エンレイソウ 延齢草
Flora of Mikawa
シュロソウ科 Melanthiaceae エンレイソウ属
学 名 | Trillium apetalon Makino synonym Trillium smallii auct. non Maxim. |
花 期 | 4~7月 |
高 さ | 20~40㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 山地の林下 |
分 布 | 在来種 北海道、本州、四国、九州、千島、サハリン |
撮 影 | 栂池自然園 07.7.27 |
エンレイソウは中国に自生しない。中国ではシロバナエンレイソウを延龄草(yan ling cao)といい、中国の漢方薬の延齢草根はシロバナエンレイソウの根茎である。旧分類ではユリ科に属した。
茎の先に菱形の先が尖った3枚の葉を輪生する。葉は長さ10~20㎝の菱形、ユリ科ではあるが、葉には網状脈がある。葉の中心から立ち上がる花柄の先に花を1個だけつける。花は緑色~黒紫色の外花被片(蕚片)3個だけで、内花被(花弁)は普通無い。2n=20の4倍体であり。変異がある。
三河ではほとんど見られないものである。奥三河地方で見られるのはミヤマエンレイソウ(シロバナエンレイソウ)であり、3個の白い内花被片がある。
コジマエンレイソウTrillium amabile は北海道、サハリンに分布し、花が紅紫色、 外花被片3個があり、内花被片はあるものと、無いものがある。
多年草、普通、丈夫な根茎がある。茎は直立し、単純で、基部に少数の茶色の鱗片状の鞘がある。葉は3個、頂部に輪生し、葉柄は無または短、菱状円形~卵形、主脈が3本又は5本と吻合する細脈(anastomosing veinlets)がある。花は両性、単生、頂生で、花序柄がある。花被片は6個、2輪につき、離生。 外側の花被片(萼片)は普通、緑色、宿存する。内側の花被片(花弁)は花弁状、紫色~白色、外花被片よりわずかに狭く、開花後に枯れた又は脱落する。雄しべは6本、花糸は短い。葯は底着、線形、非常に短い葯隔がある。子房は球形、3室; 胚珠は、各室あたり数個~多数。 花柱は短く、しばしば基部まで深く3裂する。果実は液果、球形~卵形。 種子は数個~多数、卵形、小さい。x=5。
世界に約46種があり、日本、韓国、中国、インド、シッキム、ブータン、ミャンマー、ネパール、ロシア、北アメリカに分布する。日本の自生種は交雑種を含めて9種が確認されている。
日本に現存する種はエンレイソウ(4倍体)、オオバナノエンレイソウ(2倍体)、ミヤマエンレイソウ(4倍体)の3種。それらの交雑種にはトカチエンレイソウ(3倍体)、ヒダカエンレイソウ(4倍体)、コジマエンレイソウ(6倍体)、カワユエンレイソウ(4倍体)、シラオイエンレイソウ(3倍体と6倍体)がある。
synonym Trillium smallii auct. non Maxim.
北海道、本州、四国、九州、千島、サハリン 多年草。高さ20~40㎝。茎の先に菱形の先が尖った3枚の葉を輪生する。葉は長さ10~20㎝の菱形、ユリ科ではあるが、葉には網状脈がある。葉の中心から立ち上がる花柄の先に花を1個だけつける。花は幅約2㎝、緑色~黒紫色の外花被片(蕚片)3個だけで、内花被片(花弁)は普通無い。2n=20(4倍体)。花期は4~7月。2倍体ではなく、4倍体で、変異があり、子房・果実の色に関しては淡緑色~緑色、緑色に紫斑があるもの、赤紫色、暗紫色のものなどがある。また、淡紅色の3花弁を有する品種の存在も報告されている。
1-1 Trillium apetalon Makino f. album J.Samej. トイシノエンレイソウ
萼が澄んだ緑色の品種。
1-2 Trillium apetalon Makino f. atropurpureocarpum Makino クロミノエンレイソウ
synonym Trillium apetalon Makino var. atropurpureocarpum (Makino) J.Samej.
synonym Trillium apetalon Makino var. viridipurpureocarpum (Makino) J.Samej.
