ハグロソウ 葉黒草

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Flora of Mikawa

キツネノマゴ科 Acanthaceae ハグロソウ属

中国名 九头狮子草 jiu tou shi zi cao
学 名 Peristrophe japonica (Thunb.) Bremek.

 synonym Peristrophe japonica (Thunb.) Bremek. var. subrotunda (Matsuda) Murata et Terao

ハグロソウの花横
ハグロソウの花
ハグロソウの果実
ハグロソウの種子
ハグロソウの葉柄
ハグロソウの茎
ハグロソウ
ハグロソウの果実と種子
ハグロソウ葉表
ハグロソウ葉裏
花 期 7~10月
高 さ 20~50(80)㎝
生活型 多年草
生育場所 道端、草原、川沿い、山地の斜面、登山道脇、常緑広葉樹林内
分 布 在来種  本州(関東地方以西)、四国、九州、中国、台湾
撮 影 新城市 14.7.16(花)
      14.9.23(果実)
ハグロソウはキツネノマゴ科ハグロソウ属の山地の木陰などに生える野草。
 多年草。高さ20~80㎝。茎は4稜形、基部で平伏して節から根を出し、先は直立し、まばらに分枝し、二縦列の軟毛がある。葉柄は長さ0.5~1.5㎝。葉は対生し、葉身は披針形~卵状長円形、長さ(3~)5~13㎝×幅1~ 2.5(4.5)㎝、質は薄く、暗緑色、縁は全縁~わずかに波打ち、側脈は3~5対、基部は鈍形~楔形、両面にまばらに軟毛があり(とくに中脈上にあり)、先は鋭形~尖鋭形~尾状。針状の結晶体はキツネノマゴほどはっきりしない。花序は頂生又は上部の葉腋に腋生、花序柄のある集散花序、集散花序には花序柄のある総苞が1~4(又はそれ以上)個つく。各総苞には花が1~3個つく。蕾は数個つくが1個ずつ咲くことが多い。花序柄は長さ0.7~5.5㎝。外総苞の小苞(outer involucral bracteoles)は対につき、卵形~楕円形、ほぼ等長~等長、外面はほぼ無毛~微軟毛があり、基部は楔形~切形、全縁、先は鋭形~鈍形。大きい外総苞の小苞は長さ1.1~2.5㎝×幅0.5~1.8㎝。小さい外総苞の小苞は長さ8~17㎜×幅3~9㎜。 内総苞の小苞(inner involucral bracteoles)は線形、長さ2~3㎜、外面には微軟毛があり、先は尖鋭形。萼は内総小苞片に接してつき、長さ約4㎜、5深裂し、裂片は錐状、膜質、軟毛がある。花冠は白色~淡ピンク色~薄紫色で、拡大部にピンク色の斑点や暗色の線があり、長さ2~3.4㎝、外側に軟毛があり、腺の無い毛状突起をもつ。花冠筒部は基部で幅約1㎜、長さ約1.5㎝。下側の位置の上唇弁は楕円形~類円形、長さ8~15㎜×幅3~11㎜、全縁又はわずかに凹形。上側の位置の下唇弁は長円形、長さ9~15㎜×幅4~7㎜、浅く3裂する。雄しべは2個、花糸は長さ約7㎜、軟毛がある。半葯は線形、長さ約1.2㎜、平行、不等に重なってつく。子房は長軟毛がある。子房の基部に環状の花盤がある。花柱は長さ約2㎝。柱頭は2裂。蒴果は2個の外総小苞片の間に隠れ、長さ0.8~1.2㎝、腺毛と腺の無い毛状突起があり、2室あり、種子が2個ずつ入り、熟すと2裂し、はじき飛ばす。種子は褐色、直径2~2.5㎜の薄い円盤形、表面が細かな疣状。花期は7~10月。果期は7~10月。2n=48。

