イチヤクソウ 一薬草

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Flora of Mikawa

ツツジ科 Ericaceae イチヤクソウ属

中国名 日本鹿蹄草 ri ben lu ti cao
学 名 Pyrola japonica Klenze ex Alefeld
イチヤクソウの花序
イチヤクソウの萼片
イチヤクソウの花茎の鱗片
イチヤクソウの蒴果
イチヤクソウの葉
イチヤクソウ
イチヤクソウ種子
イチヤクソウ葉
花 期 6~7月
高 さ 15~30㎝
生活型 多年草(草本状小低木)
生育場所 林内
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、ロシア
撮 影 面ノ木  07.7.8(花)
蒲郡市  15.11.16(果実).
イチヤクソウ科 Pyrolaceae はツツジ科に統合された。
 根茎は下向き又はときに横走りし、やや太く、直径0.8~2㎜、わずかに分枝する。根はときに太く、直径0.5㎜以下。茎は斜上し、ときに分枝する。葉は基部に3~6(8)個、それぞれ1~3個が1~2段に類輪生する。葉柄は長さ3~6(8)㎝、狭い翼がある。葉身は楕円形~広楕円形~卵形、まれに円形、長さ(2.5)3~6(7)㎝、幅2.5~4.5㎝、やや質が厚く、基部は円形~鈍形~類鋭形、縁はごく浅い不明瞭な細鋸歯状、先は円形~鈍形。葉裏が淡緑色~帯紫色、葉表は濃緑色、葉脈が淡色~白色。花茎は直立し、高さ(6)15~30㎝、基部付近に3~6個の鱗片がある。鱗片は長さ7~13(15)㎜、幅2~4㎜、狭披針形~広披針形~倒披針形、中肋がある。葉状の鱗片は2個以下、ときに中間近くに小さい披針形の鱗片がつく。総状花序は長さ6~10㎝、まばらに、5~12個の花をつける。小花柄は長さ4~6㎜。小花柄の基部に苞がつき、苞は広線形~披針形、長さ5~8㎜、先が長い尖鋭形。花は左右相称、下向きにつき、直径10~12㎜、椀形。萼は5裂して離生、萼片は披針状三角形、長さ3.5~4㎜、基部の最も広い部分の幅1.6~2㎜(長さは幅の2.5~3(4)倍)、先は漸鋭尖形~尖鋭形。花冠は5裂して離生、花弁は倒卵状楕円形~卵状楕円形、長さ5~6.5㎜、幅3.5~4.5㎜、先は円形~鈍形。雄しべは10個、上側に固まってつく。花糸は上向きに湾曲する。葯は長さ2~3㎜、幅約1㎜、クリーム白色、先端付近は橙黄色。雌しべは1個、雄しべより長く、花柱は長さ1.1~1.3㎝、下向き斜めにつき、先は上向きに湾曲する(花が完全に下向きの場合は曲がらない)。柱頭は1個のえりと5個の直立した円筒形の裂片がある。蒴果は扁球形、直径7~8㎜、微細な種子が多数入り、褐色に熟しても花柱が残る。種子は両側に長い翼があり、翼を含めて長さ0.8~1㎜(曲がらないものの場合)、幅0.12~0.16㎜程度。2n=46。(Flora of China の解説は花弁の数値に違いがあると思われ、中国植物誌のデータなども参考にしている)
 マルバノイチヤクソウ Pyrola nephrophylla は葉の幅が長さより広く、萼片の長さは幅とほぼ等しい三角形。
 ベニバナイチヤクソウPyrola nephrophylla form. rosea は花が淡紅色~紅色。茎や萼が赤色。萼片の長さは幅の約2倍。