1-3 Trillium apetalon Makino f. rubrocarpum (J.Samej.) Yonek. アカミノエンレイソウ
synonym Trillium apetalon Makino var. rubrocarpum J.Samej.
1-4 Trillium apetalon Makino f. tripetalum J.Samej. アカバナノエンレイソウ
淡紅色の3花弁を有する品種。
2 Trillium camschatcense Ker Gawl. オオバナノエンレイソウ 大花の延齢草
synonym Trillium kamtschaticum Pall. ex Miyabe
日本、朝鮮、中国、ロシア、北アメリカ原産。中国名は吉林延龄草 ji lin yan ling cao。
多年草、高さ35~50㎝。 根茎は丈夫、短い。 茎は束生する。葉は 無柄、広菱状円形~卵状円形、長さ10~17㎝×幅7~17㎝。 花柄は長さ1.5~4cm。 花は上向きに咲き、幅3~5㎝。 外花被片は緑色、広披針形~長円状披針形、長さ3~3.5㎝×幅0.7~1.2㎝。内花被片は白色、楕円形~卵形、長さ3~3.8㎝×幅1~1.6㎝。雄しべは花被片の長さの約2/5。花糸は長さ3~4mm。葯は通常7~10mm、先にわずかに凸面状の葯隔がある。子房はほぼ円錐状卵形。柱頭はかなり太い。液果は卵状球形、直径1.8~2.8cm。 花期は6月。果期は8月。2n=10(2倍体)、24。
品種) 'Kamishihoro' , 'Nemuro' , 'Sapphoro' , 'Spangles' , 'Tsuzuki'
2-1 Trillium camschatcense Ker Gawl. f. plenum (J.Samej.) H.Nakai et Koji Ito ヤエザキオオバナノエンレイソウ
八重咲品種。
2-2 Trillium camschatcense Ker Gawl. f. violaceum (Miyabe et Tatew.) H.Nakai et Koji Ito ウスイロオオバナノエンレイソウ
2-3 Trillium camschatcense Ker Gawl. var. kurilense (Tatew.) H.Nakai et Koji Ito クロミノオオバナエンレイソウ
雌しべや子房が紫色のもの。別名はチシマエンレイソウ。
2-4 Trillium camschatcense Ker Gawl. var. soyanum (J.Samej.) H.Nakai et Koji Ito ソウヤエンレイソウ
3 Trillium catesbaei Elliott トリリウム・カテスバエリ
synonym Trillium affine Rendle
USA東部原産。英名はbashful trillium , Catesby's trillium , bashful wakerobin。
根茎は短く、先に向かってかって先細になる。花茎は1~2本、断面は円形、高さ20~45㎝、細く、無毛。苞は普通、やや持ち上がり、花を露出する。葉身は緑色、上面は主脈が深く凹み、楕円状卵形、細長い葉柄状の基部を含み長さ6.5~15㎝×幅4~8㎝、葉の下部1/3は基部まで次第に細くなり、縁はしばしばわずかに隆起し、先は鈍い鋭形~尖鋭形。花は苞の下で開くか、又は反り返り、ほとんど直立しない。萼片はかま形状に反り返り、緑色または紫色の条線があり、線状披針形、長さ20~45mm×7~8mm、縁は±平ら、先は尖鋭形。花弁は上部がかま形状に反り返り、白色、ピンク色、またはローズ色、古くなるとピンク色に暗くなるか、又は色あせず、脈は見えるが彫り込まれず、楕円状長円形~長円状披針形、長さ3.5~5㎝×1~2+㎝、質が薄く、基部はやや覆瓦状、漏斗状の筒を作り、縁は波打ち、先は尖鋭形。雄しべは目立ち、反曲し、長さ16~25mm。