円形、先は尖鋭形、全縁~細鋸歯縁~不揃いのあらい歯がある。花序は葉より先に展開する。仏炎苞は緑色、帯紫色、黒紫色、筒の口辺部はほとんど開出しないか、又は狭く明瞭に開出する。舷部は卵形、付属帯は細い円柱状又棍棒状。花期は5~6月。果期は9月中旬~10月。2n=28。
44-1 Arisaema nikoense Nakai subsp. nikoense ユモトマムシグサ 湯本蝮草
synonym Arisaema nikoense Nakai var. kaimontanum Seriz.
本州(東北地方の北上・阿武隈両山地、北関東から中部山岳地帯)に分布。ユモトマムシグサ群中では最も北東に産し、分布域も広い。 塊茎はよく子球をつける。葉は普通2枚、まれに1枚、第一葉の葉鞘は短く、全高の半分程度である。小葉は普通、5枚,まれに7枚、小葉の間隔は狭く、葉軸は多くの場合2(3)cm以下。中央の小葉は有柄または無柄、内側の側小葉とほぼ同大、まれに、外側の側小葉は内側のものより小さくなる。小葉は縁は全縁又は細鋸歯縁又は粗大な欠刻状の歯がある。花序は葉より先に展開し、花序柄は長く、少くとも花時には葉柄より長い。仏炎苞は普通、緑色、ときに帯紫色(f. kubotae)、筒部は長さ3.5~8cm、口辺部はほとんど開出しないか、又はごく狭く開出する。舷部は卵形、長さ4.5~13cm×幅2.7~6.5cm、基部はあまり狭くならず、先端は鋭形でほとんど尾状にならない。花序付属体は棍棒状、先端は先太になり、直径4~12mm。花期は5月中旬~6月下旬。2n=28
44-1-1 Arisaema nikoense Nakai subsp. nikoense f. kubotae H.Ohashi et J.Murata クボタテンナンショウ
仏炎苞が黒紫色で白条もほとんど入らないもの。
44-2 Arisaema nikoense Nakai subsp. alpicola (Seriz.) J.Murata ハリノキテンナンショウ 針ノ木天南星
synonym Arisaema ishizuchiense Murata subsp. brevicollum (H.Ohashi et J.Murata) Seriz. var. alpicola Seriz.
カミコウチテンナンショウの高山型。
カミコウチテンナンショウより仏炎苞が小さく、花序付属体もより細い。2n=28。
44-3 Arisaema nikoense Nakai subsp. australe (M.Hotta) Seriz. オオミネテンナンショウ 大峯天南星
synonym Arisaema nikoense Nakai f. purpureum Sugim.
synonym Arisaema nikoense Nakai var. australe M.Hotta
伊豆半島(天城山)、紀伊半島(大峯天、大台ケ原)に分布。
全体に小形。葉は普通、1又は2枚。仏炎苞は小さく、筒部の長さ4~5.5cm、舷部は長さ4.5~6.5cm、紫色で白条があり、筒の口辺部は狭く明瞭に開出する。花序付属体は細い円柱状、先端は直径2~4mm。花期は5月中旬~6月中旬。静岡・山梨県境の安倍峠にはユモトマムシグサとの中間型もみられる。2n=28。
44-4 Arisaema nikoense Nakai subsp. brevicollum (H.Ohashi et J.Murata) J.Murata カミコウチテンナンショウ
synonym Arisaema nikoense Nakai var. brevicollum (H.Ohashi et J.Murata) Seriz.
synonym Arisaema ishizuchiense Murata subsp. brevicollum (H.Ohashi et J.Murata) Seriz.
synonym Arisaema ishizuchiense Murata var. brevicollum H.Ohashi et J.Murata
上高地周辺、飛騨山脈南部に点在して分布。
葉が普通、l枚。花序柄が短い。仏炎苞は紫色、筒部は長さ4~6cm、舷部は長さ6~10cm。花序付属体は根棒状、先端は直径5~10mm。花期は5月下旬~6月中旬。2n=28
44-5 Arisaema nikoense var. kainumtanum Seriz.、ヤマナシテンナンショウ
2n=28。
45 Arisaema ogatae Koidz. オガタテンナンショウ 緒方天南星
マムシグサ亜属 群未分類。2n=28。ミクニテンナンショウA. planilaminumの類似種。
日本固有種(九州の宮崎県、熊本県、大分県)。別名はツクシテンナンショウ。山地の林下、谷筋の斜面に生える。 高さ15~30cm。葉は2枚つき、小葉は5~7個と少なく、狭倒卵形、先は尾状に尖り、頂小葉はやや小型。葉軸が発達せず、葉鞘(偽茎)が全高の半分程度である。開花は葉の展開と同時。花序柄が葉柄の半分ほどであるため、仏炎苞が葉の高さとほぼ同じ高さ見える。仏炎苞は緑色、白色の条線は目たたない。花序附属体は太い円柱状、長さは仏炎苞の筒部上端程度か又は短い。花期は4~6月。
46 Arisaema ovale Nakai ヒロハテンナンショウ 広義
ヒロハテンナンショウ群:仏炎苞の苞筒部には明瞭な縦の隆起条がある。染色体の基本数は13。2n=26, 39, 52, 65 , 78。
花序は葉より低い位置につく。
46-1 Arisaema ovale Nakai var. ovale アシウテンナンショウ 芦生天南星
synonym Arisaema amurense Maxim. subsp. robustum (Engl.) H.Ohashi et J.Murata var. ovale (Nakai) H.Ohashi et J.Murata
synonym Arisaema robustum (Engl.) Nakai var. ovale (Nakai) Kitam.
本州の北陸地方西部~近畿地方北部にかけて分布する。標高が比較的低い場所でもみられる。
仏炎苞は大形、黒紫色。花序付属体は棍棒状で太い。花期は4月下旬~6月上旬。
46-2 Arisaema ovale Nakai var. sadoense (Nakai) J.Murata ヒロハテンナンショウ 広葉天南星
synonym Arisaema amurense Maxim. subsp. robustum (Engl.) H.Ohashi et J.Murata, excl. typo et pl. ex Korea
synonym Arisaema robustum Nakai var. abense Sugim.
synonym Arisaema robustum Nakai, excl. basion.
synonym Arisaema amurense Maxim. var. robustum auct. non Engl.
北海道、本州(南関東と近畿地方の大部分を除く)、九州北部に分布。
塊茎はよく子球をつける。葉は普通1枚、鳥足状複葉、ほとんど放射状になることもある。小葉は5~7個。葉縁は金縁、白斑はない。葉軸は短く、長さ2cm以下、ごく短いものもある。中央の小葉は有柄又は無柄、普通内側の側小葉より小さい。外側の側小葉は比較的大きく、しばしば内側のものと同長。偽茎は葉柄全体の長さの1/2~3/4、口辺部は狭く開出し、波状になることが多い。花序柄は葉鞘の中にある部分を除くと短く、普通、1~7㎝。仏炎苞は緑色、ときに淡紫色~紫色、筒部は長さ3.5~6cm、脈の部分が顕著に隆起する(ヒロハテンナンショウ群)。舷部は卵形、光沢があり、長さ4~9cm、先端は鋭頭又はやや鋭尖頭。雄花の葯は通常紫色で融合しない。花序附属体は円柱形、先端で直径2~7mm。2n=26(静岡県、福島県、岩手県), 39, 52, 65 , 78(青森県、北海道)。花期は5月中旬~7月上旬。
47 Arisaema penicillatum N.E.Br. マツダテンナンショウ
synonym Arisaema matsudae Hayata
synonym Arisaema serratum var. serratum [Kewscience]
中国、台湾原産。中国名は画笔南星 hua bi nan xing。
48 Arisaema peninsulae Nakai コウライテンナンショウ 高麗天南星
synonym Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott
synonym Arisaema angustatum Franch. et Sav. var. peninsulae (Nakai) Nakai ex Miyabe et Kudô
synonym Arisaema japonicum Blume var. atropurpureum sensu Kitam, excl. basion.
synonym Arisaema peninsulae Nakai f. convolutum (Nakai) Y.Kim et S.C.Ko
synonym Arisaema serratum var. serratum=Arisaema koidzumianum Kitam. [Kewscience]
マムシグサ群 日本産のコウライテンナンショウが多型でコウライテンナンショウを形態的に規定するのは困難といわれている。Kewscience, GBIFやThe Plant ListではカントウマムシグサArisaema serratum var. serratumのsynonymとしている。
日本、朝鮮、中国原産。中国名は细齿南星 xi chi nan xing。
塊茎は扁球形、直径1.5~5.5㎝。低出葉は3個、帯褐色、紫色の斑点があり、長さ3~10㎝。[日本産は低出葉と偽茎の紫色の斑はあまり目立たない。]葉は2枚。葉柄は長さ35~93㎝。偽茎(鞘部分)は長さ29~77㎝。葉身は鳥足状複葉。小葉は7~17(~23)個。葉軸は頂小葉と側小葉の間や側小葉の間ででよく発達する。小葉は狭楕円形、倒卵状披針形、又は卵状長円形、基部はくさび形、縁は全縁又は鋸歯縁、先は尖鋭形。中央の小葉は小葉柄が長さ1~4㎝、葉身は長さ9~18㎝×幅3.5~9cm、外側は次第に小さくなる。側小葉は中央の小葉から1~4㎝離れ、小葉柄は短いか又は無く、大きさは中央とほぼ同じ。外側の側小葉は無柄で中央の小葉よりかなり小さい。花序柄は直立、長さ30~80㎝。仏炎苞は普通、緑色で白色の縞があるか、又は紫色~暗紫色で帯白色の縞がある。筒部は長さ5~8㎝×幅約1.5㎝、のど部は斜めの切形、ほとんど反曲しない。舷部は内側に曲がり、普通緑色、又は暗紫色、長円形、長さ5~6㎝×幅4~5㎝、先は尖鋭形。肉穂花序は単性。雌ゾーンは長さ1.5~3㎝×幅5~7mm。子房は密、狭卵形。花柱は短い。柱頭は円盤状。雄ゾーンは長さ1~1.5㎝。融合雄しべ群(synandria)は密、無柄。葯は2又は3個。半葯は球形、先端の孔から裂開する。花序付属体は直立、円筒形、長さ3.5~4㎝×幅3~6mm、基部は切形、柄があり、先は鈍形。柄は長さ4~5mm。液果は赤黄色、卵状球形、約・長さ8mm×7mm。種子は2又は3個、黄褐色、直径約4㎜、しわがある。花期は5~6月。熟す果期は9月。2n=28。(Flora of China)
48-1 Arisaema peninsulae Nakai subsp. boreale (Nakai) Seriz. キタマムシグサ
北海道、本州中部山岳地帯、北陸、東北に分布。
仏炎苞が緑色、舷部が盛り上がり、それにともなって半透明の白条が舷部中央で膨らむ。
48-2 Arisaema peninsulae Nakai var. masadanum Seriz アオオニテンナンショウ
大阪府金剛山(葛城山)採取の標本に基づいている。兵庫県にも採取記録がある。
特徴は小型の個体ではしばしば葉が1枚であること、小葉が幅広いこと、仏炎苞の舷部の先が尾状に細まる傾向をもつ。これに似た植物は兵庫県にも広く分布している(三田市の例)が、小葉が特に幅広いということはない。しかし一方では仏炎苞の舷部の先が尾状に細まる傾向はより強くなり、しばしば内巻きする(このため乾燥標本ではアオテンナンショウの小型のものに似てくる)。アオオニテンナンショウは独立の形態群として認められると思われるが、コウライテンナンショウとの区別などについてさらに検討が必要である(参考4 p202)。
49 Arisaema planilaminum J.Murata ミクニテンナンショウ 三国天南星
synonym Arisaema serratum var. serratum
マムシグサ群。 KewsciemceではArisaema serratum var. serratumのsynonym。
日本固有種(本州の関東地方~愛知県)愛知県の絶滅危惧IB類。
カントウマムシグサに似るが仏炎苞の舷部が横に広く、広卵形で平坦であり、ほぼ水平に前に曲がることが特徴である。また、仏炎苞は緑色で中央の白条1本だけが目立つ。
高さ50~70㎝。塊茎は扁球形、上部から多くの根を出す。葉は鳥足状複葉、2個つき、第1葉の葉鞘は長さ25~40cm。葉軸は発達する。小葉は7~13個、狭長楕円形~披針形、縁は全縁または細歯状、先は尖鋭形。花序は葉とほぼ同じ高さにつき、葉の展開よりりやや遅れて開く。仏炎苞は緑色、筒部は長さ5~7cm、口辺部はやや広く開出し、舷部は横に広く広卵形、長さ6~9cm、平坦(平面的でほとんどふくらまず)、ほぼ水平に前に曲がり、白条は中央の1本だけが目立つ。偽雌雄異株で、肉穂花序に、小型の個体は雄花、大型の個体は雌花をつける。花序付属体は円柱状、先端は直径3~6mmである。花期は5~6月。
50 Arisaema pseudoangustatum Seriz. ミヤママムシグサ 深山蝮草 (広義)
マムシグサ群
日本固有種(本州)。標高800m以上の深山の林下に生える。
栄養器官はホソバ系の各種に酷似し、花序なしに識別するのはかなり困難。
50-1 Arisaema pseudoangustatum Seriz. var. pseudoangustatum ミヤママムシグサ 深山蝮草
本州(山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県県、および兵庫県、岡山県、鳥取県)。愛知県の絶滅危惧ⅠB類
高さ35~80cm。塊茎は扁球形。葉は2枚。花は葉より遅れて開く。葉は鳥足状複葉、2枚つく。第1葉の葉鞘は長さ35~80c㎝。小葉は9~15枚、狭長楕円形~披針形、幅が細く、短く、縁は全縁~細歯状、先は尖鋭形。葉軸が発達するが、マムシグサ群としては短い。仏炎苞は葉の展開後に開き、緑色、筒部は長さ5.5~7.5㎝、口辺部はやや広く開出する。舷部は卵形、長さ7~10㎝、基部は幅が広く、しばしば褐色~赤褐色を帯び、半透明または透明感があり、細い白条があり、内面はときに粉白になり、先は尖鋭形。花序付属体は淡緑色、細い棒状、先端は直径1.5~5mm。花期は5~6月。
50-2 Arisaema pseudoangustatum Setiz. var. amagiense Seriz. アマギミヤママムシグサ
伊豆半島に分布する。山地の林下に生える。
高さ20~80cm。花は葉の展開後に展開する。葉は2枚つく。小葉は9~15枚、短いが葉軸がある。仏炎苞の舷部はホソバテンナンショウより長く、内側には顆粒状突起が密生する。付属体は細い円柱状。花期は5月。
50-3 Arisaema pseudoangustatum Setiz. var. suzukaense Seriz. スズカマムシグサ
岐阜県美濃地方北西部~石川県、鳥取県と広範囲に分布する。
葉は2枚つく。葉軸はミヤママムシグサよりよく発達する。小葉は狭楕円形~楕円形、大きい。仏炎苞は葉の展開後に展開する。仏炎苞の筒部は舷部より長く、舷部内面は乳状突起ががあり、白くなる。口辺部は狭く開出する。
51 Arisaema ringens (Thunb.) Schott ムサシアブミ 武蔵鐙
マムシグサ節
日本、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は普陀南星 pu tuo nan xing。英名はCobra Lily。
特徴は次の通り。
1. 小葉は円味を帯びた楕円形又は菱形性楕円形、長さ約15cm×幅約10㎝。
2. 子房は先端が鋭形に尖る。
3. 胚珠は子房内に2個、まれに3個又は1個。
雌雄異株、塊茎は扁球形、直径2~5㎝、低出葉は帯緑色又は帯紫色。葉は2枚つく。葉柄は帯緑色、斑紋は無く、長さ15~35㎝、下部の1/3は鞘で、偽茎になる。葉身は3小葉複葉。小葉は無柄、下面は粉白色、上面は緑色、縁は全縁、先は長い尖鋭形で尾は長さ約2㎝。中央の小葉は卵状披針形~菱状楕円形、長さ16~22㎝×幅10㎝以上、基部はくさび形。側小葉は斜めの卵形、長さ15~18㎝×幅10~13㎝、先は糸状尾形。花序柄は帯緑色、斑紋はなく、葉柄より短く、長さ25㎝以下。仏炎苞は黄緑色~緑色、筒部は外側が黄緑色~緑色、内側は紫赤色で白色又は淡黄緑の条線をもち、円筒形、耳のあるのど部まで次第に開き、長さ3~3.5㎝×幅1~2㎝。舷部は凹面で内側に曲がり、袋状、先は尾状。肉穂花序は単性。雌花ゾーンは円錐形、約・長さ1.8㎝×幅1.2㎝。子房は帯緑色、倒卵形。柱頭はほぼ無柄、直軟毛がある。雄花ゾーンは無柄、円筒形、約・長さ1.5㎝×幅8mm。融合雄しべ群(synandria)はほぼ無柄、葯は2~3個、半葯は球形、先端の孔から裂開する。花序付属体は直立、白色、狭円錐形、長さ2~6㎝×幅5~10mm、基部は切形で柄があり、先は鈍形。柄は長さ3~10mm。果序は直立する。花期は4月。2n=28。
52 Arisaema sachalinense (Miyabe et Kudô) J.Murata カラフトヒロハテンナンショウ 樺太広葉天南星
synonym Arisaema sadoense auct. non Nakai
北海道北部~カラフトに分布する。
ヒロハテンナンショウに似るが、仏炎苞に隆起する縦条がなく、塊茎の腋芽は1節に1個ずつつく。2n=56(4倍体)
53 Arisaema sazensoo (Blume) Makino キリシマテンナンショウ 霧島天南星
マムシグサ亜節 群未定
synonym Arisaema nanum Nakai
日本固有種(九州)。別名はヒメテンナンショウ。山地の林下に生える。
高さ15~40㎝。葉は鳥足状複葉、1枚つく。小葉は5~7(~9)枚つき、卵形~楕円形、先は鋭形~尖鋭形、しばしば中脈に沿いに白斑を生じ、縁は全縁又は粗い鋸歯縁。葉柄は長さ10~25㎝。花序柄は長さ2~6㎝、花序は葉よりも低い。仏炎苞は濃紫色~暗紫色、まれに黄緑色、白い縦条があり、しなやかな革質で厚く大きい。筒部は上側が次第に広くなった円筒形、口辺部の縁は反曲しない。舷部は三角状長卵形、初め斜上し、後に前に丸く曲がり、先は長い尖鋭形~尾状、垂れ下がる。花序付属体はやや太い棒状で、先はしばしば黄白色になる。花期は4~5月。2n=28。
53-1 Arisaema sazensoo (Buerger ex Blume) Makino f. viride Sugim. ミドリテンナンショウ
54 Arisaema seppikoense Kitam. セッピコテンナンショウ 雪彦天南星
セッピコテンナンショウ群 2n=26
日本固有種(本州の兵庫県)。山地の林内や湿った岩場に生える。
雌雄異株。高さ20~50㎝。葉は鳥足状複葉、1(まれに2)枚つく。小葉は5~9枚つき、披針形~狭長卵形、全縁、先はやや長い尖鋭形、外側の小葉は小さくなる。葉軸はあまり発達しない。花序柄は雄株が長さ1~2(5)cm、雌株は長さ7~11(15)㎝になる。仏炎苞は紫褐色、まれに黄緑色、白条が目立ち、筒部は上部が次第に幅広になり、口辺部は開出しない。舷部は筒部より普通は長く、狭卵形~三角状卵形、先は長い尖鋭形、ときに尾状に長く伸びる。花序付属体は棒状~細い棒状、長さ2~3.5cm、直径1~2mm、円頭又はやや膨れる。花期は5~6月。
55 Arisaema serratum (Thunb.) Schott カントウマムシグサ 関東蝮草
synonym Arisaema koidzumianum Kitam. トウゴクマムシグサ
synonym Arisaema serratum f. viridescens (Nakai) T. Koyama 緑色のカントウマムシグサ
synonym Arisaema serratum var. ionochlamys Nakaj ムラサキマムシグサ synonym Arisaema hakonecola Nakai[カミヤマテンナンショウ=ムラサキマムシグサ]
マムシグサ節 マムシグサ群(遅咲きカントウマムシグサ亜群)
日本(本州、四国、九州[南九州を除く)、千島列島、朝鮮、ロシア原産。普通に見られ、極めて変異に富む。
高さ30~120㎝。雌雄偽異株で、雄株から雌株に転換する。偽茎部は長く、葉柄部はかなり短い。葉は鳥足状複葉、2(又は1)個つく。葉軸は発達する。小葉は7~17個、長楕円形、先は鋭形、縁は全縁、ときに鋸歯がある。花序柄は葉柄とほぼ同長か又は長い。仏炎苞は葉と同時または遅れて展開する。仏炎苞は普通、葉の上に位置する。仏炎苞は紫褐色~緑色で白色の縦縞(白筋)がある。仏炎苞の筒口辺部はやや開出(~広く外曲)する。舷部は卵形、先は次第に細くなり、長く尖り、内面に隆起する細脈が著しい。花序付属体は有柄、棒状、時に太い棍棒状~頭状。花期は4~6月。(日本産テンナンショウ属図鑑:邑田仁等著、北隆館、2018年)
カントウマムシグサの基準標本産地は箱根とされている。基準標本(狭義)の特徴は、小葉の縁に細鋸歯があること、花序付属体の先がこん棒状(頭状)に肥大することである。このような特黴を含め、基準標本によく一致するような個体は関東平野の山林を中心に埼玉県、東京都、群馬県、茨城県、千葉県、神奈川県で採集されているが、細鋸歯の有無、花序付属体の肥大の程度には変異がある。関東地域のこのような特徴を持つものは花序が葉よりも明らかに遅く展開する。葉は普通、2枚、葉軸は発達する。
現在ではカントウマムシグサを広義にとらえ、ムラサキマムシグサ(仏炎苞が紫色のカントウマムシグサ)、アオマムシグサ(仏炎苞が緑色のカントウマムシグサ)、トウゴクマムシグサなどを含めて変異の多いものとし、分布域も広いものとされている。カントウマムシグサはマムシグサ節に属し、子葉が3小葉で、胚珠数が少ない(4.1~7.9)ペダティセクタ亜節(subsect. Pedatisecta)の中のマムシグサ群に分類されている。マムシグサ群には早咲きのものと遅咲きのものがあり、マムシグサ(Arisaema japonicum)は早咲きであり、カントウマムシグサは遅咲きである。マムシグサ群に属す他種もいくつかあるが、コウライテンナンショウやヤマトテンナンショウなどはKwscienceやThe Plant Listではカントウマムシグサのsynonymとされている。
以下はKewscienceが変種としているもの。
55-1 Arisaema serratum var. atropurpureum Engl. オオマムシグサ
synonym Arisaema peninsulae f. atropurpureum (Engl.) Y.C.Chu & D.C.Wu
synonym Arisaema takedae Makino オオマムシグサ
北海道南部、本州に分布。
仏炎苞は幾分か黒紫色または全体に黒紫色を帯び、小葉は全縁であるもの。
var. atropurpureumは正式に発表されているが、相当する標本がどれか明確には指示されてなく、新たにタイプを選定する必要がある。
55-2 Arisaema serratum var. izuense (Nakai) Gusman & L.Gusman イズテンナンショウ 伊豆天南星
synonym Arisaema izuense Nakai イズテンナンショウ 伊豆天南星
55-3 Arisaema serratum var. suwoense (Nakai) H.Ohashi & J.Murata ヤマグチテンナンショウ 山口天南星
synonym Arisaema suwoense Nakai
山口県に分布する。Kewscienceではvar. suwoense を認めている。
イズテンナンショウに似ているが、仏炎苞筒部や花序附属体が白色を帯びる。仏炎苞が葉よりも著しく遅れて開く遅咲き系統。
基準標本では偽茎と葉柄がほぼ等長、花茎ははるかに短く、普通、葉は7裂するし、仏炎苞の舷部は筒部よりも長い。
55-4 Arisaema serratum var. serratum カントウマムシグサ
synonym Arisaema serratum (Thunb.) Schott
日本、千島列島、朝鮮、ロシアに分布。
synonym Arisaema amplissimum Blume (Blume 1835 )詳細不明種.
