ヒトリシズカ 一人静

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Flora of Mikawa

センリョウ科 Chloranthaceae チャラン属

別 名 ヨシノシズカ
中国名 银线草 yin xian cao
学 名 Chloranthus japonicus Siebold
 synonym Tricercandra japonica (Siebold) Nakai
ヒトリシズカの芽
ヒトリシズカの花
ヒトリシズカの花2
ヒトリシズカの果実
ヒトリシズカ
ヒトリシズカ葉
花 期 4~5月
高 さ 20~49㎝
生活型 多年草
生育場所 山地の林内、草地
分 布 在来種  北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア
撮 影 豊田市(飯盛山)  06.4.16
和名の由来は白い清楚な花が1個ずつつくのを静御前にたとえたもの。学名はChloranthus quadrifolius (A.Gray) H.Ohba et S.Akiyamaとされたこともあるが、これはフタリシズカ Chloranthus serratus (Thunb.) Roem. et Schult. の同義語とされている。
 根茎は多数の節があり、平伏し、分枝し、多くの細くて長い繊維状の根がつき、芳香がある。茎は赤紫色を帯び、1~数本束状に直立し、分枝せず、基部の節から1対の鱗片状の葉をつける。鱗片状の葉は対生し、三角形~卵形、長さ4~5㎜、膜質。葉は普通、対生し、2対の葉が4個、偽輪生し、芽どきには花序を包んで直立する。葉柄は長さ0.8~1.8㎝。葉身は広楕円形~倒卵形、長さ8~14㎝、幅5~8㎝、紙質、腺点のある微突形、基部の1/4は全縁、葉表は光沢があり、無毛、基部は広楔形、縁は鋭い鋸歯縁、先は鋭形。側脈は6~8対、網状脈が明瞭。穂状花序は1個、頂生し、長さ3~5㎝、花序柄がある。苞は三角形~近半円形。花は白色。雄しべは3個。葯隔は長く伸び、長さ約5㎜、白色、水平や上側に曲がり、子房の先端に基部で合着する。花被はなくこれが白色の花弁状に見える。中央の雄しべの葯隔は葯がなく、2個の側雄しべの葯隔にはそれぞれ1室の葯をつける。葯室は葯隔の基部につく。子房は卵形。花柱は無く、柱頭は切形。核果は緑色、類球形~倒卵形、長さ2.5~3㎜、柄は長さ1~1.5㎜。2n=30。

チャラン属

  family Chloranthaceae - genus Chloranthus

 亜低木または多年草。葉は対生または輪生、鋸歯縁。托葉は小さい。葉柄は茎の横の尾根によって接続される。花序は穂状花序または分枝する円錐花序、腋生又は頂生。花は小さく、両性。 花被は無い。 雄しべは普通3本、まれに1本、子房の先端の側部につく。葯隔の基部は合流、または分離して基部で接続または重なり、卵形または披針形、ときに長く、線形になる。葯は1室または2室。もし雄しべが3本なら、中央の葯は2室、またはときに無く、側葯は1室。もし、雄しべが1本なら、葯は2室。子房は1室。 胚珠は1個、下垂、直生。花柱は普通、無く、まれに有る。柱頭は切形または深裂する。核果は球状、卵形、または 洋ナシ形。
 世界に約17種あり、温帯から熱帯アジアに分布し、中国には13種(9種は固有種)ある

