エリトリキウム・カナム

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Flora of Mikawa

ムラサキ科 Boraginaceae ミヤマムラサキ属

英 名 hoary forget-me-not
中国名 灰毛齿缘草 hui mao chi yuan cao
学 名 Eritrichium canum (Bentham) Kitamura
エリトリキウム・カナムの花
エリトリキウム・カナムの咢
エリトリキウム・カナムの萼2
エリトリキウム・カナムの花冠の付属体
エリトリキウム・カナムの茎
エリトリキウム・カナム
エリトリキウム・カナム花序
エリトリキウム・カナム葉
花 期 6~7月
高 さ 15~40㎝
生活型 多年草
生育場所 栽培種
分 布 外来種  中国、インド、ネパール、カシミール、パキスタン、アフガニスタン原産
撮 影 西尾市 20.4.30
エリトリキウム・カナムはミヤマムラサキ属の観賞用の栽培種。写真は園芸品種のベイビーブルース。片親がエリトリキウム・カナムとされている。1年草として丈夫で育成が簡単、高さ25㎝以下、青色の花が多数つく。
 多年草、高さ15~40㎝。茎は直立又は傾伏し、基部がしばしば木質になり分枝せず又は上部で分枝し、密に伏した白色の絹毛がある。根生葉の葉柄は長さ5㎝以下、軟毛がある。葉身は狭披針形、長さ8㎝×幅6㎜以下、密に白色の絹毛があり、基部は楔形、先は鋭形~尖鋭形。茎葉は1個~数個、花序の下につき、無柄、披針形~卵状披針形、上部では小さくなる。花序は2又は3個、分岐し、多数の花がつき、花時には散房花序になり、花後には総状花序状になり、長さ15㎝以下になる。苞は線形。花柄は直立、果時に長さ1~1.5㎝、短い軟毛がある。咢片は卵形、長さ1~2㎜、伏した軟毛があり、先は鈍形。花冠は薄青色、鐘状車形、筒部は短く、のど部は黄色又は橙色、付属体は台形又は低い台形。花冠裂片は類円形、幅約3㎜。小堅果は類こま形、縁の鋭い刺(glochids)を除いて約長さ2㎜×幅1.5㎜、縁の鋭い刺は長さ約1㎜、内側の基部で合流し、無毛又は短い軟毛があり、又はこぶがあり、外側は平ら又はわずかに凸面、まばらに軟毛があり、内側の基部に付着痕がある、花期と果期は6~7月。2n = 24。

ミヤマムラサキ属

  family: Boraginaceae - genus Eritrichium

 多年草又は1年草、伏した剛毛又は絨毛がある。葉は互生。集散花序は頂生、分枝せず又は分枝して円錐花序になり、まれに花が単生。果時の花柄は直立又は反曲する。咢は基部まで又は基部近くまで5深裂し、裂片は垂直~後屈し、果時に大きくなる。花冠は青色、薄青色、又は、薄紫色、まれに黄色又は白色、鐘状車形、のど部に付属体をもち、まれに付属体が不明瞭又は無い。花冠裂片は蕾では重なり、花時には直立又は散開する。雄しべは突き出ない約は円形、卵形~長円形。花柱と柱頭は単生、普通、小堅果を超えない。肥大した花托(gynobase)は平らな円錐状又は半球形、長さ1㎜以下、基部で高さより幅が広い。小堅果は4個、全て又はいくつかが成熟し、こま形~卵形~三角状卵形、背腹側が扁平、外側は普通、円盤形、うねや縁に普通、翼があり、歯があり又は鋭い棘がある。
 世界に約50種があり、主にアジアに分布し、ヨーロッパや北アメリカに少数分布する。

ミヤマムラサキ属の主な種と園芸品種

1 Eritrichium canum (Bentham) Kitamura  エリトリキウム・カナム
 中国、インド、ネパール、カシミール、パキスタン、アフガニスタン原産。中国名は灰毛齿缘草 hui mao chi yuan cao 。英名はhoary forget-me-not
 多年草、高さ15~40㎝。茎は直立又は傾伏し、基部がしばしば木質になり分枝せず又は上部で分枝し、密に伏した白色の絹毛がある。根生葉の葉柄は長さ5㎝以下、軟毛がある。葉身は狭披針形、長さ8㎝×幅6㎜以下、密に白色の絹毛があり、基部は楔形、先は鋭形~尖鋭形。茎葉は1個~数個、花序の下につき、無柄、披針形~卵状披針形、上部では小さくなる。花序は2又は3個、分岐し、多数の花がつき、花時には散房花序になり、花後には総状花序状になり、長さ15㎝以下になる。苞は線形。花柄は直立、果時に長さ1~1.5㎝、短い軟毛がある。咢片は卵形、長さ1~2㎜、伏した軟毛があり、先は鈍形。花冠は薄青色、鐘状車形、筒部は短く、のど部は黄色又は橙色。付属体は薄青色、台形又は低い台形。花冠裂片は類円形、幅約3㎜。小堅果は類こま形、縁の鋭い刺(glochids)を除いて約長さ2㎜×幅1.5㎜、縁の鋭い刺はほとんど鈎があり長さ約1㎜、内側の基部で合流し、無毛又は短い軟毛があり、又はこぶがあり、外側は平ら又はわずかに凸面、まばらに軟毛があり、内側の基部に付着痕がある、花期と果期は6~7月。2n = 24。
品種) 'Baby Blues'.