synonym Arisaema boreale Nakai [キタマムシグサ]
synonym Arisaema capitellatum Nakai(1918) [コウライテンナンショウ異名]
synonym Arisaema convolutum Nakai[異名]
synonym Arisaema hakonecola Nakai [カミヤマテンナンショウ=ムラサキマムシグサ]
synonym Arisaema hatizyoense Nakai[ハチジョウテンナンショウ]
synonym Arisaema koidzumianum Kitam. [オオミミテンナンショウ=トウゴクマムシグサ]
synonym Arisaema latisectum Blume (Blume 1835 )小葉は6枚[異名]
synonym Arisaema longilaminum Nakai [ヤマトテンナンショウ]
synonym Arisaema niveum Nakai(1934)[異名]
synonym Arisaema peninsulae Nakai [コウライテンナンショウ]
synonym Arisaema peninsulae f. alba Vasak & E.M.Egorova
synonym Arisaema peninsulae f. convolutum (Nakai) Y.S.Kim & S.C.Ko
synonym Arisaema planilaminum J.Murata [ミクニテンナンショウ]
synonym Arisaema proliferum Nakai [異名]
synonym Arisaema sinanoense Nakai [カルイザワテンナンショウ]
synonym Arisaema solenochlamys Nakai ex F.Maek. [ヤマジノテンナンショウ]
synonym Arisaema speirophyllum Nakai [異名]
synonym Arisaema speirophyllum subsp. boreale (Nakai) Govaerts [キタマムシグサ異名]
synonym Arisaema amplissimum Blume [オオマムシグサ]
synonym Arisaema angustatum Franch. & Sav. [ホソバテンナンショウ]
synonym Arisaema angustatum f. integrum Nakai
synonym Arisaema angustatum var. peninsulae (Nakai) Nakai ex Miyabe & Kudô
synonym Arisaema angustifoliatum (Miq.) Nakai [ナガハシマムシソウ]
synonym Arisaema angustifoliatum var. holophyllum Nakai
synonym Arisaema angustifoliatum var. integrifolium Nakai
synonym Arisaema angustifoliatum var. serratifolium Nakai
synonym Arisaema boreale Nakai[キタマムシグサ]
synonym Arisaema capitellatum Nakai[コウライテンナンショウ異名]
synonym Arisaema hakonecola Nakai[カミヤマテンナンショウ=ムラサキマムシグサ]
synonym Arisaema hatizyoense Nakai[ハチジョウテンナンショウ]
synonym Arisaema japonicum Blume[マムシグサ]
synonym Arisaema japonicum var. angustifoliatum Miq.
synonym Arisaema japonicum var. latisectum (Blume) Miq.
synonym Arisaema japonicum var. yasuii Sugim.
synonym Arisaema koidzumianum Kitam.[オオミミテンナンショウ=トウゴクマムシグサ]
synonym Arisaema koshikiense Nakai[コシキジマテンナンショウ]
synonym Arisaema longilaminum Nakai[ヤマトテンナンショウ ]
synonym Arisaema niveum Nakai (1934)
synonym Arisaema niveum var. viridescens Nakai(1934)
synonym Arisaema peninsulae Nakai[コウライマムシグサ]
synonym Arisaema peninsulae f. alba Vasak & E.M.Egorova
synonym Arisaema peninsulae f. atropurpureum (Nakai) Y.C.Chu & D.C.Wu
synonym Arisaema peninsulae var. atropurpureum Nakai
synonym Arisaema peninsulae var. attenuatum Nakai ex F.Maek.
synonym Arisaema peninsulae var. caespitosum Nakai
synonym Arisaema peninsulae f. convolutum (Nakai) Y.S.Kim & S.C.Ko
synonym Arisaema peninsulae f. variegatum Nakai
synonym Arisaema planilaminum J.Murata [ミクニテンナンショウ]
synonym Arisaema proliferum Nakai
synonym Arisaema pseudojaponicum Nakai [=マムシグサの異名]
synonym Arisaema pseudojaponicum f. serratifolium Nakai
synonym Arisaema serratum var. atropurpureum Engl.
synonym Arisaema serratum f. blumei Makino
synonym Arisaema serratum var. blumei (Makino) Engl.
synonym Arisaema serratum var. euserratum Engl.
synonym Arisaema serratum f. integrum Nakai
synonym Arisaema serratum var. ionochlamys Nakai
synonym Arisaema serratum f. ionochlamys (Nakai) T.Koyama
synonym Arisaema serratum f. japonicum (Blume) Makino
synonym Arisaema serratum var. japonicum (Blume) Y.Yabe
synonym Arisaema serratum var. latisectum Miq.
synonym Arisaema serratum f. thunbergii Makino
synonym Arisaema serratum var. viridescens Nakai
synonym Arisaema serratum f. viridescens (Nakai) T.Koyama
synonym Arisaema sinanoense Nakai [カルイザワテンナンショウ]
synonym Arisaema solenochlamys Nakai ex F.Maek. [ヤマジノテンナンショウ]
synonym Arisaema speirophyllum Nakai
synonym Arisaema takedae Makino [オオマムシグサ]
synonym Arisaema takesimense Nakai[タケシママムシグサ=マムシグサの異名]
synonym Arisaema yakushimense Nakai[ヤクシママムシグサ=マムシグサの異名]
1 Arisaema angustatum Franch. & Sav. [ホソバテンナンショウ]
2 Arisaema hatizyoense Nakai[ハチジョウテンナンショウ]
3 Arisaema japonicum Blume[マムシグサ]
synonym Arisaema koshikiense Nakai[コシキジマテンナンショウ]
synonym Arisaema pseudojaponicum Nakai[マムシグサの異名]
synonym Arisaema yakushimense Nakai[ヤクシママムシグサ=マムシグサの異名]
synonym Arisaema amplissimum Blum
4 Arisaema longilaminum Nakai [ヤマトテンナンショウ]
synonym Arisaema sinanoense Nakai [カルイザワテンナンショウ]
5 Arisaema mayebarae Nakai [ヒトヨシテンナンショウ]
6 Arisaema peninsulae Nakai [コウライテンナンショウ]
synonym Arisaema boreale Nakai[キタマムシグサ]
synonym Arisaema proliferum Nakai[異名]
synonym Arisaema speirophyllum Naka[異名]
7 Arisaema planilaminum J.Murata [ミクニテンナンショウ]
8 Arisaema serratum (Thunb.) Schott [カントウマムシグサ]
synonym Arisaema capitellatum Nakai[コウライテンナンショウ異名]
synonym Arisaema niveum Nakai[異名]
synonym Arisaema hakonecola Nakai[カミヤマテンナンショウ]
synonym Arisaema koidzumianum Kitam.[トウゴクマムシグサ ]
9 Arisaema solenochlamys Nakai ex F.Maek. [ヤマジノテンナンショウ]
10 Arisaema suwoense Nakai [ヤマグチテンナンショウ]
11 Arisaema takedae Makino [オオマムシグサ]
synonym Arisaema izuense Nakai [イズテンナンショウ]
.........ツクシマムシグサ群 Group of Maximowiczii (Serizawa 1982)........
12 Arisaema maximowiczii (Engl.) Nakai [ツクシマムシグサ]
ssp. maximowiczii
ssp. tashiri (Kitam.)Serizawa [タシロテンナンショウ]=ツクシヒトツパテンナンショウ
13 Arisaema unzense Serizaw [ウンゼンマムシグサ]
.........ムロウテンナンショウ群 Group of Yamatense (Serizawa 1980)........
14 Arisaema yamatense (Nakai) Nakai [ムロウテンナンショウ]
subsp. yamatense
subsp. sugimotoi (Nakai) H.Ohashi et J.Murata [スルガテンナンショウ].
14 Arisaema abei Seriz. [ツルギテンナンショウ].
.........ヒトツバテンナンショウ群 Group of momophyllum........
15 Arisaema monophyllum Nakai [ヒトツバテンナンショウ]
16 Arisaema iyoanum Makino [オモゴウテンナンショウ]
.........アオテンナンショウ群 Group of tosaense........
17 Arisaema tosaense Makino [アオテンナンショウ]
18 Arisaema kishidae Makino ex Nakai [ムロウマムシグサ]
Kewscienceではマムシグサ(Arisaema japonicum)を独立種とし、オオテンナンショウを変種としているが、コウライマムシグサはKewscienceではカントウマムシグサのsynonyuとされている。次表で比較した。
(1) Arisaema hakonecola Nakai カミヤマテンナンショウ=ムラサキマムシグサ
synonym Arisaema serratum var. ionochlamys Nakaj ムラサキマムシグサ
北海道南部、本州、四国、九州に分布。シイ・カシ帯からブナ帯の林縁、林床に生える。
高さ30~100cm。偽茎は長い。葉は2個、小葉は11〜17枚で、葉軸は湾曲または回旋する。花の位置は葉面と同じ高さか低い。仏炎苞は暗紫色。筒部口辺はやや広く反り返る。舷部は前に曲がって、筒口部を被う。舷部内面は隆起する細脈が目立つ。花序付属体は太い棒状~棍棒状で、先が頭状になる。花期は5〜6月。
品種) 'Fuji'
(2) Arisaema koidzumianum Kitam. トウゴクマムシグサ(カントウマムシグサ) 東国蝮草
日本本州(北海道、中部内陸地、東北南部、近畿地方西部)、朝鮮、サハリン原産。広義のカントウマムシグサ
高さ30~60㎝。葉は2個、小葉は長さ15~25㎝の長楕円形、7~9個つく。仏炎苞は緑色~紫色、筒部は長さ5~6㎝、筒口部は少し曲がって耳状となる。舷部はあまり長くならず、長さ6~8㎝。仏炎苞の中にある付属体は先端が太くならずまっすぐな棒状、直径3.5~8㎜、頭状にならない。花期は4~6月
56 Arisaema sikokianum Franch. et Sav. ユキモチソウ 雪餅草
マムシグサ亜節 群未確定
日本固有種(本州の三重県・奈良県、四国)。英名はJapanese cobra lily。非常に強いきのこ臭を放出する。
高さ20~30㎝。塊茎は扁球形、子球が多数つく。葉は鳥足状複葉、2枚、互生し、ほぼ同大。偽茎は葉柄の長さの1~1.5倍。小葉は3~5枚、楕円形~狭楕円形~針形、先は尖鋭形、全縁または鋸歯縁。葉軸はやや発達する(6~30mm)。花序柄の長さは葉柄とほぼ同長~より短い。仏炎苞は外面が紫褐色で白条があり、表面は平滑。筒部は倒円錐状、口辺部は開出するが、反曲しない。仏炎苞面及び口辺部は付近は黄白色。舷部は長さ7~12cm、三角状狭卵形、筒部より長く(1.4~2.4倍〕、先端は細く尾状になり、内巻きし、内面の上部がしばしば帯紫色になる。花序付属体は白色、太い棒状で 先端は頭状に膨らみ、直径17~25mm。花期は5~6月。2n=28。
品種) 'Silver Center'
56-1 Arisaema sikokianum Franch. et Sav. x A. tosaense Makino ユキモチアオテンナンショウ
56-2 Arisaema sikokianum Franch. et Sav. x A. yamatense (Nakai) Nakai ムロウユキモチソウ
ユキモチソウとムロウテンナンショウ(A. yamatense)との自然交雑種。
偽茎の長さは葉柄の1.5~-2倍。小葉は5~7個。仏炎苞は紫褐色で白条があり、口辺部付近は白緑色。花序付属体は白色、緑色を帯び、太い梶棒状、直径6~15mm。
50 Arisaema solenochlamys Nakai ex F.Maek. ヤマジノテンナンショウ 山路の天南星
synonym Arisaema serratum (Thunb.) Schott
synonym Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott
マムシグサ群 KewscienceではArisaema serratumのsynonym
日本固有種(中部地方~関東地方)。仏炎苞はヤマザトマムシグサに比べて小さく、やや著しくもり上がり、光沢がなく、内面の縦条はあまり目立たない。
高さ30~80cm。葉は2個、小葉は7~15個、長楕円形、縁にしばしば細鋸歯がある。葉軸は発達する。仏炎苞は外面が淡色(緑色~淡紫褐色)。筒部はやや太く、筒口辺部はあまり開かない。舷部は短く、三角状広卵形、やや著しくもり上がりドーム状に膨らみ、普通、外面が緑色、内面は帯赤褐色で白条があまり目立たず、ときに緑色。付属体は棒状、舷部に隠れて見えにくい。仏炎苞は葉の展開の後に開く。花期は5~6月。
51 Arisaema speciosum (Wallich) Martius ex Schott & Endlicher,
中国、インド、ブータン、ネパール原産。中国名は美丽南星 mei li nan xing。英名はcobra lily。 品種) 'Himalayan Giant'
52 Arisaema sugimotoi Nakai スルガテンナンショウ 駿河天南星
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai subsp. sugimotoi (Nakai) H.Ohashi et J.Murata (1980)
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai var. intermedium Sugim.
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai var. sugimotoi (Nakai) Kitam.(1942)
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai var. sugimotoi (Nakai) Kitam. f. variegatum Sugim.(1967)
ムロウテンナンショウ群
日本固有種(東海地方)。別名はエンシュウテンナンショウ。ムロウテンナンショウの亜種 A. yamatense subsp. sugimotoi とされていたが、DNA系統解析の結果、別種に変更された(2018)。
多年草、高さ30~60㎝。地中の球茎は扁球形。葉は2個つき、1個の葉は明瞭に小さい。小葉は7~17個つく。偽茎にはムラサキマムシグサと同じような模様がある。仏炎苞は淡緑色、白い縦筋があり、内側には細かい乳頭状突起が密生し、先が尖る。仏炎苞の中に肉穂花序があり、多数の花がつき、上部に付属体がある。普通は雌雄異株。栄養状態で変化し、大きくなると雌株になり、小さいと雄株となる。両性のときもあり、仏炎苞を上から覗くと確認でき、雄花は仏炎苞の筒部の基部に隙間がある。花序付属体は淡緑色、太く、先端が細くなり、前にやや曲がり、大きく膨らみ鍵状にくびれる(花序付属体の形状が異なり、先がやや前に曲がらないでふくらむだけのものもみられる)。果実は液果、多数つき、直径5~8㎜のやや歪んだ球形、秋に橙色に熟す。種子はほぼ白色、長さ3~3.5㎜の球形~丸みのある4稜形、果実に1~4個入る。花期は3~4月。2n=28。
53 Arisaema taiwanense J.Murata ナガヒゲウラシマソウ
台湾原産。中国名は蓬莱南星 peng lai nan xing
53-1 Arisaema taiwanense J.Murata var. brevipedunculatum J.Murata ダイブウラシマソウ
台湾原産。中国名は短梗蓬莱南星 duan geng peng lai nan xing
54 Arisaema takedae Makino オオマムシグサ 大蝮草
synonym Arisaema japonicum Blume var. atropurpureum (Engl.) Kitam. [Ylist]
synonym Arisaema serratum var. atropurpureum Engl. [Kewscience]
synonym Arisaema peninsulae f. atropurpureum (Engl.) Y.C.Chu & D.C.Wu
synonym Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott
synonym Arisaema serratum var. serratum . [The Plant List]
synonym Arisaema serratum (Thunb.) Schott subsp. amplissimum (Blume) Kitam., excl. typo
マムシグサ群 愛知県の絶滅危惧Ⅱ類。遅咲き系(葉が完全に展開してから花序が展開し始める。)。
日本固有種(北海道、本州各地に点々と分布)
多年草。塊茎は扁球形、いくつかの子球をつけ(ただし愛知県のものはほとんどつけない)、上部から多くの根を出す。偽茎は植物体の全高に対して変異が大きく、しばしば全高の2分の1程度まで短くなる(とくに小型の雄個体ではこの傾向がある)。偽茎の斑は通常発達しない。葉は2枚、第1葉の葉鞘は長さ40~80cm。小葉は7~15個(小葉の数は一般に多く、特に陽地に生えるものでは数多くて葉軸が上方に巻き上がって立体的に配列する。)、楕円形~長楕円形、縁は全縁(愛知県では細かい歯状のあるものもある)、先は尖鋭形。葉軸は発達する。仏炎苞は葉より著しく遅れて(愛知県ではやや遅れて)開き、葉より高くなり、幅広く大型、紫色。筒部は太く倒円錐状、長さ5.5~8㎝、雄花序では筒部が上に開く傾向が強く、口辺部はやや広く開出し、舷部の基部から筒部にかけて白色を帯びる。舷部はしばしば筒部より長く長さ10~20cm、垂れ下がり先端は尖鋭形、通常紫褐色で内面には著しい縦皺がある。偽雌雄異株。雄花をつける株は小型、雌花をつける株は大型。花序付属体は太棒状~棍棒状、普通黄白色、しばしば白色で目立ち、先端は直径8~15mm。花期は5~6月。2n=28(参考4及びレッドデータブック愛知参照)。
55 Arisaema tashiroi Kitam. タシロテンナンショウ 田代天南星
synonym Arisaema maximowiczii (Engl.) Nakai subsp. tashiroi (Kitam.) Seriz.
