ヒメエニシダ 姫金雀枝

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Flora of Mikawa

マメ科 Fabaceae ヒトツバエニシダ属

英 名 sweet broom , Easter broom , ornamental sweet broom
学 名 Genista × spachiana Webb
 synonym Genista spachiana Webb
 synonym Cytisus spachianus (Webb) Kuntze
 synonym Cytisus × spachianus (Webb) Kuntze
ヒメエニシダの花序
ヒメエニシダの花序2
ヒメエニシダの花
ヒメエニシダの咢と小苞
ヒメエニシダの幹
ヒメエニシダの幹2
ヒメエニシダ
ヒメエニシダ旗弁の毛
ヒメエニシダ果実
ヒメエニシダ葉状苞
ヒメエニシダ咢上唇歯
ヒメエニシダ葉
ヒメエニシダ小葉
ヒメエニシダ小葉2
花 期 4~5月
高 さ 1.5~3m
生活型 常緑低木
生育場所 栽培種
分 布 外来種  カナリア諸島(テネリフェ島とゴメラ島)原産
撮 影   蒲郡市 21.5.8
ヒメエニシダはマメ科ヒトツバエニシダ属(Genista)の栽培種。学名はエニシダ属(Cytisus)とされることもあるが、ヒトツバエニシダ属(Genista)とするのが普通になった。ヒメエニシダ(Genista spachiana Webb)はカナリア諸島のテネリフェ島とゴメラ島に自生し、Genista stenopetalaとGenista canariensisとの自然交雑種とされている。ヒメエニシダの学名はGenista spachiana Webb又はGenista × spachiana Webbが使われ、エニシダ属(Cytisus)とすることは少なくなっている。世界中で栽培され、両親からの園芸品種もいくつか作られている。流通名はornamental sweet broomといわれている。日本ではエニシダという名で販売されていることも多い。ヒトツバエニシダ属はカリフォルニア州やオーストラリアで園芸種が野生化し、毒性があるため侵略植物とされ、特にGenista stenopetala(Madeira Broom=sweet broom)やGenista monspessulana (Cape Broom=はFrench broom)が問題とされ、ornamental sweet broom も含めて研究されている。エニシダ(Cytisus scoparius)は茎が多数出て、うねに鋭い±5角(かど)があり、溝の幅が広く、溝の中に毛がなく、若い時に毛があるが、ヒメエニシダより毛がかなり少なく、緑色に見える。エニシダは花が上部の葉腋に1~2個ついて総状花序状になるが、花序に葉がついて花の間隔が開き、花が密につかない。ヒメエニシダは普通、苞が小さな膜質で、頂生の総状花序に花が密につく。花は黄色で似ているが大きく、エニシダは旗弁の背に肋があり、毛がなく、縁が内側に曲がり、内面の基部の筋が赤色になるが、ヒメエニシダは旗弁の背に細かい毛があり、内面基部の筋は淡色で目立たない。エニシダの咢は歯がほとんどない2唇形で、先が褐色を帯び、上唇の鋭い2歯が明瞭で咢が果時に宿存するヒメエニシダとは異なる。
 直立、低木、上部で枝分かれし、高さ3m以下。枝はほぼ無毛、小枝は密に絹毛があり、毛は伏せ~開出。葉は3小葉。葉柄は2.5~6.0㎜。小葉は長さ5~12mm×幅2.5~4.5mm、倒披針形~狭倒卵形、先は鈍形、微突形。小葉は上面が無毛~伏した絹毛があり、下面には密にある。小葉柄は0.4~0.6mm。托葉は長さ1~2mm、鋭形。花序は長さ35~120㎜、頂生、総状花序、花が9~30個つく。最下の(1~4)個の花の基部につく苞は類葉状、3小葉、上部の花の苞はかなり小さくなり、単純。花柄は長さ2~4㎜。小苞は2個、長さ1~2.5mm、線形又は楕円形、咢の下につく。咢は長さ5~6.5mm、絹毛が開出~伏せる。上側の2歯、下側は3歯。旗弁は長さ11~14㎜、広卵形、凹形、先の部分に広V字形に細かい伏した絹毛があるのを除いて無毛。竜骨弁は短い伏した絹毛があり、爪部の近くは無毛になる。豆果は長さ12~24mm×幅2~5mm、狭い長円形、密に絹毛~伏した絹毛がある。花期は4~5月。

ヒトツバエニシダ属

  family: Fabaceae - genus Genista

小~大の多年生の低木(shurubs)又は基部が木質の多年草(suffrutices)、枝は互生、対生、又は垂直に分岐し、刺があるか又は刺がない。茎や枝には普通、うね(rib)があり(T形のうねがあるか、又はうねが無く、又は逆V形のうねがある)、直毛、伏毛、開出毛又は鈎状毛や巻き毛がある。。葉は互生(又は対生)、掌状の3小葉複葉又は単葉(単小葉)。托葉は変化が多く、小さいか、3小葉又は無く、あるいは刺、刺状偽葉(thorny phyllodes)となる。花は腋生又は頂生の密散花序(束生)、頭状花序、又は総状花序につく。苞と小苞は様々、宿存する。咢は鐘形(又は球形)、5歯があり、2唇形。上唇は深い2歯があり、下唇は浅い3歯がある。花弁は黄色。旗弁は卵形~広卵形。翼は長円形。竜骨弁は狭い長円形、先は鈍形、わずかに曲がるか又は真っすぐ。雄しべは単体雄しべ(monadelphous)、合着して閉じた筒になる。雄しべは短と長がある。葯は短と長が互生、底着又は背着。子房は無柄。花柱は先付近で急に内側に曲がる。柱頭は頭状又は斜め。胚珠は2個又はそれ以上。豆果は卵形~線状長円形、扁平、裂開又は非裂開。種子は1~30個、仮種皮があるか又は仮種皮がない。 x = 9, 10, 12。
 世界に約75種があり、ヨーロッパ、西アジア、北アフリカに分布する。

