フタバムグラ 双葉葎

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Flora of Mikawa

アカネ科 Rubiaceae スクレロミトリオン属

中国名 拟定经草 ni ding jing cao
学 名 Scleromitrion brachypodum (DC.) T.C. Hsu
 synonym Hedyotis brachypoda (DC.) Sivar. & Biju
 synonym Oldenlandia brachypoda DC
 synonym Hedyotis diffusa Willd. var. longipes (Nakai) H.Hara
 synonym Hedyotis diffusa auct. non Willd.
フタバムグラの花
フタバムグラの花
フタバムグラの花
フタバムグラ果実
フタバムグラ托葉
フタバムグラ
フタバムグラ葉表
フタバムグラ葉裏
フタバムグラ種子
花 期 8~10月
高 さ 10~30(50)㎝
生活型 1年草
生育場所 田の畔、畑
分 布 在来種  本州、四国、九州、沖縄、中国、インド、ネパール、ブータン、インドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシア
撮 影 蒲郡市形原町  02.9.14
フタバムグラは水田の小さな雑草、薬草として用いられる。アカネ科フタバムグラ属(Hedyotis)からスクレロミトリオン属に分割された。
 学名はフタバムグラは以前はHedyotis diffusa Willd.とされ、ナガエフタバムグラはその変種として分類されてきた。Hedyotis diffusa Willdは初期には花序柄のない単生花を指し、これが、Oldenlandia diffusaに変更され、フタバムグラもこれに該当するとされた。その後、1990年に単生花とするのは誤りで、Hedyotis diffusa Willd.は花序柄のあるものであるとされた。長い間、医療などで使われてきたHedyotis diffusaの学名を保存する提案がなされている。
 1年草。茎は細く円柱形、基部から分枝し、斜上~横に広がり、長さ10~30cm、無毛。葉は対生し、ほぼ無柄、葉身は長さ1~3.5㎝×幅(1)1.5~3(4)㎜、線形~広線形、全縁、先は鋭形、基部は漸尖形、縁にケイ酸質の微小突起がありザラつく。托葉は膜質、葉の基部と融合し、三角形、長さ0.5~2㎜、先は数裂し、長さ0.5~1㎜の短い裂片がある。花は葉腋に1~2個つく。小花柄は長さ1~8㎜(フタバムグラ1~3㎜、ナガエフタバムグラ5~8㎜、中間もある)。花托筒は半球形または鐘形、長さ1.5~2㎜×直径1.5~2㎜。萼片は4個、三角状披針形、先は尖鋭形、開出し、長さ1~1.5㎜。花冠は白色、筒形、直径約2㎜、長さ2~2.5㎜、約1/3まで4裂する。雄しべは4本。蒴果は球形、直径3~5㎜、萼裂片が宿存し先が外側に曲がる。花期は8~9月。
 花柄が5~8㎜と長いものは別種のナガエフタバムガラであるが、中間型のものもある。
 帰化種のタマザキフタバムグラは托葉が合着し、縁に数個の刺がある。花は葉腋に小さな散房花序をつけ、花序に1~5個の花をつける。蒴果も小さく、直径約2㎜。
 海岸の岩場に生えるソナレムグラは葉の幅が広く、5~12㎜の広卵形。

スクレロミトリオン属(Scleromitrion)

  family Rubiaceae - genus Scleromitrion

 広義フタバムグラ属 Hedyotis L. s.l. から分割されたスクレロミトリオン属(Scleromitrion)は花冠の内側の毛の輪が無く、花は同型花柱(homostylous)で、雄しべと花柱が花冠から突き出る。蒴果は胞背裂開。種子は倒円錐形、多数。
 1年草または多年草、直立、斜上、伏在または匍匐性で、節で根を張り、拡散し、よく分枝するかまれに分枝しない。茎は四角形から円形で、4条の脈があり、溝がある。托葉は葉柄につき、鞘は褐色で、切形、わずかに鈍形または三角形、裂片は5~11本の剛毛(bristle)であり、鞘より長く、縁に粘液毛(colleters)がある。葉は対生し、最上部に2または4枚以上が輪生し、ほぼ革質または革質で、狭線形、針状、線状楕円形、狭楕円形、楕円形または狭長円形、縁は外巻き、側脈は不明瞭、葉柄はないかまたは短い。花序は頂生および腋生、頭状花序または集散花序、または花が単生。花序柄はないかまたは目立つ。花は4(~5)数性、漏斗形、同型花柱性(homostylous)、小花柄はないか短い。萼は基部で合着する。花冠は内側が無毛で、筒の口部にわずかに直軟毛~綿毛がある。雄しべは花冠筒部から突き出し、花冠の切れ込みにつく。葯は長円形。子房は2室。花柱は突き出し、柱頭は2個。蒴果は胞背裂開(loculicidally dehiscent)、卵形、倒卵形または球形で、蒴果の中央またはほぼ中央が最も広く、宿存する萼は収束し(convergent)、直立または反り返る。種子は小室あたり少数~多数で、三角状楕円形、網状で、褐色または赤褐色(e-Flora of Thailand)。  世界に約28種あり、熱帯のアジア、オーストラリア、太平洋諸島に分布する。

スクレロミトリオン属の主な種と園芸品種

1 Scleromitrion angustifolium (Cham. et Schltdl.) Benth. ケニオイグサ 毛匂草

  synonym Hedyotis angustifolia Cham. & Schltdl.
  synonym Oldenlandia angustifolia (Cham. & Schltdl.) Kuntze

  synonym Hedyotis tenelliflora Blume var. longipes Hatus. ナガエケニオイグサ

  synonym Scleromitrion sinense Miq.
 日本(屋久島~沖縄)、中国、台湾、インド(アッサム)、東ヒマラヤ、ミャンマー、ニコバル諸島、バングラデシュ、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピン原産。中国名は細葉龍吐珠 xi ye long tu zhu。標高1500m以下の緑樹林の湿った開けた場所、またはまれに日陰の場所に生える。
 Dutta & Deb(2004)はこの種を、以前はしばしば同義語とされていたScleromitrion tenelliflorumから分離した。さらに、Wang(2019)は、S. angustifoliumは中国に普通にあり、Chen & Taylor (2011) などによって Hedyotis tenelliflora と誤認されていたと報告した。Scleromitrion angustifolium は傾伏または平伏する草本であり、葉の上部の縁近くにザラつきがあり、花は葉腋に束生または単生し、蒴果は無毛である(参考7)。
 1年草または多年草、高さ10~50㎝、傾伏または平伏し、節から根を張る。茎は円柱形または4稜形、4本のうねがあり、溝があり、無毛になる。托葉は鞘は三角形で剛毛があり、裂片は5~7本の剛毛で鞘より長く、3~7本の粘液毛(colleters)がある。葉は狭線形~楕円形または狭長円形、長さ1~4.5㎝×幅1~5㎜、ほぼ革質、先は鋭形~尖鋭形、基部は楔形または漸尖形、縁は外巻きし、上面は縁近くがザラつき、下面の脈の上はザラつくかまたは無毛、下面の側脈は不明瞭。葉柄は無~長さ2㎜まで。花序は腋生、頭状、節ごとに1~9個の花がつく。花は白色または乳白色、漏斗形。同型花柱性(homostylous)で、雄しべと花柱は突出す。小花柄は無いか長さ1㎜まで。萼筒は長さ0.4~0.6㎜、萼片は狭三角形、幅1~1.5㎜×長さ0.3~0.7㎜、直立し、縁は粗毛房状へりがある。花冠筒部は長さ1~1.5㎜、花冠裂片は長円形で、長さ1.5~2㎜×幅0.7~1㎜、先は鋭形、両面が無毛。花糸は長さ1.3~1.5㎜、無毛。葯は白色、長円形、長さ1~1.3㎜×幅0.4~0.5㎜。子房は無毛。花柱は長さ2.5~3.5㎜、無毛。柱頭は長さ0.2~0.3㎜。蒴果は卵形、長さ2.5~3.5㎜×幅2~3㎜、蒴果の中央が最も広いかそれに近く、萼片は宿存し、直立し、収束する。種子は1室あたり30~60個、長さ0.2~0.3㎜×幅0.2~0.3㎜。花期は5~12月(e-Flora of Thailand)。
 ナガエケニオイグサは西表島の海岸の湿った崖に見られる。基本種は小花柄が長さ1㎜以下であるが、長さ2~7㎜と長い。現在では基本種に含められる。