マムシグサ亜節 群未定
日本固有種(九州の宮崎県、鹿児島県)。別名はツクシヒトツバテンナンショウ。葉が2個つき、うち1個が著しく小さいのが特徴。山地の林下に生える。
高さ30~70cm。葉は2個つき、第2葉は第1葉に比べ著しく小さい。第1葉の葉鞘は長さ35~50㎝。偽茎は葉柄より長い。小葉は7~11個つき、長楕円形、長さ5~18㎝、縁は細鋸歯があるか又は全縁、先は尖鋭形。葉軸が発達する。花序柄は長さ5~10㎝、葉柄より短い。仏炎苞は葉の展開より後に開き、下部の約2/3が筒部になり、緑白色~黄緑色、まれに一部紫褐色を帯び、白色の縦縞が目立つ。筒の口辺部は狭く開出する。舷部の先は内側にほぼ水平に曲がり、短く、三角状。花序付属体は有柄、基部が太く先は細い棒状、上部でやや前に傾くことが多く、長さ6~7㎝、先の直径約1mm。花期は4~6月。2n=28。
56 Arisaema ternatipartitum Makino ミツバテンナンショウ 三葉天南星
マムシグサ節 A. sect. Pistillata
日本固有種(本州の静岡県・山口県、四国、九州)。ブナ帯林下の岩礫の多い斜面地に生える。 高さ15~30(50)cm。開花後、走出枝を出し、子球をつける。低出葉は2~3枚。偽茎と葉柄はほぼ同長。葉は2個つき、3小葉複葉。小葉は卵形、細鋸歯があり、小葉柄は無く、先は鋭形。花序柄(偽茎部分は除く)は長さ7~17㎝。仏炎苞は9~15㎝、淡褐色~赤褐色、下部の半分が筒状になり、筒の口辺部は広い耳状になり、ミミガタテンナンショウによく似る。舷部は長楕円状三角形、前側に曲がり、先は鋭形。花序付属体は棒状。花序は葉より先に展開する。肉穂は長さ4~8㎝。花期は4〜5月。
57 Arisaema thunbergii Blume ウラシマソウ 広義
ウラシマソウ節(sect. Flagellarisaema)
日本、朝鮮、台湾原産。
57-1 Arisaema thunbergii Blume subsp. thunbergii ナンゴクウラシマソウ 南国浦島草
日本(本州の広島県、山口県、四国、九州)、朝鮮に分布する。
花序付属体の基部にしわがある。ウラシマソウは平滑。
高さ40~50㎝。葉は鳥足状複葉、普通、1枚。小葉は11~17枚、水平に広がり、広披針形、しばしば、中脈に白班がある。。紫色の仏炎苞から長い付属体が出て先端は垂れ下がり花期は4~6月。
57-1-1 Arisaema thunbergii Blume subsp. thunbergii f. viride Hatus. ミドリナンゴクウラシマソウ
57-2 Arisaema thunbergii Blume subsp. autumnale J.C.Wang, J.Murata et H.Ohashi タイワンウラシマソウ
台湾原産。中国名は东台南星 dong tai nan xing。
雌雄異株。塊茎は扁球形、直径3~6㎝。低出葉は帯紫色~帯褐色、膜質、先は微突形、葉は単生。葉柄は円柱形、長さ25~50㎝、下部は偽茎を作る。葉身は鳥足状複葉。小葉は11~15個、倒披針形~楕円形、基部はくさび形、先は尖鋭形。中央の小葉は長さ10~28㎝×幅2~7.5㎝。花序柄は普通、葉柄より短く、長さ15~35㎝。仏炎苞は白色又は淡黄色で暗紫色~ブロンズ紫色~赤紫色の縞がある。筒部は外側に白色または淡黄色で縦に紫色の縞があり、内側に暗紫色の縞があり、円筒形、のど部に耳があり、長さ5~7㎝×幅2~2.5㎝。舷部は三角状卵形、長さ7~10㎝×幅4~5㎝、先は鋭形~尖鋭形。肉穂花序は単性。雌ゾーンは円筒気、長さ1.5~2㎝。雄ゾーンは長さ3~4㎝。融合雄しべ群(synandria)は柄があり、4葯からなる。半葯は側部の隙間から裂開する。花序付属体は仏炎苞から長く突き出し、糸状、長さ40~60㎝、下部は細い円筒形、平滑、両端で次第に細くなりい、上部は下向きに曲がり、垂れ下がる。花期は5~7月。
57-3 Arisaema thunbergii Blume subsp. geomundoense S.C.Ko
朝鮮に分布。花序付属体の色としわのあること、基部が太くなることが異なる。(Sung Chul Ko and others 2006)
高さ25~100㎝。塊茎は扁球形。葉は1~2個、互生する。葉柄はほぼ直立、円柱形、長さ28~60㎝。小葉は9~18個、披針形~線形、先は尖鋭形、頂小葉は長さ10~50㎝×幅3~10㎝、側小葉は長さ5~40㎝×幅1~10㎝。花序柄は単生、長さ8~30㎝。仏炎苞は卵形、先が尖り、長く先細になって、先が肉穂花序を超え、縁が外側に巻き、暗紫色で内側に帯緑色の脈がある。仏炎苞の筒部は長さ9~12㎝×直径3.5~6㎝、白紫色で、帯紫色の縞と斑点がある。肉穂花序は単性の花をつく、まれに同一花序に雄花と雌花をつける。雄花部分は上部に雌花部分は下部になる。花序付属体はむち形(whip-shaped)、長さ30~60㎝、暗紫色~緑紫色、付属体の基部の太い部分は長さ4~10㎝×幅5~20mm、しわがあり、暗紫色~鮮紫色。果実は液果。種子は卵状球形。花期は4~5月。
57-4 Arisaema thunbergii Blume subsp. urashima (H.Hara) H.Ohashi et J.Murata ウラシマソウ 浦島草
synonym Arisaema urashima H.Hara var. giganteum Konta
synonym Arisaema urashima H.Hara
日本(北海道南部、本州、四国、九州)に分布する。
高さ40~50㎝。地下に塊茎=球茎(corm)がある。成熟して開花する株の葉は1枚、葉柄は太く、花序柄より高く直立する。小葉は11~15枚。葉柄の基部が鞘状になった偽茎となっている。偽茎から花茎を直立し、暗紫色の仏炎苞をつける。仏炎苞の中に多数の花をつけた肉穂花序があり、花序の延長部(付属体)が仏炎苞の外に外に出て高く立ち上がり、先が細くなって垂れ下がる。雌雄異株であり、雄花から雌花へ転換することもある。雄株の仏炎胞の基部には虫が出られるように隙間がある。雄花は2~5個の雄しべだけからなり、雌花は緑色の球形の子房がある。果実は朱赤色に熟す。2n=28
品種) Aonourashimasou' , 'Silver Seas'
58 Arisaema tortuosum (Wallich) Schott
Arisaema sect. Tortuosa (Engler) H. Hara
中国、インド、ブータン、ネパール原産。中国名は曲序南星 qu xu nan xing。英名はwhipcord cobra lily。
品種) 'Black Rod' , Sw 861
59 Arisaema tosaense Makino アオテンナンショウ 靑天南星
アオテンナンショウ群 2n=28
日本固有種(本州の近畿以西、四国、九州)。山地の林内に生える。
高さ30~100cm。全体緑色。偽茎は普通、葉柄や花序柄より長い。葉は2個、ときに1個、葉軸は発達する。小葉は7~11個、楕円形~長楕円形、しばしば縁に鋸歯があり、先は普通、糸状に伸びる。花序柄は長さ5~7cm。仏炎苞は葉に遅れて開き、淡緑色~緑色、まれに紫色、半透明で白色の条線は目立たず、口辺部は外曲する。舷部は卵形、先は次第に細く糸状に長く伸びる。花序付属体は太い棒状、淡緑色、先端はやや太く丸くなり、直径6~10mm。花期は5~6月。
60 Arisaema triphyllum L.
北アメリカ東部原産。英名は jack-in-the-pulpit , bog onion , brown dragon , Indian turnip。
高さ30〜65㎝。葉は3小葉複葉。葉柄は長く、長さ30~45㎝。小葉は長さ8~15㎝×幅3~7㎝。花序は形が不規則、長さ8㎝以下、黄緑色又はときに緑色で、紫色~帯褐色の縞がある。仏炎苞(spatheをpulpitもいう)は肉穂花序を包み、肉穂花序は小さな花に覆われる。花は単性で隣接的雌雄同体(sequential hermaphrodites)、小さい株は雄花となり、大きくなると雌花を生じる。花粉媒介は臭いに集まるキノコバエ(fungus gnats)、タマバエ(gall gnats)、甲虫が行う。雄花は同じ花序の雌花が成熟する前に枯れるので自家受粉はしない。果実は熟すと鮮やかな赤色になる。種子は普通、1~5個、白色~薄タン色。花期は4~6月。果期は夏下旬~秋。
品種) 'Starburst'
61 Arisaema undulatifolium Nakai ナガバマムシグサ 広義
ヒガンマムシグサ群(ナガバマムシグサ群)
61-1 Arisaema undulatifolium Nakai subsp. undulatifolium ナガバマムシグサ 長葉蝮草
synonym Arisaema undulatifolium Nakai f. viridifolium Sugim.
日本固有種(伊豆地方)。別名はナミウチマムシグサ。山地の林下に生える。
高さ10~35cm。葉は2個つき、ほぼ同大、鳥足状複葉。小葉は9~21個、幅が狭く線形~狭披針形、先は尖鋭形、しばしば小葉の中脈に白班がある。葉軸はほとんど発達せず、小葉が掌状に円く広がったように見える。花は葉より先に開く。仏炎苞は紫褐色~黄褐色、口辺部はやや狭く開出する。舷部先端は前に曲がる。花序付属体は円柱状、先が太くならない。花期は3~5月。果期は遅く11~12月。2n=26。
61-2 Arisaema undulatifolium Nakai subsp. uwajimense T.Kobay. et J.Murata ウワジマテンナンショウ 宇和島城天南星
ヒガンマムシグサ群
四国西部(愛媛県、高知県)に分布する。
小葉の幅が広く、葉軸がやや発達する。花序柄が長い。仏炎苞の口辺部が耳状に張り出す。子房あたりの胚珠数(平均)が20個以上あり、少なければ外観がよく似ているヒガンマムシグサ(ヨシナガマムシグサ)である。
62 Arisaema unzenense Seriz. ウンゼンマムシグサ 雲仙蝮草
synonym Arisaema maximowiczii (Engl.) Nakai
synonym Arisaema angustifoliatum auct. non (Miq.) Nakai
ツクシマムシグサ群
ツクシマムシグサ(Arisaema maximowiczii)のsynonymとされている。[Kewscience:Gusman, G. & Gusman, L.(2006)]
葉は普通、2枚。ツクシマムシグサは普通、1枚。
63 Arisaema yamatense (Nakai) Nakai ムロウテンナンショウ 室生天南星
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai subsp. yamatense
ムロウテンナンショウ群
日本固有種(本州の愛知県、岐阜県、福井県、鳥取県、岡山県)。山地林下、林縁に生える。
高さ30~80cm。鞘状葉や偽茎部の班は赤みが強い。葉は2個、第2葉は小さい。小葉は7~17枚、楕円形~披針形、縁は全縁ときに鋸歯がある。葉軸は発達する。花序はしばしば、葉より早く展開する。仏炎苞は緑色、ときに紫色を帯びる。筒の口辺部は狭く開出する。舷部広卵形は筒部より短く長さ6~10cm、基部は横に張り出し、先は尖鋭形、内面に微細なパピラを密生し、白濁して見える。花序付属体は細い棒状、淡緑色、下部はやや太く、上部に向かって細くなり、上部がやや前方に曲がり、先端はやや膨らみ直径2~3mmで緑色~濃緑色になる。花期は4~6月。2n=28。
63-1 Arisaema yamatense (Nakai) Nakai subsp. sugimotoi (Nakai) H.Ohashi et J.Murata スルガテンナンショウ
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai var. intermedium Sugim.
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai var. sugimotoi (Nakai) Kitam.
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai var. sugimotoi (Nakai) Kitam. f. variegatum Sugim.
ムロウテンナンショウ群
日本固有種(東海地方)。付属体は淡緑色、太く、先端が細くなり、前にやや曲がり、大きく膨らみ鍵状にくびれる。
DNA系統解析の結果、別種のArisaema sugimotoi Nakaiに変更された(2018)
60 ハイブリッド
(1) コシキマムシグサArisaema japonicum × A. ringens (2019)
(2) その他ハイブリッド 品種) 'Crossing Over' , 'Siang'
Arisaema
Arisaema
4) 植物研究雑誌. 津村研究所. (1980) vol.55, no.12, p.p353-357.
芹沢 俊介. 日本産テンナンショウ属の再検討-2-ムロウテンナンショウ群.
5) 植物研究雑誌 56(3), p90-96, 1981-03
日本産テンナンショウ属の再検討-3-ユモトマムシグサ群
6) 植物分類,地理 32(1-4), 22-30, 1981
日本産テンナンショウ属の再検討(4)
芹沢俊介 日本産テンナンショウ属の再検討 (5)アマミテンナンショウ
日本産テンナンショウ属(サトイモ科)の 1新自然雑種ムロウユキモチソウ
11) 植物研究雑誌. 津村研究所. (1990) vol.65, no.8, p.p225-232
邑田 仁. テンナンショウ属の染色体数に関する新知見-2-〔英文〕
12) The journal of phytogeography and taxonomy Vol42(2)99-109(1995)
テンナンショウ属のアロザイム分化: (3)マムシグサ群 邑田 仁, 河原 孝行
マ ム シグサ群の 多様性 邑田 仁
The Systematic Study of Taiwanese Arisaema(Araceae)
日本植物分類学会 第7回東京大会 公開シンポジウム講演記録
牧野富太郎とマムシグサの分類
Fl. China 23: 43–69. 2010. 21. ARISAEMA Martius, Flora 14: 459. 1831.
A New Form of Arisaema nambae Kitam. (Araceae),
an Endangered Aroid in Western Japan
Comments on the taxonomic treatment of Arisaema (Araceae) in Flora of China
―発芽第一葉,胚珠数,染色体数と分類―
第16回 日本植物分類学会賞 受賞記念論文テンナンショウとともに30年
―ヒガンマムシグサ群の調査・研究からみえてきたもの 小林禧樹
日本産テンナンショウ属(サトイモ科)の果実熟期の分化
と鳥類による種子散布
岡山県北部に産するマムシグサ群の分類学的検討
松本哲也,佐桒信也邑田 仁
ヒロハテンナンショウ群とユモトマムシグサ群(サトイモ科テンナンショウ属)の倍数性
笹村和幸,邑田 仁,大井・東馬哲雄
高さ30~120㎝。雌雄偽異株で、雄株から雌株に転換する。偽茎部は長く、葉柄部はかなり短い。葉は鳥足状複葉、2(又は1)個つく。葉軸は発達する。小葉は7~17個、長楕円形、先は鋭形、縁は全縁、ときに鋸歯がある。花序柄は葉柄とほぼ同長か又は長い。仏炎苞は葉と同時または遅れて展開する。仏炎苞は普通、葉の上に位置する。仏炎苞は紫褐色~緑色で白色の縦縞(白筋)がある。仏炎苞の筒口辺部はやや開出(~広く外曲)する。舷部は卵形、先は次第に細くなり、長く尖り、内面に隆起する細脈が著しい。花序付属体は有柄、棒状、時に太い棍棒状~頭状。花期は4~6月。(日本産テンナンショウ属図鑑:邑田仁等著、北隆館、2018年)
カントウマムシグサの基準標本産地は箱根とされている。基準標本(狭義)の特徴は、小葉の縁に細鋸歯があること、花序付属体の先がこん棒状(頭状)に肥大することである。このような特黴を含め、基準標本によく一致するような個体は関東平野の山林を中心に埼玉県、東京都、群馬県、茨城県、千葉県、神奈川県で採集されているが、細鋸歯の有無、花序付属体の肥大の程度には変異がある。関東地域のこのような特徴を持つものは花序が葉よりも明らかに遅く展開する。葉は普通、2枚、葉軸は発達する。
現在ではカントウマムシグサを広義にとらえ、ムラサキマムシグサ(仏炎苞が紫色のカントウマムシグサ)、アオマムシグサ(仏炎苞が緑色のカントウマムシグサ)、トウゴクマムシグサなどを含めて変異の多いものとし、分布域も広いものとされている。カントウマムシグサはマムシグサ節に属し、子葉が3小葉で、胚珠数が少ない(4.1~7.9)ペダティセクタ亜節(subsect. Pedatisecta)の中のマムシグサ群に分類されている。マムシグサ群には早咲きのものと遅咲きのものがあり、マムシグサ(Arisaema japonicum)は早咲きであり、カントウマムシグサは遅咲きである。マムシグサ群に属す他種もいくつかあるが、コウライテンナンショウやヤマトテンナンショウなどはKwscienceやThe Plant Listではカントウマムシグサのsynonymとされている。
テンナンショウ属
family Araceae - genus Arisaema草本、塊茎又は根茎をもち、副雌雄異株又は雌雄偽異株(paradioecious:幼時に雄性、後に雌性(又は栄養状態により、栄養が悪いと雄性、良いと雌性又は両性に、年ごとに変わり)、性転換とも呼ばれる。。塊茎は普通、季節ごとに更新され、周りに小塊茎を生じる。成長シーズンの終わりに古い塊茎から分かれる。根茎は普通、円筒形、多数の節をもち、毎年ごとに更新されない。普通、常緑又は冬緑の葉を先行する。根は普通、低出葉(cataphylls:小さい鱗片状の葉、鞘状葉ともいわれる)の周りの塊茎の先か根茎の新しい節に出る。低出葉は3~5個、草質又は膜質、シュートの基部を取り囲む。偽茎(pseudostem)は葉柄の基部の鞘の円筒形の部分からなる。葉は1~3枚、長い葉柄がある。葉柄(基部の葉鞘の上端~最下の小葉基部)は普通、まだら、丈夫で、平滑又はいぼ状 。葉身は3小葉、掌状複葉、鳥足状複葉、又は放射状複葉。花序は葉の展開と同時又は前に出る。花序は単生、花序柄(最上部の葉柄の付け根~仏炎苞基部)があり、塊茎植物又は根茎をもつ植物の偽茎、又は、ある根茎植物では葉柄から離れて、直接、低出葉に取り囲まれる偽茎から生じる。花序柄(peduncle:偽茎の中を除いた部分を指すことが多い)は直立、丈夫、葉柄より普通、短く又はときに等しく、又は長い(偽茎を作る部分は除く)。仏炎苞(spathe)は下部が筒状、上部は広がった拡大部(舷部 limb) 、脱落性、枯れ又は半宿存性。仏炎苞の筒部ののど部はしばしば外側へ広く広がり、各側に耳があるか又は無い。のど部の縁に縁毛が有又は無。仏炎苞の舷部はたまに、先に長い尾をもつ。肉穂花序(spadix)は無柄、単性又は両性(見かけ上雄雌異株、または雄株と両性株がある)。花は花被片のない単性花。両性の肉穂花序は下部が雌性、上部が雄性、雌花群と雄花群が接してつく。中性(不稔の)花が肉穂花序にときにある。肉穂花序の上部には花をつけない花軸が剥き出しになっており、花序の付属体(appendix)と呼ばれる。付属体(appendix)は形が様々で基部に柄が有又は無、先はときに長い鞭毛(flagellum)で終わる。子房は基部に1個の室があり、数個の直生胚珠をもつ。花柱は普通、不明瞭。柱頭は盾状、パピラがある。融合雄しべ群(synandria)は2~6個の雄しべからなり、無柄又は統合した花糸につく。葯は2個の先端の孔又は1個の馬蹄形の隙間から裂開、もしくは輪状に横周裂開する。中性花は糸状、錐形。果序は直立又は下向き。液果は帯赤色、種子を数個もつ。英名はarisaema , Cobra Lily , Jack in the Pulpit 。
世界に約180種があり、主にアジアに分布する。中国に約80種、インド・ヒマラヤに約25種、インドシナ・マレーシアに約25種、北東アフリカ~アラビアに約10種、北アメリカに約3種が分布し、日本には少なくとも30種以上(約60分類群)があり、ほとんどがマムシグサ節であり、他にはマイヅルテンナンショウ節に2種(マイヅルテンナンショウ、ウラシマソウ)、アマミテンナンショウ節に2種(アマミテンナンショウ、シマテンナンショウ)があるだけである。広域分布する種はほとんどなく、形態差の小さな近縁と考えられる種が集中していることが特徴である。マムシグサ節は種間の中間形があり識別が困難であることから、Ohashi とMurata(1980)は当時最善の策としてマムシグサArisaema serratumただ1種(マムシグサ群と呼ばれる)を認め、20種以上をその異名とした。その後のマムシグサ群内で形態的差異の著しい集団についてアロザイム解析研究によっても、それらの集団間ではほとんど分化が認められないことが確認されている。ヒトツバテンナンショウなどはマムシグサ群からの分化がほとんど認めらいが、マムシグサ群とは形態的にはっきりと識別できる特徴を持った種であり、これらをサテライト群として区別する報告もある。日本国内のテンナンショウ属の染色体数は2n = 26, 28, 39, 42, 52, 56, 65, 72, 168 の9種類が知られており、最も多いのがは 2n = 28、次が2n = 26である。
広く使われているMurata(1984)説では地下茎の形状を主な分類形質とし、12節に分類している。Hetterscheid andGusman(2003)節では地下茎が根茎状であることを主な区別点として Anomala 節を認め,球茎を持つ Fimbriata 節から独立させ13節とした。
1 sect. Anomala(sect. Fimbriata(1,3)) ネッタイマムシグサ節
2 sect. Fimbriata(sect. Fimbriata(2)) フデボテンナンショウ節
3 sect. Tortuosa(sect. Tortuosa) マイヅルテンナンショウ節 2種(マイヅルテンナンショウ、ウラシマソウ)
4 sect. Flagellarisaema(subsect. Flagellarisaema) ウラシマソウ節 :
5 sect. Dochafa(sect. Dochafa) キバナテンナンショウ節
6 sect. Clavata(sect. Clavata) アマミテンナンショウ節 2種
7 sect. Sinarisaema(sect. Sinarisaema) クルマバテンナンショウ節
8 sect. Tenuipistillata(sect. Tenuipistillata) ムカシマムシグサ節
9 sect. Arisaema(sect. Trisecta) ヒマラヤテンナンショウ節
10 sect. Nepenthoidea(sect. Arisaema) テンナンショウ節
11 sect. Franchetiana(sect. Franchetiana) ウンナンマムシグサ節
12 sect. Pedatisecta(sect. Pedatisecta) マムシグサ節 3亜節
13 sect. Decipientia(sect. Decipienti) ユキミテンナンショウ節
現在主に使われている下位分類
1 sect. Anomala ネッタイマムシグサ節
2 sect. Attenuata ミナミマムシグサ節(A.lamminatum)
3 sect. Tortuosa マイヅルテンナンショウ節
マイヅルテンナンショウ (A. heterophyllum)
4 sect. Tenuipistillata ムカシマムシグサ節
5 sect. Dochafa キバナテンナンショウ節
6 sect. Odorata ニオイマムシグサ節 [Murata (2011)]
(A. prazeri , A. lidaence , A.aridum , A. mairei , A. quinequelobatum , A. yunanense)
7 sect. Clavata アマミテンナンショウ節
花序付属体に柄が無い。
アマミテンナンショウ(A. heterocephalum ) , オオアマミテンナンショウ(A. heterocephalum subsp. majus) , シマテンナンショウ(A. negishii)
8 sect. Flagellarisaema (=旧sect. Tortuosa subsect. Flagellarisaema) ウラシマソウ節
遅咲き
ヒメウラシマソウ(A. kiushianum ) , ナンゴクウラシマソウ(A. thunbergii subsp. thunbergii) , ウラシマソウ(A. thunbergii subsp. urashima) ,
9 sect. Arisaema ヒマラヤテンナンショウ節
10 sect. Decipientia ユキミテンナンショウ節(A decipiense)
11 sect. Franchetiana ウンナンマムシグサ節
12 sect. Nepenthoidea テンナンショウ節
13 sect. Sinarisaema クルマバテンナンショウ節
14 sect. Pistillata =Pedatisecta sect. L マムシグサ節(A.serratum)
肉穂花序の付属体は柄がある。葉身は3小葉又は鳥足状複葉。 葉序は螺旋状2列(spiro-distichous)
14-1 subsect. Pistillata, 亜節 子葉が単葉(心形)、胚珠が多い又は単葉(鉾型)
(1) ヒガンマムシグサ群(ナガバマムシグサ群)
発芽第一葉は心形の単葉。平均胚珠数は12.3~21.3(10.6以上)。早咲き。
ウワジマテンナンショウ(A. undulatifolium subsp. uwajimense)平均胚珠数は20以上 , ハリママムシグサ(A. minus) , ミミガタテンナンショウ(A. limbatum) , ヒガンマムシグサ(A. aequinoctiale ) , ナガバマムシグサ(A. undulatifolium subsp. undulatifolium) , タカハシテンナンショウ(A. nambae)
(2) セッピコテンナンショウ群
発芽第一葉は浅裂する単葉。平均胚珠数は10.9~11.1。
セッピコテンナンショウ(A. seppikoense) , ホロテンナンショウ(A. cucullatum)
(3) ユモトマムシグサ群
発芽第一葉は心形の単葉。平均胚珠数は9.3~10.7。早咲き。
オオミネテンナンショウ(A. nikoense subsp. australe) , イシヅチテンナンショウ(A. ishizuchiense ) , ユモトマムシグサ(nikoense subsp. nikoense)
(4) ヒロハテンナンショウ群
発芽第一葉は浅裂する単葉。平均胚珠数は8.0~9.2。
仏炎苞基部に明瞭な縦の隆起条がある。染色体の基本数x=13。
ヒロハテンナンショウ(A. ovale) , ナギヒロハテンナンショウ(A. nagiense) , イナヒロハテンナンショウ(A. inaense )
(5) シコクヒロハテンナンショウ群
発芽第一葉は浅裂する単葉。平均胚珠数は7.8。
仏炎苞基部に明瞭な縦の隆起条が無い。染色体の基本数x=14。
シコクヒロハテンナンショウ(A. longipedunculatum)
(6) 未分類群
ミツバテンナンショウ(A. ternatipartitum)早咲き , オガタテンナンショウ(A. ogatae)
14-2 subsect. Ringentia ムサシアブミ亜節 子葉が単葉(心形)、胚珠が少ない
ムサシアブミ(A. ringens)
14-3 subsect. Pedatisecta ペダティセクタ亜節 子葉が3小葉、胚珠が少ない(4.1~7.9)
(1) ヒトツバテンナンショウ群
オモゴウテンナンショウ(A. iyoanum. subsp. iyoanum) , シコクテンナンショウ(A. iyoanum subsp. nakaianum) , ヒトツバテンナンショウ(A. monophyllum) , ツクシマムシグサ(A. maximowiczii )
(2) ムロウテンナンショウ群
ムロウテンナンショウ(A. yamatense subsp. yamatense )やや早咲き , スルガテンナンショウ(A. sugimotoi ) , ツルギテンナンショウ(A. abei )
(3) マムシグサ群
ホソバテンナンショウ(A. angustatum)やや早咲き , アオオニテンナンショウ(Arisaema peninsulae var. masadanum) , カントウマムシグサ(A. serratum) , オオマムシグサ(A. takedae) , ヤマトテンナンショウ(A. longilaminum) , ハチジョウテンナンショウ(A. hatizyoense ) , コウライテンナンショウ(A. peninsulae)遅咲き , マムシグサ(A. japonicum) , ヒトヨシテンナンショウ(A. mayebarae)。
(4) アオテンナンショウ群
アオテンナンショウ(A. tosaense) , エヒメテンナンショウ(A. ehimense ) , ムロウマムシグサ(A. kishidae)
(5) 未分類群
ヒュウガヒロハテンナンショウ(A. minamitanii) , オドリコテンナンショウ(A. aprile)早咲き , タシロテンナンショウ(A. tashiroi ) , アマギテンナンショウ(A. kuratae) , キリシマテンナンショウ(A. sazensoo) , ユキモチソウ(A. sikokianum) , トクノシマテンナンショウ(A. kawashimae)。
テンナンショウ属の主な種と園芸品種
1 Arisaema abei Seriz. ツルギテンナンショウ 剣天南星ムロウテンナンショウ群 2n=28
日本固有種(四国の愛媛県、徳島県)。仏炎苞は薄緑色、白色の筋があり、先が前に曲がる。花序付属体は細い根棒形、先が仏炎苞に沿って前に曲がる。
2 Arisaema aequinoctiale Nakai et F.Maek. ヒガンマムシグサ 彼岸蝮草
synonym Arisaema undulatifolium auct. non Nakai
synonym Arisaema limbatum Nakai et F.Maek. var. aequinoctiale (Nakai et F.Maek.) Seriz.
