ヒルムシロ 蛭蓆

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Flora of Mikawa

ヒルムシロ科 Potamogetonaceae ヒルムシロ属

別 名 ヒルナ、サジナ
中国名 眼子菜 yan zi cai
学 名 Potamogeton distinctus A. Benn.
ヒルムシロの花
ヒルムシロの葉
ヒルムシロ
花 期 6~10月
高 さ 水面
生活型 多年草
生育場所 池沼、水田
分 布 在来種  日本全土、朝鮮、中国、ロシア、ブータン、ネパール、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン
撮 影 幡豆町  06.7.23
浅い池沼の底に生える水生植物。根茎は水底の泥中を横に広がり、節から直径1.5~2㎜の茎を水中に出す。葉は沈水葉と浮水葉の2形。茎の下部に互生して、沈水葉をつけ、上部に浮水葉をつける。頂部の葉は対生する。浮水葉は長さ4~11㎝の狭長楕円形~楕円形、鋭頭、葉柄の長さ6~15㎝。沈水葉は質が薄く、長さ5~16㎝の披針形、葉柄の長さ1~17㎝。花期には浮水葉の葉腋から土筆のような長さ2.5~8㎝の花序を水面に出す。花茎は長さ3~10㎝、茎より太い。果実は長さ2.9~3.7㎜の広倒卵形。2n=52
 類似種のフトヒルムシロは浮水葉が大きく、波状になり、沈水葉は葉柄がほとんど無い。
 沈水葉が線形のものは浮水葉が大きい順に、オヒルムシロ、ホソバミズヒキモ、コバノヒルムシロである。ホソバミズヒキモとコバノヒルムシロは混同しやすく、種子の突起が大きいのが、コバノヒルムシロである。

ヒルムシロ属

  family Potamogetonaceae - genus Potamogeton

 多年草または1年草、淡水または汽水(brackish water)、完全に沈水または浮葉。茎は円柱形~扁円柱形、まれに強く扁平になる。葉は互生、ときに対生、単形または2形。托葉は膜質、遊離または部分的に葉の基部(鞘)に付着する。水中葉(submerged leaves)は無柄または葉柄があり、線形または薄い披針形の葉身ををもち、縁は全縁、歯状、または鋸歯状。浮葉(floating leaves)は葉柄があり、革質の葉身は披針形~卵形~広楕円状長円形。花序は花序柄のある穂状花序、頂生または腋生、蕾のときに鞘に囲まれ、花時に抽水(emergent)、浮遊(floating)し、または沈水(submerged)する。花被は4数性、離生、苞状で短い爪部があり、それぞれ雄しべに対生してつく。雄しべは4個、基部で花被と統合する。葯は無柄、2室、外向き、縦に裂開する。心皮は (1~)4(~5)個、分離。柱頭は無柄または短い花柱の上につき、広がり、頭状または盾状。胚珠は1個、心皮の内側につく。果実は核果、外果皮は肉質の内果皮は骨質。胚は曲がるかまたは螺旋状で、まれに直立する。胚乳は無い。
 世界に約75種あり、世界中に分布する汎存種。

ヒルムシロ属の主な種と園芸品種

1 Potamogeton alpinus Balb. ホソバヒルムシロ 細葉蛭蓆
  synonym Potamogeton tenuifolius Raf.
  synonym Potamogeton alpinus Balb. subsp. tenuifolius (Raf.) Hultén
 日本(北海道、本州の東北地方、長野県)、韓国、中国、ロシア、インド(アッサム)、アフガニスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、ミャンマー、パキスタン、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は高山眼子菜 gao shan yan zi cai。
 多年草、、普通、赤味を帯び、特に乾燥すると赤味がかる。根茎は細い。茎は円柱形、直径1.5~2㎜、単純だが、ときに水平の匍匐茎をもつ。葉は二形。托葉は腋生、回旋状、草質、わずかに茎を抱き、長さ12~35㎜。水中葉は無柄、披針形~線状披針形~楕円状長円形、長さ5~38㎝×幅0.7~3.3㎝、9~19脈があり、中脈に隣接する広い列の裂孔(lacunae)があり、基部はくさび形、縁は全縁、先は鈍形。浮遊葉は葉柄があり、葉身は楕円形~広披針形、長さ4~9㎝×幅8~25㎜、革質またはほぼ革質、(5~)7~13脈があり、基部はくさび形~狭いくさび形、縁は全縁、先は鈍形。穂状花序は円筒形、長さ6~15㎝、密に花がつく。 花序柄は茎より太い。心皮は4個。果実は倒卵形、長さ2.6~3.7㎜、外側の竜骨はやややや鋭く、短い嘴がある。花期および果期は7~9月。2n=52。

