ヒエガエリ 稗返り

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Flora of Mikawa

イネ科 Poaeceae ヒエガエリ属

英 名 Asian beardgrass , perennial beard grass
中国名] 棒头草 bang tou cao
学 名 Polypogon fugax Steud.
ヒエガエリ花序2
ヒエガエリ花序拡大
ヒエガエリ花序拡大2
ヒエガエリの茎と葉舌
ヒエガエリの蒴果
ヒエガエリ
ヒエガエリ
ヒエガエリの葉
ヒエガエリの葉先
ヒエガエリ小穂
ヒエガエリ護頴と内頴に包まれた果実
花 期 5~6月
高 さ 20~40㎝
生活型 1・2年草
生育場所 日当たりのよい水辺、湿地、水田畦、空地
分 布 在来種 本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、中国、台湾、ロシア、インド、ネパール、ブータン、パキスタン、ミャンマー、西アジア、中央アジア
撮 影 蒲郡市鹿島町  09.6.3
湿った場所だけでなく、乾いた空地でも見られる。乾いた場所の花序はあまり開かない。
 茎はやや叢生して直立し、無毛、平滑。葉は質が薄く柔らかで、長さ5~10㎝、幅3~7㎜の広線形。葉舌は長さ5~6㎜、鋭形。花序は穂が開く前は長さ3~8㎝、幅1.5~2㎝の円柱形で、後にやや円錐形になり、密に小穂をつける。小穂は長さ約2㎜で、白緑色又は白緑紫色、1小花をもつ。苞頴は短毛があり、先が浅く2裂し、苞頴とほぼ同長の芒がある。小花は長さ1~1.2㎜。護頴は薄い膜質、短い芒がある。内頴も薄い膜質。果実(蒴果)は熟すと、苞頴を残して護頴と内頴に包まれたまま落ちる。蒴果は長さ約1㎜の長惰円形。花期は5~6月。2n=42。
 海辺の湿地などに生育するハマヒエガエリは苞頴の芒が長く、苞頴の2~3倍の長さがある。

ヒエガエリ属

  family Poaeceae - genus Polypogon

 一年草または多年草。葉身は線形、平ら。葉舌は膜質。円錐花序は密に狭まり、穂状花序状になり、しばしば、剛毛がある小さな脱落性の小穂を多数もつ。小穂は1個の小花があり、側部が扁平、小軸の伸長がなく、全体で脱落し、小梗または小梗の上部に関節があり、柄として小穂に付着したまま残る。苞穎は2個が等しく、小花より長く、紙質、ザラつき、1脈があり、先は全縁~2裂し、しばしば、先端から細い芒が出る。護穎は苞穎の長さの約1/2の長さで、丸みを帯び、薄く、平滑、光沢があり、不明瞭な5脈があり、脈は普通、切形の先から短く突き出て、芒は無いか、または細いほぼ先端の小芒があるか、または膝状に曲がる芒が背側にある。内穎は護穎の長さの半分~同長。雄しべは1~3個。x=7。
 世界に23種あり、世界の温暖な地域と熱帯の山々に広く分布し、特に湿った場所に生育する。

ヒエガエリ属の主な種と園芸品種

1 Polypogon fugax Nees ex Steud. ヒエガエリ 稗返り
 日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、台湾、ロシア、インド、ネパール、ブータン、パキスタン、ミャンマー、西アジア、中央アジア原産。中国名は棒头草 bang tou cao。英名はAsian beardgrass , perennial beard grass。日当たりのよい水辺、湿地、水田畦、空地に生える。
 1年草または2年草。高さ20~40㎝。茎はやや叢生して直立し、無毛、平滑。葉は質が薄く柔らかで、長さ5~10㎝、幅3~7㎜の広線形。葉舌は長さ5~6㎜、鋭形。花序は穂が開く前は長さ3~8㎝、幅1.5~2㎝の円柱形で、後にやや円錐形になり、密に小穂をつける。小穂は長さ約2㎜で、白緑色又は白緑紫色、1小花をもつ。苞頴は短毛があり、先が浅く2裂し、苞頴とほぼ同長の芒がある。小花は長さ1~1.2㎜。護頴は薄い膜質、短い芒がある。内頴も薄い膜質。果実(蒴果)は熟すと、苞頴を残して護頴と内頴に包まれたまま落ちる。蒴果は長さ約1㎜の長惰円形。花期は5~6月。2n=42。

