ゴールデンクロッカス
Flora of Mikawa
アヤメ科 Iridaceae クロッカス属
別 名 | 寒咲きクロッカス |
英 名 | snow crocus , golden crocus , saffron golden , crocus golden |
学 名 | Crocus chrysanthus (Herb.) Herb. synonym Crocus annulatus var. chrysanthus Herb. |
花 期 | 2~3(4)月 |
高 さ | 10~15㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 草地、牧草地、 土手 (園芸種) |
分 布 | 帰化種 ギリシャ、アルバニア、ブルガリア、旧ユーゴスラビア、ルーマニア、トルコ原産 |
撮 影 | 豊橋市 17.3.4 |
クロッカス属の園芸種全体をクロッカスと呼んでいる。ゴールデンクロッカスはクロッカスの観賞用の1系統であり、Crocus chrysanthus (Herb.) Herbの選抜品種及びハイブリッド品種を含む。クロッカスの栽培品種の中で最も品種の数が多い。原種のCrocus chrysanthusはギリシャ、アルバニア、ブルガリア、旧ユーゴスラビア、ルーマニア、トルコ原産。球茎の薄皮は膜質または革質。2~3月に開花し、花が鮮橙黄色であり又は英名はsnow crocus, golden crocusという。原種の白花はvar. albidus 。花は上向きに咲き、椀形。基本は黄色系であるが、青系の園芸品種も多い。Crocus biflorusとハイブリッドができやすく、ハイブリッドはCrocus x bornmuelleri (biflorus x chrysanthus)といわれる。 写真のものは品種がよくわからないが、'Goldilocks'ではないかと思われる。
【Crocus chrysanthusの解説】 球茎(cormus)は凹んだ球形(depressed-globose)~卵形(ovoid)、直径10~20㎜。薄皮は硬く、革質、繊維がわずかに細かく、上下に間隔の広い裂片があり、裂片の裂け目は少ない。薄皮の首は長さ5~7㎜、鋭い針状の部分がある。基部の輪は明瞭、歯は長さ1㎜。鱗片葉は3~5個つき、帯白色、上部はときに帯緑色になる。葉は花序の花より短く、3~6枚つき、縁は縁毛があるか無毛、暗緑色、幅約3mm、下面に溝があり、うねが(1~)3~4本ある。葉上面の白線は幅が葉幅の1/3以下。前出葉は無い。苞と小苞は膜質、白色。苞は筒状、小苞は舌状、外側に鱗片葉がある。花被筒は白色、黄色、アイボリー色、青色、縞模様または斑点があることもある。喉部は黄色または白色、ときに帯灰色、無毛。花は黄色、アイボリー色、または白色。花被片は倒卵形~倒披針形、先は鈍形~鋭形。外花被片は長さ17~25㎜×幅6~12㎜、灰色または褐色(ロンズ色)の斑点または縞模様があり、ときに薄青紫色~暗青紫色のそばかすがあり、基部では斑点がより目立つ。内花被片は長さ14~24㎜×幅6~11㎜、外花被片と同色。花糸は長さ4~9㎜、無毛からパピラがあり、黄色または白色。葯は長さ7~12㎜、黄色、ときに黒色の矢印状になり 、基部の裂片は長く、ときに頂端に黒い斑点がある。葯隔は黄色またはアイボリー色。花柱は橙色~赤橙色の枝が3本あり、葯を超え、ときに同長かまたは短くなる。蒴果は楕円形、長さ14~20㎜、成熟すると地面よりも高くなる。種子は楕円形~球形、通常長さ2~3㎜、縫合線と種沈は小さくて目立つ。花期は1~3月。2n=8。
ハナサフランCrocus vernus系統は花が大きく、球茎も直径4㎝あり大きい。葉も幅3~8㎜と広い。
クロッカス属は原種の数が多く、観賞用の品種が多い。現在、よく栽培されているのはゴールデンクロッカス Crocus chrysanthus、キバナサフランCrocus flavus、ハナサフラン Crocus vernus(Dutch crocus)、Crocus tommasinianus(Botanical crocus、Early Crocus)、Crocus sieberi 、Crocus speciosusなどである。Crocus speciosus以外は春咲き。薬用や料理用のサフランは秋咲き。
多年草、球茎(corm)は多数の膜質、革質または繊維質の薄皮(tunic)に包まれる。薄皮は先が首状(tunic neck)になり、基部にときに輪(ring=sannulate tunics)が見られる(section Nudiscapusだけ)。ときに鱗片の腋に小球茎(cormlets)が形成され、花序柄と子房は地下にある。鞘状の鱗片葉(cataphylls)は5個以下つき、膜質であり、地上シュートを包む。葉は花と同時に、または花後に出現し、基部は平らであるか、または上面に溝があり、中央が帯白色の縞になり、下面には平らな竜骨があり、両側に2本の溝がある。花茎はない。花序は1個~多数の花がつく。花は小花柄があり、小花柄は短く、地下にあり、ときに膜質の鞘状の前出葉(prophyll)が基部を抱き、地面から直接出る。苞は膜質で、小苞はないか、または小さくなって膜質である。花被は白色、黄色、ライラック色、暗紫色。花被片は3+3枚で、合弁性(gamophyllous)、筒は長くて狭い、花被片は6個、2輪生、長さは等しいかほぼ等しいか、または内花被片の方が小さい。雄しべは3本、喉部につき、葯は通常矢じり形(arrow-shaped)、花糸より短く、線形で直立する。花糸にときにパピラがある。花柱は1本、3~4本、または多数の枝を持つ。子房は地下にある。小花柄が伸びて、蒴果は地上で成熟する。蒴果は小さく、楕円形~長楕円状楕円形。種子は多数。
世界に約250種が分し、主に地中海沿岸に分布し、中央アジア、中国、中東からパキスタンまで広がる。
観賞用のクロッカスは多数の品種が栽培され、特に、Crocus chrysanthu、Crocus speciosus、Crocus tommasinianus、Crocus vernus の4種は多く、主にヨーロッパ西部で19世紀後半~20世紀初めに多くの栽培品種が作り出された。20世紀の初めには中東でプラントハンティングが行われ、いくつかの新種も報告されている。栽培の中心であるオランダでは1991年にすでに100種以上の品種が知られ(Van Sheepen 1991)、2009/2010年には70種以上の品種が366haで栽培されていた。ハナサフラン Crocus vernusの栽培品種は全体の55%を占め、'Jeanne d'Arc'(57ha)、'Flower Record'(42ha)、'King of the Striped'(30ha)。ゴールデンクロッカス Crocus chrysanthusは17%、'Romance'(22.9ha)。Crocus tommasinianusは10%、'Ruby Giant'(21.5ha)。キバナサフラン Crocus flavusは10%を占め、主品種は'Geel'(36.4ha)。これらは全部、春咲きである。
ハイブリッドも多く、Crocus chrysanthus 'Blue Pearl'はCrocus biflorusから誘導されたとされ、'Cream Beauty' はchrysanthusとbiflorusのハイブリッドである。 'Golden Yellowと'Stellaris'はflavusとangustifoliusのハイブリッドである。
類似属はイヌサフラン(Colchicum autumnale)のイヌサフラン属(Colchicum)、サフランモドキ(Zephyranthes carinata)のタマスダレ属(Zephyranthes)などである。
1 Crocus abantensis T.Baytop & B.Mathew クロクス・アバンテンシス
トルコ原産。英名はspring blooming crocus。
球茎はほぼ球形(subglobose)、直径10~11㎜、薄皮は繊維状の網状、基部の輪はない。鱗片葉は紙質、白色、通常2~3個つく。葉は花序の花より短く、5~10枚つく、無毛、緑色、幅1㎜以下、下面にはうねがなく、溝があり、上面の白色の線は幅が葉幅の1/3である。前出葉はない。苞と小苞は銀白色または帯黄色、ほぼ同長。花被筒(perigone tube)は白色、青色、または帯黄色、ときに上部に紫色の縞模様がある。花被は暗青色またはライラックブルー色。外花被片は長さ22~36㎜×幅6~15㎜、倒卵形~倒披針形、先は鈍形または尖鋭形。内花被片と外花被片は多少、似ている。喉部は無毛、暗黄色、白色の部分がある場合もある。花糸は長さ約5㎜、わずかに粗く、黄色。葯は長さ8~13㎜、黄色、葯隔は黄色。花柱は橙色で、3分岐し、一般に葯より短い。蒴果は円筒形、長さ20㎜以下。長い小花柄は地上には伸びない。種子は長さ3~4㎜×幅約1㎜、暗褐色~黒色、種沈(caruncle)が目立つ。花期は4~5月。2n=8, 16。
品種) 'Azkaban's Escapee' , 'Sky Blue'、'Violet'
2 Crocus aerius Herb. クロクス・アエリウス
トルコ原産。標高2000~2800mの石が多い山地の草地に生える。
球茎は卵形、薄皮は平行繊維状、基部の輪はない。葉は幅2.5㎜、灰緑色。花は高さ5~7㎝、淡青色~濃青色、喉部が黄橙色で淡緑黄色(primrose)の葯とオレンジ色の花柱があり、その周囲はより淡色で、ほぼ白色になり、暗紫色の脈がある。花期は3~4月。
品種) 'Cambridge
3 Crocus alexandri Nicic ex Velen. クロクス・アレクサンドリ
synonym Crocus biflorus subsp. alexandri (Nicic ex Velen.) B.Mathew
synonym Crocus biflorus f. alexandri (Nicic ex Velen.) Stjepanovic-Veselicic
ブルガリア、ギリシャ、ユーゴスラビア原産。英名はAlexandria crocus, Alexandria saffron, Alexandria autumn crocus。山地に生息する種で、乾燥した牧草地や牧草地、間伐された藪の中に生える。以前はCrocus biflorusの亜種や品種などに分類されていた。
多年草、高さ10~18㎝、球茎は球形、薄皮は革質、覆われる。葉は花と同時に現れ、線形、通常は無毛。花は内側が白色、外花被片には外側に3~5本の濃い紫色の縦縞があり、ときに白色、基部のみ紫色になが、幅広の紫色の模様になることもある。花被筒は花被片近くが帯黄色になり、無毛。葯は黄色で、雄しべより長い。花柱は橙色。蒴果は細長く小さい。種子は小さく、黒く、光沢のある楕円形。花期は春。果期は夏。
品種) 'Major'
4 Crocus ancyrensis (Herb.) Maw クロクス・アンキレンシス
トルコ原産。英名はAnkara crocus
球茎(cormus)はほぼ球形(subglobose)[卵形~扁球形]、直径12~15㎜、薄皮(tunic)は粗い網状、薄皮の首は長さ5~10㎜、繊維状または硬い刺すような先端を持ち、基部の輪はない。鱗片葉は3~4個つき、白色。葉は花序の花より短いかわずかに長く、2~6枚つき、幅1~2.5㎜、灰緑色で、縁は無毛またはまばらな縁毛があり、下面に溝があり、2本のうねがあり、上面の白線は幅が葉の幅の1/4~1/3に相当するが、それより広くなることはまれ。前出葉はない。苞と小苞は白色、苞と同等かわずかに小さい。花被筒は黄色、帯紫色、淡黄色で帯紫色があり、または白色。花被片は長さ15~30㎜×幅6~12㎜、ほぼ同長、倒卵形~楕円形、先は鈍形~尖鋭形。すべての花被片の内部は橙色~黄橙色またはすべての部分が明るい黄色、橙色、またはまれに外花被片の外側に暗紫褐色の縞模様がある。内花被片の外側は橙色~黄橙色で、ときに基部に紫褐色の斑点があって基部が暗くなり、喉部は黄色、わずかに濃くなり、無毛またはわずかに毛がある。花糸は長さ2~7.5㎜、黄色、無毛または基部にまばらにパピラがある。葯はみずみずしく(aquiferous)、長さ6~12.5 mm、黄色。葯隔は無色~淡黄色。花柱は黄色または橙赤色~橙色、3分岐し、枝は先が拡張しないか、またはわずかに拡張し、通常は葯の先端より短いかまたは長い。蒴果は楕円形、長さ12~17㎜×幅5~7㎜、長い柄は地上の高さか、または地上からわずかに高い。種子は長さ2~3.5㎜×幅1.5~3㎜、多淡褐色または暗褐色、種沈が宿存し、縫合線は未発達、またはその両方が明瞭。花期は2~5月。2n=10。2n= 6。
品種) 'Golden Bunch'
5 Crocus angustifolius Weston クロクス・アングスティフォリウス
synonym Crocus susianus Ker Gawl.
ウクライナ、アルメニア原産。英名はCloth of Gold Crocus。
球茎(cormus)は卵形、直径11~20㎜、薄皮は膜質、基部が平行な帯で区切られ、薄皮の首は長さ5~6㎜、狭く、鋭い繊維状、基部の輪は無い。鱗片葉は2~4個つき、膜質、白色または緑紫色の斑点がある。葉は開花中に発達するが、花の高さを超えず、2~3(~5)枚つく。葉は緑色、幅4~5㎜、下面と竜骨の角には縁毛があり、ときに無毛で、溝は目立たない。上面の白線の幅は葉幅の1/3。前出葉は無い。苞は白色または銀白色、苞は小苞よりも狭い。花被片は長さ23~35㎜×幅7~10㎜、倒卵形または尖り、内側は明るい黄色。外花被片は外面に濃い紫褐色の縞模様、縞模様が斑点と混在するか、または斑点がある。内花被片は外側が黄色で、基部に緑褐色の斑点がある。花被筒(perigon tube)は通常紫色または褐色で、白地に明瞭な縞模様があり、喉部は無毛、花被片と同色かそれより暗色になる。花糸は無毛、黄色。葯は黄橙色、基部の裂片は鋭形、葯隔は黄色。花柱は黄色または橙色、(8~)12~15分枝し、枝は雄しべと並ぶか、わずかに伸びる。蒴果は円筒形、長さ10~15㎜×幅約5㎜、褐緑色、大きな小花柄が地上で見られる。種子は長円形、長さ約2㎜×幅3~6㎜、赤栗色、種沈があり、縫合線がある。花期は1月~3月。2n=6, 12。
品種) 'Alionka' , 'Berlin Gold' , 'Bronze Beauty' , 'Cloth of Gold' , 'Janis Ruksans' , 'Minor' , 'Nida' , 'Oreanda'
6 Crocus asumaniae B.Mathew & T.Baytop クロクス・アスマニアエ
トルコ原産。
球茎(cormus)は卵形で、上から見るとほとんどがわずかに平らで、直径は20~22㎜。薄皮は非常に薄く、繊維質で、上部は細かいく網目状になり、基部は平行な繊維状になる。薄皮の首は長さ30~40㎜、繊維が細かく、鱗片葉をしっかりと包む。薄皮の輪は無い。鱗片葉は2~3個、白色、紙質、縁は褐色。葉は5~6枚、無毛またはまれに縁毛があり、灰緑色で狭く、幅1㎜、下面に溝があり、うねは無い。上面の白線は葉の幅の1/3より広い。前出葉はある。苞と小苞は等しくなく、白色、膜質、先が狭い。花被は白色または淡藤色で、ときにわずかに脈があり、内花被片はより暗色。外花被片は長さ25~30㎜×幅5~10㎜、外面の基部に暗い斑点が存在することもある。内花被片は長さ24~30㎜×幅4~9㎜、外花被片に似ている。花被筒は白色または淡紫色、ときに上部に紫色の縞模様が入る。喉部は無毛、白色または淡黄色。花糸は長さ2~5㎜、白色または淡黄色、無毛。葯は長さ10~21㎜、黄色。葯隔はアイボリー色または黄色。花柱は下部が黄色で、3分岐するあたりから徐々にオレンジ色に変化する。枝は葯裂片の高さおよび雄しべの上に伸びる。蒴果は楕円形、長さ約22㎜×幅20~10㎜、麦わら色。太い柄は地表から20㎜くらいまで伸びる。種子は楕円形または卵形で、赤色または褐灰色、長さ2.14~2.84㎜×幅1.43~2.40㎜。花期は10~11月。2n=26。
品種) 'Albus'
7 Crocus atticus (Boiss. & Orph.) Orph. クロクス・アティックス
synonym Crocus sieberi var. atticus Boiss. & Orph.
synonym Crocus sieberi subsp. atticus (Boiss. & Orph.) B.Mathew
ギリシャ原産。ギリシャのアッティカ地方の標高1000m以上の山岳地帯の石の多い地域の森林や低木地帯に生える。
球茎の薄皮は粗い網目繊維状。花はライラックブルーまたは紫色、喉部は黄色。花期は3~6月。 品種) 'Amfiklia' , 'Bowles White' , 'Firefly' , 'Ronald Ginns' , 'Stunner' , Vardousia'
8 Crocus autumnalis Mill. クロクス・アウツムナリス
synonym Crocus serotinus Salisb. クロクス・セロティヌス
ポルトガル原産。岩場や砂地、森林に生える。栽培されることはまれだが、温室では比較的よく育つ。
球根は長さ8~15㎜×幅6~15㎜、ほぼ球形、1個つき、まれに匍匐茎がある。薄皮(tunic)の内層は紙質、外層は粗い網目状の繊維からなる。葉は3~4枚、花と同時に基部からロゼット状に地を這い長く延び、線形、長さ(50~)220~250㎜×幅(1)1.5~3.5㎜。鱗片葉(cataphyllus)が存在する。苞は白色、膜質、ときに先が緑色になる。小苞は無い。花は高さ9~13㎝、1または2個つき、直径約4㎝、鐘形。花被筒は長さ30~105(135)㎜、白色、先が薄紫色を帯び、喉部に普通、毛があり、淡いライラック色~濃いライラック色。花被片は長さ23~60㎜×幅6~15㎜、倒披針形、倒卵形または楕円形、薄紫色、ときに黒色(濃色)の脈がある。雄しべの花糸は帯黄色。葯は黄色。花柱は雄しべと同長またはそれより小さく、3本の広がったまたはほぼ分裂した枝があり、先が房状へりまたは分裂し、黄色~橙赤色。蒴果は長さ12~15㎜、楕円形。種子は長さ2~4㎜×幅1.5~3㎜、卵形、褐色、小さな種阜(strophiole)がつく。2n=22, 23, 24, 44。花期は10~12月。
9 Crocus balansae J.Gay ex Maw クロクス・バランサエ
Synonyms Crocus olivieri subsp. balansae (J.Gay ex Maw) B.Mathew
エーゲ海諸島、トルコ原産。
球茎(cormus)は卵形(ovoid)、直径11~20㎜。薄皮は膜質、基部が平行な帯で区切られ、被膜の首は長さ5~6㎜、狭く、鋭い繊維状、基部の輪はない。鱗片葉は2~4個、膜状、白色または緑紫色の斑点がある。葉は開花中に発達するが、花の高さを超えず、2~3(~5)枚つく。葉は緑色、幅4~5 mm。下面と竜骨の角には縁毛があり、ときに無毛、溝は不明瞭、上面の白線は幅が葉幅の1/3。前出葉は無い。苞は白色または銀白色で、苞は小苞よりも狭い。花被片は長さ23~35㎜×幅7~10㎜、倒卵形または尖っていて、内側は明るい黄色。外花被片の外面には濃い紫褐色の縞模様または縞模様が混在しているか斑点がある。内花被片は外側が黄色で、基部に緑褐色の斑点がある。花被筒は通常紫色または褐色で、白地に明瞭な縞模様があり、喉部は無毛、花被片と同色かそれより暗色になる。花糸は無毛、黄色。葯は黄橙色、基部の裂片は尖る。葯隔は黄色。花柱は黄色または橙色、(8~)12~15分岐する。岐は雄しべと並ぶか、わずかに伸びる。蒴果は円筒形、長さ10~15㎜×幅約5㎜、褐緑色、大きな小花柄が土上で見られる。種子は長円形、長さ約2㎜×幅3~6㎜、赤栗色。種沈と縫合線は不明瞭。花期は1~3月。2n=6。
品種) 'Chocolate Soldier' , 'Orange Monarch' , 'Zwanenburg'
10 Crocus banaticus J.Gay クロクス・バナティクス
synonym Crocus iridiflorus Heuff. ex Rchb.
チェコスロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ウクライナ、ユーゴスラビア原産。英国王立園芸協会のAGMを受賞している。
多年草、球根は凹んだ球形(depressed-globose)。葉は幅広で短く、草質、花後に生じ、上面に白色(銀色)のストライプが無い。花は高さ10~25㎝、花被は紫色(violet)又は白色。花被筒は細く長い。内花被片が外花被片より著しく短く、小さな内花被片は3個の大きな外花被片に囲まれる。花期は初秋の9月。
品種) 'Albus'白花 , 'Early Bird' , 'First Snow' , 'John Marr' , 'Snowdrift' , 'Trojanus'
11 Crocus biflorus Mill. クロクス・ビフロルス
Synonyms Crocus annulatus var. biflorus (Mill.) Herb.
Synonyms Crocus biflorus subsp. biflorus
Synonyms Crocus biflorus subsp. pusillus (Ten.) Nyman
Synonyms Crocus biflorus var. communis Sabine
Synonyms Crocus biflorus var. estriatus (Herb.) Tchich.
Synonyms Crocus biflorus var. janii J.Gay
Synonyms Crocus biflorus var. parkinsonii Sabine
Synonyms Crocus biflorus var. stigmatosus Sabine
Synonyms Crocus praecox Haw.
Synonyms Crocus pusillus Ten.
Synonyms Crocus striatus Link
イタリア、シチリア島原産。英名はsilvery crocus , scotch crocus。標高200~3000mの開けた岩の多い斜面、低木林、高山の芝生、まばらな針葉樹林に生える。
球茎は扁球形(flattened globose)、薄皮が膜質または革質、基部には全縁または歯のある輪(ring)を持つ。葉は(3~)4~9 枚つく、合片性、幅0.5~3.5㎜。前出葉はない。小苞はあり、苞と同程度か、はるかに狭い。花被の喉部は淡黄色~濃黄色、無毛または微細なパピラがある。花被片は長さ1.7~3.5㎝×幅0.5~1.3㎝、ほぼ鋭形、鈍形または円形、白色、薄紫色または青色、外側はときに顕著な縞があり、脈、斑点があり、または紫色、濃青色または灰色がかる。花糸は長さ3~7㎜、白色または黄色、無毛または微細なパピラがある。葯は長さ(0.8~)l~1.4㎝、黄色または帯黒色、ときに黄色で黒色の基部裂片があり、ときに黄色で灰色または帯黒色の葯隔がある。花柱は3分岐し、黄色から赤橙色、枝は細いまたは広がる。花期は2~6(~7)月。2n=8。
品種) 'Argenteus' , 'Blue Pearl' , 'Blue Peter' , 'Bowles's Blue' , 'Brimstone' , 'Kittiwake' , 'Miss Vain'(Scotch Crocus) , 'Parkinsonii' , 'Scotch' , 'Serevan'
12 Crocus cancellatus Herb. クロクス・カンケルラツス
トルコ、レバノン、イスラエル、ヨルダン原産。
球茎(cormus)は直径10~15㎜。薄皮(tunic)は明瞭な網目状、繊維は細く、網目の直径は5㎜以下、薄皮の首は針状の繊維状、長さ10~20㎜、基部の輪は無い。鱗片葉は3~4個つき、白色。開花時に葉が鱗片葉の先に見え、4~7枚つき、無毛、灰緑色、幅1~2㎜、下面に溝があり、3本のうねがあり、上面の白色の線は幅が葉幅の1/3ほどで明瞭。前出葉は無い。苞と小苞は白色、膜質、小苞は小さく、苞の中に隠れる。花被片は等しいかほぼ等しく、長さ30~40㎜×幅6~12㎜、倒披針形または狭い楕円形で、通常、鋭形、薄いライラックブルー色、まれに暗色になり条線がある。外花被片は外側に条線があり、ときに斑点と融合する。外花被片と内花被片は外側が似ていて、通常は条線がない。花被筒(perigon tube)は白色、斑点があるか、または3本の紫色の縞模様がある。喉部は白色または淡黄色、無毛または毛がある。花糸は長さ3~6㎜、無毛またはむらのある毛があり、白色または淡黄色。葯は長さ10~15㎜、黄色。葯隔は白色または淡黄色、花柱は多数の橙色の枝をもち、葯を超えるか、まれに葯の高さまで。蒴果は長さ25~30㎜、楕円形、バフ色、上部が紫色で、大きい柄は地上で目立つ。種子は大きく、楕円形、長さ4~5㎜×幅2~3㎜、縫合線と種沈が目立つ。花期は9~11月。2n=10, 12。
品種) 'Albus'
13 Crocus candidus E.D.Clarke クロクス・カンディヅス
トルコ原産。森や低木林に生える。
球茎(cormus)は楕円体、直径約10㎜。薄皮(tunic)は膜質、基部は平行な繊維状。薄皮の首は長さ2~3㎜、狭い裂片になる。基部の輪は無い。鱗片葉は3~4個つき、膜質、白色、上部が緑色。葉は1~2枚つき、縁毛があり、暗緑色で、成熟すると幅8~10㎜になり、下面には溝があり、うねは無く、上面の白線は幅が葉幅の1/3より狭い。前出葉は無い。苞と小苞は膜質で等形、白色または緑色の斑点がある。花被片は長さ20~22㎜×幅6~10㎜、楕円形、先は鈍形、内面は白色、外花被片の外面は白色、灰緑色(taupe-green)で、紫色の斑点があり、ときに斑点は線形になり、まれに明瞭な連続した縞模様になる。内花被片は白色、基部に紫色の斑点がある。花被筒は薄紫色または紫褐色の斑点がある。喉部は黄色、無毛。花糸は長さ5㎜、毛があり、黄色。葯は黄色、長さ9~10㎜。葯隔は白色。花柱は黄色または橙色、約6分岐し、葯と同長またはそれより長い。蒴果は楕円形、長さ15㎜以下、バフ色(黄褐色)、大きな柄は地上に出る。種子は卵形、長さ2~3㎜、褐色、種沈はよく発達し、縫合線は不明瞭。花期は1~3月。
品種) 'Lune'
14 Crocus cartwrightianus Herb. クロクス・カートライトティアヌス
ギリシャ原産。野生サフラン。サフラン用に栽培されるCrocus sativus は本種の品種であるとも考えられている。花と花柱はサフラン(C. sativus)に似ており、サフランと同様に、花柱はサフランの野生源として使用できる。この2種間の密接な関係は非常に明らかであるが、より多くの種が古代の交雑イベントに参加して三倍体のサフラン(2n=24) が生まれたかどうかはまだ不明である。
多年草、高さ5㎝まで。球茎の薄皮は細かい繊維で網状になる。葉と花は同時に生じる。花は薄紫色(ライラック色)または白色で、紫色の脈がある。開花は夜も続く。Crocus tournefortii は夜間も花が開いたままの唯一の他の種であり、分布が重複しているこの2種は、夜飛ぶ昆虫(蛾?)によって受粉されると考えられている。喉部にはひげがある。花柱は葯の基部よりかなり下の、花の喉部で3分裂する。柱頭は明るい赤色、枝は葯よりも高く、花被片とほぼ同じ長さになる。花期は秋~冬。2n=16。
品種) 'Albus' , 'Albus' Tubergen , 'Anaïs' , CE&H , 'Halloween' , 'Marcel' , 'Michel'
15 Crocus chrysanthus (Herb.) Herb. ゴールデンクロッカス
synonym Crocus annulatus var. chrysanthus Herb.
