イチゴツナギ 苺繋

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Flora of Mikawa

イネ科 Poaceae イチゴツナギ属

別 名 ザラツキイチゴツナギ、チョウセンイチゴツナギ
中国名 硬质早熟禾 ying zhi zao shu he
学 名 Poa sphondylodes Trin.
イチゴツナギ小穂
イチゴツナギ小花
イチゴツナギ葉鞘
イチゴツナギ枝
イチゴツナギ
イチゴツナギ花序
イチゴツナギ果実
花 期 5~6月
高 さ (15~)30~50(~70)㎝
生活型 多年草
生育場所 道端、堤防、草地
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア
撮 影 幡豆町  11.5.31
稈はゆるく叢生し、高さ(15~)30~50(~70)㎝、直立または斜めに斜上し、堅くて丈夫で、花序の下はザラつき、まれに平滑、節は(2~)3~4個あり、最上部は上側に1/3(~1/2)以下。シュートは鞘外(extravaginal)。葉鞘は無毛、ザラつき、節間よりもはるかに短く、普通、葉身より長いかまたは等しい。葉身は平らで普通、堅く、長さ(4~)6~12㎝×幅0.15~0.25(~0.3)㎝。葉舌は白色の薄膜質、長さ(2~)3~5(~10)㎜、先は尖る。円錐花序は狭く、非常に密、長さ(4~)6~10(15)㎝、枝は短く、直立し、節ごとに2~5(6)本、輪生し、基部の枝は円錐花序の長さの1/6~1/2で、小穂が枝の基部近くに密集する。小穂は卵形~披針形、ときに非常に狭くて長く、緑色または草のような黄色、長さ3.5~5㎜、小花は2~5(~11)個つく。小軸(rachilla)は無毛または疣がある。苞頴(glume)は狭披針形、不等長、長さ2.5~4(~4.5)㎜、第1苞頴は第2苞頴より短い。護頴(lemma)は披針形、長さ3~4㎜、中央脈上に長毛があり、基部に長い縮毛がある。カルス(callus)はクモの巣状になる(webbed)かまたは無毛。果実は淡褐色、長さ1~1.3㎜。2n=28。
 ナガハグサは根茎が横に這い、葉先がボート状で葉舌が切形。オオスズメノカタビラは茎の基部が伏臥し、葉舌が鋭頭、小穂の上部の小花が小さい。コイチゴツナギは葉先が急尖頭、茎が扁平。ミゾイチゴツナギは花序が長く、枝が開出し、小穂の脈間に毛が多い。オオイチゴツナギは葉先がやや急尖頭、花序が短く、枝が開出し、小穂の脈間に毛がほとんどない。

イチゴツナギ属

  family Poaceae - genus Poa

 一年草または多年草。稈の基部がまれに膨れるか、球根状の鞘の基部になる。新しいシュートは鞘内(intravaginal)または鞘外(extravaginal)であり、まれに(中国では)偽鞘内(pseudointravaginal)、鞘内であるが、下部の葉身は減少または未熟であり、弱い分化の前出葉(prophyl)をもつ。最上部の稈の葉鞘はその長さの1/20~全長まで閉じる。葉舌は透明、膜質まれに紙質、ブレードは平ら~折り畳まれるかまたは内巻になり、外面に竜骨があり、内面は中脈の両側に1本の溝があり、先には船首がつく(prow-tipped)。花序は頂生の円錐花序、節ごとに枝が1~9本つく。花はすべて両性、または両性と雌性の混合(まれに雄性)、小穂内の上部に雌花があるかまたは、部分的から完全に雌の小穂または花序になる。小穂は側部が扁平、小花は(1~)2~8(~10)個つく。小軸(rachilla)は、苞頴(glume)の上および小花の間で関節で離れ(disarticulating)、最上部の小花は痕跡(vestigial)。ときに、胎生(vivipary)となる。苞頴はほとんどに強い竜骨があり、不等長またはほぼ等長。第1苞頴(lower glume)は1または3脈がある。第2苞頴(upper glume)は3(または5)脈がある。護頴(lemma)は側部が扁平、普通、明瞭な竜骨があり、5(~7)脈があり、先と上部の縁は膜質になり、尖端に芒は無く、まれに微突形となる。小花のカルス(callus:小花の基部にある小軸との接合部分に太く伸びた突起)は短く、切形、鈍形、無毛またはクモの巣状になり(背に綿毛の房がある)、まれに、護頴の基部の周りに毛の線状の列がある。内頴=内花頴(palea)はほぼ等長またはまれに護頴の長さの2/3以下になり、裂け目(gaping)は無く、竜骨は緑色、はっきりと分離し、普通、ザラつき、Poa sect. Micrantheraeの中では平滑、ときに、小直軟毛(pilulose)~絨毛(villous)があり、縁は普通、平滑、無毛。 鱗被(lodicules)は2個、雄しべは3本、葯はときに痕跡。子房は無毛。穎果(caryopsis)は長円形~紡錘形、断面が三角形~楕円形であり、ときに溝があり、分離するかまたは内頴に付着する。2n=14(–266)。x=7。
 世界に約570種あり、極地および北部~南部の温帯地域の全体に分布し、温帯林、山岳斜面、草地、湿地、草原、高山地域、ツンドラ、砂漠などの生息地、および人間の居住地周辺のほとんどの亜熱帯および熱帯の山々に広がっている。酸性から亜塩基性または亜塩性、乾燥した土壌から湿った土壌、海面から植生の上限まで分布域は広い。

イチゴツナギ属の主な種と園芸品種

1 Poa acroleuca Steud.  ミゾイチゴツナギ 溝苺繋
 日本全土、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は白顶早熟禾 bai ding zao shu he。湿った日陰の草が茂った場所、公園、荒地、道端、溝の横などに生える。
 一年草または短命の多年草、まばらに叢生する。稈は斜上~直立し、ときに基部でわずかに膨れ、ときに数珠状に膨れ、高さ30~85㎝×直径0.6~1㎜、平滑、無毛~下向きの小剛毛があり、節は3~4個あり、2節が突き出る。葉鞘は弱く竜骨があり、平滑またはまばらにザラつき、無毛または後ろ向きの小剛毛があり、長さ8~13㎝、葉身よりわずかに短いかまたは長く、最上部は長さの2/3以上閉じており、最下部の葉鞘は古くなると繊維状になる。葉身は平らで薄く、長さ7~20㎝×幅(1~)1.5~5(~11)㎜、表面は平滑~中程度にザラつき、やや光沢があり、縁は中程度~密にザラつき、先はボート形。葉舌は長さ0.5~1.5(~3)㎜、外側に小直軟毛(pilulose)があり、先は切形~円形、襟(collar)の縁には縁毛がある。円錐花序は開き、楕円形、狭卵形、またはピラミッド形(円錐形)、突き出し先が傾くか又はやや垂れ、長さ10~21㎝×幅3~10㎝、最長の節間は長さ3~5.5㎝。枝は細く、広く広がるか、または後屈し、節ごとに2~5本つき、細く、角(かど)があり、基部からザラつき、最も長い枝は長3~11㎝、上部の1/2に9~40個の小穂がつく。小穂は卵形、淡緑色~緑色、長さ2.5~5㎜、小花は(2~)3~5(6)個。胎生(vivipary)は無い。小軸(rachilla)の節間は長さ0.5~0.8㎜、平滑~まばらにザラつき、無毛または小直軟毛(pilulose)がある。苞頴(glume)はわずかに不等長、披針形、竜骨および脈は上部がザラつき、第1苞頴(lower glume)は長さ1.5~2.4㎜、1脈がある。第2苞頴(upper glume)は長さ2~2.8㎜、3脈があり、しばしば、最下の護頴(lemma)と同長かまたはわずかに長い。護頴(lemma)は長円形、長さ1.6~2.6(~3)㎜、5脈があり、先は鋭形~鈍形、竜骨は長さの5/6に短い絨毛があり、縁脈は3/4以下あり、中間脈は中程度に目立ち、脈間の区域は長さの4/5に小直軟毛があり、まれに無毛。カルス(callus)はまばらにクモの巣状になる(webbed)。内頴(palea)は護穎より短く、竜骨の間に小直軟毛があり、竜骨は平滑または長毛があり、まれに少数、先端に鈎があり、小直軟毛~絨毛が先まである。葯は長さ(0.4~)0.5~1(~1.3)㎜。花期および果期は4~6月。2n=28。
1-1 Poa acroleuca Steud. f. submoniliformis (Makino) T.Koyama タマミゾイチゴツナギ 玉溝苺繋
 本州、四国、九州、朝鮮に分布する。
 稈の基部が数珠状に膨れる。
1-2 Poa acroleuca Steud. var. ryukyuensis Koba et Tateoka  オキナワミゾイチゴツナギ 沖縄溝苺繋
 日本(沖縄)、中国原産。中国名は如昆早熟禾 ru kun zao shu he。
 護頴(lemma)の表面と中間脈は、無毛またはまばらに毛がある。

2 Poa alta Hitchc. アオイチゴツナギ 青苺繋
  synonym Poa pseudopalustris Keng f. ex L.Liu
  synonym Poa flavida Keng f. ex L.Liu
  synonym Poa vaginans Keng f.
 中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は高株早熟禾 gao zhu zao shu he。別名はヤセイチゴツナギ。日本にも帰化している。山の頂上、草が茂った斜面に生える。
 稈は叢生し、高さ(40~)60~110(~120)㎝、普通、丈夫で、直立し、ザラつき、節は3個ある。 上部の節間は約80㎝ 太さ2.5㎜。葉鞘はザラつき、葉身よりわずかに長い。葉身は平らで、ザラつき、[長さ4~12㎝]×幅2~4㎜。葉舌は膜質、長さ(0.2~)0.5~3.5㎜。円錐花序は狭く、長さ10~23㎝×幅(1~)2~4(~6)㎝。枝は真っすぐで、下部は裸出し、上部に4~6個の小穂がある。小穂は長さ3.5~8㎜、小花は2~5(~6)個、小軸(rachilla)は毛があり、刺があり、いぼ状または無毛。苞頴(glume)はほぼ等長、披針形、先はわずかに尖鋭形、長さ2.5~3.5(~5)㎜。護頴(lemma)は広披針形、長さ3~4㎜、竜骨はザラつき、縁脈の下半分と下1/3には絨毛があり、カルスにはまばらに絨毛があり、内頴(palea)の竜骨はザラつくか、または短い毛があり、間の領域は無毛。葯は長さ1.4~2㎜。花期は8月。2n=28, 35, 42。