2 Scleromitrion brachypodum (DC.) T.C. Hsu フタバムグラ 双葉葎

  synonym Hedyotis brachypoda (DC.) Sivar. & Biju [Flora of China]拟定经草 ni ding jing cao

  synonym Oldenlandia brachypoda DC [フタバムグラ Ylist]
  synonym Hedyotis diffusa subsp. extensa (Hook.f.) R.Dutta
  synonym Hedyotis diffusa auct. non Willd.
  synonym Hedyotis diffusa Willd. var. longipes (Nakai) H.Hara
 フタバムグラは以前はHedyotis diffusa Willd.とされ、ナガエフタバムグラはその変種として分類されてきた。フタバムグラは花柄や果柄が長さ1~3㎜と短く、柄が殆どないように見えるのに対し、ナガエフタバムグラは長さ5~8㎜の柄がある。中間型も見られるため、その後に変種を区別しないとされてきた。YListではフタバムグラの学名をOldenlandia brachypoda DCとし、別名をナガエフタバムグラとしている。これが今の学名(POWO)ではScleromitrion brachypodum (DC.) T.C.Hsuのsynonymとされている。しかし、POWO(Kewscience)、WFOではS. diffusumの分布域に日本を入れているものの、Scleromitrion brachypodumの分布域は日本を除外し、中国、台湾、インド(アッサム)、ブータン、バングラデシュ、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン原産とし、日本(本州、四国、九州、沖縄)を分布域から除いている。一方、e-Flora of Thailand、Flora of ChinaやGBIFでは日本を分布域に入れている。e-Flora of Thailandの解説ではScleromitrion diffusum とScleromitrion brachypodumは下記のように区別され、Scleromitrion brachypodumは花が1~2個で花序柄が無または3㎜以下で、果柄でも8㎜以下と短く、痩果が大きく、Scleromitrion brachypodumがフタバムグラであると確認できる。ナガエフタバムグラは花序の詳細が不明だが、果柄の長さが8㎜以下であり、Scleromitrion brachypodumの範囲に入る。
 日本(本州、四国、九州、沖縄)、中国(安徽省、広東省、広西チワン族自治区、海南省、雲南省)、台湾、インド(アッサム)、、スリランカ、ネパール、バングラデシュ、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン原産。中国名は拟定经草 ni ding jing cao 。別名はナガエフタバムグラ。湿った畑や田の畔に生える。
 1年草。茎は細く円柱形、基部から分枝し、斜上~横に広がり、長さ10~30cm、無毛。葉は対生し、ほぼ無柄、葉身は長さ1~3.5㎝×幅(1)1.5~3(4)㎜、線形~広線形、全縁、先は鋭形、基部は漸尖形、縁にケイ酸質の微小突起がありザラつく。托葉は膜質、葉の基部と融合し、三角形、長さ0.5~2㎜、先は数裂し、長さ0.5~1㎜の短い裂片がある。花は葉腋に1~2個つく。小花柄は長さ1~8㎜(フタバムグラ1~3㎜、ナガエフタバムグラ5~8㎜、中間もある)。花托筒は半球形または鐘形、長さ1.5~2㎜×直径1.5~2㎜。萼片は4個、三角状披針形、先は尖鋭形、開出し、長さ1~1.5㎜。花冠は白色、筒形、直径約2㎜、長さ2~2.5㎜、約1/3まで4裂する。雄しべは4本。蒴果は球形、直径3~5㎜、萼裂片が宿存し先が外側に曲がる。花期は8~9月。(野に咲く花:Hedyotis diffusa, 神奈川県植物誌2018;Hedyotis diffusa Willd. var. diffusa, 日本の野生植物:Oldenlandia brachypoda)
【e-Flora of Thailandの解説】Scleromitrion brachypodum (DC.) T.C. Hsu
 日本、中国、スリランカ、インド、ネパール、ブータン、バングラデシュ、ミャンマー、ラオス、ベトナム、カンボジア、シンガポールを含むマレー半島、インドネシア(スマトラ島、ジャワ島)、フィリピン原産。標高0~1700mの開けた場所、水田、湿地に生える。葉腋に1~2個の花をつけ、花は鐘形で、内部は無毛。小花柄は長さ0.5~10㎜。蒴果は球形~扁球形、直径3~4㎜。
 草本、高さ10~60㎝、傾伏。茎はまばらにパピラがありまたは無毛。托葉は鞘状、膜質、切形~鈍形、無毛またはまばらに毛があり、裂片は1~5本の糸状の付属体がある。葉は線形または狭楕円形、長さ7~27㎜×幅1~3㎜、先は鋭形、基部は円形または鋭形、縁と上面にはほぼ毛があり、下面は無毛、乾燥すると葉は外巻きする。葉柄はない。花は腋生で単生または節ごとに対につき、鐘形、白色、同型花柱性(homostylous)。雄しべと花柱は花冠筒部から突き出る、小花柄は長さ0.5~10㎜、無毛。萼片は狭三角形、長さ1~2.2㎜×幅0.7~1㎜、縁は無毛または毛がある。花冠筒部は長さ2.5~3.5㎜。花冠裂片は狭三角形、長さ1.5~2㎜×幅1.3~1.5㎜、両面とも無毛。雄しべは花冠の切れ込みに付き、花糸は長さ0.3~0.5㎜、無毛。葯は卵形、長さ0.5~0.8㎜×幅0.3~0.4㎜。子房は無毛。花柱は糸状で長さ2.5~3㎜、無毛。柱頭は明瞭で、線状、裂片があり、長さ1~1.5㎜。蒴果は球形~扁球形、直径3~4mm、縁は蒴果の中央から上端まで平行。蒴果の頂部は萼の先端より上に突き出ない。種子は室あたり100~150個、三角状楕円形、長さ0.1~0.2㎜×幅0.1~0.2㎜、網状。一年中開花する(e-Flora of Thailand)。
【Flora of Chinaの解説】Hedyotis brachypoda (DC.) Sivar. & Biju
 日本、中国(安徽省、広東省、広西チワン族自治区、海南省、雲南省)、インド、ネパール、ブータン、バングラデシュ、ベトナム、マレーシア(マラッカ)、インドネシア、フィリピン原産。中国名は拟定经草 ni ding jing cao。標高100~1500mの水田、農地の畝、湿った野原に生える。
 1年草、細く、拡散して分枝し、高さ50㎝以下。茎は円柱形~わずかに扁平、無毛。葉は葉柄が無又はほぼ無。葉身は乾くと膜質、線形~狭楕円形~狭へら形、長さ7~36㎜×幅1~4㎜、上面は無毛(ときに、大きな表皮細胞がつぶれてパピラが現われる)~ザラつき、普通、光沢があり、下面は無毛で光沢がなく、基部は鋭形、縁は普通、少なくとも乾くと外巻きし、先は鋭形、2次脈は明瞭でない。托葉は葉柄の基部に融合し、無毛、切形~広三角形、長さ0.8~2㎜、1~3個の長さ0.2~1㎜の線形~剛毛状の裂片をもつ。花序は偽腋生、花が1個つき(花が2個束生)、無毛、花序柄は無又は長さ3㎜以下。苞は無い。花はほぼ無柄~短い花序柄があり、同型花柱性(homostylous)。萼は無毛、花托筒部分は球形、長さ1~1.2㎜。萼の拡大部は本質的に基部まで分裂し、萼片は三角形、長さ1~1.5㎜。花冠は白色、車形、外側は無毛、筒部は長さ1~1.5㎜、のど部は無毛、花冠裂片は三角形、長さ1~1.5㎜。葯は長さ約0.3㎜、突き出る。柱頭は長さ約0.8㎜、突き出る。果実は蒴果、膜質~紙質、扁平な球形~ほぼ球形、又はやや双小果状(dicoccous)、長さ約2.5㎜×幅3~4㎜、平らな先まで胞背裂開、花序柄は長さ8㎜以下。種子は約20個、暗褐色、角(かど)があり、深い凹点がある。花期と果期は(2~)3~11月。(Flora of China)

Scleromitrion diffusum とScleromitrion brachypodum の区別


 e-Flora of ThailandとFlora of Chinaの解説から。
1. 花は散形花序に2~4個つき、花序柄があり、まれに単生。
 蒴果は長さ1.5~2.5㎜×幅2~3㎜(FOC:長さ2~3㎜×幅2~3㎜)

 花序柄は長さ4~15㎜。小花柄は長さ4~12㎜(FOC:花序柄+小花柄は長さ4~20㎜、果時に20㎜以下)

........................ S. diffusum    .
1. 花は節ごとに単生または2束生。
 蒴果は長さ3~4㎜×幅3~4㎜(FOC:長さ約2.5㎜×幅3~4㎜)

 花序柄は無く、小花柄は長さ0.5~10㎜(FOC:花序柄は花時に長さ3㎜以下、果時に8㎜以下)

........................ S. brachypodum .