2 Polypogon monspeliensis (L.) Desf. ハマヒエガエリ 浜稗返り
 中国、モンゴル、ロシア、インド、カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア(コーカサス)、ヨーロッパ、北および南アフリカ原産。中国名は长芒棒头草 chang mang bang tou cao。英名はannual rabbitsfoot grass, annual beard grass。湿った場所、川沿いなどに生える。
 1年草。房状になる(叢生する)。稈は直立または膝状に曲がり、高さ30~60(100)㎝。 葉身は狭~広い線形、長さ(2)8~13(15)㎝×幅(2)5~8(9)㎜、質が薄く柔らかく、上面と縁はザラつき、下面は平滑、先は鋭形。葉鞘は平滑、無毛。葉舌は長さ2~8㎜、鋭形。円錐花序は外形が狭長円形で、密集し、穂状花序状で、ときにわずかに分岐し、長さ(1)5~7(10)㎝、幅0.7~1㎝、淡緑色で、黄色の剛毛に厚く覆われる。小穂は狭長円形、長さ1.5~2.5㎜、幅0.7~1㎝、1小花をもつ。苞穎は狭倒卵状長円形、微軟毛があり、脈は鋭い刺毛があり、刺状にザラつき(scabrid-aculeate)、縁に長い縁毛があり、先は凹形、裂片の先はわずかに鋭く、切れ込みから芒が出る。芒は苞穎の体の長さの(2)2.5~4倍あり、長さ6~10㎜。護穎は薄い膜質、倒卵形、長さ1~1.2㎜、先はわずかに4歯があり、中脈は突き出し、細く、真っすぐで、落ちやすい、長さ1.5~2㎜の芒になる。内穎は苞穎と同長、薄い膜質。雄しべは3個、葯は長さ約0.8㎜。 穎果は倒卵状長円形、長さ0.8~1㎜、腹面がわずかに溝状に窪む。2n=14, 28, 35, 42。花期およ果期は5~10月(花期は5~6月)。

3 Polypogon viridis (Gouan) Breistr. ウォーターベントグラス 
 中国、カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン。 北アフリカ、南西アジア、南ヨーロッパ、北西インド原産。中国名は苔绿棒头草 tai lü bang tou cao。英名はwater bent。南アフリカ、アメリカ、オーストラリアなどに帰化している。水草で小川、湿地の砂や泥に生える。
 多年草、匍匐茎があり、 匍匐茎は細く、広がり、節から発根する。稈は膝状に曲がり、斜上し、高さ20~100㎝。 葉身は線形、平ら、長さ3~12㎝×幅2~8㎜、両面が細かくざらつき、先は鋭形。葉舌は長さ2~5㎜。 円錐花序は狭まり、披針形~長円形、分岐し、しばしば途切れ、長さ5~15㎝。枝は半垂直につき、斜上し、小穂が密生する。小穂は狭長円形、長さ1.5~2.5㎜。苞穎は狭楕円状長円形、ザラつき、上部に軽く竜骨があり、先は鈍形、芒はない。護穎は広楕円形、長さ約1㎜、芒はなく、先は切形、微細な歯がある。内穎は護穎とほぼ同じ長さ。雄しべは3個、葯は長さ0.4~0.7㎜。穎果は長円形、長さ約1㎜。2n=28, 42。

4 ×Agropogon hondoensis (Ohwi) Hiyama ヌカボガエリ
  synonym Polypogon hondoensis Ohwi
 本州(青森県、富山県、長野県、群馬県)で確認されたヒエガエリとコヌカグサとの自然交雑種。

参考

1) Flora of China
 Polypogon
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=126432
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Polypogon
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30001956-2
3) World Flora Online
 Polypogon
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000030801;jsessionid=833C3957DF9368C517427D930018499D
4) World Checklist of Vascular Plants
 Polypogon
https://wcvp.science.kew.org/
5) Jepson eFlora: Taxon page
 Polypogon
https://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_keys.php?key=11146
6) FNA - Flora of North America
 Polypogon
http://beta.semanticfna.org/Polypogon
7) PlantNET - FloraOnline
 Polypogon
https://plantnet.rbgsyd.nsw.gov.au/cgi-bin/NSWfl.pl?page=nswfl&lvl=gn&name=Polypogon
8) 植物研究雑誌 33(1): 11–11(1958)
 ヌカボガエリについて(槍山庫三)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_033_11_11_1.pdf