3 Poa annua L. スズメノカタビラ 雀の帷子
 日本全土、ユーラシア、南北アメリカ、オーストラリア原産。中国名は早熟禾 zao shu he。英名はannual bluegrass , annual meadow grass, annual poa , purple-leaved annual meadow grass , creeping bluegrass。道端、畑、空地、荒地に生える。
 一年草、ときに越年生、まれに匍匐茎を出す。稈はゆるく叢生し、直立または斜上し、しばしば傾伏し、しばしば膝状に曲がり、柔らかく、高さ6~30(~45)㎝、滑らかで、節は1または2(~3)個、1(~2)個が出る。葉鞘はわずかに扁平、薄く、平滑、最上部は長さの約1/3が接している。葉身は薄緑色~暗緑色、平らまたは折り畳まれ、薄く、長さ2~12㎝×幅(0.8~)1~3.5㎜、縁はわずかにザラつき、先は鋭く先が尖る。葉舌は長さ0.6~3㎜、外側は平滑、無毛、先は鈍形、縁は不規則な歯状、平滑。円錐花序は開き、中程度に密集し、広卵形~ピラミッド形、長さ(1~)3~10㎝、長さは幅と同じ。枝は斜上し、広がり、または少数、後屈し、節ごとに1~2(~3)本つき、平滑、最長の枝は、普通、上部の1/2に3~5個の小穂をもつ。小穂は卵形~長円形、暗緑色~薄緑色、長さ(3~)4~5.5㎜、小花は3~5個つき、上部の稔性の小花はしばしば雌性。胎生(vivipary)にはならない。小穂の節間は長さ0.5~1.5㎜、平滑、無毛、隠れるか、または露出する。苞頴(glume)は不等長、平滑またはまれに竜骨があり、鈎をもつ。第1苞穎(下側)は披針形で鋭形~ほぼ扇形で鈍形、長さ1.5~2(~3)㎜、1脈がある。第2苞穎(上側)は楕円形、長さ2~3(~4)㎜、3脈があり、縁に角(かど)がある。護頴(lemma)は卵形で、長さ2.2~3.5㎜、先と縁は広く膜質で、中間の脈が目立ち、竜骨と縁と中間の脈に下部1/2に普通、絨毛があり、まれに全体が無毛になる。カルス(callus:小花の基部にある小軸との接合部分に太く伸びた突起)は無毛。内頴=内花頴(palea)は平滑、密に小直軟毛(pilulose)から短い絨毛がある。葯は長さ(0.6~)0.7~1.3㎜、普通、幅の2倍以上、または痕跡。花期は4~5月。果期は4~7月。2n=28(異 質4倍体)。
品種) 'MN184' , 'MN234' . TruePutt™
3-1 Poa annua L. var. reptans Hausskn. ツルスズメノカタビラ 蔓雀の帷子
 ヨーロッパ原産の帰化植物
 短命の多年草。基部以外の節から発根するもの。小穂基部軸に小刺針があり(無いものもある)、護頴表面に乳状突起の構造体を持つ。
3-2 Poa annua L. var. annua  アオスズメノカタビラ
 普通にあるスズメノカタビラは節から発根し、1~2㎝の根茎はあるが、蔓のように匍匐しないことが明らかになり、アオスズメノカタビラとした方がよいとする説が提案された。ツルスズメノカタビラはアオスズメノカタビラと同一か、又はアオスズメノカタビラの一形態ではないかとも言われている。アオスズメノカタビラの学名はまだ、定説が確立していない。両者は走査電子顕微鏡を使う観察により護穎表面の模様に違いがあり、これが判別の決め手である。スズメノカタビラは全体に黄色味が強く、護穎の中側脈に毛が多いものが多い。これに対し、アオスズメノカタビラは全体が緑色であり、葉が青味がかった緑色で、護穎の中側脈の毛が少ないものが多い。また、第一小花の葯が長さ0.6㎜以下であれば確実にスズメノカタビラであり、0.7(~1.3)㎜以上あればアオスズメノカタビラである。中間の0.6~0.7㎜の間のものは両者が混じり、電子顕微鏡観察が必要となる。 この他、アオスズメノカタビラは小軸の稜が大きめで、やや翼になるともいわれている。

4 Poa arctica R.Br.
 ヨーロッパ、アジア、北アメリカの北部に分布。英名はArctic bluegrass。
 多年草。普通、強いアントシアニンをもち、根茎がある。根茎は普通、よく発達し、ときに発達が不十分で、シュートは普通、1個。基部の分枝は主に鞘外(extravaginal)である。稈は高さ7.5~60cm、細くて丈夫、円柱形または弱く扁平、基部は普通、傾伏で、基部の上では分枝いない。節は円柱形、下部の節は普通、突き出ず、上部の1~2個は上に突き出る。鞘は長さの(1/6)1/5~2/5が閉じ、円柱形、無毛、平滑またはまばらにザラつき、基部の鞘の基部は無毛、上部の鞘はの長さが葉身の長さの1.4~4(5.3)倍、襟は平滑、無毛。葉舌は長さ(1)2~7 mm、無毛、平滑またはまばらからまれに中程度にザラつき、先は普通、円形~鈍形、または鋭形、まれに切形、全縁または切り裂かれる。葉身は幅1~6 mm、平らまたは折りたたまれ、やや内巻き、平滑、無毛、先は広い船首形(prow-shaped)、茎葉の葉身はほぼ等長または次第に上部で小さくなり、しおれる葉身(flag leaf blades)は長さ0.7~9cm。円錐花序は長さ(2)3.5~15 cm、卵形~広ピラミッド形、普通、開き、まばらで、小穂が10~40(60)個つき、下部の節間は長さ1.5(3)cmより短く、節あたり(1)2~5の枝をつける。枝は長さ1.5~6 cm、鞘から出た直後に広がり、細く、曲がりくねり(sinuous)、屈曲し(flexuous)、かなり頑丈で真っすぐ、円柱形、平滑またはまばら~まれに中程度にザラつき、(1)2~5個の小穂があり、小穂は密集しない。小穂は長さ(3.5)4.5~8 mm、長さは幅の3.5倍以下、側部が扁平で、ときに球根状(bulbiferous)。小花は(2)3~6個、まれに球根を作る(bulb-forming)。小軸(rachilla)の節間は平滑または微細突起があり(muriculate)、下部の節間は無毛またはまばらに柔らかい微軟毛~長絨毛がある。苞頴(glume)は披針形~広披針形、明瞭にまたは弱く竜骨があり、竜骨は普通、平滑、ときに上部がまばらにザラつき、側脈は普通、中程度に明瞭。第1苞頴(lower glumes)は長さ(3)3.5~5(6) mm、3脈がある。第2苞頴(upper glumes)は長さ3.5~5.5(6.5) mm、最下部の護頴(lemma)をわずかに超えるか、または明瞭に短い。カルス(calluses)は無毛またはクモの巣状になり(webbed)、毛はまばらで短く、または護頴(lemma)の長さの 1/3 ~ 2/3を超える。護頴(lemma)は長さ(2.7)3~6(7)mm、披針形~広披針形、普通、強い紫色、明瞭な竜骨があり、竜骨および縁脈および側脈に長い絨毛があり、側脈の毛はときに、短くなり、側脈は明瞭、、肋間の区域は短い絨毛~少なくとも基部近くに柔らかい微軟毛があり、他の区域は無毛、平滑~弱く微細突起があり(muriculate)、および/または、普通、まばらにザラつき、まれに中程度にザラつき、縁は広く透明で、無毛、先は鋭形。内頴(palea)の竜骨は、普通、その長さの大部分に短絨毛~長絨毛があり、まれにほぼ無毛でザラつく、肋間の区域は広く、普通、少なくともまばらに柔らかい微軟毛があり、まれに無毛、先はザラつく。葯は長さ1.4~2.5mm、ときに発達の後半に中絶されることもある。2n=36, 42, 56, 60, 62-68, 70, ca. 72, 74-76, 78~80, 82~84, 86, 88, 99, 106。
4-1 Poa arctica R.Br. subsp. arctica キョクチソモソモ 
 小穂は長さ(3.5)4~7㎜。護頴(lemma)は長さ(2.7)3~4.5㎜。葉身は幅1.5~3mm。小軸(rachillas)は普通、無毛。植物は広く分布。
4-2 Poa arctica R.Br.Poa arctica R.Br. subsp. caespitans Simmons ex Nannf. クモマソモソモ 
 中国、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は极地早熟禾 ji di zao shu he。
 よく発達した根茎が無い。葯は発達の後半に中断される。北極圏の植物である。

5 Poa bulbosa L. チャボノカタビラ 矮鶏の帷子
 中国、アフガニスタン、北西インド、カザフスタン、キルギスタン、ネパール、パキスタン、ロシア(シベリア)、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、アフリカ、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は鳞茎早熟禾 lin jing zao shu he。英名はbulbous bluegrass , bulbous meadow grass。オーストラリア、ニュージーランド、南北アメリカ、太平洋諸島に帰化。
品種) 'P-4874'
5-1 Poa bulbosa L. var. vivipara Koeler ムカゴイチゴツナギ 
 中国名は胎生鳞茎早熟禾 tai sheng lin jing zao shu he。
 すべてまたはほとんどの小穂は胎生である。護頴(lemma)は長さ3~4㎜、無毛または基部の1または2個が有毛。上部の小花は胎生(viviparous)であり、小球根(bulbils)を形成し、小球根の護頴(lemma)は基部で膨れ、基部が紫色になり、先は伸び、葉身を発達させる。カルスは無毛またはクモの巣状になる(webbed)。葯はときに下部の小花でよく発達する。2n=21, 28, 39, 42。

6 Poa chapmaniana Scribn. コスズメノカタビラ 小雀の帷子
 USA原産。英名はChapman's bluegrass。葯は1個、長さ0.1~0.2(0.3)㎜。

7 Poa compressa L. コイチゴツナギ 小苺繋
 (日本、)中国、台湾、インド(ヒマーチャルプラデーシュ州)、カザフスタン、ロシア(極東、シベリア)、アフリカ、南西アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、南北アメリカ、太平洋諸島原産。中国名は加拿大早熟禾 jia na da zao shu he。別名はヒライチゴツナギ。ヨーロッパ原産の帰化植物とされている。林内の湿った草が茂った場所に生える。
 多年草、強い根茎があり、シュートは鞘外(extravaginal)。稈は針金状、扁平、直立し、しばしば基部で膝状に曲がり、単純またはまばらに叢生し、高さ15~50(~60)㎝、幅1.5~2㎜、節は扁平、3~6個つき、2~5個が出る。葉鞘は、竜骨状に圧縮され、平滑、最上部の葉鞘は長さの1/10~1/5が閉じている。葉身は平らで、長さ5~12㎝×幅1.4~4㎜、表面は平滑または上面はザラつく。葉舌は長さ1~3㎜、外側がザラつき、切形~鈍形。円錐花序は狭くなるかまたはわずかに開き、直立し、狭く、長さ4~11㎝×幅0.5~1(~3)㎝。枝は直立または急に斜上し、またはやがて広がり、節ごとに1~3本出て、広がり、基部から角(かど)が密にザラつき、最長の枝は長さ2~4㎝で、基部からまたは上部の2/3に密集して小穂がつく。小穂は卵状披針形、長さ3.5~5㎜、小花は2~4個つく。苞頴(glume)は披針形、ほぼ等長、長さ2~3㎜、3脈があり、先は鋭形または薄い微突形、竜骨はザラつく。小軸(rachilla)は平滑または微細なでこぼこがある(bumpy)。護頴(lemma)は長円形、長さ2.3~3.5㎜、先は鈍形、竜骨は長さの2/3に短い絨毛があり、縁脈は1/3以下、中間脈はかすかになり、脈間の領域は無毛。カルス(callus)はまばらにクモの巣状になる(webbed)かまたは無毛。内頴(palea)の竜骨はザラつく。葯は長さ1.3~1.8㎜。花期および果期は6~8月。2n=14, 35, 42, 45, 49, 50, 56, 59。