3 Scleromitrion diffusum (Willd.) R.J.Wang スクレロミトリオン・ディフュースム

  synonym Hedyotis diffusa Willd. in Sp.Pl., ed. 4.1:566(1798), nom. cons.[Flora of China, Flora of Taiwan]

  synonym Hedyotis brachypoda R.Br. ex Wall. in Numer. List: n.°874(1829), nom. nud.

  synonym Oldenlandia brachypoda G.Don

  synonym Oldenlandia diffusa (Willd.) Roxb. in Hort. Bengal.:11(1814) [snake-needle grass, spreading hedyotis](1920)

  synonym Oldenlandia diffusa var. extensa Hook. f. in Fl. Brit. India 3: 65 (1880)

  synonym Hedyotis diffusa var. longipes Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 25: 152 (1911)

  synonym Hedyotis brachypoda R.Br. ex Wall. ※ Hedyotis brachypoda (DC.) Sivar. & Bijuとは異なる

 日本(本州、四国、九州、沖縄)、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、海南省、雲南省、浙江省)、台湾、ネパール、ブータン、スリランカ、バングラデシュ、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン原産。中国名は白花蛇耳草 bai hua she er cao。海抜 900mまでの水田、農地の尾根、湿った野原に生える。
 過去にはHedyotis diffusaがフタバムグラとされ、ナガエフタバムグラは長さ5~8㎜の柄があり、変種(var. longipes)とされていた。現在ではフタバムグラの学名はYListではOldenlandia brachypoda DC.としている。これはPOWO,WFO, GBIF,Flora of ChinaなどではScleromitrion brachypodum (DC.) T.C.Hsu.のsynonymとされ、Scleromitrion brachypodum (DC.) T.C.Hsu.がフタバムグラの学名である。フタバムグラではないHedyotis diffusaはScleromitrion diffusum (Willd.) R.J.Wangと変更されている。e-Flora of ThailandによればScleromitrion diffusumはフタバムグラ(Scleromitrion brachypodum)とは明瞭に区別でき、花が単生または散形花序に2~4個つき、長い花序柄があり、これに対してフタバムグラは花が単生または2個対につき、花序柄はほとんどなく、痩果の大きさもフタバムグラの方が大きいものである。Scleromitrion brachypodum (DC.) T.C.Hsu.はPOWO,WFOではまだ日本が分布域に入っていないが、Scleromitrion diffusumには日本が分布域に入れられている。
 中国植物誌や、この種の植物化学、薬理学、潜在的な医療用途に関する多くの研究で使用されている意味では、Hedyotis diffusa は単花(または多くても2~3花)の花序を持つ植物を指す。1990年に、異なる形態の花序を持つ植物の植物標本がレクトタイプとして選ばれた。2021年に、1花の標本をタイプとして、Hedyotis diffusa という名称を保存することが提案された。
【図鑑の野に咲く花の解説(Hedyotis diffusa)】
 フタバムグラをHedyotis diffusaとし、ナガエフタバムグラをその変種(var. longipes)としている。フタバムグラの花柄や果柄が長さ1~3㎜と短く、柄が殆どないように見えるのに対し、ナガエフタバムグラは長さ5~8㎜の柄がある。中間型もある。花期は8~9月。分布は本州、四国、九州、沖縄。
 YListではフタバムグラはHedyotis diffusaではなく、Oldenlandia brachypoda DC.とし、そのsynonymがScleromitrion brachypodum (DC.) T.C.Hsu.とされているが、これはPOWO,WFO, GBIF,Flora of ChinaなどではScleromitrion brachypodum (DC.) T.C.Hsu.を種名としている。花柄の長さの変化は連続的であるとしてナガエフタバムグラはフタバムグラの別名としている。
【e-Flora of Thailandの解説(Scleromitrion diffusum (Willd.) R.J.Wang)】
 インド、ネパールからフィリピン、中国までの熱帯および亜熱帯アジアに分布し、標高250~1100mの開けた場所、水田、湿地帯に生える。日本は分布域に入らない。
 1年草、高さまたは長さ10~40㎝、直立、斜上または平伏する。茎は円柱形で、うねはなく、全体にザラつく。托葉は膜質の鞘で、切形から三角形、裂片は3~7本の糸状の付属体で、先端に粘液毛(colleter:粘液を分泌する腺毛)がある。葉は狭楕円形、狭長円形または線形、長さ10~40㎜×幅0.5~3㎜、先は鋭形、基部は鋭形、上面の縁近くにザラつきがあり、下面の中肋はザラつく。葉柄はないか短い。花序は腋生、散形花序、花が2~4個または単生する。花序柄は腋ごとに1~3本つき、長さ4~15㎜。花は白色で筒形、同型花柱性(homostylous)。小花柄は長さ0.4~1.2㎝、細く、全体にザラつく。萼片は卵形~長円形、長さ0.4~0.7㎜×幅約0.3㎜、縁には微細突起がある(muricate)。花冠筒部は長さ1~1.2㎜、花冠裂片は卵状三角形、長さ0.5~1㎜×幅0.3~0.4㎜、外側と内側は無毛。雄しべは花冠からわずかに突き出し、花冠裂片の切れ込みにつく。花糸は長さ約0.2㎜、無毛。葯は卵形、長さ0.2~0.3㎜×幅約0.2㎜。子房は無毛またはほぼザラつく。花柱は長さ1.3~1.5㎜、無毛。柱頭は突き出し、短く、丸い。蒴果は扁球形、長さ1.5~2.5㎜×幅2~3㎜、中央部が最も広く、蒴果の先端は萼の先端より突き出ない。種子は室ごとに35~60個、角張り、長さ0.2~0.3㎜×幅0.2~0.3㎜、網状。一年中開花する。