花糸は白色、葯よりわずかに長くて狭い。葯は反り返り、明るい黄色、長さ5~14mm、太く、内向きに裂開する。子房は目立たず、白色、角(かど)のある卵形、深い6角(かど)があり、長さ4~12mm×3~7mm、細く、基部は狭い。花柱は長さ2~6mm。柱頭は目立ち、強くカールから直立し、基部で合着し、淡緑色または白色、分裂せず、長さ4~10mm、均一に薄い。花柄は下曲又は半曲し、まれに直立し、角(かど)があり、長さ2~4(~5)㎝。果実は漿果、帯緑色または帯白色、卵状球形、成熟すると角(かど)が目立たなくなり、直径1~1.5㎝、果肉が多いがジューシーではない。花期は春~夏(3月下旬~6月上旬)。
品種) 'Monroeco'
4 Trillium channellii I.Fukuda, J.D.Freeman et M.Itou カワユエンレイソウ 川湯延齢草
北海道固有種。北海道川上郡弟子屈町の川湯温泉周辺の限定した区域だけに見られる。
オオバナノエンレイソウとミヤマエンレイソウの特徴を持つことから、両種の4倍体の交雑種だといわれる。オオバナノエンレイソウの雄しべは雌しべよりも長く、葯は花糸の約3倍、カワユエンレイソウの雄しべは雌しべよりも短く、葯は花糸の長さの約2倍。
2014~2016年の調査では川湯地方のエンレイソウ属植物はオオバナノエンレイソウ以外はいずれも6倍体シラオイエンレイソウしか見つからず、4倍体のカワユエンレイソウは発見され無かった。4倍体はオオバナノエンレイソウとシラオイエンレイソウとの交雑の可能性が示されている。
根茎をもち、高さ30~50㎝、無毛。葉は長さ9~12㎝×幅7~14㎝、無柄、広楕円形、先は短い尖鋭形、基部はごく広い鈍形。花柄は長さ1.8~2.2㎝、真っすぐ、葉の上に直立する。花は比較的に小さく、口を大きく開け、花柄にほぼ垂直又はわずかに上向きの角度でつく。萼片は披針形、長さ19~44mm×幅9~18mm、緑色。花弁は卵形、長さ22~44mm×幅11~27㎜、白色。雄しべは直立。葯は長さ8~10㎜。花糸は長さ4~5mm。雌しべは長さ10~20mm、幅7~19mm。子房は円錐形、下部は白色で、帯紫色の柱頭の枝の基部の下にある先端は暗紫色。柱頭は上部で3本が広がり、帯黄色。果実は卵形~球形、緑色、柱頭が宿存する。花粉は球形、直径約18.6µm。2n(4x)=20。
5 Trillium chloropetalum (Torr.) Howell トリリウム・クロロペタルム
カリフォルニア州原産。英名はgiant trillium , giant wakerobin , common trillium , American Wood Lily。
茎は高さ20~70㎝。葉は無柄、長さ7~21㎝×幅7~18㎝、先は円形~鈍形、普通、弱く+-褐緑色の斑点がる。花は直立、無柄、普通、甘いバラのような芳香又はスパイシーな香りがある。萼片は長さ3.5~6.5㎝、披針形。花弁は直立又は内側に傾き、±雄しべを隠し、長さ6.5~10㎝、線状倒披針形~倒卵形、黄色~ピンク色~暗紫色、たまに、白色。 雄しべは長さ15~30mm、葯隔は紫色。子房は紫色。 果実は卵形、不明瞭な6角(かど)があり、赤紫色、果肉がある。n=5。花期は4~5月。
品種) 'Album' , 'Charlwood' , 'Giganteum' , 'Ice Cream' , 'Spetchly Park' , 'Spinners' , 'Val Mulvihill' , 'Volcano'
5-1 Trillium chloropetalum var. giganteum (Hook. & Arn.) Munz
synonym Trillium giganteum (Hook. & Arn.) A.Heller
カリフォルニア州原産。
6 Trillium cuneatum Raf. トリリウム・クネアツム
