カナリーヤシ

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Flora of Mikawa

ヤシ科 Arecaceae ナツメヤシ属

別 名 フェニックス、カナリヤヤシ
中国名 中国名は加拿利海枣 jia na li hai zao
英 名 Canary Island date palm , pineapple palm
学 名 Phoenix canariensis Hort. ex Chabaud
カナリーヤシの葉
カナリーヤシの葉基部
カナリーヤシの幹
カナリーヤシ
カナリーヤシの果実
カナリーヤシの果実2
花 期 12~3月
高 さ 12~16m
生活型 常緑高木
生育場所 栽培種
分 布 外来種  カナリア諸島原産
撮 影 浜名湖ガーデンパーク 18.4.3
カナリーヤシはヤシ科ナツメヤシ属の観賞用の栽培種。フェニックスと呼ばれ、日本では暖地の公園などに植えられている。
 単生の丈夫なヤシ、葉の基部にタマシダなどがよく着生している。樹皮は灰褐色。幹は円柱形、高さ12~16m、直径(55~70)90~140㎝、大きな密についたダイヤモンド形の葉痕に覆われる。葉は多数つき、大きく、広く広がり、長さ5~6m、密な樹冠を作る。葉基部の刺状羽片は長さ5~7.5㎝。小葉は多数(80~100個)、緑色、光沢があり、多少、規則的につき、又は葉軸に沿って対に1平面につく。花序は長い。花はクリーム白色~淡黄色。雄花は小さく、長さ約4mm、花弁は尖鋭形ではない。雌花は咢が花弁とほとんど同長。果実はナツメヤシよりかなり小さく、食べられず、長円状楕円形、黄色~橙色~赤紫色、粗く繊維状、無味の乾いた果肉で、長さ24~27㎜×直径10~12㎜。花期は断続的に周年、普通、冬~春上旬。

ナツメヤシ属

  family Arecaceae - genus Phoenix

 茎は単生又は束生し、短く、地下~大きく地上まで、普通、粗く、ごく密に節をもち、しばしば宿存する葉の基部をもつ。葉(frond:葉状体)は8~50個つき、羽状複葉。葉鞘は開く。羽片は内向敷石状(induplicate:縁が内向きに2つ折りになり(又は巻き)重ならない)、規則的又は不規則に配置し、異なる面に広がり、葉の中間の基部に短い、丈夫な鋭い刺(acanthophylls:葉軸下部の刺状羽片)がある。雌雄異株。花序は普通、1次に分枝し、葉の間に生じる。花序柄は前出葉(prophyll)をつけ、他の苞はかなり減る。小穂軸(rachillae)はしばしば、花序軸に沿って集団又は螺旋状につく。花は小さく、単性。雄花は雄しべが6(~9)本。果実は色が様々、黒色又は褐色、倒卵形、長円形、又は楕円形、普通、種子は1個。中果皮は肉質、ナツメヤシでは厚くて甘いが、他の種では薄くて苦い。胚乳は均質、まれに反芻胚乳(ruminate;成熟した胚乳が不規則で凸凹な外形になる)。発芽は長子葉柄型(remote)【長子葉柄管状型 Remote tubular (Phoenix type) , 長子葉柄舌状型 Remote ligular (Wasingtonia type) , 隣接舌状型 Adjacent ligular (Achontophoenix type)】、初出葉(eophylls:発芽で出る最初の葉、子葉や成葉とは異なる)は分裂しない。
 世界に約14種があり、カナリア諸島、アフリカ、地中海沿岸地域、南西アジア~フィリピンに分布する。

ナツメヤシ属の主な種と園芸品種

1 Phoenix canariensis Hort. ex Chabaud  カナリーヤシ 
 カナリア諸島原産。中国名は加拿利海枣 jia na li hai zao。英名はCanary Island date palm , pineapple palm。別名はフェニックス、カナリヤヤシ。観賞用に栽培されている。
 単生の丈夫なヤシ。樹皮は灰褐色。幹は円柱形、高さ12~16m、直径(55~70)90~140㎝、大きな密についたダイヤモンド形の葉痕に覆われる。葉は多数つき、大きく、広く広がり、長さ5~6m、密な樹冠を作る。刺状羽片は長さ5~7.5㎝。小葉は多数(80~100個)、緑色、光沢があり、多少、規則的につき、又は葉軸に沿って対に1平面につく。花序は長い。花はクリーム白色~淡黄色。雄花は小さく、長さ約4mm、花弁は尖鋭形ではない。雌花は咢が花弁とほとんど同長。果実は長円状楕円形、黄色~橙色~赤紫色、粗く繊維状、無味の乾いた果肉で、長さ24~27㎜×直径10~12㎜。花期は断続的に周年、普通、12~3月。