イチヤクソウ属

  family Ericaceae - genus Pyrola

 亜低木、常緑、直立し、無毛。根茎は長く、細く、枝分かれし、細い根がまばらにある。茎は斜上し、枝分かれなく、基部に鱗片がある。葉はてい幹の基部にロゼットにつき、長い葉柄がある。 葉身は下面が薄緑色、上面は緑色、縁は全縁または鋸歯縁。花茎は長く、細く、基部に鱗片状の苞がある。花は多数、下向きに総状花序につく。萼は5裂、宿存する。雄しべは無毛。葯は孔で裂開する。子房は扁球形。花柱は突き出し、普通、上部で曲がり、先端が輪状に広がる。柱頭は頭状、短く5裂する。蒴果は下向く、バルブは縁の繊維で接続する。種子は多数、小さく、両端の薄い種皮伸びる。n=23,46。
 世界に約40種あり、北半球に広く分布する。

イチヤクソウ属の主な種と園芸品種

1 Pyrola alboreticulata Hayata  アリサンイチヤクソウ 
  synonym Pyrola decorata auct. non Andres  アリサンイチヤクソウ
 台湾原産。中国名は花叶鹿蹄草 hua ye lu ti cao。

2 Pyrola alpina Andres コバノイチヤクソウ 小葉の一薬草
 日本(北海道、本州中部地方以北)、サハリンに分布。山地~亜高山帯の針葉樹林内などに生える。
 常緑多年草、高さ10~20㎝。葉は根生し、卵状楕円形~広楕円形、基部は円形~くさび形。花茎の先の総状花序に花を2~7個下向きにつける。萼は5裂し、萼裂は三角形、先が鋭形、長さ幅とも約1mm。花冠は白色、鐘形、直径10~13mm、5深裂する。花柱は曲がり、長い。蒴果は直径約5mm。花期は7~8月。
2-1 Pyrola alpina Andres f. rosea Sugim. ベニバナコバノイチヤクソウ 
 花が紅色を帯びるもの。

3 Pyrola dahurica (Andres) Kom. チョウセンイチヤクソウ 朝鮮一薬草
  synonym Pyrola rotundifolia auct. non L.
  synonym Pyrola macrocalyx Ohwi
 中国、モンゴル原産。中国名は兴安鹿蹄草 xing an lu ti cao。
4 Pyrola faurieana Andres  カラフトイチヤクソウ 樺太一薬草
  synonym Pyrola minor L. subsp. faurieana (Andres) Vorosch. ex A.P.Khokhr.
 日本(北海道、本州の東北地方)、サハリン、ロシア原産。亜高山帯から高山帯の草原などに生える。
 多年草、高さ10~20cm。根茎は地下を横に這い、細い。葉は根生し、数枚が束生する。葉柄は長さ1.5~3.5㎝、狭い翼がある。葉身は広楕円形、長さ2.5~4㎝×幅2~3㎝、質が厚く、縁は目立たない小鋸歯があり、先は円形またはやや短く尖り鈍端。花茎は高さ10~20㎝、1~2個の披針形の鱗片葉がつく。総状花序に花が下向きに10~20個つく。萼は基部まで5裂し離生、萼片は卵形または三角状卵形、先端は鋭形、長さ約2mm。花冠は赤みを帯びた白色、直径8~9㎜、花冠は5裂して離生、花弁はあまり開かない。雄しべは10本。葯は長さ約2mm。花柱は曲がらず、花時に長さ2~3mm、果時に長さ3~5mm。柱頭は小さく5裂する。蒴果は直径6~7mm。花期は7~8月。