【Flora of Taiwanの解説(Hedyotis diffusa Willd.)】
 熱帯アジア~日本に分布する。台湾全土の野原に普通にみられる。フタバムグラ、中国名は定經草, 白花蛇舌草, 珠仔草。
 1年草、散在性で無毛。葉は無柄、線形または線状披針形、長さ1~3㎝、両端は狭くなり、細脈は不明瞭、縁は外巻きする。托葉には1~3個の短い尖りがある(剛毛ではない)。花は単生または対に腋生につき、長さは5㎜。小花柄(pedicel)は長さ2~12㎜。萼は4裂し、裂片は鋭角三角形。花冠は白色、無毛、長さ3㎜、4裂し、裂片は鋭形。雄しべは4本、花冠の口部につく。柱頭は2裂し、裂片は線形。蒴果は球形、直径3㎜、萼片が冠状につく。 【Flora of Chinaの解説(Hedyotis diffusa Willd.)】
 日本、中国(安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、海南省、雲南省、浙江省)台湾、バングラデシュ、ブータン、インドネシア、マレーシア、ネパール、フィリピン、スリランカ、タイ原産。中国名は白花蛇耳草 bai hua she er cao。海抜900mまでの水田、農地の畝、湿った野原に生える。
 1年草、細く、斜上~平伏、高さ50㎝以下。茎はわずかに扁平~円柱形、又は若い茎は4稜形、疎~密に微軟毛があり、または無毛になるか、または無毛、稜の上も面の同様に無毛~軟毛がある。葉は葉柄が無またはほぼ無。葉身は乾くと膜質、線形~狭楕円形~狭倒披針形、長さ1~4㎝×幅0.1~0.4㎝、上面は無毛または平滑、またはしばしば縁近くがザラつき、下面は無毛~ザラつき、基部は鋭形、縁は普通、少なくとも乾くと外巻きになり、先は鋭形、2次脈は見えない。托葉は葉柄の基部に融合し、三角形~切形、長さ0.5~1.5㎜、無毛になり、鋭形~芒状又は長さ0.2~1㎜の1~3本の剛毛がある。花序は腋生、花が1個つきまたは2個束生し、無毛、花序柄がある。花序柄または小花柄は長さ4~20㎜。苞は無または托葉状、長さ1㎜以下。花は小花柄があり、同型花柱性(homostylous)。萼は無毛、花托筒部分は類球形、長さ1~1.2㎜。萼の拡大部は本質的に基部まで分裂し、萼片は狭三角形、長さ1~2㎜、繊毛がある。花冠は白色、筒形、外側は無毛、筒部は長さ1.5~2.5㎜、内側は無毛、花冠裂片は卵状長円形、長さ1.2~2㎜。葯は長さ約0.8㎜、突き出る。柱頭は長さ約1.2㎜、突き出る。果実は蒴果、扁平な球形~扁球形、長さ2~3㎜×幅2~3㎜、ときに、やや双小果状(dicoccous)、膜質、無毛、胞背裂開(loculicidally)、先端~嘴まで平ら~嘴に裂開し、嘴は丸く、長さ0.5㎜以下。花序柄は果実が熟すとすぐに顕著に長くなり、長さ20㎜までになる。種子は約20個、暗褐色、角(かど)があり、深い凹点がある。花期と果期は5~10月
 この関連種の分類は複雑で、さまざまな著者によって非常に異なる結論が出されている(例: Sivarajan & Biju, Taxon 39: 665-674. 1990; Dutta & Deb, Taxon. Rev. Hedyotis. 2004)。特に、Hedyotis brachypoda(Hedyotis brachypoda R.Br. ex Wall.=Scleromitrion diffusum)、Hedyotis corymbosa(Oldenlandia corymbosa L. タマザキフタバムグラ)、およびHedyotis erecta(Oldenlandia corymbosa var. erecta)は関連があり、さまざまな方法で分類されている。Flora of Chinaでは、W.C.Ko(FRPS 71(1):72,75.1999)およびDutta & Deb に従って、完全にではないものの、一般的な分類としている(Flora of China)。
(Flora of China)。
【Hedyotis diffusa (Oldenlandia diffusa, Scleromitrion diffusum) (アカネ科) の学名を保存する提案(参考11)】
 Hedyotis diffusa Willd(Sp. Pl. 1: 566. 1798)の学名は通常単生の白色の花を持つ分類群にほぼ2世紀にわたって適用されてきた(Smith in Rees、Cycl. 17: Hedyotis no. 14.1811)。最近ではこの種はScleromitrion diffusum (Willd.) R.J.Wang (Wang et al. in Trop. Subtrop. Bot. 22: 440. 2014) として扱われ、花は単生(または2または3個の花)の花序を持つ分類群に基づいてる。この長年にわたって適用されてきた名前には、保存が必要である。
 Willdenowが Hedyotis diffusa を「Flores axillares solitarii pedunculati」と記述したとき、彼は序文で「pedunculati」が単生花の花序柄を指すのか、それとも花序を指すのかを明記していなかった。彼の記述は、「花は腋生、単生、柄あり」など、後続の著者Smithを含めて、単生花を指していると解釈された。Roxburgh (Hort. Bengal.: 11. 1814) は、当初 H. diffusa を Oldenlandia に O. diffusa として注釈や記述なしで移したが、後に(Fl. Ind. 1: 444. 1820)、この種を「花序柄は腋生、単生、1花」と記述した。Hooker(Fl. Brit. India 3: 65. 1880)は、より広義にこの種を限定し、O. diffusa の2つの変種をO. diffusa var. extensa Hook. f.を含めて発表した。Hookerは、この変種を1個または2個の花があり、花序柄が長いと説明した。このH. diffusaという名前を単生花の分類群(フタバムグラ)に適用したことは、世界中で広く受け入れられた(Makino、New Ill. Fl. Japan: 580. 1961; Chao in Li & al.、Fl. Taiwan 4: 271–272. 1978; Lee、Ill. Fl. Korea: 693. 1979; Manilal & Sivarajan、Fl. Calicut: 139–141. 1982)。
 Hedyotis/Oldenlandia diffusa の1花または2花の概念は、Sivarajan & Biju(Taxon 39: 665–674. 1990)が従来の適用に反して、Willdenow Herbarium no. 2588-01 Aをレクトタイプとして選択するまで採用されていた。これは、集散花序を持つ Hedyotis pseudocorymbosa Bakh. f. (Bakhuizen van den Brink & Koster in Blumea 12: 62. 1963)の標本である。その結果、Willdenow Herbarium no. 2588-01 B を含む Roxburghの意味するOldenlandia diffusa (Willd.) Roxb. は、Oldenlandia brachypoda DC に基づいて、Hedyotis brachypoda (DC.) Sivar. & Biju として扱われた(Prodr. 4: 424. 1830)。Hedyotis pseudocorymbosa は H. diffusaのシノニムに格下げされた。Sivarajan と Biju (l.c.) の選別タイプは、序文の「pedunculati」は複数の花が咲き、花序柄のある(stalked)花序を指すという解釈に基づいていた。彼らは、Roxburghが「solitarii pedunculati」を単生花(1-flowered)と誤読して混乱を引き起こしたと述べ、Willdenow Herbarium 2588-01 B の花は無柄であると指摘した。そのため、彼らは従来の慣習に反して、(1~)3~7花の花序柄のある集散花序を持つ分類群でこの名前をレクトトタイプ化(lectotypified)した。
 しかしながら、Willdenowの『植物種』の他の種の説明では、「pedunculati」という語は、Convolvulus pes-caprae L. の説明に単生花の柄にも「pedunculis unifloris」と使われている(Willdenow, l.c.: 876)、また Convolvulus vitifolius Burm. f.(Willdenow, l.c.: 864) の説明に多花性の花序にも「pedunculis multifloris」と使われている。したがって、「pedunculati」の解釈に基づくSivarajan & Bijuによるレクトタイプ化は、十分な根拠がなかった。
 その後、Dutta & Deb(Taxon. Revis. Hedyotis: 143–147. 2004)は、Willdenow Herbarium no. 2588-01 B をHedyotis diffusa の単生花のタイプとして引用し、この種を「単生で無柄(solitary sessile)または小花柄のある花(pedicelled flower)または2~3個の花からなる花序柄のある集散花序(pedunculate cyme)」と記述している。しかし、「ここで指定(designated here)」または同等の語句が含まれていなかったため、有効な選定基準化(lectotypification)ではなかった(Art. 7.11 of the ICN; Turland & al. in Regnum Veg. 159. 2018)。この処理は、ICN の第9.19 条(Art. 9.19 of the ICN)に基づくSivarajan & Bijuに対する優先権も欠いていた。
 2014年、Wang らは、Sivarajan & Bijuではなく Dutta & Debの意味するHedyotis diffusa を Scleromitrion属に移し S. diffusum として移した。この処理は、同型花柱花と突出した雄しべと花柱を持つという特徴を持つ Scleromitrion 系統の最新の区分に基づいて行われた(Guo & al. in Molec. Phylogen. Evol. 67: 110–122. 2013; Neupane & al. in Taxon 64: 299–322. 2015)。この組み合わせは、単生花(まれに2または3花)の分類群に適用された。この組み合わせは正当であるが、名前の誤用に問題がある。この名前は、basionymの存在するlectotypeに従って、(1~)3~7花の種に適用する必要がある。
 Sivarajan & Bijuによるレクトタイプ化にもかかわらず、Hedyotis diffusa の伝統的な概念は、分類の改訂(Dutta & Deb)、地域の植物相(Lo & al. in Lo, Fl. Reipubl. Popularis Sin. 71(1): 26–77. 1999; Chen & Taylor in Wu & Raven, Fl. China 19: 147–174. 2011)、伝統的な中国薬剤(Chang & But, Pharmacol. Applic. Chin. Mater. Med. 1: 395–403. 1986; Li & al. in Food Chem. 119: 1239–1245. 2010; Zhao & Xiao, Encycl. Med. Pl. 4: 342–347. 2010)、抗癌研究(Lee & al. in Amer. J. Chin. Med. 39: 201–213. 2011; Chen & al. in Molecules 21: 710. 2016)などの文献で依然として広く採用されている。Chen & al.は、Flora of Chinaでの処理に基づいて、臨床使用のためのH. diffusaの植物化学、薬理学、品質管理、および薬物動態特性のレビューで、扱っている種を明確に定義した。
 さらなる混乱を避けるため、Dutta & Debによって示された、Willdenow Herbarium no. 2588-01 B (右側の資料) (画像は https://herbarium.bgbm.org/object/BW02588010 で入手可能) の単生花の分類群を表すタイプを保存タイプとして保存することを提案する。これにより、200年以上にわたる伝統的および現在の使用法が保存さる。この種は、広義には、Smith、Roxburgh (1820)、Dutta & Deb、および Wangの定義を含む、1~3花の分類群である。
 B-W no. 2588-01 B を持つHedyotis diffusaをタイプとして 保存することで、2つの名前の適用に影響する。Scleromitrion brachypodum (DC.) T.C. Hsu (Hsu & Chen in Taiwania 62: 151–156. 2017) (O. brachypoda DC.)はS. diffusum のシノニムになる。Oldenlandia pseudocorymbosa (Bakh. f.) Raizada (Suppl. Fl. Gangetic Plain: 95. 1976) は、Hedyotis diffusa のシノニムに含まれるのではなく、既存の適用 (Dutta & Deb, l.c.; Nandikar & Kishor in Blumea 64: 225–230. 2019) と一致する別種に適用される。Willdenow Herbarium no. 2588 には、3つの異なる分類群からの3個体のシートが2枚含まれている。標本 B-W no. 2588-01 A は Oldenlandia pseudocorymbosa になり、B-W no. 2588-02 はO. corymbosa L. (S. Pl.: 119. 1753)である。Sivarajan & Bijuによる扱いは他の分類学者によって採用されていないため、この保全は2つの名前の現在の適用に大きな影響を及ぼさない。  Hedyotis diffusaの保全は命名の安定性に貢献し、伝統的な中国医学や抗がん研究で Hedyotis diffusa という名前が広く使用されている際の混乱を防ぐ。提案が却下された場合、現在 H. diffusa として知られている分類群の名前を Scleromitrion brachypodum に変更する必要がある。これは、H. diffusa という名前を、現在 Oldenlandia pseudocorymbosa として受け入れられている別の分類群に適用する必要があるためである。
 Oldenlandia pseudocorymbosa (Bakh.f.) Raizadaは現在ではOldenlandia corymbosa var. corymbosa(タマザキフタバムグラ)のシノニムである。

