ジャメスブリテニア・アラビアンナイトはゴマノハグサ科ジャメスブリテニア属のハイブリッド栽培品種。ジャメスブリテニア属はステラ属(Sutera)に含められていたこともあり、誤ってバコパ(Bacopa)とかステラ(Sutera)とも呼ばれることも多い。バコパ(Bacopa)は現在の学名はカエノストマ属のChaenostoma cordatumである。
　ジャメスブリテニア・アラビアンナイトは非耐寒性(5度以上)多年草、暑さにや乾きには強い。高さ10～15㎝。全体に白色の毛がある。茎は多数、枝分かれし、枝が横に伸び広がる。葉は葉柄があり、下部では対生し、卵形、基部は切形～広くさび形、粗い鋸歯があり、鋸歯の先は鈍形、葉先は鈍形。葉裏は毛が多く、淡色、脈が隆起し、目立つ。花序は小さな総状花序。萼は5裂し、裂片の先は円形、花時にほぼ直立し、花冠の筒部を囲む。花柄は長い。花は直径約2㎝。花冠は漏斗形、5裂し、ほぼ放射相称、クリーム色～黄色、中心部が濃黄色～橙色、花冠筒部は薄い紫色になる。雄しべや雌しべは花冠から突き出ない。花期は3～11月。
　ジャメスブリテニア属は萼がほぼ基部まで深裂し、急に広がる花冠筒部の喉部にこん棒形の毛の帯があり、普通、葯が突き出さず、後側の花糸は普通、毛があり、花冠筒部に沿下し、柱頭は短くて突き出さず、小さく2裂する。これに対し、カエノストマ属は萼が2唇形。花冠筒部の喉部にこん棒形の毛の帯があるかまたは無毛。葯は前側の対が突き出し、花糸は花冠筒部に沿下しない。柱頭は突き出し、普通、舌形、縁にパピラの2本の帯がある。

ジャメスブリテニア属

　 family Scrophulariaceae － genus Jamesbrittenia

　草本または低い低木、有毛または±粘性のある有毛、まれに無毛で、乾燥すると黒色になる。葉は少なくとも下部の葉は対生、しばしば上部で互生し、葉柄があるかまたは無柄、縁は歯状、全裂または全縁。花は葉腋に単生～頂生の総状花序または集散花序につく。萼はほぼ基部まで5裂し、裂片は±覆瓦状。花冠は筒状、先近くで急に広がり、5裂または2唇がある。花冠筒部の喉部にこん棒形の毛の帯がある。花冠裂片は覆瓦状、広がり、全縁または先が短く2裂または凹形。雄しべは4本、花冠筒部の膨れた部分につく。葯はすべて完全、普通、花冠から突き出ない。後側の花糸は普通、毛があり、花冠筒部に沿下する。子房は2室、胚珠は多数。柱頭は鈍形またはまれに2裂し、短くて突き出ない。蒴果は胞間裂開。種子は小さく、多数。n=24。
　世界に約84種があり、インド、アッサム、バングラデシュ、アフリカに分布し、主にアフリカ南部にあり、1種が北アフリカ、アジアに分布する。

ジャメスブリテニア属の主な種と園芸品種

1 Jamesbrittenia bergae P.Lemmer　ジャメスブリテニア・ベルガエ
　南アフリカ原産。英名はcrimson phlox。
　成長の早い多年草。半直立し、山状になり、幅が高さと同じくらい広く、最終的には約40～50cmに広がる。茎はよく分枝し、密な茂みになる。葉は小さく、長さ15mm×幅5mm・以下、腺がある。花冠は濃い深紅色、喉は黄色、幅30mm以下、花冠の筒部は細く、長さ約15mm、。花糸は花冠筒部の内側につく。葯も柱頭も花冠筒部の開口部から突き出さない。果実は長さ5～10㎜の蒴果、2室に裂開する。種子は黒色、砂粒のサイズで小さい。
品種)　'Neon Heart'PBR