2 Phoenix dactylifera L.  ナツメヤシ 棗椰子
イラン、イラク、オマーン、パキスタン、サウジアラビア、クウェート、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦原産。中国名は海枣 hai zao。英名はdate , date palm。別名はデーツ。食用に広く栽培されている。
 茎は単生又は束生し、少数のシュートを出し、高さ30m以下、直径50㎝以下、粗く、宿存するダイヤモンド形の葉の基部をもつ。葉は長さ3~5m。葉鞘と葉柄は長さ1m以下。葉軸は長さ1~2m、葉軸の両側に多数の刺状羽片(acanthophylls)があり、線形、不規則につき、異なった面に広がる。中間の羽片は長さ40㎝×幅2㎝以下。雄花序は直立し、長さ1m以下、多数の小穂軸をもち、小穂軸は長さ約30㎝。雌花序は直立し、垂れ下がるようになり、長さ2m以下、小穂軸を150個以下もち、小穂軸は長さ40㎝以下。果実はデーツ(date)と呼ばれ、食用とされ、形が様々、普通、長円形、長さ7㎝×幅3㎝以下、緑色~橙黄色、熟すと褐色~黒色。胚乳は均質。花期は2~3月。果期は8~9月(生育地により異なる)
品種) 'Deglet noor' , Medjool' , 'Mazafati'

3 Phoenix loureiroi Kunth  ソテツジュロ 蘇鉄棕櫚
  synonym Phoenix hanceana hort. ex Wendl.
  synonym Phoenix hanceana Naud. var. formosana Becc.
 中国、台湾、バングラデシュ、ブータン、カンボジア、インド、ラオス、ミャンマー、ネパール、パキスタン、フィリピン、タイ、ベトナム原産。中国名は刺葵 ci kui。英名はmountain date palm , spiny date palm , dwarf date palm , Loureiro's date palm。別名はカイナンソテツジュロ、 ヒメナツメヤシ
 茎は単生又は束生し、高さ1~6m、直径20~40㎝、ときに短くて地下にあり、粗く宿存するダイヤモンド形の葉の基部をもつ。葉は長さ2m以下。葉鞘と葉柄は合わせて長さ40㎝以下。葉軸は長さ1~2m、刺状羽片(acanthophylls)は葉軸の各側に約15個。羽片は葉軸の各側に40~130個、線形、不規則につき、異なった面に広がる。中間の羽片は長さ20~50㎝×幅1~4㎝。雄花序は直立、長さ65㎝以下、小穂軸を30個以下もち、小穂軸は長さ約10㎝。雌花序は直立、アーチ状になり、長さ2m以下、小穂軸が40個以下つき、小穂軸は長さ40㎝以下。雄花はクリーム白色、芳香があり、長さ4~5mm。雌花は黄緑色。果実は黒色、青黒色、又は暗紫色、長さ1.8㎝×幅0.9㎝以下。胚乳は均質。花期は4~5月(インドでは10~11月、周年)。果期は6~10月。

4 Phoenix paludosa Roxb.  マライソテツジュロ 
 インド、アッサム、バングラデシュ、カンボジア、ミャンマー、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア原産。英名はmangrove date palm。別名はマングローブナツメヤシ。