2 Potamogeton berchtoldii Fieber イトモ 糸藻
  synonym Potamogeton pusillus auct. non L.
 日本(北海道、本州、四国、九州)、韓国、中国、ロシア、ブータン、南西アジア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は纤细眼子菜 xian xi yan zi cai。池、湖、沼地、溝に生育する。
 1年草、淡水性。根茎は無い。茎は糸状で、単純から自由に分枝する。一対の節腺(nodal glands)が明瞭にある。殖芽(しょくが:turion)は短く、シュートのようで、頂生する。托葉は腋生、回旋状、葉に側面全体が融合し、長さ3~14㎜、膜質で半透明、平らまたは縁が内巻きし、繊維状に宿存しない。葉は無柄、線形、ほとんどが幅広く、側面が平行、長さ0.8~8.5㎝×幅0.3~2.4㎜、3脈があり、中脈に隣接する目立つ裂孔があり、中脈は葉の基部で太くならず、基部は円形、先は鈍形または亜鋭形~鋭形。穂状花序は対生の花の輪が1~3段あり、緩く、果時に長さ4~8㎜。心皮は4個。果実は斜め、倒卵形で、長さ2~2.5㎜、背が丸く、先に短い嘴がある。花期および果期は5~10月。2n=26。

3 Potamogeton compressus L. エゾヤナギモ 蝦夷柳藻
  synonym Potamogeton sibiricus A.Benn.
 日本(北海道、本州中部以北)、アジアとヨーロッパの北部および温帯地域に広く分布。中国名は扁茎眼子菜 bian jing yan zi cai。湖、池、水路に生育する。
 1年草。淡水性、沈水植物。根茎は無い。茎は密に枝分かれし、節間はわずか~強く扁平、幅1.2~3.5㎜、節腺(nodal glands)は無い。殖芽は腋生または頂生、短いシュート状、葉がある。托葉は腋生、回旋状、長さ1~1.8㎝、半透明、しばしば先に繊維状で宿存する。 葉は無柄、線形、長さ5~15㎝×幅2.4~4.8㎜、3~5脈があり、12~32個の厚壁束(sclerenchymatous strands)がかすかに見え、中脈に隣接する狭い列の裂孔があり、基部は狭いくさび形、先はほぼ鋭形~円形で微突形。穂状花序は長さ1.6~3.3㎝、対生する花の輪生が4~7段あり、隣接し、円筒形。花序柄は長さ2.5~6cm。心皮は普通、2個。果実はほぼ丸く、長さ3.4~4.6㎜、外側の竜骨は明瞭、嘴は後ろに向かってわずかに曲がる。花期および果期は7~9月。2n=26。

4 Potamogeton crispus L. エビモ 海老藻
 日本全国、韓国、中国、モンゴル、ロシア、インド、ブータン、ネパール、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ラオス、ミャンマー、バングラデシュ、タイ、ベトナム、インドネシア(スマトラ)、アフリカ、南西アジア、オーストラリア、ヨーロッパ原産。中国名は菹草 zu cao。南北アメリカおよび太平洋諸島(ニュージーランド)に帰化し、侵略的外来種とされている。湖、小川、池、水田に生える。  1年草。淡水性、沈水植物。根茎が存在し、円柱形~わずかに扁平。茎は根元で這い、円柱形~わずかに扁平で角張り、まばらに分枝する。殖芽は硬く、腋生、長さ1~3㎝×幅8~15㎜、それぞれが強く短く、厚く、広がった葉によって形成された硬い鱗片の集団である。托葉は腋生、回旋状~短く合着し、長さ5~10㎜、膜質ではかない。葉は無柄、広線形~狭長円形、長さ3~8㎝×幅3~10㎜、3~7脈があり、縁はほとんど波状または縮れ、鋸歯縁、先は鈍形または円形。穂状花序は円筒形、少し離れた対生の花の輪生が2~4段ある。花序柄は長さ14~65(~125)㎝。心皮は4個、基部で短く合着する。果実は卵形、長さ3.5~4㎜、外側の竜骨は明瞭、下部のうねに少数の歯がある。嘴は心皮の本体とほぼ同長またはそれより長く、細い。花期および果期は4~7月。2n=52。