ヒトツバエニシダ属の主な種と園芸品種

1 Genista anglica L.
 ヨーロッパ、イギリス原産。英名はpetty whin , needle furze , needle whin
 低木、高さ0.3~1m、直立、刺がある(thorny)。茎は枝を互生し、無毛、ときにごく若いときに絹毛があり、すぐにとれる。葉は互生し、托葉は無く、単小葉、無毛、粉白色、葉柄は長さ0.2~0.6mm。不稔の茎の葉は長さ3.5~8mm×幅1~2.5(3.5)mm、披針形又は楕円形。稔性の(花のつく)茎の葉は長さ2.5~5mm×幅1.5~2.5mm、楕円形、縁が薄膜質、普通、ごく密につく。根生葉はほとんど差がない。花序は頂生の総状花序、花が5~20個つく。苞は3~7個つき、長さ1.5~2mm、楕円形、無毛、粉白色、縁は薄膜質、花柄の基部につく。小苞は2個、長さ(0.2) 0.5~2㎜、線状披針形、先に縁毛があり、花柄の上半分につく。花柄は長さ1.5~3㎜、無毛。咢は長さ2.5~3mm、鐘形、2唇形、無毛、咢筒は長さ約1mm。上唇は下唇より短く、2深裂し、裂片は長さ1~1.2㎜、卵形、縁毛がある。下唇は3歯、歯は長さ0.6~0.8mm、三角形、縁毛がある。花冠は黄色、無毛。旗弁は長さ5.7~7.5mm×幅3.5~4㎜、楕円形、分化する爪部は無い。翼弁は長さ5~7mm×幅2mm、披針形、爪部は長さ約1.5~2mm。竜骨弁は長さ7.5~9.7mm×幅2~2.7㎜、披針形、爪部は長さ約1.5~2mm。雄しべ群は4本の短雄しべが底着葯、6本の長雄しべは5個の背着葯と1個の底着葯をもつ。雄しべ筒は膜質、竜骨は無い。底着葯は長さ約1mm。背着葯は長さ約0.5mm。子房は無毛、18~8個の種子原基(seminal rudiments)をもつ。花柱は無毛、先が内側に曲がる。柱頭は楕円形。柱頭は楕円形。果実は長さ(9)10~17(22)mm×幅4~8mm、類円筒形、かま形、無毛、種子が4~10個。種子は長さ1.6~1.8mm×幅1.4~1.5mm、卵形、黒色。 2n=42, 48(x=24)。
品種) 'Cloth of Gold'

2 Genista canariensis L. ゲニスタ・カナリエンシス
  synonym T. canariensis (L,) Webb & Berthelot
  synonym Cytisus X racemosus hort. [ITIS Standard Report Page]
  synonym Cytisus canariensis (L.) Kuntze   synonym Teline canariensis (L.) Webb & Berthel.   synonym Cytisus ramosissimus Poir.  カナリア諸島(テネリフェ島、グラン・カナリア島)原産。英名はflorists' genista , Canary broom
 C. stenopetalus や C. × spachianusとは異なり、葉がごく短柄~ほとんど無柄。花序は短く、花が鮮やかな黄色で密につく。var. ramosissimus (Poir.) Briq.は小葉がごく小さく、総状花序がより短く、花がより密。この変種はしばしば'Genista fragrans'としてポットで育てられる。
 低木、直立、低木、多数、分枝し、高さ3m以下。枝は密集し、柔らかい開出毛があり、ときに錆色になる。節間は短い。葉は3小葉。葉柄は1~3㎜。小葉は長さ3~6mm×幅1.5~3.2mm、倒卵形~ほぼ円形、わずかに内巻き、先は鈍形~鋭形、小突形~微突形。小葉は上面が無毛~まばら毛があり、下面には密にある。小葉柄は0.2~0.5mm。托葉は長さ0.5~1.3mm、尖鋭形。花序は長さ10~50㎜、頂生、総状花序、鮮黄色の花が4~15個つく。最下の3~10個の花又はまれに全ての花の基部につく苞は類葉状、3小葉、上部の花の苞はかなり小さくなり、単純。花柄は長さ1.0~2.5㎜。小苞は2個、長さ1.5~3.0mm、楕円形~狭卵形、咢の下につく。咢は長さ4~6mm、密に絹毛ある。上側の2歯は突形、下側の3歯は長く線形、明瞭。旗弁は長さ10~11.5㎜、広卵形、凹形、V字形に絹毛又は絹毛状軟毛があるのが特徴。竜骨弁は均一に絹毛がある。豆果は長さ15~25mm×幅3~5mm、狭い長円形、密に絹状綿毛がある。花期は1~7月。2n=46 , 48。(参考10)

3 Genista hispanica L. Vahl
 スペイン、フランス原産。Spanish Broom
 低木、亜低木、又は基部が木質の多年草(suffrutice)、高さ0.1~1.2m、刺がある(thorny)。茎は枝を互生し、下位の枝は全て刺があり、葉がなく、短い刺がある。若い枝はほとんど刺がなく、多数の葉をもち、4~5本の鋭い肋があり、絹毛又は絨毛がある。葉は互生し、托葉はなく、托葉状の器官もなく、単小葉、上面は無毛、下面は絹毛又は絨毛がある。根生葉はほとんど発達せず、刺はない。基部の茎葉は長さ3~6㎜×幅2~2.5mm、卵形、先は鈍形。中間と上部の葉は長さ4.5~11mm×幅1~3.5mm、披針形~楕円形、先は鋭形、まれに鈍形、葉柄は長さ約0.5mm。花序は密、頂生の密散花序(束生)、しばしば、散形花序になり、花は(2) 5~12個。苞は1個、ごく小さく、ほとんど見えなく、花柄の基部につく。小苞は2個、ごく小さく、花柄の中間又は咢の下につく。花柄は長さ1~2.5(4)mm、絹毛又は汚い綿毛がある。咢は長さ3~6mm、鐘形、2唇形、絹毛又は長毛があり、咢筒は長さ1~2㎜。上唇は下唇よりかなり短く、2裂し、裂片は長さ1~2㎜。下唇は3裂し、長さ1~2mm×幅0.2~0.5mm、線状披針形、中裂片は側裂片より長い。花冠は黄色。旗弁は長さ7.5~9.5mm×幅6.6~7㎜、楕円形、先は凹形、基部は心形又は円形、無毛又は背面の中脈にいくらか毛があり、爪部は長さ1.5~1.7㎜。翼弁は長さ7.5~9.5mm×幅2~2.5mm、長円形、しばしば縁毛があり、爪部は長さ1.5~2mm。竜骨弁は長さ7.5~10㎜×幅2.5~3mm、長円形、先は鈍形、下半分にフリンジ状の毛があり、爪部は長さ1.5~2㎜。雄しべ群は4本の底着葯の短雄しべと6本の長雄しべをもち、長雄しべの5本は背着葯で長雄しべの1本は底着葯。雄しべ筒は膜質。底着葯は長さ0.8~1mm。背着葯は長さ0.4~0.6mm。子房は表面に毛が散生し、種子原基(seminal rudiments)は5~9個。花柱は真っすぐ、端は鋭角に屈曲し、無毛。柱頭は鶏冠がついた頭状。果実は長さ7~10㎜×幅4~5.5mm、菱状長円形、表面に毛が散生し、種子が2~3個。種子は長さ1.5~3.2mm×幅0.9~2.3mm、卵形、帯褐色。2n=36(x=18)。
品種) 'Compacta' , 'Nana'