ハグロソウ属

 family Acanthaceae- genus Peristrophe

 多年草又は低木、結晶体(cystoliths)をもつ。葉身は全縁又はわずかに歯がある。花序は腋生又は頂生の集散花序、ときに集散花序は葉のある複合の円錐花序状になる。集散花序は総苞(involucres)が(1~)2~4(~以上) 個。総苞は普通、花が1~3個、基部の2(又はそれ以上)対の小苞(bracteoles)に包まれ、小苞は萼や花冠筒部に隠れる。小苞の外側の対は大きさが等長又は不等長で、内側の対より大きい。萼は小さく、5裂する。萼片は等長。花冠は白色~ピンク色~紫色、普通、大きく、180度反転する。花冠筒部は細く、捻じれ、先は±広くなってのど部になり、拡大部は2唇形。上唇(下側に位置する)は全縁~2裂。下唇(上側に位置する)は3裂し、花冠裂片は斜上、蕾中では渦巻状。雄しべは2本、花冠ののど部につき、花冠筒部から突き出る。葯は2半葯、半葯は不等につき又は重なり(隣接又は隙間があり離れる)、基部に突起は無い。仮雄しべは無い。子房は各室に2胚珠をもつ。子房の基部に環状の花盤がある。柱頭はわずかに大きく又は2裂する。蒴果は中実の柄をもち、種子が4個、支帯(retinacula)があり、胎座はバルブの基部から弾性的に上昇しない。種子は円盤形、平滑~こぶ状、毛状突起が無い。
 世界に約40種あり、熱帯、亜熱帯のアフリカ、アジア、マダガスカルに分布し、1種がオーストラリアに広がり、日本には1種分布する。

ハグロソウ属の主な種

1 Peristrophe bivalvis (L.) Merr. タイワンハグロソウ 台湾葉黒草
  synonym Peristrophe roxburghiana (Schult.) Bremek.
  synonym Peristrophe baphica (Spreng.) Bremek.
 中国(福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、海南省、湖南省、江西省、雲南省)、台湾、インド、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア原産。中国名は观音草 guan yin cao。標高500~1000mの森林に生える。
 多年草、高さ1mほどになる。茎は5または6角で、よく分枝し、溝があり、毛がある。葉柄は長さ3.5㎝まで。 葉身は卵形から槍状卵形、長さ3~14.5㎝×幅1.5~5.3㎝、両面に微軟毛があり(特に中脈に沿って)またはほぼ無毛になり、2次脈は中脈の両側に5~6本あり、基部は広楔形~ほぼ円形、縁は全縁~波状。先は尖鋭形~鋭形。集散花序は腋生または頂生、花序柄があり、しばしば1~3個(またはそれ以上)の花序柄のある総苞(involucres)からなり、枝で終わる。花序柄は長さ0.3~2.3㎝。外総苞の小苞(outer involucral bracteoles)は広卵形~卵形または楕円形で、大きさは不等、微軟毛~ほぼ無毛、基部は円形~楔形、先は鋭形。大きな外総苞の小苞は長さ(1.8~)2.3~3.3㎝×幅0.8~1.5㎝。小さい外総苞の小苞は大きいものの長さの0.71~0.85。内側の小集散花序の小苞(cymule bracteoles)は三角状錐形、長さ1~2㎜。 萼は長さ4.5~5㎜、毛がある。萼片は披針形。花冠はピンク色、長さ3.5~5.7㎝、外側に毛があり、腺の無い毛状突起がある。花冠筒部は直径約1.5㎜。下側の位置の唇は広卵状楕円形、長さ2.2~2.6㎝×幅約1.8㎝、先は凹形。上側の位置の唇は長円形、長さ2~2.5㎝×幅約0.9㎝、3裂する。雄しべの花糸は長さ約1.3㎝、微軟毛がある。葯は半葯(thecae)が線形、ほぼ均等または不均等につき(ほとんどの長さのものが重なる)、長さ3.2~4㎜。子房は毛がある。花柱は無毛。柱頭は2裂。蒴果は長さ約1.5㎝、毛がある。種子は約・長さ1.5×幅1.5㎜。花期は8~3月。