5 Potamogeton cristatus Regel et Maack コバノヒルムシロ 
 日本(本州の宮城県以西、四国、九州)、韓国、中国、台湾、ロシア原産。中国名は鸡冠眼子菜 ji guan yan zi cai。池、水田に生育する。
 種子がなければ類似種のホソバミズヒキモと区別できない。
 1年草または多年草。淡水性。根茎は目立たなく、有または無。 茎は糸状、円柱形、直径約0.5㎜、単純またはまばらに分枝する。休眠中の殖芽は腋生、狭い紡錘形、3~5枚の針状の(acerose)葉がある。葉は二形。托葉は回旋状、長さ6~10㎜、膜質、葉の基部から分離する。水中葉は無柄、線形~糸状、長さ2.5~7㎝×幅約1㎜、3脈がある。浮葉は普通、互生し、花序柄の真下み対生し、葉柄がある。葉柄は長さ1~1.5cm。葉身は不透明、卵形~卵状長円形、まれに披針形、長さ1.5~2.5㎝×幅3~11㎜、革質、7脈があり、基部は円形またはくさび形、先は鋭形または鈍形。穂状花序は対生する花の輪が3~5段つく。花序柄は長さ0.8~1.5cm。心皮は4個。果実は倒卵形、長さ1.5~2.5㎜、横方向に扁平、短い花柄があり、外側の竜骨はとさか状。嘴は長さ1~1.2㎜、細い。花期および果期は5~9月。

6 Potamogeton distinctus A.Benn.  ヒルムシロ 蛭蓆
 日本全土、朝鮮、中国、ロシア、ブータン、ネパール、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン原産。中国名は眼子菜 yan zi cai。別名はヒルナ、サジナ。
 多年草。浅い池沼の底に生える水生植物。根茎は水底の泥中を横に広がり、節から直径1.5~2㎜の茎を水中に出す。葉は沈水葉と浮水葉の2形。茎の下部に互生して、沈水葉をつけ、上部に浮水葉をつける。頂部の葉は対生する。浮水葉は長さ4~11㎝の狭長楕円形~楕円形、鋭頭、葉柄の長さ6~15㎝。沈水葉は質が薄く、長さ5~16㎝の披針形、葉柄の長さ1~17㎝。花期には浮水葉の葉腋から土筆のような長さ2.5~8㎝の花序を水面に出す。花茎は長さ3~10㎝、茎より太い。果実は長さ2.9~3.7㎜の広倒卵形。2n=52。花期は6~10月。

7 Potamogeton fryeri A.Benn. フトヒルムシロ 太蛭蓆
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、ロシア原産。山間の溜池、水路に生育し、貧栄養性の弱酸性水域を好む。
 多年草、浮葉性の水草。地下茎は太く、地中を這い、水中茎は長く伸び、2mに達することもある。沈水葉(水中葉)はほぼ無柄の長さ6~25㎝、幅5~30㎜の狭長楕円形。浮葉は長さ5~13㎝、幅3~5㎝の長楕円形~広楕円形、5~15㎝の長柄があり、縁に波状のしわが目立つ。花序は長さ3~6㎝、黄緑色の小さな花を多数つけ、水面に出る。花後には花穂は倒れる。殖芽はつくらず、水中茎のまま越冬する。花期は4~8月。