4 Genista lydia Boiss.
 ブルガリア、ギリシャ、レバノン-シリア、トルコ、ユーゴスラビア原産。英名はLydian broom , dwarf broom , common woadwaxen
 落葉(暖地では常緑)、小低木、低く、高さ60㎝、栽培では平伏品種が普通。茎は短いアーチ状、細く、角(かど)があり、緑色。葉は互生、単葉、小さく、長さ10mm×幅1.5㎜程度の線状楕円形、先は鋭形、茎の間隔は約10~15㎜につく。花は鮮やかな黄色(豆型)、長さ1㎝。花期は5月。果実は長さ2㎝以下、狭い長円形、、扁平、無毛、種子が3~8個。
品種) Bangle = 'Select'[AGM]

5 Genista monspessulana (L.) O.Bolós & Vigo ゲニスタ・モンスペスラナ
  synonym Cytisus monspessulanus L.  地中海沿岸地域原産。英名はFrench broom , Montpellier broom , Cape broom , soft broom , canary broom 。この園芸種のFrench broomがカリフォルニア州で野生化し、侵略植物として問題になり、Genista monspessulanaであることが判明した。これはGenista stenopetalaやGenista ×spachiana(Cytisus racemosus)とも交雑する。
 直立、低木、高さ3m以下、細長い(ほうき状:broom-like)。茎は円柱形、刺はなく、うねがあり、伏毛又は開出毛があり、いぼ状突起や腺はない。葉や仮葉枝(phylloclades)が明瞭にあり、3出複葉(3小葉)、互生、茎と連続ではなく、短柄がある。小葉は長さ0.5~2.5㎝×幅2~15mm、小葉柄はほぼ無、まばらに伏した毛があり、しばしば上面は無毛になり、平らで、縁も平ら、全縁、こぶ(tubercle)は無く、いぼ状突起や腺もなく、先は微突形。托葉は三角状披針形、長さ1~2mm(FloraBase:托葉はなく、若い葉にもない)。花は頂生の長さ約2㎝以下の密集した総状花序に3~7個つく。苞は1~3小葉、長さ2~7mm、有毛、花柄の基部につく。小苞は錐形、長さ約1㎜(FloraBase:長さ1.2~1.6mm)、有毛、咢の基部につく。花柄は長さ2~3㎜。咢は長さ4~7㎜、有毛、咢歯は咢筒より短く、花後に大きくならず、単純毛があり、肋はなく、いぼ状突起や腺はない。花冠は長さ8~13㎜、色は均一の黄色、爪部はない。旗弁は長さ11~13㎜、多少、無毛になり、耳は無い。翼弁は長さ10~11.5mm、耳はない。竜骨弁は長さ9~12mm、嘴はなく、耳もなく、無毛。雄しべは葯が長さ0.5~0.7mm、2つの異なった高さにつく(花糸は互生し、長と短)。花糸は閉じた鞘に統合し、長さ6~9mm。子房は柄があり、毛又は腺がある。花柱は長さ9.2~13mm、基部に毛又は腺があり、円柱形。果実は裂開(豆果)し、長さ15~30㎜、密に毛がある(FloraBase:長さ15~20mm×幅5~6mm、無柄又はほぼ無柄、種子の間でくびれ、断面は円形、単純毛があり、嘴は無い)。種子は6~7個、球形、長さ約3mm、やや扁平、光沢があり、黒色、仮種皮は小さく、タン色。花期は主に8~11月(ビクトリア州)(FloraBase - Western Australian Herbarium , Flora of Victoria )2n=46 ,48。
 ビクトリア州のものは Genista stenopetala や Genista ×spachiana から常に区別できるものではなく、かなり普通に交雑が起きている。この2種は頂生の総状花序に多数花がつき、小葉がわずかに大きいことだけが異なる。ビクトリア州の大多数のものはものはGenista monspessulanaである。

6 Genista sagittalis L.
  synonym Genistella racemosa Moench
 ヨーロッパ、トルコ原産。英名はarrow-jointed broom , winged broom
※ Cytisus racemosus Hort.-Cf.Marnock(ornamental sweet broom)と混同されることがあるが、別種である。
 亜低木、低く、高さ10~15㎝、ゆっくり広がり、幅90㎝以下の密なマット状になる。茎は緑色、やや毛があり、縦に目立つ翼がある。葉は節につき、小さく、狭く、緑色。花は穂状花序につき、鮮やかなレモン・イエロー色。花期は5~7月。

7 Genista pilosa L.
 アルバニア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、チェコスロバキア、デンマーク、フランス、ドイツ、イギリス、ハンガリー、イタリア、クリム半島、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スペイン、スイス、ユーゴスラビア原産。英名はDrok Volosistyi , Haar-Ginster , Hairy Greenweed
 平伏し、節から根を出すか又は直立し、高さ40㎝以下、多数、分枝する。茎は7~8本のT形の肋があり、若い時に毛があり、古くなると無毛になる。肋に直毛と伏毛の絹毛があり、肋間の谷に短い鉤状の微軟毛がある。葉は互生し、托葉があり、単小葉。托葉組織は宿存し、古くなると三日月状になる。小葉は長さ2~19mm×幅1.2~3.5(6)mm、しばしばへら形又は卵形、ときに、花茎の小葉は倒披針形で葉柄に漸尖し、下面に絹毛があり、上面は無毛。花は単生、短枝の葉に囲まれ、双生又は3個のグループでつき、前年枝の茎の托葉組織から生まれ、花柄があり、苞はなく、小苞をもつ。花柄は長さ1.5~4㎜、有毛。咢は長さ(3)3.5~4.5mm、鐘形、2唇形、絹毛があり、咢筒は咢片の長さと同長又は長い。上唇は下唇の長さと同長又はやや短く、裂片は1.2~1.5㎜。下唇は3歯があり、歯は長さ0.5~0.7mm、ほぼ等形。花冠は黄色。旗弁は長さ7~9mm×幅(4) 5~6.5㎜、先は鋭形又は凹形、基部は切形、背面には絹毛があり、爪部は長さ1.6~2mm。翼弁は長さ7~8.5mm×幅2~2.2mm、披針形、無毛、旗弁や竜骨弁の長さと同長又はやや短く、爪部は長さ2.5~3㎜。竜骨弁は長さ8~9㎜×幅2.5~3mm、広長円形、絹毛があり、爪部は長さ2.5~3mm。雄しべ群は4本の底着葯の短雄しべと6本の長雄しべをもち、長雄しべの5本は背着葯で長雄しべの1本は底着葯。雄しべ筒は膜質。底着葯は長さ0.8~1mm。背着葯は長さ0.4~0.5mm。子房は表面に毛があり、種子原基(seminal rudiments)は5~8個。花柱は無毛、先は内側に曲がる。柱頭は楕円形。果実は長さ11~19㎜×幅3~3.5mm、線状長円形、ややねじれ、種子が2~7個。種子は長さ1.5~2mm×幅1.5~2mm、卵形、やや扁平、褐色~帯黒色。2n=24(x=11,12)。
品種) 'Gold Flash' , 'Goldilocks' , 'Lemon Spreader' , 'Procumbens' , 'Superba' , 'Vancouver Gold' , 'Yellow Spreader'