2 Eritrichium incanum (Turcz.) A.DC.  ルリザクラ 瑠璃桜
  synonyms Eritrichium sichotense M.Popov
 朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は钝叶齿缘草 dun ye chi yuan cao 。英名はeast asian alpine foget -me-not
 多年草又は2年草、高さ20~40㎝。茎は直立、数本叢生し、1~3本、葉は基部にロゼットを作り、密に束生する。根生葉はへら形~へら状披針形、長さ2~7㎝×幅0.2~2㎝、灰白色、剛毛と絹毛を開出し、毛は基部で円盤状になり、葉の基部は漸尖形、縁は縁毛があり、先は鋭形~鈍形。茎葉は線形~狭倒披針形。花序は頂生、花が数個~多数つき、花後に長さ6~15㎝の総状花序になる。苞は葉状。花柄は長さ1~2㎝、直立し、軟毛がある。花は広く間隔が開く。咢片は線形~線状日新規、長さ2~3㎜、絹毛があり、外側に剛毛が開出し、短い伏した軟毛がある。花冠は青色、鐘状車形。花冠筒部は長さ2.5~3㎜。付属体は薄青色、三日月形~低い台形(trapeziform)のど部を超え、下部にパピラのある毛状体(emergence)をもつ。花冠裂片は開出し、類円形、長さ2.5~3㎜。葯は狭卵形長さ約1㎜。花托(gynobase)は長さ0.5~0.8㎜。小堅果はこま形、平滑、光沢があり、縁の刺を除いて長さ約2㎜×幅1~1.2㎜外側は平ら又はわずかに凸面、縁の肋は不規則な細かい刺があり、刺の先には鈎が無く、基部に付着痕がある。花期と果期は7~8月。

3 Eritrichium mandshuricum M.Popov  ホソバルリザクラ 細葉瑠璃桜
 中国、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン原産。中国名は东北齿缘草 dong bei chi yuan cao

4 Eritrichium nipponicum Makino  ミヤマムラサキ 深山紫
 日本(北海道、本州中部地方)原産。亜高山帯~高山帯の岩場、砂礫地に生える。
 多年草。高さ5~15㎝、太い根茎がある。茎は平伏、斜上する。茎や葉に不等長の上向きの白色の剛毛が密にある。根生葉はロゼットになり、線状披針形、長さ1~6㎝×幅2~6㎜、質が堅い。茎葉は互生し、無柄、約10個つき、長さ1~2.5㎝×幅3~5㎜、基部は楔形、全縁、先は鈍形。花序や花柄は花後に伸びる。花は薄青紫色。花柄は長さ7~12㎜。萼は緑色、5深裂し、裂片は狭楕円形、先は鈍形、細かい毛がある。苞は広線形、長さ3~7 ㎜。花冠は直径8~10 ㎜、車形、先は5深裂し、平開する。花冠裂片は広楕円形、先は円形、花冠筒部は短く、のど部に黄色の付属体がある。付属体は鱗片状、先が凹み、下部が黄色く膨らむ。雄しべは5個、突き出ない。雌しべは1個。小堅果は長さ約1.5㎜、斜めに花托に付き、縁に1列の鈎状の刺があり背面に細毛がある。花期は7~8月。
4-1 Eritrichium nipponicum Makino var. albiflorum Koidz.  エゾルリムラサキ 広義
  synonyms Eritrichium nipponicum Makino var. yesoense (H.Hara) Kitag.
  synonyms Eritrichium sachalinense M.Popov 
 日本(北海道、本州の秋田県)、サハリンに分布。
全体に大きく、白色の毛が多い。剛毛は質が硬く、太くて長い。花の色が濃く、青色。花期は7~8月。
4-1-1 Eritrichium nipponicum Makino var. albiflorum Koidz. f. albiflorum (Koidz.) H.Hara  シロバナエゾルリムラサキ 白花蝦夷瑠璃紫
4-1-2 Eritrichium nipponicum Makino var. albiflorum Koidz. f. yesoense H.Hara  エゾルリムラサキ蝦夷瑠璃紫

5 Eritrichium villosum (Ledeb.) Bunge  チシマルリザクラ  千島瑠璃桜
 中国、モンゴル、ロシア、インド、カシミール、アフガニスタン、カザフスタン、パキスタン原産。中国名は长毛齿缘草 chang mao chi yuan cao

【類似種】
6 Amblynotus rupestris (Pallas ex Georgi) Popov ex L. コウアンルリザクラ
  synonyms Eritrichium maackii Maxim.
  synonyms Eritrichium davuricum (Pallas ex Roemer & Schultes) Brand;
  synonyms Eritrichium rupestre (Pallas ex Georgi) Bunge
  synonyms Eritrichium davuricum (Pallas ex Roemer & Schultes) Brand
  synonyms Eritrichium obovatum (Ledebour) A. de Candolle
 中国、モンゴル、ロシア原産。1種だけのAmblynotu属に分類されている。中国名は钝背草 dun bei cao 。

参考

1) Plants of the World Online | Kew Science
 Eritrichium  
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30004212-2
2)Flora of China
 Eritrichium  
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=112098
3) GRIN
  Eritrichium  
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=4424
4)植物研究雑誌第38巻第10号1933 p299-308
 日鮮満産ミヤマムラサキ属植物について  
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_038_299-308.pdf