5 Pyrola incarnata (DC.) Fisch. ex Freyn ベニバナイチヤクソウ 紅花一薬草
  synonym Pyrola rotundifolia L. var. incarnata DC.
  synonym Pyrola asarifolia Michx. var. purpurea (Bunge) Fernald
  synonym Pyrola asarifolia Michx. var. incarnata (DC.) Fernald
  synonym Pyrola asarifolia Michx. subsp. incarnata (DC.) A.E.Murray
  synonym Pyrola asarifolia subsp. incarnata (de Candolle) E. Haber & H. Takahashi [Flora of China]
 日本、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は红花鹿蹄草 hong hua lu ti cao。林内、林縁に生える。
 ベニバナイチヤクソウはイチヤクソウに似るが、花数が7~15個と多く(イチヤクソウは5~12個)、葉基部がくさび形にならず、またシュート基部の鱗片葉が膜質になる。 多年草。高さ10~20㎝。茎が赤色、蛇行して曲がる。葉はロゼット状につく。葉は長さ2~5.5㎝、幅1.5~5.5㎝の円形~広楕円形、質は厚く、縁にごく浅い鋸歯がある。葉柄は長さ3~5㎝。花は茎頂の花序に7~15個、下向きにつき、直径約1㎝。花冠は5裂して離生し、花弁は長さ5~9㎜、幅3~6㎜、淡紅色~紅色。萼は赤色5裂して離生し、萼片は長さ1.7~4.7㎜、幅1.1~2.3㎜の狭卵形~広披針形、長さは幅の約2倍。雄しべは10個、上側に固まってつく。雌しべは1個、雄しべより長い。蒴果は直径7~8㎜。花期は6~7月。果期は7~10月。
【Flora of Chinaの解説】  高さ1~5cmの多年草。根茎は匍匐し、長く、やや太く、直径0.7~2㎜、枝分かれし(マット状になる)、まばらな細い根をもつ。茎は斜上する。葉は根生に見え、3~8枚つき、それぞれ3~4枚が2~3段にほぼ輪生する。葉柄は長さ3~5㎝。葉身は下面が淡緑色、上面が緑色で光沢があり、楕円形または卵状楕円形、長さ2~5.5㎝×幅1.5~5.5㎝、基部は円形かまたはかすかに心形、まれにほぼ鋭形、縁は不明瞭な細鋸歯があり、先は円形~鈍形。花茎は直立し、高さ10~25㎝、角(かど)があり、無毛で、基部に4または5個の広披針状楕円形の膜質の鱗片と中間近くに1~4個の披針形の鱗片がある。総状花序は密に花が7~15個つく。苞は広披針形、膜質、先は尖鋭形。花は垂れ下がり、左右相称。萼片は狭卵形~広披針形、長さは幅の2倍あり、長さ1.7~4.7㎜×幅1.1~2.3㎜、先は鋭形~尖鋭形。花弁はローズ色、長さ5~9㎜×幅3~6㎜。花糸は上向きに曲がる。葯は暗紫色、花柱の上に集まり、長さ1.4~3㎜、葯細管(tubules)があり、狭い末端の細孔によって開く。花柱は突き出し、曲がり、長さ6~10㎜、先が広がり輪になる。花柱は襟と5個の直立した裂片をもつ。蒴果は直径7~8㎜。花期は6月。果期は7~10月。
5-1 Pyrola incarnata (DC.) Fisch. ex Freyn var. subaphylla Satomi ムヨウイチヤクソウ 無葉一薬草
 葉がないか、小型の葉が1~3個つくもの。