2 Jamesbrittenia breviflora (Schltr.) Hilliard　ジャメスブリテニア・ブレビフローラ

　南アフリカ原産。俗名は無く、verfblommetjies (little paint-flowers)と呼ばれる。
　多年草。丈夫なてい幹を発達させ、冠状、直径約10mmになる。茎は長さ15～60㎝、単純から緩く分枝し、不規則に広がり、有腺の絨毛があり、毛は長さ1～3mm以下、葉つく。葉は対生または上部で互生し、偽束生、最大の葉身は長さ10～35mmx幅8～35mm、卵形～ほぼ円形、漸尖し、葉柄部分は長さ3～10mm（葉身の長さの約1/2～1/5)、鈍形、縁には円鋸歯があり、最も長い裂片はときに歯があり、両面に有腺の絨毛～毛があり、毛は長さ1～3mm以下(葉柄部分の最も長い毛）、輝く腺があり、特に下面に多い。花は葉腋に単生し、葉のつく長い総状花序を形成する。花柄は長さ9～35mm以下。萼筒は長さ0.2～0.8mm、萼片は約・長さ3.8～5.5mm x幅1～3mm、へら形、有腺の絨毛があり、毛は長さ0.5～2mm以下、輝く腺がある。花冠筒部は長さ3.5～6mmx幅2～4mm、急に拡大部で広がり、口部は背腹に扁平、拡大部は斜め、側裂片を含め全体で幅7～20mm、後ろ側の裂片は長さ3～7mmx幅3～7mm、前側の唇が突き出し、前側の裂片は長さ2～8mm x 2.5～8.5mm、すべての裂片がほぼ円形、外側に腺毛があり、毛は約・長さ0.5～1mm以下、輝く腺があり、喉部に下唇の付け根まで伸びる、広い横方向の帯にこん棒形の毛があり、裂片は暗赤色～からテラコッタ色(赤褐色)またはローズピンク色、まれに暗ライラック色、主脈は暗色、口蓋は明るい黄色。雄しべは後ろ側の花糸が長さ1.5～2.5mm、上部に腺微軟毛があり、基部に微細な無柄の腺があり、葯は長さ0.8～1.4mm。前側の花糸は長さ0.5mm～1mm、腺微軟毛があり、葯は長さ0.6～5mm。花柱は長さ0.3～0.5mmの長さ、突き出さない。花柱は長さ2.2～3mm。子房は長さ1～1.5mmx幅0.8～1.2mm。蒴果は約・長さ4～6mmx幅2.5～3mm、全体に輝く腺があり、先に少数の微細な毛がある。種子は約・長さ0.3～0.6mmx幅0.3～0.4mm。
品種)　Summer Dream Light Yellow , Summer Dream® Burgundy Eye

3 Jamesbrittenia grandiflora (Galpin) Hilliard　ジャメスブリテニア・グランディフロラ

　　synonym　Sutera grandiflora (Galpin) Hiern
　南アフリカ原産。英名はWild phlox。
　亜低木。高さ0.5～1.2m。茎は直立、単純からわずかに分枝し、最終的には上部で十分に分枝して、円錐花序になり、長さ0.5～1mm以下の腺剛毛があり、輝く腺もあり、葉が密にある。葉は互生し、偽束生、1次の葉は長さ15～55mm x幅5～16mm・以下（2次葉は小さく、長さ6～31㎜、幅3～8㎜）、楕円形(長楕円形～卵形～倒卵形)、鈍形～類鋭形、基部は漸尖し、葉柄部分があり、縁は鋸歯～円鋸歯、両面に腺剛毛があり、毛は長さ0.2～0.6mm以下、密に輝く腺に密に覆われ、特に下面に多く、脈は上面で凹み、下面に隆起する。花は上部の葉腋に単生し、葉のサイズは大幅に縮小して苞に変わり、長い頂生の総状花序を形成し、しばしば円錐花序になる(長さ10～17.5㎝)。苞は線形、長さ3～7㎜。花柄は長さ7～25mm以下、腺毛がある。萼筒は長さ0.1～0.2 mm。萼片は長さ 5.5～8.5mm x 1～1.4mm、長円形～長円状へら形、鋭形、長さ0.2mm以下の腺剛毛があり、輝く腺もある。花冠は濃紫色～褐黄色。花冠筒部は長さ20～23mmxのど部で幅3～4mm、円筒形、先近くで球に広がり、口部は横方向に扁平で、拡大部はわずかに2唇形、側裂片を含め全体で幅17～30mm、後ろ側の裂片は長さ6～12mmx幅5～12mm、前側の裂片は長さ6～10mm x幅5～10mm、くさび形～広卵形、先は±円形～小凹形、外側に腺毛があり、毛は長さ0.3～0.6mm以下、輝く腺があり、前側の唇の内側の最も基部と下ののど部までに、こん棒形の毛があり、裂片の内面に細かく腺微軟毛があり、輝く腺が散在し、特に口の周りに多く、裂片はラベンダー青色または藤色、白色、口部の周りと喉部は黄色または帯緑色。雄しべは後ろ側の花糸が長さ1.8～2.5mm、葯は長さ1.2～1.5mm。前側の花糸は長さ0.8～1mm、葯は長さ0.75～1.1mm。すべての花糸に、こん棒型の毛がある。柱頭は長さ0.5～1mm。花柱は長さ14～18mm。子房は長さ2.5～3.5mmx幅1.2～1.75mm。蒴果は長さ(6～)8～11mmx幅4～5mm、腺毛があり、輝く腺があり、外側と胎座の両方にある。種子は多数、不規則な長楕円形、約・長さ1mmx幅0.6mm。開花はすべての月に記録されるが、花期は主に3～7月。
品種)　'Balabowite' , Big Falls™ Dark Blue , Big Falls™ Dark Pink , Big Falls™ Pearl 16 , Big Falls™ Summer Blue , Big Falls™ White , 'Copia Dark Pink' , 'Copia Great Purple' , 'Copia Sunshine Blue' , 'Kleg05178' 'Klesg12346' , 'Klesg13255' , 'Klesg13258' , 'Klesg14831'PBR , 'Sumsut 02' , 'Sumsut 04'