8 Genista spachiana Webb ヒメエニシダ 姫金雀枝 [AGM]
  synonym Cytisus spachianus Kuntze
  synonym Teline stenopetala var. spachiana (Webb) del Arco, 1983
  synonym Teline spachiana (Webb) G. & P.
  synonym Cytisus racemosus Nicholson, Diet. Gard. 1:450 (1884)
  synonym Genista × spachiana Webb
 カナリア諸島原産。英名はM.Spach's Genista , sweet broom。オーストラリア(ビクトリア州、南オーストラリア州、タスマニア州)、カリフォルニア州 で園芸種が野生化している。
 野生化しているものはGenista stenopetala と Genista canariensisとのハイブリッドともいわれている。Kewscience、The Plant List、GBIFなどは種として認めている。園芸種は⇒Genista × spachiana Webb
 常緑低木。高さ1.5~2.4m、花瓶形(vase-shaped)。葉は暗緑色、3小葉。花序は頂生の細い総状花序、長さ10㎝以下。花は芳香が強く、長さ1.3㎝以下、黄色。豆果は褐色、長さ2.5㎝以下。花期は3~4月。果期は秋。(Missouri Botanical Garden)
  St Andrew’s UniversityのMrs DingwallとDr Gibbsは1970年にTeline canariensis(Genista canariensis) , Teline stenopetala(Genista stenopetala) , Teline spachiana(Genista spachiana)のTeline属(Canarian Genistas groupe)を研究し、T. spachianusが T. canariensis と T. stenopetalus の中間であり、おそらく、これらのハイブリッドであるだろうということを発見した。園芸種のC. racemosusは1888年 (Rolfe in Gard. Chron., April 23, 1888)に、これら2種のハイブリッドであろうと報告されている。C. spachianusはP. B. Webbによって、1845年 (Bot. Mag., t. 4195)に記述され、カナリア諸島のテネリフェ島北西部で10年前に採取した種子からパリの王立植物園で生じた植物について記載したものである。
 genus Telineは現在ではGenistaに含められている。Genistaとの違いは種子にストロフィオール(種瘤)があること。Cytisusとの違いは咢の上唇が深く切れ込み、竜骨弁が長円形であること。

Teline spachiana(Genista spachiana) の解説


 カナリア諸島のテネリフェ島とゴメラ島に分布する。林縁に生える。  直立、低木、枝分かれし、高さ3m以下。枝はほぼ無毛、小枝は密に絹毛があり、毛は伏せ~開出。葉は3小葉。葉柄は2.5~6.0㎜。小葉は長さ5~12mm×幅2.5~4.5mm、倒披針形~狭倒卵形、先は鈍形、微突形。小葉は上面が無毛~伏した絹毛があり、下面には密にある。小葉柄は0.4~0.6mm。托葉は長さ1~2mm、鋭形。花序は長さ35~120㎜、頂生、総状花序、花が9~30個つく。最下の(1~4)個の花の基部につく苞は類葉状、3小葉、上部の花の苞はかなり小さくなり、単純。花柄は長さ2~4㎜。小苞は2個、長さ1~2.5mm、線形又は楕円形、咢の下につく。咢は長さ5~6.5mm、絹毛が開出~伏せる。上側の2歯、下側は3歯。旗弁は長さ11~14㎜、広卵形、凹形、先の部分に広V字形に細かい伏した絹毛があるのを除いて無毛。竜骨弁は短い伏した絹毛があり、爪部の近くは無毛になる。豆果は長さ12~24mm×幅2~5mm、狭い長円形、密に絹毛~伏した絹毛がある。花期は4~5月。(参考10)

9 Genista stenopetala Webb & Berthel. ゲニスタ・ステノペタラ
  synonym Teline stenopetala (Webb & Berthel.) Webb & Berthel. (1842)
  synonym Cytisus stenopetalus (Webb & Berthel.) Christ
  synonym Cytisus stenopetalus (Webb & Berthel.) Masf. (1881)
  synonym Genista formosa Carrière
  synonym Cytisus racemosus Marnock (1837)  [Flora of New Zealand]
 カナリア諸島(ラ・パルマ島、エル・イエロ島、テネリフェ 島)原産。カー ボ ベルデ群島でも見られるが、自生ではない。英名はsweet broom, Easter broom , leafy broom
 この植物は C. × spachianusによく似ているが、小葉が大きく、長さ3.8㎝以下、葉柄は長い。 C. maderensisとは錆色でなく、銀色の毛であり、異なる。
【Teline stenopetalaの解説】  低木又は小高木、高さ6m以下。枝はほぼ無毛、小枝は絹毛がある。葉は3小葉。葉柄は10~20㎜。小葉は長さ19~45mm×幅5~18mm、狭楕円形~倒披針形、先は鋭形、微突形。小葉は上面が無毛又はまばら~密に絹毛があり、下面には密に絹毛がある。小葉柄は0.5~1.5mm。托葉は長さ1.0~2.5mm、三角形。花序は長さ35~130㎜、頂生、長い総状花序、花が10~26個つく。最下の花の基部につく苞はときに、類葉状、3小葉、上部の花の苞はかなり小さくなり、単純。花柄は長さ2.5~4㎜。小苞は2個、長さ0.4~1mm、線形、咢の下につく。咢は長さ4.5~7.5mm、伏した絹毛がある。上側の2歯は鋭形、下側は3歯、小さく不明瞭。旗弁は長さ12~16㎜、広卵形、凹形、無毛、まれに中脈に微軟毛がある。竜骨弁は絹毛があり、先は特に多く、爪部の近くは無毛になる。豆果は長さ20~35mm×幅3~7mm、狭い長円形、密に伏した絹毛がある。花期は3~6月。(参考10)
【Flora of New Zealandの解説】  常緑低木又は小高木、高さ6m以下。分枝し、小枝は絹毛があり、特に若い時に多く、円柱形又はうねがある。葉は両面に絹毛があり、下面は密にあり、葉柄があり、3小葉。小葉は短い小葉柄があり、楕円形~倒卵形、鋭形で短い微突形、長さ5~40mm×幅3~12mm。頂小葉は側小葉より長い。托葉は三角形、長さ2mm以下。花序は長く、軸で長さ10~130mm、頂生、総状花序、10~30(~40)個。花柄は長さ2~6mm。咢は密に毛があり、2唇形。上唇は深く2裂。下唇は短い3裂片。花冠は黄色、長さ13~16(~18)mm。旗弁は夢夢又は中脈と先付近にやや毛がある。豆果は密に絨毛があり、長円形、種子が3~10個入り長さ20~40mm。種子は黒色、円形で扁平、直径約3mm。(Teline stenopetala (Webb & Berthel.) Webb & Berthelとして)
【オーストラリアで栽培種が野生化したもの】  常伏した軟毛緑低木、高さ3.6m以下。茎は伏した軟毛があるか又は無毛。葉は3小葉。葉柄は長さ4~12mm。托葉は長さ1~2.5mm。小葉は楕円形~倒卵形~倒披針形、長さ0.8~3㎝×幅3~10mm、まばらに、伏した軟毛がある(細かい絹毛状の銀色の毛で覆われる)。総状花序は茎や側枝に頂生し、花が5~26個つく。花冠は黄色、ほとんどが長さ10~14mm。豆果は狭長円形、長さ25~30mm、扁平。種子は5~7個。花期は春。(NEW SOUTH WALES FLORA ONLINE)