ギリシャ、アルバニア、ブルガリア、旧ユーゴスラビア、ルーマニア、トルコ原産。英名はsnow crocus, golden crocus。
球茎(cormus)は凹んだ球形(depressed-globose)~卵形(ovoid)、直径10~20㎜。薄皮は硬く、革質、繊維がわずかに細かく、上下に間隔の広い裂片があり、裂片の裂け目は少ない。薄皮の首は長さ5~7㎜、鋭い針状の部分がある。基部の輪は明瞭、歯は長さ1㎜。鱗片葉は3~5個つき、帯白色、上部はときに帯緑色になる。葉は花序の花より短く、3~6枚つき、縁は縁毛があるか無毛、暗緑色、幅約3mm、下面に溝があり、うねが(1~)3~4本ある。葉上面の白線は幅が葉幅の1/3以下。前出葉は無い。苞と小苞は膜質、白色。苞は筒状、小苞は舌状、外側に鱗片葉がある。花被筒は白色、黄色、アイボリー色、青色、縞模様または斑点があることもある。喉部は黄色または白色、ときに帯灰色、無毛。花は黄色、アイボリー色、または白色。花被片は倒卵形~倒披針形、先は鈍形~鋭形。外花被片は長さ17~25㎜×幅6~12㎜、灰色または褐色(ロンズ色)の斑点または縞模様があり、ときに薄青紫色~暗青紫色のそばかすがあり、基部では斑点がより目立つ。内花被片は長さ14~24㎜×幅6~11㎜、外花被片と同色。花糸は長さ4~9㎜、無毛からパピラがあり、黄色または白色。葯は長さ7~12㎜、黄色、ときに黒色の矢印状になり 、基部の裂片は長く、ときに頂端に黒い斑点がある。葯隔は黄色またはアイボリー色。花柱は橙色~赤橙色の枝が3本あり、葯を超え、ときに同長かまたは短くなる。蒴果は楕円形、長さ14~20㎜、成熟すると地面よりも高くなる。種子は楕円形~球形、通常長さ2~3㎜、縫合線と種沈は小さくて目立つ。花期は1~3月。2n=8。
ゴルデンクロッカス(Crocus chrysanthus)の栽培種は原種のCrocus chrysanthuからの選抜とCrocus biflorusの数種の亜種やCrocus aeriusとのハイブリッドである。黄色の栽培種が原種からの選抜である。青色や白色のものはハイブリッドやCrocus biflorus.に近い選抜である。Jan Hoog (Van Tubergen nursery) や E.A. Bowlesによって、本格的な選抜やハイブリッドが作り始められ、多くの品種がある。ハイブリッドはCrocus x bornmuelleri (biflorus x chrysanthus) といわれる。
品種) 'Advance' , 'Afyon' , 'Al Jolson' , 'Alionka' , 'Andromeda' , 'Ard Schenk'(内側が黄色で外側が紫青色) , 'Aubade' , 'Bloemfontein' , 'Blue Beauty' , 'Blue Bird' , 'Blue Bonnet' , 'Blue Butterfly' , 'Blue Dream' , 'Blue Giant' , 'Blue Jacket' , 'Blue Jay' , 'Blue Rock' , 'Blue Marlin' , 'Blue Pearl' , 'Blue Peter' , 'Blue Princess' , 'Blue Throat' , 'Brass Band' , 'Bullfinch' , 'Bumble-bee' , 'Buttercup' , 'Canary Bird' , 'Charmer' , 'Constellation' , 'Copenhagen China' , 'Cream Beauty' , 'Crescendo' , 'Cum Laude' , 'Cupido' , 'Dandy' , 'Distinction' , 'Dorothy(Crocus bifloruとのhybrid)' , 'EA Bowles' , 'Early Gold' , 'Elegance' , Elegant' , 'E.P. Bowles' , 'Eyecatcher' , 'Frost Bound' , 'Fuscotinctus' , 'Gladstone' , 'Golden Bunch' , 'Golden Pheasant' , Golden Plover' , 'Golden Yellow' , 'Goldilocks' , 'Goldmine' , 'Gypsy Girl' , 'Glory of Breezand' , 'Goldene Sonne' , 'Goldfasan' , 'Goldilocks' , 'Goldmine' , 'Grand Gala' , 'Grey Lady' , 'Gundogmüs Bronze' , 'Harlequin' , 'Herald' , 'Ivory Glory' , 'Jeannine' , 'Jester' , 'Johan Cruyff' , 'Khaki' , 'Koh-i-Nor' , 'Ladykiller' , 'Lemon Queen' , 'Lentejuweel' , 'Lilette' , 'Lilliputaner' , 'Little Amber' , 'Macedonian Ivory' , 'Magic' , 'Mannequin' , 'Mariette' , 'Marion' , 'Milea' , 'Miss Vain' , 'Monarch' , 'Moonlight' , 'Morning Star' , 'Myddelton Cream' , 'Mystic' , 'Nanette' , 'Nida' , 'Olympiade' , 'Opal' , 'Orange Monarch' , 'Palette' , 'Parade' , 'Paradiso' , 'Plaisir' , 'Prespa Gold' , 'Prins Claus' , 'Prinses Beatrix' , 'Reverence' , 'Rising Sun' , 'Romance' , 'Saturnus' , 'Skyline' , 'Snow Bunting' , 'Snow White' , 'Shot' , 'Siskin' , 'Sky Blue' , 'Skyline' , 'Solo', 'Spotlight' , 'Spring Song' , 'Sulphur Glory' , 'Sunkist' , 'Sunset' , 'Sunspot' , 'Uschak Orange' , 'Symphonia' , 'Topolino' , 'Trance' , 'Uschak Orange' , 'Violet Queen' , 'Warley'('Large Warley White') , 'White Beauty' , 'White Splendour' , 'Winter Gold' , 'Yellow Gem' , 'Yellow Hammer' , 'Yellow Queen', 'Zenith' , 'Zwanenburg Bronze'( Garden Merit)
15-1 Crocus chrysanthus subsp. chrysanthus
synonym Crocus gembosii Rukšāns
ギリシャ、アルバニア、ブルガリア、旧ユーゴスラビア、ルーマニア、トルコ原産。
品種) 'Golden Delight'
15-2 Crocus chrysanthus subsp. multifolius Papan. & Zacharof
synonym Crocus annulatus var. chrysanthus Herb.
ギリシャ原産。
16 Crocus clusii J.Gay クロクス・クルシー
synonym Crocus serotinus subsp. clusii (J.Gay) B.Mathew
ポルトガル、スペイン原産。Clusius' Crocus。標高900mまでの草地や明るい森林に生える。
球根は長さ8~15㎜×幅6~15㎜、ほぼ球形、1個つき、球茎の薄皮は細かい網繊維状。開花後間もなく4~7枚の葉が生える。葉は線形長さ(50~)220~250㎜×幅(1)1.5~3.5㎜。花は高さ8~9㎝、淡いライラック色または濃いライラック色。花期は秋。
品種) 'Poseidon'
17 Crocus dalmaticus Vis. クロクス・ダルマティクス
synonym Crocus reticulatus var. dalmaticus (Vis.) Herb.
クロアチア、ベスニア、アルバニア原産。英名はdalmatian crocus。日当たりの良いカルスト岩原に生える。
多年草、高さ10~20㎝、球茎は凹んだ球形(depressed-globose)、長さ8~12㎜、薄皮は紙質。茎は繊維状、繊維は強く、網目状に編まれる。茎と葉は、長さ1.5~6.5㎝の3~4本の薄い膜状の枝で覆われる。通常、この植物には幅1~2(~3)㎜の細い線形の葉が3~4枚あり、高さは花被片の喉部まで達し、花と同時に現れる。葉は緑色で、中央に白い縞があり、縁は内側に向かって巻く。この植物には基部に仏炎苞はない。苞と小苞は長さが等しく、長さ4~5㎝、紙状膜質で、最長の鞘を超える。通常、花は2個つき、青紫色、喉部は黄色。花被筒は長さ4~6㎝、青色の縞模様がある。花柱は雄しべと同長かそれを超え、深く3裂する。喉部にはまばらに毛があり、鞘はない。花被片は長さ1.5~3.5㎝×幅1~1.5㎝、外花被片に黄色の様々な斑紋がある。果実は矢筒状(quiver)、楕円形、長さ約1.8㎝、3バルブに裂開し、果実には、数個の種子が含まれる。種子は薄褐色、楕円形、長さ3~4㎜。花期は1~4月。
品種) 'Petrovac'
18 Crocus damascenus Herb. クロクス・ダマスケヌス
synonym Crocus cancellatus subsp. damascenus (Herb.) B.Mathew
イラン、イラク、レバノン・シリア、パレスチナ、トルコ原産。430~2100mに生える。
球茎は球形、直径15~30 mm。被膜は強くて粗い網状繊維、網目は少なくとも直径6㎜ある。薄皮の首は明瞭、長さ5~6㎝、針状に分裂する。薄皮の輪はない。鱗片葉は3~4個つき、淡麦わら色。葉は3~5枚、無毛、灰緑色、幅3~4.5㎜、下面に溝があり、3本のうねがある。花の終わりに鱗片葉の先端に明瞭な葉がつく。前出葉はない。苞があり、中に小苞がある。花被筒は白色、ときに緑色または紫色の縞模様が入る。花被片は倒披針形、長さ42~50㎜×幅5~15㎜、外側と内側は薄ライラック色、ほとんどが白色で細い脈がある。内花被片と外花被片の色とサイズはほぼ同じ。喉部は無毛、白色または淡白黄色。花糸は長さ3~6㎜、無毛、白色または淡黄色。葯は長さ10~15㎜、黄色。葯隔は明瞭ではない。花柱は黄色または橙色で、少なくとも3本の枝があり、葯と同じかそれより長くなる。蒴果は楕円形、長さ約40㎜、大きな柄は地面より上に出る。種子は楕円形、長さ5~6㎜、赤褐色、種沈と縫合線が目立つ。花期は10~12月。2n=8, 10, 12。
品種) KPPZ 90107
19 Crocus danfordiae Maw クロクス・ダンフォルディアエ
トルコ原産。トルコ固有種。標高1000~2000mの開けた場所、背の低い草の牧草地、藪の下、明るい森の端などに生える。属の中で花が最も小さい。
多年草、球茎は薄皮が非常に硬く、基部の薄皮の輪が目立つ。葉は3~5枚つき、上面の白線が目立ち、開花期には花の高さ以上になる。花は非常に小さく、長さ約1.5㎝、明るい黄色、白色、または非常に明るい青色。花被片の外側には非常に薄い点線があり、ときにシミがより目立ち、ほとんど見えないこともある。花被筒は花被片よりわずかに暗色。花はしばしば黄色と白色(クリーム色)が一緒に発生する。花柱は橙赤色、3分岐し、高さはしばしば葯の中央に達する。柱頭は3岐があり、各部分は非常に短く、先端は幅広になる。葯、花糸、喉部は黄色。花期は2~3月。
20 Crocus duplex Weston クロクス・デュープレクッス
synonym Crocus pictus (Sabine) Steud.
オーストリア、チェコスロバキア、ハンガリー、イタリア、ポーランド、ウクライナ、ユーゴスラビア原産。英名はwoodland corcus , early crocus。石灰岩の丘陵地帯に生える。多数の異名がある。
多年草、高さ10㎝。葉はほぼ花の高さまで、中脈が白色。花は淡ラベンダー色、基部は白色。外花被片の3枚に淡い褐色がかった黄色の輝きを放つことが多い。花被筒は白色。雄しべは3本、葯は橙黄色。花柱は柱頭が短く3分岐し、橙黄色、ほぼ葯の高さと同じ。花期は2~3月。
品種) 'Pickwick' , 'Pictus'(縁が濃紫色) , 'Pink Pictus' , 'Remembrance'
21 Crocus etruscus Parl. クロクス・エトルスクス
イタリア原産。英名はTuscan Crocus。標高600mまでの落葉樹林や草原に生える。
多年草、高さ5~10㎝。球茎は扁球形(flattened globose)、上部は平らで、薄皮が繊維状粗い網目模様になる。基部の周りには星形の二次薄皮が形成される。葉は花と同時に現れ、幅が異なる3~4枚が出る。花は高さ8~10cm、ライラック色~ラベンダーブルー色、外花被片はしばしばバフ色~クリーム色で、暗色の脈がある。花柱は3分岐し、柱頭は橙赤色、通常葯より高くなる。葯は花の中心から離れて開き、花粉を放出する。2n=8。花期は2~4月。自家不和合性で同じ球茎の花の間で受粉が起こっても生存可能な種子は生産されない。
品種) 'Rosalind' , 'Zwanenburg'
22 Crocus flavus Weston キバナサフラン
ブルガリア、ギリシャ、ルーマニア、トルコ、ユーゴスラビア原産。英名はyellow crocus, Dutch yellow crocus, snow crocus。開けた草地や疎林に生える。
球茎(cormus)は凹んだ球で基部が平ら形(depressed-globose, flattended at base)、直径10~20㎜。薄皮(tunic)は膜質、基部に平行な繊維があり、薄皮の首は長さ70~100㎜、鱗片葉の残骸があり、基部の薄皮は平滑で、放射状に繊維がある。基部の輪は無い。鱗片葉は4~5個つき、褐色。葉は4~6(~8)枚つき、密にパピラまたは縁毛があり、ときに無毛、緑色、幅2.5~4 ㎜、下面の溝は平滑で、刺は狭い三角形、上面の白線は幅が葉幅の1/5以下。前出葉は無い。花は芳香があり、直径5~6㎝。。苞と小苞は薄褐色または白色、褐色の斑点がある。小苞は狭い。花被筒は白色または黄色、ときに上部が紫色になる。花被片は均等、長さ25~35㎜×幅6~12㎜、倒披針形または倒卵形、鈍形または尖鋭形、薄黄色または暗橙色。外花被片はときに褐色の条線や斑点があり、基部が帯紫色または灰色になり、まれに縞模様が花被片の上部に伸びる。内花被片と外花被片は同色。喉部は黄橙色、通常無毛。花糸は長さ3~7㎜、無毛または有毛、黄色または橙色。葯は長さ8~15㎜、先に向かって先細り、黄色。葯隔は淡黄色または不明瞭。花柱は3分岐、葯の中央に向かって分岐し、枝は短く、うねがあり、黄橙色で、葯よりも短い。蒴果は楕円形、長さ16~30㎜、成熟すると大きな柄が地面より上に出る。種子は球形、直径約3㎜、蒴果が最初に裂けるときはピンク色で、次に褐紫色になり、種沈と縫合線が目立つ。花期は3~4月または秋。2n=8。
品種) 'Concolor' , 'Disectus' , 'Geel'(Gold crocus), 'Lacteus' , 'Lutescens' , 'Sulphureus Concolor'
ハイブリッド品種) Crocus x luteus[=Crocus x stellaris](angustifolius xflavus)
'Golden Yellow'('Mammoth Yellow'='Dutch Yellow')2n=3x=14
'Stellaris'(2n=10)
23 Crocus gargaricus Herb. クロクス・ガルガリクス
トルコ原産。匍匐枝(stolon)により増える。
球茎(cormus)はほぼ球形(subglobose)、ときに卵形、直径10~15 mm。薄皮は粗い網状で、繊維は基部に向かって平行になる。薄皮の首は繊維質で非常に短い。基部の輪は無い。鱗片葉は3~4 個、銀色。葉は3~4枚、無毛、緑色、幅1~2㎜、下面には溝があり、うねは無く、上面の白線の幅は葉幅の1/3に相当する。前出葉はない。苞は紙質、白色、小苞はない。花被筒は淡黄色、基部はわずかに緑色。花被片は長さ15~37㎜×幅8~15㎜、すべての花被片は黄色、内花被片は外花被片よりわずかに小さい。喉部は無毛、花被片よりわずかに暗色。花糸は長さ3~5㎜、暗黄橙色、密にパピラがあるか、または毛がある。葯は長さ10~12㎜、暗黄色、多少、平行な縁があり、先端は丸く、円鋸歯があり、まれに鋭形。葯隔は不明瞭。花柱は葯の中央付近の位置で3分岐し、各枝の上部はわずかに縁飾りがあり、ほとんどが葯の下で終わり、まれに葯の高さで終わる。蒴果は短い楕円形、長さ約10~15 mm、大きな柄は地上のすぐ上にある。種子は球形、直径約2㎜、暗褐色、種沈と縫合線は不明瞭。花期は4~5月。2n=30。
24 Crocus goulimyi Turrill クロクス・ゴウリミー
synonym Crocus goulimyi subsp. leucanthus (B. Mathew) B. Mathew
ギリシャ原産。英名はfall crocus。標高300~750mの古いオリーブ畑、イチジク農園、石の多い場所、岩場に生える。
球茎は卵形(ovoid)、幅1.5~2㎝、薄皮は革質。葉は花とともに~花後に出て、4~6枚つく。花は高さ12㎝まで、長い筒部があるボウル形、淡~濃ライラックパープル色または白色、内側はより淡色。花被筒が細長く長く、喉部は白色、花被片は内花被片は淡色で、外花被片よりやや短い。葯は柱頭と同色。柱頭は3分岐し、黄色~橙色。花期は10~11月。
品種) 'Agia Sofia' , 'Albus’, HK 1989/35 , 'Leucanthus' , 'Mani White'
25 Crocus hadriaticus Herb. クロクス・ハドリアティクス
ギリシャ原産。標高 250 ~ 1500 m の開けた低木地、岩や石の多い場所に生える。
球茎はほぼ球形、直径約2㎝、薄皮は細かい網繊維状。葉は開花時に5~9枚ある。花は純白色[ときに淡ライラック色(subsp. parnonicus)]、ゴブレット形、花被筒は白色、上部の外側が帯紫色まなることもあり、喉部は黄色、基部は赤い染みがある。花柱は3分岐し、赤色~赤橙色、葯よりかなり高くなり目立つ。雄しべは3本、花糸は白色。葯は黄色。花期は9~10(12)月。
品種) 'Annabelle' , 'Bowles's Early' , 'Crystal' , 'Elysean Pearl' , 'Indian Summer' , 'Jumbo' , 'Purple Eye' , 'Purple Heart', 'Tom Blanchard'
26 Crocus heuffelianus Herb. クロクス・ヘウフェリアヌス
FSU(カルパチア山脈)南西部、西ヨーロッパ原産。湿った牧草地や開けた場所、または海岸や松林の境界に生える。
多年草、高さ12~25(~32)㎝。球茎は卵円形、直径1.2~2.4㎝、薄皮は平行繊維状、先の網目は不明瞭、基部の輪はない。前出葉は無い。鱗片葉は2~3(~4) 個あり、白色。葉は2~3枚つき、開花時は花より短く、後に長くなり、幅2.8~4.4㎜。苞はあり、小苞は無い。花は直径6㎝以下、1~2個つく。花被片はすみれ色~紫色で、まれに淡色、花被片(tepals)の先端に V 字型またはハート型の斑紋がある。喉部の内部には毛が生えているのが目立つ。花糸は白色。葯は黄色で、葯隔は白色。柱頭は葯の上に突き出ており、赤橙色で、3個のへら形の広い裂片に分裂し、各裂片には不明瞭な歯がある。蒴果は楕円形、長さ12~14㎜×幅7~10㎜。種子は丸く、赤褐色、直径1.8~2.6㎜、縁が明瞭、わずかに発達した種沈がある。花期は3~4(6)月。
品種) 'Brian Duncan' , 'Carpathian Wonder' , 'Dark Eyes' , 'Dark Wonder' , 'Drina Marvel' , 'Graecus' , 'Harry Hay' , 'Krasno Polje' , MBAC 93 , 'Michael's Purple' , 'National Park' , 'Purple Eyes' , 'Shock Wave' , 'Silvery Wonder' , 'Snow Princess' , 'Tatra Shades'
27 Crocus imperati Ten. クロクス・インペラティ
イタリア原産。英名はEarly Crocus。
球茎は卵形から亜球形(まれに梨形)、幅(6~)10~22(~24)㎜、長さ(7~)11~22(~24)㎜。薄皮は膜質糸状、繊維が平行で、しばしばかすかに網目状になり(特に先端に向かって)、まれにやや紙質になる。鱗片葉は通常 3~5個で膜質だが、通常は弱い帯緑色の脈と草質の先がある。葉は無毛で暗緑色、開花時にすでに存在し、最初は曲がり、開花時に倒れ、長さ(6.5~)9~39(~49)㎝×幅(1.2~)1.5~3.7(~4.7)㎝。花茎は前出葉がある。花は1~3(~5)個、春咲き、芳香が無く、小苞が1個ある。苞と小苞は鋭形~尖鋭形、ときに二股になり、白緑色。花は長さ(4.5~)5.6~20.0(~23.0)cm、花被筒は帯白色、先に紫色の縞がある。内花被片は卵形~披針形、先は円形~鈍形(ときに尖鋭形)で、長さ(23~)27~45(~48)㎜×幅(9~)12~22(~25)㎜、一様にライラック色からすみれ色(まれに紫がかった色から白色)である。外側の花被片は内側の花被片とほぼ同じだが、通常わずかに狭く長く、内側は内側の花被片と同色だが、外側ははるかに明るく(淡いライラック色~帯白色、まれにアイボリー色)、濃い紫色の不規則な縦縞がある。喉部は橙色~帯黄色、毛はない。葯は外側に裂開する。雄しべの花糸は長さ(5~)6~12(~15)㎜で、葯の半分~同長、葯は長さ(9~)11~18(~19)㎜である。柱頭は房状へりがあり、橙色~帯赤色、雄しべより短いかまたは長い。蒴果は長楕円形~楕円形で、成熟すると地面の高さかそれ以上に達し、長さ10~30㎜×幅5~13㎜。種子は帯赤色~淡褐色で、ほぼ球形で、長さ2~4mm、翼が明瞭で、花冠がある。花期は(1~)2~3月。果期は4~6月。2n=26
品種) 'De Jager'
28 Crocus isauricus Bowles クロクス・イサウリクス
synonym Crocus biflorus subsp. isauricus (Siehe ex Bowles) B.Mathew
トルコ原産。Crocus biflorusの亜種と分類されていた。
球茎(cormus)は球形または扁球形、直径14~19㎜。外側の薄皮は革質、内側の薄皮は柔らかく、幅広のセグメントに分かれ、セグメントは一般に隙間がない。薄皮の首は長さ2~5㎜、硬く、三角形に分裂し、ときに硬い剛毛状になる。基部の輪は幅広で硬く、鋸歯状になる。鱗片葉は3個つき、銀白色、ときに先端が褐色になる。葉は開花時には見えず、花より長く、3~7枚つき、無毛、緑色または灰緑色(dusky-green)、幅1~2㎜、下面に溝があり、1~2本の突出があり、上面の白線は幅が葉幅の1/3以上ある。前出葉は無い。苞と小苞は狭く、銀白色、まれに先端が帯褐色になる。花被筒は下部が白色、上部が淡黄色~無色、青色または紫色、または紫色~褐紫色の縞模様がある。花は萼形、全ての花被片の内側は藤青色、暗紫青色、ときに暗色の脈があり、または斑点がない。外花被片は長さ20~33㎜×幅5~14㎜、外面は青紫色、黄色、象牙色、バフ色または薄藤色、紫色または灰紫色のそばかすがあり、条線があり、密に紫色の羽状脈または脈があり、基部に斑点はない。内花被片は長さ18~32㎜×幅5~13㎜、外側は白色、まれに細かいほこりがあり、青紫色または密に藤青色で、基部に淡い斑点があり、帯褐色または帯青色のまだらになる。喉部は無毛、暗黄色~橙色。花糸は長さ4~8㎜、黄色、橙色、無毛またはパピラがある。葯は長さ5~16㎜、矢状、尖鋭形~円形、鈍く、黄色、ときに黒色。葯隔は広く、淡黄色、灰色または黒色。花柱は3分岐し、岐は橙色~赤色、長さ3~10㎜、先は広がるかトランペット状になり、葯の先端より短く、または長い。蒴果は長さ20㎜×幅9㎜・以下で、先に小突起があり、基部はバフ色で、地表面から高さ3~5㎝にある。種子は大きく、丸いものから細長いものまであり、長さ3.5㎜×幅3㎜・以下、褐色またはピンク褐色、種沈は大きく、目立ち、縫合線は小さくて曖昧。花期は2~4月。2n=12。
品種) 'Spring Beauty'
29 Crocus korolkowii Maw & Regel クロクス・コロルコウィー
アフガニスタン、カザフスタン、キルギス、パキスタン、タジキスタン、ウズベキスタン原産。英名はcelandine crocus。標高600~2600mの砂礫地や草地に生える。
球茎は直径1~2㎝、ほぼ球形。外側の薄皮(tunics)は多数に裂けて分かれ、それぞれが離れた平行繊維を持ち、内側の薄皮は膜質。鱗片葉は3~5個つき、白色、ときに先端に褐色、緑色、または帯紫色の脈がある。葉は花と同時に出て(synanthous)、長さ(7~)10~20㎝×幅0.1~0.25㎝、緑色、無毛または縁がザラつく。花序は花が1~3~5個つく集散花序。苞と小苞は鱗片葉から伸び、長さ約4~10㎝。花は芳香があり、春咲き(vernal)。花被筒は長さ(3~)5~10(~13)㎝、黄色、帯紫色、または銅色。花被片は6個あり、2輪につき、均等または内花被片がわずかに短く、先が鈍形、長さ2~3.5㎝×幅0.6~1.2㎝、楕円形~倒披針形、ほぼ鋭形~鈍形。雄しべは3本、花糸は長さ4~6㎜、無毛または基部にやや毛がある。葯は長さ8~13㎜、黄色。花柱は葯の上端と同じか、それより長く、3分岐し、3本の細長い柱頭の枝(腕)に分かれ、広がったパピラのある柱頭で終わる。蒴果は長さ1.2~2.1㎝、円筒形で、成熟すると地上レベルまたはそのすぐ下になる。種子は長さ約3㎜、ほぼ球形または楕円形または三角形、赤褐色、2n=20。花期は2~3月。[Flora of Pakistan]。
品種) 'Agalik' , 'Albus' , 'Dark Throat' , 'Golden Nugget' , 'January Gold' , 'Kiss of Spring' , 'Lemon Queen' , 'Lucky Number' , 'Mountain Glory' , 'Snow Leopard' , 'Spring Cocktail' , 'Unicoloratus' , 'Varzob' , 'Yellow Prince' , 'Yellow Princess' , 'Yellow Tiger'
30 Crocus kosaninii Pulevic クロクス・コサニニー
synonym Crocus kosaninii f. albidus Randjel.