8 Poa crassinervis Honda ツクシスズメノカタビラ 筑紫雀の帷子
 日本(本州、四国、九州)、中国南西部に分布する。空地、道端、民家の近く、駐車場の隅、畑の縁、休耕田などに生える。
 1年草(または越年草)、叢生し、緩く群生する。稈は傾伏し、長さ10~30㎝、下部の節からの発根する。横枝は豊富。葉は茎葉。葉鞘はその長さの大部分が筒状で、その長さの0.5~0.66が閉じた状態で、長さ2~6㎝、平滑。葉舌は縁毛が無い膜質、長さ1.8~2.5㎜、白色。葉身は長さ4~10㎝×幅1.8~4mm。葉身の先は急に鋭くなる。花序は円錐花序、開き、楕円形、長さ6~10㎝×幅2~3cm、花序の1次枝は広がり、1~3本あり、単純で長さ2~5㎝、各下部の枝に6~12個の稔性の小穂がつき、枝は平滑。小穂は単生、稔性の小穂は小花柄(小梗)がある。小花柄は長さ1~1.5㎜、平滑。小穂は3~6個の稔性の小花がつき、頂部の小花は縮小して損なわれる。小穂は楕円形、側部が扁平、長さ4~6㎜×幅1.5~2㎜、熟すと別れ、それぞれの稔性の小花の下の関節で離れる。小軸(rhachilla)の節間は平滑。小花のカルス(callus)は無毛。苞頴(glume)は宿存し、等長、小穂より短い。第1苞頴(lower glumes)は卵形、長さ1.2~1.7㎜、第2苞頴(upper glumes)の長さの0.66倍、膜質、縁がはるかに薄く、1竜骨があり、1脈があり、側脈は無く、先は鋭形。第2苞頴(upper glumes)は披針形、長さ2~2.5㎜、隣接する稔性の護頴(lemma)の長さ0.75~1倍、膜質、縁が透明、1竜骨があり、3脈があり、先は鋭形。稔性の護頴(lemma)は卵形、長さ2~3.5㎜、膜質、縁がはるかに薄く、竜骨があり、5脈がある。護頴(lemma)は側脈が目立ち、表面に毛があり、先は鈍形または鋭形。内頴(palea)は護頴の長さの0.9倍で、竜骨は繊毛がある(ciliolate) 。先の不稔の小花は未発達であるが稔性の小花に似ている。鱗被(lodicules)は2個、膜質。葯は3個、長さ0.5~0.8㎜。穎果(caryopsis)は付着性の果皮(adherent pericarp)をもつ。へそは点状(punctiform)。2n=28。

9 Poa eminens J.Presl オニイチゴツナギ 鬼苺繋
  synonym Poa rigens Trin. ex Scribn. & Merr.
 日本(北海道)、ロシア、アラスカ、カナダ原産。英名はeminent bluegrass , large-flower blue grass , largeflower speargrass。
 多年草、しばしば粉白色、根茎をもち、根茎は丈夫で、太さ約2㎜、稈は単生。基部の分枝は鞘外(extravaginal)。稈は高さ20~100㎝、太さ約2㎜、円柱形または弱く扁平、節は円柱形、0~1個が突き出る。鞘はその長さの1/6~1/3で閉じ、ときに透明の膜によってその長さの3/4以下が融着し、円柱形、いくつかの基部の鞘の基部には密に下向きの毛があり、毛は長さ0.1~0.2㎜、太い。葉舌は長さ1~3.5㎜、イエロークリーム色~褐色、切形、ギザギザになり、繊毛がある。葉身は幅(2)4~11㎜、平ら、厚く、平滑またはまばらにザラつき、先は広い船首形(prow-shaped)。円錐花序は長さ8~30cm、直立し、ゆるく狭まり、かなり密集し、40~100個以上の小穂がつく。枝は長さ3~10cm、急に斜上し、円柱形、平滑またはまばらにザラつき、ときに節に毛の房があり、5~20個の小穂がつく。小穂は長さ5~12㎜、側部が扁平、小花は2~6個つく。小軸(rachilla)は節間が平滑、まれにまばらに微軟毛がある。苞頴(glume)は披針形、ほぼ等長または第2苞頴(upper glumes)は第1苞頴(lower glumes)より2㎜長く、ときに最下の護頴(lemma)を超え、明瞭な竜骨があり、平滑、しばしば粉白を帯び、先は鋭形~尖鋭形。第1苞頴(lower glumes)長さ4~9.5mm、1~3(5)脈がある。第2苞頴(upper glumes)は長さ5.5~10㎜、(1)3(5)脈がある。下部の護頴(lemma)のカルスは、普通、、毛の冠(crown of hairs)をもち、毛は長さ1~2㎜。護頴(lemma)長さ4.5~7㎜、披針形、5~7脈があり、明瞭な竜骨があり、薄い膜質、無毛、または竜骨と縁脈に長い絨毛があり、肋間は無毛または小剛毛があり、中程度から密にザラつき、縁は普通、下部に長さ0.2㎜以下の毛あり、先は鋭形。内頴(palea)の竜骨はザラつく。葯は長さ1.7~3.2㎜。2n=28, 29+-, 42, 62。

10 Poa fauriei Hack. アイヌソモソモ 
 日本固有種。北海道、本州の福井県以北、岐阜県、兵庫県に分布。滝付近の岩場などに生える。
 多年草、叢生し、根茎は短い。稈は傾伏し、長さ20~60cm、下部の節から発根する。葉鞘は平滑。葉舌は縁毛の無い膜質、長さ(0.5~)1mm、切形。葉身は長さ4~12cm×幅2~3mm、先は鋭形。円錐花序は開き、披針形または卵形、下を向き、長さ2~10cm×幅1~3cm。円錐花序の一次枝は2本あり、各下部の枝に1~5個の稔性の小穂をつける。小穂は単生、稔性の小穂は小花柄があり、4~6個の稔性の小花からなり、頂部の小花は縮小して無くなる(diminished)。小穂は卵形、側部が扁平、長さ5~7㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下の関節で離れる。小軸(rhachilla)の節間は平滑。小花のカルス(callus)は無毛または羊毛状の毛がある。苞頴(glume)は宿存し、等長、小穂より短い。第1苞頴(lower glume)は披針形、長さ3.5~4.7㎜、第2苞頴(upper glume)の長さの1倍、膜質、縁はかなり薄く、1竜骨、1脈があり、側脈は無く、先は鋭形。第2苞頴(upper glume)は披針形、長さ3.5~4.7㎜、隣接する稔性の護頴(lemma)の長さの0.9倍、膜質で縁は透明、1竜骨、3脈があり、先は鋭形。稔性の護頴(lemma)は長円形、長さ4~5mm、膜質、竜骨があり、5(~7)脈がある。護頴は表面に毛があり、基部に毛があり、脈に毛があり、先はギザギザで、鈍形。頂部の不稔の小花は未発達であるが稔性の小花に似ている。鱗被(lodicules)は2個、膜質。葯は3個、長さ2~3㎜。穎果(caryopsis)は付着性の果皮(adherent pericarp)をもつ。へそは点状(punctiform)。花期は4~5月(低地)。2n=28。

11 Poa glauca Vahl タカネタチイチゴツナギ 広義 
 ※Poa glauca Poir.、Poa bulbosa Steud.とは異なり、これらはPoa sinaica Steud.に統合されている。  日本(本州(中部)、韓国、中国、台湾、モンゴル、ロシア、インド、カザフスタン、キルギスタン、ネパール、パキスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、南西アジア(イラン)、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は灰早熟禾 hui zao shu he。英名はGlaucantha bluegrass。山地の乾燥した砂利の斜面、川原の芝生の中などに生える。
 稈は直立し、粉白色、ときに強く紫色を帯び、高さ(5~)10~15(~35)㎝、節は1または2個つき、最上部の節は稈の1/5までにつき、鞘で覆われる。最上部の節間は 幅1.5~2㎜以下。シュートは常に鞘外(extravaginal)であり、密に房状になっている場合でも、鞘外である。葉鞘は葉身より長く、平らまたは折りたたまれており、ときに非常に柔らかく、しおれ、幅1~2㎜、縁および脈の両側がザラつく。葉舌は長さ1~1.5(~2)㎜。円錐花序は狭まり、後でかなり開き、長さ4~7cm、枝は節ごとに1~2本つき、長さ2~3㎝、少数の小穂が散在する。小穂は長円状卵形、長さ(3.8~)4~5(~7)㎜、紫色を帯び、小花が2~4個つく。苞頴(glume)は狭披針形、不等長、第1小花の護穎(lower lemma)と同長。護頴(lemma)は狭披針形、第1小花の護穎は長さ約4㎜、竜骨は長さの1/2に短い絨毛があり、縁脈は長さの1/3にある。 カルスはまばらにクモの巣状になる(webbed)かまたは無毛。花期は6~8月。
11-1 Poa glauca Vahl var. glauca タカネタチイチゴツナギ 高峰苺繋
 稈は高さは 5~15(~20)㎝、普通、青白色または帯紫色。葉身は普通、折り畳まれる。円錐花序の枝はかなり太く、堅く、斜めに斜上する。カルスはクモの巣状になる(webbed)。護頴(lemma)は長さ2.5~3.5㎜。2n=42~49, 50, 56, 60, 63, 64, 65, 70, 72, 75, 78。
11-2 Poa glauca Vahl var. kitadakensis (Ohwi) Ohwi キタダケイチゴツナギ 
  synonym Poa kitadakensis Ohwi
 World Flora Onlineでは変種に分けない。護頴(lemma)は大きく長さ4~4.5mmある。

12 Poa hakusanensis Hack. ハクサンイチゴツナギ 白山苺繋
  synonym Poa yezomontana Honda
 日本固有種。本州の中部以北に分布。亜高山の山林に生える。
 多年草、叢生し、緩く、群生する。根茎は短い。稈は直立し、長さ35~70cm×直径0.8~1.5 mm、2~3個の節がある。葉鞘はその長さの大部分が筒状、その長さの全体が閉じ、竜骨は無く、平滑。葉舌は縁毛の無い膜質、長さ1mm、先は切形。葉身は長さ10~20cm×幅2~6mm、縁は平滑、先は漸尖形。花序は円錐花序。円錐花序は開き、卵形、長さ8~16cm×幅3.5~9cm。一次枝は2~4本あり、長さ3~6cm。小穂は単生。稔性の小穂は小花柄があり、2~3個の稔性の小花からなる。頂部の小花は未熟で不稔。小穂は楕円形または卵形、側部が扁平、長さ5~7㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下の関節で離れる。小軸(rhachilla)の節間は平滑。小花のカルス(callus)は羊毛状の毛がある。苞頴(glume)は宿存し、等長、小穂より短い。第1苞頴(lower glume)は披針形、長さ3.5~3.7mm、第2苞頴(upper glume)の長さの0.75~0.9倍、膜質、 1竜骨、1~3脈があり、側脈はないかまたは不明瞭、先は鋭形。第2苞頴(upper glume)は披針形、長さ3.8~4.8mm、隣接する稔性の護頴(lemma)の長さの0.75~0.9倍、膜質、1竜骨、3脈があり、表面はザラつき、脈の上は荒く、先は鋭い。稔性の護頴(lemma)は卵形、長さ5~5.2㎜、;膜質、竜骨があり、5脈がある。護頴の中脈は毛があり、基部に毛があり、表面は毛があり、基部に毛があり、脈の上に毛がある。護頴の先は鋭形。先端の不稔の小花は未発達であるが、稔性の花に似ている。鱗被(lodicules)は2個、膜質。葯は3個。穎果(caryopsis)は付着性の果皮(adherent pericarp)をもつ。へそは点状(punctiform)。2n=70。

