ハリノホはハリノホ属の沿岸の塩性湿地に生える外来種。一年草。稈は長さ5～45㎝、基部の上で分枝し、節間は中実。最上部の鞘は開き、しばしば花序を部分的に包み、葉耳は無い。葉舌は膜質、切形。葉身は平らまたは内巻き。花序は単一、頂生の穂状花序、円筒形、単生の小穂が花序軸に埋め込まれ、放射状になり、第2(上部の)苞穎の外面が露出し、花序軸の節で関節離断する。小穂は背腹側が扁平になり、1～2個の小花があり、2番目の小花は無くなり不稔。小軸はときに上部の小花の基部を超えて伸びる。第1(下部の)苞穎は頂部の小穂を除くすべての小穂で欠く。第2(上部の)苞穎は革質、硬い、護穎より長くて硬く、堅く、3～7(9)脈があり、鋭形、芒が無く、ときに微突形。下側の護穎は膜質、披針形、3(5)脈があり、芒は無い。内穎は透明。葯は1～3個。鱗被は2個、斜め、無毛、基部は肉質。穎果は護穎より短く、長円形、やや背側が扁平、先に付属体があり、熟すと隠れる。胚は穎果の長さの約1/5。へそは短く、線形。x=13。<
　外観がよく似たスズメノナギナタも日本の各地で確認されている。スズメノナギナタは苞穎がすべての小穂に2個ある。
　ハリノホ属はハリノホ1種だけの属であるが、スズメノナギナタ属に含める説もある。

ハリノホ属

　 family　Poaceae － genus Hainardia

　一年草。稈は長さ5～45㎝、基部の上で分枝し、節間は中実。最上部の鞘は開き、しばしば花序を部分的に包み、葉耳は無い。葉舌は膜質、切形。葉身は平らまたは内巻き。花序は単一、頂生の穂状花序、円筒形、単生の小穂が花序軸に埋め込まれ、放射状になり、第2(上部の)苞穎の外面が露出し、花序軸の節で関節離断する。小穂は背腹側が扁平になり、1～2個の小花があり、2番目の小花は無くなり不稔。小軸はときに上部の小花の基部を超えて伸びる。第1(下部の)苞穎は頂部の小穂を除くすべての小穂で欠く。第2(上部の)苞穎は革質、硬い、護穎より長くて硬く、堅く、3～7(9)脈があり、鋭形、芒が無く、ときに微突形。下側の護穎は膜質、披針形、3(5)脈があり、芒は無い。内穎は透明。葯は1～3個。鱗被は2個、斜め、無毛、基部は肉質。穎果は護穎より短く、長円形、やや背側が扁平、先に付属体があり、熟すと隠れる。胚は穎果の長さの約1/5。へそは短く、線形。x=13。
　世界に1種だけ、地中海沿岸地域に分布する。オーストラリア、アメリカ、日本に帰化している。

ハリノホ属の主な種と園芸品種

1 Hainardia cylindrica (Willd.) Greuter　 ハリノホ　針の穂
　　synonym　Parapholis cylindrica (Willd.) Romero Zarco
　地中海沿岸地域原産。英名はhardgrass thintail , common barbgrass。沿岸の塩性湿地とアルカリ性土壌に生える。日本では千葉県、神奈川県、愛知県、岡山県、愛媛県、長崎県などで確認されている。
　一年草。稈は長さ5～40(45)cm、直立または斜上し、平滑、無毛。鞘は長さ1～6㎝、各稈の最上部の鞘は明瞭に広がる。葉舌は長さ0.2～1㎜、小歯状。葉身は長さ7㎝以下×幅1.5～2.5㎜、上面がザラつく。穂状花序は長さ8～25㎝、堅く、真っすぐまたはやや曲がる。小穂は長さ5～8㎜、隣接する節間よりわずかに長く、2列に互生する。苞穎は卵状披針形。第2苞穎は無毛、中脈が突き出し、先は鋭形、ときに微突形。護穎は長さ4～6㎜。内穎は2脈がある。葯は長さ2～3.5㎜。2n=14, 26, 52。花期は5～7月
【オーストラリア】
　一年草。高さ0.7m以下、房状になり、群生する。葉舌は長さ1㎜以下、膜質、鈍形または非対称、微細不整歯がある。葉身は平ら、乾くと折りたたまれるかまたは丸まり、幅約2㎜、肋があり、中肋が目立ち、無毛、ザラつく。花序は長さ5～20㎝、円筒形の穂状花序、真っ直ぐまたはわずかに曲がり、最上部の鞘に部分的に包まれる。小穂は1個の小花をもち、互生、ときに対生し、花序軸に埋め込まれる。頂部の小花を除き、苞穎は1個、披針形、節間よりわずかに長く、長さ5～7㎜、先は尖鋭形、3脈があり、堅く、肥厚し、花序軸のくぼみを閉じ、熟すと大きく隙間ができる。頂部の小花は2個の苞穎をもち、苞穎は長さ9～10㎜。護穎は長さ5～6㎜、錐形、膜質。内穎は長さ4～5㎜、2竜骨がある。花期は春～夏。