8 Potamogeton gramineus L. エゾノヒルムシロ 蝦夷蛭蓆
  synonym Potamogeton heterophyllus Schreb.
  synonym Potamogeton gramineus L. var. heterophyllus (Schreb.) Fr.
 日本(北海道、本州中部以北)、韓国、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、パキスタン、SWアジア(イラン)、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は禾叶眼子菜 he ye yan zi cai。池、沼、水路に生育する。
 多年草、淡水生。根茎は細く~わずかに丈夫で、普通、密に枝分かれし、先に休眠芽がある。茎は円柱形、直径1~2㎜で、普通、密に枝分かれし、ときに、まばらに枝分かれする、葉は二形。托葉は腋生、回旋状、目立ち、長さ6~35㎜、草質または膜質、茎を抱く。水中葉は無柄、半透明、線状長円形~倒披針形、長さ3~5cm×5~12㎜、草質、(3~)5~9(~13)脈があり、基部はくさび形、縁は±細かい歯状、先は微突形。浮葉は有または無、葉柄がある。葉柄は普通、葉身よりも長い。葉身は不透明、楕円形~卵状楕円形~楕円状披針形、(7~)11~21(~23)脈があり、革質、基部はくさび形~円形、縁は全縁、先は鈍形。穂状花序は円筒形、長さ15~40㎜、密に花がつき、対生する花の輪生体が多数つく。花序柄は長さ4~7㎝、上部が太くなる。心皮は4個。果実は倒卵形、長さ2.4~3.1㎜、外側の竜骨は鈍形、先に短い嘴がある。花期および果期は7~9月。2n=52。

9 Potamogeton lucens L.  ガシャモク 広義
  synonym Potamogeton dentatus Hagstr.
  synonym Potamogeton teganumensis (Makino) Makino
 日本(青森県、関東地方、琵琶湖、九州)、中国、ロシア、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、パキスタン、ミャンマー、インド、ネパール、フィリピン、北アフリカ、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は光叶眼子菜 guang ye yan zi cai。
 ササバモと異なり陸生形は作らない。冬は地下茎の先端に殖芽を形成する。節間部が肥大する。  ササバモに似るが葉柄がほとんどないかあっても短い(1cm以下)。葉身は狭長楕円形、長さ5~12cm×幅1.2~2.5cm、ときに先の芒状突起が2cmを超える。托葉は長さ2~4cm。花序柄は長さ4~9cm。花序は長さ2~5cm。花は4心皮。果実は長さ2.5~3mm×幅1.5~2mm。花期は6~10月。
9-1 Potamogeton lucens L. subsp. sinicus (Migo) H.Hara var. teganumensis Makino  ガシャモク 

10 Potamogeton maackianus A.Benn. センニンモ 仙人藻
 日本全土、韓国、中国、台湾、ロシア(シベリア)、インドネシア(スマトラ)、フィリピン原産。中国名は微齿眼子菜 wei chi yan zi cai。湖、池、まれに川、通常はわずかに酸性の水に生育する。
 常緑多年草、沈水性の淡水草。根茎が存在し、円柱形。茎は基部または下部で這い、細く、わずかに扁平な円柱形、直径約1mm、多数、分枝し、殖芽(しょくが:turion)は無い。托葉は長さ3~6mm、葉の基部につき、わずかに融合し、回旋状、膜質。 葉は無柄、広線形、長さ2~6cm×幅2~4mm、3~7脈があり、側脈はかすか、中脈に隣接する狭い列の裂孔があり、基部は円形、縁は小鋸歯状、先は鈍形~円形。穂状花序は花が少数、隣接するかまたは少し離れた対生の花の輪が2~3段つく。花序柄は長さ1~4cm。心皮は普通4個。果実は倒卵形、長さ3.5~4mm、外側の竜骨は明瞭、短い嘴があり、先端は長さ0.5mm。花期および果期は6~9月