13 Poa hisauchii Honda ヤマミゾイチゴツナギ 山溝苺繋
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国原産。中国名は久内早熟禾 jiu nei zao shu he。別名はフジイチゴツナギ 。日陰で湿った開けた林内、草地に生える。
 1年草または短命の多年草。稈は斜上~直立し、高さ20~60㎝、節は3~4個、葉鞘は節間よりも短く、平滑またはザラつく。葉身は平ら、灰緑色、長さ4~8㎝×幅1~3㎜、表面と縁はザラつく。葉舌は長さ0.5~1.5㎜、外側に小直軟毛(pilulose)があり、先は切形~円形、襟の縁に縁毛がある。円錐花序は狭長円形で、長さ8~15㎝、最も長い節間は長さ3~5cm、枝は直立または曲がって斜上し(ときに果時に広がる)、節ごとに2~3(~5)本つき、細く、基部から角(かど)がザラつき、最も長い枝は長さ2~6㎝、上部の1/2に5~15の小穂がつく。小穂は長円形~卵形、緑色、長さ4~5㎜、小花は3~4個つく。胎生(vivipary)はない。小軸(rachilla)の節間は長さ0.6~0.9㎜、無毛。苞頴(glume)はわずかに不等長、披針形、竜骨および脈は上部がザラつき、第1苞頴(lower glume)は長さ2~2.4㎜、1脈があり、先は尖鋭形。第2苞頴(upper glume)は長円形~披針形、長さ2.2~2.8㎜、3脈があり、先は尖鋭形。護頴(lemma)は長さ2.8~3.2㎜、竜骨は長さの3/4に絨毛があり、縁脈では1/2以下、脈間は無毛、または竜骨近くにまばらに小直軟毛(pilulose)がある。カルスはクモの巣状になる(webbed)。内頴(palea)は護頴よりも明らかに短く、竜骨に小直軟毛(pilulose)がある。葯は長さ(0.3~)0.4~0.7㎜。花期は6~7月。2n=28。

14 Poa khasiana Stapf タイワンカタビラ 
  synonym Poa formosae Ohwi
 中国、台湾、インド(カシーヒルズ)、ミャンマー原産。中国名は喀斯早熟禾 ka si zao shu he。

15 Poa kumgansani Ohwi チョウセンタチイチゴツナギ 
 北海道、本州の中部地方(長野県、山梨県、静岡県、富山県、愛知県)に分布。
 Kewscience、GBIFではPoa nemoralisのsynonymとされ、独立種と認められていない。
 タチイチゴツナギ(Poa nemoralis)に似るが、葉身が葉鞘に比べ著しく長い。護穎は軟らかく、縁が白色帯び、先が尖鋭形。

16 Poa lanata Scribn. & Merr. ミヤマイチゴツナギ 深山苺繋
  synonym Poa malacantha Kom. var. shinanoana (Ohwi) Ohwi
  synonym Poa shinanoana Ohwi
  synonym Poa malacantha Kom. ムラサキソモソモ 
 日本(本州の中北部~東北地方南部)、朝鮮、ロシア、北アメリカ、グリーンランド原産。 英名はlanate bluegrass , arctic bluegrass hairy bluegrass。別名はタカネイチゴツナギ。高山帯の草地や岩礫地に生える。
 多年草、叢生し、緩く、群生する。根茎は無い。稈は膝状に曲がり(geniculately)、斜上し、長さ15~30㎝、1~2節がある。稈の節間は上部では無毛。側枝は無い。 葉舌は縁毛の無い膜質、長さ0.5~1mm。葉身は長さ2~5㎝×幅2~2.5mm、表面はザラつき、上面は粗く、先は急な鋭形。花序は円錐花序、開き、卵形、長さ5~6㎝。小穂は単生。稔性の小穂は小花柄があり、3~5個の稔性の小花からなる。頂部の小花は縮小して無くなる(diminished)。小穂は卵形、側部が扁平、長さ4.5~5mm、熟すと別れ、それぞれの稔性の小花の下の関節で離れる(disarticulating)。小軸(rhachilla)の節間は長さ1mm、直軟毛がある。小花のカルスは羊毛状の毛がある。苞頴(glume)は宿存性、等長、小穂より短い。第1苞頴(lower glume)は披針形、長さ3mm、第2苞頴(upper glume)の長さの0.9倍、膜質、縁はかなり薄く、1竜骨、3脈があり、表面はザラつき、上面は粗い。籾殻の頂点が鋭い。第2苞頴(upper glume)は披針形、長さ3.5mm、隣接する稔性の護頴(lemma)の長さの1倍、膜質、縁は透明、1竜骨、3脈があり、表面はザラつき、上面は粗く、先は鋭形。稔性の護頴(lemma)は長さ3.5mm、膜質、竜骨があり、5脈がある。護頴(lemma)は中脈に毛があり、縁に毛があり、先は鋭形。内頴(palea)は護頴の長さと同長、竜骨は繊毛があり(ciliolate)、内頴の表面には微軟毛があり、側面と下面に毛がある。先端の小花は未発達でも稔性の小花に似ている。鱗被(lodicules)は2個、膜質。葯は3個、長さ1.8mm。穎果(caryopsis)は付着性の果皮(adherent pericarp)をもつ。へそは点状(punctiform)。花期は7~8月。2n=63~98。
16-1 Poa malacantha Kom. var. shinanoana (Ohwi) Ohwi f. vivipara (Ohwi) Ohwi コモチミヤマイチゴツナギ 子持深山苺繁
  synonym Poa yatsugatakensis f. vivipara (Ohwi) T.Shimizu
 別名はタカネイチゴツナギ。KewscienceではPoa lanataに含める。

17 Poa macrocalyx Trautv. et C.A.Mey. カラフトイチゴツナギ 広義 
  synonym Poa tatewakiana Ohwi  ホソバナソモソモ 
 日本、サハリン、アラスカ、USA原産。海岸に生える。
 多年生。稈は単生または叢生する。根茎は長く伸びる。匍匐枝がある。稈は直立し、長さ22~75cm。稈の節間は円柱形、平滑。側枝が無い。葉はほとんどが根生葉。葉鞘は平滑、表面は無毛。葉舌は縁毛が無く、膜質、長さ2.5~5.5㎜、先はギザギザ。葉身は平らまたは2つ折り、長さ4~12cm×幅2~3mm、先は急に鋭形。花序は円錐花序、開き、楕円形または卵形、密または緩く、長さ4~12cm、一次の枝は斜上または広がる。小穂は単生。稔性の小穂は小花柄があり、2~6個の稔性の小花からなる。頂部の小花は縮小して無くなる(diminished)。小穂は卵形、側部が扁平、長さ6~11.2mm、熟すと別れ、それぞれの稔性の小花の下の関節で離れる(disarticulating)。小軸(rhachilla)の節間は平滑。小花のカルスは羊毛状の毛がある。苞頴(glume)は宿存性、等長、小穂より短い。第1苞頴(lower glume)は楕円形、長さ7mm、第2苞頴(upper glume)の長さの1倍、膜質、1竜骨、3脈があり、先は鋭形。上第2苞頴(upper glume)楕円形、長さ4~8㎜、隣接する稔性の護頴(lemma)の0.8~1倍、膜質、1竜骨、3脈があり、一次脈はザラつき、先は鋭形。稔性の護頴(lemma)は楕円形、側面(profile)が長円形、長さ5~8㎜、膜質、竜骨があり、5脈がある。護頴の中脈に毛があり、表面は無毛~直軟毛があり、縁に毛があり、先は鋭形。内頴(palea)は護頴の長さと同長、先端の不稔の小花は未発達であるが稔性の花に似ている。鱗被(lodicules)は2個、膜質。葯は3個、長さ1.7~2.5mm。穎果(caryopsis)は付着性の果皮(adherent pericarp)をもつ。へそは点状(punctiform)。2n=約42~70(6~10倍体)。
17-1 Poa macrocalyx Trautv. et C.A.Mey. var. macrocalyx ザラバナソモソモ 

17-2 Poa macrocalyx Trautv. et C.A.Mey. var. fallax (Hack.) Ohwi  ワタゲソモソモ 

18 Poa matsumurae Hack. イトイチゴツナギ 糸苺繋
  synonym Poa takeshimana Honda  タケシマイチゴツナギ 
 日本(本州の中部以北)、朝鮮に分布。別名はイワテイチゴツナギ。山地に生える。
 多年草。叢生し、緩く群生する。匍匐枝がある。稈は直立し、長さ35~75㎝×直径1~1.25㎜、2~3節がある。稈の節間は円柱形。葉は主に根生葉。葉鞘はその長さの大部分が開き、竜骨は無く、平滑、表面は無毛または毛がある。葉舌は縁毛の無い膜質、長さ1~2mm、白色、切形または鈍形。葉身は長さ12~25㎝×幅1.2~3.5mm、表面は無毛~有毛、上面は毛があり、先は漸尖形。花序は円錐花序、開き、楕円形または卵形、長さ6~15cm×幅3~5cm。花序の1次枝は3~5本、長さ1.7~6cm、枝は毛細血状。小穂は単生。稔性の小穂は小花柄(小梗)があり、小花柄はザラつき、稔性の小花、3~5個からなり、頂部の小花は縮小して無くなる(diminished)。小穂は楕円形または卵形、側部が扁平、長さ4.5~6.2㎜×幅2.5~3㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下の関節で離れる。小軸(rhachilla)の節間は平滑。小花のカルス(callus)は羊毛状で、カルスの毛は護頴(lemma)の長さの0.6倍の長さである。苞頴(glume)は宿存し、等長、小穂より短い。第1苞頴(lower glume)は披針形、長さ2.5~3㎜、第2苞頴(upper glume)の長さの0.9倍、膜質、1竜骨があり、1脈がある。第1苞頴(lower glume)は一次脈がザラつき、側脈は無く、先は鋭形。第2苞頴(upper glume)は披針形、長さ2.8~3.5mm、隣接する稔性の護頴(lemma)の長さの0.9倍、膜質、1竜骨があり、3脈があり、一次脈はザラつき、先は鋭形。稔性の護頴(lemma)は楕円形、長さ3.2~4mm、膜質、縁はかなり薄く、竜骨があり、3~5脈があり、中脈は下部に毛があり、側脈は1次は明瞭だが、中間の脈(intermediates)は不明瞭、表面は下部に毛があり、脈上に毛がある。護頴(lemma)は先が鋭形。内頴(palea)の竜骨はザラつく。先端の不稔の小花は未発達であるが稔性の花に似ている。鱗被(lodicules)は2個、膜質。葯は3個、長さ1.7~2㎜。穎果(caryopsis)は付着性の果皮(adherent pericarp)をもつ。へそは点状(punctiform)。2n=28(4倍体)。