スズメノナギナタ属

　 family　Poaceae － genus Parapholis

広義のスズメノナギナタ属

　1年草または多年草生(1)。稈は直立または膝状に曲がり斜上し、細く、長さ2～(18.91)～40cm。葉舌は縁毛がなく、膜質。葉身が硬く、またはたるむ。花序は総状花序からなり、葉鞘が基部につき、または膨れ、突き出し、または基部につく葉に基部を抱かれる。総状花序は1個、左右相称、それぞれに5～30個の稔性の小穂をつける。花序枝は節で壊れやすく、ほぼ円筒形で窪みがある。小穂は花序軸に拡大部をを詰め込み、隣接または緩くつき、花序軸の節間は長円形、節間の先端は横向き。小穂は沈み込み、単生。稔性の小穂は無柄。小穂は1個の稔性の小花からなり、小軸の延長(突起)は無い。小穂は長円形、側部が扁平、長さ3～(5.416)～9mm、全体で落ち、付属の枝構造体は脱落性。苞穎は並んでつき、小花の先を超え、稔性の護穎よりも硬い。第1苞穎は披針形または長円形～卵形。第2苞穎は上部の護穎と同長、革質、竜骨はなくまたは1竜骨があり、竜骨に翼は無くまたは翼があり、3～5脈がある。第1苞穎の側脈は肋があり、先は鋭形または尖鋭形。第2苞穎は披針形または長円形～卵形、隣接する稔性の護穎の長さの1.1倍、革質、竜骨は無いかまたは1竜骨があり、竜骨の翼は無または有、3～5脈があり、側脈は肋があり、先は鋭形または尖鋭形。稔性の護穎は楕円形または長方形～卵形、膜質、竜骨はなく、3脈があり、側脈は護穎の長さの3分の2未満、表面は平滑またはザラつき、先は鈍形または鋭形。内穎は護穎の長さと同長。葯は3個。穎果は果皮が付着性、楕円形。へそは楕円形
　世界に7(Parapholis cylindricaを含めて)種あり、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オーストラリア、北アメリカ、南アメリカに分布する。
【広義のスズメノナギナタ属の種】
1 Parapholis cylindrica (Willd.) Romero Zarco　ハリノホ
2 Parapholis filiformis (Roth) C.E.Hubb.
3 Parapholis gracilis Bor
4 Parapholis incurva (L.) C.E.Hubb.　スズメノナギナタ
5 Parapholis marginata Runemark
6 Parapholis pycnantha (Hack.) C.E.Hubb.
7 Parapholis strigosa (Dumort.) C.E.Hubb
8 Parapholis × pauneroae (Castrov.) Romero Zarco

※Parapholis cylindricaは単一種のハリノホ属(Hainardia)に分類する説もある。YList、Flora of China、Flora of North America、World Flora Onlineでは属を分けている。

狭義のスズメノナギナタ属

　一年草、房状になる。稈は高さ2～45 cm、直立～平伏、ときに基部の上で分枝し、節は無毛、普通、紫色、節間は中空。葉は基部に集まらない。鞘は竜骨がない。葉耳がときにある。葉舌は長さ0.3～2.3㎜、膜質、切形。葉身は幅0.3～3.5㎜、線形～線状披針形、平ら～巻く。花序は頂生および腋生の穂状花序、狭円筒形、しばしば曲がり、単生の小穂が2列に互生し、花序軸に沈み込む。各小穂の下で関節離断する。小穂は無柄、円筒形、真っ直ぐ～強く曲がり、花軸に接しており、1個の小花をもつ。小軸はときに上部の小花の基部を超えて伸びる。苞穎2個はほぼ等しく、並んでつき、小穂に圧着し、小花を被って普通、小花を超えまたはときにわずかに短く、花軸のくぼみを被い、ときに非対称で翼があり、革質、堅く、強く3～7脈があり、縁が半透明で、先が鋭形で芒がない。護穎は長さ3.5～5.5mm、膜状、透明～半透明、無毛、背中が丸く、1～3脈があり、芒はない。内穎は護穎とほぼ同じかわずかに短く、半透明。鱗被は卵状鋭形。葯は3個。花柱は2個、基部まで分離、白色、またはほとんど無い。穎果は長さ3～3.6mm、楕円形～狭卵形～狭長円形。胚乳は液状。x=7, 9, 19。
　世界に6種あり、アジア中部および南西ぶ、地中海沿岸地域地域、ヨーロッパの大西洋岸に沿って北のバルト海まで広く分布する。世界のほとんどの温帯地域に帰化している。