11 Potamogeton mandshuriensis (A.Benn.) A.Benn.  ナガバイトモ 
 中国、ロシア原産。中国名は东北眼子菜 dong bei yan zi cai。

12 Potamogeton natans L.  オヒルムシロ 
 日本(東日本に多く、関西以西では稀)、韓国、中国、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、ミャンマー、ネパール、タジキスタン、ウズベキスタン、アフリカ、南西アジア、ヨーロッパ、北アメリカの温帯および北方地域原産。中国名は浮叶眼子菜 fu ye yan zi cai。湖、池、水路、通常はわずかに酸性の水に生育する。
 多年草。淡水性。根茎は細くて丈夫で、円柱形。茎は細くて丈夫で、円柱形、直径1.5~2mm、普通、単純、たまにまばらに分枝する。葉は二形。沈水葉は、長くて狭い線形の鈍形の葉状体(phyllodes)、長さ10~20cm×幅2~3mmに減じ、しばしば、早期に消失し、1~3脈がある。浮葉は托葉が腋生、回旋状、しばしば繊維状で宿存し、長さ4~17cm、葉柄があり、柔軟な変色した関節があり、葉身のすぐ下の葉柄の先に明瞭な角(かど)がある。葉身は不透明、卵形~広長円状卵形~卵形状楕円形、長さ4~9cm×幅2.5~5cm、革質、17~35脈があり、基部は心形~ほぼ心形、先は円形または急尖形(cuspidate)。穂状花序は円筒形、長さ3~5㎝、密に花がつく。花序柄は長さ3~8cm。心皮は4個。果実は倒卵形、長さ3.5~4.5mm、外側の竜骨は鈍形、不明瞭、先に短い嘴がある。花期および果期は7~10月。2n=52。

13 Potamogeton obtusifolius Mert. et W.D.J.Koch  イヌイトモ 犬糸藻
 日本全土、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、ミャンマー、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は钝叶眼子菜 dun ye yan zi cai。池、湖、川、小川に生える。
 1年草、淡水植物。根茎がなく、糸状。 茎は直径約0.8mm、わずかに扁平、基部で這い、多数、分枝し、一対の節腺(nodal glands)が目立つ。殖芽(しょくが:turion)は腋枝に頂生する。托葉は腋生、分離、長さ1~1.8cm×幅1.1~3.5mm、回旋状、膜状から草本状、しばしば繊維状で宿存する。葉は無柄、線形、長さ3~6㎝×2.1~3.5㎜、3(-5)脈があり、側脈はかすかに見え、明瞭な中脈に隣接する狭~広の列の裂孔があり、基部は狭いくさび形、先は鈍形~円形、不明瞭な微突がある。穂状花序は対性の花の輪が2~3段つき、隣接し、広い円筒形。花序柄は長さが果時の穂状花序の長さの0.4~1.2倍。心皮は(3~)4(~ 5)個。果実は斜めの倒卵形、長さ2.6~3.6mmで、外側の竜骨は鋭く、明瞭または不明瞭。花期および果期は6~10月。2n=26。

14 Potamogeton octandrus Poir. ミズヒキモ 水引藻 [広義]
 日本(本州、四国、九州の大分県・鹿児島県、沖縄)、韓国、中国、台湾、ロシア、インド、ネパール、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア(ジャワ)、ニューギニア、アフリカ、オーストラリア原産。中国名は南方眼子菜 nan fang yan zi cai。池と水路、通常はわずかに酸性の水に生育する。
 1年草または多年草、淡水植物。根茎は目立たなく有または無。茎は糸状、円柱形、直径約0.5㎜、まばらから密に分枝する。節腺(nodal glands)がない。休眠中の芽は腋生、狭い紡錘形、1~3個の針状の(acerose)葉がある。葉は二形。托葉は腋生、回旋状、長さ4~13㎜、膜質、葉の基部から分離し、早く枯れ、乾燥すると緑色または緑褐色になる。水中葉は互生し、無柄で、線形~糸状、長さ2~6cm×幅約1㎜、3脈があり、中脈に沿って目立つ裂孔があり、中脈は葉の基部が太くならず、長さの上部1/4で先に向かって漸尖し、先は尖鋭形。浮葉は葉柄があり、普通、互生し、花序柄のすぐ下でほぼ対生する。葉身は不透明、楕円形~長円形~長円状卵形、長さ1.5~2.5cm×幅7~12mm、革質、5~7脈があり、基部は円形、先は鋭形または鈍形。穂状花序は密に花がつき、対生の花の輪が4段つく。花序柄は長さ1~1.5cm。心皮は4個。果実は倒卵形、長さ1.5~2.5㎜、外側の竜骨は不明瞭~明瞭、鈍形~細かい波打つ歯があり、長さ0.3㎜までの短い嘴がある。花期および果期は5~10月。2n = 28。
14-1 Potamogeton octandrus Poir. var. miduhikimo (Makino) H.Hara ミズヒキモ 
  synonym Potamogeton limosellifolius Maxim. ex Korsh.
  synonym Potamogeton octandrus Poir. var. limosellifolius (Maxim. ex Korsh.) Tzvelev
  synonym Potamogeton miduhikimo Makino