6 Pyrola japonica Klenze ex Alef.  イチヤクソウ 一薬草
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、ロシア原産。中国名は日本鹿蹄草 ri ben lu ti cao。林内に生える。
 多年草(草本状小低木)、高さ15~30㎝。根茎は下向き又はときに横走りし、やや太く、直径0.8~2㎜、わずかに分枝する。根はときに太く、直径0.5㎜以下。茎は斜上し、ときに分枝する。葉は基部に3~6(8)個、それぞれ1~3個が1~2段に類輪生する。葉柄は長さ3~6(8)㎝、狭い翼がある。葉身は楕円形~広楕円形~卵形、まれに円形、長さ(2.5)3~6(7)㎝、幅2.5~4.5㎝、やや質が厚く、基部は円形~鈍形~類鋭形、縁はごく浅い不明瞭な細鋸歯状、先は円形~鈍形。葉裏が淡緑色~帯紫色、葉表は濃緑色、葉脈が淡色~白色。花茎は直立し、高さ(6)15~30㎝、基部付近に3~6個の鱗片がある。鱗片は長さ7~13(15)㎜、幅2~4㎜、狭披針形~広披針形~倒披針形、中肋がある。葉状の鱗片は2個以下、ときに中間近くに小さい披針形の鱗片がつく。総状花序は長さ6~10㎝、まばらに、5~12個の花をつける。小花柄は長さ4~6㎜。小花柄の基部に苞がつき、苞は広線形~披針形、長さ5~8㎜、先が長い尖鋭形。花は左右相称、下向きにつき、直径10~12㎜、椀形。萼は5裂して離生、萼片は披針状三角形、長さ3.5~4㎜、基部の最も広い部分の幅1.6~2㎜(長さは幅の2.5~3(4)倍)、先は漸鋭尖形~尖鋭形。花冠は5裂して離生、花弁は倒卵状楕円形~卵状楕円形、長さ5~6.5㎜、幅3.5~4.5㎜、先は円形~鈍形。雄しべは10個、上側に固まってつく。花糸は上向きに湾曲する。葯は長さ2~3㎜、幅約1㎜、クリーム白色、先端付近は橙黄色。雌しべは1個、雄しべより長く、花柱は長さ1.1~1.3㎝、下向き斜めにつき、先は上向きに湾曲する(花が完全に下向きの場合は曲がらない)。柱頭は1個のえりと5個の直立した円筒形の裂片がある。蒴果は扁球形、直径7~8㎜、微細な種子が多数入り、褐色に熟しても花柱が残る。種子は両側に長い翼があり、翼を含めて長さ0.8~1㎜(曲がらないものの場合)、幅0.12~0.16㎜程度。2n=46。(Flora of Chinaの解説は花弁の数値に違いがあると思われ、中国植物誌のデータなども参考にしている)。花期は6~7月。
 変種、品種があるが、GBIFでは分けていない。
6-1 Pyrola japonica Klenze ex Alef. f. rosiflora H.Hara オオベニバナイチヤクソウ 
6-2 Pyrola japonica Klenze ex Alef. var. subaphylla (Maxim.) Andres  ヒトツバイチヤクソウ 
  synonym Pyrola subaphylla Maxim.
  synonym Pyrola japonica Klenze ex Alef. f. subaphylla (Maxim.) Ohwi

7 Pyrola minor L. エゾイチヤクソウ 蝦夷一薬草
 日本(北海道、本州富山県以北)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は短柱鹿蹄草 duan zhu lu ti cao  多年草、高さ(7~)12~20cm。根茎は匍匐し、長く、やや細く、直径0.5~1㎜、枝分かれし、まばらな細い根をもつ。茎は斜上し、短いかまたはやや長く、長さ0.5~2.5㎝、分枝しない。葉は根生し、4~8個、2~3輪生につき、各輪に2~4個ずつつく。葉柄は長さ1~2.5㎝。葉身は下面が淡緑色、上面が緑色、広楕円形~円形、長さ1.5~4.5㎝×幅1.5~3㎝、基部は鈍形~切形、縁は小円鋸歯~廃れた小鋸歯があり、先は鈍形または微突形。花茎は直立し、高さ8~18㎝、角(かど)があり、無毛、基部に3~5個の広披針状楕円形または広倒披針形の鱗片があり、基部近くに葉状の鱗片または葉が2個以下あり、中間近に狭披針形~広線形の鱗片が2個以下ある。総状花序は密に花が7~16個つき、長さ2~3.5cm。花柄は長さ3~6㎜。苞は広線形、長さ3~6㎜、普通、花柄より長い。花は垂れ下がり、放射相称、直径6~7㎜。萼片はが凹んだ三角形または広卵形、長さ1~2㎜×幅1~2㎜、先は鈍径~尖鋭形。花弁は白色、長さ3~6㎜、先は小凹形。花糸は輻合し、雌しべを取り囲み、短く、太く、無毛。葯は黄色、長さ0.9~1.4㎜、明確な細管(tubules)がなく、先は切形、先端の広い孔によって開く。花柱は突き出さず、長さ約2㎜、直線状またはわずかに曲がり、先で広がって輪にならない。柱頭は襟と5個の放射状にひろがるアーチ状の裂片をもつ。蒴果は直径4~6㎜。花期は7~8月。2n = 46。