チャラン属の主な種と園芸品種

1 Chloranthus fortunei (A. Gray) Solms キビヒトリシズカ 吉備一人静
  synonym Chloranthus koreanus Nakai

  synonym Chloranthus fortunei (A. Gray) Solms var. koreanus (Nakai) Hiyama

 中国(安徽省、広東省、広西チワン族自治区、海南省、湖北省、湖南省、江蘇省、江西省、山東省、四川省、台湾、雲南省、浙江省)原産。中国名は丝穗金粟兰 shui jing hua。英名はFortune's chloranthus。標高200~300mの茂み、斜面、湿地、牧草地、道端に生える。薬用に使用される。
 多年草、高さ15~40㎝、無毛。根茎は太く短く、細く長い繊維状の根が多数ある。茎は直立し、1本または数本が束生し、基部の節には1対の鱗片葉がある。鱗片葉は対生し、三角形。葉は対生し、通常茎の先端部に4枚ある。托葉は不規則な細かい切れ込みがあり、錐形。葉柄は長さ1~1.5㎝。葉身は広楕円形、長い楕円形または倒卵形、長さ5~11㎝×幅3~7㎝、紙質、先は腺のある微突形、下部は全縁、若いときは下面に密に細かい腺があり、古くなると腺は目立たず、基部は広楔形、縁は円鋸歯状鋸歯または粗い鋸歯があり、先は鋭形、側脈は4~6対、網状脈が目立つ。穂状花序は単生し、茎の先端に生じ、長さ4~6㎝で花序柄がある。苞は倒卵形、通常は2または3個の歯がある。花は白色、芳香がある。雄しべは3本、葯隔は長く、線形、直立または斜上し、長さ1~1.9㎝、基部が合着し、子房の先の外側につく。中央の葯隔は2室の葯をもち、側葯隔にはそれぞれ1室があり、半葯は葯隔の基部にある。子房は倒卵形。花柱はない。核果は淡黄緑色、球形、条線があり、長さ約3㎜、ほぼ無柄。花期は4~5月。果期は5~6月。2n=30, 60。
品種) 'Domino'

2 Chloranthus henryi Hemsl. クロランサス・ヘンリー
 中国(安徽省、福建省、甘粛省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖北省、湖南省、陝西省、四川省、浙江省)原産。中国名は宽叶金粟兰 kuan ye jin su lan。標高800~2000mの湿地、茂み、森林に生える。薬用に使用される。
 多年草、高さ40~65㎝。根茎は強く、黒褐色で、細く長い、褐色の繊維状の根が多数ある。茎は直立し、1本または数本が束生し、明瞭な6または7節があり、節間は0.5~3㎝、基部の節には1対の鱗片葉がある。鱗片葉は卵状三角形、膜質。葉は対生し、通常茎の先端に4枚つく。托葉は錐形。葉柄は長さ5~12㎜。葉身は広楕円形、卵状楕円形、倒卵形またはほぼ円形、長さ9~18㎝×幅5~9㎝、紙質、腺のある微突形、基部は楔形~広楔形、縁は鋸歯状または円鋸歯状、先は尖鋭形、側脈は6~8対。穂状花序は頂生または頂生および腋生で、通常は2分枝または総状に分枝する。花序柄は長さ(2.5~)10~16㎝。苞は通常卵状三角形またはほぼ半円形。花は白色。雄しべは3本で、基部はほぼ離生、内側のみが合着する。中央の葯隔は長さ約3㎜、2室の葯をもち、側葯隔はやや短く、それぞれ1室の葯をもち、葯隔の基部に半葯がある。子房は卵形。花柱はない。柱頭はほぼ頭状。核果は球形、直径約3㎜、柄は短い。花期は4~6月。果期は7~8月。

3 Chloranthus japonicus Siebold ヒトリシズカ 一人静

  synonym Chloranthus quadrifolius (A.Gray) H.Ohba et S.Akiyama [Ylist]