19 Poa nankoensis Ohwi  ナンコイチゴツナギ 
 台湾原産。中国名は南湖大山早熟禾 nan hu da shan zao shu he

20 Poa nemoralis L. タチイチゴツナギ 立苺繋
  synonym Poa kumgansani Ohwi  チョウセンタチイチゴツナギ 
 日本(本州の中部地方)、韓国、中国、ブータン、インド、カザフスタン、キルギスタン、モンゴル、ネパール、パキスタン、ロシア、タジキスタン、ウズベキスタン。 南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は林地早熟禾 lin di zao shu he。北アメリカに帰化している。林内の斜面、日陰で湿った場所、林縁、茂みの間の草地などに生える。
 稈は緩く叢生し、高さ30~80(~100)cm、直立または軽く膝状に曲がり、節は3~5(~6)個、最上部の節は1/2またはそれ以上上にある。 葉鞘は平滑またはザラつき、葉身より短い。葉身は平らで柔らかく、長さ5~12㎝×幅1~3㎜、縁と両面がザラつく。葉舌は長さ0.2~1(~1.5)㎜、切形~鈍形。円錐花序は細く、長さ5~15(~22)㎝、枝は広がり、節ごとに2~5本つき、基部の1次枝は円錐花序の長さの1/2~2/3で、上部の1/2に小穂がつく。小穂は披針形、長さ3.5~5(~6)mm、小花はほとんどが3個つく。小軸(rachilla)は直軟毛がある(pilose)。苞頴(glume)は狭披針形、長さ2.5~3.7㎜。護頴(lemma)は長円状披針形、長さ2.5~3.7(~4.2)㎜、竜骨はその長さの1/2に短い絨毛があり、縁脈はその1/3以下にあり、先は膜質。カルス(callus)はまばらにクモの巣状になり(webbed)、まれに無毛。内頴(palea)は平滑で竜骨の間は無毛。葯は長さ1.3~1.5㎜。花期は5~6月。2n=14, 35, 70。

21 Poa nipponica Koidz. オオイチゴツナギ 大苺繋
  synonym Poa nepalensis (Wall. ex Griseb.) Duthie var. nipponica (Koidz.) Soreng et G.H.Zhu
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、日本、中国原産。中国名は日本早熟禾 ri ben zao shu he  1年草または短命な多年草。高さ30~50㎝。茎は叢生し、基部に葉を多数つけ、基部が肥厚する。葉は幅3~6㎜、無毛、平滑、葉先はボート形。葉舌は白色の薄膜質、長さ1~2㎜。葉鞘は無毛、平滑。茎の先に長さ10~15㎝の卵形の花序をつける。枝は各節から1~4個出て、長さは3~5㎝と短い。小穂は長さ4~5㎜広卵形、小花は3~5個。苞頴は鋭頭、やや不同長。護頴は長さ2.5~3㎜。果実は披針形、腹部が窪む。2n=28, 42, 56。花期は4~5月。

22 Poa ogamontana Mochizuki オガタチイチゴツナギ 男鹿立苺繋
 日本固有種 本州(北部)に分布。秋田県男鹿半島で発見された(望月1966)。別名はオガイチゴツナギ。山地に生える。
 やや小型の多年草、根茎はゆるく叢生し、匍匐枝を生じる。稈はまばらに叢生するか単生し、高さ10~23cm、平滑。全草、粉白を帯びる。葉は新鮮時、粉緑色、長さ4~10㎝×幅2~4㎜、葉鞘の下部は一部赤紫色を帯びる。葉舌は短く切形(截形)で長さ0.5mm。花序軸および枝は平滑。小穂は粉緑色で紫色を帯びることがあり,長さ3~5mmで2~3小花を生じ,小軸はやや長い。葯は長さ1.5~1.8mm。護穎には竜骨の基部付近に長い毛(綴毛:てつもう)がある。一見するとスズメノカタビラに似ているが、地下に匍匐枝があること、内穎の竜骨に伏軟毛がなく、粗渋である(ザラつく)ことから容易に区別することができる。染色体数は2n=42(6倍体)。

23 Poa palustris L. ヌマイチゴツナギ 沼苺繋
 朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、インド、カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、タジキスタン、南西アジア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は泽地早熟禾 ze di zao shu he。英名はfowl bluegrass。日本に帰化している。斜面や湿地の草原に散在する茂みの草地に生える。
 稈は緩く叢生し、高さ40~80(~120)㎝、直立またはわずかに膝状に曲がり(geniculate)、まれに、基部近くで分枝し、節は5~6個つき、最上部の節は真ん中以上につく。シュートは鞘外(extravaginal)。葉鞘は平滑、まれにザラつき、葉身の長さと同長または短い。葉身は平ら、長さ8~20 cm×幅2~3(~5)mm。葉舌は長さ2~3mm。円錐花序はわずかに狭く、長さ10~20(~30)㎝、枝は斜めに斜上し、節あたり3~8本つき、基部の1次枝は円錐花序の長さの1/2~2/3、上部1/2に小穂がつく。小穂は卵状長円形、黄緑色、長さ2.5~5(~7)mm、小花は(2~)3~5(~7)個つく。小軸(rachilla)はザラつくかまたは疣があり、まれに平滑。苞頴(glume)はほぼ等長、長さ2~3.5(~4)mm。護頴(lemma)は長さ3~3.5(~4)mm、竜骨はその長さの1/2に短い絨毛があり、縁脈はその1/3にあり、先は金色またはまれに銀色になり、膜質。 カルスはクモの巣状になる(webbed)。内頴(palea)の竜骨はザラつき、竜骨の間の区域は平滑で無毛。葯は長さ1.2~1.5(~2)mm。花期は6~7月。2n=28, 30, 32, 42。