8 Pyrola morrisonensis (Hayata) Hayata  ニイタカイチヤクソウ 
 台湾原産。中国名は台湾鹿蹄草 tai wan lu ti cao。

9 Pyrola nephrophylla (Andres) Andres  マルバノイチヤクソウ 丸葉の一薬草
 北海道、本州、四国、九州、千島原産。
 多年草。高さ20~30㎝。葉はロゼット状につく。葉には長い柄があり、葉は厚く、長さ1.5~2.5㎝、長さより幅の方が長い扁円形。花は下向きに咲き、直径約1㎝。花冠は5裂。萼片は5裂し、裂片はほぼ三角形、長さが幅よりわずかに長い程度、鋭頭。蒴果は直径5~6㎜。花期は6~7月。
9-1 Pyrola nephrophylla (Andres) Andres f. rosea Sugim.  ベニバナマルバノイチヤクソウ 

10 Pyrola renifolia Maxim. ジンヨウイチヤクソウ 腎葉一薬草
 日本(北海道、本州中部地方以北)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は肾叶鹿蹄草 shen ye lu ti cao。
 多年草、高さ10~21㎝。根茎は匍匐し、長く、細く、直径0.2~0.8mm、枝分かれし、まばらに細い根をもつ。茎は斜上し、短く、普通、長さ約0.5cm、まれに2㎝まで。根生葉は 1または2のほぼ輪生に1~3(~6)つき、長い葉柄がある。葉身は下面が淡緑色、上面は濃緑色で、薄いまたは白色の脈をもち、腎形、長さ1~3㎝×幅1.5~4㎝、基部は心形、しばしば縁が重なり、縁は円鋸歯または廃れた細鋸歯があり、先は円形または浅い凹形。花茎は直立するが、すぐに下を向き、高さ7~21㎝、細く、やや角(かど)があり、無毛、基部に2~4個の披針形~広線形または倒披針形の鱗片があり、ときに、中間近に1個の小さい鱗片がある。総状花序はややまばらに花が1~3(~6)個つき、長さ1.8~3.5(~5)㎝。花柄は長さ3~8 mm。苞は;線状披針形、長さ1~2mm。花は垂れ下がり、左右相称、直径1(~1.5)mm。萼片は、ほぼ円形~凹んだ三角形、長さ1~1.5mm×幅1.4~2 mm、先は鈍形~円形。花弁は白色~帯緑色、乾くと黒くなり、倒卵形、長さ5~7×幅3~5.5㎜。花糸は上向きに曲がる。葯は乳白色、長さ2~4mm、末端が細管状に伸び、末端に小さな孔が開き、末端の細管は橙黄色。花柱は突き出し、長さ5~10mm、曲がり、わずかに広がり、先が輪になる。柱頭は襟と5つの直立した円筒形の裂片をもつ。蒴果は直径5~7mm。花期は6~7月。果期は8~9月。