ユーゴスラビア、セルビア原産。
球茎は凹んだ卵形(depressed ovoid)、薄皮が繊維状、先が網状、基部は平行状。花はライラック色、喉部は黄色。花糸は黄色。2n=14。花期は3~4月。
Crocus kosaninii は、黄色い喉と黄色い花糸で他の近縁種と簡単に区別できる。自由に開花し、種子がよくつき、屋外で自由に成長し、非常に丈夫だが、最も厳しい冬の間に、枯れ、わずかな球根だけしか残らないこともあった。夏の間の高温で乾燥した保管を必要としない。
品種) 'April View' , 'Dutch Yellow' , 'Yellow Giant'
31 Crocus kotschyanus K.Koch クロクス・コチアヌス
synonym Crocus zonatus J.Gay ex Klatt
トルコ、シリア、レバノン原産。
球茎(cormus)は扁球形または凹んだ球形、通常は直立し、直径10~30㎜、長さ5~15㎜。薄皮は薄い膜質、不明瞭な繊維状、基部で繊維が平行になり、上部が網状になる。薄皮の首は薄皮の短く尖った部分からなる。基部の輪は無い。鱗片葉は3~4個、白色。葉は春に現れ、4~6枚つき、緑色、無毛、幅1.5~4㎜。葉の溝はうねがなく、竜骨は広い。葉上面の白線は幅が葉の幅の約1/3、またはわずかに広い。前出葉がある。苞と小苞は膜質、白色、鱗片葉のわずかに上にある。小苞は舌状、苞に隠れる。花被筒は白色~わずかに帯黄色、または帯緑色のしみがある。花は香りがよく、淡ライラック色~淡青ライラック色、通常は花被片が暗色で、平行な脈が内面に明瞭にあり、外面ではほとんど見えない。花被片は長さ30~45㎜×幅5~18㎜、均等、倒卵形または倒披針形、先は円形、鈍形、尖鋭形、または鋭形、ときに外花被片は先端が丸く、内花被片は鋭形。喉部は毛があり、帯白色または象牙色、各花被片の基部に2個の黄色の斑点があり、ときに斑点が結合して黄色の輪を形成する。花糸は長さ3~8.5㎜、白色または淡黄色、無毛またはパピラがある。葯は長さ7~20㎜、象牙色~白色。葯隔は白色~象牙色、不明瞭。花柱は3分岐し、まれに先に縁飾りがありまたは葯と同長またはそれより長く、短~長の2次枝に分岐する。蒴果は帯白色、長円形または楕円形、長さ11~30㎜×幅6~8㎜、成熟すると地面から3~4㎝上になる。種子は球形~楕円形、直径2~3㎜、淡褐色、種沈は小さく、縫合線がごく狭く、種皮は平滑。花期は9~10(~11)月。2n=8。
品種) 'Albus' , MT 4532 , 'Reliance'
32 Crocus laevigatus Bory & Chaub. クロクス・ラエビガトゥス
ギリシャ、クレタ島原産。Early Spring Crocus。石の多い、低木林に生える。
球茎の薄皮は革状、平滑、かなり光沢があり、ヘーゼルナッツに似ている。薄皮の古い層は先が尖った歯のように裂ける。花はライラック色または白色、普通、外側に羽毛状の濃色の脈があり、脈のないものもある。葯は白色。柱頭は数回、分岐し、枝は糸状、橙色~黄色。花期は11~2月。2n=26。
Crocus laevigatus は、ギリシャ南部とクレタ島に限定された、秋に花を咲かせる近縁種の3種(Crocus boryi, Crocus laevigatus, Crocus tournefortii)の中で、通常最も遅く開花する種である。この列 (series Laevigati)の種は、白い葯と、数回分岐した糸状の橙色または黄色の柱頭の枝が特徴である。
品種) 'Albus'
【類似種】
(1) Crocus boryi J.Gay クロクス・ボリー
ギリシャ本土西部と南部、イオニア諸島、クレタ島最東端に生息する。
球茎の薄皮は縦の繊維状である。花は、通常白色、多くの C. laevigatus に特徴的な、外側の花被片に暗い羽毛状の模様があることはまれ。どちらの近縁種も C. laevigatus よりかなり大きい。2n=30。
品種) 'Brimstone'
(2) Crocus tournefortii J.Gay クロクス・トウルネフォルティー
キクラデス諸島、カルパトス島、ロードス島、クレタ島北東海岸に生息する。
球茎の薄皮は縦の繊維状である。花は、浅いお椀形の青みがかったライラック色、一度開くと決して閉じない。2n=30。
品種) 'Albus' , 'Fontenayi'
33 Crocus longiflorus Raf. クロクス・ロンギフロルス
イタリア、シチリア島原産。英名はlong-flowered crocus, yellow-throated crocus。
球茎は凹んだ球形(depressed-globose)、薄皮は細かい繊維質で、網状。葉は幅1~3㎜、開花時にはあるが、時には非常に短い。花は1~2個つき、ライラック色~紫色、しばしば外側に暗色の脈がある。喉部は黄色で、無毛またはまばらに軟毛がある。前出葉(prophyll)はある。小苞はない。苞は膜質、白色、先が緑色がかり、脈があり、鱗片葉(cataphylls)からよく突き出ている。花被筒は長さ5~16㎝、黄色、ときに紫色の縞がある。花被片は長さ2.2~4.3㎝×幅0.7~1.6㎝、倒披針形または倒卵形、先は鈍形~ほぼ鋭形。葯は黄色。花柱は橙赤色、まれに黄色、雄しべより短いかまたは雄しべを超えるまでの長さ、3分枝し、枝は広がり、先端が房状へり(fimbriate)または裂片状になる。蒴果は長さ1.2~1.5㎝、楕円形。種子は茶色で、ほぼ球形、種阜=種沈(strophiole)は不明瞭。花期は10~11月。2n=28。
品種) 'Primrose Warburg'
34 Crocus malyi Vis. クロクス・マリー
ユーゴスラビア原産。英名はMaly crocus。標高1000mまでの草原や松林に生える。英国王立園芸協会のガーデン メリット賞を受賞。日当たりがよく水はけのよい場所で育ち、栽培しやすい。
多年草、高さ10~15㎝。球茎の薄皮は平行な繊維状。葉は緑色、3~5枚、開花時に出る。花は白色、喉部は黄色。外花被片の外側の基部には帯褐色の斑点がある。花柱は明るい橙色。花期は3~4月。
品種) 'Ballerina' , 'Sveti Roc'
35 Crocus mathewii Kerndorff & Pasche クロクス・マテウィー
トルコ原産。トルコ南西部の山地に生える。
球茎(cormus)は中央が凹んだ球形、基部が平らで、直径13~32㎜。薄皮は平行な繊維で、先がわずかに網目状になり、首の長さは15~30㎜、主薄膜の細長い繊維からなり、基部の輪は無い。鱗片葉は2~4個つき、銀白色、上端が帯褐色になる。葉は4~10枚つき、無毛またはまばらに縁毛があり、暗褐灰色(taupe)、下面の溝はうねがなく、葉の端は下向きに巻き、上面の白色の線は幅が葉の幅の半分の幅で、開花の初めに現れ、開花の終わりの花よりも長くなる。前出葉がある。苞と小苞は銀白色、紙質、苞はごく小さい。花被筒は白色またはライラック色で、暗ライラック色の縞模様~全体に暗紫色になり、基部のみが淡色になる。花は蜂蜜の香りがあり、花被片は白色~淡藤色、ほぼ同長、卵形~倒卵形、ときに披針形、先は鈍形~鋭形、ときに外花被片は鋭形になり、内花被片は円形、基部のしみ(斑点)は暗紫色。外花被片は長さ21~30㎜×幅8~15㎜。内花被片は長さ19~28㎜×幅7~13㎜。喉部(目)は紫色~藍色。花糸は長さ3~4㎜、白色~紫色、無毛。葯は長さ10~12㎜、暗黄色。葯隔は帯白色~黄色。花柱は暗橙色~赤色、先が3枝に分かれ、通常は葯より長く、ときに葯と同長で、まれに葯の先端のすぐ下にある。蒴果は楕円形、長さ21㎜×幅11㎜・以下、バフ色、先がほぼ鋭形、先端に短い柱頭があり、成熟すると地表面からわずか~ほぼ2~5㎝上にある。種子は大きく、球形~わずかに角があり、直径は4㎜以下、暗褐色~紫褐色、種沈と縫合線は明瞭、小さい。種皮にしわがある。花期は11月。2n=16。
品種) 'Alicia' , 'Brian Mathew' , 'Dream Dancer' , 'Pink Princess'
36 Crocus mazziaricus Herb. クロクス・マジアリクス
synonym Crocus cancellatus subsp. mazziaricus (Herb.) B.Mathew
ギリシャ、エーゲ海諸島、トルコ、アルバニア、ユーゴスラビア原産。英名はautumn crocus。
球茎(cormus)は直径15~30㎜。薄皮は硬い網状繊維を備え、薄皮の首は硬い繊維で束ねられ長さ20~25㎜以下、わずかに湾曲し。基部に輪は無い。鱗片葉は3~4個つき、白色、ときに上部は帯緑色になる。葉は開花時に始まり、短いままであるか春にのみ現れ、4~6枚つき、暗灰緑色、無毛、幅2~3㎜、下面の溝は広く、うねが3~4本ある。葉の上面の白線は幅が葉幅の約1/2~1/3である。前出葉は無い。苞と小苞は均等ではなく、苞の先端がはみ出る。花被筒は全体が白色~帯緑色、または上部に紫色~帯褐色の縞がある。花は芳香があり、薄い~暗藤色、内側は明るい青紫色、喉部に向かって薄くなり、わずかに暗い脈がある。花被片は長さ25~50㎜×幅10~17㎜、倒卵形または倒披針形、鈍形~鋭形。外花被片は、外側が濃くまたは暗色で、内側がかすかに縞模様になる(barred)。内花被片外側に短い縞模様がある。喉部は無毛~まばらにパピラがあり、緑白色~淡黄色、決して橙色にはならない。花糸は長さ3~10㎜、密に毛があり、帯白色~淡黄色。葯は長さ17~22㎜、黄色。葯隔は淡黄色。花柱は多数分枝し、レモンイエロー色~薄橙色~暗橙色、または暗橙赤色を帯び、枝の長さは非常に多様である。蒴果は楕円形、長さ25㎜×幅8㎜・以下、しばしば紫色を帯び、成熟すると地表面から2~4㎝上になる。種子は楕円形~円形、長さ3㎜まで、暗褐色~赤褐色または黒色、縫合線は同色、種沈は明瞭、色は薄い。花期は9~11月。2n=16。
品種) Dbs 92-11 , Dbs 93-03 , Menalo' , 'Parnassus' , 'Pilion' , 'Rendina'
37 Crocus minimus DC. クロクス・ミニムス
synonym Crocus insularis var. minimus (Redouté) Herb.
synonym Crocus minimus var. corsicus J.Gay
イタリア、コルシカ島、サルディニア島、カプライア島原産。ドイツに帰化。標高1500mまでの岩場または砂地に生える。
多年草、球根植物、高さ8~15㎝。球茎の薄皮が平行な繊維状。葉は3~5枚つき、濃い緑色長さ5~10㎝×幅1~1.2㎜、糸状、縦に白い線が入る。花は単生または2~3個つき、花被筒は長さ6~8㎝、帯白色~帯紫色。花被片は長さ5~7㎝×幅1.5~2㎝、へら形、ライラック色または紫色、外側はバフ色(淡黄褐色)で紫色の縞模様があり、しみ状に融合してまだらになることもある。柱頭は3分岐し、黄色または橙色。葯は長く、黄色。花期は1~4月。
品種) 'Bavella' , 'Spring Beauty'
38 Crocus mouradi Whittall クロクス・モウラディ
synonym Crocus flavus subsp. dissectus T.Baytop & B.Mathew
地中海沿岸地域原産。Crocus flavusの亜種に分類されていた。
球茎(cormus)は直径15㎜までの凹んだ球形、土壌の奥深くに入り、薄皮(tunic)は膜質で、平行な繊維が目立ち、基部の輪は無い。鱗片葉は3~4個つき、長く、褐色、薄皮の首に似ていて、硬く、宿存性。葉は開花の初めは短く、終期に花より長くなり、3~7枚つき、暗緑色、幅2.5~4㎜、通常端にのみ縁毛があり、まれに全体に毛がまばらになり、溝は下面で広く開き、平滑、縁はわずかに下向きで、うねは無く、上面の白線は幅が葉幅の1/5。前出葉は無い。苞と小苞は膜質、白色、通常は褐色の斑点やそばかすがあり、小苞は非常に小さく、線形、苞の中に隠れる。花被筒は帯白色~淡黄色で、上部に帯紫色または帯褐色の斑点がある。花は芳香がある。花被片は長さ15~30㎜×幅5~10㎜、両輪が均等、倒披針形または倒卵形、鈍く、ほぼ鋭形~鋭形、色は均一、明るいまたは濃い鮮やかな黄色、ときに基部がわずかに灰褐色を帯び、喉部は通常は不明瞭、内花被片の色よりわずかに暗色、ときにより暗くなり橙色の色合いになる。花糸は長さ5~10 ㎜、薄黄色~暗黄色、通常は無毛かわずかにパピラがある。葯は花糸の長さ~2倍の長さがあり、暗黄色、基部の裂片は長く、鋭形。葯隔は象牙色~薄黄色、通常、明瞭。花柱は6本または多数分枝し、枝は黄色~橙色、まれに白色または帯白色、細く、葯と同長、まれにわずかに長い。蒴果は長さ27㎜×幅8mm・以下、先は丸く、明るい帯褐色、ときに薄紫色の色合いになり、成熟すると地表から高さ0~2cmになる。種子は球形、直径は3㎜以下、暗赤褐色、しわがあり、種沈はよく目立ち、縫合線が明瞭で、翼がある、花期は2~3月。2n=8。
品種) 'Dutch Yellow' , 'Yellow Giant'
39 Crocus nivalis Bory & Chaub. クロクス・ニバリス
synonym Crocus sieberi subsp. sublimis (Herb.) B.Mathew
synonym Crocus sublimis Herb.
synonym Crocus atticus (Boiss. & Orph.) Orph.
ギリシャ原産。ドイツに帰化。乾燥したギリシャの低木林(phrygana)、草原、森林に生える。
多年草、球茎は小さく、薄皮は細かい網状。葉は開花時に成長し、直立し、2~7(~10)枚つき、線形、幅1.5~6㎜、中脈が白色で目立ち、花時に花より低い。花は1~3個つき、ライラック青色~紫色、濃青色、または純白、先が濃色、喉部が黄色、その中間が白色。花被筒は紫褐色。花被片は卵形~披針形、先は通常は鈍形。雄しべは3本、葯は線形、黄色。花柱は1本、上部で3裂し、柱頭は3岐、先が広がり、橙色。果実は蒴果。
品種) 'Michael Hoogs Memory' , 'Tricolor'
40 Crocus neapolitanus (Ker Gawl.) Loisel. クロクス・ネアポリタヌス
synonym Crocus vernus var. neapolitanus Ker Gawl.
synonym Crocus vernus subsp. neapolitanus (Ker Gawl.) Asch. & Graebn.
イタリア、ユーゴスラビア原産。標高1500~2800mの森林の伐採地と山の牧草地、ときに石の多い場所に生える。Crocus vernus の亜種とも分類され、基本種(subsp. vernus)は花が普通、白色、花被片は長さ15~35(50)㎜×幅4~12㎜、花柱が雄しべより明らかに短い。2n=8, 16。
球茎はほぼ球形~卵形、薄皮は細かい平行または網目の繊維状。鱗片葉は下部に2~3枚つき、白色。葉は2~4個つき、線形、直立し、花と同じ長さになり、幅(2)4~8㎜、緑色で白色の中脈がある。花被は通常紫色、薄紫色で、ときに暗色の脈が入る。花被片は長さ(25)30~55㎜×幅9~20㎜。花柱はほとんどの場合、雄しべと同じかまたはそれ以上の長さがある。蒴果は楕円形、長さ15~20㎜。種子は球形、直径2.5~3㎜、帯赤色~褐色、小さい種沈がある。2n=8。
品種) 'Croatia', 'Oradea'
41 Crocus niveus Bowles クロクス・ニベウス
ギリシャ原産。ペロポネソス半島東部および南部の固有種。英名はNiveus crocus, snow crocus, white crocus。標高50~750mの 石の多い斜面、低木林、岩の多い土壌、耕作されていない畑および耕作された畑の境界に生える。
球茎の薄皮は細かい網繊維状。葉は4~8枚、開花時に存在し、中脈は白色。花は大きく、普通、白色、たまに、淡ライラック色、喉部は黄色、花被筒は紫褐色。雄しべは3本、葯は線状矢じり形、黄色。柱頭は橙色~橙黄色、多数の細い枝に分岐し、雄しべよりかなり長い。2n=28。花期は10~11月。
品種) 'Cape Matapan'
42 Crocus nudiflorus Sm. クロクス・ヌディフロルス
フランス・スペイン原産。標高5-2350mの牧草地や牧草地、森林の伐採地に生える。
球根は長さ8~15㎜×幅6~17㎜、ほぼ球形または梨形、通常は匍匐茎がある。内側の薄皮は紙質、外側の薄皮は繊維状で平行な繊維を持つ。葉は3~4枚つき、春に発育し、開花時には存在せず、長さ30㎝以下×幅2~4㎜。鱗片葉がある。苞ははっきり突き出し、膜質、白色または緑色を帯びる。小苞は無い。花は1~3個つき、鐘形。花被筒は長さ(50)100~220(290)㎜、先がライラック色または紫色を帯びる。喉部は無毛または細かいパピラの毛があり、白色またはライラック色。花被片は長さ30~60㎜×幅9~20㎜、楕円形から倒披針形、鈍形、薄紫色に強く染まる。雄蕊糸は白っぽいか淡い青色。黄色い葯。花柱は雄しべと同じかそれより長く、短く細い枝に開き、橙色。蒴果は長さ30~40㎜×幅7~8㎜、狭い楕円形。種子は褐色、楕円形、種阜(strophiole)は分化が低いい。2n=48。
品種) 'Orlà'
43 Crocus olivieri J.Gay クロクス・オリビエリ
マケドニア、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア、ギリシャ、トルコ原産。
球茎(cormus)は卵形(ovoid)、直径8~19㎜。薄皮は膜質、基部が厚く、基部で裂け、三角形の歯または平行な繊維がある。薄皮の首は鋭形、三角形の繊維状で、長さ5㎜以下。基部の輪は無い。鱗片葉は3個、膜質、白色、先に帯緑色の斑点がある。葉は通常花序の花より短いかまたは長く、1~5枚つき、縁は通常縁毛があり、ときに無毛~密に毛があり、暗緑色、幅1.5~7㎜、下面の溝は広く、開き、うねは無く、上面の白線は細く、葉幅の幅の1/5程度まで。前出葉は無い。苞と小苞は膜質、白色~銀白色、均等、または小苞は狭い。花被筒は黄色~褐紫色、または帯白色の地に紫色の斑点または縞模様がある。花は通常、橙黄色または淡黄色で、単色だが、まれに外花被片の外面に帯褐の縞や斑点がある。花被片は長さ15~35㎜×幅4~12mm、楕円形、倒披針形または倒卵形、先が鈍形~鋭形。両花被片が等しいか、内花被片がわずかに短い。喉部は無毛または毛があり、黄色~橙色。花糸は長さ3~7㎜、無毛、またはときに毛があり、黄色、まれに上半分または全体が紫色になる。葯は長さ6~15㎜、黄色。葯隔は黄色または帯紫色。花柱は葯よりわずかに短く~わずかに長く、6枝があり、枝は細く、黄色または橙色、ときに先端が帯白色になる。蒴果は長円形、鋭形、長さ10~17㎜×幅5~7㎜、バフ色、上部に紫色の斑点があり、成熟すると地表面から1~4cm上にある。種子は長円形、長さ4㎜×幅2㎜・以下、暗チェリーレッド色、ほぼ帯黒色、種沈は大きく、扁平、縫合線は小さく、両方とも種子と同色。花期は2~4月。2n=6。
品種) 'Little Tiger'
44 Crocus pallasii Goldb. クロクス・パラシー
ギリシャ、東エーゲ海諸島、クリミア半島、ルーマニア、ユーゴスラビア、ブルガリア、トルコ、レバノン・シリア、パレスチナ原産。英名はpallas crocus, autumn crocus。標高150~2000mに生える。
球茎(cormus)は扁球形、直径10~35㎜。薄皮は細かく網状繊維または絹毛状の網状繊維である。薄皮の首は長さ2~6cm、主の薄皮は絡み合い、長い網状繊維がある。薄皮の輪は無い。鱗片葉は3~5個、白色~わずかに帯緑色、帯褐色または薄帯褐色の斑点がある。葉は(5~)10~17個つき、縁と竜骨には縁毛またはパピラがあり、灰緑色、幅2㎜まで、縁はよく外向きに曲がり、1本のうねがあり、竜骨は広く、上面に葉幅の1/3~1/4の幅の白線がある。葉は開花の終わりに見られる。前出葉は無い。苞および小苞は膜質、白色、銀色~ピンク色または帯褐色。小苞はごく小さい。花被筒は様々、白色~紫色、ときに条線がある。花は帯白色~淡藤色~紫色で、しばしば紫色の濃い縞模様が入る。花被片は長さ24~50㎜×幅4~19㎜、楕円形、倒披針形または倒卵形、先端は尖鋭形、まれに円形。外花被片は均一に色付けされ、内花被片ほど明確ではなく、淡色の縞模様があり、まれに暗色になる。内花被片は外花被片よりも短くて狭い。喉部は有毛~無毛、帯白色~淡藤色または暗紫色。花糸は長さ2~6㎜、白色~黄色、無毛。葯は長さ10~21㎜、暗黄色。葯隔は帯白色~アイボリー色。花柱は通常葯より短く、3分岐し、枝は長さ3~15㎜、赤色、ときに橙色、ときに先端が扇状になる。蒴果は楕円形または長い円筒形、長さ30㎜×幅10㎜・以下、麦わら色または銀色で、ときにピンク色を帯び、成熟すると地面から4~5cm以下の高さにあり、先端は丸い。種子は丸みを帯び、長さ5㎜×幅3㎜・以下、黒褐色または褐色、種沈はよく発達し、暗色、鋭形、縫合線は明瞭。花期は9~11月。
品種) 'Ariasos'
45 Crocus pestalozzae Boiss. クロクス・ペスタロッザエ
トルコ原産。標高90~180mの野原や丘に生える。
球茎(cormus)は球形、直径10~15㎜。薄皮は硬い革質、薄皮の内側は膜質、基部に切れ込みが入る。薄皮の首は長さ5㎜までで、不規則な三角形の裂片がある。基部の薄皮の輪は明瞭、縁はほぼ真っ直ぐで、ときに輪の上部に小さな多少三角形の突起がある。 鱗片葉は3~5個つき、緑色、濃い緑色の脈は有または無。葉は花よりも遅く、開花の初めに花の基部に3~8枚あり、無毛または縁毛があり、緑色、幅0.5~2.5㎜、下面に溝があり、うねが1~2本のある。葉の上面に葉幅の1/4~1/3の白線が入る。前出葉はない。苞と小苞は同長、白色、先が緑色を帯び、古くなると褐色がかる。花被筒は白色または帯黄色~帯緑色、上部に汚れた黄色の斑点があり、紫色を帯び、ときに花の下部に褐色または帯緑色の条線がある。花被片は長さ15~31㎜x幅4~11㎜、対生し、披針形または楕円形、鈍形または鋭形、紫青色、まれに外側に羽毛状脈模様があり、内側は紫青色で、先が暗くなり、基部に斑点がある。内花被片は外花被片より長さが2㎜短く、幅が1㎜狭く、同じサイズではほとんどなく、通常は色がわずかに明るく、喉部は透明な黄色で、まばらに毛があり、まれに帯灰色になり、基部には外花被片と同様の褐色~灰色の斑点がある。花糸は長さ3~10㎜、下半分はわずかに粗く~毛があり、黄色、基部に帯黒色の斑点があって帯黒色になり、または薄紫色の斑点がある。葯は長さ6~10㎜、黄色。葯隔はアイボリーイエロー色または帯白色。花柱は葯より短いかまたは長く、3分岐し、枝は黄色~橙色、長さ4~6㎜、先がわずかに広がる。蒴果は細長く、約・長さ15㎜x幅6㎜、淡麦わら色。種子は球形、直径1~2㎜、暗赤褐色、種沈は鋭形、縫合線は目立たない。花期は2~3月。
品種) 'Caerulescens'
46 Crocus pulchellus Herb. クロクス・プルケルス
synonym Crocus constantinopolitanus Hertoldt ex Maw
マケドニア、セルビア、ブルガリア、ギリシャ、トルコ原産。北部バルカン半島からトルコ北西部に分布する。
球茎(cormus)は凹んだ球形(depressed-globose)、直径7~15㎜。薄皮は革質~膜質、基部に亀裂がほとんど無く、薄皮の首は長さ3~5㎜、三角形の裂片があり、基部の輪は革質で、縁は不規則、少数の短い歯がある。鱗片葉は3~4個つき、紙質、白色、先に帯褐色~帯紫色の模様または斑点がある。葉は春のみ、3~5枚つき、無毛、緑色、幅4~5㎜、下面の溝は開いていて幅が広く、うねは無く、上面の白線は幅が葉の幅の約1/5。前出葉は無い。苞および小苞は膜質、白色または先に赤褐色のそばかすがあり、同長または小さい。花被筒は象牙色~帯緑色で、ときに上部にかすかに灰色または紫色の斑点や縞模様がある。花は蜂蜜の香りがあり、青ライラック色で、縦に暗色の脈があり、外側は内側よりも脈が少ない。花被片はほぼ均等、長さ18~50㎜×幅8~20㎜、倒卵形、先が鈍形または円形。外花被片は内花被片よりも脈が少なく、側脈は無いかまたは弱く、内花被片の脈は暗く、まれに薄い側脈がある。喉部は橙色で、上部は狭く、縁に黄色が散在し、無毛またはわずかに毛がある。花糸は長さ3~6㎜、黄色~橙色、密に毛がある。葯は長さ7~13㎜、白色。葯隔は狭く、白色。花柱は葯の下かわずかに上になり、多数分枝し、枝は黄橙色~赤色、通常先は広がらない。蒴果は楕円形、長さ15~25㎜×幅約8㎜、成熟すると地表面から2~5㎝の高さになる。種子は球形、直径2~2.5㎜、橙褐色~暗紫赤色、種沈があり、縫合線は小さく、種皮は平滑。花期は9~11月。2n=12。
品種) 'Albus' , 'Inspiration' , 'Michael Hoog' , 'Zephyr'
47 Crocus reticulatus Steven ex Adam クロクス・レティクラタス
synonym Crocus luteus M.Bieb.