4 Scleromitrion pinifolium (Wall. ex G.Don) R.J.Wang マツノハニオイグサ 松の葉匂草

  synonym Hedyotis pinifolia Wall. ex G.Don [Flora of China]
  synonym Oldenlandia pinifolia (Wallich ex G. Don) K. Schumann
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、海南省、雲南省)、台湾、インド、アッサム、ネパール、ミャンマー、アンダマン諸島、バングラデシュ、タイ、カンボジア、ベトナム、マレーシア、インドネシア、オーストラリア(北部準州)原産。中国名は松叶耳草 song ye er cao。標高600m以下の乾燥した落葉樹林、開けた場所、草原、海岸や川沿いの砂地に生える。
 1年草または多年草、、高さ5~40 mm、斜上または傾伏し、散開し、多数分枝するかまれに直立し、高さ25㎝まで。茎は4稜形(~ほぼ円柱形)、針金状、4うねがあり(ときに溝があり)、無毛、表面がザタつく。托葉は葉柄の基部に融合して、短い(浅い)鞘状になり、長さ0.8~1.2㎜、軟毛があるか無毛、紙質、先は三角形~円形~切形~わずかに鈍形、(1~)5~9本の線形~剛毛状の裂片があり、長さ0.5~2.5㎜、褐色で±等形。葉は無柄またはほ無柄、輪生またはときに非常に短い茎に房状に集合し、最上部の葉は4枚以上輪生する。葉身は乾燥すると硬く紙質~革質、狭線形~針状~線形または狭へら形、長さ(5~)15~60㎜×幅0.5~2.5㎜、先は鋭形または尖鋭形、基部は円形~漸尖形、縁は外巻きし、上部縁近くに小剛毛があり、下面は側脈に剛毛があり、無柄またはほぼ無柄。花序は頂生および腋生、頭状または短く束生し、直径4~7㎜、節当たり(1~)3~12個の花をつけ、無柄で、1 対または 2 対のやや縮小した葉がある。苞は披針形~硬毛、長さ0.5~4㎜、全縁または縁毛がある。花は白色またはライラック白色、漏斗形、同型花柱性(homostylous)。小花柄は長さ0.5~1㎜、剛毛がある。萼と花托筒部分は倒円錐形~ほぼ球形、長さ0.8~1.2㎜。萼片は狭三角形~三角形、長さ1~3㎜×幅0.5~0.6㎜、無毛になり、全縁~密に繊毛があり反り返る。花冠は白色、ときにピンク色がかり、筒形~漏斗形、花冠筒部は長さ1~1.5㎜、花冠裂片は長円形~楕円形、長さ(1.8~)2.5~3㎜×幅0.3~0.5㎜、外側は無毛、内側は花冠筒部の喉部にわずかに軟毛がある。雄しべは突き出る。花糸は長さ約1㎜、無毛。葯は長円形、長さ(1~)1.5~2㎜×幅0.2~0.3㎜。子房は粗毛があり、花柱は長さ2.5~3㎜、無毛、突き出る。柱頭は長さ0.2~0.3(~1)㎜、無毛、葯より上に位置する。蒴果は軟骨質~硬く、(披針形~)卵形、倒卵形または球形、長さ2~3㎜×幅(1.5~)2~2.5㎜、宿存する萼片は反り返る。種子は室あたり40~60個、長さ0.1~0.2㎜×幅0.1~0.2㎜、淡褐色で角張る。熱帯では1年中、開花、結実。中国では花期は5~11月、果期は4~11月。(e-Flora of Thailand、Flora of China)

5 Scleromitrion koanum (R.J.Wang) R.J.Wang スクレロミトリオン・コアヌム

  synonym Hedyotis angustifolia Cham. & Schltdl.
  synonym Oldenlandia angustifolia (Cham. & Schltdl.) Kuntze
  synonym Hedyotis koana R.J. Wang [Flora of China]
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、海南省、雲南省、江西省)、台湾原産。中国名は蕴璋耳草 yun zhang er cao。海抜200mまで雑草が生い茂る開けた場所に生える。
 草本、直立し、高さ40cmまでになる。茎は4稜形~円柱形、無毛。葉は無柄。葉身は乾くとほぼ革質になり、線形、長さ1.4~4㎝×幅0.1~0.15㎝、無毛、基部は楔形、縁は外巻きし、先は鋭形、2次脈は見えない。托葉は葉柄基部に癒着し、三角形、長さ1~1.8㎜、無毛になり、長さ0.5~1㎜の剛毛が1~3本ある。花序は頂生、ときに最上部の葉腋に付き、集散花序で、2~12個の花がつき、無毛、花序柄があり、花序軸は斜上する。苞は狭披針形、長さ1~5㎜、鋭形~芒がある。小花柄は長さは3~20mm。花は小花柄がある。萼は無毛。花托筒は卵形~ほぼ球形、長さ 1~1.5㎜。萼片は深裂し、裂片は三角形~披針形、長さ1~1.7㎜m、先は鋭形~尖鋭形。花冠は白色、筒状、外側は無毛。花冠筒部は長さ1.5~2.5㎜、内側は無毛。花冠裂片は楕円状長円形~披針形、長さ0.9~1.2㎜。果実は蒴果、ほぼ球形~卵形、長さ1.2~2㎜×幅2~3㎜、無毛、硬い紙質、先端から胞背裂開する。種子は数個、角(かど)がある。花期と果期は6~9月(Flora of China)。