品種) 'Everestianus'

10 Genista tenera (Jacq. ex Murray) Kuntze
 マデイラ諸島原産。英名はMadeira broom
品種) 'Golden Shower'

11 Genista tinctoria L. ヒトツバエニシダ 一つ葉金雀枝
 ヨーロッパ、西南アジア原産。英名はdyer's greenweed , dyer's broom
 低木、直立し、高さ2m以下。茎は無毛又はまばらに毛があり、うねがある。葉は単葉、ほぼ無柄、狭楕円形~披針形、長さ1~4㎝×幅3~15mm、無毛又は 縁に絹毛があり、先は鋭形。托葉は錐形、長さ1~2mm。花は単生、腋生、枝先に限る。苞は無い。小苞は狭三角形又は錐形、長さ約1㎜、咢に接してつくか、咢のすぐ下につく。咢は長さ5~6㎜、無毛、咢歯は咢筒より短~長。花冠は長さ10~15mm。旗弁は無毛。豆果は線状披針形、長さ15~30mm、無毛又は有毛。種子は4~12個、ほぼ球形、長さ2~2.5mm。花期は6~8月(オーストラリア:1~3月)。
品種) 'Flore Pleno' (d) , 'Golden Plate' , 'Humifusa' , 'Moesiaca' , 'Plena' , 'Royal Gold'

12 ハイブリッド
(1) Genista × spachiana Webb ヒメエニシダ 姫金雀枝 [AGM]
  synonym Cytisus × racemosus Hort.-Cf. Marnock 園芸種
  synonym Cytisus racemosus Nichols., not Marnock
       Genista racemosa (an illegitimate name)
  synonym Cytisus × spachianus Webb
  synonym Cytisus everestianus Carr.
  synonym Genista fragrans hort.
 ハイブリッド栽培種。英名はsweet broom , Easter broom , ornamental sweet broom。オーストラリアで野生化している。日本ではエニシダの名でも流通していて、本来のエニシダ(Cytisus scoparius)と混同されやすい。別名は矮性黄花エニシダ。
 オーストラリアで野生化しているものは常緑低木、高さ3~6m、葉が多く、繁茂する。若いシュートは毛があり、ややうねがある。葉は3小葉の複葉、小葉は長さ0.8~1.8㎝、先はほとんど円形、基部はくさび形、ほとんど小葉柄はないが、葉柄は長さ約6㎜。葉の上面は暗緑色無毛、下面は絹毛状の伏した綿毛で覆われる。細い総状花序は長さ5~10㎝、主茎は綿毛がある。花冠は蝶形花(豆の花)、豊かな輝く黄色、長さ約1.3㎝。咢片は5個、突き錐形(awl-shaped)、2個は他より大きく、全て綿毛が光る。花柄は長さ2㎜。花期は4~5月。Genista stenopetala と Genista canariensisとのハイブリッド園芸種が野生化したもので。最近の研究ではG. monspessulana(French broom)も含まれる可能性が示されている。G. stenopetalaによく似ているが、次により区別できる。旗弁の上に毛の小さなパッチがある。葉柄が長さ約3mmと短い。花序は長さ9㎝以下。これらの特徴は信用できず、ビクトリア州では中間的であり、これらの特徴の組み合わせをもつ。このため、ビクトリア州では親2種はやや不確かであり、さらにG. monspessulanaとの交雑もありうるとしている。(Flora of Victoria)。
 カリフォルニア州ではFrench broomが侵略植物となり、分類学的な研究が行われている。French broomは大半がG. monspessulanaであるが、観賞用のsweet broomと一部のFrench broomはGenista stenopetala と Genista canariensisに系統が近いものである。これらの交雑も確認され、交雑が広がる可能性が高いことが示された。(参考7)
 日本で流通しているものは学名がCytisus racemosusとされている場合が多い。鉢植えで高さ30~40cmのものがエニシダの名で売られている。暖地(蒲郡市)の 露地で長く栽培されているいるものは高さ2m程度になり、常緑である。次の比較表のとおりTeline spachiana(Genista spachiana)とほぼ同じものと思われる。 幹が1本直立し、上部で多数、分枝し、密な丸い樹冠になる。樹皮は灰色で、短い横長などの不規則な淡色のこぶがある。枝や小枝にはうねがあり、若い時には白色の絹毛(細い毛)があり、古くなるとほぼ無毛になる。葉は3小葉、葉柄は明瞭にあり1~2.5mm又はそれ以上。托葉は小さく見えにくいが葉柄基部に2個ずつつき、毛が密生する。小葉柄はほぼ無。小葉は長さ約6㎜×幅約3mm、楕円形~狭卵形、基部はくさび形、先は短い鋭形~円形、ときに微突頭、若い時は全体に白色の短毛があり、枝や葉柄と同じように下面や縁が緑白色に見え、後に下面にまばらに残るが上面はほぼ無毛になる(細い伏毛で、見えにくい)。葉脈は中肋が下面で目立ち、上面は折れ目状になる。花序軸、花柄、苞、小苞、咢などに白色の絹毛がある。花序は総状花序、枝先に頂生し、花序の長さ(2)3~5(7)㎝、花が密に接してつく。花は無毛、鮮やかな黄色、古くなるとやや橙色味を増し、長さ1.2~1.3㎝。咢は長さ4~4.5mm(咢筒は長さ約2mm、上側の咢歯は2個、長さ2.5㎜、下側の咢歯は3個、長さ1.2mm)。旗弁は先が微凹形になり、背面(外側)の上部にV字形に白色の毛が生えるのが特徴であるが、裸眼では見えにくい。翼弁は無毛。竜骨弁は毛が多い。緑色の咢に隠れて見えないが、旗弁、翼弁、竜骨弁ともに爪部がある。露地上の株では下部の2個の花につく苞が3小葉になるものがほとんどなく、稀にあるだけである。苞は普通、細い薄膜質で毛が多く、長さ2~2.5mm、花序の上部では花柄の基部につかず、中間につくものがある。葉状の小苞は全ての花の咢の基部に2個つく。雄しべは短と長があり、短雄しべは葯が長く底着、長雄しべは葯が短く背着。雄しべが未熟で(白っぽくなって枯れ)花粉が出ない閉じたままの花が多い。花柱は長くなり、先が上向き(内向き)に曲がり、花冠から柱頭が少し突き出る。若い豆果は毛が多い。花期は4~5月。5月中旬に終わりかけた花があり、花序を超えて長い枝が多数出て、頂部に新しい花序ができ、花芽がつき始めた。