イタリア、クロアチア、セルビア、マケドニア、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、クリミア、コーカサス、トルコ原産。標高2000mまでの森や牧草地に生える。
多年草、高さ12~18㎝。球茎はほぼ球形、直径1~1.5㎝。薄皮は革質、粗い網繊維状。鱗片葉は帯白色の鞘状。葉は2~3枚つき、線形で直立し、白色の中脈があり、花より低い。花は小さく白色又はライラック色。花被筒は白色、外花被片は地色はライラック色またはバフ色、外面に3~5本の紫色の目立つ脈がある。雄しべは3本、葯は長さが花糸の長さの2倍、柱頭より低い。果実は蒴果。種子は直径約2㎜。花期は1~3月
47-1 Crocus x reticulatus (reticulatus × angustifolius)ハイブリッド
品種) 'Ego' , 'Little Amber'
48 Crocus salzmannii J.Gay クロクス・サルズマンニー
synonym Crocus serotinus subsp. salzmannii (J.Gay) B.Mathew
synonym Crocus salzmannianus Herb.
synonym Crociris speciosa Schur
アルジェリア、モロッコ、スペイン原産。英名はSouthern Autumn Crocus。標高3500mまでの草地や岩場、または明るい森林に生える。栽培しやすく、日当たりの良い場所では一般に耐寒性がある。紫色の種類は特に庭に適しており、白い花を咲かせる美しい変種もいくつかある。
球茎の薄皮は膜質、平行繊維に分かれる。ときに匍匐茎がある。花はライラック色又は紫色を帯び、ときに濃色の脈がある。通常、花と共に5~7枚の葉がつく。花は高さ10~15㎝、ライラック色または紫色。花期は秋。
品種) 'Albus' , 'Albustel Torcal' , 'El Torcal' , 'Erectophyllus'
49 Crocus sarichinarensis (Rukšāns) Rukšāns クロクス・サリチナレンシス
synonym Crocus flavus subsp. sarichinarensis Rukšāns
トルコ原産。英名はyellow crocus , Dutch yellow crocus。
球茎(cormus)は扁球形、直径10~12㎜。薄皮(tunic)は平行な繊維であり、外側の薄皮は上部に広がり、基部でバンド状の裂片になり、薄皮の首は長くて硬く、主な薄皮の繊維と宿存する鱗片葉により作られ、基部の輪(rings)は無い。鱗片葉は4~5個つき、硬く、長く、褐色で、首に似ている。花序の花の基部にある花序の葉、または長い4~7枚の葉は無毛、暗緑色、幅1~1.5㎜、下面に溝があり、突起はない。葉の上面の白線は葉幅の1/5程度と細い。前出葉(profile)は無い。苞と小苞は白色、しばしば帯褐色の斑点がある。大きな苞は通常狭い線形で、小苞を取り囲んでいるが、小苞が苞よりも長い場合もある。花被筒は灰色や帯紫色の斑点や縞模様があり、まれに全体が帯白色になる。花は通常黄色の色合いで、まれに白色や象牙色になり、外花被片は灰色~帯褐色の斑点、そばかすがあり、影の縞模様がある。花被片は長さ21~34㎜×幅10~16㎜、倒卵形~倒披針形、先は鈍形~鋭形、内花被片と外花被片は同じサイズ、外花被片はわずかに狭く、内側の部分は同色、外花被片の外面には帯褐色の斑点、そばかす、または条線がある。内花被片の内側と外側が同色で、暗色、灰色または帯褐色の斑点があり、基部に斑点がある。喉部は無毛、体花被片よりも暗い黄色または橙黄色である。花糸は長さ3~5㎜、無毛からパピラがあり、淡黄色~暗黄色。葯は長さ10~17㎜、黄色。葯隔は不確定。花柱は常に葯の先端の下で終わり、同じになることはまれで、3分岐する。枝は再び2またはそれ以上分岐し、先端はわずかに広がり~短く2裂する。蒴果は楕円形、長さ20㎜×幅7㎜・以下、成熟すると地面から高さ3~4㎝になる。種子は球形、しわがあり、褐色~暗褐色、種沈(caruncle)と縫合線は明瞭、色は薄い。花期は3月。
50 Crocus sativus L サフラン
ギリシャ原産。チェコスロバキア、イラン、イタリア、モロッコ、パキスタン、スペイン、トルコ、西ヒマラヤ(ロシア)に帰化。中国名は番红花(fan hong hua) 、英名は saffron , saffron flower , saffron crocus。花柱と柱頭が黄色の染料(saffron dye)として、薬用、料理に使われる。
球茎(cormus)は大きく、直径32㎜まで、底は平ら、薄皮は薄く、淡黄色~黄褐色、細かい網状の繊維、基部に輪は無い。鱗片葉は4~5個つく。葉は5~11枚つき、長さ15~20㎝、幅2~3㎜、縁には縁毛があり、竜骨がある。前出葉がある。苞と小苞があり、小苞は苞よりもずっと小さい。花は1、2個つき、芳香がある。花被筒は紫色。花被片は倒披針形、鈍形、長さ40~50㎜×幅約20㎜、紫色~明るいライラック紫色、暗色の脈があり、基部近くに暗色の斑点があり、喉部は毛があり、帯白色~紫色。雄しべは長さ約2.5㎝。花糸は長さ7~11㎜、無毛、帯紫色。葯は長さ5~20㎜、黄色、先がわずかに曲がり、尖る。葯隔は不明瞭。花柱は葯の基部または中央の高さで、3分岐し、枝は暗赤色で柔らかく垂れ下がり、各枝は長さ25~32㎜。蒴果や種子は無い。花期は10~12月。2n=3x=24。
品種) 'Albus' , 'Pallasii'
51 Crocus sieber J.Gay クロクス・シエベル
クレタ島原産。英名はCretan crocus , snow crocus。観賞用に栽培され。野生化する。
小型の多年草、高さ7~10㎝。球茎の薄皮が細かい網繊維状。葉は上面に白線がある。花は白色~ライラック色、ときに外花被片の外側に紫色の斑紋があり、のど部は黄色。雄しべは鮮やかな橙色。花柱は分岐し、鮮やかな橙色。花期は3~4月
品種) 'Albus' , 'Bowles's White' , 'Chiara' , 'Cream Diamond' , 'Firefly' , 'George' , 'Hubert Edelsten' , 'Ronald Ginns' , 'Spring Beauty' , 'Vardousia' , 'Violet Queen'
ハイブリッド品種) Crocus 'Midas Touch'(sieberi ×cvijicii or chrysanthus)
52 Crocus speciosus M.Bieb クロクス・スペキオスス
ブルガリア、北コーカサス(ロシア)、トランスコーカサス(ジョージア、アゼルバイジャン、アルメニア)、トルコ原産。英名はfall crocus。
球茎(cormus)は凹んだ球形(depressed-globose)、直径18㎜まで。薄皮は革質~膜質、基部で輪状に裂け、裂片の幅は少なくとも2㎜あり、まれに裂ける。薄皮の首は古い鱗片葉の薄皮からなる。基部の輪はときに短い、細かい歯がある。鱗片葉は少なくとも3個あり、先端が帯緑色、褐色に変わることがある。葉は3~6枚つき、縁は無毛~まばらにパピラがあり、灰褐緑色(taupe-green)、幅2~5㎜、下面に溝があり、うねはない。葉上面の白線は幅が葉幅の1/3以上ある。葉は花後の秋に現れることがある。前出葉は無い。苞と小苞は等しくなく、白色~わずかに帯緑色。小苞は短い。花被筒は帯白色~薄帯緑色、または黄緑色、上部には灰褐色~帯紫色のそばかすがあり、ときにかすかに縞模様がある。花は淡紫色で、脈が目立つ。花被片は倒卵形~倒披針形、先は鈍形または鋭形、不均等で、内花被片は外花被片より短く、幅が広く、内側はライラック色で、暗色の脈が有または無。外花被片は長さ48~57㎜×幅18~23㎜、外側は薄~暗ライラック色、通常は不明瞭な脈があり、下部の黄色の基部の斑点に小さな褐色の線がある。内花被片は長さ42~55㎜×幅20~25㎜。喉部は無毛、白色または黄色、まれに縁が灰色または帯褐色になる。花糸は長さ4~10㎜、無毛、白色、黄色~橙黄色。葯は長さ11~35㎜、暗黄色。葯隔はアイボリー色。花柱は多数分岐し、枝は黄色~暗橙色、各枝は再分岐し、葯より長く、ときに短くなる。蒴果は黄色または淡褐色、長さ25~30㎜×幅約10㎜、地表面から3~4㎝上にある。種子は不規則な球形、直径2~2.5㎜、暗赤褐色、種沈は小さく、目立つ、暗色、縫合線は不明瞭。花期は10~11月。2n=8, 10。
品種) 'Aino' , 'Aitchisonii' , 'Albus' , 'Artabir' , 'Cassiope' , 'Conqueror' , 'Globosus' , 'Lithuanian Autumn' , M&P , 'Oxonian' , 'Pollux' , 'Trotter'
53 Crocus suaveolens Bertol. クロクス・スアベオレンス
synonym Crocus imperati subsp. suaveolens (Bertol.) B.Mathew
イタリア原産。草地、低木林に生える。
球茎は卵形、薄皮が平行な繊維状。花はライラック色、外花被の外側がバフ色、暗紫色の斑紋がある。小苞が無い。
球茎は卵形~ほぼ球形(まれに梨形)、幅(7~)9~18(~21)㎜、長さ(7~)8~17(~19)㎜。薄皮(tunics)は膜質~糸状、繊維は平行で、しばしばかすかに網目状になり(特に先端に向かって)、まれにやや紙質。鱗片葉は通常 3~5個つき、膜質だが、通常は弱い帯緑色の脈と草質の先端を持つ。葉は無毛、暗緑色、開花時に拡大し(通常、直立~弓状直立で、花茎より短いかまたは同長)、長さ(3~)6~21(~28)㎝×幅(1.3~)1.5~3.5(~4.7)㎜。花茎には前出葉がある。花は1~3(4)個つき、春咲き、芳香があり、小苞はない。苞は鋭形~尖鋭形、ときに二股になり、白緑色。花は長さ(4.5~)6.6~18.9(~26)㎝、花被筒は帯白色、先端に紫色の縞がある。内花被片は卵形~披針形、先は円形~鈍形(ときに鋭形)、長さ(22~)26~40(~48)㎜、幅(9~)10.8~21(~24)㎜、一様にライラック色~すみれ色(まれに帯紫色~白色)である。外花被片は内花被片とほぼ同じ大きさだが、通常わずかに幅が狭く長く、内側は内花被片と同色だが、外側ははるかに明るく(淡いライラック色~帯白色、まれに象牙色)、濃紫色の不規則な縦縞がある。喉部は黄色(ときに帯黄緑色または非常に淡い黄色)で、毛はない。葯は外向きに裂開する。雄しべの花糸は長さ(4.2~)5.2~9.3(~12)㎜、葯の長さの半分~同じくらい [長さ(6.3~)9.3~16(~19)㎜]。柱頭は房状へりがあり(fimbriate)、黄橙色で、葯とほぼ同色。葯は雄しべより長いかまたは短い。蒴果は長楕円形~楕円形で、成熟すると地表かそれ以上の高さになり、長さ12~25㎜×幅5~12㎜。種子は帯赤色~淡褐色、ほぼ球形、長さ2~4㎜、明瞭な翼があり、種沈がある。2n=26。花期は2~3月。果期は5~6月。
品種) 'De Jager' , 'Jager'
54 Crocus suworowianus K.Koch クロクス・スウォロウィアヌス
synonym Crocus kotschyanus subsp. suworowianus (K.Koch) B.Mathew
トルコ、トランスコーカサス(ジョージア、アゼルバイジャン、アルメニア)原産。標高600~1800mの山地には生える。
球茎(cormus)は扁平または凹んだ球形、扁平で、直径20㎜まで。薄皮は平行な繊維状、膜質。薄皮の首は小さく、不明瞭で、先は非常に短い。基部の輪は無い。鱗片葉は3~4個、白色。葉は春にのみ現れ、4~6枚つき、無毛、緑色、幅3~3.5㎜、下面の竜骨の幅は非常に広く、溝は平滑、上面に葉幅の1/3~1/2の幅の白線が入る。前出葉は無い。苞は白色、鱗片葉を超えてほとんど、またはまったく突き出ない。小苞は幅が狭く、苞の中に隠れる。花被筒は白色~帯黄色。花は芳香が無く、漏斗形、内側はアイボリー色、ときに基部は紫色になり、放射状の脈があり、脈が花被片の端に達することもあるが、まれに薄藤色で暗色の脈がある。花被片は長さ20~45㎜、外面は白色~淡藤色、通常は脈がないか、内面と同様に薄色の脈があり、狭披針形、先は円形~鋭形、ときに細いうねがありる。喉部は無毛、白色~淡黄色、通常は花被片の基部に2個の淡黄色の斑点がある。花糸は長さ3~7㎜、無毛、帯白色~黄色。葯は長さ9~15㎜、アイボリー色、レモンイエロー色~淡黄色、花粉はアイボリー色~黄色。葯隔は通常黄色で、葯よりも暗色。花柱は3分岐し、枝は黄色~橙色、各枝は先に縁飾りまたは房がつく。蒴果は長さ12~27㎜×幅6~7㎜、鋭形、灰白色~バフ色(黄褐色)味を帯び、成熟すると地表面から2.5~3㎝上にある。種子は細長く、長さ約3㎜×幅1.5~2㎜、暗赤褐色、種沈は小さく、目立ち、黒褐色、縫合線は小さい。花期は(8~)9~10月。2n=20。
品種) 'Reliant'
55 Crocus thirkeanus K.Koch クロクス・ティルケアヌス
synonym Crocus gargaricus subsp. herbertii B.Mathew
トルコ原産。標高1450~1900mの高山に生える。
球茎(cormus)は球形~ほぼ球形、直径5~7㎜、匍匐茎があり、匍匐茎は長さ5~10cm、小球茎(cormuscles=cormlet)を形成する。小球茎は長さ4~5㎜×幅1~2㎜、米に似ている、薄皮(tunic)は細い平行繊維をもつ。薄皮の首は長さ2㎜、主薄皮の細長い繊維からなる。基部の輪(ring)は無い。鱗片葉(cataphylls)は3個で、白色、上端は帯褐色または帯緑色。葉は花序の花より短く、2~3枚つき、無毛、幅2~4㎜、下面には溝があり、うねは無く、上面に葉幅の1/4~1/3の幅の白線が入る。前出葉は無い。苞は銀色、帯緑色の脈があり、鱗片葉から出る。小苞はない。花被筒は淡黄色から緑黄色。花は淡または明るい黄土色~橙黄色、外側には装飾がない。花被片は倒卵形~倒披針形、先が鈍形または鋭形、すべての花被片は内面と外面が同色、内花被片だけに喉の付近に目立つ暗色の脈がある。外花被片は長さ26~32㎜×幅10~15㎜。内花被片は長さ24~30㎜×幅8~14㎜。喉部は無毛、黄土色~橙黄色で、花被片よりも暗色、縁は光線状。花糸は長さ3~5㎜、無毛からわずかにパピラがある。葯は長さ5~9㎜、黄色。葯隔はわずかに淡黄色または無色。花柱は通常葯の下にあるか、まれに同じ長さになり、3分岐し、まれに単一、枝は黄色~橙色で、長さは様々で、先がわずかに広がり、短い縁飾りがある。蒴果は小さく、半円形~楕円形、長さ10~12㎜×幅4~8㎜、黄褐色、成熟時には地面から2~3㎝上にある。種子は球形、長さ2~3㎜×幅1.5~2.5㎜、暗褐色、しわがあり、種沈は小さく、目立ち、暗色、縫合線はほとんど不明。花期は3~5月。2n=30。
56 Crocus tommasinianus Herb. クロクス・トンマシニアヌス
コスタリカ、クロアチア、セルビア、ボスニア、モンテネグロ、ブルガリア、ハンガリー原産。英名はsnow crocus, woodland crocus, early crocus, Tommasini's crocus。丘陵地帯や森林地帯に生える。 観賞用として栽培され、野生化している。
球根性多年草、栽培種の中では小型で、高さ約7.5㎝。球茎は凹んだ球形(depressed-globose)、直径10~15㎜、薄皮が細かい繊維状、ほとんど平行。葉は2(~3)枚、基部につき、細い線形。小苞は無い。花は淡ライラック色~淡紫色、長さ2~4㎝で細長く、花被筒は白色、花被片は6枚、長さ22~43㎜×幅12~18㎜、淡銀ライラック色~赤紫色または白色(f. albus)、外側の花被片は先端が銀色や暗色で重なることがある。喉部に毛がある。花糸は長さ6~8㎜、白色。葯は長さ10~14㎜。花柱は淡橙色。花柱の枝は3本、細く、葯の高さより下。花は夜に閉じて朝に開くが、雨の日や曇りの日は閉じたままになることが多い。蒴果は長さ10~14㎜×幅8~9㎜。種子は長さ2.2~4㎜、赤褐色。種沈がわずかに発達する。花期は2~3月[冬~春咲き]。2n=16。
品種) 'Albus' , 'Balkan White' , 'Barr's Purple' , 'Bobbo' , 'Bosnian Pearl' , 'Claret' , 'Eric Smith' , 'Hummingbird' , 'Lilac Beauty' , 'Lilac Striped' , 'Lyn's Pink' , 'Petrovac Rose' , 'Pictus' , 'Pink Pictus' , 'Roseus' , 'Rubinetta' , 'Ruby Giant' , 'Taplow Ruby' , 'Wandering Minstrel' , 'Whitewell Purple' , 'Wisley Wine' , 'Yalta'(hybrid)
57 Crocus veluchensis Herb. クロクス・ベルチェンシス
アルバニア、ブルガリア、ギリシャ、ユーゴスラビア原産。標高1000~2500mの高山の草原に生える。
球茎は薄皮が細かい網目状になる。葉は花とともに出て、2~4枚つき、幅2~5㎜。花は高さ約10cm、淡いライラック色~暗ライラック色、花被片の先端が黒色になる。喉部は白色。花柱は黄色または橙色で、たまにほとんどが白色で、先端近くで分岐して広がる。花期は春。C. sieberi subsp. sublimis によく似ているが、喉部が黄色。2種が重なる場所では、推定上の雑種が見られる。2n=20、24、26、46。
品種) AB 9504 , 'Nights of Rhodop' , 'White Night'
58 Crocus vernus (L.) Hill ハナサフラン
synonym Crocus albiflorus Kit. ex Schult.
synonym Crocus vernus subsp. albiflorus (Kit. ex Schult.) Ces.
オーストリア、チェコスロバキア、ハンガリー、イタリア、バルカン諸国、ポーランド、ルーマニア、ウクライナ原産。
球茎は凹んだ球形(depressed-globose)、直径約4㎝、球茎の薄皮は細かい繊維状。薄皮の首は長さ10㎜まで、たまに長く、やや剛毛があり、主な薄皮の繊維が不規則に伸び作られる。花は春に3週間ほど咲き、夜に閉じ、朝に開き、曇りや雨では開かない。葉は数個、根生し、幅3~8㎜、線形、基部に鞘があり、葉表は中央に淡色の筋がある。葉は花が終わると長く伸び、数週間語に休眠状態になり、黄色くなる。花は普通1個つき、高さ10~15㎝。花被は直径4~5㎝、杯形~鐘形、紫色~青色又は白色、ときに濃色のストライプが入り、筒部は花被片より淡色にならず、無毛~短毛がある。喉部は毛があり、ほとんど白色、ときにわずかに灰色または薄紫色を帯びる。花被片は6個、長さ24~32㎜×幅9~12㎜。外花被片は白色または青色、または濃い縞模様があり、V字形のしみは無い。内花被片はときに縞模様が多くなる。子房下位。雄しべは3本、直立し、長さ(5~)7~10㎜。葯は黄色、長さ(5~)8~12㎜、通常花糸と同長。雌しべ1個、花柱は普通、橙色~赤色、先は3裂し、柱頭は房状、普通、橙色~赤色。果実は蒴果、長さ15~20㎜。2n=16。花期は3~4(7)月[春咲き Spring Crocus]。冬~春咲きの品種もある。
多くのハイブリッドがつくられている。ハイブリッドはDutch crocus、 large flowering crocus、 giant crocus、spring crocusと呼ばれ、黄色の花もある。Dutch crocus、giant Dutch crocusはCrocus vernusの選抜又はハイブリッドである。
品種) 'Albion' , 'Balkan White' , 'Blue Mountains' , 'Blue Ribbon' , Carpathian Wonder'(Heuffelianus Group), Croatia' , Dark Eyes'(Heuffelianus Group), 'Delnice' , 'Drina Marvel' , Early Perfection' , 'Enchantress' 'Fantasy' , 'Flower Record' , 'Generaal Vetter' , 'Glory of Limmen' , 'Golden Yellow' 'Graecus , 'Grand Maitre' , 'Grandiflorus' , 'Haarlem Gem' , Heuffelianus' , 'Jeanne d'Arc' , 'Kathleen Parlow' , 'King of the Blues' , 'King of the Striped' , 'King of the Whites' , 'Krasno Polje' , 'Lavender Symphony' , 'Little Dorrit' , 'Michael's Purple' , National Park'(Heuffelianus Group) , Negro Boy' , 'Oradea' , 'Paulus Potter' , 'Peter Pan' , 'Pickwick' , 'Pordoi' , 'Purple Apex' , 'Purple Desire' , 'Purpureus Grandiflorus' , 'Queen of the Blues' , 'Remembrance' , 'Silver Coral' , 'Sky Blue' , 'Snowstorm' , 'Striped Beauty , 'Tatra Shades' , 'Twilight' , 'Twinborn' , 'Vanguard' , 'Variabilis' , 'Victor Hugo' , 'Wandering Minstrel'(tommasinianus x vernus), 'Whale Shark' , 'White Christmas' , Yellow Mammoth'
59 Crocus versicolor Ker Gawl. クロクス・ベルシコロル
フランス、イタリア原産。英名はSpring Crocus。標高1200mまでの岩場に生える。
多年草、球茎は長い卵形(elongated-ovoid)、球茎の薄皮は膜質、古くなると平行の繊維状。下部の葉は2枚の仏炎苞にのみ退化し、上部の葉は3~7枚つき、緑色、全縁、線形、細く幅1.5㎜未満、長さ15㎝までで花より短く、白色の縦線が入る。花は高さ10㎝まで、ゴブレット形(goblet-shaped)、長さ25~35㎜、花被片6個、ほぼ同形、白色、ライラック色、紫色、しばしば明瞭なストライプが出る。雄しべは3本、橙色。果実は楕円形、 胞背裂開蒴果、3室があり、長さ12~15㎜。種子は不規則な半球形または卵形、長さ2.5~3㎜x幅4~4.5㎜、橙赤色。花期は(1)2~4(5)月。
品種) JMH.8215 , 'Picturatus'
60 Crocus weldenii Hoppe & Fürnr. クロクス・ウェルデニー
synonym Crocus biflorus subsp. weldenii (Hoppe & Fürnr.) K.Richt.
イタリア、クロアチア、ボスニア、セルビア、アルバニア原産。草原、石の多い場所、薄い森林に生える。Crocus biflorusの亜種と分類されていた。
多年草、球茎がある。球茎の薄皮は膜質。花は白色、のど部は黄色にならない。ときに外花被にライラック色~紫色の筋がある。
品種) 'Albus' , 'Fairy' , 'Miss Vain'
61 ハイブリッド
(1) Crocus × fritschii Derganc
オーストリア、ユーゴスラビア原産。 C. duplex × C. vernus. 自然交雑種
(2) Crocus × hybridus Petrovič
ブルガリア、ユーゴスラビア原産。 C. adami × C. chrysanthus 自然交雑種
(3) Crocus × paulineae Pasche & Kerndorff
トルコ原産。
C. abantensis × C. ancyrensis 自然交雑種
(4) Crocus x bornmuelleri Freyn ゴールデンクロッカスハイブリッド
C. biflorus x C. chrysanthusの人工交配種。
品種) 'Artur Klark', 'Wandering Minstrel' (tommasinianus x vernus)
(5) Crocus × cultorum Crocus vernus garden hybrids
英名はlarge Dutch Crocus。
品種) 'Balkan White' , 'Blue Ribbon' , 'Grand Maître , 'Haarlem Gem' , 'Jeanne d'Arc' , 'National Park' , 'Pickwick' , 'Remembrance' , 'Snowstorm'
(6) Crocus × jessoppiae Bowles
C. candidus × C. chrysanthus.の人工交配種。
(7) Crocus × leonidii Rukšāns
C. angustifolius × C. reticulatus.の人工交配種。
品種) 'Early Gold'
(8) Crocus × luteus Lam.
synonym Crocus × stellaris Haw.
C. angustifolius × C. flavus の人工交配種。
品種) 'Golden Yellow' , 'Stellaris'
(9) Crocus × submedius Collins
unplaced
(10) Crocus x goteburgensis 'Tricolor'
C. scardicus x C. pelistericusの人工交配種。
(11) その他ハイブリッド
品種) AHEP 8307 , 'Albidus' , 'Alionka' , 'Aqua' , 'Ard Schenk' , 'Aubade' , 'Autumn Queen' , 'Baconsfield' , 'Big Boy' , 'Bishop' , 'Blizzard' , 'Blue Jay' , 'Blue Ocean' , 'Blue Ribbon' , 'Carpathian Wonder' , 'Celeste' , 'Celia' , 'Charlotte Patti' , 'Dark Eyes' , 'Deep Water' , 'Dutch Yellow' , 'Early Perfection' , 'Ego' , 'Enchantress' , 'Fantasy' , 'Florane' , 'Geel' , 'Giant' , 'Glory of Limmen' , 'Glory of Sassenheim' , 'Golden Mammoth' , 'Golden Yellow' , 'Grand Lilac' , 'Haarlem Gem' , 'Ice Queen' , 'Ivory Princess' , 'Janis Ruksans' , 'Joan of Arc' , 'Karin' , 'Kathleen Parlow' , 'Keith Rattray' , 'King of the Blues' , 'King of the Whites' , 'Large Yellow' , ligusticus 'Millesimo' , 'Lilac Wonder' , 'Little Amber' , 'Little Dorrit' , 'Lune' , 'Mammoth Yellow' , 'Margot' [1912] , 'Margot' Blakeway-Phillips , 'Midas Touch' , 'Myddelton Cream' , 'Nida' , 'Orange Monarch' , 'Panda' , 'Paulus Potter' , 'Peter Pan' , 'Pieta' , 'Pink Goblet' , 'Polar Bear' , 'Pollux' , 'Purple Heart' , 'Queen of the Blues' , 'Rainbow Gold' , 'Saturnus' , 'Scipio' , 'Sky Blue' , 'Snow Leopard' , 'Snowstorm' , 'Spring Pearl' , 'Surprise' , 'Twilight' , 'Twinborn' , 'Uschak Orange' , 'Wandering Minstrel' , 'Waterlily' , 'White Christmas' , 'Willem van Eeden' , 'Yalta' , 'Yellow Giant' , 'Yellow Mammoth'
Crocus
Crocus
Crocus
Crocus
Crocus
Crocus biflorus Mill.