synonym Arisaema undulatifolium Nakai var. yoshinagae (Nakai) Seriz. ヨシナガマムシグサ
-Arisaema yosinagae Nakai ヨシナガマムシグサ
synonym Arisaema stenophyllum Nakai et F.Maek.
synonym Arisaema limbatum Nakai et F.Maek. var. stenophyllum (Nakai et F.Maek.) Seriz.
ヒガンマムシグサ群(=ナガバマムシグサ群)
日本固有種(本州の関東以西、四国)
ヒガンマムシグサ群には非常に変化が多く、マムシグ サと紛らわしいものがあるが、子房1個あたりの胚珠数がマムシグサ群よりも多いことによって区別できるとされている。
多年草。高さ40~90cm。葉は2枚つき、ほぼ高さが同じで、花序より低い。葉は鳥足状複葉、小葉は7~13枚つき、中央の小葉が最も大きく、外側が小さく、披針形~楕円形、ときに鋸歯があり、しばしば中脈に沿って白班が入る。新葉の展開前に花序が出る。仏炎苞は紫褐色~黄褐色、まれに黄緑色、筒部は長さ3~6.5㎝、口辺部は耳状に開出し、拡大部(舷部)は卵形~狭倒卵形で鋭尖頭、前に曲がる。花柄は花時には葉柄より長く、偽茎とほぼ同長、雌株はでは特に長くなる。付属体は棒状で有柄、先がやや膨らみ、直径2~5mm。花期は3中旬~4月。果期は7~8月。2n=26。
3 Arisaema amurense Maxim. アムールテンナンショウ
synonym Arisaema komarovii Tzvelev
synonym Arisaema amurense Maxim. var. robustum Engl.
マムシグサ節
朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は东北南星 dong bei nan xing
やや小形で花茎が長い。 品種) 'Dersu Uzala' , 'Green Form' , 'Nakhodka' , 'Splitter Splatter' , 'Vostok'
3-1 Arisaema amurense Maxim. f. purpureum (Nakai) Kitag. ムラサキアムールテンナンショウ
synonym Arisaema amurense Maxim. var. violaceum Engl.
synonym Arisaema amurense Maxim. f. violaceum (Engl.) Kitag.
4 Arisaema angustatum Franch. et Sav. ホソバテンナンショウ 細葉天南星
synonym Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott
マムシグサ群
日本固有種(本州の関東地方~近畿地方)。山地の林内、林縁に生える。愛知県の絶滅危惧Ⅱ類
葉は普通、2枚つき、下側につく葉は上側の葉より大きい。葉柄基部は偽茎となり、偽茎は長さ20~80cm。偽茎や葉柄には淡紫褐色~紫褐色の条線と斑紋があり、蛇紋のように見える。小葉は9~19個、披針形~線状披針形、長さ8~20cm×幅1.5~4cm。花茎は長さ4~15cm。仏炎苞は緑色(まれに紫色)に白色の縦筋がある。筒部は幅1~1.5cm、口辺部は広くなり、やや幅広く反り返る。舷部は幅が広く卵形、筒部より短く、先が前に曲がり、先は鋭形~長い鋭形。付属体は細い棒状で、白色~淡緑色、基部が最も太く、基部に柄があり、先端はやや太くなり、普通、筒口部からあまり突き出ない。花期は4~5月。果期は10~11月。 2n=28。
5 Arisaema aprile J.Murata オドリコテンナンショウ 踊子天南星
synonym Arisaema nikoense Nakai f. variegatum Sugim.
マムシグサ亜節 群未分類
日本固有種( 静岡県、山梨県、神奈川県)。
ユモトマムシグサに酷似するが、偽茎開口部が襟状に開出する点で異なる。
高さ15~30(40)cm。葉は鳥足状複葉、普通、2(1)個、同大。葉軸はあまり発達しない。葉柄と偽茎部はほぼ同長、普通緑色、葉柄基部の偽茎部の境が開口し、襟状に開出する。小葉は普通、5枚、楕円形~広楕円形、葉先と基部は漸尖し、縁は全縁、ときに不規則な粗い鋸歯があり、ときに中脈沿いに白斑が生じる。花序は葉の展開より前に展開する。花序柄は花時には葉柄とほぼ同長になる。仏炎苞は緑色、白色の条は目立たず、ときに縁が紫色を帯びる。仏炎苞の筒口辺部はやや開出する。舷部は長卵形、先は漸尖し、次第に細まりとがる。花序付属体は柄があり、淡い色で棒状になり、先端がふくらむことはない。子房は胚珠が6~9個。果実は秋遅くに赤く熟す。花期は4~5月。果期は11~12月。2n=28。
6 Arisaema candidissimum W. W. Smith モモイロテンナンショウ 桃色天南星
中国原産。中国名は白苞南星 bai bao nan xing。英名はstriped cobra lily , Chinese cobra lily , Chinese Jack-in-the-pulpit , pink cobra Lily. 日本でよく栽培されているのは仏炎苞がピンク色になる選抜種。
雌雄異株。塊茎は扁球形、直径3~5㎝。低出葉は3~4個、ピンク色を帯びた褐色、まばらに白色の斑点があり、長5~24㎝×幅4~5㎝、膜質、先は鈍形、偽茎を巻く。葉は1枚。葉柄は全体に緑色、長さ15~35㎝、基部は偽茎を作り、直径約1.2㎝、平滑。葉身は3小葉複葉。小葉柄は無柄、卵形又はほぼ円形、先は円形~鋭形。中央の小葉は長さ6~8㎝×幅7~9㎝(花時より後はもっと広くなる)、基部は短いくさび形。側小葉はわずかに斜め、長さ5~6㎝×幅4~8㎝。花序は葉の展開より前に展開する。仏炎苞は淡緑色又は白色で緑足又は紫色の縦の線がある。筒部は円筒形、長さ3~4㎝×幅約2㎝、のどの縁は反曲する。舷部は卵形~卵状披針形、長さ5~6㎝×幅3~4㎝、先に長さ2~3㎝の尾をもつ。肉穂花序は単性。雌ゾーンは長円形、長さ2㎝×幅」1㎝程度。子房は緑色、卵形。柱頭はほぼ無柄、丸い。雄ゾーンは円筒形、長さ1.6~2㎝×幅3~4mm。融合雄しべ群(synandria)2~3個の葯からなる。半葯は黄色、ほぼ球形、先端の孔から裂開する。花序保続帯はほぼ直立又は直立、白色又は淡緑色、漏斗形、ほぼ円筒形、長さ3~4.5㎝×幅2~5mm、裸か、基部は漸尖し、ほぼ無柄~有柄、先は鋭形又は鈍形。花期は6~7月。
品種) 'White Flower Form'
7 Arisaema ciliatum H. Li
中国原産。中国名は缘毛南星 yuan mao nan xing。英名はChinese Cobra Lily。
品種) 'Liubaense'
8 Arisaema consanguineum Schott キールンテンナンショウ 広義
synonym Arisaema erubescens (Wallich) Schott in Schott & Endlicher [Flora of China]
中国、台湾、ブータン、インド、ラオス、ミャンマー、ネパール、タイ、ベトナム原産。中国名は一把伞南星 yi ba san nan xing。英名はHimalayan cobra lily , Jack in the Pulpit 。
品種) 'J. Balis' , 'Qinling' , Silver Center' , 'The Perfect Wave' , 'Wild Blue Yonder'
8-1 Arisaema consanguineum Schott subsp. kelunginsulare (Hayata) G.Gusman キールンテンナンショウ
synonym Arisaema kelunginsulare Hayata
9 Arisaema concinnum Schott
中国原産。中国名は皱序南星 zhou xu nan xing。英名はChinese Cobra Lily。
品種) 'Sikkim' ,'Yellow Spathe Form'
10 Arisaema cucullatum M.Hotta ホロテンナンショウ 幌天南星
セッピコテンナンショウ群
日本固有種(近畿地方)。 高さ20~45cm。塊茎は扁球形。葉は普通1枚。偽茎部は短い。小葉は7~13個、狭披針形~狭楕円形、全縁、先が尾状に細長く伸びる。葉軸はあまり発達しない。花序は葉より低い。仏炎苞が幌(ほろ)状に内巻きし、先が細長く長い尾状に伸びる。背側の半透明の白条と黒褐色の縞模様が目立つ。花序附属体は細棒状、先端はやや膨らむ。花期は5月。果期は9月中旬~10月。2n=28。
11 Arisaema decipiens Schott ユキミテンナンショウ
中国、インド、ミャンマー、ベトナム原産。中国名は雪里见 xue li jian
12 Arisaema ehimense J.Murata et J.Ohno エヒメテンナンショウ 愛媛天南
アオテンナンショウ群
マムシグサ群。アオテンナンショウとマムシグサの中間的な性質を示し、雑種起源と推定されている。
四国(愛媛県)に分布。山地の林内に生える。
小葉の先と仏炎苞の先は長く伸び、アオテンナンショウに似ているが、付属体は紫色を帯びるものが多い。葉は鳥足状複葉普通、2枚つく、小葉は7~ 11枚個、長楕円形、先が糸状に伸びる。仏炎苞は緑色で先が細長く糸状に下がる。花期は4~5月。果期は10月。2n=28。
13 Arisaema flavum (Forssk.) Schott キバナテンナンショウ 黄花天南星
キバナテンナンショウ節
中国、インド、ブータン、ヒマラヤ (アフガニスタン~ネパール) 、アラビア、アフリカ原産。
13-1 Arisaema flavum subsp. subsp. flavum (2n = 56)
アフリカ、アラビア原産。
13-2 Arisaema flavum subsp. abbreviatum (Schott) J. Murata (2n = 56)
ヒマラヤ (アフガニスタン~ネパール) 、アラビア (Oman)
13-3 Arisaema flavum (Forsskål) Schott subsp. tibeticum J. Murata, (2n = 28)
中国、インド、ブータン原産。中国名は黄苞南星 huang bao nan xing
14 Arisaema formosanum (Hayata) Hayata アリサンテンナンショウ
synonym Arisaema erubescens (Wallich) Schott in Schott & Endlicher [Flora of China]<
クルマバテンナンショウ節
台湾原産。中国名は一把伞南星 yi ba san nan xing。Flora of Chinaではキールンテンナンショウにまとめている。
15 Arisaema galeiforme Seriz. ヤマザトマムシグサ 山里蝮草
マムシグサ群
本州(群馬県、長野県、山梨県、静岡県、愛知県、岐阜県)に分布。低山地から山地の林床に生える。花序を除いた形態はカントウマムシグサに似ている。
高さ30~120cm。葉柄や葉軸、偽茎は淡緑色か又は淡紫褐色で、班がある。葉は2個、小葉は7~17個の鳥足状複葉。小葉は先が尖鋭形、白斑がある。葉軸は発達する。仏炎苞は筒部が太く、筒部の口辺部は広がり、雄花序では上に向かってやや幅広となり、外面が淡色。舷部は内面の縁や縞が濃紫褐色で目立ち、著しい縦皺があり、幅広く、三角状広卵形で著しくもり上がり、ほぼ直角に前に曲がり、先端は急に尖り、筒部とほぼ同長。付属体はやや太い棒状で普通先が頭状にならず、濃紫褐色、筒部からあまり突き出さず、隠れて見にくい。花と葉はほぼ同時に開く。花期は5~6月。
15-1 Arisaema galeiforme Seriz. f. viride Seriz. ミドリヤマザトマムシグサ
仏炎苞が緑色のもの。
16 Arisaema grapsospadix Hayata フデボテンナンショウ
synonym Arisaema nanjenense T.C.Huang et M.J.Wu
ネッタイマムシグサ節
台湾原産。中国名は毛笔南星 mao bi nan xing。
17 Arisaema griffithii Schott
東ヒマラヤ、ネパール、チベット原産。英名はGriffith's Cobra Lily。
葉は3小葉の複葉、2枚つく。小葉は大きく、広卵形、縁は波内、先は鋭形、下面の脈は明瞭。仏炎苞は長さ約20㎝。舷部は横幅が非常に広く、前側に曲がり、内側に巻き込み、先は切形~浅い凹形、先端に短~長の尾状突起があり、横に張り出した部分はコブラの頭のようにも見え淡~暗紫褐色の網状紋があり、中央部分は、筒部と同じように縦の淡~暗紫褐色の縞模様になる。花序付属体は尾状、長さ20~80㎝、先は仏炎苞から長く突き出し、垂れる。
品種) 'Numbuq'
18 Arisaema hatizyoense Nakai ハチジョウテンナンショウ 八丈天南星
synonym Arisaema japonicum Blume var. hatizyoense (Nakai) Sugim.
synonym Arisaema japonicum Blume var. yasuii Sugim.
マムシグサ群。遅咲き系の性質を持つが、仏炎苞は葉よりやや早く開く。全体が緑色のカントウマムシグサという印象を与える。
日本固有種(八丈島)。林縁に生える。
葉は鳥足状複葉、2個つき、ほぼ同大。小葉は7~15個、小葉間の葉軸はやや発達する。仏炎苞は葉よりやや早く開く。仏炎苞は通常は緑色、まれに紫色を帯び、白色の縦筋がある。舷部は筒部よりやや長く、口辺部はやや耳状に開出する。花序付属体は棒状で先が膨らまない。染色体数が他のマムシグサ群より2本少ない2n=26である。花期は3~4月。果期は9月中旬~11月。
19 Arisaema heterocephalum Koidz. アマミテンナンショウ 奄美天南星 (広義)
アマミテンナンショウ節
南西諸島に分布する。常緑の林内に生え、しばしば石灰岩地に生える。
塊茎はやや扁球形、子球をつける。葉は2枚つき、鳥足状複葉。花序の付属体は棒状で、基部に柄がなく、数個の退化した花をつける。花期は1~3月。果期は7~8月。
19-1 Arisaema heterocephalum Koidz. subsp. heterocephalum アマミテンナンショウ
奄美大島、徳之島に分布。林内に生える。
19-2 Arisaema heterocephalum Koidz. subsp. majus (Seriz.) J.Murata オオアマミテンナンショウ
synonym Arisaema heterocephalum Koidz. var. majus Seriz.
徳之島に分布。低地に生える。
仏炎苞が緑色で付属体が太い。
19-3 Arisaema heterocephalum Koidz. subsp. okinawense H.Ohashi et J.Murata オキナワテンナンショウ
synonym Arisaema heterocephalum Koidz. var. okinawense (H.Ohashi et J.Murata) Seriz.
沖縄本島に分布。山地に生える。
小葉が広披針形でやや数が少なく、仏炎苞の内面が紫褐色。
20 Arisaema heterophyllum Blume マイヅルテンナンショウ 舞鶴天南星
マイヅルテンナンショウ節
日本(本州、四国、九州)、朝鮮南部、中国、台湾に分布する。中国名は天南星 tian nan xing。低地の水辺の草地、湿地、疎林下に生える。
雌雄同株と雄株。塊茎は扁球形、直径2~6㎝、多数の子球をつける。高さ60~120cm。低出葉は4~5個、膜質。葉は普通、1枚。葉柄は粉白色を帯、長さ30~60㎝、下部の3/4は鞘状、偽茎になる。葉身は鳥足状複葉。小葉は11~19(~21)個つく、短い小葉柄があるか又は無く、下面は帯淡緑色、上面は鈍い緑色、形は様々、倒披針形、長円形、又は線状長円形、基部はくさび形、先は尖鋭形。中央の小葉は長さ3~15㎝×幅0.7~5.8㎝、しばしば側小葉よりかなり短い。外側1番目の小葉は長さ7.7~24.2(~31)㎝×幅(0.7~)2~6.5㎝、最も外側の小葉まで次第に小さくなり、小葉の間の距離は0.5~5㎝。花序柄は普通、葉柄より長く長さ50~80㎝。仏炎苞の筒部は外側が粉白色、内側は白緑色、円筒形、長さ3.2~8(10)㎝×幅1~2.5㎝、のど部はわずかに反曲する。舷部は強く内側に曲がり、外面が淡緑色~淡帯黄色、内面は濃緑色、卵形、長さ2.5~8㎝×幅4~9㎝。肉穂花序は両性又は雄性。両性の肉穂花序は雌ゾーンが下部にあり、長さ1~2.2㎝。子房は球形。花柱は明瞭。柱頭は点状。胚珠は3~4個。雄ゾーンは上部にあり、長さ1.5~3.2㎝、融合雄しべ群(synandria)は疎。たまに刺のある中性花をもつ。雄性の肉穂花序は雄ゾーンが長さ3~5㎝×幅3~5mm。融合雄しべ群(synandria)は柄があり、2~3個の葯からなり、各2半葯をもち、先端の隙間から裂開する。肉穂花序は斜上し、S字状(sigmoid)になり、淡帯白色、無柄の基部から細い鋭形の先まで次第に先細になり、長さ20(~30)㎝×基部の直径5~11mm。液果は黄橙色又は赤色、円筒形、長さ約5mm。種子は普通、1個、こん棒形。花期は4~5月。果期は7~9月。2n=168。
品種) 'Baguo(Dancing Crane Cobra Lily )
21 Arisaema ilanense J.C.Wang ピヤナンテンナンショウ
アマミテンナンショウ節
台湾原産。中国名は宜兰南星 yi lan nan xing
22 Arisaema inaense (Seriz.) Seriz. ex K.Sasamura et J.Murata イナヒロハテンナンショウ 伊那広葉天南星
synonym Arisaema ovale Nakai var. inaense (Seriz.) J.Murata
synonym Arisaema amurense Maxim. var. inaense Seriz.