5 Phoenix pusilla Gaertn.  オオカミヤシ 狼椰子
 インド、スリランカ原産。英名はCeylon date palm , flour palm。
 単生又は束生のヤシ。茎は高さ6m以下、直径30㎝以下。葉は長さ3m以下、偽葉柄は長さ70㎝以下×基部の幅1.5~3㎝、下面は丸い。葉鞘は繊維状、赤褐色。葉身の基部は宿存し、幹に垂直につき、基部の幅約8㎝。刺状羽片(acanthophylls)は1面又はそれ以上の面に並び、葉軸の各側に約7~18個つき、黄緑色、非常に鋭く、長さ11㎝以下。小葉は多少不規則につき、下部では4列につき(quadrifarious)、葉軸の各側に約30~100個つき、長いへら形、先は非常に鋭く、針状、長さ10~45㎝×幅0.5~3㎝。小葉は目立つ黄橙色の葉枕(pulvinus)により葉軸と結合する。葉身は表裏同色、光沢のある暗緑色、手触りはしなやか。雄花序は直立。前出葉(prophyll)は革質、長さ12~30㎝×幅4~8㎝。花序柄は長さ5~25㎝。小穂軸(rachillae)は花序軸に広角度で約50~70個つき、長さ21㎝以下。 雄花は卵形、黄白色。咢は高さ1~1.5mm。花弁は長さ4~5mm×幅2~3mm、卵形、先は円形。雌花序は直立、果実が熟すとアーチ状になる。前出葉は革質、2回分裂し、長さ17~41㎝×幅2.5~5.5㎝。花序柄は長さ約25~75㎝。小穂軸は20~120個、橙緑色、長さ4~30㎝。雌花はほとんど小穂軸の上半部につく。咢は高さ1.2mm以下。花弁は長さ2mm×幅3~4mm。果実は卵形、長さ11~15㎜×幅 5~8mm、熟すと緑色~赤色~紫黒色になり、中位に肉質、甘く、食べられる。種子は卵形、先は丸く、新鮮なときはピンク褐色、乾くと、光沢のある栗褐色、長さ8~12㎜×幅6㎜、縫合線の領域(台座)の中の種皮に嵌入し、しばしば断面がY形になる。胚は縫合線に側面が対生する。胚乳は均質。花期は2~4月。

6 Phoenix reclinata Jacq.  カブダチソテツジュロ 
 アフリカ、サウジアラビア、イエメン原産。英名はwild date palm , Senegal date palm , dwarf date palm。

7 Phoenix roebelenii O'Brien  シンノウヤシ 親王椰子
 中国、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。中国名は江边刺葵 jiang bian ci kui。英名はminiature date palm , pygmy date palm。別名はシナヤシ。
 茎は束生(栽培種は単生)し、高さ1~3m、直径10㎝以下、真っすぐ又は捻じれ、粗く、宿存するダイヤモンド形の葉の基部をもつ。葉は長さ2m以下、葉鞘と葉柄は合わせて長さ50㎝以下。葉軸は1~2m、刺状羽片(acanthophylls)は葉軸の各側に約12個。羽片(pinnae)は葉軸の各側に25~50個、線形、規則正しく配置し、同一平面に広がり、中肋の下面に宿存する鱗片をもつ。中間の羽片は長さ20~40㎝×幅約1.5㎝。雄花序は垂れ下がり、長さ30~60㎝、小穂軸(rachillae)を20個以下もち、小穂軸は長さ7~20㎝。雌花序は直立し、長さ25~30(35)㎝、小穂軸は50個以下。果実は橙褐色~紫褐色(ほぼ黒色)、倒卵形、長さ1.8㎝×幅0.7㎝・以下。胚乳は均質。花期は3~5月。果期は5~8月。
品種) 'Multistem'

8 Phoenix rupicola T.Anderson  インドヤシ 印度椰子
 インド(東ヒマラヤ)、アッサム、ブータン、ネパール、バングラデシュ原産。 英名はcliff date palm , cliff date。

9 Phoenix sylvestris (L.) Roxb. サトウナツメヤシ 砂糖棗椰子
 インド、アッサム、バングラデシュ、ミャンマー、ネパール、パキスタン、タジキスタン原産。英名はwild date palm , Toddy palm , sugar palm , East Indian wine palm。
 中型の高木、雌雄異株、高さ7.5~15m、ひこばえ(root suckers)は無く、茎は葉柄の基部の残物で覆われる。葉はナツメヤシより小さく、長さ0.96~4m、灰緑色、全く無毛、多数の小葉に羽状分裂する。小葉は長さ15~60㎝×幅8~2.5㎝、数個の平面に互生、対生、又は束生し、先はほとんど鋭く尖る。下部の小葉は硬い刺に変わり(刺状羽片)、長さ約12㎝以下。葉柄は短く、無毛、刺がある。花序と花はナツメヤシに似ている。果実は核果、 長さ約2.5㎝、橙黄色、端は丸く、甘く、食べられる。種子は木質、片側に縦溝がある。花期は3~4月。果期は8~10月。

参考

1) Flora of China
 Phoenix
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=125080
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Phoenix
http://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=23256
3) Flora of North America
 Phoenix
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=125080
4) Flora of Pakistan
 Phoenix canariensis
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=5&taxon_id=222000270
5) PALMS Volume 48(4) p191-196 2004
 Dwarf Date Palm  Phoenix loureiroi
http://www.flowersofindia.net/catalog/slides/Dwarf%20Date%20Palm.html
6) Flowers of India
 Sudhersan: Phoenix pusilla in Kuwait
https://palms.org/wp-content/uploads/2016/05/vol48n4p191-196.pdf