  synonym Chloranthus japonicus auct. non Siebold [Ylist]
  synonym Chloranthus mandshuricus Ruprecht;
  synonym Tricercandra japonica (Siebold) Nakai
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は银线草 yin xian cao。
多年草。高さ20~49㎝。根茎は多数の節があり、平伏し、分枝し、多くの細くて長い繊維状の根がつき、芳香がある。茎は赤紫色を帯び、1~数本束状に直立し、分枝せず、基部の節から1対の鱗片状の葉をつける。鱗片状の葉は対生し、三角形~卵形、長さ4~5㎜、膜質。葉は普通、対生し、2対の葉が4個、偽輪生し、芽どきには花序を包んで直立する。葉柄は長さ0.8~1.8㎝。葉身は広楕円形~倒卵形、長さ8~14㎝、幅5~8㎝、紙質、腺点のある微突形、基部の1/4は全縁、葉表は光沢があり、無毛、基部は広楔形、縁は鋭い鋸歯縁、先は鋭形。側脈は6~8対、網状脈が明瞭。穂状花序は1個、頂生し、長さ3~5㎝、花序柄がある。苞は三角形~近半円形。花は白色。雄しべは3個。葯隔は長く伸び、長さ約5㎜、白色、水平や上側に曲がり、子房の先端に基部で合着する。花被はなくこれが白色の花弁状に見える。中央の雄しべの葯隔は葯がなく、2個の側雄しべの葯隔にはそれぞれ1室の葯をつける。葯室は葯隔の基部につく。子房は卵形。花柱は無く、柱頭は切形。核果は緑色、類球形~倒卵形、長さ2.5~3㎜、柄は長さ1~1.5㎜。花期は4~5月。2n=30。
品種) 'Aojiku' , 'Shikoku Spotlight'

4 Chloranthus oldhamii Solms タイワンフタリシズカ 台湾二人静
 台湾原産。中国名は台湾金粟兰 tai wan jin su lan。英名はOldham's chloranthus。標高200~1000mの森林、道端に生える。
 多年草、高さ25~40㎝、平滑、無毛。茎は直立し、基部の節には1対の鱗片葉がある。葉は対生し、茎頂に4枚集まって偽輪生する。葉柄は長さ6~9㎜、葉身は広楕円形、円形、または広卵形、長さ10~13㎝×幅6~9㎝、紙質、腺のある微突形、基部は広楔形~円形、縁は小鋸歯状または鋭鋸歯状、先は尖鋭形~長い尖鋭形、側脈は5~7本。穂状花序は茎頂に生じ、総状分枝する。枝は通常対生し、長さ9~15㎝で花序柄がある。花序柄は長さ3.5~7㎝、苞は卵形または広三角形、長さ約1.2㎜、縁は不規則に小さな歯状で、数個の小さな淡黄色の点がある。花は白色。雄しべは3本。葯隔は長円形または長い楕円形、基部は合着し、子房の先の外側につく。中央の葯隔は長さ約3㎜、葯は2室の葯がつく。側葯隔は長さ約2㎜、それぞれ1室の葯をもつ。半葯は長さ約0.7㎜、葯隔の基部につく。子房は倒卵形、長さ約1.6㎜、花柱は長さ約0.7㎜。柱頭は数裂する。核果は褐色、倒卵形または梨形、長さ2~3㎜、柄は長さ約2.5 ㎜。花期は4月。果期は5月。2n=30。

5 Chloranthus serratus (Thunb.) Roem. et Schult. フタリシズカ 二人静
 日本(北海道、本州、四国、九州)、千島列島、中国原産。中国名は及已 ji ji。山地の林内に生える。
 多年草。高さ15~50㎝。根茎は平伏し、短く、太く、直径約3㎜、多数の黄褐色の繊維状の根がつく。茎は1又は小束状に数本、直立し、明瞭な節があり、無毛、基部の節に1対の鱗片状の葉がつく。鱗片状の葉は対生し、三角形、膜質。葉は対生し、節間が狭く、茎の上部に4~6個、輪生状に集まってつき、葉柄は長さ0.8~2.5㎝。葉身は楕円形~倒卵形~卵状披針形~類円形~広楕円形、ときに卵状楕円形~長楕円形、長さ7~15㎝、幅3~6㎝、紙質、腺点のある微凸形、葉裏の脈に沿って短毛があり、基部は楔形、縁は鋸歯縁、先は次第に狭まり又は楔形。側脈は6~8対。穂状花序は頂生、ときに腋生、1~3分枝する。葉腋に閉鎖花をつける小さな花序を出す。花序柄は長さ1~3.5㎝。苞は三角形又は近半円形、普通、先に数個の歯がある。花は白色。雄しべ3個。葯隔は長楕円形、基部で収束して子房の先端の外側に合着する。中央雄しべの葯隔は内向し、長さ2~3㎜、側雄しべの葯隔にほぼ等しいかわずかに長く、2室の葯室をもつ。側雄しべの葯隔は、1室の葯をそれぞれつける。葯室は葯隔の中間や先端部分につく。子房は卵形、花柱は欠く。柱頭は太く、短い。核果は緑色、長さ約3㎜、球形又は洋ナシ形。花期は4~6月。2n=28, 30。
5-1 Chloranthus serratus var. taiwanensis K. F. Wu,
 台湾原産。中国名は台湾及已 tai wan ji ji
 葉身はほぼ円形または広楕円形、下面の脈に毛があり、上面と下面に密に明瞭な橙黄色の斑点があり、縁に鈍い鋸歯がある。花期は7月。