ヒロハテンナンショウ群
日本(岐阜県東部~長野南部)、サハリン、朝鮮に分布。
高さ20~50cm。塊茎はよく子球をつける。葉は1個つき、花序柄が短く花序の高さが葉より低い。小葉は5~7個つき、葉軸は発達しない。仏炎苞や花序附属体の形態が特徴的である。仏炎苞の筒部は長さ4.5~5.5cm、口辺部はやや広く開出し、多少耳垂状になる。舷部は五角状長卵形、長さ8~9cm×幅3.5~5.4cm、紫色で多数の白色の縦条線が目立つ。花序附属体は長さ3~3.5㎝、太く短い円柱形、先端はやや頭状になり、直径7~9mm。花期は5~7月。2n=26。
23 Arisaema ishizuchiense Murata イシヅチテンナンショウ 石鎚天南星
synonym Arisaema nikoense Nakai var. ishizuchiense (Murata) M.Hotta ex Seriz.
ユモトマムシグサ群
日本固有種(四国の石鎚山山系:高知県、徳島県)。ユモトマムシグサによく似ていて、地理的変異とも考えられる。
高さ10~20㎝。葉は1個まれに2個、葉軸は発達せず、やや掌状の鳥足状複葉、小葉は普通5個、まれに6~7個。仏炎苞は内面と外面が紫褐色~緑褐色、白色の条線があり、筒部は長さ4.5~7.5㎝、舷部は長さ6~13c×幅約5㎝になり、前側に垂れ下がり、先は鋭形。花序付属体は太い根棒状で先はやや膨らみ、直径6~10㎜、紫褐色、筒部から突き出る。花期は5月下旬~6月上旬。果期は10月。2n=28。
24 Arisaema iyoanum Makino オモゴウテンナンショウ 面河天南星 (広義)
ヒトツバテンナンショウ群
日本固有種(本州の広島県。山口県、四国の愛媛県・高知県・徳島県)。 24-1 Arisaema iyoanum Makino subsp. iyoanum オモゴウテンナンショウ 面河天南星
synonym Arisaema akiense Nakai アキテンナンショウ
本州(広島・山口県)、四国(高知・愛媛県)に分布する。流沿いの山地の林下に生える。垂れ下がる舷部の外側(上側))が緑色になるのが特徴。
。仏炎苞は花序付属体は棒状で先はやや膨れる。 高さ20~60(80)cm。偽茎は葉柄より長い。葉は1個、鳥足状複葉で葉軸が発達する。小葉は7~15個つき、長円形~狭楕円形、縁は全縁又は細鋸歯があり、先は尖鋭形。花序は垂直に立ってつき、葉の展開後に仏炎苞が開く。仏炎苞は長さ11~20㎝、淡緑白色で、細かい紫色の斑点が幾筋にも入る。舷部の外側(上面)は汚緑色で紫色の斑紋がなく、内側はほぼ紫色、先は初め上向き、後に長く垂れ下がる。花序付属体は円柱状。花序は葉に遅れて開く。花期は5月。2n=28。
24-2 Arisaema iyoanum Makino subsp. nakaianum (Kitag. et Ohba) H.Ohashi et J.Murata シコクテンナンショウ
synonym Arisaema akiense Nakai var. nakaianum Kitag. et Ohba
synonym Arisaema nakaianum (Kitag. et Ohba) M.Hotta
synonym Arisaema iyoanum Makino var. nakaianum (Kitag. et Ohba) Kitag. et Ohba
四国(愛媛県・高知県・徳島県)に分布する。山地の林下に生える。全体に基本種より大きく、仏炎苞が濃紫色~帯紫色。 高さ30~80(100)cm。基準種のオモゴウテンナンショウ A. iyoanum subsp. iyoanum より全体に大きい。偽茎は葉軸の約2~3倍長い。葉は1個、葉軸が発達する。小葉は7~15個。仏炎苞は長さ12~23㎝、濃紫色~赤紫色で、白色の縦縞が目立ち、縁は外曲し、筒の口辺部は耳垂れ状に広く開出する。舷部は幅広く、卵形~広卵状三角形、幅3.5~6㎝、前側に曲がり垂れ下がる。花序付属体は先端がやや膨らんだ根棒状。花期は5月。
25 Arisaema izuense Nakai イズテンナンショウ 伊豆天南星
synonym Arisaema serratum var. izuense (Nakai) Gusman & L.Gusman [Kewscience]
Kewscience、The Plant Listでは変種としている。オオマムシグサの1葉型といわれ、オオマムシグサに含める見解もある。KewscienceではオオマムシグサもArisaema serratumの別品種としている。伊豆半島では変異が大きく、オオマムシグサともカントウマムシグサとも判定できないような個体が多い。
本州(静岡・山梨県)に分布。湿った草地や疎林の林下、林縁に生える。
高さ20〜40cm、時に100cm。偽茎や花序柄は短く、かわりに葉柄が長くなり、植物体の全高の2分の1に達する。鞘状葉や偽茎は淡緑色か淡紫褐色で、班がほとんどない。葉は普通1個(まれに2個)、小葉は7~9(15)個。花序は形状がオオマムシグサに似て、仏炎苞の舷部が長く垂れ下がるが、仏炎苞筒部はほとんど白色を帯びない。仏炎苞は紫褐色で緑色が混じり、舷部は内面に隆起脈があり、やや外曲して前に垂れ下がる。付属体は棍棒状で黄白色から紫白色で紫の班があり、白色になることはほとんどない。花期は5月。
26 Arisaema japonicum Blume マムシグサ 蝮草 (狭義)
synonym Arisaema takesimense Nakai タケシママムシグサ
synonym Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott
synonym Arisaema koshikienseNakai コシキジマテンナンショウ
synonym NakaiArisaema yakusimense Nakai ヤクシマテンナンショウ
synonym Arisaema pseudojaponicum Nakai
synonym Arisaema serratum var. serratum [The Plant List]
マムシグサ群。Iwatsuki, K., Boufford, D.E. & Ohba, H. (2016). Flora of Japan IVb: 1-335. Kodansha Ltd., Tokyo.
(マムシグサ亜群)マムシグサに代表される「早咲き系」の性質を強く示すもの。葉は普通、2枚。花序柄(花梗)は長く、花序は葉より著しく早く開く。仏炎苞は緑または紫色を帯び、両面ともに平滑。九州のマムシグサは変異が大きく、四国のマムシグサは比較的変異が少ない。
日本(四国、九州)、朝鮮に分布。山地の林下、林縁に生える。
高さ30~120cm。低出葉や偽茎部の班は赤紫褐色。葉は2個つく。小葉は9~17個、披針形~楕円形、縁は全縁、細鋸歯がある。まれに葉軸が発達する。花序柄(花梗)は葉柄部とほぼ同長または長い。花序は葉より著しく早く開く。仏炎苞は緑色(四国では緑色が多い)又は淡緑褐色~紫褐色、やや半透明で白色の縦縞がある。舷部は筒部と同長または長く、卵形~狭卵形、鋭頭~鋭尖頭、内面に隆起する細脈がなく平滑。筒の口辺部はやや開出する。花序付属体は直立し、有柄、淡緑色で、棒状~太い棒状。花期は3~4(5)月。果期は9中旬~11月。
27 Arisaema kawashimae Seriz. トクノシマテンナンショウ 徳之島天南星
マムシグサ亜節 群未定 2n=28
日本固有種(徳之島)。別名はホソバテンネンショウ。山地部の林内に生える。
葉は鳥足状複葉。2枚つく。小葉は7~13枚、披針形、先は鋭線形。仏炎苞は淡紫褐色の縞があり、筒部が長く、筒部に上側が徐々にやや広くなり、筒の口辺部は狭く開出する。舷部は前側に筒部の上に曲がり、先は尖鋭形。花序の展開は葉の展開と同時。花期は2~3月。
28 Arisaema kishidae Makino ex Nakai ムロウマムシグサ 室生蝮草
アオテンナンショウ群
日本固有種(本州の愛知県、近畿地方)。別名ははキシダマムシグサ。和名は奈良県室生山に由来する。低山地の林内に生える。
高さ30~50㎝。葉は1~2個と少なく、鳥足状につく。小葉は長さ5~15㎝の倒卵形~長楕円形で、先がとがり、全縁又は鋸歯がある。花序柄(花梗)の長さは性転換に伴って変化し、葉柄に対する長さが雄より雌の方が短い。仏炎苞は汚紫褐色で、細かい斑紋がつく。舷部の先は糸状に長く伸びる。内側にはパピラがなく、ざらつかない。花序の付属体は長さ4.5~8cm、基本的に赤紫褐色で微細な紫斑があり、先端が曲らない。花期は4~6月。果期は11~1月。2n=28。
名前がよく似て混同されることがあるムロウテンナンショウArisaema yamatenseは舷部が短く、先は尖鋭形、内面にパピラがある。
29 Arisaema kiushianum Makino ヒメウラシマソウ 姫浦島草
synonym Flagellarisaema kiushianum (Makino) Nakai
ウラシマソウ節
日本固有種(本州の山口県、九州)。低山地の暗い林下に生える。 高さ30~50㎝。葉は1枚、鳥足状複葉。小葉は7~13枚、狭卵形形~卵形、頂小葉は長さ10~20㎝×幅2~5㎝、先は尖鋭形。花序は葉柄の基部に単生。花序柄は短く、葉柄は長い。花序の仏炎苞は濃紫褐色、白色の縦縞があり、筒部と舷部はほぼ同長。のど部は左右に大きく耳状に張り出し、前から見ると耳部がほぼ円形になる。舷部は筒部を被って前側に曲がり、三角状、先は尖鋭形で垂れる。舷部の内面にはT字形の白紋があるのが特徴。花序付属体はウラシマソウのように糸状に長くなって、突き出し、長さ15~20㎝。2n=56。花期は5月。果期は11月。
品種) 'Kikkou-fu'
30 Arisaema kuratae Seriz. アマギテンナンショウ 天城天南星
synonym Arisaema serratum var. serratum
マムシグサ亜節 群未定 。KewscienceではArisaema serratum var. serratumのsynonymとしている(Gusman, G. & Gusman, L. (2006))。
日本固有種(静岡県伊豆半島)。山地の林下に生える。
高さ15〜30cm。葉は1〜2個、小葉は5〜7枚、葉軸はやや発達する。仏炎苞は紫褐色、または緑色で白い縦条がある。緑色の仏炎苞を持つ個体は全体の1/3ほどである。仏炎苞口辺は狭く反曲し、舷部中央は盛りあがる。付属体は白色で太い棒状。花期は4〜5月。果期は10月。2n=28。
31 Arisaema limbatum Nakai et F.Maek. ミミガタテンナンショウ 耳形天南星
synonym Arisaema limbatum Nakai et F.Maek. var. conspicuum Seriz.
synonym Arisaema undulatifolium Nakai var. ionostemma (Nakai et F.Maek.) H.Ohashi et J.Murata
synonym Arisaema undulatifolium Nakai var. limbatum (Nakai et F.Maek.) H.Ohashi
ヒガンマムシグサ群
日本固有種(本州の東北地方、関東地方、中部地方東部、兵庫県淡路島、四国の沖の島、九州の大分県)。落葉樹林下や林縁に生える。仏炎苞が大きく、暗紫色で、口辺部が耳状に著しく開出する特徴をもつ。br> 塊茎は扁球形。高さ70cm以下。葉は普通、2個、鳥足状複葉、葉柄は短く、葉軸がやや発達する。小葉は7~11個つき、披針形~楕円形、長さ10~17㎝、縁は全縁又はときに微細な鋸歯縁、中脈に沿って白斑が生じることがある。偽茎は長さ4~42cm。葉の展開より前に花序が伸びて仏炎苞が開く。花序柄は花時には葉柄より長い。仏炎苞は黒紫色~紫褐色~黄褐色、まれに緑色、白色の縦縞があり、長さ13~16㎝。仏炎苞の筒部は口辺部が耳状に広く張り出し、これが名の由来である。舷部は卵形、先は鋭形。雌雄偽異株。雄株から雌株に完全に性転換する。花序付属体は長さ6.8~7.7cm×直径3~10mm、棒状~やや棍棒状、先端は太く丸くなり、仏炎苞の筒部から完全に外に出る。花序付属体の柄は長さ約6mm。雌花の子房の中には胚珠が10~16個(四国産は29個)。2n=26。花期は3月中旬~5月。果期は7~8月。
31-1 Arisaema limbatum Nakai et F.Maek. f. viridiflavum Hayashi キイロミミガタテンナンショウ
synonym Arisaema undulatifolium Nakai var. limbatum (Nakai et F.Maek.) H.Ohashi f. viridiflavum H.Ohashi et J.Murata
仏炎苞など全体に着色色素を欠き、花序が黄色~黄緑色になるもの。
32 Arisaema lobatum Engler
中国原産。中国名は花南星 hua nan xing。
品種) 'Mount Emei'
33 Arisaema longilaminum Nakai ヤマトテンナンショウ 大和天南星
synonym Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott
synonym Arisaema sinanoense Nakai
マムシグサ群 br> 日本固有種(中部地方~近畿地方)。基準標本は奈良。林縁などに生える。愛知県の絶滅危惧ⅠB類。 br> 葉は2個。マムシグサに似ているが小葉は細く、苞片の先は長く伸びる。仏炎苞は舷部が狭三角形で細長く伸び、のどぶの縁がほとんど反曲しない。花序附属体が細い。それ以外の性質はオオマムシグサやヤマザトマムシグサに似ている。花はこの類では最も遅く、5月下旬~6月中旬。果期は11月。 2n=28<
34 Arisaema longipedunculatum M.Hotta シコクヒロハテンナンショウ 四国広葉天南星
synonym Arisaema robustum (Engl.) Nakai var. shikokumontanum H.Ohashi
シコクテンナンショウ群:仏炎苞の筒部に隆起条はない。染色体の基本数は14。
日本固有種(本州の山梨県・静岡県、四国、九州)。ヒロハテンナンショウからは花序柄が長いこと、仏炎苞が小さいこと、仏炎苞の筒部に隆起条がないこと。雄花の葯が融合することで容易に区別できる。
全体に小形。塊茎はよく子球をつける。葉は普通、1枚、まれに2枚。小葉は5枚、白斑はなく、縁は全縁または鋸歯縁、葉軸は短い。外側の側小葉は内側のものとほぼ同大のこともあるが、小さいこともある。葉鞘部は長さ25~35cm、ほぼ直立、葉柄全長の1/6~2/3を占め変異が著しいが、一般的には半分よりやや短い程度。葉鞘の先は斜めの切形、普通、広がらない。花序柄は長く、葉鞘内の部分を除いて5~20㎝、概して葉鞘部の短いものは長く、長いものは短い。花序は葉面より低い位置につく。仏炎苞は普通、短く、普通、緑色、筒部は長さ2~4(4.5)㎝、隆起条はない。筒の口辺部は普通ごく狭く開出する。舷部は三角形~三角状長卵形、長さ3.5~5.5(7.5)㎝、先は鋭形又は尖鋭形。雄花の葯は融合し、普通、黄白色。花序付属体は円柱状、先端は直径1.5~4(~6)mm。2n=28 , 56。花期は6月上旬~7月上旬。果期は9月中旬~10月。
34-1 Arisaema longipedunculatum M.Hotta var. yakumontanum Seriz. ヤクシマヒロハテンナンショウ 屋久島広葉天南星
高さ20~40㎝。葉は1枚。小葉は同大、5(~7)枚、狭卵形~長楕円形、中央小葉は小さい株を除き、小葉柄がある。花序柄は長く、偽茎内の部分を除いて5~32㎝、花序は葉面より高い位置につく。仏炎苞はやや大きく、淡緑色、紫色の斑点がある。筒部は長さ3~3.5㎝。舷部は卵形~三角状卵形、長さ4~7.5㎝×幅2.5~3.8㎝。雄花の葯は融合する。花序付属体は太く、直径3~7mm。花期は5月下旬~6月上旬。
35 Arisaema maekawae J.Murata et S.Kakishima ウメガシマテンナンショウ 梅ヶ島天南星
日本固有種(本州の山梨県・静岡県・長野県)。太平洋側の山地の林下、林縁に生える。最近では中国地方に分布する中国型ホソバテンナンショウ(兵庫県・岡山県・島根県・鳥取県・広島県・山口県)と呼ばれてきたものも含めている。 ホソバテンナンショウに近縁。コウライテンナンショウに似るが、仏炎苞の開口部が広く、偽茎が赤色を帯びる点で異なる。 高さ30~80cm。低出葉や偽茎は淡褐色、帯赤色の班が強く、偽茎は長い。葉は2枚、中国地方では1枚のこともある。小葉は7~15枚。仏炎苞は葉よりもやや早く展開し、明るい緑色、白色の条線が目立たない。筒口辺部は耳状に広がらない。舷部は短く、垂れ下がらない。内面は粉白色でしばしばパピラ状の細突起がある。花序付属体は太い棒状、先端がやや膨れるものが多い。花期は4~5月。
36 Arisaema maximowiczii (Engl.) Nakai ツクシマムシグサ 筑紫蝮草
マムシグサ亜節 ヒトツバテンナンショウ群(旧ツクシマムシグサ群)
日本固有種(本州の三重県、九州)。
葉は通常1枚であるが、大形の株ではしばしば2枚になる。小葉は7~19枚。葉軸は比較的よく発達し、長いものではllcmに達する。葉縁は全縁または細鋸歯‘がある。葉鞘部は長さ15~60㎝、葉柄全長の3/5~9/10を占める。花序柄は葉鞘内の部分を除くと短く、普通、1~5cm、まれに15㎝以上。仏炎苞は葉の展開とほぼ同時に開き、緑色又は紫色。筒部は長さ3.5~7cm、口辺部の開出の程度にはかなり変異があり、わずかに開出するだけのものからやや耳垂状になるものまである。舷部は長さ5.5~1.5㎝(先端の尾を含めて)、卵形、前側に曲がり、やや椀状に膨らみ、先端は尾状に長く伸びる。舷部は普通、中央部の基部全体が白色半透明になる(ただし,この白色部が白色の縦条線のものやよく発達して周囲にわずかに緑色又は紫色が残るだけのものもある)。花序附属体は棒状、上半部はときに前側に傾き、先端は直径1~2.5mm。花期は(4)5月中旬~6月上旬。
37 Arisaema mayebarae Nakai ヒトヨシテンナンショウ 人吉天南星
synonym Arisaema serratum (Thunb.) Schott var. mayebarae (Nakai) H.Ohashi et J.Murata
マムシグサ群。仏炎苞が黒紫色で、舷部が盛り上がることが特徴。
日本固有種(九州の熊本県、宮崎県、鹿児島県)。 山地の林下に生える。
高さ50~100㎝。葉は鳥足状複葉、2個、まれに1個。小葉は7~13個つき、狭長楕円形~楕円形、縁は全縁又は鋸歯縁、表面に光沢がある。花序は葉よりも高くなる。仏炎苞は黒色に近い濃紫色でやや光沢があり、白色の細い縦条線がほとんど無い。口辺部は開出し舷部は広卵形。花序付属体は太い棒状で、先端は直径5~15mm、黄白色、下半部が濃紫色。花期は4~5月。
38 Arisaema minamitanii Seriz. ヒュウガヒロハテンナンショウ 日向広葉天南星
マムシグサ亜節 群未定 2n=28
九州に分布する。主として沢沿いの林内に生える。
塊茎は子球をつけない。葉は1枚、小葉は5~7枚、中央の小葉が最も大きい。小葉は白斑がなく、縁は鋸歯縁、又は全縁。葉軸は短く普通1.5cm以下、ときに約4cmになる。偽茎(葉鞘)は斜上し、長さ12~30cm、葉柄全長の2/3~3/4を占める。葉鞘の口辺部は開出し、波状になる。花序柄は短く、葉鞘内の部分を除いて長さ1~4cm。仏炎苞は緑色、筒部は長さ4~6cm、隆起条はなく、口辺部は明瞭に開出するが耳垂状にはならない。舷部は卵形~長卵形、長さ6.5~10.5cm、先端は鋭尖頭、下半部は脈に沿って半透明の白色の条線が目立つ。雄花の葯は紫色、融合しない。花序附属体は円柱状、先端で直径2~7mm。花期は5月旬~下旬。
39 Arisaema minus (Seriz.) J.Murata ハリママムシグサ 播磨蝮草
synonym Arisaema kishidae Makino ex Nakai var. minus Seriz.