USA南東部原産。英名はAmerican Wood Lily , Whippoorwill Toadshade。
根茎は水平で、帯褐色、短く、太く、先端をかみ切られたような不規則な形になり、もろくない。花茎は1~5本、高さ16~45㎝、苞付近は平滑又は粗い。苞は地上にしっかりと保持され、無柄。葉身は紫緑色、弱く~強くまだらになり、まだらは古くなると不明瞭になり、卵形、卵状楕円形、たまに卵状円形、縁が重なり、長さ7~18.5㎝×幅7~13㎝、普通、中央より下で幅が最も広く、光沢はなく、基部は±円形、縁の上部の1/3は、先まで凸面状に湾曲し、先は尖鋭形~鋭形。花は苞の上に生じ、直立し、普通、良い香りがあり、かすかに、スパイシーで、傷つけたスイートシュラブ(カリカンサス)の葉の匂いを連想させ、まれに、かび臭いまたは不快な匂いがある。萼片は広く広がり、様々な緑色で、紫色の縞模様~すべて紫色で、長円状披針形、長さ27~60mm×幅7~13mm、縁は全縁、先は円形~鋭形。花弁は長持ちし、直立し、±輻合、雄しべと子房を±覆って隠し、栗色、栗紫色、褐紫色、ブロンズ色、緑紫色、明るい緑色、黄緑色、淡レモン黄色、または2色、たまにクローンでは上部が黄色で基部が紫色、花が開くとすぐに明るい銅色にあせ、特定の色のパターンは毎年一貫しており、黄色または緑色の場合を除いて、古くなると褐色の色調に色あせ、螺旋状に捻じれることは無く、形は様々で、楕円状倒卵形~倒披針形、長さ4~7㎝×0.9~2.7㎝、質感は厚く、中間又は中間の上で最も幅が広く、基部は狭くなり普通、くさび形、爪部はなく、縁は平らで、全縁、先は鋭形~円状鋭形~鈍形。雄しべは直立し、真っすぐで、褐茶色がかった紫緑色、長さ11~18mm。花糸は褐紫色、長さ1.5~3.5mm、基部で最も幅が広い。葯は直立し、真っすぐで、褐灰色、長さ7~14mm、側向裂開(latrorse)のまたはたまに内向き(introrse)。葯隔は真っすぐで、葯室を超えて伸びたとしても、かすか(0.5mm以下)。子房は栗色、卵形~花瓶形、熟すと弱く6角(かど)またはうねがあり、長さ12~15mm。柱頭は直立し、わずかに発散して広がり、分離、紫灰色、線状錐形~太い錐形、長さ4~15mm、肉質。果実は緑色または紫色の縞模様がり、卵形、非常に不明瞭な角(かど)があり、または角(かど)が見えなくなり、長さ約2㎝×幅1~1.5㎝、粉っぽいかまたは果肉があり、肉質で、ジューシーではない。2n=10。花期は3月上旬~4月中旬。
品種) 'Bobby Masterson' , 'Ghost' , 'Lexington' , 'Moonshine' , 'Oconee Red' , 'Oconee Yellow' , 'Pleasant Hill'
7 Trillium erectum L. トリリウム・エレクツム
カナダ、USA原産。 英名はred trillium , wake robin, purple trillium , bethroot , stinking Benjamin。
品種) 'Beige' , 'Harvington Clone'
8 Trillium flexipes Raf. トリリウム・フレキシペス
カナダ、USA原産。英名はnodding wakerobin , bent trillium , drooping trillium。
品種) 'Harvington Dusky Pink' , 'Harvington Select' , 'Harvington Selection'
9 Trillium foetidissimum J. D. Freeman トリリウム・フォエチディッシムム
ミシシッピ州、ルイジアナ州原産。英名はMississippi river wakerobin , stinking trillium , fetid trillium
品種) 'Adams' , 'Woodville'