6 Chloranthus sessilifolius K. F. Wu クロランサス・セシリフォリウス
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、江西省、四川省)原産。中国名は四川金粟兰 si chuan jin su lan。標高600~1200mの森林や茂みの湿地に生える。薬用として使用される。
 多年草、高さ35~70㎝。根茎は強く、直径5~7㎜、やや太い繊維状の根が多数ある。茎は直立し、やや強く、1本または数本の束状で、明瞭な4節または5節があり、基部の節には1対の鱗片葉がある。鱗片葉は対生し、三角形、長さ0.7~1.3㎝、膜質。葉は無柄、対生し、茎の先に4個あり、後に輪生し、倒卵形、菱形、または楕円形、長さ12~20㎝×幅7~12㎝、紙質、腺のある微突形、下面は淡緑色、ときに赤紫色または脈のみが淡赤色を帯び、基部は楔形、縁は円鋸歯状または鋸歯状、先は次第に狭まり(angustate)、先端が長さ約2㎝になり、側脈は6~8対、網状脈は両面にわずかに突出し、目立つ。穂状花序は先端に2~4本の垂れ下がった枝を持つ。花序柄は長さ(4~)10~15㎝。苞は三角形または扇形、長さ約1.5㎜、縁は不規則に小歯がある。花は白色。雄しべは3本、基部は離生またはほぼ離生、合着しまたはわずかに重なり、子房の先端部の外側につく。葯隔は長円形、長さ2~2.5(~4)㎜、ほぼ等長。中央の葯隔には2室の葯があり、側葯隔にはそれぞれ1室の葯があり、半葯鞘は葯隔の基部の縁にある。子房は卵形、長さ約2㎜。花柱はない。柱頭は切形、縁は歯状。核果は褐色、ほぼ球形、長さ約2.5cm、柄は長さ約 1.8㎜。花期は3~4月。果期は5~7月。
品種) 'Domino'

7 Chloranthus spicatus (Thunb.) Makino チャラン 茶蘭
 中国原産。中国名は金粟兰 jin su lan。
 亜低木、直立またはわずかに平伏し、高さ30~60㎝。茎は円柱形、無毛。葉は対生。葉柄は長さ0.8~1.8㎝、基部は±合着する。 葉身は楕円形または卵状楕円形、長さ5~11㎝×幅2.5~5.5㎝、厚い紙質、腺のある微突形、下面は淡黄緑色、上面は濃緑色で光沢があり、基部はくさび形、縁は円鋸歯状鋸歯があり、先は鋭形または鈍形、側脈は6~8対、両面でわずかに目立つ。穂状花序は円錐花序に配置され、普通、頂生、まれに腋生。苞は三角形。花は黄緑色、小さく、とても香りがよい。雄しべは3本、葯隔は合流し、卵形、先端部は不規則に3裂し、中裂片は大きく、ときに先が再び3浅裂し、2室の葯室がある。側裂片は小さく、それぞれに1室の葯がある。子房は倒卵形。花期は4~7月。果期は8~9月。2n=30。

参考

1) Flora of China
 Chloranthus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=106776
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Chloranthus
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:7052-1
3) World Flora Online
 Chloranthus
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000007987;jsessionid=B3A42C5C392B6A65F4CC2CB833313C03
2) GRIN
 Chloranthus
http://tn-grin.nat.tn/gringlobal/taxon/taxonomygenus?id=2505