Botanical Journal of the Linnean Society, 2008, 158, 194–214
Karyological study of miscellaneous Crocus (Iridaceae) species
【Crocus chrysanthusの解説】 球茎(cormus)は凹んだ球形(depressed-globose)~卵形(ovoid)、直径10~20㎜。薄皮は硬く、革質、繊維がわずかに細かく、上下に間隔の広い裂片があり、裂片の裂け目は少ない。薄皮の首は長さ5~7㎜、鋭い針状の部分がある。基部の輪は明瞭、歯は長さ1㎜。鱗片葉は3~5個つき、帯白色、上部はときに帯緑色になる。葉は花序の花より短く、3~6枚つき、縁は縁毛があるか無毛、暗緑色、幅約3mm、下面に溝があり、うねが(1~)3~4本ある。葉上面の白線は幅が葉幅の1/3以下。前出葉は無い。苞と小苞は膜質、白色。苞は筒状、小苞は舌状、外側に鱗片葉がある。花被筒は白色、黄色、アイボリー色、青色、縞模様または斑点があることもある。喉部は黄色または白色、ときに帯灰色、無毛。花は黄色、アイボリー色、または白色。花被片は倒卵形~倒披針形、先は鈍形~鋭形。外花被片は長さ17~25㎜×幅6~12㎜、灰色または褐色(ロンズ色)の斑点または縞模様があり、ときに薄青紫色~暗青紫色のそばかすがあり、基部では斑点がより目立つ。内花被片は長さ14~24㎜×幅6~11㎜、外花被片と同色。花糸は長さ4~9㎜、無毛からパピラがあり、黄色または白色。葯は長さ7~12㎜、黄色、ときに黒色の矢印状になり 、基部の裂片は長く、ときに頂端に黒い斑点がある。葯隔は黄色またはアイボリー色。花柱は橙色~赤橙色の枝が3本あり、葯を超え、ときに同長かまたは短くなる。蒴果は楕円形、長さ14~20㎜、成熟すると地面よりも高くなる。種子は楕円形~球形、通常長さ2~3㎜、縫合線と種沈は小さくて目立つ。花期は1~3月。2n=8。
ハナサフランCrocus vernus系統は花が大きく、球茎も直径4㎝あり大きい。葉も幅3~8㎜と広い。
クロッカス属は原種の数が多く、観賞用の品種が多い。現在、よく栽培されているのはゴールデンクロッカス Crocus chrysanthus、キバナサフランCrocus flavus、ハナサフラン Crocus vernus(Dutch crocus)、Crocus tommasinianus(Botanical crocus、Early Crocus)、Crocus sieberi 、Crocus speciosusなどである。Crocus speciosus以外は春咲き。薬用や料理用のサフランは秋咲き。
クロッカス属
family Iridaceae - genus Crocus多年草、球茎(corm)は多数の膜質、革質または繊維質の薄皮(tunic)に包まれる。薄皮は先が首状(tunic neck)になり、基部にときに輪(ring=sannulate tunics)が見られる(section Nudiscapusだけ)。ときに鱗片の腋に小球茎(cormlets)が形成され、花序柄と子房は地下にある。鞘状の鱗片葉(cataphylls)は5個以下つき、膜質であり、地上シュートを包む。葉は花と同時に、または花後に出現し、基部は平らであるか、または上面に溝があり、中央が帯白色の縞になり、下面には平らな竜骨があり、両側に2本の溝がある。花茎はない。花序は1個~多数の花がつく。花は小花柄があり、小花柄は短く、地下にあり、ときに膜質の鞘状の前出葉(prophyll)が基部を抱き、地面から直接出る。苞は膜質で、小苞はないか、または小さくなって膜質である。花被は白色、黄色、ライラック色、暗紫色。花被片は3+3枚で、合弁性(gamophyllous)、筒は長くて狭い、花被片は6個、2輪生、長さは等しいかほぼ等しいか、または内花被片の方が小さい。雄しべは3本、喉部につき、葯は通常矢じり形(arrow-shaped)、花糸より短く、線形で直立する。花糸にときにパピラがある。花柱は1本、3~4本、または多数の枝を持つ。子房は地下にある。小花柄が伸びて、蒴果は地上で成熟する。蒴果は小さく、楕円形~長楕円状楕円形。種子は多数。
世界に約250種が分し、主に地中海沿岸に分布し、中央アジア、中国、中東からパキスタンまで広がる。
クロッカスの栽培の歴史
クロッカスは古くから栽培され、3500年以上の長い歴史がある。初期には薬用や料理用にサフランCrocus sativusが栽培されていた。柱頭を乾燥させると、苦味と干し草のような香りがあり、アポカロテノイドが豊富に含まれる。調味料、香料、染料、薬用に使用される。サフランは遺伝子的に単一形の クローンであり、アジア南西部を起源とし、初期にはペルシャか、ペルシャ近くで栽培されていたと推測されている。栽培サフランの野生の前駆はクレタ島や中央アジアを起源とするCrocus cartwrightianusに似たものと推定されている(Frizzi etal 2007)。C. thomasiiや C. pallasiiも似ていて前駆の可能性がある。現在のサフランは三倍体で、自家不和合性、雄性不稔である。異常形の減数分裂 を起こし、独立して有性生殖ができない。サフロン Crocus sativusはC. cartwrightianusの突然変異体型と考えられ、それは青銅器時代後期のクレタに出現し、人間が C. cartwrightianus種を育て、異常な長い柱頭をもつ種を選び出したものと考えられている。BC.7世紀、アッシリアのアッシリア王の時代にサフランの植物学的な参考書が編纂された。サフランはユーラシア全体にゆっくり、広がり、その後、北アフリカ、北アメリカ、オセアニアまで拡大した。現在の世界生産の中心はイランであり、年収穫量の90%を占める。観賞用のクロッカスは多数の品種が栽培され、特に、Crocus chrysanthu、Crocus speciosus、Crocus tommasinianus、Crocus vernus の4種は多く、主にヨーロッパ西部で19世紀後半~20世紀初めに多くの栽培品種が作り出された。20世紀の初めには中東でプラントハンティングが行われ、いくつかの新種も報告されている。栽培の中心であるオランダでは1991年にすでに100種以上の品種が知られ(Van Sheepen 1991)、2009/2010年には70種以上の品種が366haで栽培されていた。ハナサフラン Crocus vernusの栽培品種は全体の55%を占め、'Jeanne d'Arc'(57ha)、'Flower Record'(42ha)、'King of the Striped'(30ha)。ゴールデンクロッカス Crocus chrysanthusは17%、'Romance'(22.9ha)。Crocus tommasinianusは10%、'Ruby Giant'(21.5ha)。キバナサフラン Crocus flavusは10%を占め、主品種は'Geel'(36.4ha)。これらは全部、春咲きである。
ハイブリッドも多く、Crocus chrysanthus 'Blue Pearl'はCrocus biflorusから誘導されたとされ、'Cream Beauty' はchrysanthusとbiflorusのハイブリッドである。 'Golden Yellowと'Stellaris'はflavusとangustifoliusのハイブリッドである。
類似属はイヌサフラン(Colchicum autumnale)のイヌサフラン属(Colchicum)、サフランモドキ(Zephyranthes carinata)のタマスダレ属(Zephyranthes)などである。
クロッカスの主な種と園芸品種
現在、よく栽培されているのはゴールデンクロッカス Crocus chrysanthus、キバナサフランCrocus flavus、ハナサフラン Crocus vernus(Dutch crocus)、Crocus tommasinianus(Botanical crocus、Early Crocus)、Crocus sieberisなどの春咲きの園芸品種である。秋咲きの品種も様々ある。1 Crocus abantensis T.Baytop & B.Mathew クロクス・アバンテンシス
トルコ原産。英名はspring blooming crocus。
球茎はほぼ球形(subglobose)、直径10~11㎜、薄皮は繊維状の網状、基部の輪はない。鱗片葉は紙質、白色、通常2~3個つく。葉は花序の花より短く、5~10枚つく、無毛、緑色、幅1㎜以下、下面にはうねがなく、溝があり、上面の白色の線は幅が葉幅の1/3である。前出葉はない。苞と小苞は銀白色または帯黄色、ほぼ同長。花被筒(perigone tube)は白色、青色、または帯黄色、ときに上部に紫色の縞模様がある。花被は暗青色またはライラックブルー色。外花被片は長さ22~36㎜×幅6~15㎜、倒卵形~倒披針形、先は鈍形または尖鋭形。内花被片と外花被片は多少、似ている。喉部は無毛、暗黄色、白色の部分がある場合もある。花糸は長さ約5㎜、わずかに粗く、黄色。葯は長さ8~13㎜、黄色、葯隔は黄色。花柱は橙色で、3分岐し、一般に葯より短い。蒴果は円筒形、長さ20㎜以下。長い小花柄は地上には伸びない。種子は長さ3~4㎜×幅約1㎜、暗褐色~黒色、種沈(caruncle)が目立つ。花期は4~5月。2n=8, 16。
品種) 'Azkaban's Escapee' , 'Sky Blue'、'Violet'
2 Crocus aerius Herb. クロクス・アエリウス
トルコ原産。標高2000~2800mの石が多い山地の草地に生える。
球茎は卵形、薄皮は平行繊維状、基部の輪はない。葉は幅2.5㎜、灰緑色。花は高さ5~7㎝、淡青色~濃青色、喉部が黄橙色で淡緑黄色(primrose)の葯とオレンジ色の花柱があり、その周囲はより淡色で、ほぼ白色になり、暗紫色の脈がある。花期は3~4月。
品種) 'Cambridge
3 Crocus alexandri Nicic ex Velen. クロクス・アレクサンドリ
synonym Crocus biflorus subsp. alexandri (Nicic ex Velen.) B.Mathew
synonym Crocus biflorus f. alexandri (Nicic ex Velen.) Stjepanovic-Veselicic
ブルガリア、ギリシャ、ユーゴスラビア原産。英名はAlexandria crocus, Alexandria saffron, Alexandria autumn crocus。山地に生息する種で、乾燥した牧草地や牧草地、間伐された藪の中に生える。以前はCrocus biflorusの亜種や品種などに分類されていた。
多年草、高さ10~18㎝、球茎は球形、薄皮は革質、覆われる。葉は花と同時に現れ、線形、通常は無毛。花は内側が白色、外花被片には外側に3~5本の濃い紫色の縦縞があり、ときに白色、基部のみ紫色になが、幅広の紫色の模様になることもある。花被筒は花被片近くが帯黄色になり、無毛。葯は黄色で、雄しべより長い。花柱は橙色。蒴果は細長く小さい。種子は小さく、黒く、光沢のある楕円形。花期は春。果期は夏。
品種) 'Major'
4 Crocus ancyrensis (Herb.) Maw クロクス・アンキレンシス
トルコ原産。英名はAnkara crocus
球茎(cormus)はほぼ球形(subglobose)[卵形~扁球形]、直径12~15㎜、薄皮(tunic)は粗い網状、薄皮の首は長さ5~10㎜、繊維状または硬い刺すような先端を持ち、基部の輪はない。鱗片葉は3~4個つき、白色。葉は花序の花より短いかわずかに長く、2~6枚つき、幅1~2.5㎜、灰緑色で、縁は無毛またはまばらな縁毛があり、下面に溝があり、2本のうねがあり、上面の白線は幅が葉の幅の1/4~1/3に相当するが、それより広くなることはまれ。前出葉はない。苞と小苞は白色、苞と同等かわずかに小さい。花被筒は黄色、帯紫色、淡黄色で帯紫色があり、または白色。花被片は長さ15~30㎜×幅6~12㎜、ほぼ同長、倒卵形~楕円形、先は鈍形~尖鋭形。すべての花被片の内部は橙色~黄橙色またはすべての部分が明るい黄色、橙色、またはまれに外花被片の外側に暗紫褐色の縞模様がある。内花被片の外側は橙色~黄橙色で、ときに基部に紫褐色の斑点があって基部が暗くなり、喉部は黄色、わずかに濃くなり、無毛またはわずかに毛がある。花糸は長さ2~7.5㎜、黄色、無毛または基部にまばらにパピラがある。葯はみずみずしく(aquiferous)、長さ6~12.5 mm、黄色。葯隔は無色~淡黄色。花柱は黄色または橙赤色~橙色、3分岐し、枝は先が拡張しないか、またはわずかに拡張し、通常は葯の先端より短いかまたは長い。蒴果は楕円形、長さ12~17㎜×幅5~7㎜、長い柄は地上の高さか、または地上からわずかに高い。種子は長さ2~3.5㎜×幅1.5~3㎜、多淡褐色または暗褐色、種沈が宿存し、縫合線は未発達、またはその両方が明瞭。花期は2~5月。2n=10。2n= 6。
品種) 'Golden Bunch'
5 Crocus angustifolius Weston クロクス・アングスティフォリウス
synonym Crocus susianus Ker Gawl.
ウクライナ、アルメニア原産。英名はCloth of Gold Crocus。
球茎(cormus)は卵形、直径11~20㎜、薄皮は膜質、基部が平行な帯で区切られ、薄皮の首は長さ5~6㎜、狭く、鋭い繊維状、基部の輪は無い。鱗片葉は2~4個つき、膜質、白色または緑紫色の斑点がある。葉は開花中に発達するが、花の高さを超えず、2~3(~5)枚つく。葉は緑色、幅4~5㎜、下面と竜骨の角には縁毛があり、ときに無毛で、溝は目立たない。上面の白線の幅は葉幅の1/3。前出葉は無い。苞は白色または銀白色、苞は小苞よりも狭い。花被片は長さ23~35㎜×幅7~10㎜、倒卵形または尖り、内側は明るい黄色。外花被片は外面に濃い紫褐色の縞模様、縞模様が斑点と混在するか、または斑点がある。内花被片は外側が黄色で、基部に緑褐色の斑点がある。花被筒(perigon tube)は通常紫色または褐色で、白地に明瞭な縞模様があり、喉部は無毛、花被片と同色かそれより暗色になる。花糸は無毛、黄色。葯は黄橙色、基部の裂片は鋭形、葯隔は黄色。花柱は黄色または橙色、(8~)12~15分枝し、枝は雄しべと並ぶか、わずかに伸びる。蒴果は円筒形、長さ10~15㎜×幅約5㎜、褐緑色、大きな小花柄が地上で見られる。種子は長円形、長さ約2㎜×幅3~6㎜、赤栗色、種沈があり、縫合線がある。花期は1月~3月。2n=6, 12。
品種) 'Alionka' , 'Berlin Gold' , 'Bronze Beauty' , 'Cloth of Gold' , 'Janis Ruksans' , 'Minor' , 'Nida' , 'Oreanda'
6 Crocus asumaniae B.Mathew & T.Baytop クロクス・アスマニアエ
トルコ原産。
球茎(cormus)は卵形で、上から見るとほとんどがわずかに平らで、直径は20~22㎜。薄皮は非常に薄く、繊維質で、上部は細かいく網目状になり、基部は平行な繊維状になる。薄皮の首は長さ30~40㎜、繊維が細かく、鱗片葉をしっかりと包む。薄皮の輪は無い。鱗片葉は2~3個、白色、紙質、縁は褐色。葉は5~6枚、無毛またはまれに縁毛があり、灰緑色で狭く、幅1㎜、下面に溝があり、うねは無い。上面の白線は葉の幅の1/3より広い。前出葉はある。苞と小苞は等しくなく、白色、膜質、先が狭い。花被は白色または淡藤色で、ときにわずかに脈があり、内花被片はより暗色。外花被片は長さ25~30㎜×幅5~10㎜、外面の基部に暗い斑点が存在することもある。内花被片は長さ24~30㎜×幅4~9㎜、外花被片に似ている。花被筒は白色または淡紫色、ときに上部に紫色の縞模様が入る。喉部は無毛、白色または淡黄色。花糸は長さ2~5㎜、白色または淡黄色、無毛。葯は長さ10~21㎜、黄色。葯隔はアイボリー色または黄色。花柱は下部が黄色で、3分岐するあたりから徐々にオレンジ色に変化する。枝は葯裂片の高さおよび雄しべの上に伸びる。蒴果は楕円形、長さ約22㎜×幅20~10㎜、麦わら色。太い柄は地表から20㎜くらいまで伸びる。種子は楕円形または卵形で、赤色または褐灰色、長さ2.14~2.84㎜×幅1.43~2.40㎜。花期は10~11月。2n=26。
品種) 'Albus'
7 Crocus atticus (Boiss. & Orph.) Orph. クロクス・アティックス
synonym Crocus sieberi var. atticus Boiss. & Orph.
synonym Crocus sieberi subsp. atticus (Boiss. & Orph.) B.Mathew
ギリシャ原産。ギリシャのアッティカ地方の標高1000m以上の山岳地帯の石の多い地域の森林や低木地帯に生える。
球茎の薄皮は粗い網目繊維状。花はライラックブルーまたは紫色、喉部は黄色。花期は3~6月。 品種) 'Amfiklia' , 'Bowles White' , 'Firefly' , 'Ronald Ginns' , 'Stunner' , Vardousia'
8 Crocus autumnalis Mill. クロクス・アウツムナリス
synonym Crocus serotinus Salisb. クロクス・セロティヌス
ポルトガル原産。岩場や砂地、森林に生える。栽培されることはまれだが、温室では比較的よく育つ。
球根は長さ8~15㎜×幅6~15㎜、ほぼ球形、1個つき、まれに匍匐茎がある。薄皮(tunic)の内層は紙質、外層は粗い網目状の繊維からなる。葉は3~4枚、花と同時に基部からロゼット状に地を這い長く延び、線形、長さ(50~)220~250㎜×幅(1)1.5~3.5㎜。鱗片葉(cataphyllus)が存在する。苞は白色、膜質、ときに先が緑色になる。小苞は無い。花は高さ9~13㎝、1または2個つき、直径約4㎝、鐘形。花被筒は長さ30~105(135)㎜、白色、先が薄紫色を帯び、喉部に普通、毛があり、淡いライラック色~濃いライラック色。花被片は長さ23~60㎜×幅6~15㎜、倒披針形、倒卵形または楕円形、薄紫色、ときに黒色(濃色)の脈がある。雄しべの花糸は帯黄色。葯は黄色。花柱は雄しべと同長またはそれより小さく、3本の広がったまたはほぼ分裂した枝があり、先が房状へりまたは分裂し、黄色~橙赤色。蒴果は長さ12~15㎜、楕円形。種子は長さ2~4㎜×幅1.5~3㎜、卵形、褐色、小さな種阜(strophiole)がつく。2n=22, 23, 24, 44。花期は10~12月。
9 Crocus balansae J.Gay ex Maw クロクス・バランサエ
Synonyms Crocus olivieri subsp. balansae (J.Gay ex Maw) B.Mathew
エーゲ海諸島、トルコ原産。
球茎(cormus)は卵形(ovoid)、直径11~20㎜。薄皮は膜質、基部が平行な帯で区切られ、被膜の首は長さ5~6㎜、狭く、鋭い繊維状、基部の輪はない。鱗片葉は2~4個、膜状、白色または緑紫色の斑点がある。葉は開花中に発達するが、花の高さを超えず、2~3(~5)枚つく。葉は緑色、幅4~5 mm。下面と竜骨の角には縁毛があり、ときに無毛、溝は不明瞭、上面の白線は幅が葉幅の1/3。前出葉は無い。苞は白色または銀白色で、苞は小苞よりも狭い。花被片は長さ23~35㎜×幅7~10㎜、倒卵形または尖っていて、内側は明るい黄色。外花被片の外面には濃い紫褐色の縞模様または縞模様が混在しているか斑点がある。内花被片は外側が黄色で、基部に緑褐色の斑点がある。花被筒は通常紫色または褐色で、白地に明瞭な縞模様があり、喉部は無毛、花被片と同色かそれより暗色になる。花糸は無毛、黄色。葯は黄橙色、基部の裂片は尖る。葯隔は黄色。花柱は黄色または橙色、(8~)12~15分岐する。岐は雄しべと並ぶか、わずかに伸びる。蒴果は円筒形、長さ10~15㎜×幅約5㎜、褐緑色、大きな小花柄が土上で見られる。種子は長円形、長さ約2㎜×幅3~6㎜、赤栗色。種沈と縫合線は不明瞭。花期は1~3月。2n=6。
品種) 'Chocolate Soldier' , 'Orange Monarch' , 'Zwanenburg'
10 Crocus banaticus J.Gay クロクス・バナティクス
synonym Crocus iridiflorus Heuff. ex Rchb.
チェコスロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ウクライナ、ユーゴスラビア原産。英国王立園芸協会のAGMを受賞している。
多年草、球根は凹んだ球形(depressed-globose)。葉は幅広で短く、草質、花後に生じ、上面に白色(銀色)のストライプが無い。花は高さ10~25㎝、花被は紫色(violet)又は白色。花被筒は細く長い。内花被片が外花被片より著しく短く、小さな内花被片は3個の大きな外花被片に囲まれる。花期は初秋の9月。
品種) 'Albus'白花 , 'Early Bird' , 'First Snow' , 'John Marr' , 'Snowdrift' , 'Trojanus'
11 Crocus biflorus Mill. クロクス・ビフロルス
Synonyms Crocus annulatus var. biflorus (Mill.) Herb.
Synonyms Crocus biflorus subsp. biflorus
Synonyms Crocus biflorus subsp. pusillus (Ten.) Nyman
Synonyms Crocus biflorus var. communis Sabine
Synonyms Crocus biflorus var. estriatus (Herb.) Tchich.
Synonyms Crocus biflorus var. janii J.Gay
Synonyms Crocus biflorus var. parkinsonii Sabine
Synonyms Crocus biflorus var. stigmatosus Sabine
Synonyms Crocus praecox Haw.
Synonyms Crocus pusillus Ten.
Synonyms Crocus striatus Link
イタリア、シチリア島原産。英名はsilvery crocus , scotch crocus。標高200~3000mの開けた岩の多い斜面、低木林、高山の芝生、まばらな針葉樹林に生える。
球茎は扁球形(flattened globose)、薄皮が膜質または革質、基部には全縁または歯のある輪(ring)を持つ。葉は(3~)4~9 枚つく、合片性、幅0.5~3.5㎜。前出葉はない。小苞はあり、苞と同程度か、はるかに狭い。花被の喉部は淡黄色~濃黄色、無毛または微細なパピラがある。花被片は長さ1.7~3.5㎝×幅0.5~1.3㎝、ほぼ鋭形、鈍形または円形、白色、薄紫色または青色、外側はときに顕著な縞があり、脈、斑点があり、または紫色、濃青色または灰色がかる。花糸は長さ3~7㎜、白色または黄色、無毛または微細なパピラがある。葯は長さ(0.8~)l~1.4㎝、黄色または帯黒色、ときに黄色で黒色の基部裂片があり、ときに黄色で灰色または帯黒色の葯隔がある。花柱は3分岐し、黄色から赤橙色、枝は細いまたは広がる。花期は2~6(~7)月。2n=8。
品種) 'Argenteus' , 'Blue Pearl' , 'Blue Peter' , 'Bowles's Blue' , 'Brimstone' , 'Kittiwake' , 'Miss Vain'(Scotch Crocus) , 'Parkinsonii' , 'Scotch' , 'Serevan'
12 Crocus cancellatus Herb. クロクス・カンケルラツス
トルコ、レバノン、イスラエル、ヨルダン原産。
球茎(cormus)は直径10~15㎜。薄皮(tunic)は明瞭な網目状、繊維は細く、網目の直径は5㎜以下、薄皮の首は針状の繊維状、長さ10~20㎜、基部の輪は無い。鱗片葉は3~4個つき、白色。開花時に葉が鱗片葉の先に見え、4~7枚つき、無毛、灰緑色、幅1~2㎜、下面に溝があり、3本のうねがあり、上面の白色の線は幅が葉幅の1/3ほどで明瞭。前出葉は無い。苞と小苞は白色、膜質、小苞は小さく、苞の中に隠れる。花被片は等しいかほぼ等しく、長さ30~40㎜×幅6~12㎜、倒披針形または狭い楕円形で、通常、鋭形、薄いライラックブルー色、まれに暗色になり条線がある。外花被片は外側に条線があり、ときに斑点と融合する。外花被片と内花被片は外側が似ていて、通常は条線がない。花被筒(perigon tube)は白色、斑点があるか、または3本の紫色の縞模様がある。喉部は白色または淡黄色、無毛または毛がある。花糸は長さ3~6㎜、無毛またはむらのある毛があり、白色または淡黄色。葯は長さ10~15㎜、黄色。葯隔は白色または淡黄色、花柱は多数の橙色の枝をもち、葯を超えるか、まれに葯の高さまで。蒴果は長さ25~30㎜、楕円形、バフ色、上部が紫色で、大きい柄は地上で目立つ。種子は大きく、楕円形、長さ4~5㎜×幅2~3㎜、縫合線と種沈が目立つ。花期は9~11月。2n=10, 12。
品種) 'Albus'
13 Crocus candidus E.D.Clarke クロクス・カンディヅス
トルコ原産。森や低木林に生える。
球茎(cormus)は楕円体、直径約10㎜。薄皮(tunic)は膜質、基部は平行な繊維状。薄皮の首は長さ2~3㎜、狭い裂片になる。基部の輪は無い。鱗片葉は3~4個つき、膜質、白色、上部が緑色。葉は1~2枚つき、縁毛があり、暗緑色で、成熟すると幅8~10㎜になり、下面には溝があり、うねは無く、上面の白線は幅が葉幅の1/3より狭い。前出葉は無い。苞と小苞は膜質で等形、白色または緑色の斑点がある。花被片は長さ20~22㎜×幅6~10㎜、楕円形、先は鈍形、内面は白色、外花被片の外面は白色、灰緑色(taupe-green)で、紫色の斑点があり、ときに斑点は線形になり、まれに明瞭な連続した縞模様になる。内花被片は白色、基部に紫色の斑点がある。花被筒は薄紫色または紫褐色の斑点がある。喉部は黄色、無毛。花糸は長さ5㎜、毛があり、黄色。葯は黄色、長さ9~10㎜。葯隔は白色。花柱は黄色または橙色、約6分岐し、葯と同長またはそれより長い。蒴果は楕円形、長さ15㎜以下、バフ色(黄褐色)、大きな柄は地上に出る。種子は卵形、長さ2~3㎜、褐色、種沈はよく発達し、縫合線は不明瞭。花期は1~3月。
品種) 'Lune'
14 Crocus cartwrightianus Herb. クロクス・カートライトティアヌス
ギリシャ原産。野生サフラン。サフラン用に栽培されるCrocus sativus は本種の品種であるとも考えられている。花と花柱はサフラン(C. sativus)に似ており、サフランと同様に、花柱はサフランの野生源として使用できる。この2種間の密接な関係は非常に明らかであるが、より多くの種が古代の交雑イベントに参加して三倍体のサフラン(2n=24) が生まれたかどうかはまだ不明である。
多年草、高さ5㎝まで。球茎の薄皮は細かい繊維で網状になる。葉と花は同時に生じる。花は薄紫色(ライラック色)または白色で、紫色の脈がある。開花は夜も続く。Crocus tournefortii は夜間も花が開いたままの唯一の他の種であり、分布が重複しているこの2種は、夜飛ぶ昆虫(蛾?)によって受粉されると考えられている。喉部にはひげがある。花柱は葯の基部よりかなり下の、花の喉部で3分裂する。柱頭は明るい赤色、枝は葯よりも高く、花被片とほぼ同じ長さになる。花期は秋~冬。2n=16。
品種) 'Albus' , 'Albus' Tubergen , 'Anaïs' , CE&H , 'Halloween' , 'Marcel' , 'Michel'
15 Crocus chrysanthus (Herb.) Herb. ゴールデンクロッカス
synonym Crocus annulatus var. chrysanthus Herb.