10 Trillium gracile J.D.Freeman
テキサス州、ルイジアナ州原産。英名はSabine river wakerobin , slender trillium , graceful trillium。
品種) 'Hunter' , 'Shelbyville'
11 Trillium grandiflorum (Michx.) Salisb. トリリウム・グランディフローラム
北アメリカ(カナダ、USA)に広く分布。英名はgreat white trillium , great white trillium , white wake-robin , wood lily , large-flowered trillium 。
根茎は短く、太く、先端をかみ切られたような不規則な形になる。花茎は(1~)2~3(~多数)本、断面が丸く、高さ15~30+㎝、太く、無毛。苞は無柄またはほぼ無柄(たまに基部が弱いくさび形。葉身は暗緑色、初期には栗色を帯、卵状菱形、長さ12~20㎝×幅8~15㎝、先は尖鋭形。花は外側を向き、直立、無臭。萼は広がり、平ら、緑色、ごくまれに栗紫色の条線があり、披針形、長さ20~55㎜×幅12~23㎜、縁は全縁、先は尖鋭形または鋭形。花弁は基部に直立し、中央よりやや上で曲がって、強く漏斗形の花冠を生じ、子房と花柱の基部を覆い隠し、白色またはまれにピンク色、V字型や他の斑紋は無く、鈍いピンク紫色に退色し、内側の表面の脈が目立つが、彫り込まれていないように見え、形は様々に変化し、披針形~長円形~倒卵形、またはまれに、ほぼ円形、側面はしばしば平行、長さ4~7.5㎝×幅2~4㎝、質が薄く、基部は急に漸尖し、縁は基部で重なり、 巻き、上部の1/2が波打つ波状、先は±尖鋭形。雄しべは真っすぐまたはほとんど反曲せず、長さ9~27㎜。花糸は白色、葯よりもはるかに短く、比較的細い。葯はわずかに反り返り、淡黄色、花粉が露出すると強い黄色、長く、長さ5~16㎜、細く、内向きに裂開する。子房が目立たず、淡緑色または白色、卵形、6角(かど)があり、長さ8~18㎜、基底の付着が子房の幅より狭い。花柱はわずかに長さ0.5~2㎜でかろうじて統合し、または単に密接した集団で分離する。柱頭は直立し、広がり、弱く基部で合着し、淡緑白色、均一に線形、長さ3~18㎜、子房と同長またはそれを超え、細い。花柄は直立状斜上~強く直立し、長さ2~8+cm。果実は淡緑色、無臭、±球形、不明瞭な6角(かど)があり、長さ1.2~1.6㎝×幅0.8~1.4㎝、粉っぽく、湿る(ジューシーではない)。2n=10。花期は4~6月。
品種) 'Beige' , 'Flore-Pleno' , Gothenburg pink , 'Jenny Rhodes' , 'Kath's Dwarf' , 'Quicksilver' , 'Roseum' , 'Snowbunting' (d)
12 Trillium × komarovii H.Nakai & Koji Ito スイフンエンレイソウ
synonym Trillium rhombifolium Kom.
synonym Trillium camschatcense auct. non Ker Gawl.
ロシア原産。針葉樹から落葉樹林に生える。
多年草、高さ50㎝以下。葉は無柄で、3輪生し、長さ15㎝×幅12㎝いか、広楕円形状の不規則な菱形、先は尖る。花は直径7㎝以下、花柄は長さ3㎝以下。外側の花被片は3個、長円形、緑色。内側の花被片は3個、外側の花被片よりも大きく、楕円形、白色。2n=6x=30。
13 Trillium lancifolium Raf.
USA南東部原産。英名はlanceleaf wakerobin , lance-leaved trillium , narrow-leaved trillium。
品種) 'Lancelot' , 'Shotgun Wedding'
