ハシリドコロ 走り野老

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Flora of Mikawa

ナス科 Solanaceae ハシリドコロ属

学 名 Scopolia japonica Maxim.
ハシリドコロの花序
ハシリドコロの花横
ハシリドコロの花内側
ハシリドコロ
ハシリドコロの葉
花 期 4~5月
高 さ 30~60㎝
生活型 多年草
生育場所 山地の林下
分 布 在来種 本州、四国、九州、朝鮮
撮 影 面の木  07.5.12
和名は、これを食べると毒が回り、狂乱状態になって走り回ることに由来する。全草に幻覚を引き起こすアトロピンなどを含む。春に芽を出し、花が終わってしばらくすると見えなくなってしまう。
 多年草、高さ30~60㎝。春に芽を出し、花が終わって6月終わり頃には地上部はなくなってしまう。塊状の根茎を持ち、広がって群生する。根茎は生薬名をロートコンといい薬の原料とされる。全草、無毛、みずみずしく柔らかい。茎は直立し、基部は赤味を帯び、上部で二又分枝する。葉は互生し、有柄、葉身は長さ6~18㎝×幅2.5~6cmの卵状楕円形~狭長楕円形、全縁、無毛、葉裏は白みを帯び、脈は隆起して目立ち、網状脈があり、質は柔らかい。花は葉腋から細い花柄で垂れ下がる。花柄は長さ2~3㎝。萼は緑色、杯形~半球形、先ははぼ中間まで5裂し、萼片は三角形、鋭頭。花冠は広鐘形、外面は暗紫紅色、内面は黄色~淡緑黄色、長さ約2㎝の鐘形、先はごく浅く5裂し、裂片は直立、鈍頭。雄しべは5本、花糸はやや太く、下部に毛があり、突き出ない。葯はクリーム色。花柱は1本、柱頭は小さな頭状、葯と同じ高さかやや高く、花冠から突き出ない。蒴果は直径約1㎝、横周裂開、萼に包まれる。種子は多数、腎形、褐色、長さ1.5~2.5㎜、表面にハチの巣状の穴がある。花期は4~5月。

ハシリドコロ属

  family Solanaceae - genus Scopolia

 多年草、塊状の根茎をもつ。茎は直立し、上部で少し、分枝する。葉は互生、単葉、質が柔らかく、ときに下部で小さくなる。托葉は無い。花は腋生、単生。小柄は長くて細くて花が下向きに垂れ下がる。萼は杯形、緑色、先は5裂。花冠は鐘形、外側は紫褐色、内側は淡色、先は5裂、無毛。雄しべは5本、花冠より短い。雌しべは真っすぐで花冠より短い。子房は2室、胚珠は各室に多数。蒴果は乾燥した横周裂開(circumscissile)する蓋果(pyxis)。種子は小さく、多数。
 世界に約3種あり、中央ヨーロッパから東ヨーロッパに2種、東アジアに1種が離れて分布する。

ハシリドコロ属の主な種と園芸品種

1 Scopolia carniolica Jacq. ヨウシュハシリドコロ
 ヨーロッパ~コーカサス原産。英名はEuropean scopolia , henbane bell , Russian Belladonna。別名はセイヨウハシリドコロともいうが、セイヨウハシリドコロはオオカミナスビ属のAtropa bell-adonnaの和名でもある。
 多年草、高さ20~60㎝。根茎は丈夫で、地中を水平に伸びる。茎は直立、わずかに肋がある。葉は互生し、葉柄は長さ1~2㎝または無、葉身は単葉、全縁または波状縁、長さ10~15㎝×幅5~9㎝。花は葉腋に単生し、細長い花柄が垂れ下がり、花が下向きにつく。萼は緑色、杯形、先は5裂。花冠は放射相称、鐘形、先はほとんど広がらず、外側は紫褐色、内側はクリーム色、先は浅く5裂する。蒴果は萼が宿存し、乾き、横周裂開する。種子は小さく、多数、表面はハチの巣に似た穴状。花期は4~6月。
品種) 'Zwanenburg'

2 Scopolia caucasica Kolesn. ex Kreyer
 ロシア(北コーカサス)原産。名が似ているAtropa caucasica KreyerはAtropa bella-donna L.(Atropa belladonna subsp. caucasica (Kreyer) Avet.)の異名とされている。
 茎は直立し、やや紫色を帯び、4稜形、中間で二又分枝する、葉は互生し、葉柄があり、茎基部の葉は小さく、上部の葉は大きく、葉身は卵状楕円形、基部は漸尖して沿下し、縁は全縁またはときに不規則な波状縁、先は鋭形、葉下面に葉脈が隆起し、網状脈が目立ち、葉表は脈が凹む。花は葉腋に単生する。花柄は細長く花は下向きにつく。萼は緑色、杯形、萼歯は鋭形。花冠は鐘形、先が真っすぐ~やや広がり、浅く5裂する。外面が赤紫褐色、光沢があり、内面は鈍く、クリーム色。蒴果は球形、乾き、横周裂開する。種子は淡褐色~褐色。腎形~卵形、長さ2~2.5mm、表面はハチの巣に似た穴状。

3 Scopolia japonica Maxim. ハシリドコロ 走り野老
  synonym Scopolia parviflora (Dunn) Nakai
  synonym Scopolia lutescens Y.N.Lee [韓国固有種。英名は Yellow scopolia]
  synonym Scopolia kwangdokensis Y.N. Lee
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮原産。根茎や根ををロートコン(莨菪根)といい、鎮痛薬などに用い、有毒のアルカロイドのスコポリン(phenylpropanoids umbelliferone , scopoletin )などを含む。和名はこれを食べると毒が回り、狂乱状態になって走り回ることに由来する。別名はオメキグサ、サワナス、ユキワリソウ。
 多年草、高さ30~60㎝。春に芽を出し、花が終わって6月終わり頃には地上部はなくなってしまう。塊状の根茎を持ち、広がって群生する。根茎は生薬名をロートコンといい薬の原料とされる。全草、無毛、みずみずしく柔らかい。茎は直立し、基部は赤味を帯び、上部で二又分枝する。葉は互生し、有柄、葉身は長さ6~18㎝×幅2.5~6cmの卵状楕円形~狭長楕円形、全縁、無毛、葉裏は白みを帯び、脈は隆起して目立ち、網状脈があり、質は柔らかい。花は葉腋から細い花柄で垂れ下がる。花柄は長さ2~3㎝。萼は緑色、杯形~半球形、先ははぼ中間まで5裂し、萼片は三角形、鋭頭。花冠は広鐘形、外面は暗紫紅色、内面は黄色~淡緑黄色、長さ約2㎝の鐘形、先はごく浅く5裂し、裂片は直立、鈍頭。雄しべは5本、花糸はやや太く、下部に毛があり、突き出ない。葯はクリーム色。花柱は1本、柱頭は小さな頭状、葯と同じ高さかやや高く、花冠から突き出ない。蒴果は直径約1㎝、横周裂開、萼に包まれる。種子は多数、腎形、褐色、長さ1.5~2.5㎜、表面にハチの巣状の穴がある。花期は4~5月。
3-1 Scopolia japonica Maxim. f. lutescens Sugim.  キバナハシリドコロ
  synonym Scopolia lutescens Y.N.Lee 
 韓国に分布。英名はYellow scopolia。

参考

1) Flora of China
 Scopolia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110810
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Scopolia
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:329425-2
3) World Flora Online
 Scopolia
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000034809
4) 1977 — Kyoto University Research Information Repository
 久田陽一 Scopolia属植物の生薬学的研究
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/221415/1/yyakr00173.pdf