14-2 Potamogeton octandrus Poir. var. octandrus ホソバミズヒキモ 細葉水引藻
  synonym Potamogeton iriomotensis Masam.
 日本全土に分布する。ため池や河川、水路などに生育する。
 多年草、沈水または浮葉植物、小型。繊細な根茎が泥中を横走する。6月頃から秋にかけて各葉腋に長さ1~2cmの殖芽を形成し、これが栄養繁殖ならびに越冬の手段となる。水中茎はよく分枝する。沈水葉は線形、長さ3~5(~8)㎝×幅0.3~1mm、1脈、鋭尖頭。浮葉は長楕円形で明るい黄緑色、長さ1.5~3cm×幅4~10㎜。花茎は長さ12~20㎜。穂状花序は長さ9~13㎜、花は間隔を開け、3~4段につく。心皮は4個。果実は長さ約2.5mm、外側の竜骨に数個の低い突起があるものからほとんどないものまである。花期は6~9月。

15 Potamogeton oxyphyllus Miq. ヤナギモ 柳藻
 日本(北海道、本州、四国、九州)、韓国、中国、台湾、ロシア、インドネシア(スマトラ)原産。中国名は尖叶眼子菜 jian ye yan zi cai。池や小川、通常はわずかに酸性の水に生育する。
 多年草または1年草。淡水に生える沈水植物。根茎は有または無。茎は普通、基部で這い、糸状、直径0.5~1㎜、密に分枝する。 節腺(nodal glands)は無い。 殖芽(turion)はシュート状、強く短縮され、葉が多く、腋生または側枝に頂生する。托葉は腋生、分離、長さ6~12 mm、回旋状、膜状および半透明、繊維状に宿存する。葉は無柄、線形、わずか~はっきりかま形、長さ3~10㎝×幅1.5~3㎜、5~7脈があり、2~18個のかすかに見える厚壁束(sclerenchymatous strands)があり、中脈に隣接する狭い列の裂孔があり、中脈は葉の基部で太くならず、基部は狭いくさび形、先に向かって漸尖し、先端は尖鋭形。穂状花序は対生する花の輪生が3~4段つき、隣接し、広円筒形。心皮は4個。果実は倒卵形、長さ3~3.5mm、外側の竜骨は3本、中肋は鋭く、嘴は短く、先端が長さ約0.5mm。花期および果期は6~10月 2n=26。

16 Potamogeton pectinatus L. リュウノヒゲモ 
  synonym Stuckenia pectinata (L.) Börner
 汎存種。世界中に分布。英名はsago pondweed , fennel pondweed , ribbon weed。池、湖、沼地、小川に生育する。
 塊茎をもち、根茎はつや消し。茎は長さ80㎝未満、多くの枝を出し、ほぼ円筒形。葉は長さ15(35)cm以下、幅0.2~1㎜、普通、糸状、先は鋭形または急な、短い~中程度の長さの突起がある。托葉は長さ2~5㎝、鞘は膨らまない。花序は腋生または頂生、果時には間隔が開き、長さ14~22㎜、2~6段、輪生する。花柄は長さ4.5~11.4㎝。果実は長さ2.5~5㎜、嘴が目立つ。花期は5~7月。