24 Poa platyantha Kom. キタチシマソモソモ 
 千島列島、ロシアに分布。

25 Poa pratensis L. ナガハグサ 長葉草 広義
 韓国、アフガニスタン、ブータン、インド、インドネシア、カザフスタン、キルギスタン、モンゴル、ミャンマー、ネパール、ニューギニア、パキスタン、ロシア、スリランカ、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、アフリカ、南西アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北アメリカ、太平洋諸島、南アメリカ原産。中国名は草地早熟禾 cao di zao shu he。英名はKentucky bluegrass, Smooth meadowgrass。別名はケンタッキーブルーグラス。温帯から北極の適度に湿った場所から湿った場所まで、沿岸の牧草地から林の陰、高山およびツンドラまで、しばしば荒地などに生える。日本全土に帰化している。
 多年草、緩く叢生し、または離れたシュートをもち、強い根茎性、根茎は横走し、するしばしば芝(tur)を形成する(マット状になる)。シュートは鞘外(extravaginal)および、しばしば鞘内(intravaginal)。植物は緑色または黄緑色、または帯紫色から強い帯灰色の粉白を帯びる。稈は高さ10~120㎝×直径1~2.5㎜、直立または傾伏、房ごとに1~数本つき、平滑、節は(1~)2~4個つき、1~2個が突き出る。葉鞘は中程度に扁平で、竜骨があり、最上部の葉鞘は長さの(1/4~)1/3~2/5が閉じ、平滑、まれに後ろ向きにザラつきまたは小直軟毛(pilulose)がある。葉身は平らまたは折りたたまれ、紙質~厚い紙質、長さ5~30cm、幅1~5㎜、表面は平滑またはまばらにザラつき、縁はザラつき、上面は無毛または頻繁にまばらに小剛毛(hispidulous to strigulose)があり、分げつ(tillers:根元付近から新芽が伸びて株分かれ)し、平らまたは折り畳まれ、縁が内巻きし、鞘内(intravaginal)のものはあればしばしば折り畳まれ、幅0.5~2㎜、鞘外(extravaginal)のものは平らまたは折りたたまれ、幅長さ (1~)1.5~5㎜。葉先は船の舳先状。葉舌は帯白色、長さ0.5~4(~5)㎜、外側はほぼ平滑~密にザラつき、先は切形~円形、しばしば細かくザラつき、または繊毛(ciliolate)または小直軟毛(pilulose)がある。円錐花序は緩く、狭く~開き、長円形~広ピラミッド形、直立またはわずかに緩く、長さ(2~)5~20(~25)cm、最長の節間は長さ1~4.2cm。枝は急に斜上~広く広がり、節ごとに枝が(2~)3~5(~9)本つき、丸くまたは上部に角(かど)があり、ほぼ平滑~上部でザラつき、角(かど)の上と間に鈎があり、最長の枝は長さ1.5~5(~10)㎝で、上部の1/3~2/3に(3~)7~18個の小穂があり、ときに上部で束生する。小穂は卵形、緑色または帯灰色、しばしば紫色を帯び、長さ3~7(~9)mm、小花は2~5(~9)つく。中国では胎生(vivipary)は無い。小軸(rachilla)の節間は長さ0.5~1(~1.2)㎜、平滑、無毛(まれにまばらに小直軟毛がある)。苞頴(glume)はほぼ等長、強く竜骨があり、竜骨とときに側脈は背側がザラつき、第1苞頴(first glume)は長さ1.5~3(~4)㎜、1~3脈がある。第2苞頴(upper glume)は長さ2~4㎜、3(~5)脈がある。護頴(lemma)は卵形~披針形(または狭披針形)、長さ2.5~4(~5)㎜、先はわずかに鈍形~尖鋭形、竜骨はその長さの3/4に絨毛があり、縁脈はその長さの1/2以下にあり、中間脈(intermediate veins)は明瞭、無毛(まれにまばらに小直軟毛があり)、脈間は無毛、微細なでこぼこがあり(bumpy)、上部でまばらにザラつく。カルス(callus)はクモの巣状になり(webbed)、毛は護頴(lemma)と同長で、しばしば縁脈の下からのあまり発達していない房をもつ。内頴(palea)は普通、幅が狭く、無毛またはまばらな鈎をもち、普通、フックがまばらで、普通、微細なでこぼこがあり(bumpy)、竜骨の間は無毛、竜骨はザラつき、まれに、亜種では内側に小直軟毛がある。葯は長さ (1.2~)1.4~2.5(~2.8)㎜、まれに形成が不十分になるが、痕跡では無い。花期および果期は~9月。2n=26,28~144。
品種) 'Anisha'PBR , 'Balboa'PBR , 'Barcelona' , 'Barimpala'PBR , 'Baronie' , 'Bartender' , 'Bartitia'PBR , 'Becca'PBR , 'Bethani'PBR , 'Birnita'PBR , 'Borsala'PBR , 'Chester'PBR , 'Clarion' , 'Creon' , 'Dakisha'PBR , 'Edwin'PBR , 'Euphoran'PBR , 'Eurina'PBR , 'Explorer' , 'Greenplay'PBR , 'Hetera'PBR , 'Joker'PBR , 'Julius'PBR , 'Kaitos'PBR , 'Lazprt1617'PBR , 'Limiro' , 'Midnight' , 'Miracle' , 'Mozart 1'PBR , 'Newport' , 'Niccolo' , 'Nixe' , 'Park' , 'Parsifal' , 'Powerball' , 'Powerplay'PBR , 'Powersouth'PBR , 'Sandor'PBR , 'Scotts Pure Premium' , 'Sunray'PBR , 'Touche'PBR , 'Zeptor'PBR
25-1 Poa pratensis L. subsp. pratensis ナガハグサ 長葉草
 韓国、中国、モンゴル、ロシア(極東、シベリア)、アフガニスタン、ブータン、インド、インドネシア、カザフスタン、キルギスタン、ミャンマー、ネパール、ニューギニア、パキスタン、スリランカ、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン。 アフリカ、南西アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北アメリカ、太平洋諸島、南アメリカ原産。中国名は草地早熟禾 cao di zao shu he。日本に帰化。湿った草地、砂地、草が茂った斜面などに生える。
 植物は緑色または淡緑色、しばしば芝(turf)になり、強い根茎性がある。シュートは鞘外(extravaginal)および鞘内(intravaginal)。稈は高さ(15~)20~80(~120)㎝、房ごとに少数~数本、直立し、節は2~4個。葉鞘は平滑または後る向きのザラつきがあり、下部の葉鞘は節間より長く、普通、葉身よりも明らかに長く、最上部の葉鞘は長さ20㎝以下。葉身は平らで、中程度に紙質~厚い紙質、長さ2~10㎝×幅2~4(~5)㎜、表面は平滑または上面はと縁はまばらにザラつき、下面は無毛またはあまり頻繁ではないがまばらに毛があり、分げつ(tillers)し、平らで折りたたまれているか、またはすべて平らで、縁は内巻きまたは内巻きせず、紙質~厚い紙質、長さ45㎝×幅1~4(~5)㎜・以下。葉舌は1~4(~5)㎜、外面はザラつく。円錐花序は緩く狭く~開き、長円形~広ピラミッド形、長さ5~20(~25)㎝×幅3~5(~10)㎝。枝は広がり、真っすぐまたは屈曲し、わずかに緩く、節ごとに枝は3~7(~9)本つき、平滑またはザラつき、最長の枝は長さ5~10 cm、上部の1/2に3~10(~18)の小穂がつく。小穂は卵形、しばしば紫色を帯び、長さ4~7(~9)㎜、小花は3~5(~8)個ある。苞頴(glume)は卵形~披針形(狭披針形)、先は鋭形~尖鋭形、竜骨は上部がザラつく。第1苞頴(lower glume)は長さ1.5~3(~4)㎜、1または3脈がある。第2苞頴(upper glume)は長さ2~3(~5)㎜、3脈がある。護頴(lemma)は卵形~披針形、長さ2.5~4(~5)㎜、先はわずかに鈍形~鋭形、竜骨はその長さの3/4に絨毛があり、縁脈はその長さ1/2にあり、、中間脈(intermediate veins)は無毛。内頴(palea)は平滑または微細なでこぼこがあり(bumpy)、まれに竜骨の間に少数の鈎をもち、竜骨はザラつく。葯は長さ(1.2~)1.5~2.2(~2.8)㎜。花期は5~6月。果期は7~9月。2n=28, 35, 42, 49, 50, 52, 56, 58, 63, 64, 66, 70, 77, 84, 91, 98, 105, 112, 119, 126, 133, 140。
25-2 Poa pratensis L. subsp. angustifolia (L.) Lejeune  ホソバノナガハグサ 広義
  synonym Poa angustifolia Linnaeus [GBIF]
  synonym Poa pratensis subsp. angustifolia (L.) Dumort. [Kewscience]
  synonym Poa viridula Palib.
 Kewscienceでは独立種 Poa angustifolia L.としている。
 中国、アフガニスタン、ブータン、インド、カザフスタン、キルギスタン、モンゴル、ネパール、パキスタン、ロシア、タジキスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は细叶早熟禾 xi ye zao shu he。北アメリカに帰化している。針葉樹林とコナラ林の林縁、斜面の草地に生える。
 植物は淡緑色で、ときに帯紫色、芝(turf)ではなく房(tufts)を形成する。シュートは鞘外(extravaginal)または鞘内(intravaginal)で、鞘内(intravaginal)シュートの束をもつ。稈は高さ(15~)20~80㎝、房ごとに数本つく。葉鞘は基部の節間より長く、上部の節間より短く、葉身の長さの数倍ある。葉身は平らまたは縁が内巻きに折りたたまれ、薄く~中程度に薄く、長さ3~9㎝×幅1~2㎜、分げつ(tillers)の鞘内ものは剛毛があり(setiform)、内巻きの縁に折りたたまれ、紙質~厚い紙質、長さ45㎝×幅0.5~1㎜・以下、表面は平滑、しばしば上面に毛がある。葉舌は長さ0.5~2㎜、先は切形、下面はザラつく。円錐花序は開き、、長円形から狭ピラミッド形、長さ5~10(~15)㎝×幅2~4(~5)㎝、枝は斜上または広がり、節ごとに3~5本つき、ザラつき、最長の枝は長さ2~5㎝、上部の1/2~2/3に6~18の小穂がつく。小穂は卵形、しばしば紫色を帯び、長さ4~5㎜、小花は2~5個つく。苞頴(glume)はほぼ等長、先は尖鋭形、竜骨はザラつく。第1苞頴(lower glume)は長さ2.2~3 mm、1脈がある。第2苞頴(upper glume)は長さ2.5~3.2㎜、3脈がある。護頴(lemma)は長さ2.5~3.5(~4)mm、先は鋭形、狭い膜があり、竜骨は長さの2/3に絨毛があり、縁脈は長さの1/2にあり、中間脈(intermediate veins)は無毛。内頴(palea)は平滑~竜骨の間に微細なでこぼこがあり(bumpy)、竜骨はザラつく。葯は長さ1.3~2㎜。花期および果期は6~7月。果期は7~9月。2n=28, 46, 49, 51, 56, 63, 66, 72。
25-2-1 Poa pratensis L. subsp. angustifolia (L.) Lejeune var. angustifolia (L.) Sm.  ホソバノナガハグサ 
25-2-2 Poa pratensis L. subsp. angustifolia (L.) Lejeune var. hatusimae (Ohwi) Ohwi  ホクセンナガハグサ 
 別名はホクセンイチゴツナギ。
 ナガハグサに似るが、植物体は大型で稈は高さ60~90cm。花序も大型で散開する。葉鞘はやや扁平で上部はザラつくことが多い。多数の無花茎を叢生する。細い地下匐枝を多数出す。
25-3 Poa pratensis L. subsp. irrigata (Lindm.) H.Lindb. ミスジナガハグサ 
  synonym Poa humilis Ehrh. ex Hoffm. [Kewscience]  
  synonym Poa irrigata Lindm.
  synonym Poa bourgeaei E. Fourn.
 ヨーロッパ原産。日本に帰化している。湿った草地、水辺の植生、攪乱された土地に生え、しばしば芝生や牧草地に播種される。
 多年草、強く根茎性、房(tufts)はまばら~密~緩く、ときに芝(turf)を形成するか、または一部またはすべてのシュートが単生、暗緑色、または青灰緑色。分げつ(tillers )はすべてまたは主に鞘外(extravaginal)。稈は高さ8~30(~50)㎝、襟の縁(collar margins)は一般的に下向きの小剛毛がある。下部の稈の葉舌と分げつ葉(tiller leaves)は一般的に下面に毛がある。茎葉の葉身は平らで、薄く、柔らかい。不稔のシュートの葉身は、普通、長さ15㎝未満、幅2~4.5㎜、普通、上面は無毛。円錐花序は長さ2~10㎝、開き、広ピラミッド形、花序軸は節ごとに枝が1~3(~5)本あり、1次枝は広く広がり、平滑またはまばら~中程度にザラつく。最長の枝は長さ1.5~6㎝、4~8個の小穂がつく。小穂は披針形~広披針形、胎生ではない。苞頴(glume)はほぼ等長、しばしば粉白を帯びる。第1苞頴(lower glume)は(1~)3脈があり、第2苞頴(upper glume)は普通、最下の護頴(lemma)にほぼ等しい。カルス(callus)は背の綿毛(dorsal wool)のよく発達した房をもつ。護頴(lemma)は長さ3~6㎜、竜骨および縁脈は絨毛があり、脈間の表面は細かい微細突起があり(muriculate)、中間脈(intermediate veins)は明瞭で、無毛。内頴(palea)はザラつき、竜骨の内側が無毛、肋間の区域は無毛。花期は5~6月。
 ミスジナガハグサはナガハグサによく似るが、葉舌は有毛、3脈があり、先は円形。苞頴はほぼ等長、第1苞頴(lower glume)は長さ2.7~4.5mm、第2苞頴(upper glume)は長さ2.8~5㎜。護頴(lemma)は脈に毛が多い。これに対し、ナガハグサは葉舌が無毛、1脈があり、先は切形。苞頴は不等長、第1苞頴(lower glume)は長さ1.5~2mm、第2苞頴(upper glume)は長さ2~2.5㎜。護頴(lemma)は脈に毛が少ない。
25-4 Poa pratensis L. var. hirsuta Asch. et Graebn.  ケナガハグサ 
 葉身が有毛であるもの。ナガハグサは葉身がほとんど無毛。

26 Poa radula Franch. et Sav. イブキソモソモ 伊吹抑
 日本(北海道・本州の伊吹山以北)、朝鮮、ロシア原産。別名はチシマソモソモ、チシマイチゴツナギ。亜高山帯の草原に生える。
 多年草、稈は単生、直立し、長さ40~120㎝×直径1~2.2㎜。 2~4節がある。稈は節間の断面が楕円形、下向きにザラつく。葉鞘はその長さの大部分が筒状で、長さの0.5が閉じ、竜骨があり、下向きにザラつく。葉舌は縁毛の無い膜質、長さ1~3㎜、先は鈍形。葉身は長さ20~30㎝×幅5~9㎜、表面はザラつき、上面は粗く、先は尖鋭形。花序は円錐花序。花序柄は上部が下向きにザラつく。円錐花序は開き、卵形、長さ20~30㎝×幅5~8㎝、一次枝は4~7本あり、長さ3~10㎝。花序の枝はザラつく。小穂は単生。稔性の小穂は小花柄があり、4~8個の稔性の小花からなる。頂部の小花は縮小して無くなる(diminished)。小穂は楕円形、または卵形、側部は扁平、長さ4~7㎜、熟すと別れ、それぞれの稔性の小花の下の関節で離れる(disarticulating)。小軸(rhachilla)の節間は平滑。小花のカルスは羊毛状の毛がある。苞頴(glume)は宿存し、等長、小穂より短い。第1苞頴(lower glume)は披針形、長さ2.5~3㎜、第2苞頴(upper glume)の長さの0.9倍、膜質、1竜骨、1脈があり、側脈は無く、先は尖鋭形。第2苞頴(upper glume)は披針形、長さ2.8~3.5㎜、隣接する稔性の護頴(lemma)の長さの0.75倍、膜質、1竜骨、3脈があり、先は尖鋭形。稔性の護頴(lemma)は披針形または卵形、長さ3.5~4.5㎜、膜質、竜骨があり、5脈がある。護頴は中脈の下面に毛があり、下面に毛があり、脈上に毛があり、先は鈍形。先端の不稔の小花は未発達であるが、稔性の花に似ている。鱗被(lodicules)は2個、膜質。葯は3個。穎果(caryopsis)は付着性の果皮(adherent pericarp)をもつ。へそは点状(punctiform)。花期は6~8月。2n=42。