2 Peristrophe japonica (Thunb.) Bremek. ハグロソウ 葉黒草
  synonym Dicliptera japonica (Thunb.) Makino
  synonym Dicliptera japonica Makino
  synonym Peristrophe chinensis Nees
 日本(本州の関東地方以西、四国、九州)、中国、台湾原産。中国名九头狮子草 jiu tou shi zi cao。標高1500m以下の道端、草原、川沿い、山地の斜面、登山道脇、常緑広葉樹林、シイ・タブ林に生える。
 多年草。高さ20~80㎝。茎は4稜形、基部で平伏して節から根を出し、先は直立し、まばらに分枝し、二縦列の軟毛がある。葉柄は長さ0.5~1.5㎝。葉は対生し、葉身は披針形~卵状長円形、長さ(3~)5~13㎝×幅1~ 2.5(4.5)㎝、質は薄く、暗緑色、縁は全縁~わずかに波打ち、側脈は3~5対、基部は鈍形~楔形、両面にまばらに軟毛があり(とくに中脈上にあり)、先は鋭形~尖鋭形~尾状。針状の結晶体はキツネノマゴほどはっきりしない。花序は頂生又は上部の葉腋に腋生、花序柄のある集散花序、集散花序には花序柄のある総苞が1~4(又はそれ以上)個つく。各総苞には花が1~3個つく。蕾は数個つくが1個ずつ咲くことが多い。花序柄は長さ0.7~5.5㎝。外総苞の小苞(outer involucral bracteoles)は対につき、卵形~楕円形、ほぼ等長~等長、外面はほぼ無毛~微軟毛があり、基部は楔形~切形、全縁、先は鋭形~鈍形。大きい外総苞の小苞は長さ1.1~2.5㎝×幅0.5~1.8㎝。小さい外総苞の小苞は長さ8~17㎜×幅3~9㎜。 内総苞の小苞(inner involucral bracteoles)は線形、長さ2~3㎜、外面には微軟毛があり、先は尖鋭形。萼は内総小苞片に接してつき、長さ約4㎜、5深裂し、裂片は錐状、膜質、軟毛がある。花冠は白色~淡ピンク色~薄紫色で、拡大部にピンク色の斑点や暗色の線があり、長さ2~3.4㎝、外側に軟毛があり、腺の無い毛状突起をもつ。花冠筒部は基部で幅約1㎜、長さ約1.5㎝。下側の位置の上唇弁は楕円形~類円形、長さ8~15㎜×幅3~11㎜、全縁又はわずかに凹形。上側の位置の下唇弁は長円形、長さ9~15㎜×幅4~7㎜、浅く3裂する。雄しべは2個、花糸は長さ約7㎜、軟毛がある。半葯は線形、長さ約1.2㎜、平行、不等に重なってつく。子房は長軟毛がある。子房の基部に環状の花盤がある。花柱は長さ約2㎝。柱頭は2裂。蒴果は2個の外総小苞片の間に隠れ、長さ0.8~1.2㎝、腺毛と腺の無い毛状突起があり、2室あり、種子が2個ずつ入り、熟すと2裂し、はじき飛ばす。種子は褐色、直径2~2.5㎜の薄い円盤形、表面が細かな疣状。花期は7~10月。果期は7~10月。2n=48。
 変種、品種に分けられているが、最近では広義に扱い分けない。

2-1 Peristrophe japonica (Thunb.) Bremek. var. japonica フチゲハグロソウ 縁毛葉黒草

 日本(本州の関東以西、四国、九州)、朝鮮、中国に分布する。
 苞の縁に長毛がある。

2-2 Peristrophe japonica (Thunb.) Bremek. var. subrotunda (Matsuda) Murata et Terao ハグロソウ 葉黒草

2-3 Peristrophe japonica (Thunb.) Bremek. f. albiflora (Hiyama) Yonek. シロバナハグロソウ 白花葉黒草

 白花品種。

3 Peristrophe hyssopifolia (Burm.f.) Bremek. ペリストロフェ・ヒッソピフォリア

  synonym Dicliptera undulata (Vahl) Karthik. & Moorthy ディクリプテラ・ウンデュラータ

  synonym Dianthera hyssopifolia Burm.f.
  synonym Peristrophe undulata (Vahl) Nees
  synonym Justicia javanica Lam.
  synonym Justicia undulata Vahl
 インドネシア(ジャワ島)原産
 多年草。高さ30~50㎝、匍匐する。茎の先に小さな鮮やかな紅紫色の2唇花をつける。下唇(上側の位置)はわずかに3裂し、裂片はごく短い。
品種) 'Aureo-variegata' (v)[葉の中央基部に黄色の斑紋が入る]