ハイブリッド両親との比較


  Genista canariensis
(T. canariensis)
Genista spachiana
(T. spachiana)
Genista stenopetala
(T. stenopetala)
実測
小葉長mm 3~5 5~15 19~45 約6.0
小葉長/幅比 1.3~2.0 2.0~2.7 2.5~4.6 約2
葉柄長mm 1~2 2.5~6.0 10~21 1~2.5
花序長㎝ 1.5~ 5 3~12 3.5~14 3~7
花柄長mm 1.0~2.5 2~4 2~4.5 2~2.5
小苞長mm 1.0~3.2 1.0~2.5 0.4~1.0 約1
旗弁の毛の生える位置(毛のパッチ) 狭~広V字形の範囲 中脈沿い微軟毛~狭又は小V字形の範囲 無毛又は中脈にわずかに微軟毛がある 中脈沿い及び狭いV字形の範囲

品種) 'Elegans'(おそらく) , Nana , 'Phebus'. Phebus® 'GENI138' , Phebus® Pbr 2L , 'Yellow Imp'

(2) その他ハイブリッド
品種) 'Emerald Spreader' , 'Porlock'

エニシダ属

  family: Fabaceae - genus Cytisus

 小~大の多年生の低木。茎や枝にはしばしば角(かど)やうねがある。葉は互生し、1小葉又は掌状の3小葉、葉柄がある。托葉は小さいか又は無い。花は腋生、葉のある頂生の総状花序につく。苞や小苞は早落性。咢は鐘形、浅い5歯があり、2唇形。上唇は2歯があり、下唇には3歯がある。花弁は普通、白色又は黄色。旗弁は楕円形~多少円形。翼弁は長円形。竜骨弁は長円状かま形、先は鈍形、下面に沿って曲がる。雄しべは、単体雄しべ(monadelphous)。葯は長と短が互生する。子房は無柄。花柱は上向きに曲がるか、輪になる。柱頭は頭状又は内向き。胚珠は2個又はそれ以上。豆果はほぼ長円形、扁平、爆発的に裂開する。種子は数個、仮種皮をもつ。英名はbroom。
 世界に約33種があり、ヨーロッパ、北アフリカに分布する

エニシダ属の主な種と園芸品種

1 Cytisus balansae (Boiss.) Ball
 スペイン、アルジェリア、モロッコ原産
品種) Spanish Gold®

2 Cytisus battandieri Maire
  synonym Argyrocytisus battandieri (Maire) J.Raynal [Kewscience]
 モロッコ原産。英名はpineapple broom。
 半常緑低木。葉は3小葉。花序は円柱形(トウモロコシのコーン状)、直立し密に花がつく。花は黄色~鮮やかな黄金色。おいしいパイナップルの香りがする。花期は6~7月。
品種)  'Yellow Tail'

3 Cytisus multiflorus (L'Hér. ex Aiton) Sweet  シロバナエニシダ 白花金雀枝
 ポルトガル、スペイン原産。英名はWhite Spanish-broom。枝が平たく帯化(たいか)したものが生け花用にセッカエニシダの名で流通している。
 低木、落葉性、直立し、高さ3m以下。茎は多数、無毛になり、うねがある。茎の下部の葉は3小葉で茎の短い葉柄があり、上部のは葉1小葉でほぼ無柄。小葉は線状披針形又は狭長円形、長さ約12mm以下×幅約4mm以下、小葉柄は無く、銀色の絹毛があり、先は鋭形又は鈍形。托葉は無い。長い総状花序に間隔を開けて葉腋に花が1~3個つく。花柄は細く、長さ3~6mm。咢は長さ2~3mm、まばらに毛があり、上下の唇は等長。花冠は白色、長さ約10mm。旗弁は楕円形、無毛。豆果は線状長円形、長さ20~30mm×幅4~6mm、伏した絹毛がある。種子はほとんどが3~6個、卵形~球形、長さ約2.5mm、扁平、オリ-ブ緑色。花期は9~12月。

4 Cytisus purpureus Scop. ベニバナエニシダ 紅花金雀枝
  synonym Chamaecytisus purpureus (Scop.) Link [Kewscience]
イタリア、オーストリア、アルバニア、ユーゴスラビア原産。英名はpurple broom。
 低い落葉低木、高さ45㎝以下。小枝は無毛又はほぼ無毛、3小葉の葉をよくつける。葉柄は長さ6~25㎜。小葉は長さ6~25mm、小葉柄は無く、無毛、暗緑色。花は紫色、長さ1.8㎝、夏前のシュ-トの各節に1~3個花がつく。咢は長さ6~13mm。豆果は無毛、長さ2.5~3.8㎝、種子を3~4個含む。花期は5月。
品種) 'Albocarneus' , 'Amsaticus' , 'Atropurpureus'(dark purple broom) , 'Erectus' , 'Roseus'