ギリシャ、アルバニア、ブルガリア、旧ユーゴスラビア、ルーマニア、トルコ原産。英名はsnow crocus, golden crocus。
球茎(cormus)は凹んだ球形(depressed-globose)~卵形(ovoid)、直径10~20㎜。薄皮は硬く、革質、繊維がわずかに細かく、上下に間隔の広い裂片があり、裂片の裂け目は少ない。薄皮の首は長さ5~7㎜、鋭い針状の部分がある。基部の輪は明瞭、歯は長さ1㎜。鱗片葉は3~5個つき、帯白色、上部はときに帯緑色になる。葉は花序の花より短く、3~6枚つき、縁は縁毛があるか無毛、暗緑色、幅約3mm、下面に溝があり、うねが(1~)3~4本ある。葉上面の白線は幅が葉幅の1/3以下。前出葉は無い。苞と小苞は膜質、白色。苞は筒状、小苞は舌状、外側に鱗片葉がある。花被筒は白色、黄色、アイボリー色、青色、縞模様または斑点があることもある。喉部は黄色または白色、ときに帯灰色、無毛。花は黄色、アイボリー色、または白色。花被片は倒卵形~倒披針形、先は鈍形~鋭形。外花被片は長さ17~25㎜×幅6~12㎜、灰色または褐色(ロンズ色)の斑点または縞模様があり、ときに薄青紫色~暗青紫色のそばかすがあり、基部では斑点がより目立つ。内花被片は長さ14~24㎜×幅6~11㎜、外花被片と同色。花糸は長さ4~9㎜、無毛からパピラがあり、黄色または白色。葯は長さ7~12㎜、黄色、ときに黒色の矢印状になり 、基部の裂片は長く、ときに頂端に黒い斑点がある。葯隔は黄色またはアイボリー色。花柱は橙色~赤橙色の枝が3本あり、葯を超え、ときに同長かまたは短くなる。蒴果は楕円形、長さ14~20㎜、成熟すると地面よりも高くなる。種子は楕円形~球形、通常長さ2~3㎜、縫合線と種沈は小さくて目立つ。花期は1~3月。2n=8。
ゴルデンクロッカス(Crocus chrysanthus)の栽培種は原種のCrocus chrysanthuからの選抜とCrocus biflorusの数種の亜種やCrocus aeriusとのハイブリッドである。黄色の栽培種が原種からの選抜である。青色や白色のものはハイブリッドやCrocus biflorus.に近い選抜である。Jan Hoog (Van Tubergen nursery) や E.A. Bowlesによって、本格的な選抜やハイブリッドが作り始められ、多くの品種がある。ハイブリッドはCrocus x bornmuelleri (biflorus x chrysanthus) といわれる。
品種) 'Advance' , 'Afyon' , 'Al Jolson' , 'Alionka' , 'Andromeda' , 'Ard Schenk'(内側が黄色で外側が紫青色) , 'Aubade' , 'Bloemfontein' , 'Blue Beauty' , 'Blue Bird' , 'Blue Bonnet' , 'Blue Butterfly' , 'Blue Dream' , 'Blue Giant' , 'Blue Jacket' , 'Blue Jay' , 'Blue Rock' , 'Blue Marlin' , 'Blue Pearl' , 'Blue Peter' , 'Blue Princess' , 'Blue Throat' , 'Brass Band' , 'Bullfinch' , 'Bumble-bee' , 'Buttercup' , 'Canary Bird' , 'Charmer' , 'Constellation' , 'Copenhagen China' , 'Cream Beauty' , 'Crescendo' , 'Cum Laude' , 'Cupido' , 'Dandy' , 'Distinction' , 'Dorothy(Crocus bifloruとのhybrid)' , 'EA Bowles' , 'Early Gold' , 'Elegance' , Elegant' , 'E.P. Bowles' , 'Eyecatcher' , 'Frost Bound' , 'Fuscotinctus' , 'Gladstone' , 'Golden Bunch' , 'Golden Pheasant' , Golden Plover' , 'Golden Yellow' , 'Goldilocks' , 'Goldmine' , 'Gypsy Girl' , 'Glory of Breezand' , 'Goldene Sonne' , 'Goldfasan' , 'Goldilocks' , 'Goldmine' , 'Grand Gala' , 'Grey Lady' , 'Gundogmüs Bronze' , 'Harlequin' , 'Herald' , 'Ivory Glory' , 'Jeannine' , 'Jester' , 'Johan Cruyff' , 'Khaki' , 'Koh-i-Nor' , 'Ladykiller' , 'Lemon Queen' , 'Lentejuweel' , 'Lilette' , 'Lilliputaner' , 'Little Amber' , 'Macedonian Ivory' , 'Magic' , 'Mannequin' , 'Mariette' , 'Marion' , 'Milea' , 'Miss Vain' , 'Monarch' , 'Moonlight' , 'Morning Star' , 'Myddelton Cream' , 'Mystic' , 'Nanette' , 'Nida' , 'Olympiade' , 'Opal' , 'Orange Monarch' , 'Palette' , 'Parade' , 'Paradiso' , 'Plaisir' , 'Prespa Gold' , 'Prins Claus' , 'Prinses Beatrix' , 'Reverence' , 'Rising Sun' , 'Romance' , 'Saturnus' , 'Skyline' , 'Snow Bunting' , 'Snow White' , 'Shot' , 'Siskin' , 'Sky Blue' , 'Skyline' , 'Solo', 'Spotlight' , 'Spring Song' , 'Sulphur Glory' , 'Sunkist' , 'Sunset' , 'Sunspot' , 'Uschak Orange' , 'Symphonia' , 'Topolino' , 'Trance' , 'Uschak Orange' , 'Violet Queen' , 'Warley'('Large Warley White') , 'White Beauty' , 'White Splendour' , 'Winter Gold' , 'Yellow Gem' , 'Yellow Hammer' , 'Yellow Queen', 'Zenith' , 'Zwanenburg Bronze'( Garden Merit)
15-1 Crocus chrysanthus subsp. chrysanthus
synonym Crocus gembosii Rukšāns
ギリシャ、アルバニア、ブルガリア、旧ユーゴスラビア、ルーマニア、トルコ原産。
品種) 'Golden Delight'
15-2 Crocus chrysanthus subsp. multifolius Papan. & Zacharof
synonym Crocus annulatus var. chrysanthus Herb.
ギリシャ原産。
16 Crocus clusii J.Gay クロクス・クルシー
synonym Crocus serotinus subsp. clusii (J.Gay) B.Mathew
ポルトガル、スペイン原産。Clusius' Crocus。標高900mまでの草地や明るい森林に生える。
球根は長さ8~15㎜×幅6~15㎜、ほぼ球形、1個つき、球茎の薄皮は細かい網繊維状。開花後間もなく4~7枚の葉が生える。葉は線形長さ(50~)220~250㎜×幅(1)1.5~3.5㎜。花は高さ8~9㎝、淡いライラック色または濃いライラック色。花期は秋。
品種) 'Poseidon'
17 Crocus dalmaticus Vis. クロクス・ダルマティクス
synonym Crocus reticulatus var. dalmaticus (Vis.) Herb.
クロアチア、ベスニア、アルバニア原産。英名はdalmatian crocus。日当たりの良いカルスト岩原に生える。
多年草、高さ10~20㎝、球茎は凹んだ球形(depressed-globose)、長さ8~12㎜、薄皮は紙質。茎は繊維状、繊維は強く、網目状に編まれる。茎と葉は、長さ1.5~6.5㎝の3~4本の薄い膜状の枝で覆われる。通常、この植物には幅1~2(~3)㎜の細い線形の葉が3~4枚あり、高さは花被片の喉部まで達し、花と同時に現れる。葉は緑色で、中央に白い縞があり、縁は内側に向かって巻く。この植物には基部に仏炎苞はない。苞と小苞は長さが等しく、長さ4~5㎝、紙状膜質で、最長の鞘を超える。通常、花は2個つき、青紫色、喉部は黄色。花被筒は長さ4~6㎝、青色の縞模様がある。花柱は雄しべと同長かそれを超え、深く3裂する。喉部にはまばらに毛があり、鞘はない。花被片は長さ1.5~3.5㎝×幅1~1.5㎝、外花被片に黄色の様々な斑紋がある。果実は矢筒状(quiver)、楕円形、長さ約1.8㎝、3バルブに裂開し、果実には、数個の種子が含まれる。種子は薄褐色、楕円形、長さ3~4㎜。花期は1~4月。
品種) 'Petrovac'
18 Crocus damascenus Herb. クロクス・ダマスケヌス
synonym Crocus cancellatus subsp. damascenus (Herb.) B.Mathew
イラン、イラク、レバノン・シリア、パレスチナ、トルコ原産。430~2100mに生える。
球茎は球形、直径15~30 mm。被膜は強くて粗い網状繊維、網目は少なくとも直径6㎜ある。薄皮の首は明瞭、長さ5~6㎝、針状に分裂する。薄皮の輪はない。鱗片葉は3~4個つき、淡麦わら色。葉は3~5枚、無毛、灰緑色、幅3~4.5㎜、下面に溝があり、3本のうねがある。花の終わりに鱗片葉の先端に明瞭な葉がつく。前出葉はない。苞があり、中に小苞がある。花被筒は白色、ときに緑色または紫色の縞模様が入る。花被片は倒披針形、長さ42~50㎜×幅5~15㎜、外側と内側は薄ライラック色、ほとんどが白色で細い脈がある。内花被片と外花被片の色とサイズはほぼ同じ。喉部は無毛、白色または淡白黄色。花糸は長さ3~6㎜、無毛、白色または淡黄色。葯は長さ10~15㎜、黄色。葯隔は明瞭ではない。花柱は黄色または橙色で、少なくとも3本の枝があり、葯と同じかそれより長くなる。蒴果は楕円形、長さ約40㎜、大きな柄は地面より上に出る。種子は楕円形、長さ5~6㎜、赤褐色、種沈と縫合線が目立つ。花期は10~12月。2n=8, 10, 12。
品種) KPPZ 90107
19 Crocus danfordiae Maw クロクス・ダンフォルディアエ
トルコ原産。トルコ固有種。標高1000~2000mの開けた場所、背の低い草の牧草地、藪の下、明るい森の端などに生える。属の中で花が最も小さい。
多年草、球茎は薄皮が非常に硬く、基部の薄皮の輪が目立つ。葉は3~5枚つき、上面の白線が目立ち、開花期には花の高さ以上になる。花は非常に小さく、長さ約1.5㎝、明るい黄色、白色、または非常に明るい青色。花被片の外側には非常に薄い点線があり、ときにシミがより目立ち、ほとんど見えないこともある。花被筒は花被片よりわずかに暗色。花はしばしば黄色と白色(クリーム色)が一緒に発生する。花柱は橙赤色、3分岐し、高さはしばしば葯の中央に達する。柱頭は3岐があり、各部分は非常に短く、先端は幅広になる。葯、花糸、喉部は黄色。花期は2~3月。
20 Crocus duplex Weston クロクス・デュープレクッス
synonym Crocus pictus (Sabine) Steud.
オーストリア、チェコスロバキア、ハンガリー、イタリア、ポーランド、ウクライナ、ユーゴスラビア原産。英名はwoodland corcus , early crocus。石灰岩の丘陵地帯に生える。多数の異名がある。
多年草、高さ10㎝。葉はほぼ花の高さまで、中脈が白色。花は淡ラベンダー色、基部は白色。外花被片の3枚に淡い褐色がかった黄色の輝きを放つことが多い。花被筒は白色。雄しべは3本、葯は橙黄色。花柱は柱頭が短く3分岐し、橙黄色、ほぼ葯の高さと同じ。花期は2~3月。
品種) 'Pickwick' , 'Pictus'(縁が濃紫色) , 'Pink Pictus' , 'Remembrance'
21 Crocus etruscus Parl. クロクス・エトルスクス
イタリア原産。英名はTuscan Crocus。標高600mまでの落葉樹林や草原に生える。
多年草、高さ5~10㎝。球茎は扁球形(flattened globose)、上部は平らで、薄皮が繊維状粗い網目模様になる。基部の周りには星形の二次薄皮が形成される。葉は花と同時に現れ、幅が異なる3~4枚が出る。花は高さ8~10cm、ライラック色~ラベンダーブルー色、外花被片はしばしばバフ色~クリーム色で、暗色の脈がある。花柱は3分岐し、柱頭は橙赤色、通常葯より高くなる。葯は花の中心から離れて開き、花粉を放出する。2n=8。花期は2~4月。自家不和合性で同じ球茎の花の間で受粉が起こっても生存可能な種子は生産されない。
品種) 'Rosalind' , 'Zwanenburg'
22 Crocus flavus Weston キバナサフラン
ブルガリア、ギリシャ、ルーマニア、トルコ、ユーゴスラビア原産。英名はyellow crocus, Dutch yellow crocus, snow crocus。開けた草地や疎林に生える。
球茎(cormus)は凹んだ球で基部が平ら形(depressed-globose, flattended at base)、直径10~20㎜。薄皮(tunic)は膜質、基部に平行な繊維があり、薄皮の首は長さ70~100㎜、鱗片葉の残骸があり、基部の薄皮は平滑で、放射状に繊維がある。基部の輪は無い。鱗片葉は4~5個つき、褐色。葉は4~6(~8)枚つき、密にパピラまたは縁毛があり、ときに無毛、緑色、幅2.5~4 ㎜、下面の溝は平滑で、刺は狭い三角形、上面の白線は幅が葉幅の1/5以下。前出葉は無い。花は芳香があり、直径5~6㎝。。苞と小苞は薄褐色または白色、褐色の斑点がある。小苞は狭い。花被筒は白色または黄色、ときに上部が紫色になる。花被片は均等、長さ25~35㎜×幅6~12㎜、倒披針形または倒卵形、鈍形または尖鋭形、薄黄色または暗橙色。外花被片はときに褐色の条線や斑点があり、基部が帯紫色または灰色になり、まれに縞模様が花被片の上部に伸びる。内花被片と外花被片は同色。喉部は黄橙色、通常無毛。花糸は長さ3~7㎜、無毛または有毛、黄色または橙色。葯は長さ8~15㎜、先に向かって先細り、黄色。葯隔は淡黄色または不明瞭。花柱は3分岐、葯の中央に向かって分岐し、枝は短く、うねがあり、黄橙色で、葯よりも短い。蒴果は楕円形、長さ16~30㎜、成熟すると大きな柄が地面より上に出る。種子は球形、直径約3㎜、蒴果が最初に裂けるときはピンク色で、次に褐紫色になり、種沈と縫合線が目立つ。花期は3~4月または秋。2n=8。
品種) 'Concolor' , 'Disectus' , 'Geel'(Gold crocus), 'Lacteus' , 'Lutescens' , 'Sulphureus Concolor'
ハイブリッド品種) Crocus x luteus[=Crocus x stellaris](angustifolius xflavus)
'Golden Yellow'('Mammoth Yellow'='Dutch Yellow')2n=3x=14
'Stellaris'(2n=10)
23 Crocus gargaricus Herb. クロクス・ガルガリクス
トルコ原産。匍匐枝(stolon)により増える。
球茎(cormus)はほぼ球形(subglobose)、ときに卵形、直径10~15 mm。薄皮は粗い網状で、繊維は基部に向かって平行になる。薄皮の首は繊維質で非常に短い。基部の輪は無い。鱗片葉は3~4 個、銀色。葉は3~4枚、無毛、緑色、幅1~2㎜、下面には溝があり、うねは無く、上面の白線の幅は葉幅の1/3に相当する。前出葉はない。苞は紙質、白色、小苞はない。花被筒は淡黄色、基部はわずかに緑色。花被片は長さ15~37㎜×幅8~15㎜、すべての花被片は黄色、内花被片は外花被片よりわずかに小さい。喉部は無毛、花被片よりわずかに暗色。花糸は長さ3~5㎜、暗黄橙色、密にパピラがあるか、または毛がある。葯は長さ10~12㎜、暗黄色、多少、平行な縁があり、先端は丸く、円鋸歯があり、まれに鋭形。葯隔は不明瞭。花柱は葯の中央付近の位置で3分岐し、各枝の上部はわずかに縁飾りがあり、ほとんどが葯の下で終わり、まれに葯の高さで終わる。蒴果は短い楕円形、長さ約10~15 mm、大きな柄は地上のすぐ上にある。種子は球形、直径約2㎜、暗褐色、種沈と縫合線は不明瞭。花期は4~5月。2n=30。
24 Crocus goulimyi Turrill クロクス・ゴウリミー
synonym Crocus goulimyi subsp. leucanthus (B. Mathew) B. Mathew
ギリシャ原産。英名はfall crocus。標高300~750mの古いオリーブ畑、イチジク農園、石の多い場所、岩場に生える。
球茎は卵形(ovoid)、幅1.5~2㎝、薄皮は革質。葉は花とともに~花後に出て、4~6枚つく。花は高さ12㎝まで、長い筒部があるボウル形、淡~濃ライラックパープル色または白色、内側はより淡色。花被筒が細長く長く、喉部は白色、花被片は内花被片は淡色で、外花被片よりやや短い。葯は柱頭と同色。柱頭は3分岐し、黄色~橙色。花期は10~11月。
品種) 'Agia Sofia' , 'Albus’, HK 1989/35 , 'Leucanthus' , 'Mani White'
25 Crocus hadriaticus Herb. クロクス・ハドリアティクス
ギリシャ原産。標高 250 ~ 1500 m の開けた低木地、岩や石の多い場所に生える。
球茎はほぼ球形、直径約2㎝、薄皮は細かい網繊維状。葉は開花時に5~9枚ある。花は純白色[ときに淡ライラック色(subsp. parnonicus)]、ゴブレット形、花被筒は白色、上部の外側が帯紫色まなることもあり、喉部は黄色、基部は赤い染みがある。花柱は3分岐し、赤色~赤橙色、葯よりかなり高くなり目立つ。雄しべは3本、花糸は白色。葯は黄色。花期は9~10(12)月。
品種) 'Annabelle' , 'Bowles's Early' , 'Crystal' , 'Elysean Pearl' , 'Indian Summer' , 'Jumbo' , 'Purple Eye' , 'Purple Heart', 'Tom Blanchard'
26 Crocus heuffelianus Herb. クロクス・ヘウフェリアヌス
FSU(カルパチア山脈)南西部、西ヨーロッパ原産。湿った牧草地や開けた場所、または海岸や松林の境界に生える。
多年草、高さ12~25(~32)㎝。球茎は卵円形、直径1.2~2.4㎝、薄皮は平行繊維状、先の網目は不明瞭、基部の輪はない。前出葉は無い。鱗片葉は2~3(~4) 個あり、白色。葉は2~3枚つき、開花時は花より短く、後に長くなり、幅2.8~4.4㎜。苞はあり、小苞は無い。花は直径6㎝以下、1~2個つく。花被片はすみれ色~紫色で、まれに淡色、花被片(tepals)の先端に V 字型またはハート型の斑紋がある。喉部の内部には毛が生えているのが目立つ。花糸は白色。葯は黄色で、葯隔は白色。柱頭は葯の上に突き出ており、赤橙色で、3個のへら形の広い裂片に分裂し、各裂片には不明瞭な歯がある。蒴果は楕円形、長さ12~14㎜×幅7~10㎜。種子は丸く、赤褐色、直径1.8~2.6㎜、縁が明瞭、わずかに発達した種沈がある。花期は3~4(6)月。
品種) 'Brian Duncan' , 'Carpathian Wonder' , 'Dark Eyes' , 'Dark Wonder' , 'Drina Marvel' , 'Graecus' , 'Harry Hay' , 'Krasno Polje' , MBAC 93 , 'Michael's Purple' , 'National Park' , 'Purple Eyes' , 'Shock Wave' , 'Silvery Wonder' , 'Snow Princess' , 'Tatra Shades'
27 Crocus imperati Ten. クロクス・インペラティ
イタリア原産。英名はEarly Crocus。
球茎は卵形から亜球形(まれに梨形)、幅(6~)10~22(~24)㎜、長さ(7~)11~22(~24)㎜。薄皮は膜質糸状、繊維が平行で、しばしばかすかに網目状になり(特に先端に向かって)、まれにやや紙質になる。鱗片葉は通常 3~5個で膜質だが、通常は弱い帯緑色の脈と草質の先がある。葉は無毛で暗緑色、開花時にすでに存在し、最初は曲がり、開花時に倒れ、長さ(6.5~)9~39(~49)㎝×幅(1.2~)1.5~3.7(~4.7)㎝。花茎は前出葉がある。花は1~3(~5)個、春咲き、芳香が無く、小苞が1個ある。苞と小苞は鋭形~尖鋭形、ときに二股になり、白緑色。花は長さ(4.5~)5.6~20.0(~23.0)cm、花被筒は帯白色、先に紫色の縞がある。内花被片は卵形~披針形、先は円形~鈍形(ときに尖鋭形)で、長さ(23~)27~45(~48)㎜×幅(9~)12~22(~25)㎜、一様にライラック色からすみれ色(まれに紫がかった色から白色)である。外側の花被片は内側の花被片とほぼ同じだが、通常わずかに狭く長く、内側は内側の花被片と同色だが、外側ははるかに明るく(淡いライラック色~帯白色、まれにアイボリー色)、濃い紫色の不規則な縦縞がある。喉部は橙色~帯黄色、毛はない。葯は外側に裂開する。雄しべの花糸は長さ(5~)6~12(~15)㎜で、葯の半分~同長、葯は長さ(9~)11~18(~19)㎜である。柱頭は房状へりがあり、橙色~帯赤色、雄しべより短いかまたは長い。蒴果は長楕円形~楕円形で、成熟すると地面の高さかそれ以上に達し、長さ10~30㎜×幅5~13㎜。種子は帯赤色~淡褐色で、ほぼ球形で、長さ2~4mm、翼が明瞭で、花冠がある。花期は(1~)2~3月。果期は4~6月。2n=26
品種) 'De Jager'
28 Crocus isauricus Bowles クロクス・イサウリクス
synonym Crocus biflorus subsp. isauricus (Siehe ex Bowles) B.Mathew
トルコ原産。Crocus biflorusの亜種と分類されていた。
球茎(cormus)は球形または扁球形、直径14~19㎜。外側の薄皮は革質、内側の薄皮は柔らかく、幅広のセグメントに分かれ、セグメントは一般に隙間がない。薄皮の首は長さ2~5㎜、硬く、三角形に分裂し、ときに硬い剛毛状になる。基部の輪は幅広で硬く、鋸歯状になる。鱗片葉は3個つき、銀白色、ときに先端が褐色になる。葉は開花時には見えず、花より長く、3~7枚つき、無毛、緑色または灰緑色(dusky-green)、幅1~2㎜、下面に溝があり、1~2本の突出があり、上面の白線は幅が葉幅の1/3以上ある。前出葉は無い。苞と小苞は狭く、銀白色、まれに先端が帯褐色になる。花被筒は下部が白色、上部が淡黄色~無色、青色または紫色、または紫色~褐紫色の縞模様がある。花は萼形、全ての花被片の内側は藤青色、暗紫青色、ときに暗色の脈があり、または斑点がない。外花被片は長さ20~33㎜×幅5~14㎜、外面は青紫色、黄色、象牙色、バフ色または薄藤色、紫色または灰紫色のそばかすがあり、条線があり、密に紫色の羽状脈または脈があり、基部に斑点はない。内花被片は長さ18~32㎜×幅5~13㎜、外側は白色、まれに細かいほこりがあり、青紫色または密に藤青色で、基部に淡い斑点があり、帯褐色または帯青色のまだらになる。喉部は無毛、暗黄色~橙色。花糸は長さ4~8㎜、黄色、橙色、無毛またはパピラがある。葯は長さ5~16㎜、矢状、尖鋭形~円形、鈍く、黄色、ときに黒色。葯隔は広く、淡黄色、灰色または黒色。花柱は3分岐し、岐は橙色~赤色、長さ3~10㎜、先は広がるかトランペット状になり、葯の先端より短く、または長い。蒴果は長さ20㎜×幅9㎜・以下で、先に小突起があり、基部はバフ色で、地表面から高さ3~5㎝にある。種子は大きく、丸いものから細長いものまであり、長さ3.5㎜×幅3㎜・以下、褐色またはピンク褐色、種沈は大きく、目立ち、縫合線は小さくて曖昧。花期は2~4月。2n=12。
品種) 'Spring Beauty'
29 Crocus korolkowii Maw & Regel クロクス・コロルコウィー
アフガニスタン、カザフスタン、キルギス、パキスタン、タジキスタン、ウズベキスタン原産。英名はcelandine crocus。標高600~2600mの砂礫地や草地に生える。
球茎は直径1~2㎝、ほぼ球形。外側の薄皮(tunics)は多数に裂けて分かれ、それぞれが離れた平行繊維を持ち、内側の薄皮は膜質。鱗片葉は3~5個つき、白色、ときに先端に褐色、緑色、または帯紫色の脈がある。葉は花と同時に出て(synanthous)、長さ(7~)10~20㎝×幅0.1~0.25㎝、緑色、無毛または縁がザラつく。花序は花が1~3~5個つく集散花序。苞と小苞は鱗片葉から伸び、長さ約4~10㎝。花は芳香があり、春咲き(vernal)。花被筒は長さ(3~)5~10(~13)㎝、黄色、帯紫色、または銅色。花被片は6個あり、2輪につき、均等または内花被片がわずかに短く、先が鈍形、長さ2~3.5㎝×幅0.6~1.2㎝、楕円形~倒披針形、ほぼ鋭形~鈍形。雄しべは3本、花糸は長さ4~6㎜、無毛または基部にやや毛がある。葯は長さ8~13㎜、黄色。花柱は葯の上端と同じか、それより長く、3分岐し、3本の細長い柱頭の枝(腕)に分かれ、広がったパピラのある柱頭で終わる。蒴果は長さ1.2~2.1㎝、円筒形で、成熟すると地上レベルまたはそのすぐ下になる。種子は長さ約3㎜、ほぼ球形または楕円形または三角形、赤褐色、2n=20。花期は2~3月。[Flora of Pakistan]。
品種) 'Agalik' , 'Albus' , 'Dark Throat' , 'Golden Nugget' , 'January Gold' , 'Kiss of Spring' , 'Lemon Queen' , 'Lucky Number' , 'Mountain Glory' , 'Snow Leopard' , 'Spring Cocktail' , 'Unicoloratus' , 'Varzob' , 'Yellow Prince' , 'Yellow Princess' , 'Yellow Tiger'
30 Crocus kosaninii Pulevic クロクス・コサニニー
synonym Crocus kosaninii f. albidus Randjel.