類似属


ヤンバルハグロソウ(ディクリプテラ)属

 family Acanthaceae- genus Dicliptera

 1年草、2年草又は多年草[ときに、低木]、広がり、鐘乳体(cystoliths.)をもつ。若い茎は断面で±6角(かど)がある。葉柄がある。葉は全縁又は類波状。花序は集散花序、葉腋につき、又は頂生の穂状花序状の輪散花序、又は輪散花序の円錐花序。花は小苞の数個の対の総苞に抱かれ(= cymule 小集散花序)、最も外側の対はサイズが等しく又は不等で、普通、内側の対、萼、及び花冠の基部を隠す。萼は5深裂し、萼片は狭く、等長、先は鋭形。花冠はピンク色、筒部の捻じれにより180度反転する。花冠筒部は細く、先が広くなり、拡大部は2唇形。下唇(上側の位置)は3裂し、裂片は斜上し、蕾中では渦巻状。上唇(下側の位置)は全縁、又は凹形。雄しべは2個、花冠の口部から突き出す。葯は2半葯。半葯は不等につき又は重なり、基部に突起は無い。仮雄しべは無い。柱頭は2裂、蒴果はほぼ柄があるか又は柄があり、種子を2~4個もち、支帯(retinacula)があり、毛状突起は無い。
 世界に約100種があり、世界の熱帯と温帯に広く分布する。

ヤンバルハグロソウ(ディクリプテラ)属の主な種

1 Dicliptera chinensis (L.) Juss. ヤンバルハグロソウ
 中国、台湾、インド、バングラデシュ、ベトナム原産。中国名は狗肝菜 gou gan cai。
 1年草又は2年草、高さ30~80㎝、茎はうねがあり、基部は拡散し、先は直立、若い枝や節に軟毛がある以外は無毛。葉柄は長さ0.5~3㎝、微軟毛がある。葉身は卵状楕円形、長さ2~8㎝×幅1.5~4㎝、下面の脈にまばらに微軟毛があり、上面は無毛、2次脈は中脈の各側に4~5本あり、下面にわずかに見え、基部は楔形~漸尖形で葉柄に沿下し、縁は全縁又はわずかに波所、先は短い尖鋭形~鋭形。花序は(1~)3~4個の花序柄のある集散花序であり、上部の葉腋につき、長さ1~4㎝。花序の苞は錐形~線形~倒披針形~倒卵形、長さ3~7.5㎜×幅0.3~1㎜。花序柄は長さ2~5㎜、小集散花序(cymules)は集散花序に普通、3~4個。外側の小苞は楕円形~倒卵形、長さ5~13㎜×幅3~8㎜、不等長、外側に微軟毛があり、3脈があり、縁毛があり、先は鋭形で微突形。内側の小苞は線形、長さ約5㎜、外側には粗毛があり、先は尖鋭形。花柄は長さ0.5~3㎜、微軟毛がある。萼は長さ約5㎜、萼片は線形、等長、縁に粗毛があり、先は尖鋭形。花冠は淡紫色、長さ1~1.2㎝、外側は微軟毛があり、花冠筒部は細く、長さ約6㎜、幅約1.5㎜、拡大部は2唇形。下側の位置の唇(上唇)は卵形、約・長さ5㎜×幅3㎜、先は全縁。上側の位置の唇(下唇)は長円形、約・長さ4㎜×幅1.5㎜、浅く3裂する。雄しべは花冠筒部の先付近につく。花糸は長さ約4㎜、無毛。半葯は球形、直径約1.2㎜、平行。子房は先端に長軟毛がある。花柱は長さ約1.4㎝。蒴果は広楕円形、長さ約6㎜、微軟毛があり、4種子、先は微突頭。種子は外形が円形、直径約2㎜、先にひげ状のパピラがある。花期は9~1月。果期は11~2月。2n=26。

参考

1) Flora of the China
 Peristrophe
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=124587
2) GRIN
 Peristrophe
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=9121
3)Plants of the World Online | Kew Science
 Peristrophe
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:801-1
4)J. Adelaide Bot. Gard. 9: 1-286 (1986)
 A TAXONOMIC REVISION OF AUSTRALIAN ACANTHACEAE
 JABG09P001_Barker.pdf