5 Cytisus scoparius (L.) Link  エニシダ 金雀枝
 ヨーロッパ(地中海沿岸)原産。英名はEnglish Broom , common broom , Scotch broom
 常緑低木、直立し、高さ(0.5) 1~2m。茎は多数、無毛になり、鋭い±5角(かど)がある。葉は3小葉、下部の葉には短い葉柄があり、上部では1小葉でほぼ無柄又は無柄。小葉は狭い楕円形~倒卵形、長さ5~20mm×幅1.5~8mm、小葉柄は無く、有毛、先は鋭形又は鈍形。托葉は不明瞭。花は葉腋に1~2個、長い頂生の総状花序につく。花柄は細く、長さ5~12mm。苞は葉状又は三角形で長さ1~2mm、緑褐色、柔らかい薄膜質。小苞は無い(早落性)。咢は広鐘形、長さ5~6.5mm、無毛、2唇形、上下の唇は開き、果時に宿存する。下唇は長さ3.5~5mm、上唇(長さ3~4㎜)より長く、歯はほとんどなく、長さ約0.2mm。花冠は長さ16~20(24)㎜、ときに赤褐色の斑紋をもつ。旗弁は幅が広く、ノッチがある。雄しべは10本。4本が長く、6本が短い。豆果は線状長円形、長さ25~60㎜×幅8~10mm、縁毛がある。種子はほとんどが6~18個、ほぼ楕円形、長さ約3mm、扁平、緑黄色、仮種皮は黄色。花期は5~6月。2n = 46。
品種) 'Andreanus'  ホオベニエニシダ , 'Dart's Yellowred' , 'Dorothy Walpole' , 'Dragonfly' , 'Firefly' , 'Fulgens' , 'Golden Sunlight' , 'Gold Falls' , 'Jancel' , 'Jeffsii' , 'Jessica' , 'Lilac Lady' , 'Lilac Time' , 'Madame Butterfly' , 'Minstead' , 'Moonlight' , 'Okehayes Sunset' , 'Okehayes Sunshine' , 'Pastel Delight' , 'Paula Howlett' , Sister Disco® , Sister Golden Hair® , Sister Redhead® , Sister Rosie® , 'Splendens' , 'Tiltstone Moonglow' , 'Uelsen' , 'Vanesse'
 日本への渡来は江戸時代であり、地錦抄附録にエニシダ(ゑにすだ)が延宝年間(1673~1680年)に渡来と記載がある。元禄10年(1697年)の常信写生図巻3にエニシダ(ゑにすた)が掲載されている。

6 Cytisus racemosus Hort.-Cf. Marnock  ヒメエニシダ
  synonym Cytisus racemosus Marnock (1837)
 Cytisus x spachianusと同一とされている。⇒Genista × spachiana

7 Cytisus striatus (Hill) Rothm.  ケブカエニシダ 毛深金雀枝
 ポルトガル、スペイン、モロッコ原産。英名はhairy-fruited broom , Portuguese broom , striated broom。
 高さ1~3m、分枝する。枝は断面が円形又は多角形、 (7)8(9) 本の縦のT形のうねがあり、ときに肋間の谷はごく接近し見えなず、若いときに密に絹毛があり、後に無毛になる。うねは直毛と伏毛の両方で覆われ、谷に小さな巻き毛がある。托葉があり、葉柄がある。葉は両面にやや毛があり、若い茎の上部の葉は均一に倒披針形、単生、下部の葉は3小葉、単生又は短枝に束生し、葉柄は長さ5~12mm。小葉は楕円形、小葉柄があり、中央の小葉は長さ13 (16.5)mm以下×幅6 (7)以下。托葉組織は2本の肋が走り、古くなると凹形又は2裂する。花は前年枝につく。花柄は長さ5~10mm、短毛が散生し、下面には毛が多く、上半分に2(3)個の小苞がつく。咢は長さ5~7㎜、短い伏毛が散生するが、ときに類絹毛がある。上唇は長さ2.7~3.5mm。下唇は長さ4~5mm。歯は長さ0.2~0.3㎜。花冠は黄色。旗弁は長さ16~24mm×幅17~20㎜、先は凹形、基部は円形、無毛又はまれに基部に類縁の列の毛があり、爪部は長さ約2mm。翼弁は長さ18~27mm×幅8~11mm、楕円形、基部に長さ約3mmの耳をもち、広がった部分(atrium)の内側に縁毛があり、ときに爪部にもあり、残りは無毛、爪部は長さ4~5㎜。竜骨弁は長さ19~27㎜×幅7~9mm、鋭形、かま形、基部に長さ4mmの広がった部分(atrium)をもち、下側の縁に微軟毛があり、基部に縁毛があり、爪部は長さ約4㎜、無毛。雄しべ群は2本の長い雄しべと、3本の中間雄しべ、2本の短雄しべをもつ。長い2本と中間の3本は背着葯。短い5本の葯はすべて底着葯。雄しべ筒は逆方向に斜めで、咢よりやや長い。葯は長さ1.3~2mm、底着葯は背着葯より少し長い。子房は種子の原基(seminal rudiments)を6~11個もち、縫合線の近傍に配置される。花柱はほとんど全体に毛がある。果実は長さ17~30 (36)mm×幅7.5~12 (14)mm、外形は菱形、両凸面形、ビロード状綿毛が密にあり、白色又は帯黄色の毛は長さ4.5mm以下あり、表面を隠す。種子は (1) 2~8個 、長さ2.7~4.3mm×幅1.7~3mm、卵形、光沢がある。ストロフィオールは長さ0.7~1.3mm×幅1.6~2.3mm。.2n=46,48(x=23)。花期は3~5月。果期は6~7月。

8 ハイブリッド
(1) Cytisus × beanii G.Nicholson
 英名はBean's broom。
 Cytisus ardoini と Cytisus purgansの交雑種。
 半匍匐性、高さ35㎝以下。葉は3小葉、小葉は線形。花は黄色。花期は春下旬~夏初旬。
品種)  'Osiris'
(2) Cytisus × boskoopii Auvray & Le Gloanic
 花はルビーレッド色。花期は春下旬~夏初旬。
品種)  'Apricot Gem' , 'Boskoop Ruby'[AGM] , 'Hollandia' , 'La Coquette' , 'Windlesham Ruby' , 'Zeelandia'[AGM]
(3) Cytisus × kewensis Bean
 英名はKew broom。花はクリーム色。
 C. ardoini と C. multiflorusの人工交配種。 品種) 'Niki'
(4) Cytisus × praecox Bean
 栽培種。英名はScotch Broom , Warminster Broom
 Cytisus multiflorus と Cytisus purgansの交雑種。
 高さ1.8m以下。5~7年の短命。暖地では常緑。葉はほとんど単葉。花は黄色。 品種) 'Albus', 'Allgold' , 'Buttercup' , 'Canary Bird' , 'Frisia' , 'Goldspeer' , 'Luteus' , 'Warminster'