17 Potamogeton perfoliatus L. ヒロハノエビモ 
 日本(北日本に多く、西に本では稀)、韓国、中国、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、インド、インドネシア(スマトラ)、カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、アフリカ、南西アジア、オーストラリア、中北アメリカ、ヨーロッパ原産。中国名は穿叶眼子菜 chuan ye yan zi cai。湖、池、川、水路に生育する。
 多年生、淡水生、沈水植物。根茎は斑点がなく、円柱形、細い。茎は円柱形、直径0.5~2.5㎜、上部で密に枝分かれする。托葉は腋生、回旋状(convolute)、長さ3~22㎜、膜質、はかない。葉は無柄、披針形~広卵形、円状卵形または卵状長円形、3~5脈があり、中央脈に隣接する狭い列の裂孔(lacunae)があり、基部は心形で茎を抱き、縁は細かい歯があり、先は鈍形または円形。穂状花序は普通、隣接して円筒形で、対生の花の輪生体が4~7段つく。花序柄は長さ2~11㎝。心皮は4個。果実は倒卵形、長さ2.5~4.5㎜、外側に竜骨が3本あり、わずかに鋭い中央脈と2本の不明瞭な側竜骨があり、先に短い嘴がある。花期および果期は5~10月。2n=52。

18 Potamogeton praelongus Wulfen ナガバエビモ 
 日本(北海道)、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は白茎眼子菜 bai jing yan zi cai。池や静水の水路の水深が深く、中栄養状態の水質でゆるやかに流れる水域に沈んで生育する。
 多年草、淡水に生え、沈水性。 根茎は斑点があり、さび赤色で、細くまたはときに、丈夫、しばしば先端に殖芽(turion)を発達させる。茎は円柱形、普通、長く、単純またはまばらに分枝する。托葉は腋生、回旋状、長さ1~8cm、膜状、葉の基部から分離し、普通、宿存する。葉は無柄、二列生、線状披針形または披針形~卵状長円形~リボン状、長さ6~25cm、中脈が目立ち、中脈に隣接する狭い列の裂孔があり、基部は円形~くさび形で半抱茎、縁は全縁、先はしばしば鈍形、著しく僧帽形、 押すと分かれる。穂状花序は円筒形、隣接し、対生する花の輪生体が6~12段つく。花序柄は長さ5~80cm。心皮は4個。果実は長さ(3.8~)4.5~5.5㎜、外側の竜骨は明瞭。嘴は直立、長さ0.6~1㎜。花期および果期は7~9月。2n=52。
 ヒロハノエビモに似るが、葉の長さが10~20㎝と長く、葉縁が内側に反り、葉の基部の茎の抱き方がやや浅い点で異なる。

19 Potamogeton pusillus L. ツツイトモ 筒糸藻
  synonym Potamogeton panormitanus Bivona
 日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、韓国、中国、台湾、ロシア、アフガニスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、インド、ミャンマー、ネパール、ニューギニア、パキスタン、フィリピン、アフリカ、南西アジア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は小眼子菜 xiao yan zi cai。池、湖、沼地、水路、水田、静かな水またはゆっくり流れる水に生育する。
 1年草、淡水性。根茎は無い。茎はわずかに扁平、直径約0.8㎜、まばら~密に分枝する。節腺(nodal glands)は無いか目立たない。殖芽(turion)は著しく小さくなり、腋生、普通、狭紡錘形。托葉は腋生、分離、長さ5~12㎜、合着し、膜質、半透明、若いときは長さのほとんどが筒状であるが、古くなると分裂し、繊維状に宿存せず、乾くと緑色または緑褐色になる。葉は無柄、線形、長さ2~6cm×幅0.6~2.3㎜、3脈があり、側脈は不明瞭、ほとんど中脈に隣接する裂孔の列がなく、中脈は葉の基部ではっきりと太く、先は鋭形~尖鋭形。穂状花序は対生する花の輪生体が2~4段あり、緩い。 心皮は4個。果実は斜めの倒卵形で、長さ1.8~2.2㎜、外側の竜骨は不明瞭で、先に短い嘴がある。花期および果期は5~10月。2n = 26。

