ホソミキンガヤツリ 細実金蚊帳吊

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Flora of Mikawa

カヤツリグサ科 Cyperaceae カヤツリグサ属

中国名 (断节莎 duan jie suo)
英 名 Engelmann's umbrella sedge, false rusty nut sedge(saltmarsh flatsedge, fragrant flatsedge, nut sedge, rusty flatsedge)
学 名 Cyperus engelmannii Steud.
(Cyperus odoratus L.)
ホソミキンガヤツリの穂
ホソミキンガヤツリ小穂拡大
ホソミキンガヤツリの果実と鱗片
ホソミキンガヤツリの茎
ホソミキンガヤツリの茎断面
ホソミキンガヤツリの茎の基部
ホソミキンガヤツリ
ホソミキンガヤツリ小穂
ホソミキンガヤツリ小穂の鱗片の下
ホソミキンガヤツリ果実
ホソミキンガヤツリの葉
花 期 8~10月
高 さ 50~70㎝
生活型 1年草
生育場所 水辺、湿地、水田の畦
分 布 帰化種 北アメリカ原産
撮 影 幸田町 07.8.12
近年増加傾向にあり、帰化種と考えられている。ムツオレガヤツリ(別名キンガヤツリ)に似て果実が細いことから ホソミキンガヤツリと名づけられている。最近、関東地方で見られるものはムツオレガヤツリでなく、ほとんどこのホソミキンガヤツリであると言われており、三河地方でも同様と思われる。
 Cyperus engelmannii(Engelmann's umbrella sedge)は大型で、稜がなく、茎の断面が丸みのある三角形、叢生し、基部は赤色を帯び膨れる。葉は幅5~8㎜、花序より長くなるものもある。苞葉は葉状、3~8個つき、数個が花序より長くなる。花序枝は7~15個つき、複生し、小穂が軸にやや斜めに開出してつき、黄金色に色づく。小穂は長さ10~20㎜、幅約1㎜の線形、小花を8~10個もつ。小穂の小軸はややコルク質で翼状になり、果実を包み、果実が熟すと鱗片の基部で折れ曲がりやすくなり、完熟すると鱗片の基部にある関節がはずれてバラバラになって落ちる。鱗片は長さ3~3.5㎜(写真の実測2.5~2.6㎜)、質が革質、7脈があり、中肋は2折し、背が丸く、先が少し尖る。鱗片は上下の間が離れて小穂につく。果実は長さ1.5~1.8(約1.8)㎜の狭倒卵形~長楕円形(3稜のある円筒形)。花柱は長さ0.2~0.4㎜。柱頭は3岐、長さ1.2~1.5㎜。U.S.A.のミネソタ、マサチューセッツ、ネブラスカ、テネシー、バージニア、ペンシルバニア州に分布する。
 ムツオレガヤツリ(別名キンガヤツリ) は狭義のCyperus odoratus (saltmarsh flatsedge) 。根茎がなく、茎の基部が膨れる。小穂が花序軸にほぼ直角につき、鱗片は長さが短く約2.5㎜、紙質、上下の間隔が狭く、重なって小穂につく。果実も短く長さ1.2~1.5(約1.2)㎜の倒卵形(扁平な偏3稜形)。花柱が0.5㎜以上と長い場合が多い.。
 コガネガヤツリ Cyperus strigosus( strawcolored flatsedge)も北アメリカ原産であり、茎の3稜が明瞭で、基部が膨らむ。小穂はホソミキンガヤツリと比べると扁平な線状楕円形、鱗片が長さ2.8~4㎜、はっきり2折する。果実は長さ(1.5)1.8~2.4㎜、幅 0.5~0.6㎜の狭長楕円形。

 神奈川県植物誌に従って整理した。しかし、Cyperus engelmanni(Engelmann's umbrella sedge)は原産地のアメリカでは最近、Cyperus odoratusと同義語として扱われるのが一般的であり、Jepson eFlora では、Cyperus odoratusは鱗片の長さ2.1~3.5 ㎜。果実は長さ1.5~1.9㎜、前後に扁平。Flora of North Americaでは鱗片の長さ(2)2.2~2.8(3.2)㎜、幅(1.2)1.4~1.6(1.8)㎜、果実の長さ(1)1.2~1.5(1.9) ㎜の狭長楕円形~まれに倒卵状惰円形。Flora of china ではCyperus odoratus 断节莎 は鱗片の長さが2~3.5㎜、果実は楕円形~倒卵状惰円形、わずかに曲がり、3稜があるとしている。どれも鱗片や果実の大きさがホソミキンガヤツリとほぼ一致している。ムツオレガヤツリは果実が短く、狭義のCyperus odoratus (saltmarsh flatsedge)である。鱗片の長さが2.5㎜に近いムツオレガヤツリとの中間のホソミキンガヤツリが各地で確認されており、ホソミキンガヤツリCyperus engelmannii をCyperus odoratusにまとめた方がよいようにも思える。