(5) Cytisus x spachianus (Webb) Kuntze  ヒメエニシダ 姫金雀枝
  synonym Genista × spachiana Webb ヒメエニシダ 姫金雀枝 [AGM]
  synonym Cytisus × racemosus Hort.-Cf. Marnock 園芸種
  synonym Cytisus racemosus Nichols., not Marnock
       Genista racemosa (an illegitimate name)
  synonym Cytisus × spachianus Webb
  synonym Cytisus everestianus Carr.
  synonym Genista fragrans hort.
 学名はGenista × spachiana Webb又はGenist spachiana Webが使われている。⇒Genista × spachiana
(6) Cytisus × versicolor Dippel
  synonym Chamaecytisus × versicolor (Dippel) Karlsson
 イタリア原産。
 C. purpureusと C. hirsutus(又はC. elongatus )の交雑種。
品種) 'Hillieri'

(7 ) その他ハイブリッド
品種) 'Amber Elf' (PBR) , 'Andreanus' , 'Baronscourt Amber' , 'Boskoop Glory' , 'Boskoop Ruby' , 'Burkwoodii' , 'Butterfly' , 'C.E. Pearson' , 'Charmaine' , 'Chelsea Queen' , 'Clarlil' (PBR) , 'College Girl' , 'Compact Crimson' , 'Cottage' , 'Cottage Gold' , 'Crimson King' , 'Criterion' , 'Dainty' , 'Dainty Maid' , 'Daisy Hill' , 'Darley Dale Red' , 'Diana' , 'Donard Gem' , 'Donard Seedling' , 'Dorothy Walpole' , 'Dorothy Walpole Improved' , 'Eastern Queen' , 'Eileen' , 'Enchantress' , 'Garden Magic' , 'Geoffrey Skipwith' , 'Golden Carpet' , 'Golden Cascade' , 'Golden Showers' , 'Golden Tears' , 'Goldfinch' , 'Hollandia' , 'Hollandia' , 'Johnson's Crimson' , 'Killiney Red' , 'Killiney Salmon' , 'La Coquette' , 'Lady Moore' , 'Lena' , 'Lord Lambourne' , 'Luna' , 'Lunagold' , 'Maria Burkwood' , 'Mayfly' , 'Miki' , 'Minstead' , 'Minstead Pink' , 'Moonlight' , 'Moyclare Pink' , 'Mrs J. Rodgers' , 'Mrs Norman Henry' , 'Muldean' , 'Newry Seedling' , 'Orange Arch' , 'Palette' , 'Park Farm Hybrid' , 'Peter Pan' , 'Pink Beauty' , 'Porlock' , 'Princess' , 'Queen Mary' , 'Radiance' , 'Red Beacon' , Red Favourite , 'Red Wings' , 'Redstart' , 'Roter Favorit' , 'Royal Standard' , 'Southcombe Apricot' , 'Sunset' , 'Sunshine' , 'Toome's Variety' , 'Twilight' , 'Volcano' , 'White Lion' , 'Zeelandia'

シロエニシダ属

  family: Fabaceae - genus Chamaecytisus

 多年草又は小低木、普通、刺はなく、まれに刺がある。葉は3小葉、葉柄がある。托葉は不明瞭。花は普通、黄色、まれに白色又は紫色、葉のある腋生の総状花序又は密散花序、又は頂生の頭状花序につく。苞と小苞は早落性。咢は筒状、2唇形、普通長さ5mm以上。上唇は短い2歯、下唇は短い3歯。雄しべは閉じた筒に合着する。互生する葯は長く底着又は、短く多方向。花柱は無毛。柱頭は頂生。豆果は2バルブ、±真っすぐ、爆発的に裂開し、種子は少数~多数、種子はストロフィオール(種瘤)があり、平滑。英名はDwarf gorse。
 世界に約30種があり、ヨーロッパと北アフリカに分布する。オーストラリアに1種が帰化。

シロエニシダ属のおもな品種

1 Chamaecytisus albus (Hacq.) Rothm.  シロエニシダ 白金雀枝
  synonym  Cytisus albus Hacq.
 ヨーロッパ中部~ウクライナ原産。英名はWhite Spanish Broom , Portuguese broom , white broom , White pygmy hawk clover , White dwarf gorse , white goat clover 。
 落葉小低木。高さ20~80㎝。枝は斜上又は上向きに伸び、粗い毛があり、初め緑色。小葉は長さ2~3㎝、長円状卵形、下面に粗い毛が多い。花は頂生の頭状花序に5~10個つく。旗弁は長さ1.5~2㎝。豆果は長さ2~3㎝、扁平、粗い毛がある。花期は5~7月。

参考

1) Flora of Victoria
 Cytisus
https://vicflora.rbg.vic.gov.au/flora/taxon/e31d2e1a-5b48-4335-9887-84a06ce985cf
 Genista
https://vicflora.rbg.vic.gov.au/flora/taxon/2c679b28-cf81-40f8-86fc-bd5c747d7cb2
2) Flora of North America
  Thermopsis
http://luirig.altervista.org/flora/taxa/floranam.php?genere=Thermopsis
3) Plants of the World Online | Kewscience
 Cytisus Desf>
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:60455196-2
4) Flora Iberica
 Cytisus
http://www.floraiberica.es/floraiberica/texto/pdfs/07_13%20Cytisus.pdf
5) Missouri Botanical Garden
 Genista spachiana
http://www.missouribotanicalgarden.org/PlantFinder/PlantFinderDetails.aspx?taxonid=280663
6) Genista x spachiana – PlantRight
 Sweet broom
https://plantright.org/watch/cystisus-spachianus/
7) Molecular Phylogenetics and Evolution Vol.61, Issue 3, 2011, p970-977
 A molecular phylogenetic analysis of invasive and ornamental brooms and
 their relationshipswithin the Genistoid legumes
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1055790311003915
8) Origins of invasive French broom in California (Kleist, 2010)
https://eco.confex.com/eco/2010/techprogram/P23290.HTM
9) Trees and Shrubs Online
 Cytisus × spachianus Webb
https://treesandshrubsonline.org/articles/cytisus/cytisus-x-spachianus/
10) A REVISION OP THE GENUS TELIHE - University of St Andrews
 INGRID DINGWALL A REVISION OP THE GENUS TELIHE (1970)
file:///C:/Users/haovo/Downloads/IngridDingwallMScthesis1970_original_C.pdf