日本固有種(兵庫県)。丘陵地~山地の林縁、やや明るい林下に生える。
ヒガンマムシグサ群 2n=26
初めはムロウマムシグサに似ているが、仏炎苞が小さく、紫色味が少なく、舷部先端はほとんど尾状に伸びないことで変種とされた。その後の研究で偽茎が短く、小葉の数が少なく、側小葉が発達せず、胚珠が多いことでヒガンマムシグサ群とされた。
葉は2枚、普通、2枚の葉はほぼ同じ大きさ。偽茎が普通、全高の約1/2と短い。低出葉や葉鞘は淡茶褐色、多少透明感があり、紫褐色の短い条線がまばらにあるものが多い。小葉は5~9枚、側小葉があまり発達せず、葉軸もあまり発達しない。仏炎苞は葉の展開より前に展開する。仏炎苞は緑がかった紫褐色であるが、舷部は半透明で指が透けて見え、短く、内側は平滑。花序付属体は長さ2.7~4.5cm、細い棒状、淡緑色、紫色を帯びることがあっても班はなく、先は少し太く、筒部から突き出る。胚珠数は11個程度とムロウマムシグサより多い。花期は3月下旬~4月。2n=26
40 Arisaema monophyllum Nakai ヒトツバテンナンショウ 一つ葉天南星
マムシグサ亜節 ヒトツバテンナンショウ群
日本固有種(本州の中北部)。愛知県の絶滅危惧ⅠA類。山地の林内に生える。
高さ20~60㎝。塊茎はは扁球形。葉鞘は長さ15~60㎝。葉は鳥足状複葉、普通1枚(まれに2枚)。小葉は 5~9枚、葉軸はときに直角について発達するため互いに離れてつき、楕円形~長楕円形、縁は全縁または細歯状、先は尖鋭形。、仏炎苞は葉の展開と同時に開き、葉とほぼ同じ高さにつき、緑色~白緑色。筒部は長さ 3~5cm、口辺部は狭く開出する。舷部は長三角形、前屈してまっすぐ伸び、長さ 4~8cm 、黄緑色で光沢があり、普通、内面の中央近くに八の字形の濃紫色の斑紋がある。偽雌雄異株。小型の株は花序に雄花だけがつき、大型の株は雌花をつける。花序付属体は棒状、上部は前方に曲がり、先端はやや扁平で幅1.5~3mm。花期は4~6月。2n=26。
40-1 Arisaema monophyllum Nakai f. akitense (Nakai) H.Ohashi アキタテンナンショウ 秋田天南星
synonym Arisaema monophyllum Nakai var. akitense (Nakai) H.Ohashi
synonym Arisaema monophyllum Nakai f. variegatum (Honda) H.Ohashi et J.Murata
ヒトツバテンナンショウの特徴の舷部の内側にある濃紫色の斑紋がないもの。
40-2 Arisaema monophyllum Nakai f. atrolinguum (F.Maek.) Kitam. ex H.Ohashi et J.Murata クロハシテンナンショウ
synonym Arisaema monophyllum Nakai var. atrolinguum (F.Maek.) Sa.Kurata
舷部の内側全体が暗紫色のもの。
41 Arisaema nagiense T.Kobay., K.Sasamura et J.Murata ナギヒロハテンナンショウ 那岐広葉天南星
ヒロハテンナンショウ群
日本固有種(本州の兵庫県、岡山県、鳥取県)。主にネマガリダケが生える温帯林の林縁に生える。 高さ10~40㎝。地下茎に副芽をつけない。葉は鳥足状複葉、普通1枚。小葉は5~7枚、線形~狭披針形、全縁、先は鋭形。偽茎部分を除く葉柄は偽茎部分よりやや長い。花序は葉の展開より早く展開し、花序柄は葉柄より長い。仏炎苞は外側が緑色を帯びた紫褐色。内側は濃紫褐色で光沢がある。筒部は外面に明瞭に隆起する白色の条線があり、口辺部は狭く開出する。舷部は長く、狭三角状卵形、筒部より長い。花序付属体は棒状、仏炎苞筒部からほとんど出ず、紫褐色で先は色が薄く黄色を帯びる。花期は5~6月。果期は10月。2n=26。
42 Arisaema nambae Kitam. タカハシテンナンショウ 高梁天南星
synonym Arisaema undulatifolium Nakai subsp. nambae (Kitam.) H.Ohashi et J.Murata
ヒガンマムシグサ群(ナガバマムシグサ群)
日本(本州の岡山県、広島県)に分布する。山地の林下、林縁に生える。和名は岡山県高梁市に因む。
高さ15〜50cm。花は葉より先に開く。葉は1〜2個、小葉は5〜7枚で葉軸がやや発達する。偽茎と葉柄はほぼ同長。仏炎苞はふつう淡紫色〜紫色で白条は目立たない。稀に淡緑色のものがあり、モエギタカハシテンナンショウ f. viride H.Ikeda, T.Kobay. & J.Murata と呼ばれる。稀と言われるが広島県で観察した個体群は15株中、3株が淡緑色であった。仏炎苞口辺は狭く開出し、反曲する。舷部は先端がしばしば反り返る。花序付属体は棒状。花期は3月中旬~4月。果期は6月中旬~8月。ヒガンマムシグサ群であるが2n=28。ナガバマムシグサ群とする見解もある。
42-1 Arisaema nambae Kitam. f. viride H.Ikeda, T.Kobay. et J.Murata モエギタカハシテンナンショウ
仏炎苞と付属体帯が淡緑色。
43 Arisaema negishii Makino シマテンナンショウ 島天南星
アマミテンナンショウ節
伊豆諸島固有種。
多年草。葉がウラシマソウとは異なり、偽茎があり、偽茎に2枚の葉が対生に近くつき、長い葉柄のある鳥足状複葉。小葉はほぼ円形になるよう7~15個つき、縁に鋸歯があり、先はやや尾状に長く尖る。雌雄偽異株。花序は葉とほぼ同じ高さ~やや高くなる。仏炎苞は緑色、白色の縦筋がある。ウラシマソウによく似ていて、花序付属体2枚つき、の先が釣り糸を垂らしたように長くなる。花期は1~3月。果期は7~8月。
44 Arisaema nikoense Nakai ユモトマムシグサ 湯元蝮草 広義
ユモトマムシグサ群
日本固有種(本州の中部地方以北)。山地~亜高山帯の林内に生える。愛知県の絶滅危惧ⅠB類。
高さ50cmになる多年草。葉は鳥足状複葉、2個又は1個。葉軸は発達しない。小葉は普通5枚、まれに7枚、倒卵形~楕円形、先は尖鋭形、全縁~細鋸歯縁~不揃いのあらい歯がある。花序は葉より先に展開する。仏炎苞は緑色、帯紫色、黒紫色、筒の口辺部はほとんど開出しないか、又は狭く明瞭に開出する。舷部は卵形、付属帯は細い円柱状又棍棒状。花期は5~6月。果期は9月中旬~10月。2n=28。
44-1 Arisaema nikoense Nakai subsp. nikoense ユモトマムシグサ 湯本蝮草
synonym Arisaema nikoense Nakai var. kaimontanum Seriz.
本州(東北地方の北上・阿武隈両山地、北関東から中部山岳地帯)に分布。ユモトマムシグサ群中では最も北東に産し、分布域も広い。 塊茎はよく子球をつける。葉は普通2枚、まれに1枚、第一葉の葉鞘は短く、全高の半分程度である。小葉は普通、5枚,まれに7枚、小葉の間隔は狭く、葉軸は多くの場合2(3)cm以下。中央の小葉は有柄または無柄、内側の側小葉とほぼ同大、まれに、外側の側小葉は内側のものより小さくなる。小葉は縁は全縁又は細鋸歯縁又は粗大な欠刻状の歯がある。花序は葉より先に展開し、花序柄は長く、少くとも花時には葉柄より長い。仏炎苞は普通、緑色、ときに帯紫色(f. kubotae)、筒部は長さ3.5~8cm、口辺部はほとんど開出しないか、又はごく狭く開出する。舷部は卵形、長さ4.5~13cm×幅2.7~6.5cm、基部はあまり狭くならず、先端は鋭形でほとんど尾状にならない。花序付属体は棍棒状、先端は先太になり、直径4~12mm。花期は5月中旬~6月下旬。2n=28
44-1-1 Arisaema nikoense Nakai subsp. nikoense f. kubotae H.Ohashi et J.Murata クボタテンナンショウ
仏炎苞が黒紫色で白条もほとんど入らないもの。
44-2 Arisaema nikoense Nakai subsp. alpicola (Seriz.) J.Murata ハリノキテンナンショウ 針ノ木天南星
synonym Arisaema ishizuchiense Murata subsp. brevicollum (H.Ohashi et J.Murata) Seriz. var. alpicola Seriz.
カミコウチテンナンショウの高山型。
カミコウチテンナンショウより仏炎苞が小さく、花序付属体もより細い。2n=28。
44-3 Arisaema nikoense Nakai subsp. australe (M.Hotta) Seriz. オオミネテンナンショウ 大峯天南星
synonym Arisaema nikoense Nakai f. purpureum Sugim.
synonym Arisaema nikoense Nakai var. australe M.Hotta
伊豆半島(天城山)、紀伊半島(大峯天、大台ケ原)に分布。
全体に小形。葉は普通、1又は2枚。仏炎苞は小さく、筒部の長さ4~5.5cm、舷部は長さ4.5~6.5cm、紫色で白条があり、筒の口辺部は狭く明瞭に開出する。花序付属体は細い円柱状、先端は直径2~4mm。花期は5月中旬~6月中旬。静岡・山梨県境の安倍峠にはユモトマムシグサとの中間型もみられる。2n=28。
44-4 Arisaema nikoense Nakai subsp. brevicollum (H.Ohashi et J.Murata) J.Murata カミコウチテンナンショウ
synonym Arisaema nikoense Nakai var. brevicollum (H.Ohashi et J.Murata) Seriz.
synonym Arisaema ishizuchiense Murata subsp. brevicollum (H.Ohashi et J.Murata) Seriz.
synonym Arisaema ishizuchiense Murata var. brevicollum H.Ohashi et J.Murata
上高地周辺、飛騨山脈南部に点在して分布。
葉が普通、l枚。花序柄が短い。仏炎苞は紫色、筒部は長さ4~6cm、舷部は長さ6~10cm。花序付属体は根棒状、先端は直径5~10mm。花期は5月下旬~6月中旬。2n=28
44-5 Arisaema nikoense var. kainumtanum Seriz.、ヤマナシテンナンショウ
2n=28。
45 Arisaema ogatae Koidz. オガタテンナンショウ 緒方天南星
マムシグサ亜属 群未分類。2n=28。ミクニテンナンショウA. planilaminumの類似種。
日本固有種(九州の宮崎県、熊本県、大分県)。別名はツクシテンナンショウ。山地の林下、谷筋の斜面に生える。 高さ15~30cm。葉は2枚つき、小葉は5~7個と少なく、狭倒卵形、先は尾状に尖り、頂小葉はやや小型。葉軸が発達せず、葉鞘(偽茎)が全高の半分程度である。開花は葉の展開と同時。花序柄が葉柄の半分ほどであるため、仏炎苞が葉の高さとほぼ同じ高さ見える。仏炎苞は緑色、白色の条線は目たたない。花序附属体は太い円柱状、長さは仏炎苞の筒部上端程度か又は短い。花期は4~6月。
46 Arisaema ovale Nakai ヒロハテンナンショウ 広義
ヒロハテンナンショウ群:仏炎苞の苞筒部には明瞭な縦の隆起条がある。染色体の基本数は13。2n=26, 39, 52, 65 , 78。
花序は葉より低い位置につく。
46-1 Arisaema ovale Nakai var. ovale アシウテンナンショウ 芦生天南星
synonym Arisaema amurense Maxim. subsp. robustum (Engl.) H.Ohashi et J.Murata var. ovale (Nakai) H.Ohashi et J.Murata
synonym Arisaema robustum (Engl.) Nakai var. ovale (Nakai) Kitam.
本州の北陸地方西部~近畿地方北部にかけて分布する。標高が比較的低い場所でもみられる。
仏炎苞は大形、黒紫色。花序付属体は棍棒状で太い。花期は4月下旬~6月上旬。
46-2 Arisaema ovale Nakai var. sadoense (Nakai) J.Murata ヒロハテンナンショウ 広葉天南星
synonym Arisaema amurense Maxim. subsp. robustum (Engl.) H.Ohashi et J.Murata, excl. typo et pl. ex Korea
synonym Arisaema robustum Nakai var. abense Sugim.
synonym Arisaema robustum Nakai, excl. basion.
synonym Arisaema amurense Maxim. var. robustum auct. non Engl.
北海道、本州(南関東と近畿地方の大部分を除く)、九州北部に分布。
塊茎はよく子球をつける。葉は普通1枚、鳥足状複葉、ほとんど放射状になることもある。小葉は5~7個。葉縁は金縁、白斑はない。葉軸は短く、長さ2cm以下、ごく短いものもある。中央の小葉は有柄又は無柄、普通内側の側小葉より小さい。外側の側小葉は比較的大きく、しばしば内側のものと同長。偽茎は葉柄全体の長さの1/2~3/4、口辺部は狭く開出し、波状になることが多い。花序柄は葉鞘の中にある部分を除くと短く、普通、1~7㎝。仏炎苞は緑色、ときに淡紫色~紫色、筒部は長さ3.5~6cm、脈の部分が顕著に隆起する(ヒロハテンナンショウ群)。舷部は卵形、光沢があり、長さ4~9cm、先端は鋭頭又はやや鋭尖頭。雄花の葯は通常紫色で融合しない。花序附属体は円柱形、先端で直径2~7mm。2n=26(静岡県、福島県、岩手県), 39, 52, 65 , 78(青森県、北海道)。花期は5月中旬~7月上旬。
47 Arisaema penicillatum N.E.Br. マツダテンナンショウ
synonym Arisaema matsudae Hayata
synonym Arisaema serratum var. serratum [Kewscience]
中国、台湾原産。中国名は画笔南星 hua bi nan xing。
48 Arisaema peninsulae Nakai コウライテンナンショウ 高麗天南星
synonym Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott
synonym Arisaema angustatum Franch. et Sav. var. peninsulae (Nakai) Nakai ex Miyabe et Kudô
synonym Arisaema japonicum Blume var. atropurpureum sensu Kitam, excl. basion.
synonym Arisaema peninsulae Nakai f. convolutum (Nakai) Y.Kim et S.C.Ko
synonym Arisaema serratum var. serratum=Arisaema koidzumianum Kitam. [Kewscience]
マムシグサ群 日本産のコウライテンナンショウが多型でコウライテンナンショウを形態的に規定するのは困難といわれている。Kewscience, GBIFやThe Plant ListではカントウマムシグサArisaema serratum var. serratumのsynonymとしている。
日本、朝鮮、中国原産。中国名は细齿南星 xi chi nan xing。
塊茎は扁球形、直径1.5~5.5㎝。低出葉は3個、帯褐色、紫色の斑点があり、長さ3~10㎝。[日本産は低出葉と偽茎の紫色の斑はあまり目立たない。]葉は2枚。葉柄は長さ35~93㎝。偽茎(鞘部分)は長さ29~77㎝。葉身は鳥足状複葉。小葉は7~17(~23)個。葉軸は頂小葉と側小葉の間や側小葉の間ででよく発達する。小葉は狭楕円形、倒卵状披針形、又は卵状長円形、基部はくさび形、縁は全縁又は鋸歯縁、先は尖鋭形。中央の小葉は小葉柄が長さ1~4㎝、葉身は長さ9~18㎝×幅3.5~9cm、外側は次第に小さくなる。側小葉は中央の小葉から1~4㎝離れ、小葉柄は短いか又は無く、大きさは中央とほぼ同じ。外側の側小葉は無柄で中央の小葉よりかなり小さい。花序柄は直立、長さ30~80㎝。仏炎苞は普通、緑色で白色の縞があるか、又は紫色~暗紫色で帯白色の縞がある。筒部は長さ5~8㎝×幅約1.5㎝、のど部は斜めの切形、ほとんど反曲しない。舷部は内側に曲がり、普通緑色、又は暗紫色、長円形、長さ5~6㎝×幅4~5㎝、先は尖鋭形。肉穂花序は単性。雌ゾーンは長さ1.5~3㎝×幅5~7mm。子房は密、狭卵形。花柱は短い。柱頭は円盤状。雄ゾーンは長さ1~1.5㎝。融合雄しべ群(synandria)は密、無柄。葯は2又は3個。半葯は球形、先端の孔から裂開する。花序付属体は直立、円筒形、長さ3.5~4㎝×幅3~6mm、基部は切形、柄があり、先は鈍形。柄は長さ4~5mm。液果は赤黄色、卵状球形、約・長さ8mm×7mm。種子は2又は3個、黄褐色、直径約4㎜、しわがある。花期は5~6月。熟す果期は9月。2n=28。(Flora of China)
48-1 Arisaema peninsulae Nakai subsp. boreale (Nakai) Seriz. キタマムシグサ
北海道、本州中部山岳地帯、北陸、東北に分布。
仏炎苞が緑色、舷部が盛り上がり、それにともなって半透明の白条が舷部中央で膨らむ。
48-2 Arisaema peninsulae Nakai var. masadanum Seriz アオオニテンナンショウ
大阪府金剛山(葛城山)採取の標本に基づいている。兵庫県にも採取記録がある。
特徴は小型の個体ではしばしば葉が1枚であること、小葉が幅広いこと、仏炎苞の舷部の先が尾状に細まる傾向をもつ。これに似た植物は兵庫県にも広く分布している(三田市の例)が、小葉が特に幅広いということはない。しかし一方では仏炎苞の舷部の先が尾状に細まる傾向はより強くなり、しばしば内巻きする(このため乾燥標本ではアオテンナンショウの小型のものに似てくる)。アオオニテンナンショウは独立の形態群として認められると思われるが、コウライテンナンショウとの区別などについてさらに検討が必要である(参考4 p202)。
49 Arisaema planilaminum J.Murata ミクニテンナンショウ 三国天南星
synonym Arisaema serratum var. serratum
マムシグサ群。 KewsciemceではArisaema serratum var. serratumのsynonym。
日本固有種(本州の関東地方~愛知県)愛知県の絶滅危惧IB類。
カントウマムシグサに似るが仏炎苞の舷部が横に広く、広卵形で平坦であり、ほぼ水平に前に曲がることが特徴である。また、仏炎苞は緑色で中央の白条1本だけが目立つ。
高さ50~70㎝。塊茎は扁球形、上部から多くの根を出す。葉は鳥足状複葉、2個つき、第1葉の葉鞘は長さ25~40cm。葉軸は発達する。小葉は7~13個、狭長楕円形~披針形、縁は全縁または細歯状、先は尖鋭形。花序は葉とほぼ同じ高さにつき、葉の展開よりりやや遅れて開く。仏炎苞は緑色、筒部は長さ5~7cm、口辺部はやや広く開出し、舷部は横に広く広卵形、長さ6~9cm、平坦(平面的でほとんどふくらまず)、ほぼ水平に前に曲がり、白条は中央の1本だけが目立つ。偽雌雄異株で、肉穂花序に、小型の個体は雄花、大型の個体は雌花をつける。花序付属体は円柱状、先端は直径3~6mmである。花期は5~6月。
50 Arisaema pseudoangustatum Seriz. ミヤママムシグサ 深山蝮草 (広義)
マムシグサ群
日本固有種(本州)。標高800m以上の深山の林下に生える。
栄養器官はホソバ系の各種に酷似し、花序なしに識別するのはかなり困難。
50-1 Arisaema pseudoangustatum Seriz. var. pseudoangustatum ミヤママムシグサ 深山蝮草
本州(山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県県、および兵庫県、岡山県、鳥取県)。愛知県の絶滅危惧ⅠB類
高さ35~80cm。塊茎は扁球形。葉は2枚。花は葉より遅れて開く。葉は鳥足状複葉、2枚つく。第1葉の葉鞘は長さ35~80c㎝。小葉は9~15枚、狭長楕円形~披針形、幅が細く、短く、縁は全縁~細歯状、先は尖鋭形。葉軸が発達するが、マムシグサ群としては短い。仏炎苞は葉の展開後に開き、緑色、筒部は長さ5.5~7.5㎝、口辺部はやや広く開出する。舷部は卵形、長さ7~10㎝、基部は幅が広く、しばしば褐色~赤褐色を帯び、半透明または透明感があり、細い白条があり、内面はときに粉白になり、先は尖鋭形。花序付属体は淡緑色、細い棒状、先端は直径1.5~5mm。花期は5~6月。
50-2 Arisaema pseudoangustatum Setiz. var. amagiense Seriz. アマギミヤママムシグサ
伊豆半島に分布する。山地の林下に生える。
高さ20~80cm。花は葉の展開後に展開する。葉は2枚つく。小葉は9~15枚、短いが葉軸がある。仏炎苞の舷部はホソバテンナンショウより長く、内側には顆粒状突起が密生する。付属体は細い円柱状。花期は5月。
50-3 Arisaema pseudoangustatum Setiz. var. suzukaense Seriz. スズカマムシグサ
岐阜県美濃地方北西部~石川県、鳥取県と広範囲に分布する。
葉は2枚つく。葉軸はミヤママムシグサよりよく発達する。小葉は狭楕円形~楕円形、大きい。仏炎苞は葉の展開後に展開する。仏炎苞の筒部は舷部より長く、舷部内面は乳状突起ががあり、白くなる。口辺部は狭く開出する。
51 Arisaema ringens (Thunb.) Schott ムサシアブミ 武蔵鐙
マムシグサ節
日本、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は普陀南星 pu tuo nan xing。英名はCobra Lily。
特徴は次の通り。
1. 小葉は円味を帯びた楕円形又は菱形性楕円形、長さ約15cm×幅約10㎝。
2. 子房は先端が鋭形に尖る。
3. 胚珠は子房内に2個、まれに3個又は1個。
雌雄異株、塊茎は扁球形、直径2~5㎝、低出葉は帯緑色又は帯紫色。葉は2枚つく。葉柄は帯緑色、斑紋は無く、長さ15~35㎝、下部の1/3は鞘で、偽茎になる。葉身は3小葉複葉。小葉は無柄、下面は粉白色、上面は緑色、縁は全縁、先は長い尖鋭形で尾は長さ約2㎝。中央の小葉は卵状披針形~菱状楕円形、長さ16~22㎝×幅10㎝以上、基部はくさび形。側小葉は斜めの卵形、長さ15~18㎝×幅10~13㎝、先は糸状尾形。花序柄は帯緑色、斑紋はなく、葉柄より短く、長さ25㎝以下。仏炎苞は黄緑色~緑色、筒部は外側が黄緑色~緑色、内側は紫赤色で白色又は淡黄緑の条線をもち、円筒形、耳のあるのど部まで次第に開き、長さ3~3.5㎝×幅1~2㎝。舷部は凹面で内側に曲がり、袋状、先は尾状。肉穂花序は単性。雌花ゾーンは円錐形、約・長さ1.8㎝×幅1.2㎝。子房は帯緑色、倒卵形。柱頭はほぼ無柄、直軟毛がある。雄花ゾーンは無柄、円筒形、約・長さ1.5㎝×幅8mm。融合雄しべ群(synandria)はほぼ無柄、葯は2~3個、半葯は球形、先端の孔から裂開する。花序付属体は直立、白色、狭円錐形、長さ2~6㎝×幅5~10mm、基部は切形で柄があり、先は鈍形。柄は長さ3~10mm。果序は直立する。花期は4月。2n=28。
52 Arisaema sachalinense (Miyabe et Kudô) J.Murata カラフトヒロハテンナンショウ 樺太広葉天南星
synonym Arisaema sadoense auct. non Nakai
北海道北部~カラフトに分布する。
ヒロハテンナンショウに似るが、仏炎苞に隆起する縦条がなく、塊茎の腋芽は1節に1個ずつつく。2n=56(4倍体)
53 Arisaema sazensoo (Blume) Makino キリシマテンナンショウ 霧島天南星
マムシグサ亜節 群未定
synonym Arisaema nanum Nakai
日本固有種(九州)。別名はヒメテンナンショウ。山地の林下に生える。
高さ15~40㎝。葉は鳥足状複葉、1枚つく。小葉は5~7(~9)枚つき、卵形~楕円形、先は鋭形~尖鋭形、しばしば中脈に沿いに白斑を生じ、縁は全縁又は粗い鋸歯縁。葉柄は長さ10~25㎝。花序柄は長さ2~6㎝、花序は葉よりも低い。仏炎苞は濃紫色~暗紫色、まれに黄緑色、白い縦条があり、しなやかな革質で厚く大きい。筒部は上側が次第に広くなった円筒形、口辺部の縁は反曲しない。舷部は三角状長卵形、初め斜上し、後に前に丸く曲がり、先は長い尖鋭形~尾状、垂れ下がる。花序付属体はやや太い棒状で、先はしばしば黄白色になる。花期は4~5月。2n=28。
53-1 Arisaema sazensoo (Buerger ex Blume) Makino f. viride Sugim. ミドリテンナンショウ
54 Arisaema seppikoense Kitam. セッピコテンナンショウ 雪彦天南星