20 Potamogeton wrightii Morong ササバモ 笹葉藻
  synonym Potamogeton malaianus auct. non Miq.
 日本(北海道[稀]、本州、四国、九州)、韓国、ロシア、カザフスタン、パキスタン、インド、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ニューギニア、太平洋諸島原産。中国名は竹叶眼子菜 zhu ye yan zi cai。湖、川、水路、池に生育する。
 多年草、沈水(または浮葉)植物。根茎は円柱形、細い。茎は単純またはまれにまばらに分枝し、節間は長く、円柱形、直径約2㎜。托葉は腋生、回旋状、大きくて目立ち、長さ2.5~5㎝、膜状、葉の基部から分離する。 水中葉は葉柄がある。葉柄は長さ1.6~14㎝。葉身は狭長円形~長円状披針形、長さ8~20(~31)㎝×幅(0.7~)1.4~2(~2.7)㎝、9~13脈があり、目立つ中脈があり、基部は円形またはくさび形、縁は波打ち、細かい小歯があり、先は微突形。 浮葉は普通、無く、ときに有り、明るい緑色、しばしば赤色を帯び、長円形~楕円形、長さ5.2~12.5㎝×幅1.2~2.5㎝、11~25脈があり、基部はくさび形、先は微突形。穂状花序は密に花がつき、対生する花の輪が多数ある。花序柄は長さ4~7 cm、上部で太くなる。心皮は4個。果実は倒卵形、長さ2~3.3mm、外側の竜骨は3本、明瞭、狭い翼のような中脈があり、嘴は短い。花期および果期は6~10月。2n=52。

21 ハイブリッド
(1) Potamogeton x anguillanus Koidz.  オオササエビモ 
  synonym Potamogeton x intortusifolius J.B.He, L.Y.Zhou et H.Q.Wang
 ヒロハノエビモ×ササバモ。
(2) Potamogeton x angustifolius J.Presl  ツガルモク 
 エゾノヒルムシロ×ガシャモク。
(3) Potamogeton x apertus Miki  ツツヤナギモ 
 ツツイトモ(male)×ヤナギモ(female)。
(4) Potamogeton x fauriei (A.Benn.) Miki  アイノコヤナギモ 
 ヤナギモ×エゾヤナギモ。別名はエゾササバモ。
(5) Potamogeton x inbaensis Kadono  インバモ 
 ササバモ×ガシャモク。
(5)-1 Potamogeton x inbaensis Kadono var. pseudomalaianus Kadono  ヒロハノササバモ 
 ササバモ×ガシャモク。
(6) Potamogeton x kamogawaensis Miki  カモガワモ 
 ミズヒキモ×ヤナギモ。別名はオオミズヒキモ。
(7) Potamogeton x kyushuensis Kadono et Wiegleb  アイノコセンニンモ 
 センニンモ×ヤナギモ。
(8) Potamogeton x leptocephalus Koidz.  ヒロハノセンニンモ 
 センニンモ×ヒロハノエビモ。別名はヒロハセンニンモ、ツクシササエビモ。
(8)-1 Potamogeton x leptocephalus Koidz. var. fujiensis Kadono et Iida  フジエビモ 
 センニンモ×ヒロハノエビモ。
(9) Potamogeton x malainoides Miki  アイノコヒルムシロ 
 ササバモ×ヒルムシロ。
(10) Potamogeton x nitens Weber  ササエビモ 
  synonym Potamogeton nipponicus Makino
  synonym Potamogeton gramineus auct. non L.
 エゾノヒルムシロ×ヒロハノエビモ。別名はカラフトササモ、テリハノエビモ。沈水植物。
(11) Potamogeton x nomotoensis Kadono et T.Nog.  ノモトヒルムシロ 
 センニンモ×オヒルムシロ。
(12) Potamogeton x orientalis Hagstr.  アイノコイトモ 
 イトモ×ヤナギモ。
(13) Potamogeton x philippinensis A.Benn.  サンネンモ 
  synonym Potamogeton x biwaensis Miki
 センニンモ×ササバモ。
(14) Potamogeton x tosaensis Kadono, Horii et Yamanouchi  ツツミズヒキモ 
 ホソバミズヒキモ×ツツイトモ。
(15) Potamogeton x yamagataensis Kadono et Wiegleb  ヒメオヒルムシロ 
 オヒルムシロ×ホソバミズヒキモ。

参考

1) Flora of China
 Potamogeton
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110810
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Potamogeton
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30005042-2
3) World Flora Online
 Potamogeton
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000031022;jsessionid=C65D452FB6619B54D86A691781FEC83C
4) Jepson eFlora: Taxon page
 Stuckenia pectinata
https://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=80429
5) Flora of North America
 Stuckenia pectinata
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=126627