ユーゴスラビア、セルビア原産。
球茎は凹んだ卵形(depressed ovoid)、薄皮が繊維状、先が網状、基部は平行状。花はライラック色、喉部は黄色。花糸は黄色。2n=14。花期は3~4月。
Crocus kosaninii は、黄色い喉と黄色い花糸で他の近縁種と簡単に区別できる。自由に開花し、種子がよくつき、屋外で自由に成長し、非常に丈夫だが、最も厳しい冬の間に、枯れ、わずかな球根だけしか残らないこともあった。夏の間の高温で乾燥した保管を必要としない。
品種) 'April View' , 'Dutch Yellow' , 'Yellow Giant'
31 Crocus kotschyanus K.Koch クロクス・コチアヌス
synonym Crocus zonatus J.Gay ex Klatt
トルコ、シリア、レバノン原産。
球茎(cormus)は扁球形または凹んだ球形、通常は直立し、直径10~30㎜、長さ5~15㎜。薄皮は薄い膜質、不明瞭な繊維状、基部で繊維が平行になり、上部が網状になる。薄皮の首は薄皮の短く尖った部分からなる。基部の輪は無い。鱗片葉は3~4個、白色。葉は春に現れ、4~6枚つき、緑色、無毛、幅1.5~4㎜。葉の溝はうねがなく、竜骨は広い。葉上面の白線は幅が葉の幅の約1/3、またはわずかに広い。前出葉がある。苞と小苞は膜質、白色、鱗片葉のわずかに上にある。小苞は舌状、苞に隠れる。花被筒は白色~わずかに帯黄色、または帯緑色のしみがある。花は香りがよく、淡ライラック色~淡青ライラック色、通常は花被片が暗色で、平行な脈が内面に明瞭にあり、外面ではほとんど見えない。花被片は長さ30~45㎜×幅5~18㎜、均等、倒卵形または倒披針形、先は円形、鈍形、尖鋭形、または鋭形、ときに外花被片は先端が丸く、内花被片は鋭形。喉部は毛があり、帯白色または象牙色、各花被片の基部に2個の黄色の斑点があり、ときに斑点が結合して黄色の輪を形成する。花糸は長さ3~8.5㎜、白色または淡黄色、無毛またはパピラがある。葯は長さ7~20㎜、象牙色~白色。葯隔は白色~象牙色、不明瞭。花柱は3分岐し、まれに先に縁飾りがありまたは葯と同長またはそれより長く、短~長の2次枝に分岐する。蒴果は帯白色、長円形または楕円形、長さ11~30㎜×幅6~8㎜、成熟すると地面から3~4㎝上になる。種子は球形~楕円形、直径2~3㎜、淡褐色、種沈は小さく、縫合線がごく狭く、種皮は平滑。花期は9~10(~11)月。2n=8。
品種) 'Albus' , MT 4532 , 'Reliance'
32 Crocus laevigatus Bory & Chaub. クロクス・ラエビガトゥス
ギリシャ、クレタ島原産。Early Spring Crocus。石の多い、低木林に生える。
球茎の薄皮は革状、平滑、かなり光沢があり、ヘーゼルナッツに似ている。薄皮の古い層は先が尖った歯のように裂ける。花はライラック色または白色、普通、外側に羽毛状の濃色の脈があり、脈のないものもある。葯は白色。柱頭は数回、分岐し、枝は糸状、橙色~黄色。花期は11~2月。2n=26。
Crocus laevigatus は、ギリシャ南部とクレタ島に限定された、秋に花を咲かせる近縁種の3種(Crocus boryi, Crocus laevigatus, Crocus tournefortii)の中で、通常最も遅く開花する種である。この列 (series Laevigati)の種は、白い葯と、数回分岐した糸状の橙色または黄色の柱頭の枝が特徴である。
品種) 'Albus'
【類似種】
(1) Crocus boryi J.Gay クロクス・ボリー
ギリシャ本土西部と南部、イオニア諸島、クレタ島最東端に生息する。
球茎の薄皮は縦の繊維状である。花は、通常白色、多くの C. laevigatus に特徴的な、外側の花被片に暗い羽毛状の模様があることはまれ。どちらの近縁種も C. laevigatus よりかなり大きい。2n=30。
品種) 'Brimstone'
(2) Crocus tournefortii J.Gay クロクス・トウルネフォルティー
キクラデス諸島、カルパトス島、ロードス島、クレタ島北東海岸に生息する。
球茎の薄皮は縦の繊維状である。花は、浅いお椀形の青みがかったライラック色、一度開くと決して閉じない。2n=30。
品種) 'Albus' , 'Fontenayi'
33 Crocus longiflorus Raf. クロクス・ロンギフロルス
イタリア、シチリア島原産。英名はlong-flowered crocus, yellow-throated crocus。
球茎は凹んだ球形(depressed-globose)、薄皮は細かい繊維質で、網状。葉は幅1~3㎜、開花時にはあるが、時には非常に短い。花は1~2個つき、ライラック色~紫色、しばしば外側に暗色の脈がある。喉部は黄色で、無毛またはまばらに軟毛がある。前出葉(prophyll)はある。小苞はない。苞は膜質、白色、先が緑色がかり、脈があり、鱗片葉(cataphylls)からよく突き出ている。花被筒は長さ5~16㎝、黄色、ときに紫色の縞がある。花被片は長さ2.2~4.3㎝×幅0.7~1.6㎝、倒披針形または倒卵形、先は鈍形~ほぼ鋭形。葯は黄色。花柱は橙赤色、まれに黄色、雄しべより短いかまたは雄しべを超えるまでの長さ、3分枝し、枝は広がり、先端が房状へり(fimbriate)または裂片状になる。蒴果は長さ1.2~1.5㎝、楕円形。種子は茶色で、ほぼ球形、種阜=種沈(strophiole)は不明瞭。花期は10~11月。2n=28。
品種) 'Primrose Warburg'
34 Crocus malyi Vis. クロクス・マリー
ユーゴスラビア原産。英名はMaly crocus。標高1000mまでの草原や松林に生える。英国王立園芸協会のガーデン メリット賞を受賞。日当たりがよく水はけのよい場所で育ち、栽培しやすい。
多年草、高さ10~15㎝。球茎の薄皮は平行な繊維状。葉は緑色、3~5枚、開花時に出る。花は白色、喉部は黄色。外花被片の外側の基部には帯褐色の斑点がある。花柱は明るい橙色。花期は3~4月。
品種) 'Ballerina' , 'Sveti Roc'
35 Crocus mathewii Kerndorff & Pasche クロクス・マテウィー
トルコ原産。トルコ南西部の山地に生える。
球茎(cormus)は中央が凹んだ球形、基部が平らで、直径13~32㎜。薄皮は平行な繊維で、先がわずかに網目状になり、首の長さは15~30㎜、主薄膜の細長い繊維からなり、基部の輪は無い。鱗片葉は2~4個つき、銀白色、上端が帯褐色になる。葉は4~10枚つき、無毛またはまばらに縁毛があり、暗褐灰色(taupe)、下面の溝はうねがなく、葉の端は下向きに巻き、上面の白色の線は幅が葉の幅の半分の幅で、開花の初めに現れ、開花の終わりの花よりも長くなる。前出葉がある。苞と小苞は銀白色、紙質、苞はごく小さい。花被筒は白色またはライラック色で、暗ライラック色の縞模様~全体に暗紫色になり、基部のみが淡色になる。花は蜂蜜の香りがあり、花被片は白色~淡藤色、ほぼ同長、卵形~倒卵形、ときに披針形、先は鈍形~鋭形、ときに外花被片は鋭形になり、内花被片は円形、基部のしみ(斑点)は暗紫色。外花被片は長さ21~30㎜×幅8~15㎜。内花被片は長さ19~28㎜×幅7~13㎜。喉部(目)は紫色~藍色。花糸は長さ3~4㎜、白色~紫色、無毛。葯は長さ10~12㎜、暗黄色。葯隔は帯白色~黄色。花柱は暗橙色~赤色、先が3枝に分かれ、通常は葯より長く、ときに葯と同長で、まれに葯の先端のすぐ下にある。蒴果は楕円形、長さ21㎜×幅11㎜・以下、バフ色、先がほぼ鋭形、先端に短い柱頭があり、成熟すると地表面からわずか~ほぼ2~5㎝上にある。種子は大きく、球形~わずかに角があり、直径は4㎜以下、暗褐色~紫褐色、種沈と縫合線は明瞭、小さい。種皮にしわがある。花期は11月。2n=16。
品種) 'Alicia' , 'Brian Mathew' , 'Dream Dancer' , 'Pink Princess'
36 Crocus mazziaricus Herb. クロクス・マジアリクス
synonym Crocus cancellatus subsp. mazziaricus (Herb.) B.Mathew
ギリシャ、エーゲ海諸島、トルコ、アルバニア、ユーゴスラビア原産。英名はautumn crocus。
球茎(cormus)は直径15~30㎜。薄皮は硬い網状繊維を備え、薄皮の首は硬い繊維で束ねられ長さ20~25㎜以下、わずかに湾曲し。基部に輪は無い。鱗片葉は3~4個つき、白色、ときに上部は帯緑色になる。葉は開花時に始まり、短いままであるか春にのみ現れ、4~6枚つき、暗灰緑色、無毛、幅2~3㎜、下面の溝は広く、うねが3~4本ある。葉の上面の白線は幅が葉幅の約1/2~1/3である。前出葉は無い。苞と小苞は均等ではなく、苞の先端がはみ出る。花被筒は全体が白色~帯緑色、または上部に紫色~帯褐色の縞がある。花は芳香があり、薄い~暗藤色、内側は明るい青紫色、喉部に向かって薄くなり、わずかに暗い脈がある。花被片は長さ25~50㎜×幅10~17㎜、倒卵形または倒披針形、鈍形~鋭形。外花被片は、外側が濃くまたは暗色で、内側がかすかに縞模様になる(barred)。内花被片外側に短い縞模様がある。喉部は無毛~まばらにパピラがあり、緑白色~淡黄色、決して橙色にはならない。花糸は長さ3~10㎜、密に毛があり、帯白色~淡黄色。葯は長さ17~22㎜、黄色。葯隔は淡黄色。花柱は多数分枝し、レモンイエロー色~薄橙色~暗橙色、または暗橙赤色を帯び、枝の長さは非常に多様である。蒴果は楕円形、長さ25㎜×幅8㎜・以下、しばしば紫色を帯び、成熟すると地表面から2~4㎝上になる。種子は楕円形~円形、長さ3㎜まで、暗褐色~赤褐色または黒色、縫合線は同色、種沈は明瞭、色は薄い。花期は9~11月。2n=16。
品種) Dbs 92-11 , Dbs 93-03 , Menalo' , 'Parnassus' , 'Pilion' , 'Rendina'
37 Crocus minimus DC. クロクス・ミニムス
synonym Crocus insularis var. minimus (Redouté) Herb.
synonym Crocus minimus var. corsicus J.Gay
イタリア、コルシカ島、サルディニア島、カプライア島原産。ドイツに帰化。標高1500mまでの岩場または砂地に生える。
多年草、球根植物、高さ8~15㎝。球茎の薄皮が平行な繊維状。葉は3~5枚つき、濃い緑色長さ5~10㎝×幅1~1.2㎜、糸状、縦に白い線が入る。花は単生または2~3個つき、花被筒は長さ6~8㎝、帯白色~帯紫色。花被片は長さ5~7㎝×幅1.5~2㎝、へら形、ライラック色または紫色、外側はバフ色(淡黄褐色)で紫色の縞模様があり、しみ状に融合してまだらになることもある。柱頭は3分岐し、黄色または橙色。葯は長く、黄色。花期は1~4月。
品種) 'Bavella' , 'Spring Beauty'
38 Crocus mouradi Whittall クロクス・モウラディ
synonym Crocus flavus subsp. dissectus T.Baytop & B.Mathew
地中海沿岸地域原産。Crocus flavusの亜種に分類されていた。
球茎(cormus)は直径15㎜までの凹んだ球形、土壌の奥深くに入り、薄皮(tunic)は膜質で、平行な繊維が目立ち、基部の輪は無い。鱗片葉は3~4個つき、長く、褐色、薄皮の首に似ていて、硬く、宿存性。葉は開花の初めは短く、終期に花より長くなり、3~7枚つき、暗緑色、幅2.5~4㎜、通常端にのみ縁毛があり、まれに全体に毛がまばらになり、溝は下面で広く開き、平滑、縁はわずかに下向きで、うねは無く、上面の白線は幅が葉幅の1/5。前出葉は無い。苞と小苞は膜質、白色、通常は褐色の斑点やそばかすがあり、小苞は非常に小さく、線形、苞の中に隠れる。花被筒は帯白色~淡黄色で、上部に帯紫色または帯褐色の斑点がある。花は芳香がある。花被片は長さ15~30㎜×幅5~10㎜、両輪が均等、倒披針形または倒卵形、鈍く、ほぼ鋭形~鋭形、色は均一、明るいまたは濃い鮮やかな黄色、ときに基部がわずかに灰褐色を帯び、喉部は通常は不明瞭、内花被片の色よりわずかに暗色、ときにより暗くなり橙色の色合いになる。花糸は長さ5~10 ㎜、薄黄色~暗黄色、通常は無毛かわずかにパピラがある。葯は花糸の長さ~2倍の長さがあり、暗黄色、基部の裂片は長く、鋭形。葯隔は象牙色~薄黄色、通常、明瞭。花柱は6本または多数分枝し、枝は黄色~橙色、まれに白色または帯白色、細く、葯と同長、まれにわずかに長い。蒴果は長さ27㎜×幅8mm・以下、先は丸く、明るい帯褐色、ときに薄紫色の色合いになり、成熟すると地表から高さ0~2cmになる。種子は球形、直径は3㎜以下、暗赤褐色、しわがあり、種沈はよく目立ち、縫合線が明瞭で、翼がある、花期は2~3月。2n=8。
品種) 'Dutch Yellow' , 'Yellow Giant'
39 Crocus nivalis Bory & Chaub. クロクス・ニバリス
synonym Crocus sieberi subsp. sublimis (Herb.) B.Mathew
synonym Crocus sublimis Herb.
synonym Crocus atticus (Boiss. & Orph.) Orph.
ギリシャ原産。ドイツに帰化。乾燥したギリシャの低木林(phrygana)、草原、森林に生える。
多年草、球茎は小さく、薄皮は細かい網状。葉は開花時に成長し、直立し、2~7(~10)枚つき、線形、幅1.5~6㎜、中脈が白色で目立ち、花時に花より低い。花は1~3個つき、ライラック青色~紫色、濃青色、または純白、先が濃色、喉部が黄色、その中間が白色。花被筒は紫褐色。花被片は卵形~披針形、先は通常は鈍形。雄しべは3本、葯は線形、黄色。花柱は1本、上部で3裂し、柱頭は3岐、先が広がり、橙色。果実は蒴果。
品種) 'Michael Hoogs Memory' , 'Tricolor'
40 Crocus neapolitanus (Ker Gawl.) Loisel. クロクス・ネアポリタヌス
synonym Crocus vernus var. neapolitanus Ker Gawl.
synonym Crocus vernus subsp. neapolitanus (Ker Gawl.) Asch. & Graebn.
イタリア、ユーゴスラビア原産。標高1500~2800mの森林の伐採地と山の牧草地、ときに石の多い場所に生える。Crocus vernus の亜種とも分類され、基本種(subsp. vernus)は花が普通、白色、花被片は長さ15~35(50)㎜×幅4~12㎜、花柱が雄しべより明らかに短い。2n=8, 16。
球茎はほぼ球形~卵形、薄皮は細かい平行または網目の繊維状。鱗片葉は下部に2~3枚つき、白色。葉は2~4個つき、線形、直立し、花と同じ長さになり、幅(2)4~8㎜、緑色で白色の中脈がある。花被は通常紫色、薄紫色で、ときに暗色の脈が入る。花被片は長さ(25)30~55㎜×幅9~20㎜。花柱はほとんどの場合、雄しべと同じかまたはそれ以上の長さがある。蒴果は楕円形、長さ15~20㎜。種子は球形、直径2.5~3㎜、帯赤色~褐色、小さい種沈がある。2n=8。
品種) 'Croatia', 'Oradea'
41 Crocus niveus Bowles クロクス・ニベウス
ギリシャ原産。ペロポネソス半島東部および南部の固有種。英名はNiveus crocus, snow crocus, white crocus。標高50~750mの 石の多い斜面、低木林、岩の多い土壌、耕作されていない畑および耕作された畑の境界に生える。
球茎の薄皮は細かい網繊維状。葉は4~8枚、開花時に存在し、中脈は白色。花は大きく、普通、白色、たまに、淡ライラック色、喉部は黄色、花被筒は紫褐色。雄しべは3本、葯は線状矢じり形、黄色。柱頭は橙色~橙黄色、多数の細い枝に分岐し、雄しべよりかなり長い。2n=28。花期は10~11月。
品種) 'Cape Matapan'
42 Crocus nudiflorus Sm. クロクス・ヌディフロルス
フランス・スペイン原産。標高5-2350mの牧草地や牧草地、森林の伐採地に生える。
球根は長さ8~15㎜×幅6~17㎜、ほぼ球形または梨形、通常は匍匐茎がある。内側の薄皮は紙質、外側の薄皮は繊維状で平行な繊維を持つ。葉は3~4枚つき、春に発育し、開花時には存在せず、長さ30㎝以下×幅2~4㎜。鱗片葉がある。苞ははっきり突き出し、膜質、白色または緑色を帯びる。小苞は無い。花は1~3個つき、鐘形。花被筒は長さ(50)100~220(290)㎜、先がライラック色または紫色を帯びる。喉部は無毛または細かいパピラの毛があり、白色またはライラック色。花被片は長さ30~60㎜×幅9~20㎜、楕円形から倒披針形、鈍形、薄紫色に強く染まる。雄蕊糸は白っぽいか淡い青色。黄色い葯。花柱は雄しべと同じかそれより長く、短く細い枝に開き、橙色。蒴果は長さ30~40㎜×幅7~8㎜、狭い楕円形。種子は褐色、楕円形、種阜(strophiole)は分化が低いい。2n=48。
品種) 'Orlà'
43 Crocus olivieri J.Gay クロクス・オリビエリ
マケドニア、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア、ギリシャ、トルコ原産。
球茎(cormus)は卵形(ovoid)、直径8~19㎜。薄皮は膜質、基部が厚く、基部で裂け、三角形の歯または平行な繊維がある。薄皮の首は鋭形、三角形の繊維状で、長さ5㎜以下。基部の輪は無い。鱗片葉は3個、膜質、白色、先に帯緑色の斑点がある。葉は通常花序の花より短いかまたは長く、1~5枚つき、縁は通常縁毛があり、ときに無毛~密に毛があり、暗緑色、幅1.5~7㎜、下面の溝は広く、開き、うねは無く、上面の白線は細く、葉幅の幅の1/5程度まで。前出葉は無い。苞と小苞は膜質、白色~銀白色、均等、または小苞は狭い。花被筒は黄色~褐紫色、または帯白色の地に紫色の斑点または縞模様がある。花は通常、橙黄色または淡黄色で、単色だが、まれに外花被片の外面に帯褐の縞や斑点がある。花被片は長さ15~35㎜×幅4~12mm、楕円形、倒披針形または倒卵形、先が鈍形~鋭形。両花被片が等しいか、内花被片がわずかに短い。喉部は無毛または毛があり、黄色~橙色。花糸は長さ3~7㎜、無毛、またはときに毛があり、黄色、まれに上半分または全体が紫色になる。葯は長さ6~15㎜、黄色。葯隔は黄色または帯紫色。花柱は葯よりわずかに短く~わずかに長く、6枝があり、枝は細く、黄色または橙色、ときに先端が帯白色になる。蒴果は長円形、鋭形、長さ10~17㎜×幅5~7㎜、バフ色、上部に紫色の斑点があり、成熟すると地表面から1~4cm上にある。種子は長円形、長さ4㎜×幅2㎜・以下、暗チェリーレッド色、ほぼ帯黒色、種沈は大きく、扁平、縫合線は小さく、両方とも種子と同色。花期は2~4月。2n=6。
品種) 'Little Tiger'
44 Crocus pallasii Goldb. クロクス・パラシー
ギリシャ、東エーゲ海諸島、クリミア半島、ルーマニア、ユーゴスラビア、ブルガリア、トルコ、レバノン・シリア、パレスチナ原産。英名はpallas crocus, autumn crocus。標高150~2000mに生える。
球茎(cormus)は扁球形、直径10~35㎜。薄皮は細かく網状繊維または絹毛状の網状繊維である。薄皮の首は長さ2~6cm、主の薄皮は絡み合い、長い網状繊維がある。薄皮の輪は無い。鱗片葉は3~5個、白色~わずかに帯緑色、帯褐色または薄帯褐色の斑点がある。葉は(5~)10~17個つき、縁と竜骨には縁毛またはパピラがあり、灰緑色、幅2㎜まで、縁はよく外向きに曲がり、1本のうねがあり、竜骨は広く、上面に葉幅の1/3~1/4の幅の白線がある。葉は開花の終わりに見られる。前出葉は無い。苞および小苞は膜質、白色、銀色~ピンク色または帯褐色。小苞はごく小さい。花被筒は様々、白色~紫色、ときに条線がある。花は帯白色~淡藤色~紫色で、しばしば紫色の濃い縞模様が入る。花被片は長さ24~50㎜×幅4~19㎜、楕円形、倒披針形または倒卵形、先端は尖鋭形、まれに円形。外花被片は均一に色付けされ、内花被片ほど明確ではなく、淡色の縞模様があり、まれに暗色になる。内花被片は外花被片よりも短くて狭い。喉部は有毛~無毛、帯白色~淡藤色または暗紫色。花糸は長さ2~6㎜、白色~黄色、無毛。葯は長さ10~21㎜、暗黄色。葯隔は帯白色~アイボリー色。花柱は通常葯より短く、3分岐し、枝は長さ3~15㎜、赤色、ときに橙色、ときに先端が扇状になる。蒴果は楕円形または長い円筒形、長さ30㎜×幅10㎜・以下、麦わら色または銀色で、ときにピンク色を帯び、成熟すると地面から4~5cm以下の高さにあり、先端は丸い。種子は丸みを帯び、長さ5㎜×幅3㎜・以下、黒褐色または褐色、種沈はよく発達し、暗色、鋭形、縫合線は明瞭。花期は9~11月。
品種) 'Ariasos'
45 Crocus pestalozzae Boiss. クロクス・ペスタロッザエ
トルコ原産。標高90~180mの野原や丘に生える。
球茎(cormus)は球形、直径10~15㎜。薄皮は硬い革質、薄皮の内側は膜質、基部に切れ込みが入る。薄皮の首は長さ5㎜までで、不規則な三角形の裂片がある。基部の薄皮の輪は明瞭、縁はほぼ真っ直ぐで、ときに輪の上部に小さな多少三角形の突起がある。 鱗片葉は3~5個つき、緑色、濃い緑色の脈は有または無。葉は花よりも遅く、開花の初めに花の基部に3~8枚あり、無毛または縁毛があり、緑色、幅0.5~2.5㎜、下面に溝があり、うねが1~2本のある。葉の上面に葉幅の1/4~1/3の白線が入る。前出葉はない。苞と小苞は同長、白色、先が緑色を帯び、古くなると褐色がかる。花被筒は白色または帯黄色~帯緑色、上部に汚れた黄色の斑点があり、紫色を帯び、ときに花の下部に褐色または帯緑色の条線がある。花被片は長さ15~31㎜x幅4~11㎜、対生し、披針形または楕円形、鈍形または鋭形、紫青色、まれに外側に羽毛状脈模様があり、内側は紫青色で、先が暗くなり、基部に斑点がある。内花被片は外花被片より長さが2㎜短く、幅が1㎜狭く、同じサイズではほとんどなく、通常は色がわずかに明るく、喉部は透明な黄色で、まばらに毛があり、まれに帯灰色になり、基部には外花被片と同様の褐色~灰色の斑点がある。花糸は長さ3~10㎜、下半分はわずかに粗く~毛があり、黄色、基部に帯黒色の斑点があって帯黒色になり、または薄紫色の斑点がある。葯は長さ6~10㎜、黄色。葯隔はアイボリーイエロー色または帯白色。花柱は葯より短いかまたは長く、3分岐し、枝は黄色~橙色、長さ4~6㎜、先がわずかに広がる。蒴果は細長く、約・長さ15㎜x幅6㎜、淡麦わら色。種子は球形、直径1~2㎜、暗赤褐色、種沈は鋭形、縫合線は目立たない。花期は2~3月。
品種) 'Caerulescens'
46 Crocus pulchellus Herb. クロクス・プルケルス
synonym Crocus constantinopolitanus Hertoldt ex Maw
マケドニア、セルビア、ブルガリア、ギリシャ、トルコ原産。北部バルカン半島からトルコ北西部に分布する。
球茎(cormus)は凹んだ球形(depressed-globose)、直径7~15㎜。薄皮は革質~膜質、基部に亀裂がほとんど無く、薄皮の首は長さ3~5㎜、三角形の裂片があり、基部の輪は革質で、縁は不規則、少数の短い歯がある。鱗片葉は3~4個つき、紙質、白色、先に帯褐色~帯紫色の模様または斑点がある。葉は春のみ、3~5枚つき、無毛、緑色、幅4~5㎜、下面の溝は開いていて幅が広く、うねは無く、上面の白線は幅が葉の幅の約1/5。前出葉は無い。苞および小苞は膜質、白色または先に赤褐色のそばかすがあり、同長または小さい。花被筒は象牙色~帯緑色で、ときに上部にかすかに灰色または紫色の斑点や縞模様がある。花は蜂蜜の香りがあり、青ライラック色で、縦に暗色の脈があり、外側は内側よりも脈が少ない。花被片はほぼ均等、長さ18~50㎜×幅8~20㎜、倒卵形、先が鈍形または円形。外花被片は内花被片よりも脈が少なく、側脈は無いかまたは弱く、内花被片の脈は暗く、まれに薄い側脈がある。喉部は橙色で、上部は狭く、縁に黄色が散在し、無毛またはわずかに毛がある。花糸は長さ3~6㎜、黄色~橙色、密に毛がある。葯は長さ7~13㎜、白色。葯隔は狭く、白色。花柱は葯の下かわずかに上になり、多数分枝し、枝は黄橙色~赤色、通常先は広がらない。蒴果は楕円形、長さ15~25㎜×幅約8㎜、成熟すると地表面から2~5㎝の高さになる。種子は球形、直径2~2.5㎜、橙褐色~暗紫赤色、種沈があり、縫合線は小さく、種皮は平滑。花期は9~11月。2n=12。
品種) 'Albus' , 'Inspiration' , 'Michael Hoog' , 'Zephyr'
47 Crocus reticulatus Steven ex Adam クロクス・レティクラタス
synonym Crocus luteus M.Bieb.