スズメノナギナタ属の主な種と園芸品種

1 Parapholis incurva（L.）C. E. Hubb.　スズメノナギナタ　雀の長刀
　地中海沿岸地域、中東、南西アジア原産。中国、北アメリカ、南アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、日本などに帰化している。英名はcurved sicklegrass , sicklegrass。日本では千葉県、神奈川県、山口県、岡山県、徳島県などで確認されている。海岸、沿岸の塩性湿地に生える。
　1年草、稈は房状になり、基部で傾伏し、高さ(2)10～25(35)㎝、下部で多数、分枝する。葉鞘は丸く、平滑、無毛。葉身は線形、平らまたは折りたたまれ、長さ(2)2.5～8㎝×幅1～2(3)㎜、無毛、下面は平滑、上面および縁はザラつき、先は細かく鋭形。葉舌は長さ0.5～1(1.5)㎜、切形。総状花序(穂状)は狭円筒形、長さ(1)4～10(15)㎝、かま形(著しい弓形)に曲がりまたは捻じれ、小穂が(2～)10～20個ほどつき、花序軸は平滑、小穂よりも節間が短い。小穂は長さ(4.5)6～8㎜、花序の軸に半ば埋もれ、1小花のみを有する。苞穎は2個、小穂と同長、狭長円状錐形(披針形)、3～5脈があり、無毛、鋭形(尖鋭形～漸先形)。護穎は膜質、披針形、長さ4～5㎜、3脈があり、竜骨にまれにわずかに翼があり、先は尖鋭形、側護穎は非常に短く、無毛。葯は長さ0.5～1(1.3)㎜。穎果は黄褐色、長さ3～3.5㎜。花期は4～6月。2n=32, 36, 38, 42。

2 Parapholis strigosa (Dumort.) C.E. Hubb.
　ヨーロッパ(ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、イギリス、ギリシャ、アイルランド、イタリア、オランダ、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、ユーゴスラビア）、アフリカ(リビア)原産。英名はhairy sicklegrass , strigose sicklegrass , slender barb grass。北アメリカ、南アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドに帰化している。最高潮位以下の塩性湿地、十分に圧縮された砂壌土に生える。一般にスズメノナギナタよりも塩分が少ない土壌で、標高が高い場所で見られる。
　1年草、稈は高さ12～45㎝、斜上～直立し、下部の節で分枝する。鞘は長さ2～6㎝、上部の葉鞘は普通、縁がすべて同じで、膨らまず、最下の小穂を囲まない。葉舌は長さ2.3㎜以下。葉身は長さは(1)2～12㎝×幅1～3㎜、普通、平ら、ときに内巻き、上面はザラつく。穂状花序は長さ5～18㎝、真っすぐ、捻じれず、5～25個の小穂をつける。小穂は長さ4.5～7㎜、普通、節間よりわずかに長く、小花は普通、閉鎖花(cleistogamous)ではない。苞穎は長さ4～6㎜、披針形、先は尖鋭形、竜骨は不明瞭。葯は長さ1.5～4㎜。花期は4～6月。2n=14, 28。

参考

1) Flora of China
　Parapholis 2) Plants of the World Online| Kewscience
　Parapholis 3) World Flora Online
　Hainardia 　Parapholis 4) World Checklist of Vascular Plants
　Hainardia(synonym of Parapholis C.E.Hubb.) 5) FNA - Flora of North America
　Hainardia 　Parapholis 6) 徳島県立博物館研究報告 Bull.Tokushima Pref. Mus. No.26:105-106, 2016
　スズメノナギナタ Parapholis incurva（L.）C. E. Hubb.の徳島県への帰化 7) PlantNET - FloraOnline
　Hainardia cylindrica (Willd.) Greuter 　Hainardia 　Parapholis 8) Jepson eFlora
　Hainardia 　Parapholis incurva