6 Scleromitrion sirayanum T.C.Hsu et Z.H.Chen スクレロミトリオン・シラヤヌム

 台湾原産。中国名は西拉雅蛇舌草。標高150~250mの丘陵地帯の二次林と使われなくなったリュウガンの果樹園の下の半露出または日陰の斜面または崖に生える。
 多年草、散開して分枝し、高さ20㎝以下。茎は平伏し、弱く~鋭く4稜および/または2溝があり、無毛または溝に沿っておよび/または節近くがしばしば細かくザラつく。葉は無柄またはほぼ無柄、葉柄は長さ1㎜以下、葉身は薄い革質、披針状長円形~狭楕円形、長さ1.5~4.2㎝×幅3~6(~8)㎜、上面は無毛または縁と先近くにまばらに細かいザラつきがある、下面は無毛、基部は楔形または沿下し、先は鋭形または尖鋭形、縁はしばしばわずかに外巻きし、全縁または基部近くが細かくザラつき、側脈は見えない。托葉は葉柄の基部に融合し、三角形~円形、長さ1~2㎜、小剛毛があり、5~7本の線形または剛毛状の荒毛(setiform bristles)があり、剛毛は長さ1~5㎜m、縁毛がある。花序は腋生で常に1花あり、無柄である。苞は針形~披針形、長さ1~2.5㎜、繊毛がある。花は同型花柱性(homostylous)である。萼片は無毛、4裂する。花托筒部分は倒円錐形、長さ約1㎜。拡大部は基部近くまで分裂し、萼片は披針形、長さ1.5~3㎜×幅約1㎜、縁は基部に繊毛があり、先に向かって細かくザラつく。花冠は4数性、白色、しばしばピンク色がかり、高杯形(salverform)、外面は無毛。花冠筒部は長さ4~6㎜×直径約0.5mm、内面は無毛。花冠裂片は狭楕円状長円形、約・長さ2.5㎜×幅1.0㎜、強く反り返り、通常は巻き、内側の基部には密に長い絨毛がある。雄しべは4本。葯は突き出し、帯白色、長さ約1mm。花糸は長さ1.5~2㎜。柱頭は2裂、球状、長さ0.3~0.4㎜。花柱は無毛、突き出し、長さ4.5~5.5㎜。子房は2室、胚珠は各室に多数、中軸胎座。果実は蒴果で、倒円錐形、先端が平らで、長さ2.5~3.5㎜×幅2~3㎜、紙質、基部から先まで胞間裂開し、その後先端から基部にかけて胞背裂開し、最終的に4個のほとんど自由なバルブに分かれる。萼片は宿存し、開出~斜上する。種子は蒴果あたり約16~28個、角張り、暗褐色、長さ0.4~0.6㎜、種皮は網状。花期は3~10月。果期は4~12月。

7 Scleromitrion tenelliflorum (Blume) Korth. ケニオイグサ 毛匂草
  synonym Hedyotis tenelliflora Blume
  synonym Oldenlandia tenelliflora (Blume) Kuntze
 タイ、マレーシア、インドネシア(ボルネオ島、ジャワ島、マラヤ島、マルク諸島、スマトラ島)、ニューギニア、オーストラリア(クイーンズランド州)原産。標高0~200mの石灰岩の丘陵地に生える。
 高さ10~40㎝、平伏する草本。茎は円柱形で、4うねがあり、溝があり、無毛。托葉は鞘状、切形、裂片は9~11本の剛毛で、鞘と剛毛には毛がある。葉は披針形、広楕円形または楕円形、長さ(1.8~)3~7.5㎝×幅(0.5~)1.3~2㎝、革質、先は鋭形または尖鋭形、基部は楔形または漸尖形、上面は縁と中脈に毛があり、下面は粉白色、側脈は3~6対あり、不明瞭、葉柄は無いかまたは長さ1~5㎜。花序は腋生、頭状花序、腋に2~4個の花がつく。花は白色で漏斗形、同型花柱性(homostylous)、無柄。萼片の基部は合着し、萼片は広卵形または披針形、長さ1.5~2㎜×幅約1㎜、先は鋭形、縁にはパピラがある。花冠筒部は長さ約3.5㎜、花冠裂片は長円形、長さ2~2.2㎜、先は鋭形、外側は毛があり、筒口の内側は綿毛がある。雄しべは花冠筒から突き出る。花糸は長さ 1~1.5 mm、無毛。葯は長楕円形で、長さ 0.8~1.2 mm。子房は無毛。花柱は突き出る。長さ約5㎜、無毛。柱頭は短い。蒴果は球形、直径2㎜、無毛。萼片は直立し、4~8本の目立つうねがあり、萼片の基部の下で膨らむ。種子は室ごとに4~5個。花期は1~7月(e-Flora of Thailand)。
 日本(屋久島~沖縄)の路傍、草地、畑地、水田の畦などに見られものがケニオイグサといわれているが、POWOでは日本、中国を分布域に含めていない。日本のものは葉が線形で幅が2~3㎜と狭く、無毛であり、Flora of ChinaのHedyotis tenellifloraの解説と同じものである。 【屋久島~沖縄で見られるもの】
 草丈15~50cm程の多年草。茎は硬く、4稜があって基部から多数枝分かれする。葉は長さ5~6㎝×幅20~3㎜の線形で、先は尖る。葉腋に、長さ約2~3㎜の筒形の白色の花を数個付ける。
【Flora of Chinaの解説】Hedyotis tenelliflora Blume
 日本(屋久島~沖縄)、中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、海南省、四川省、雲南省、浙江省)、台湾、インド、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン、オーストラリア、メラネシア原産。中国名は纤花耳草 xian hua er cao。標高100~1400の谷間の斜面、畑のうねに生える。
 1年草又は多年草、拡散して分枝し、高さ40㎝以下。しばしば乾くと黒色になる。茎はほぼ円柱形、平滑、又は弱く~鋭く、4稜があり、及び/又は2溝があり、無毛又はしばしば溝沿いや節近くがザラつく。葉は葉柄が無又はほぼ無。葉柄は長さ1㎜以下、無毛になる。葉身は乾くと薄い革質、線形~線状披針形~狭楕円状長円形~狭ヘラ形、長さ1.2~5㎝×幅0.15~0.4㎝、上面は無毛又は縁付近がザラつき、下面は無毛、両面にときに大きな表皮細胞のつぶれた鱗片がある、基部は楔形、鋭形、又は沿下し、縁は頻繁に外巻きし、先は鋭形~尖鋭形、2次脈は見えない。托葉は基部で葉柄に融合し、三角形~円形、長さ1~2㎜、微軟毛、小剛毛があり、又は無毛になり、2~5個の長さ1~4㎜の線形~剛毛状の裂片をもつ。花序は腋生、各腋に花が1個又は2~3個つく。密集した集散花序、団散花序(glomerulate)又は密散花序(fascicle)は直径4~8㎜、無柄又はほぼ無柄。苞は針状~披針形、長さ1~2.5㎜、全縁又は縁がわずかにザラつき、花柄は長さ1㎜以下。花は無柄又はほぼ無柄、見た目は同型花柱性(homostylous)。萼は無毛、花托筒部分はほぼ球形~倒卵形、長さ約1㎜、萼の拡大部は基部近くまで分裂し、萼片は線状披針形~三角形~へら形、長さ1.5~2㎜、繊毛がある。花冠は白色、漏斗形、外側は無毛。花冠筒部は長さ約2㎜、のど部に軟毛がる。花冠裂片は狭ヘラ状長円形、長さ1~2㎜。葯は突き出し、長さ約1㎜。柱頭は長さ0.2~0.3㎜。果実は蒴果、卵形、長さ2~2.5㎜×幅1.5~2㎜、軟骨質~硬く、先端を横切って胞背裂開する。種子は多数。花期と果期は4~12月。