27 Poa × sachalinensis (Koidz.) Honda ヒメカラフトイチゴツナギ 姫樺太苺繋
  synonym Poa sachalinensis (Koidz.) Honda
 北海道の渡島、宗谷、サハリンに分布する。海岸に生える。
 多年草、稈は単生。根茎は短い。匍匐枝がある。稈は直立し、長さ30~80cm×直径1~1.5mm、2-3節がある。稈の節間は円柱形。葉鞘は平滑。葉舌は縁毛の無い膜質、長さ1~2.5㎜、先は切形または鈍形。葉身は長さ20~30cm×幅2~5mm、先は鋭形。花序は円錐花序、開き、長円形、長さ7~20cm×幅3.5~5cm。一次枝は3-5本あり、各下部の枝に3~7個の稔性の小穂がつく。花序の枝はザラつく。小穂は単生。稔性の小穂は小花柄があり、3~5個の稔性の小花からなる。頂部の小花は縮小して無くなる(diminished)。小穂は楕円形、側部が扁平、長さ5~8 mm、熟すと別れ、それぞれの稔性の小花の下の関節で離れる(disarticulating)。小軸(rhachilla)の節間は平滑。小花のカルスは羊毛状の毛がある。苞頴(glume)は宿存し、等長、小穂より短い。第1苞頴(lower glume)は披針形、長さ2.5~4 mm、第2苞頴(upper glume)の長さの0.66~0.9倍、膜質、縁がかなり薄く、1竜骨、1~3脈があり、側脈は無いかまたは不明瞭、先は鋭形。第2苞頴(upper glume)は披針形、長さ3.7~4.5mm、隣接する稔性の護頴(lemma)の長さの0.9~1倍、膜質、縁が透明、1竜骨があり、3脈があり、側脈は不明瞭ですべてが頂点に達せず、第2苞頴の先は鋭形。稔性の護頴(lemma)は長円形、長さ4~4.5 mm、膜質、縁はかなり薄く、竜骨があり、5脈があり、先は鈍形または鋭形。先端の不稔の小花は未発達であるが、稔性の花に似ている。鱗被(lodicules)は2個、膜質。葯は3個、長さ1.5~2mm。穎果(caryopsis)は付着性の果皮(adherent pericarp)をもつ。へそは点状(punctiform)。花期は6月下旬~7月上旬。2n=ca.63(9倍体) , ca.64, ca.74
27-1 Poa sachalinensis (Koidz.) Honda var. yezoensis Ohwi ムラサキエゾソモソモ 紫蝦夷抑

28 Poa secunda J.Presl
 北アメリカ北部、南アメリカ南部に分布する。英名はsandberg bluegrass。
品種) 'Canbar' , 'Service' , 'Sherman'

29 Poa shumushuensis Ohwi ヒナソモソモ 雛抑
  synonym Poa nivicola Kom.
 ロシア原産。

30 Poa sibirica Roshev. シベリアイチゴツナギ 
  synonym Poa albida Turcz. ex Trin.
 朝鮮、中国、モンゴル、ロシア(極東、シベリア)、カザフスタン、キルギスタン、ヨーロッパ(ロシアからウラル山脈の西)原産。中国名は西伯利亚早熟禾 xi bo li ya zao shu he。

31 Poa sphondylodes Trin. イチゴツナギ 苺繋 広義
 日本、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は硬质早熟禾 ying zhi zao shu he。別名はザラツキイチゴツナギ、チョウセンイチゴツナギ。開けた砂地、しばしば川岸、斜面に散在する雑木林の間の牧草地、日当たりの良い斜面の草が茂った場所などに生える。
 稈はゆるく叢生し、高さ(15~)30~50(~70)㎝、直立または斜めに斜上し、堅くて丈夫で、花序の下はザラつき、まれに平滑、節は(2~)3~4個あり、最上部は上側に1/3(~1/2)以下。シュートは鞘外(extravaginal)。葉鞘はザラつき、節間よりもはるかに短く、普通、葉身より長いかまたは等しい。葉身は平らで普通、堅く、長さ(4~)6~12㎝×幅0.15~0.25(~0.3)㎝。葉舌は長さ(2~)3~5(~10)㎜。円錐花序は狭く、密、長さ(4~)6~10㎝、枝は直立し、節ごとに2~5本つき、基部の枝は円錐花序の長さの1/6~1/2で、小穂が枝の基部近くに密集する。小穂は披針形、ときに非常に狭くて長く、緑色または草のような黄色、長さ3.5~5(~10)㎜、小花は2~5(~11)個つく。小軸(rachilla)は無毛または疣がある。苞頴(glume)は狭披針形、不等長、長さ2.5~4(~4.5)㎜。護頴(lemma)は披針形、長さ3~4㎜。カルス(callus)はクモの巣状になる(webbed)かまたは無毛。2n=28。
31-1 Poa sphondylodes var. sphondylodes イチゴツナギ 苺繋
 日本、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は硬质早熟禾 ying zhi zao shu he。
 円錐花序は非常に密で、枝は短く、直立し、小穂は基部に密集する。小穂は長さ3.5~5㎜。
 稈はゆるく叢生し、高さ(15~)30~50(~70)㎝、直立または斜めに斜上し、堅くて丈夫で、花序の下はザラつき、まれに平滑、節は(2~)3~4個あり、最上部は上側に1/3(~1/2)以下。シュートは鞘外(extravaginal)。葉鞘は無毛、ザラつき、節間よりもはるかに短く、普通、葉身より長いかまたは等しい。葉身は平らで普通、堅く、長さ(4~)6~12㎝×幅0.15~0.25(~0.3)㎝。葉舌は白色の薄膜質、長さ(2~)3~5(~10)㎜、先は尖る。円錐花序は狭く、非常に密、長さ(4~)6~10(15)㎝、枝は短く、直立し、節ごとに2~5(6)本、輪生し、基部の枝は円錐花序の長さの1/6~1/2で、小穂が枝の基部近くに密集する。小穂は卵形~披針形、ときに非常に狭くて長く、緑色または草のような黄色、長さ3.5~5㎜、小花は2~5(~11)個つく。小軸(rachilla)は無毛または疣がある。苞頴(glume)は狭披針形、不等長、長さ2.5~4(~4.5)㎜、第1苞頴は第2苞頴より短い。護頴(lemma)は披針形、長さ3~4㎜、中央脈上に長毛があり、基部に長い縮毛がある。カルス(callus)はクモの巣状になる(webbed)かまたは無毛。果実は淡褐色、長さ1~1.3㎜。2n=28。
31-2 Poa sphondylodes Trin. var. kelungensis (Ohwi) Ohwi キールンイチゴツナギ 
  synonym Poa kelungensis Ohwi
 Flora of Chinaでは基本変種に含める。
31-3 Poa sphondylodes Trin. var. subtrivialis Ohwi ヒロハイチゴツナギ 広葉苺繋
  synonym Poa grandispica Keng ex L. Liu.
 中国に分布する。中国名は大穗早熟禾 da sui zao shu he。
 葉舌は長さ3~5(~5.5)㎜。円錐花序は枝が上部の1/2にあるか、または基部から密集する。小穂は長さ6~10mm。

32 Poa subfastigiata Trin. エダハリシバ 
 中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は散穗早熟禾 san sui zao shu he。

33 Poa sugawarae Ohwi カラフトソモソモ 樺太抑
  synonym Poa macrocalyx subsp. sugawarae (Ohwi) Vorosch.
 サハリン原産。

34 Poa taiwanicola Ohwi タイワンイチゴツナギ 台湾苺繋
 台湾原産。中国名は高山早熟禾 gao shan zao shu he。

35 Poa takasagomontana Ohwi タカサゴヤマイチゴツナギ 高砂山苺繋
 台湾原産。中国名は高砂早熟禾 gao sha zao shu he。

36 Poa tenuicula Ohwi ミカヅキイチゴツナギ 三日月苺繋
 台湾原産。中国名は细杆早熟禾 xi gan zao shu he。

37 Poa trivialis L. オオスズメノカタビラ 大雀の帷子
 中国、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、ブータン、インド、インドネシア、カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は普通早熟禾 pu tong zao shu he。英名はrough bluegrass。日本全土に帰化している。在来種とする見解もある。別名はミズイチゴツナギ。アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、南北アメリカに帰化。湿った場所、斜面の草地、道端などに生える。
 多年草、叢生し、匍匐茎を出し、シュートはビーズ状の膨れが有または無。稈は傾伏~膝状に曲がり、直立し、高さ20~100㎝×直径1~2㎜、節は3または4個、円錐花序の下や節の下はザラつく。下部の葉鞘は、通常、密に下向きのザラつきがあり、長さ8~15㎝、葉身とほぼ同長であり、最上部の葉鞘はその長さの1/4が閉じる。葉身は平らで、紙質、長さ8~20㎝×幅(1)2~5 mm、表面はザラつき、先は尖鋭形、わずかに船首形(ボート形)。葉舌は長さ(3)3.5~10㎜、外側はザラつき、先は鋭形~尖鋭形、襟(collar)は平滑またはザラつき、無毛。円錐花序は披針形~卵形~ピラミッド形、長さ(8)9~20(25)㎝×幅2~4㎝、枝は斜めに斜上~広がり、節ごとに枝が4~5本つき、全体に密にザラつき、最長の枝は長さ約4㎝で、上部の1/2に多数の小穂が密集してつき、小花柄(小梗)は非常に短い。小穂は長さ2.5~3.5(~4)㎜、小花は2~3個つく。胎生(vivipary)は無い。苞頴(glume)は竜骨がザラつき、第1苞頴(lower glume)は狭く、しばしば鎌形(sickle-shaped)で、長さ1.5~2㎜、1脈がある。第2苞頴(upper glume)は長さ2.2~3㎜、3脈がある。護頴(lemma)は長さ2~3㎜、縁が薄膜質、先端がやや内側を向き、5脈があり、外面はわずかにアーチ状になり、基部付近に長い毛(綴毛:てつもう)があり、竜骨はその長さの1/2に短い絨毛があり、縁脈は無毛またはその下部1/3に小直軟毛(pilulose)~短絨毛があり、中間脈(intermediate veins)は明瞭、脈間は微細なでこぼこ(minutely bumpy)があり、無毛。カルス(callus)はクモの巣状になり(webbed)、毛は長い。内頴(palea)は護頴の長さとほぼ同長、竜骨の間は微細なでこぼこになり、無毛、竜骨はわずかにザラつきまたはでこぼこになる。葯は長さ約1.5㎜、初期には淡黄色で次第に紫色を帯びてくる。果実は長さ1.4~2㎜、黄褐色、熟すと護頴や内頴褐が色になり、果実を硬く包んで、綴毛で枝に付着していることも多い。2n=14,28。花期および果期は5~7月。
37-1 Poa trivialis subsp. trivialis
 中国、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、ブータン、インド、インドネシア、カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は普通早熟禾 pu tong zao shu he。アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、南北アメリカ、日本に帰化。
 水平のシュートはビーズ状に膨れない。護頴(lemma)は縁脈が無毛、または縁脈の長さの1/4以下に小直軟毛(pilulose)がある。花期および果期は5~7月。2n=14, 28。
37-2 Poa trivialis L. subsp. sylvicola (Guss.) H.Lindb. タマオオスズメノカタビラ 
 中国、キルギスタン、西ロシア、タジキスタン、トルクメニスタン、北アフリカ、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は欧早熟禾 ou zao shu he。
 水平のシュートはビーズ状に膨れる。護頴(lemma)は縁脈の長さの1/3以下に小直軟毛(pilulose)~短絨毛がある。花期および果期は6~7月。2n=14。