セッピコテンナンショウ群 2n=26
日本固有種(本州の兵庫県)。山地の林内や湿った岩場に生える。
雌雄異株。高さ20~50㎝。葉は鳥足状複葉、1(まれに2)枚つく。小葉は5~9枚つき、披針形~狭長卵形、全縁、先はやや長い尖鋭形、外側の小葉は小さくなる。葉軸はあまり発達しない。花序柄は雄株が長さ1~2(5)cm、雌株は長さ7~11(15)㎝になる。仏炎苞は紫褐色、まれに黄緑色、白条が目立ち、筒部は上部が次第に幅広になり、口辺部は開出しない。舷部は筒部より普通は長く、狭卵形~三角状卵形、先は長い尖鋭形、ときに尾状に長く伸びる。花序付属体は棒状~細い棒状、長さ2~3.5cm、直径1~2mm、円頭又はやや膨れる。花期は5~6月。
55 Arisaema serratum (Thunb.) Schott カントウマムシグサ 関東蝮草
synonym Arisaema koidzumianum Kitam. トウゴクマムシグサ
synonym Arisaema serratum f. viridescens (Nakai) T. Koyama 緑色のカントウマムシグサ
synonym Arisaema serratum var. ionochlamys Nakaj ムラサキマムシグサ synonym Arisaema hakonecola Nakai[カミヤマテンナンショウ=ムラサキマムシグサ]
マムシグサ節 マムシグサ群(遅咲きカントウマムシグサ亜群)
日本(本州、四国、九州[南九州を除く)、千島列島、朝鮮、ロシア原産。普通に見られ、極めて変異に富む。
高さ30~120㎝。雌雄偽異株で、雄株から雌株に転換する。偽茎部は長く、葉柄部はかなり短い。葉は鳥足状複葉、2(又は1)個つく。葉軸は発達する。小葉は7~17個、長楕円形、先は鋭形、縁は全縁、ときに鋸歯がある。花序柄は葉柄とほぼ同長か又は長い。仏炎苞は葉と同時または遅れて展開する。仏炎苞は普通、葉の上に位置する。仏炎苞は紫褐色~緑色で白色の縦縞(白筋)がある。仏炎苞の筒口辺部はやや開出(~広く外曲)する。舷部は卵形、先は次第に細くなり、長く尖り、内面に隆起する細脈が著しい。花序付属体は有柄、棒状、時に太い棍棒状~頭状。花期は4~6月。(日本産テンナンショウ属図鑑:邑田仁等著、北隆館、2018年)
カントウマムシグサの基準標本産地は箱根とされている。基準標本(狭義)の特徴は、小葉の縁に細鋸歯があること、花序付属体の先がこん棒状(頭状)に肥大することである。このような特黴を含め、基準標本によく一致するような個体は関東平野の山林を中心に埼玉県、東京都、群馬県、茨城県、千葉県、神奈川県で採集されているが、細鋸歯の有無、花序付属体の肥大の程度には変異がある。関東地域のこのような特徴を持つものは花序が葉よりも明らかに遅く展開する。葉は普通、2枚、葉軸は発達する。
現在ではカントウマムシグサを広義にとらえ、ムラサキマムシグサ(仏炎苞が紫色のカントウマムシグサ)、アオマムシグサ(仏炎苞が緑色のカントウマムシグサ)、トウゴクマムシグサなどを含めて変異の多いものとし、分布域も広いものとされている。カントウマムシグサはマムシグサ節に属し、子葉が3小葉で、胚珠数が少ない(4.1~7.9)ペダティセクタ亜節(subsect. Pedatisecta)の中のマムシグサ群に分類されている。マムシグサ群には早咲きのものと遅咲きのものがあり、マムシグサ(Arisaema japonicum)は早咲きであり、カントウマムシグサは遅咲きである。マムシグサ群に属す他種もいくつかあるが、コウライテンナンショウやヤマトテンナンショウなどはKwscienceやThe Plant Listではカントウマムシグサのsynonymとされている。
以下はKewscienceが変種としているもの。
55-1 Arisaema serratum var. atropurpureum Engl. オオマムシグサ
synonym Arisaema peninsulae f. atropurpureum (Engl.) Y.C.Chu & D.C.Wu
synonym Arisaema takedae Makino オオマムシグサ
北海道南部、本州に分布。
仏炎苞は幾分か黒紫色または全体に黒紫色を帯び、小葉は全縁であるもの。
var. atropurpureumは正式に発表されているが、相当する標本がどれか明確には指示されてなく、新たにタイプを選定する必要がある。
55-2 Arisaema serratum var. izuense (Nakai) Gusman & L.Gusman イズテンナンショウ 伊豆天南星
synonym Arisaema izuense Nakai イズテンナンショウ 伊豆天南星
55-3 Arisaema serratum var. suwoense (Nakai) H.Ohashi & J.Murata ヤマグチテンナンショウ 山口天南星
synonym Arisaema suwoense Nakai
山口県に分布する。Kewscienceではvar. suwoense を認めている。
イズテンナンショウに似ているが、仏炎苞筒部や花序附属体が白色を帯びる。仏炎苞が葉よりも著しく遅れて開く遅咲き系統。
基準標本では偽茎と葉柄がほぼ等長、花茎ははるかに短く、普通、葉は7裂するし、仏炎苞の舷部は筒部よりも長い。
55-4 Arisaema serratum var. serratum カントウマムシグサ
synonym Arisaema serratum (Thunb.) Schott
日本、千島列島、朝鮮、ロシアに分布。
Kwscienceのsynonym
synonym Arisaema amplissimum Blume (Blume 1835 )詳細不明種.
synonym Arisaema boreale Nakai [キタマムシグサ]
synonym Arisaema capitellatum Nakai(1918) [コウライテンナンショウ異名]
synonym Arisaema convolutum Nakai[異名]
synonym Arisaema hakonecola Nakai [カミヤマテンナンショウ=ムラサキマムシグサ]
synonym Arisaema hatizyoense Nakai[ハチジョウテンナンショウ]
synonym Arisaema koidzumianum Kitam. [オオミミテンナンショウ=トウゴクマムシグサ]
synonym Arisaema latisectum Blume (Blume 1835 )小葉は6枚[異名]
synonym Arisaema longilaminum Nakai [ヤマトテンナンショウ]
synonym Arisaema niveum Nakai(1934)[異名]
synonym Arisaema peninsulae Nakai [コウライテンナンショウ]
synonym Arisaema peninsulae f. alba Vasak & E.M.Egorova
synonym Arisaema peninsulae f. convolutum (Nakai) Y.S.Kim & S.C.Ko
synonym Arisaema planilaminum J.Murata [ミクニテンナンショウ]
synonym Arisaema proliferum Nakai [異名]
synonym Arisaema sinanoense Nakai [カルイザワテンナンショウ]
synonym Arisaema solenochlamys Nakai ex F.Maek. [ヤマジノテンナンショウ]
synonym Arisaema speirophyllum Nakai [異名]
synonym Arisaema speirophyllum subsp. boreale (Nakai) Govaerts [キタマムシグサ異名]
The Plant Listのsynonym
synonym Arisaema amplissimum Blume [オオマムシグサ]
synonym Arisaema angustatum Franch. & Sav. [ホソバテンナンショウ]
synonym Arisaema angustatum f. integrum Nakai
synonym Arisaema angustatum var. peninsulae (Nakai) Nakai ex Miyabe & Kudô
synonym Arisaema angustifoliatum (Miq.) Nakai [ナガハシマムシソウ]
synonym Arisaema angustifoliatum var. holophyllum Nakai
synonym Arisaema angustifoliatum var. integrifolium Nakai
synonym Arisaema angustifoliatum var. serratifolium Nakai
synonym Arisaema boreale Nakai[キタマムシグサ]
synonym Arisaema capitellatum Nakai[コウライテンナンショウ異名]
synonym Arisaema hakonecola Nakai[カミヤマテンナンショウ=ムラサキマムシグサ]
synonym Arisaema hatizyoense Nakai[ハチジョウテンナンショウ]
synonym Arisaema japonicum Blume[マムシグサ]
synonym Arisaema japonicum var. angustifoliatum Miq.
synonym Arisaema japonicum var. latisectum (Blume) Miq.
synonym Arisaema japonicum var. yasuii Sugim.
synonym Arisaema koidzumianum Kitam.[オオミミテンナンショウ=トウゴクマムシグサ]
synonym Arisaema koshikiense Nakai[コシキジマテンナンショウ]
synonym Arisaema longilaminum Nakai[ヤマトテンナンショウ ]
synonym Arisaema niveum Nakai (1934)
synonym Arisaema niveum var. viridescens Nakai(1934)
synonym Arisaema peninsulae Nakai[コウライマムシグサ]
synonym Arisaema peninsulae f. alba Vasak & E.M.Egorova
synonym Arisaema peninsulae f. atropurpureum (Nakai) Y.C.Chu & D.C.Wu
synonym Arisaema peninsulae var. atropurpureum Nakai
synonym Arisaema peninsulae var. attenuatum Nakai ex F.Maek.
synonym Arisaema peninsulae var. caespitosum Nakai
synonym Arisaema peninsulae f. convolutum (Nakai) Y.S.Kim & S.C.Ko
synonym Arisaema peninsulae f. variegatum Nakai
synonym Arisaema planilaminum J.Murata [ミクニテンナンショウ]
synonym Arisaema proliferum Nakai
synonym Arisaema pseudojaponicum Nakai [=マムシグサの異名]
synonym Arisaema pseudojaponicum f. serratifolium Nakai
synonym Arisaema serratum var. atropurpureum Engl.
synonym Arisaema serratum f. blumei Makino
synonym Arisaema serratum var. blumei (Makino) Engl.
synonym Arisaema serratum var. euserratum Engl.
synonym Arisaema serratum f. integrum Nakai
synonym Arisaema serratum var. ionochlamys Nakai
synonym Arisaema serratum f. ionochlamys (Nakai) T.Koyama
synonym Arisaema serratum f. japonicum (Blume) Makino
synonym Arisaema serratum var. japonicum (Blume) Y.Yabe
synonym Arisaema serratum var. latisectum Miq.
synonym Arisaema serratum f. thunbergii Makino
synonym Arisaema serratum var. viridescens Nakai
synonym Arisaema serratum f. viridescens (Nakai) T.Koyama
synonym Arisaema sinanoense Nakai [カルイザワテンナンショウ]
synonym Arisaema solenochlamys Nakai ex F.Maek. [ヤマジノテンナンショウ]
synonym Arisaema speirophyllum Nakai
synonym Arisaema takedae Makino [オオマムシグサ]
synonym Arisaema takesimense Nakai[タケシママムシグサ=マムシグサの異名]
synonym Arisaema yakushimense Nakai[ヤクシママムシグサ=マムシグサの異名]
広義のArisaema serratum
(Ohasi & Murata 1980)1 Arisaema angustatum Franch. & Sav. [ホソバテンナンショウ]
2 Arisaema hatizyoense Nakai[ハチジョウテンナンショウ]
3 Arisaema japonicum Blume[マムシグサ]
synonym Arisaema koshikiense Nakai[コシキジマテンナンショウ]
synonym Arisaema pseudojaponicum Nakai[マムシグサの異名]
synonym Arisaema yakushimense Nakai[ヤクシママムシグサ=マムシグサの異名]
synonym Arisaema amplissimum Blum
4 Arisaema longilaminum Nakai [ヤマトテンナンショウ]
synonym Arisaema sinanoense Nakai [カルイザワテンナンショウ]
5 Arisaema mayebarae Nakai [ヒトヨシテンナンショウ]
6 Arisaema peninsulae Nakai [コウライテンナンショウ]
synonym Arisaema boreale Nakai[キタマムシグサ]
synonym Arisaema proliferum Nakai[異名]
synonym Arisaema speirophyllum Naka[異名]
7 Arisaema planilaminum J.Murata [ミクニテンナンショウ]
8 Arisaema serratum (Thunb.) Schott [カントウマムシグサ]
synonym Arisaema capitellatum Nakai[コウライテンナンショウ異名]
synonym Arisaema niveum Nakai[異名]
synonym Arisaema hakonecola Nakai[カミヤマテンナンショウ]
synonym Arisaema koidzumianum Kitam.[トウゴクマムシグサ ]
9 Arisaema solenochlamys Nakai ex F.Maek. [ヤマジノテンナンショウ]
10 Arisaema suwoense Nakai [ヤマグチテンナンショウ]
11 Arisaema takedae Makino [オオマムシグサ]
synonym Arisaema izuense Nakai [イズテンナンショウ]
.........ツクシマムシグサ群 Group of Maximowiczii (Serizawa 1982)........
12 Arisaema maximowiczii (Engl.) Nakai [ツクシマムシグサ]
ssp. maximowiczii
ssp. tashiri (Kitam.)Serizawa [タシロテンナンショウ]=ツクシヒトツパテンナンショウ
13 Arisaema unzense Serizaw [ウンゼンマムシグサ]
.........ムロウテンナンショウ群 Group of Yamatense (Serizawa 1980)........
14 Arisaema yamatense (Nakai) Nakai [ムロウテンナンショウ]
subsp. yamatense
subsp. sugimotoi (Nakai) H.Ohashi et J.Murata [スルガテンナンショウ].
14 Arisaema abei Seriz. [ツルギテンナンショウ].
.........ヒトツバテンナンショウ群 Group of momophyllum........
15 Arisaema monophyllum Nakai [ヒトツバテンナンショウ]
16 Arisaema iyoanum Makino [オモゴウテンナンショウ]
.........アオテンナンショウ群 Group of tosaense........
17 Arisaema tosaense Makino [アオテンナンショウ]
18 Arisaema kishidae Makino ex Nakai [ムロウマムシグサ]
マムシグサ、カントウマムシグサ、コウライマムシグサの比較
Kewscienceではマムシグサ(Arisaema japonicum)を独立種とし、オオテンナンショウを変種としているが、コウライマムシグサはKewscienceではカントウマムシグサのsynonyuとされている。次表で比較した。
和名 | マムシグサ | カントウマムシグサ | コウライマムシグサ |
---|---|---|---|
学名 | Arisaema japonicum Blume | Arisaema serratum (Thunb.) Schott | Arisaema peninsulae Nakai |
分布 | 四国、九州 | 本州、四国、九州(南九州を除く) | 本州(中部以西)、四国、九州 |
高さ ㎝ | 30~120cm | 30~120cm | 30~80cm |
偽茎 | 偽茎部は葉柄よりはるかに長 い | 偽茎部は葉柄より長い | 偽茎部は葉柄より長い |
偽茎の蝮模様 | 赤褐色で明瞭なものが多い | 不明瞭なものも多く、明瞭なものもある | 帯褐色~帯紫色の班がある |
葉の数 | 普通2枚 | 普通2(1)枚 | 普通2枚 |
小葉の数 | 9~17個 | 7~17個 | 7~17個 |
小葉の形 | 披針形~楕円形 | 卵状長楕円形~長楕円形 | 長楕円形~楕円形 |
花期 | 3月中旬~4月 | 5月~6月 | 4月~6月 |
開花順序 | 花序は葉身より明らかに早く展開 | 花序は葉と同時または遅れて展開 | 花序は葉身より明らかに遅く展開 |
花序の高さ | 葉より高く、突き出る | 葉の高さと同程度 | 葉の高さと同程度又は高く、突き出る |
仏炎苞の色 | 淡緑褐色から紫褐色、ときに緑色 | 主に紫褐色または緑色 | 普通、緑色、ときに帯褐色 |
舷部内面 | 隆起する細脈がない | 隆起する細脈が著しい | 隆起する細脈がある |
花序付属体 | 淡緑色、棒状~太い棒状 | 棒状、ときに太い棍棒状~頭状 | 棍棒棒形、仏炎苞筒部から先が上へ長く突き出る |
果期 | 9月中旬~11月 | 10月 | 10月~11月 |
カントウマムシグサに含められた種
(1) Arisaema hakonecola Nakai カミヤマテンナンショウ=ムラサキマムシグサ
synonym Arisaema serratum var. ionochlamys Nakaj ムラサキマムシグサ
北海道南部、本州、四国、九州に分布。シイ・カシ帯からブナ帯の林縁、林床に生える。
高さ30~100cm。偽茎は長い。葉は2個、小葉は11〜17枚で、葉軸は湾曲または回旋する。花の位置は葉面と同じ高さか低い。仏炎苞は暗紫色。筒部口辺はやや広く反り返る。舷部は前に曲がって、筒口部を被う。舷部内面は隆起する細脈が目立つ。花序付属体は太い棒状~棍棒状で、先が頭状になる。花期は5〜6月。
品種) 'Fuji'
(2) Arisaema koidzumianum Kitam. トウゴクマムシグサ(カントウマムシグサ) 東国蝮草
日本本州(北海道、中部内陸地、東北南部、近畿地方西部)、朝鮮、サハリン原産。広義のカントウマムシグサ
高さ30~60㎝。葉は2個、小葉は長さ15~25㎝の長楕円形、7~9個つく。仏炎苞は緑色~紫色、筒部は長さ5~6㎝、筒口部は少し曲がって耳状となる。舷部はあまり長くならず、長さ6~8㎝。仏炎苞の中にある付属体は先端が太くならずまっすぐな棒状、直径3.5~8㎜、頭状にならない。花期は4~6月
56 Arisaema sikokianum Franch. et Sav. ユキモチソウ 雪餅草
マムシグサ亜節 群未確定
日本固有種(本州の三重県・奈良県、四国)。英名はJapanese cobra lily。非常に強いきのこ臭を放出する。
高さ20~30㎝。塊茎は扁球形、子球が多数つく。葉は鳥足状複葉、2枚、互生し、ほぼ同大。偽茎は葉柄の長さの1~1.5倍。小葉は3~5枚、楕円形~狭楕円形~針形、先は尖鋭形、全縁または鋸歯縁。葉軸はやや発達する(6~30mm)。花序柄の長さは葉柄とほぼ同長~より短い。仏炎苞は外面が紫褐色で白条があり、表面は平滑。筒部は倒円錐状、口辺部は開出するが、反曲しない。仏炎苞面及び口辺部は付近は黄白色。舷部は長さ7~12cm、三角状狭卵形、筒部より長く(1.4~2.4倍〕、先端は細く尾状になり、内巻きし、内面の上部がしばしば帯紫色になる。花序付属体は白色、太い棒状で 先端は頭状に膨らみ、直径17~25mm。花期は5~6月。2n=28。
品種) 'Silver Center'
56-1 Arisaema sikokianum Franch. et Sav. x A. tosaense Makino ユキモチアオテンナンショウ
56-2 Arisaema sikokianum Franch. et Sav. x A. yamatense (Nakai) Nakai ムロウユキモチソウ
ユキモチソウとムロウテンナンショウ(A. yamatense)との自然交雑種。
偽茎の長さは葉柄の1.5~-2倍。小葉は5~7個。仏炎苞は紫褐色で白条があり、口辺部付近は白緑色。花序付属体は白色、緑色を帯び、太い梶棒状、直径6~15mm。
50 Arisaema solenochlamys Nakai ex F.Maek. ヤマジノテンナンショウ 山路の天南星
synonym Arisaema serratum (Thunb.) Schott
synonym Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott
マムシグサ群 KewscienceではArisaema serratumのsynonym
日本固有種(中部地方~関東地方)。仏炎苞はヤマザトマムシグサに比べて小さく、やや著しくもり上がり、光沢がなく、内面の縦条はあまり目立たない。
高さ30~80cm。葉は2個、小葉は7~15個、長楕円形、縁にしばしば細鋸歯がある。葉軸は発達する。仏炎苞は外面が淡色(緑色~淡紫褐色)。筒部はやや太く、筒口辺部はあまり開かない。舷部は短く、三角状広卵形、やや著しくもり上がりドーム状に膨らみ、普通、外面が緑色、内面は帯赤褐色で白条があまり目立たず、ときに緑色。付属体は棒状、舷部に隠れて見えにくい。仏炎苞は葉の展開の後に開く。花期は5~6月。
51 Arisaema speciosum (Wallich) Martius ex Schott & Endlicher,
中国、インド、ブータン、ネパール原産。中国名は美丽南星 mei li nan xing。英名はcobra lily。 品種) 'Himalayan Giant'
52 Arisaema sugimotoi Nakai スルガテンナンショウ 駿河天南星
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai subsp. sugimotoi (Nakai) H.Ohashi et J.Murata (1980)
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai var. intermedium Sugim.