8 Scleromitrion verticillatum (L.) R.J.Wang ヒロハケニオイグサ 広葉毛匂草

  synonym Hedyotis verticillata (L.) Lam.
  synonym Oldenlandia verticillata L.
 日本(慶良間諸島・久米島、西表島)、中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、浙江省)、台湾、インド、アッサム州、ネパール、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、シンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン原産。中国名は粗叶耳草 cu ye er cao 。別名はアカグキニオイグサ。日本では久米島の林縁、荒地に生える。
 常緑多年草、長さ15~40㎝、茎は匍匐し、まばらに分枝して散開する。全体に粗毛を密生する。葉は対生し、披針形~楕円状披針形、長さ2~6㎝×幅4~8㎜、先は鋭形~鋭尖形。花は葉腋に2~6個束生し、花冠は白色、長さ約3㎜、先が4裂する。蒴果は卵円形で、まばらに毛がある。花期は8~10月。
【e-Flora of Thailandの解説】
 茎と蒴果に剛毛があるのが特徴。
 一年草または多年草、高さ10~20㎝。茎は平伏し、四角形で、うねと溝があり、剛毛がある。托葉は鞘状で、裂片は5~11本の剛毛(bristle)であり、剛毛がある(hispid)。葉は楕円形または狭楕円形で、長さ(1.3~)2.5~6㎝×幅(0.2~)0.5~1.2㎝、ほぼ革質、基部は楔形、先は鋭形、縁は外巻きし、上面はザラつき、下面には剛毛があり、側脈は4~6対で不明瞭。葉柄は長さ0~1㎜。花序は腋生、頭状、花は4~16個つく。花は白色、筒形、同型花柱性。小花柄は長さ約0.5㎜。萼筒は長さ0.5~0.8㎜。萼片は三角形、長さ1.8~2.2㎜×幅0.6~0.8㎜、直立し、縁には剛毛がある。花冠筒部は長さ2~3㎜、花冠裂片は長円形、長さ2.2~2.8㎜×幅0.5~0.6㎜、先は鋭形、外側の先に剛毛があり、内側は無毛。雄しべは花冠筒部から突き出す。花糸は長さ2~2.2㎜。葯は白色、長円形、長さ0.8~1㎜×幅0.2~0.3㎜。子房は剛毛がある。花柱は長さ4.5~5㎜、無毛、花冠筒部から突き出す。柱頭は長さ約0.5㎜。蒴果は球形または卵形で、長さ約2.5㎜×幅2~2.5㎜、蒴果の中央部が最も幅広く、剛毛があり、宿存する萼は収束する。種子は1室あたり40~60個、長さ0.2~0.3㎜×幅0.2~0.3㎜。花期は8~3月。
【Flora of Chinaの解説】
 中国名は粗叶耳草 cu ye er cao 。標高200~1600mの丘陵地帯、道端、まばらな森林の草むらまたは茂みに生える。  1年草又は多年草、拡散して分枝し、しばしば、傾伏し、高さ30㎝以下。茎は扁平、ほぼ円柱形、又は4稜形、普通、2溝があり、疎~密に微細剛毛、小剛毛、又はわずかに細かくザラつく(scaberulous)。葉は葉柄が無~有、葉柄は長さ2㎜以下、わずかにザラつき又は小剛毛があるか、無毛になる。葉身は乾くと紙質又は薄い革質、狭楕円形~線状披針形、長さ2.5~6㎝×幅0.3~1.3(~2)㎝、上面は無毛又は少なくとも縁付近はわずかにザラつき、下面は無毛~少なくとも中脈に密に微細剛毛又は小剛毛があり、基部は鋭形~鈍形、縁はしばしば、少なくとも乾くと外巻きし、先は鋭形~尖鋭形、2次脈は見えない。托葉は葉柄の基部に短く合着し、三角形~類切形、長さ1~3㎜、疎~密に小剛毛~微細剛毛があり、5~9個の長さ1~8㎜の線形の裂片又は剛毛をもつ。花序は腋生、団散花序~密集した集散花序であり、直径5~10㎜、数個の花がつく。中程度~密に小剛毛があり、無柄。苞は線形~披針形、長さ1~4㎜。花は花柄が無又はほぼ無、見た目は同型花柱性(homostylous)。萼は密に小剛毛がある。花托筒部分は倒円錐形~ほぼ球形、長さ約1㎜。拡大部は本質的に基部まで分裂し、萼片は披針形~三角形、長さ1~2㎜、繊毛がある。花冠は白色、漏斗形、外側は裂片を除いて無毛、ときに先に毛があり、筒部は長さ約2㎜、内側は無毛。花冠裂片は披針形、長さ1.8~2㎜。葯は突き出し、長さ約1㎜。柱頭は長さ約0.3㎜。果実は蒴果、卵形、長さ2~3㎜×幅1.5~2㎜、先端まで胞背裂開し、萼片は長さ3㎜以下、果柄は長さ1.5㎜以下。種子は多数、淡褐色、角(かど)がある。花期と果期は3~11月。W. C. Ko (in FRPS 71(1): 42. 1999)が葉の幅が2㎝までと解説しているが、他では報告されていない。

フタバムグラ属(広義のHedyotis)

  family Rubiaceae - genus Hedyotis

 亜低木、低木、1年草、又は多年草、平伏~直立又はよじ登り、刺は無い。束晶(raphide)はある。葉は対生[まれに輪生]ときに、茎の先に束生し、ダニ室は無い。2次脈はまれに、三行脈(trinerve)又は掌状脈。托葉は宿存し、葉柄間、葉柄の基部に融合し、又は茎の周りに統合し、三角形~切形、全縁~縁毛~不規則に切れ込み、微細不整歯があり、1~数個の裂片や剛毛がある。花序は頂生、偽腋生や腋生、花が少数~多数、束生し、集散花序、円錐花序、頭状花序又は団散花序になり、又は花が1個つき、花序柄は無又は有、苞があり、又は無くなる。花柄は有又は無、花は両性で同型花柱性又は異型花柱性[~雌雄異株では単性]。萼の拡大部は浅く~深く(2~)4裂(又はHedyotis hainanensisでは5裂)。花冠は白色、ピンク色、紫色、又は青色、筒形、漏斗形、高杯形、車形、又はつぼ形、内側は様々に無毛又は軟毛がある。花冠裂片は(2~)4個(又は H. hainanensisでは 5個)、蕾では敷石状。雄しべは4(又は H. hainanensisでは 5)本、花冠の筒部又はのど部につき、突き出ないか又は突き出る。花糸は発展するか又は短くなる。葯は背着、しばしば基部近くにつく。子房は2室、中軸胎座につく。柱頭は2裂、裂片は線形~こん棒形、まれに分裂せず、突き出ないか又は突き出る。果実は非裂開、分離果又は蒴果、通常、ほぼ球形~卵形~双小果状(dicoccous)、皮殻質~膜質~革質、分離果のときは割れて、2分果になり、蒴果のときは割れて、部分的に又は完全に胞間裂開や胞背裂開する。その後、ときに他の方法で割れ、先が平ら又は短い~よく発達する嘴をもつ(つまり、萼の拡大部の内側の花盤の区域)、ときに嘴を通して1次裂開し、萼の拡大部は宿存する。種子は少数~多数、小さく、角(かど)があり又は平凸面形。種皮は平滑、網目、又は他の様々な装飾があり、胚乳は肉質、子葉はこん棒形又は円柱形。
 世界に約500種があり、世界中の熱帯、亜熱帯に広く分布し、アフリカやアジアに多く、少数が暖温帯地域にも分布する。

 広義フタバムグラ属 Hedyotis L. s.l. (including Oldenlandia:Rubiaceae=)は500~600種を含み、Hedyotis-Oldenlandia complexと呼ばれる。Neupaneら (2015)は近年の系統解析や形態形質情報をもとに次の13属に分割した。(種の数はKewscience)。