イタリア、クロアチア、セルビア、マケドニア、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、クリミア、コーカサス、トルコ原産。標高2000mまでの森や牧草地に生える。
多年草、高さ12~18㎝。球茎はほぼ球形、直径1~1.5㎝。薄皮は革質、粗い網繊維状。鱗片葉は帯白色の鞘状。葉は2~3枚つき、線形で直立し、白色の中脈があり、花より低い。花は小さく白色又はライラック色。花被筒は白色、外花被片は地色はライラック色またはバフ色、外面に3~5本の紫色の目立つ脈がある。雄しべは3本、葯は長さが花糸の長さの2倍、柱頭より低い。果実は蒴果。種子は直径約2㎜。花期は1~3月
47-1 Crocus x reticulatus (reticulatus × angustifolius)ハイブリッド
品種) 'Ego' , 'Little Amber'
48 Crocus salzmannii J.Gay クロクス・サルズマンニー
synonym Crocus serotinus subsp. salzmannii (J.Gay) B.Mathew
synonym Crocus salzmannianus Herb.
synonym Crociris speciosa Schur
アルジェリア、モロッコ、スペイン原産。英名はSouthern Autumn Crocus。標高3500mまでの草地や岩場、または明るい森林に生える。栽培しやすく、日当たりの良い場所では一般に耐寒性がある。紫色の種類は特に庭に適しており、白い花を咲かせる美しい変種もいくつかある。
球茎の薄皮は膜質、平行繊維に分かれる。ときに匍匐茎がある。花はライラック色又は紫色を帯び、ときに濃色の脈がある。通常、花と共に5~7枚の葉がつく。花は高さ10~15㎝、ライラック色または紫色。花期は秋。
品種) 'Albus' , 'Albustel Torcal' , 'El Torcal' , 'Erectophyllus'
49 Crocus sarichinarensis (Rukšāns) Rukšāns クロクス・サリチナレンシス
synonym Crocus flavus subsp. sarichinarensis Rukšāns
トルコ原産。英名はyellow crocus , Dutch yellow crocus。
球茎(cormus)は扁球形、直径10~12㎜。薄皮(tunic)は平行な繊維であり、外側の薄皮は上部に広がり、基部でバンド状の裂片になり、薄皮の首は長くて硬く、主な薄皮の繊維と宿存する鱗片葉により作られ、基部の輪(rings)は無い。鱗片葉は4~5個つき、硬く、長く、褐色で、首に似ている。花序の花の基部にある花序の葉、または長い4~7枚の葉は無毛、暗緑色、幅1~1.5㎜、下面に溝があり、突起はない。葉の上面の白線は葉幅の1/5程度と細い。前出葉(profile)は無い。苞と小苞は白色、しばしば帯褐色の斑点がある。大きな苞は通常狭い線形で、小苞を取り囲んでいるが、小苞が苞よりも長い場合もある。花被筒は灰色や帯紫色の斑点や縞模様があり、まれに全体が帯白色になる。花は通常黄色の色合いで、まれに白色や象牙色になり、外花被片は灰色~帯褐色の斑点、そばかすがあり、影の縞模様がある。花被片は長さ21~34㎜×幅10~16㎜、倒卵形~倒披針形、先は鈍形~鋭形、内花被片と外花被片は同じサイズ、外花被片はわずかに狭く、内側の部分は同色、外花被片の外面には帯褐色の斑点、そばかす、または条線がある。内花被片の内側と外側が同色で、暗色、灰色または帯褐色の斑点があり、基部に斑点がある。喉部は無毛、体花被片よりも暗い黄色または橙黄色である。花糸は長さ3~5㎜、無毛からパピラがあり、淡黄色~暗黄色。葯は長さ10~17㎜、黄色。葯隔は不確定。花柱は常に葯の先端の下で終わり、同じになることはまれで、3分岐する。枝は再び2またはそれ以上分岐し、先端はわずかに広がり~短く2裂する。蒴果は楕円形、長さ20㎜×幅7㎜・以下、成熟すると地面から高さ3~4㎝になる。種子は球形、しわがあり、褐色~暗褐色、種沈(caruncle)と縫合線は明瞭、色は薄い。花期は3月。
50 Crocus sativus L サフラン
ギリシャ原産。チェコスロバキア、イラン、イタリア、モロッコ、パキスタン、スペイン、トルコ、西ヒマラヤ(ロシア)に帰化。中国名は番红花(fan hong hua) 、英名は saffron , saffron flower , saffron crocus。花柱と柱頭が黄色の染料(saffron dye)として、薬用、料理に使われる。
球茎(cormus)は大きく、直径32㎜まで、底は平ら、薄皮は薄く、淡黄色~黄褐色、細かい網状の繊維、基部に輪は無い。鱗片葉は4~5個つく。葉は5~11枚つき、長さ15~20㎝、幅2~3㎜、縁には縁毛があり、竜骨がある。前出葉がある。苞と小苞があり、小苞は苞よりもずっと小さい。花は1、2個つき、芳香がある。花被筒は紫色。花被片は倒披針形、鈍形、長さ40~50㎜×幅約20㎜、紫色~明るいライラック紫色、暗色の脈があり、基部近くに暗色の斑点があり、喉部は毛があり、帯白色~紫色。雄しべは長さ約2.5㎝。花糸は長さ7~11㎜、無毛、帯紫色。葯は長さ5~20㎜、黄色、先がわずかに曲がり、尖る。葯隔は不明瞭。花柱は葯の基部または中央の高さで、3分岐し、枝は暗赤色で柔らかく垂れ下がり、各枝は長さ25~32㎜。蒴果や種子は無い。花期は10~12月。2n=3x=24。
品種) 'Albus' , 'Pallasii'
51 Crocus sieber J.Gay クロクス・シエベル
クレタ島原産。英名はCretan crocus , snow crocus。観賞用に栽培され。野生化する。
小型の多年草、高さ7~10㎝。球茎の薄皮が細かい網繊維状。葉は上面に白線がある。花は白色~ライラック色、ときに外花被片の外側に紫色の斑紋があり、のど部は黄色。雄しべは鮮やかな橙色。花柱は分岐し、鮮やかな橙色。花期は3~4月
品種) 'Albus' , 'Bowles's White' , 'Chiara' , 'Cream Diamond' , 'Firefly' , 'George' , 'Hubert Edelsten' , 'Ronald Ginns' , 'Spring Beauty' , 'Vardousia' , 'Violet Queen'
ハイブリッド品種) Crocus 'Midas Touch'(sieberi ×cvijicii or chrysanthus)
52 Crocus speciosus M.Bieb クロクス・スペキオスス
ブルガリア、北コーカサス(ロシア)、トランスコーカサス(ジョージア、アゼルバイジャン、アルメニア)、トルコ原産。英名はfall crocus。
球茎(cormus)は凹んだ球形(depressed-globose)、直径18㎜まで。薄皮は革質~膜質、基部で輪状に裂け、裂片の幅は少なくとも2㎜あり、まれに裂ける。薄皮の首は古い鱗片葉の薄皮からなる。基部の輪はときに短い、細かい歯がある。鱗片葉は少なくとも3個あり、先端が帯緑色、褐色に変わることがある。葉は3~6枚つき、縁は無毛~まばらにパピラがあり、灰褐緑色(taupe-green)、幅2~5㎜、下面に溝があり、うねはない。葉上面の白線は幅が葉幅の1/3以上ある。葉は花後の秋に現れることがある。前出葉は無い。苞と小苞は等しくなく、白色~わずかに帯緑色。小苞は短い。花被筒は帯白色~薄帯緑色、または黄緑色、上部には灰褐色~帯紫色のそばかすがあり、ときにかすかに縞模様がある。花は淡紫色で、脈が目立つ。花被片は倒卵形~倒披針形、先は鈍形または鋭形、不均等で、内花被片は外花被片より短く、幅が広く、内側はライラック色で、暗色の脈が有または無。外花被片は長さ48~57㎜×幅18~23㎜、外側は薄~暗ライラック色、通常は不明瞭な脈があり、下部の黄色の基部の斑点に小さな褐色の線がある。内花被片は長さ42~55㎜×幅20~25㎜。喉部は無毛、白色または黄色、まれに縁が灰色または帯褐色になる。花糸は長さ4~10㎜、無毛、白色、黄色~橙黄色。葯は長さ11~35㎜、暗黄色。葯隔はアイボリー色。花柱は多数分岐し、枝は黄色~暗橙色、各枝は再分岐し、葯より長く、ときに短くなる。蒴果は黄色または淡褐色、長さ25~30㎜×幅約10㎜、地表面から3~4㎝上にある。種子は不規則な球形、直径2~2.5㎜、暗赤褐色、種沈は小さく、目立つ、暗色、縫合線は不明瞭。花期は10~11月。2n=8, 10。
品種) 'Aino' , 'Aitchisonii' , 'Albus' , 'Artabir' , 'Cassiope' , 'Conqueror' , 'Globosus' , 'Lithuanian Autumn' , M&P , 'Oxonian' , 'Pollux' , 'Trotter'
53 Crocus suaveolens Bertol. クロクス・スアベオレンス
synonym Crocus imperati subsp. suaveolens (Bertol.) B.Mathew
イタリア原産。草地、低木林に生える。
球茎は卵形、薄皮が平行な繊維状。花はライラック色、外花被の外側がバフ色、暗紫色の斑紋がある。小苞が無い。
球茎は卵形~ほぼ球形(まれに梨形)、幅(7~)9~18(~21)㎜、長さ(7~)8~17(~19)㎜。薄皮(tunics)は膜質~糸状、繊維は平行で、しばしばかすかに網目状になり(特に先端に向かって)、まれにやや紙質。鱗片葉は通常 3~5個つき、膜質だが、通常は弱い帯緑色の脈と草質の先端を持つ。葉は無毛、暗緑色、開花時に拡大し(通常、直立~弓状直立で、花茎より短いかまたは同長)、長さ(3~)6~21(~28)㎝×幅(1.3~)1.5~3.5(~4.7)㎜。花茎には前出葉がある。花は1~3(4)個つき、春咲き、芳香があり、小苞はない。苞は鋭形~尖鋭形、ときに二股になり、白緑色。花は長さ(4.5~)6.6~18.9(~26)㎝、花被筒は帯白色、先端に紫色の縞がある。内花被片は卵形~披針形、先は円形~鈍形(ときに鋭形)、長さ(22~)26~40(~48)㎜、幅(9~)10.8~21(~24)㎜、一様にライラック色~すみれ色(まれに帯紫色~白色)である。外花被片は内花被片とほぼ同じ大きさだが、通常わずかに幅が狭く長く、内側は内花被片と同色だが、外側ははるかに明るく(淡いライラック色~帯白色、まれに象牙色)、濃紫色の不規則な縦縞がある。喉部は黄色(ときに帯黄緑色または非常に淡い黄色)で、毛はない。葯は外向きに裂開する。雄しべの花糸は長さ(4.2~)5.2~9.3(~12)㎜、葯の長さの半分~同じくらい [長さ(6.3~)9.3~16(~19)㎜]。柱頭は房状へりがあり(fimbriate)、黄橙色で、葯とほぼ同色。葯は雄しべより長いかまたは短い。蒴果は長楕円形~楕円形で、成熟すると地表かそれ以上の高さになり、長さ12~25㎜×幅5~12㎜。種子は帯赤色~淡褐色、ほぼ球形、長さ2~4㎜、明瞭な翼があり、種沈がある。2n=26。花期は2~3月。果期は5~6月。
品種) 'De Jager' , 'Jager'
54 Crocus suworowianus K.Koch クロクス・スウォロウィアヌス
synonym Crocus kotschyanus subsp. suworowianus (K.Koch) B.Mathew
トルコ、トランスコーカサス(ジョージア、アゼルバイジャン、アルメニア)原産。標高600~1800mの山地には生える。
球茎(cormus)は扁平または凹んだ球形、扁平で、直径20㎜まで。薄皮は平行な繊維状、膜質。薄皮の首は小さく、不明瞭で、先は非常に短い。基部の輪は無い。鱗片葉は3~4個、白色。葉は春にのみ現れ、4~6枚つき、無毛、緑色、幅3~3.5㎜、下面の竜骨の幅は非常に広く、溝は平滑、上面に葉幅の1/3~1/2の幅の白線が入る。前出葉は無い。苞は白色、鱗片葉を超えてほとんど、またはまったく突き出ない。小苞は幅が狭く、苞の中に隠れる。花被筒は白色~帯黄色。花は芳香が無く、漏斗形、内側はアイボリー色、ときに基部は紫色になり、放射状の脈があり、脈が花被片の端に達することもあるが、まれに薄藤色で暗色の脈がある。花被片は長さ20~45㎜、外面は白色~淡藤色、通常は脈がないか、内面と同様に薄色の脈があり、狭披針形、先は円形~鋭形、ときに細いうねがありる。喉部は無毛、白色~淡黄色、通常は花被片の基部に2個の淡黄色の斑点がある。花糸は長さ3~7㎜、無毛、帯白色~黄色。葯は長さ9~15㎜、アイボリー色、レモンイエロー色~淡黄色、花粉はアイボリー色~黄色。葯隔は通常黄色で、葯よりも暗色。花柱は3分岐し、枝は黄色~橙色、各枝は先に縁飾りまたは房がつく。蒴果は長さ12~27㎜×幅6~7㎜、鋭形、灰白色~バフ色(黄褐色)味を帯び、成熟すると地表面から2.5~3㎝上にある。種子は細長く、長さ約3㎜×幅1.5~2㎜、暗赤褐色、種沈は小さく、目立ち、黒褐色、縫合線は小さい。花期は(8~)9~10月。2n=20。
品種) 'Reliant'
55 Crocus thirkeanus K.Koch クロクス・ティルケアヌス
synonym Crocus gargaricus subsp. herbertii B.Mathew
トルコ原産。標高1450~1900mの高山に生える。
球茎(cormus)は球形~ほぼ球形、直径5~7㎜、匍匐茎があり、匍匐茎は長さ5~10cm、小球茎(cormuscles=cormlet)を形成する。小球茎は長さ4~5㎜×幅1~2㎜、米に似ている、薄皮(tunic)は細い平行繊維をもつ。薄皮の首は長さ2㎜、主薄皮の細長い繊維からなる。基部の輪(ring)は無い。鱗片葉(cataphylls)は3個で、白色、上端は帯褐色または帯緑色。葉は花序の花より短く、2~3枚つき、無毛、幅2~4㎜、下面には溝があり、うねは無く、上面に葉幅の1/4~1/3の幅の白線が入る。前出葉は無い。苞は銀色、帯緑色の脈があり、鱗片葉から出る。小苞はない。花被筒は淡黄色から緑黄色。花は淡または明るい黄土色~橙黄色、外側には装飾がない。花被片は倒卵形~倒披針形、先が鈍形または鋭形、すべての花被片は内面と外面が同色、内花被片だけに喉の付近に目立つ暗色の脈がある。外花被片は長さ26~32㎜×幅10~15㎜。内花被片は長さ24~30㎜×幅8~14㎜。喉部は無毛、黄土色~橙黄色で、花被片よりも暗色、縁は光線状。花糸は長さ3~5㎜、無毛からわずかにパピラがある。葯は長さ5~9㎜、黄色。葯隔はわずかに淡黄色または無色。花柱は通常葯の下にあるか、まれに同じ長さになり、3分岐し、まれに単一、枝は黄色~橙色で、長さは様々で、先がわずかに広がり、短い縁飾りがある。蒴果は小さく、半円形~楕円形、長さ10~12㎜×幅4~8㎜、黄褐色、成熟時には地面から2~3㎝上にある。種子は球形、長さ2~3㎜×幅1.5~2.5㎜、暗褐色、しわがあり、種沈は小さく、目立ち、暗色、縫合線はほとんど不明。花期は3~5月。2n=30。
56 Crocus tommasinianus Herb. クロクス・トンマシニアヌス
コスタリカ、クロアチア、セルビア、ボスニア、モンテネグロ、ブルガリア、ハンガリー原産。英名はsnow crocus, woodland crocus, early crocus, Tommasini's crocus。丘陵地帯や森林地帯に生える。 観賞用として栽培され、野生化している。
球根性多年草、栽培種の中では小型で、高さ約7.5㎝。球茎は凹んだ球形(depressed-globose)、直径10~15㎜、薄皮が細かい繊維状、ほとんど平行。葉は2(~3)枚、基部につき、細い線形。小苞は無い。花は淡ライラック色~淡紫色、長さ2~4㎝で細長く、花被筒は白色、花被片は6枚、長さ22~43㎜×幅12~18㎜、淡銀ライラック色~赤紫色または白色(f. albus)、外側の花被片は先端が銀色や暗色で重なることがある。喉部に毛がある。花糸は長さ6~8㎜、白色。葯は長さ10~14㎜。花柱は淡橙色。花柱の枝は3本、細く、葯の高さより下。花は夜に閉じて朝に開くが、雨の日や曇りの日は閉じたままになることが多い。蒴果は長さ10~14㎜×幅8~9㎜。種子は長さ2.2~4㎜、赤褐色。種沈がわずかに発達する。花期は2~3月[冬~春咲き]。2n=16。
品種) 'Albus' , 'Balkan White' , 'Barr's Purple' , 'Bobbo' , 'Bosnian Pearl' , 'Claret' , 'Eric Smith' , 'Hummingbird' , 'Lilac Beauty' , 'Lilac Striped' , 'Lyn's Pink' , 'Petrovac Rose' , 'Pictus' , 'Pink Pictus' , 'Roseus' , 'Rubinetta' , 'Ruby Giant' , 'Taplow Ruby' , 'Wandering Minstrel' , 'Whitewell Purple' , 'Wisley Wine' , 'Yalta'(hybrid)
57 Crocus veluchensis Herb. クロクス・ベルチェンシス
アルバニア、ブルガリア、ギリシャ、ユーゴスラビア原産。標高1000~2500mの高山の草原に生える。
球茎は薄皮が細かい網目状になる。葉は花とともに出て、2~4枚つき、幅2~5㎜。花は高さ約10cm、淡いライラック色~暗ライラック色、花被片の先端が黒色になる。喉部は白色。花柱は黄色または橙色で、たまにほとんどが白色で、先端近くで分岐して広がる。花期は春。C. sieberi subsp. sublimis によく似ているが、喉部が黄色。2種が重なる場所では、推定上の雑種が見られる。2n=20、24、26、46。
品種) AB 9504 , 'Nights of Rhodop' , 'White Night'
58 Crocus vernus (L.) Hill ハナサフラン
synonym Crocus albiflorus Kit. ex Schult.
synonym Crocus vernus subsp. albiflorus (Kit. ex Schult.) Ces.
オーストリア、チェコスロバキア、ハンガリー、イタリア、バルカン諸国、ポーランド、ルーマニア、ウクライナ原産。
球茎は凹んだ球形(depressed-globose)、直径約4㎝、球茎の薄皮は細かい繊維状。薄皮の首は長さ10㎜まで、たまに長く、やや剛毛があり、主な薄皮の繊維が不規則に伸び作られる。花は春に3週間ほど咲き、夜に閉じ、朝に開き、曇りや雨では開かない。葉は数個、根生し、幅3~8㎜、線形、基部に鞘があり、葉表は中央に淡色の筋がある。葉は花が終わると長く伸び、数週間語に休眠状態になり、黄色くなる。花は普通1個つき、高さ10~15㎝。花被は直径4~5㎝、杯形~鐘形、紫色~青色又は白色、ときに濃色のストライプが入り、筒部は花被片より淡色にならず、無毛~短毛がある。喉部は毛があり、ほとんど白色、ときにわずかに灰色または薄紫色を帯びる。花被片は6個、長さ24~32㎜×幅9~12㎜。外花被片は白色または青色、または濃い縞模様があり、V字形のしみは無い。内花被片はときに縞模様が多くなる。子房下位。雄しべは3本、直立し、長さ(5~)7~10㎜。葯は黄色、長さ(5~)8~12㎜、通常花糸と同長。雌しべ1個、花柱は普通、橙色~赤色、先は3裂し、柱頭は房状、普通、橙色~赤色。果実は蒴果、長さ15~20㎜。2n=16。花期は3~4(7)月[春咲き Spring Crocus]。冬~春咲きの品種もある。
多くのハイブリッドがつくられている。ハイブリッドはDutch crocus、 large flowering crocus、 giant crocus、spring crocusと呼ばれ、黄色の花もある。Dutch crocus、giant Dutch crocusはCrocus vernusの選抜又はハイブリッドである。
品種) 'Albion' , 'Balkan White' , 'Blue Mountains' , 'Blue Ribbon' , Carpathian Wonder'(Heuffelianus Group), Croatia' , Dark Eyes'(Heuffelianus Group), 'Delnice' , 'Drina Marvel' , Early Perfection' , 'Enchantress' 'Fantasy' , 'Flower Record' , 'Generaal Vetter' , 'Glory of Limmen' , 'Golden Yellow' 'Graecus , 'Grand Maitre' , 'Grandiflorus' , 'Haarlem Gem' , Heuffelianus' , 'Jeanne d'Arc' , 'Kathleen Parlow' , 'King of the Blues' , 'King of the Striped' , 'King of the Whites' , 'Krasno Polje' , 'Lavender Symphony' , 'Little Dorrit' , 'Michael's Purple' , National Park'(Heuffelianus Group) , Negro Boy' , 'Oradea' , 'Paulus Potter' , 'Peter Pan' , 'Pickwick' , 'Pordoi' , 'Purple Apex' , 'Purple Desire' , 'Purpureus Grandiflorus' , 'Queen of the Blues' , 'Remembrance' , 'Silver Coral' , 'Sky Blue' , 'Snowstorm' , 'Striped Beauty , 'Tatra Shades' , 'Twilight' , 'Twinborn' , 'Vanguard' , 'Variabilis' , 'Victor Hugo' , 'Wandering Minstrel'(tommasinianus x vernus), 'Whale Shark' , 'White Christmas' , Yellow Mammoth'
59 Crocus versicolor Ker Gawl. クロクス・ベルシコロル
フランス、イタリア原産。英名はSpring Crocus。標高1200mまでの岩場に生える。
多年草、球茎は長い卵形(elongated-ovoid)、球茎の薄皮は膜質、古くなると平行の繊維状。下部の葉は2枚の仏炎苞にのみ退化し、上部の葉は3~7枚つき、緑色、全縁、線形、細く幅1.5㎜未満、長さ15㎝までで花より短く、白色の縦線が入る。花は高さ10㎝まで、ゴブレット形(goblet-shaped)、長さ25~35㎜、花被片6個、ほぼ同形、白色、ライラック色、紫色、しばしば明瞭なストライプが出る。雄しべは3本、橙色。果実は楕円形、 胞背裂開蒴果、3室があり、長さ12~15㎜。種子は不規則な半球形または卵形、長さ2.5~3㎜x幅4~4.5㎜、橙赤色。花期は(1)2~4(5)月。
品種) JMH.8215 , 'Picturatus'
60 Crocus weldenii Hoppe & Fürnr. クロクス・ウェルデニー
synonym Crocus biflorus subsp. weldenii (Hoppe & Fürnr.) K.Richt.
イタリア、クロアチア、ボスニア、セルビア、アルバニア原産。草原、石の多い場所、薄い森林に生える。Crocus biflorusの亜種と分類されていた。
多年草、球茎がある。球茎の薄皮は膜質。花は白色、のど部は黄色にならない。ときに外花被にライラック色~紫色の筋がある。
品種) 'Albus' , 'Fairy' , 'Miss Vain'
61 ハイブリッド
(1) Crocus × fritschii Derganc
オーストリア、ユーゴスラビア原産。 C. duplex × C. vernus. 自然交雑種
(2) Crocus × hybridus Petrovič
ブルガリア、ユーゴスラビア原産。 C. adami × C. chrysanthus 自然交雑種
(3) Crocus × paulineae Pasche & Kerndorff
トルコ原産。
C. abantensis × C. ancyrensis 自然交雑種
(4) Crocus x bornmuelleri Freyn ゴールデンクロッカスハイブリッド
C. biflorus x C. chrysanthusの人工交配種。
品種) 'Artur Klark', 'Wandering Minstrel' (tommasinianus x vernus)
(5) Crocus × cultorum Crocus vernus garden hybrids
英名はlarge Dutch Crocus。
品種) 'Balkan White' , 'Blue Ribbon' , 'Grand Maître , 'Haarlem Gem' , 'Jeanne d'Arc' , 'National Park' , 'Pickwick' , 'Remembrance' , 'Snowstorm'
(6) Crocus × jessoppiae Bowles
C. candidus × C. chrysanthus.の人工交配種。
(7) Crocus × leonidii Rukšāns
C. angustifolius × C. reticulatus.の人工交配種。
品種) 'Early Gold'
(8) Crocus × luteus Lam.
synonym Crocus × stellaris Haw.
C. angustifolius × C. flavus の人工交配種。
品種) 'Golden Yellow' , 'Stellaris'
(9) Crocus × submedius Collins
unplaced
(10) Crocus x goteburgensis 'Tricolor'
C. scardicus x C. pelistericusの人工交配種。
(11) その他ハイブリッド
品種) AHEP 8307 , 'Albidus' , 'Alionka' , 'Aqua' , 'Ard Schenk' , 'Aubade' , 'Autumn Queen' , 'Baconsfield' , 'Big Boy' , 'Bishop' , 'Blizzard' , 'Blue Jay' , 'Blue Ocean' , 'Blue Ribbon' , 'Carpathian Wonder' , 'Celeste' , 'Celia' , 'Charlotte Patti' , 'Dark Eyes' , 'Deep Water' , 'Dutch Yellow' , 'Early Perfection' , 'Ego' , 'Enchantress' , 'Fantasy' , 'Florane' , 'Geel' , 'Giant' , 'Glory of Limmen' , 'Glory of Sassenheim' , 'Golden Mammoth' , 'Golden Yellow' , 'Grand Lilac' , 'Haarlem Gem' , 'Ice Queen' , 'Ivory Princess' , 'Janis Ruksans' , 'Joan of Arc' , 'Karin' , 'Kathleen Parlow' , 'Keith Rattray' , 'King of the Blues' , 'King of the Whites' , 'Large Yellow' , ligusticus 'Millesimo' , 'Lilac Wonder' , 'Little Amber' , 'Little Dorrit' , 'Lune' , 'Mammoth Yellow' , 'Margot' [1912] , 'Margot' Blakeway-Phillips , 'Midas Touch' , 'Myddelton Cream' , 'Nida' , 'Orange Monarch' , 'Panda' , 'Paulus Potter' , 'Peter Pan' , 'Pieta' , 'Pink Goblet' , 'Polar Bear' , 'Pollux' , 'Purple Heart' , 'Queen of the Blues' , 'Rainbow Gold' , 'Saturnus' , 'Scipio' , 'Sky Blue' , 'Snow Leopard' , 'Snowstorm' , 'Spring Pearl' , 'Surprise' , 'Twilight' , 'Twinborn' , 'Uschak Orange' , 'Wandering Minstrel' , 'Waterlily' , 'White Christmas' , 'Willem van Eeden' , 'Yalta' , 'Yellow Giant' , 'Yellow Mammoth'
参考
1) Flora of China @ efloras.orgCrocus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=108403
2) GRINCrocus
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=3087
3) Plants of the World Online | Kew ScienceCrocus
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:20293-1
4)Pacific Bulb SocietyCrocus
https://www.pacificbulbsociety.org/pbswiki/index.php/Crocus
5)Turkiye e-FlorasiCrocus
https://www.turkiyeflorasi.org.tr/search.html?query=Crocus
Crocus
https://turkiyeflorasi.org.tr/view.html?taxon=TR0000004194#Crocus
Crocus thirkeanus K.Koch
https://turkiyeflorasi.org.tr/view.html?taxon=TR0000004335
6)Plants (Basel). 2023 Jul; 12(13): 2420.
Crocus heuffelianus—A New Species for the Bulgarian Flora from Series Verni (Iridaceae)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10346320/
7)ibuflora Bolu Abant İzzet Baysal UniversityCrocus biflorus Mill.
http://ibuflora.ibu.edu.tr/en/species/crocus-biflorus
8)Oxford AcademicBotanical Journal of the Linnean Society, 2008, 158, 194–214
Crocus imperati and Crocus suaveolens (Iridaceae), two controversial endemic crocuses from Central and Southern Italy – morphometrics, lectotypification and chorology
https://academic.oup.com/botlinnean/article-pdf/158/1/194/17035370/j.1095-8339.2008.00851.x.pdf
9)Flora Mediterranea 27 — 2017 p.276-2088Karyological study of miscellaneous Crocus (Iridaceae) species
https://www.herbmedit.org/flora/FL27_276-288.pdf
10)STAPFIA 103 (2015): 27–65
The Genus Crocus (Liliiflorae, Iridaceae): Lifecycle, Morphology, Phenotypic Characteristics, and Taxonomical Relevant Parameters
https://www.zobodat.at/pdf/STAPFIA_0103_0027-0065.pdf