38 Poa tuberifera Faurie ex Hack. ムカゴツヅリ 零余子綴
 日本(本州、四国、九州)、韓国(済州島)原産。山地の谷沿いに生える。
 多年草。稈は単生。基部の鞘(butt sheaths)は淡色。稈は直立し、長さ15~30㎝×直径0.5~0.8㎜、節は2-4個つき、根元で膨れ、卵形の球茎(corm)を形成する。葉鞘はその長さの大部分が筒状で、それらの長さの0.66~0.8が閉じ、平滑。葉舌は縁毛があり、膜質、長さ1㎜、白色、切形~鈍形。葉身は長さ5~10cmの×幅0.7~2㎜、先は鋭形。花序は円錐花序、4~15個の稔性の小穂で構成され、花序は開き、卵形、拡散し、長さ2~15cm×幅1.5~4cm、少数の小穂をつける。一次の円錐花序の枝は広がり、1~2本つき、長さ1~5cm。各下部の枝に1~5個の稔性の小穂がつく。円錐花序の枝は毛管状、平滑。小穂は単生する。稔性の小穂は小花柄があり、小花柄は長さ8~10mm、平滑。小穂は2~4個の稔性の小花からなり、先端の小花は削減される。小穂は楕円形または卵形、側部が扁ぺ、長さ4.5~6㎜×幅2~3㎜、熟すと別れ、それぞれの稔性の小花の下の関節で離れる(disarticulating)。小軸(rhachilla)の節間は長さ0.8~1.5㎜、平滑。小花のカルス(callus)は無毛。苞頴(glume)は宿存し、等長、小穂より短い。第1苞頴(lower glume)は卵形、長さ2.2~2.5mm、第2苞頴(upper glume)の長さの0.75~0.9倍、膜質、縁がはるかに薄く、1竜骨があり、1脈がある。第1苞頴(lower glume)は1次脈が平滑、側脈は無く、先は尖鋭形。第2苞頴(upper glume)は卵形、長さ2.5~3㎜、隣接する稔性の護頴(lemma)の長さの0.75~0.9倍、膜質、縁が透明、1竜骨があり、3脈があり、一次脈は平滑、先は尖鋭形。稔性の護頴(lemma)は卵形、長さ3~3.5㎜×幅1.4~1.6㎜、膜質で上部ははるかに薄く、縁がはるかに薄く、竜骨があり、5脈があり、表面に毛があり、下部や脈に毛が多く、先は鋭形。内頴(palea)は長さ2.2~2.8mm、竜骨がザラつき、縁毛があり、下部の毛で飾られる。先端の不稔の小花は未発達であるが稔性の花に似ている。鱗被(lodicules)は2個、膜質。葯は3個、長さ0.6~0.8㎜。穎果(caryopsis)は付着性の果皮(adherent pericarp)をもつ。へそは点状(punctiform)。花期は4~6月。2n=28。

39 Poa ullungdoensis I.Chung   
 朝鮮原産。

40 Poa ussuriensis Roshev. ホクセンイチゴツナギ 
 朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、 ヨーロッパ原産。中国名は乌苏里早熟禾 wu su li zao shu he。
40-1 Poa urssulensis Trin. var. kanboensis (Ohwi) Olonova et G.H.Zhu  カンボウイチゴツナギ 
 朝鮮、中国原産。中国名は坎博早熟禾 kan bo zao shu he。

41 Poa versicolor Boss.
  synonym Poa ochotensis subsp. stepposa (Krylov) Tzvelev
  synonym Poa diantha Steud.
  synonym Poa attenuata Trinius var. versicolor (Besser) Regel.
  synonym Poa sphondylodes var. diantha (Steud.) Miq.
 (日本、)韓国、中国、モンゴル、ロシア、ザフスタン、キルギスタン、ネパール、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は变色早熟禾 bian se zao shu he。Kewsciense、Flora of Chinaでは日本が分布域に入れられている。林縁や茂みの縁の草地、斜面の草地、草原に生える。
 稈は直立し、密に房状になっており、高さ(25~)30~60(~75)cm、節は2~3(~5)個つき、最上部の節は稈の1/3以下につく。シュートは鞘外(extravaginal)。葉鞘はザラつき、普通、葉身より長い。葉身は狭線形、平らまたは内巻きし、幅0.5~2.5(~3)mm、かさぶた。 ligules 1~3(~7) mm。 円錐花序は狭くなり、狭い円錐状~穂状花序状、長さ(4.5~)6~15(~17)㎝×幅1~3(~5)㎝。枝は直立し、節ごとに1~2本つき、円錐花序の長さの(1/5~)1/4~1/3(~1/2)倍。小穂は披針形、長さ(3~)3.5~6(~7)㎜、緑色または紫色、先は黄色、±紫色を帯び、小花は(2~)3~5(~7)個つく。小軸(rachilla)はいぼがあり、まれに直軟毛がある。苞頴(glume)はほぼ等長、披針形~長円状披針形、長さ3~4.2㎜。護頴(lemma)は長円状披針形、長さ3.2~4㎜、竜骨は普通、長さの1/2に短い絨毛があり、縁脈は長さの1/3にあり、脈間は無毛または毛がある。カルス(callus)はクモの巣状になる(webbed)か、無毛。内頴(palea)は無毛または竜骨の間に毛がある。葯は長さ1.3~2㎜。花期は6~8月。
41-1 Poa versicolor Boss. subsp. ochotensis (Trin.) Tzvelev ヌカボダマシ 
  synonym Poa ochotensis Trinius
  synonym Poa subaphylla Honda ヌカボダマシ
  synonym Poa nemoralis Linnaeus subsp. ochotensis (Trinius) Tzelev
 (日本)、韓国、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は乌库早熟禾 wu ku zao shu he。Kewsciense、Flora of Chinaでは日本が分布域に入れられている。和名のヌカボダマシは中国産につけられたもの。
 稈は高さ35~60㎝、細く、普通、花序の下はほぼ平滑、節は2~3(~4)個つき、最上部の節は稈の1/3以下につく。葉鞘は葉身より長い。葉身は幅が狭く、線形、幅1~1.5 mm、平らで、ザラつく。葉舌は長さ(0.5~)1~2(~4)㎜。円錐花序は狭く、ときにほとんど穂状花序状になり、密集し、長さ3~8㎝×幅0.5~1.5㎝。花序の基部の枝は円錐花序の長さの1/5~1/3。小軸(rachilla)は疣があり、無毛、まれに細かい直軟毛がある。小穂は長さ3~5(~6)㎜、小花は6または7個つく苞頴(glume)は狭披針形。護頴(lemma)は長さ3~3.5㎜、その長さの1/2に短絨毛があり、縁脈はその長さの1/3にあり、その他の部分は無毛。カルス(callus)はほとんど無毛。内頴(palea)はときに竜骨の間に小直軟毛(pilulose)がある。2n=28, 42, 49。

42 Poa yatsugatakensis Honda タニイチゴツナギ 谷苺繋
  synonym Poa shinanoana Ohwi var. yatsugatakensis (Honda) T. Shimizu
  synonym Poa finitima T.Koyama
 日本固有種。本州(長野県八ヶ岳)に分布。山地に生える。
 高さ30~80cm。根茎は這う。稈は細く、直径3mm以下、基部の葉鞘は光沢がなく、下向の短毛が密生する。葉舌は長さ2~7㎜。円錐花序は点頭、枝は多少刺針がある。護穎は長さ3.5~5㎜、基部に翼があり、先はやや鋭形、中脈は細いが、やや明瞭。花期は6~8月。2n=ca. 71~74, 77

参考

1) Flora of China
 Poa
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=126123
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Poa
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30001404-2
3) World Flora Online
 Poa
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000030438;jsessionid=6C50A83EC42C21210BB6CFC4DFB606E3
4) World Checklist of Vascular Plants
 Poa
https://wcvp.science.kew.org/
5) GRIN
 Poa
https://nordic-baltic-genebanks.org/gringlobal/taxonomylist.aspx?category=species&type=genus&value=Poa&id=9612
6) 芝草研究 第28巻 第2号 127-137 2000年
 日本のスズメノカタビラ(Poa annua L.)の分類と防除
https://www.jstage.jst.go.jp/article/turfgrass1972/28/2/28_2_127/_pdf
7) 秋田県立博物館研究報告第32号 p19~26 2007年
 秋田県産イチゴツナギ属(イネ科)の分類学的検討
https://www.akihaku.jp/publication/report/32/aktpmrep32_019-026.pdf
8) Acta Phytotax.Geobot.Vol.XXXVIII p176~26 1987年
 ツクシスズメノカタビラ(イネ科)の特性と分布 館岡亜緒
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunruichiri/38/0/38_KJ00002992251/_pdf/-char/ja
9) 共生のひろば 5号,3-6, 2010年3月
ミスジナガハグサPoasubcaerulea(イネ科イチゴツナギ属)の謎2-ミスジナガハグサとナガハグサの混乱-
https://www.hitohaku.jp/publication/book/kyousei5_p003_006.pdf
10) Turk J Bot (2016) 40: 439-445
Two new records and one confirmation of the genus Poa L. (Poaceae) for the Flora of Turkey
https://dergipark.org.tr/tr/download/article-file/414675
11) M.KITAGAwA:Index Florae Jeholensis:Vol.V.268-270 (1936)
中井猛之進,本田正次,佐竹義輔,北川政夫諸氏:熱河省 植物目録
http://jboli.c.u-tokyo.ac.jp/~jsps/pdf/5(4)/110003761964.pdf
12) 植物地理・分類研究 68(2): 143-145 (2020)
アイヌソモソモ(イネ科)を兵庫県と岐阜県から記録する 藤井伸二
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/68/2/68_0682-11/_pdf/-char/ja
13) Shokubutsu-gaku-zasshi volume 98, pages413–437 (1985)
Chromosome numbers and their taxonomic implications in the genus Poa of Japan
https://link.springer.com/article/10.1007/BF02488505
14) Flora of Victoria
Poa annua L. Annual Meadow-grass
https://vicflora.rbg.vic.gov.au/flora/taxon/7852f14d-7e44-4b1a-b8aa-065ffb7a76bf