11 Pyrola minor L. エゾイチヤクソウ 蝦夷一薬草
 日本(北海道、利尻島)、朝鮮、中国、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカなど北半球に広く分布する。中国名は短柱鹿蹄草 duan zhu lu ti cao。英名はsnowline wintergreen , lesser wintergreen , common wintergreen , lesser pyrola。
 多年草、高さ(7~)12~20cm。根茎は匍匐し、長く、やや細く、直径0.5~1 mm、枝分かれし、まばらな細い根がある。空中茎は斜上し、短いかまたはやや長く、長さ0.5~2.5 cm、分枝しない。葉は根生葉に見え、4~8個つき、それぞれ2~4個の葉が2~3類輪生する。葉柄は長さ1~2.5cm。葉身は下面が淡緑色、上面は緑色、広楕円形~円形、長さ1.5~4.5cm×幅1.5~3cm、基部は鈍形~切形、縁は小円鋸歯~廃れた小鋸歯、先は鈍形または微突形。花茎は直立し、高さ8~18cm、角(かど)があり、無毛、基部に3~5個の広披針状楕円形または広倒披針形の鱗片があり、基部近くに2個以下の葉状の鱗片または葉があり、中央付近に2個以下の狭披針形~広線形の鱗片がある。総状花序は密に花が7~16個つき、長さ2~3.5cm。花柄は長さ3~6mm。苞は広線形、長さ3~6 mm、普通、花柄より長い。花は垂れ下がり、放射相称、直径6~7mm。萼片は凹んだ三角形または広卵形、長さ1~2mm×幅1~2 mm、先は鈍形~尖鋭形。花弁は白色、長さ3~6mm、先は小凹形。花糸は輻合し、雌しべを取り囲み、短く、太く、無毛。葯は黄色、長さ0.9~1.4mm、明確な葯細管(tubules)がなく、先は切形、広い末端の細孔によって開く。。花柱は突き出ず、長さ約2mm、真っすぐまたはわずかに曲がり、先は広がって輪になることはない。柱頭は襟と5個の放射状に開いたアーチ形の裂片をもつ。蒴果は直径4~6mm。花期は7月。果期は8月。2n=46。
12 Pyrola subaphylla Maxim. ヒトツバイチヤクソウ
  synonym Pyrola denticulata Koidz.
 日本固有種(北海道、本州の中部地方以北、四国)。主に標高0~1,500m の針葉樹林に生える。
 イチヤクソウは分類が困難であり、葉の面積および花茎の色に著しい変異があり、イチヤクソウ種複合体と考えられている。首藤らは国内の同種複合体の形態とDNAを調査し、異なる形態をもついくつかの集団型に分けられることを 2016年にアメリカ植物分類学会誌に発表した(参考6)。
 花茎が赤く、少なくとも1本のシュートが、普通葉を1枚のみもつか、これを欠き、すべてのシュートの葉が3㎝以下であるものをヒトツバイチヤクソウ P. subaphylla Maxim.とし、赤色または緑色の花茎と普通葉(長さ3㎝以上)をもつものを狭義のイチヤクソウ P. japonicaKlenze ex Alef. として分類するよう2017年に記述されている(参考7)。Kew Scienceではこれを認めているが、World Flora Online(2021)、GBIFではPyrola subaphylla Maxim.はPyrola japonica Klenze ex Alef.のsynonymとしている。

参考

1) Flora of China
 Pyrola
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=127777
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Pyrola
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30000769-2
3) World Flora Online
 Pyrola
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000032303
4) 植物研究雑誌 J. Jpn. Bot. 68(1) 8-22 (1993)
 東アジア産カラフトイチヤクソウの分類
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_068_8_22.pdf
5) Bunrui 17(1): 63-66 (2017)
 立山でエゾイチヤクソウを確認
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunrui/17/1/17_01701-09/_pdf/-char/ja
6) 植物地理・分類研究 第66巻 1号 APG 68 (3): 181-192 (2017)
 ヒトツバイチヤクソウ Pyrola subaphylla Maxim.
 (ツツジ科イチヤクソウ連)の分類と分布 首藤光太郎ら
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/66/1/66_0661-16/_pdf/-char/ja
7) 神奈川県植物誌調査会ニュース第 87 号(2019)
 神奈川県内のベニバナ !? イチヤクソウ
http://flora-kanagawa2.sakura.ne.jp/fk/fk87.pdf