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai var. sugimotoi (Nakai) Kitam.(1942)
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai var. sugimotoi (Nakai) Kitam. f. variegatum Sugim.(1967)
ムロウテンナンショウ群
日本固有種(東海地方)。別名はエンシュウテンナンショウ。ムロウテンナンショウの亜種 A. yamatense subsp. sugimotoi とされていたが、DNA系統解析の結果、別種に変更された(2018)。
多年草、高さ30~60㎝。地中の球茎は扁球形。葉は2個つき、1個の葉は明瞭に小さい。小葉は7~17個つく。偽茎にはムラサキマムシグサと同じような模様がある。仏炎苞は淡緑色、白い縦筋があり、内側には細かい乳頭状突起が密生し、先が尖る。仏炎苞の中に肉穂花序があり、多数の花がつき、上部に付属体がある。普通は雌雄異株。栄養状態で変化し、大きくなると雌株になり、小さいと雄株となる。両性のときもあり、仏炎苞を上から覗くと確認でき、雄花は仏炎苞の筒部の基部に隙間がある。花序付属体は淡緑色、太く、先端が細くなり、前にやや曲がり、大きく膨らみ鍵状にくびれる(花序付属体の形状が異なり、先がやや前に曲がらないでふくらむだけのものもみられる)。果実は液果、多数つき、直径5~8㎜のやや歪んだ球形、秋に橙色に熟す。種子はほぼ白色、長さ3~3.5㎜の球形~丸みのある4稜形、果実に1~4個入る。花期は3~4月。2n=28。
53 Arisaema taiwanense J.Murata ナガヒゲウラシマソウ
台湾原産。中国名は蓬莱南星 peng lai nan xing
53-1 Arisaema taiwanense J.Murata var. brevipedunculatum J.Murata ダイブウラシマソウ
台湾原産。中国名は短梗蓬莱南星 duan geng peng lai nan xing
54 Arisaema takedae Makino オオマムシグサ 大蝮草
synonym Arisaema japonicum Blume var. atropurpureum (Engl.) Kitam. [Ylist]
synonym Arisaema serratum var. atropurpureum Engl. [Kewscience]
synonym Arisaema peninsulae f. atropurpureum (Engl.) Y.C.Chu & D.C.Wu
synonym Arisaema serratum auct. non (Thunb.) Schott
synonym Arisaema serratum var. serratum . [The Plant List]
synonym Arisaema serratum (Thunb.) Schott subsp. amplissimum (Blume) Kitam., excl. typo
マムシグサ群 愛知県の絶滅危惧Ⅱ類。遅咲き系(葉が完全に展開してから花序が展開し始める。)。
日本固有種(北海道、本州各地に点々と分布)
多年草。塊茎は扁球形、いくつかの子球をつけ(ただし愛知県のものはほとんどつけない)、上部から多くの根を出す。偽茎は植物体の全高に対して変異が大きく、しばしば全高の2分の1程度まで短くなる(とくに小型の雄個体ではこの傾向がある)。偽茎の斑は通常発達しない。葉は2枚、第1葉の葉鞘は長さ40~80cm。小葉は7~15個(小葉の数は一般に多く、特に陽地に生えるものでは数多くて葉軸が上方に巻き上がって立体的に配列する。)、楕円形~長楕円形、縁は全縁(愛知県では細かい歯状のあるものもある)、先は尖鋭形。葉軸は発達する。仏炎苞は葉より著しく遅れて(愛知県ではやや遅れて)開き、葉より高くなり、幅広く大型、紫色。筒部は太く倒円錐状、長さ5.5~8㎝、雄花序では筒部が上に開く傾向が強く、口辺部はやや広く開出し、舷部の基部から筒部にかけて白色を帯びる。舷部はしばしば筒部より長く長さ10~20cm、垂れ下がり先端は尖鋭形、通常紫褐色で内面には著しい縦皺がある。偽雌雄異株。雄花をつける株は小型、雌花をつける株は大型。花序付属体は太棒状~棍棒状、普通黄白色、しばしば白色で目立ち、先端は直径8~15mm。花期は5~6月。2n=28(参考4及びレッドデータブック愛知参照)。
55 Arisaema tashiroi Kitam. タシロテンナンショウ 田代天南星
synonym Arisaema maximowiczii (Engl.) Nakai subsp. tashiroi (Kitam.) Seriz.
マムシグサ亜節 群未定
日本固有種(九州の宮崎県、鹿児島県)。別名はツクシヒトツバテンナンショウ。葉が2個つき、うち1個が著しく小さいのが特徴。山地の林下に生える。
高さ30~70cm。葉は2個つき、第2葉は第1葉に比べ著しく小さい。第1葉の葉鞘は長さ35~50㎝。偽茎は葉柄より長い。小葉は7~11個つき、長楕円形、長さ5~18㎝、縁は細鋸歯があるか又は全縁、先は尖鋭形。葉軸が発達する。花序柄は長さ5~10㎝、葉柄より短い。仏炎苞は葉の展開より後に開き、下部の約2/3が筒部になり、緑白色~黄緑色、まれに一部紫褐色を帯び、白色の縦縞が目立つ。筒の口辺部は狭く開出する。舷部の先は内側にほぼ水平に曲がり、短く、三角状。花序付属体は有柄、基部が太く先は細い棒状、上部でやや前に傾くことが多く、長さ6~7㎝、先の直径約1mm。花期は4~6月。2n=28。
56 Arisaema ternatipartitum Makino ミツバテンナンショウ 三葉天南星
マムシグサ節 A. sect. Pistillata
日本固有種(本州の静岡県・山口県、四国、九州)。ブナ帯林下の岩礫の多い斜面地に生える。 高さ15~30(50)cm。開花後、走出枝を出し、子球をつける。低出葉は2~3枚。偽茎と葉柄はほぼ同長。葉は2個つき、3小葉複葉。小葉は卵形、細鋸歯があり、小葉柄は無く、先は鋭形。花序柄(偽茎部分は除く)は長さ7~17㎝。仏炎苞は9~15㎝、淡褐色~赤褐色、下部の半分が筒状になり、筒の口辺部は広い耳状になり、ミミガタテンナンショウによく似る。舷部は長楕円状三角形、前側に曲がり、先は鋭形。花序付属体は棒状。花序は葉より先に展開する。肉穂は長さ4~8㎝。花期は4〜5月。
57 Arisaema thunbergii Blume ウラシマソウ 広義
ウラシマソウ節(sect. Flagellarisaema)
日本、朝鮮、台湾原産。
57-1 Arisaema thunbergii Blume subsp. thunbergii ナンゴクウラシマソウ 南国浦島草
日本(本州の広島県、山口県、四国、九州)、朝鮮に分布する。
花序付属体の基部にしわがある。ウラシマソウは平滑。
高さ40~50㎝。葉は鳥足状複葉、普通、1枚。小葉は11~17枚、水平に広がり、広披針形、しばしば、中脈に白班がある。。紫色の仏炎苞から長い付属体が出て先端は垂れ下がり花期は4~6月。
57-1-1 Arisaema thunbergii Blume subsp. thunbergii f. viride Hatus. ミドリナンゴクウラシマソウ
57-2 Arisaema thunbergii Blume subsp. autumnale J.C.Wang, J.Murata et H.Ohashi タイワンウラシマソウ
台湾原産。中国名は东台南星 dong tai nan xing。
雌雄異株。塊茎は扁球形、直径3~6㎝。低出葉は帯紫色~帯褐色、膜質、先は微突形、葉は単生。葉柄は円柱形、長さ25~50㎝、下部は偽茎を作る。葉身は鳥足状複葉。小葉は11~15個、倒披針形~楕円形、基部はくさび形、先は尖鋭形。中央の小葉は長さ10~28㎝×幅2~7.5㎝。花序柄は普通、葉柄より短く、長さ15~35㎝。仏炎苞は白色又は淡黄色で暗紫色~ブロンズ紫色~赤紫色の縞がある。筒部は外側に白色または淡黄色で縦に紫色の縞があり、内側に暗紫色の縞があり、円筒形、のど部に耳があり、長さ5~7㎝×幅2~2.5㎝。舷部は三角状卵形、長さ7~10㎝×幅4~5㎝、先は鋭形~尖鋭形。肉穂花序は単性。雌ゾーンは円筒気、長さ1.5~2㎝。雄ゾーンは長さ3~4㎝。融合雄しべ群(synandria)は柄があり、4葯からなる。半葯は側部の隙間から裂開する。花序付属体は仏炎苞から長く突き出し、糸状、長さ40~60㎝、下部は細い円筒形、平滑、両端で次第に細くなりい、上部は下向きに曲がり、垂れ下がる。花期は5~7月。
57-3 Arisaema thunbergii Blume subsp. geomundoense S.C.Ko
朝鮮に分布。花序付属体の色としわのあること、基部が太くなることが異なる。(Sung Chul Ko and others 2006)
高さ25~100㎝。塊茎は扁球形。葉は1~2個、互生する。葉柄はほぼ直立、円柱形、長さ28~60㎝。小葉は9~18個、披針形~線形、先は尖鋭形、頂小葉は長さ10~50㎝×幅3~10㎝、側小葉は長さ5~40㎝×幅1~10㎝。花序柄は単生、長さ8~30㎝。仏炎苞は卵形、先が尖り、長く先細になって、先が肉穂花序を超え、縁が外側に巻き、暗紫色で内側に帯緑色の脈がある。仏炎苞の筒部は長さ9~12㎝×直径3.5~6㎝、白紫色で、帯紫色の縞と斑点がある。肉穂花序は単性の花をつく、まれに同一花序に雄花と雌花をつける。雄花部分は上部に雌花部分は下部になる。花序付属体はむち形(whip-shaped)、長さ30~60㎝、暗紫色~緑紫色、付属体の基部の太い部分は長さ4~10㎝×幅5~20mm、しわがあり、暗紫色~鮮紫色。果実は液果。種子は卵状球形。花期は4~5月。
57-4 Arisaema thunbergii Blume subsp. urashima (H.Hara) H.Ohashi et J.Murata ウラシマソウ 浦島草
synonym Arisaema urashima H.Hara var. giganteum Konta
synonym Arisaema urashima H.Hara
日本(北海道南部、本州、四国、九州)に分布する。
高さ40~50㎝。地下に塊茎=球茎(corm)がある。成熟して開花する株の葉は1枚、葉柄は太く、花序柄より高く直立する。小葉は11~15枚。葉柄の基部が鞘状になった偽茎となっている。偽茎から花茎を直立し、暗紫色の仏炎苞をつける。仏炎苞の中に多数の花をつけた肉穂花序があり、花序の延長部(付属体)が仏炎苞の外に外に出て高く立ち上がり、先が細くなって垂れ下がる。雌雄異株であり、雄花から雌花へ転換することもある。雄株の仏炎胞の基部には虫が出られるように隙間がある。雄花は2~5個の雄しべだけからなり、雌花は緑色の球形の子房がある。果実は朱赤色に熟す。2n=28
品種) Aonourashimasou' , 'Silver Seas'
58 Arisaema tortuosum (Wallich) Schott
Arisaema sect. Tortuosa (Engler) H. Hara
中国、インド、ブータン、ネパール原産。中国名は曲序南星 qu xu nan xing。英名はwhipcord cobra lily。
品種) 'Black Rod' , Sw 861
59 Arisaema tosaense Makino アオテンナンショウ 靑天南星
アオテンナンショウ群 2n=28
日本固有種(本州の近畿以西、四国、九州)。山地の林内に生える。
高さ30~100cm。全体緑色。偽茎は普通、葉柄や花序柄より長い。葉は2個、ときに1個、葉軸は発達する。小葉は7~11個、楕円形~長楕円形、しばしば縁に鋸歯があり、先は普通、糸状に伸びる。花序柄は長さ5~7cm。仏炎苞は葉に遅れて開き、淡緑色~緑色、まれに紫色、半透明で白色の条線は目立たず、口辺部は外曲する。舷部は卵形、先は次第に細く糸状に長く伸びる。花序付属体は太い棒状、淡緑色、先端はやや太く丸くなり、直径6~10mm。花期は5~6月。
60 Arisaema triphyllum L.
北アメリカ東部原産。英名は jack-in-the-pulpit , bog onion , brown dragon , Indian turnip。
高さ30〜65㎝。葉は3小葉複葉。葉柄は長く、長さ30~45㎝。小葉は長さ8~15㎝×幅3~7㎝。花序は形が不規則、長さ8㎝以下、黄緑色又はときに緑色で、紫色~帯褐色の縞がある。仏炎苞(spatheをpulpitもいう)は肉穂花序を包み、肉穂花序は小さな花に覆われる。花は単性で隣接的雌雄同体(sequential hermaphrodites)、小さい株は雄花となり、大きくなると雌花を生じる。花粉媒介は臭いに集まるキノコバエ(fungus gnats)、タマバエ(gall gnats)、甲虫が行う。雄花は同じ花序の雌花が成熟する前に枯れるので自家受粉はしない。果実は熟すと鮮やかな赤色になる。種子は普通、1~5個、白色~薄タン色。花期は4~6月。果期は夏下旬~秋。
品種) 'Starburst'
61 Arisaema undulatifolium Nakai ナガバマムシグサ 広義
ヒガンマムシグサ群(ナガバマムシグサ群)
61-1 Arisaema undulatifolium Nakai subsp. undulatifolium ナガバマムシグサ 長葉蝮草
synonym Arisaema undulatifolium Nakai f. viridifolium Sugim.
日本固有種(伊豆地方)。別名はナミウチマムシグサ。山地の林下に生える。
高さ10~35cm。葉は2個つき、ほぼ同大、鳥足状複葉。小葉は9~21個、幅が狭く線形~狭披針形、先は尖鋭形、しばしば小葉の中脈に白班がある。葉軸はほとんど発達せず、小葉が掌状に円く広がったように見える。花は葉より先に開く。仏炎苞は紫褐色~黄褐色、口辺部はやや狭く開出する。舷部先端は前に曲がる。花序付属体は円柱状、先が太くならない。花期は3~5月。果期は遅く11~12月。2n=26。
61-2 Arisaema undulatifolium Nakai subsp. uwajimense T.Kobay. et J.Murata ウワジマテンナンショウ 宇和島城天南星
ヒガンマムシグサ群
四国西部(愛媛県、高知県)に分布する。
小葉の幅が広く、葉軸がやや発達する。花序柄が長い。仏炎苞の口辺部が耳状に張り出す。子房あたりの胚珠数(平均)が20個以上あり、少なければ外観がよく似ているヒガンマムシグサ(ヨシナガマムシグサ)である。
62 Arisaema unzenense Seriz. ウンゼンマムシグサ 雲仙蝮草
synonym Arisaema maximowiczii (Engl.) Nakai
synonym Arisaema angustifoliatum auct. non (Miq.) Nakai
ツクシマムシグサ群
ツクシマムシグサ(Arisaema maximowiczii)のsynonymとされている。[Kewscience:Gusman, G. & Gusman, L.(2006)]
葉は普通、2枚。ツクシマムシグサは普通、1枚。
63 Arisaema yamatense (Nakai) Nakai ムロウテンナンショウ 室生天南星
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai subsp. yamatense
ムロウテンナンショウ群
日本固有種(本州の愛知県、岐阜県、福井県、鳥取県、岡山県)。山地林下、林縁に生える。
高さ30~80cm。鞘状葉や偽茎部の班は赤みが強い。葉は2個、第2葉は小さい。小葉は7~17枚、楕円形~披針形、縁は全縁ときに鋸歯がある。葉軸は発達する。花序はしばしば、葉より早く展開する。仏炎苞は緑色、ときに紫色を帯びる。筒の口辺部は狭く開出する。舷部広卵形は筒部より短く長さ6~10cm、基部は横に張り出し、先は尖鋭形、内面に微細なパピラを密生し、白濁して見える。花序付属体は細い棒状、淡緑色、下部はやや太く、上部に向かって細くなり、上部がやや前方に曲がり、先端はやや膨らみ直径2~3mmで緑色~濃緑色になる。花期は4~6月。2n=28。
63-1 Arisaema yamatense (Nakai) Nakai subsp. sugimotoi (Nakai) H.Ohashi et J.Murata スルガテンナンショウ
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai var. intermedium Sugim.
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai var. sugimotoi (Nakai) Kitam.
synonym Arisaema yamatense (Nakai) Nakai var. sugimotoi (Nakai) Kitam. f. variegatum Sugim.
ムロウテンナンショウ群
日本固有種(東海地方)。付属体は淡緑色、太く、先端が細くなり、前にやや曲がり、大きく膨らみ鍵状にくびれる。
DNA系統解析の結果、別種のArisaema sugimotoi Nakaiに変更された(2018)
60 ハイブリッド
(1) コシキマムシグサArisaema japonicum × A. ringens (2019)
(2) その他ハイブリッド 品種) 'Crossing Over' , 'Siang'
参考
1) Flora of ChinaArisaema
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=102590
2) Plants of the World Online | Kew ScienceArisaema
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:328148-2
3) 植物研究雑誌. 津村研究所. (1980) vol.55, no.5, p.p148-156.
芹沢 俊介. 日本産テンナンショウ属の再検討-1-ナガバマムシグサ群. 4) 植物研究雑誌. 津村研究所. (1980) vol.55, no.12, p.p353-357.
芹沢 俊介. 日本産テンナンショウ属の再検討-2-ムロウテンナンショウ群.
5) 植物研究雑誌 56(3), p90-96, 1981-03
日本産テンナンショウ属の再検討-3-ユモトマムシグサ群
6) 植物分類,地理 32(1-4), 22-30, 1981
日本産テンナンショウ属の再検討(4)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunruichiri/32/1-4/32_KJ00002992190/_pdf/-char/ja
7) Journ. Jap. Bot. Vol. 57 No. 2 p41-46 1982芹沢俊介 日本産テンナンショウ属の再検討 (5)アマミテンナンショウ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_057_41_46.pdf
8) 植物研究雑誌. 津村研究所. (1982) vol.57, no.3, p.p85-90.
芹沢 俊介. 日本産テンナンショウ属の再検討-6-ツクシマムシグサ群.
9) 植物研究雑誌 Vol. 61 No. 3 89-90 (1986)日本産テンナンショウ属(サトイモ科)の 1新自然雑種ムロウユキモチソウ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_061_89_90_d.pdf
10) 植物分類・地理. 植物分類地理学会. (1986) vol.37, no.1〜3, p.27-41.
邑田 仁. 日本産テンナンショウ属の分類形質と分類 (2)
花梗の長さと胚珠数 : 特にヒガンマムシグサとムロウマムシグサに関連して11) 植物研究雑誌. 津村研究所. (1990) vol.65, no.8, p.p225-232
邑田 仁. テンナンショウ属の染色体数に関する新知見-2-〔英文〕
12) The journal of phytogeography and taxonomy Vol42(2)99-109(1995)
テンナンショウ属のアロザイム分化: (3)マムシグサ群 邑田 仁, 河原 孝行
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13)植物 分類,地理 46 (2): 185− 208 (1995)マ ム シグサ群の 多様性 邑田 仁
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunruichiri/46/2/46_KJ00001079100/_pdf/-char/ja
14) Botanical Bulletin of Academic Sinica Vol.37 ,1996 61-87The Systematic Study of Taiwanese Arisaema(Araceae)
https://ejournal.sinica.edu.tw/bbas/content/1996/1/bot371-09.pdf
15) Journal of Phytogeography and Taxonomy 52 : 123-126, 2004
テンナンショウ属分類の最近の進展
https://core.ac.uk/download/pdf/196711572.pdf
16) Bunrui 9(1):37−45 (2009 )日本植物分類学会 第7回東京大会 公開シンポジウム講演記録
牧野富太郎とマムシグサの分類
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunrui/9/1/9_KJ00005379909/_pdf/-char/ja
17) Fl. China 23: 43–69. 2010Fl. China 23: 43–69. 2010. 21. ARISAEMA Martius, Flora 14: 459. 1831.
http://flora.huh.harvard.edu/china/PDF/PDF23/Arisaema.pdf
18) 植物研究雑誌 第87巻 第6号: 398–401 (2012)A New Form of Arisaema nambae Kitam. (Araceae),
an Endangered Aroid in Western Japan
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_087_398_401.pdf
19) Acta Phytotax. Geobot. 65 (3): 161–176 (2014)Comments on the taxonomic treatment of Arisaema (Araceae) in Flora of China
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/65/3/65_KJ00009868527/_pdf/-char/en
テンナンショウ属の研究ノート 小林禧樹―発芽第一葉,胚珠数,染色体数と分類―
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_091_suppl_128_137.pdf
21) Bunrui 17(2): 113-127 (2017)第16回 日本植物分類学会賞 受賞記念論文テンナンショウとともに30年
―ヒガンマムシグサ群の調査・研究からみえてきたもの 小林禧樹
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunrui/17/2/17_01702-02/_pdf
22) J. Jpn. Bot. 92(4): 199–213 (2017)日本産テンナンショウ属(サトイモ科)の果実熟期の分化
と鳥類による種子散布
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB92-4_199_213.pdf
23) J. Jpn. Bot. 93(4): 253–268 (2018)岡山県北部に産するマムシグサ群の分類学的検討
松本哲也,佐桒信也邑田 仁
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB93-4_253-268_abstract.pdf
24) J. Jpn. Bot.96(2): 67-73(2021)ヒロハテンナンショウ群とユモトマムシグサ群(サトイモ科テンナンショウ属)の倍数性
笹村和幸,邑田 仁,大井・東馬哲雄