1 Debia Neupane & N. Wikstr デビア属(5種)
2 Dentella J. R. Forst. & G. Forst.タイワンミゾハコベ属(9種)
 Dentella repens (L.) J.R.Forst. et G.Forst.  タイワンミゾハコベ
3 Dimetia (Wight & Arn.) Meisn.ディメティア属(10種)
4 Edrastima Raf.エドラスティマ属(5種)
5 Exallage Bremek. ヤエヤマハシカグサ属(18種)
6 Hedyotis L.[狭義] ヘディオティス属(194種) 
7 Involucrella (Benth. & Hook. f.) Neupane インボルクレラ属 (3種)
8 Kadua Cham. & Schltdl. カドゥア(30種)
9 Kohautia Cham. & Schltdl. コハウティア属(27種)
10 Leptopetalum Hook. & Arn. シマザクラ属(10種) 
 Leptopetalum biflorum (L.) Neupane & N.Wikstr.
 Leptopetalum foetidum (G.Forst.) Neupane & N.Wikstr.
 Leptopetalum grayi (Hook.f.) Hatus.シマザクラ
 Leptopetalum kanehirae Hatus
 Leptopetalum mexicanum Hook. & Arn.マルバシマザクラ
 Leptopetalum pachyphyllum (Tuyama ex Fosberg & Sachet) Naiki & Ohi-Tomaアツバシマザクラ
 Leptopetalum pteritum (Blume) Neupane & N.Wikstr.
 Leptopetalum strigulosum (DC.) Neupane & N.Wikstr.
   var. parvifolium ソナレムグラ
   var. luxurians オオソナレムグラ
11 Neanotis W. H. Lewis, ハシカグサ属 (34種)
 Neanotis hirsuta (L.f.) W.H.Lewis ハシカグサ
 Neanotis formosana (Hayata) W.H.Lewis  タイワンハシカグサ
12 Oldenlandia L. オルデンランディア属(164種)
 Oldenlandia corymbosa L.[Hedyotis corymbosa (L.) Lam.] タマザキフタバムグラ
13 Scleromitrion (Wight & Arn.) Meisn スクレロミトリオン属 (28種)
 Scleromitrion diffusum (Willd.) R.J.Wang [Hedyotis diffusa Willd.]ナガエフタバムグラ
 Scleromitrion brachypodum (DC.) T.C. Hsu フタバムグラ
 Scleromitrion tenelliflorum (Blume) Korth.ケニオイグサ
 Scleromitrion verticillatum (L.) R.J.Wang ヒロハケニオイグサ

ヘディオティス属(狭義のHedyotis)

  family Rubiaceae - genus Hedyotis

 低木、小低木または草本、直立し、斜上し、傾伏または平伏する。茎は円柱形または四稜形で、鈍角で、肋または翼がある。托葉は三角形~線形で、縁には腺または裂片があり、裂片は小歯状~線形。葉は楕円形、披針形、卵形または線状披針形。花序は頂生または腋生。花は4(~5)数性で、ほとんどが異型花柱(heterostylous)である。萼は錐形、三角形、または披針形。花冠は短筒形~長筒形。雄しべと花柱は花冠から突き出す場合としない場合がある。子房は2室。蒴果は胞間裂開(septicidally)および胞背裂開(loculicidally)または非裂開であるが、機械的圧力により胞間裂開できる。種子は多数、角張り、倒円錐形、3稜形、背側は平らまたはわずかに凸形、腹側にはへそのうねがあり、へそのうねの2辺は凹形、網状、暗褐色。
 世界に194種あり、熱帯・亜熱帯アジアから北西太平洋までに分布する。日本にはない。
1 Hedyotis uncinella Hook. et Arn. ニオイグサ 匂草
  synonym Oldenlandia uncinella (Hook. & Arn.) Kuntze
 中国(福建省、広東省、貴州省、海南省、湖南省)、台湾、インド、アッサム、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、タイ、ベトナム原産。中国名は长节耳草 chang jie er cao。標高200~1200mの乾燥した開けた場所に生える。沖縄に帰化しているが、ナガバハリフタバの誤認ともいわれる。
 多年草、直立し、高さ70㎝以下。茎は4角(かど)および/または溝があり、角は鋭くて厚くなるかまたは狭くて翼状になり、疎~密に微軟毛があるか、または小剛毛があるか無毛になる。葉は対生、まれに1~2節で3出複葉になり、ほぼ無柄~有柄。葉柄は長さ2.5㎜以下、微軟毛があるか無毛になる。葉身は乾くと紙質、卵状長円形、長円状披針形、卵形、披針形、または楕円形、長さ1.5~7.5㎝×幅0.4~3.8㎝、両面に疎~密に微軟毛(puberulent)~小剛毛(hispidulous)~微直軟毛(pilosulous)があり、基部は鋭形~円形で、通常は短く沿下し、先は鋭形~尖鋭形、二次脈は4対または5対ある。托葉は葉柄間(interpetiolar)、三角形~狭三角形、長さ2~3.5㎜、中程度~密に微直軟毛または微軟毛があり、先は鋭形、芒があり、または通常は不規則な切れ込みがあり、または2~5個の線形の裂片~長さ0.5~2㎜の剛毛がある。花序は頂生で最上部の葉腋につき、頭状花序または団散花序(glomerulate)、直径8~15㎜、球形、多数の花が付き、無柄。苞は線形~披針形、長さ0.5~2㎜。花は無柄またはほぼ無柄、異型花柱(distylous)。萼は中程度~密に微直軟毛~小剛毛がある。花托筒部分はほぼ球形~倒円錐形、長さ約1㎜。拡大部は基部まで深裂し、裂片は狭三角形、長さ2.5~4㎜、繊毛がある。花冠は白色または紫色、漏斗形または筒状漏斗形、外側には少なくとも裂片上に微軟毛または微直軟毛がある。筒部は長さ3~3.5㎜、喉部に綿毛があり、裂片は長円状披針形、長さ1.5~2㎜。葯は突出または内包し、長さ0.8~1㎜。柱頭は長さ0.3~1㎜、内包または突出する。果実は蒴果、亜球形~広卵形、長さ1.5~2㎜×幅1.8~2㎜、しばしばやや扁平、胞間裂開し、その後胞背裂開し、長さ1㎜までの花序柄または小花柄がある。種子は数個、淡褐色、角張る。花期および果期は4~9月。

参考

1) Flora of China
 Hedyotis
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=114827
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Scleromitrion
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:60445140-2
3) Scleromitrion sirayanum (Rubiaceae ... - Taiwania
 Taiwania 62(2): 151-156, 2017 DOI: 10.6165/tai.2017.62.151
 Scleromitrion sirayanum (Rubiaceae: Spermacoceae),
 a new species of the Hedyotis-Oldenlandia complex in Taiwan
https://taiwania.ntu.edu.tw/pdf/tai.2017.62.151.pdf
4) World Flora Online
 Scleromitrion (Wight & Arn.) Meisn.
https://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000034740
5)热带亚热带植物学报 2020, Vol. 28 Issue (2): 197-200
 New Record of the Rubiaceous Plants for the Flora of Hong Kong  
http://jtsb.ijournals.cn/html/2020/2/4136.htm
6)Taiwania 62(2): 151‒156, 2017
Scleromitrion sirayanum (Rubiaceae: Spermacoceae), a new species of the Hedyotis-Oldenlandia complex in Taiwan; Scleromitrion sirayanum
https://taiwania.ntu.edu.tw/pdf/tai.2017.62.151.pdf
7)e-Flora of Thailand
 Rubiaceae
https://botany.dnp.go.th/eflora/florafamily.html?factsheet=Rubiaceae&volumeno=15
 13. Hedyotis L.
https://botany.dnp.go.th/eflora/floraGenus.html?factsheet=Hedyotis&tdcode=07773
 28. Scleromitrion (Wight & Arn.) Meisn.
https://botany.dnp.go.th/eflora/floragenus.html?factsheet=Scleromitrion
8)植物研究雑誌 第36巻 第9号 p298 (1961)
初島住彦 日本及び台湾産フタパムグラ属数種に就て ナガエケニオイグサ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/36/9/36_36_9_4702/_pdf/-char/ja
9)Kyoto University Research Information Repository
 Ajia Kenkyu (The Southeast Asian Studies) Vol. 8, No.3 December, 1970
Nobuyuki FUKUOKA Contributions to the Flora of Southeast Asia ;III. Hedyotis (Rubiaceae) of Thailand
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/55630/1/KJ00000134012.pdf
10)臺灣植物誌第一版 Flora of Taiwan, 1st edition VOL.41978
 4. Hedyotis diffusa Willd. p,272-274
https://tai2.ntu.edu.tw/ebooks/FlTaiwan/4/272
11)Taxon Volume70, Issue2 P.443-444(2813) (2021)
Proposal to conserve the name Hedyotis diffusa (Oldenlandia diffusa, Scleromitrion diffusum) (Rubiaceae) with a conserved type
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/tax.12488