4 Jamesbrittenia pristisepala (Hiern) Hilliard　ジャメスブリテニア・プリスティセパラ

　南アフリカ原産。俗名は無く、verfblommetjies (little paint-flowers)と呼ばれる。
　矮性の低木、幹は丈夫、木質、直径約30㎜。茎は長さ35㎝以下、直立または傾伏し、よく分枝し、輝く腺で厚く覆われているか、または長さ約0.5mm以下の腺毛の発達の度合いが変わり、これらがときに優勢になり、葉がある。葉は対生、花序軸上では互生し、偽束生し、最も大きい葉は長さ10～30mmx幅5～17mm、外形が卵形、楕円形または長円形、広い葉柄部分をもち、葉身は中肋まで分裂し、裂片は外形が楕円形またはくさび形、深くカットされ、裂片は鋭形、ほぼ鋭形、または鈍形、両面が輝く腺で覆われ、しばしば腺毛が追加され、約・長さ0.1～0.6mm、それらの密度が非常に変動する。花は多数、上部の葉腋に単生し、長い密な総状花序を形成する。花柄は長さ2～4mm以下(一部の雑種では約8mm)。萼筒は長さ(0.15～)0.3～0.5mm、萼片は長さ2.3～4.5mmx先で幅0.3～2mm、へら形、典型的な植物では先が広く、2～5歯があり、一部の標本では狭いへら形～長円形（おそらくハイブリッド起源）、裂片は全縁またはさまざまな程度の歯があり、輝く腺が優勢、または長さ0.2～0.7mm以下の腺毛がさまざまな程度に発達し、ときに輝く腺が少ない場合がある。花冠筒部は長さ8～11.5mmxのど部で幅1.5～2mm、円筒形、急に先近くで広がり、口部は横方向に扁平、拡大部は斜め、2唇形、側裂片を横切り幅約6.5～11mm、後側の裂片は長さ1.8～6mmx幅1.2～3.2mm、前側の裂片は長さ2.2～5.5 x幅1.5～4.5mm、すべて長円形、小凹形、外側に腺毛があり、毛は長さ0.25～0.6mm以下、輝く腺があり、喉～下唇の基部にこん棒形の毛のある広い横方向の帯があり、裂片の色は乳白色または帯黄色～ライラックピンクおよび藤色の色調に変わり、喉部は帯白色～淡黄色で、しばしば裂片の基部に濃紫色の放射状の線があり、筒部はしばしば外側が帯紫色になる。雄しべは後ろ側の花糸が長さ1～1.3 mm、葯が長さ0.7～1.1mm。前側の花糸は長さ0.3～1mm、葯は長さ0.4～0.8mm、すべての花糸は先に細かい腺がある。柱頭は長さ0.2～0.3mm。花柱は長さ5.5～7mm。子房は長さ1.5～2mmx幅0.7～1mm。蒴果は長さ3.5～5mmx幅2～2.5mm、全体に輝く腺がある。種子は長さ0.5～0.9mmx幅0.25～0.6mm、ときに各室に6個程度含む。花期は主に11～4月。
品種)　'Sani'

5 その他ハイブリッド　Jamesbrittenia hybrida
　Jamesbrittenia属はハイブリッドができやすく、J. grandifloraなどを含む多くの栽培品種があり、 J. breviflora に由来するハイブリッドはAfrican Sunset Improvedなどが有名である。
品種)　African Sunset Improved , 'Arabinan Night' , Breeze Lavender Mist , Breeze Plum , Breeze Upright Lavender , 'Britney' , 'Britney Large Pink' (Britney Series) , Britney™ Trailing White , Britney Series , 'Cinderella Cranberry' , 'Cinderella Strawberry' , 'CV 4-323' , 'Danbrit1' , 'Danbrit2' , 'Danbrit4' , 'Danbrit7' , 'Danbrit8' , Gabriel , Goldstar®= Goldstar™ ゴールドスター , Goldstar™ sunny , Penny Candy Salmon , 'Pink Pearl' , Safari™ Dawn , 'Safari Sky' , Stardom™ Goldstar , Stardom™ Pink , Stardom™ Purple , Sumatra Indigo , Summer Dream ® Lemon , 'Sunbrittenia'サンブリテニア , 'Sunbrittenia Scarlet' , 'Supercandy Lilac' , 'Yagemon' , 'Yasal', ラビットピロー・ライラックパープル

参考

1) PlantZAfrica
　Jamesbrittenia bergae 2) World Flora Online
　Jamesbrittenia Kuntze 3) Plants of the World Online| Kew Science
　Jamesbrittenia Kuntze 4) Botanical Journal of the Linnean Society, 2004, 146, 453–467
　New circumscription of the tribe Limoselleae (Scrophulariaceae)
　 that includes the taxa of the tribe Manuleea