14 Trillium ludovicianum Harb.
ルイジアナ州、ミシシッピ州原産。英名はLouisiana wakerobin。
品種) 'Bently'
15 Trillium ovatum Pursh
北アメリカ西部(USA,カナダ)原産。英名はPacific trillium , western wakerobin , western white trillium, western trillium。
品種) 'Edith' , 'Kenmore' , 'Roy Elliott' , 'Tillicum' , 'Wayne Roberts'
16 Trillium pusillum Michx.
USA原産。dwarf trillium , least trillium , dwarf wakerobin , American Wood Lily
花期は3~5月初旬。
品種) 'Roadrunner'
17 Trillium rivale S. Watson
synonym Pseudotrillium rivale (S.Watson) S.B.Farmer プセウドトリリウム属
カリフォルニア州、オレゴン州原産。英名はbrook wakerobin , brook wake-robin , brook trillium , Klamath wake-robin , Klamath trillium。
根茎は水平、短く、先端をかみ切られたような不規則な形をし(praemorse)、肉質。花茎は1~2本、断面が丸く、高さ4~15㎝、細く、無毛。苞は明らかに柄がある。葉身は青緑色で、たまに、主脈に沿って銀緑色の斑紋があり、卵状披針形、長さ1.5~8㎝×幅0.8~6㎝、やや質が厚く、光沢があり、基部は浅く~深い心形、先は尖鋭形。葉柄は長さ(0.5~)1~3(~6)㎝。花は直立し、受粉後、苞の下で急速に反り返り、±無臭。萼片が目立ち、広がり、緑色、弱い溝があり、長円形又は先が先細になり、普通、花弁より短くて狭く、長さ10~23mm×幅4~8mm、縁は全縁、先は円形で短突起がある。花弁は直立~広がり、反曲せず又は上部の1/2だけが反曲し、白色(まれに淡ピンク色)、普通、暗茜紫色(madder-purple)の斑点があり、まれに、ほとんど全体が茜紫色になり、色は古くなっても変化せず、脈は目立たず、卵状心形~ほぼ円形、先は中央より上が鈍く先細になり、長さ1.3~2.8㎝×幅1~2.4㎝、質が±薄く、基部は丸みを帯びたくさび形、縁は全縁、ほとんど波打たず、先は±尖頭の尖鋭形。雄しべは直立し、長さ5~12㎜。花糸は白色、はぼ葯と同長。葯は真っすぐ、黄色、長さ3~6mm、裂開、±外向き。葯隔は葯室を超えて広がらない。子房は乳白色、卵形、弱く6角(かど)があるが、対が密接し、3角(かど)に見え、短く、長さ3~9mm×幅約4mm、広く取り付けられた葯によりやや不明瞭になる。柱頭は反曲し、少なくとも乾燥した標本では±裂片が内側に見え、基部で合着~分離して密集し、白色またはクリーム色、長さ2~4mm、太さ均一、肉質。小花柄は開花時に強く直立し、受粉後に伸びて苞の下で強く反り返り、長さ2.5~11 cm。果実は緑白色、無臭、球形、長さ0.9~1.2㎝×幅0.8~1㎝、果肉が多く、ジューシーでは無い。2n=10。花期は春(3月上旬~6月上旬)。夏に枯れる。
品種) (Purple Heart Group) 'Purple Heart' , 'Del Norte' , 'Reticulate-leaved Group , 'Roseum' , 'Verne Ahiers' , 'Winifred Murray' , Winifred Murray Group
18 Trillium sessile L. トリリウム・セシール
USA原産。英名はsessile trillium , toad trillium , toadshade。
品種) 'Rubrum'
19 Trillium recurvatum L.C.Beck トリリウム・レクルバツム
USA原産。英名はwood lily , prairie trillium , toadshade , bloody butcher , bloody nose trillium。
多年草、高さ37.5㎝以下。根茎があり、群生し、茎は直立し、太い。葉は土が乾くと夏に枯れる。葉は3個輪生、披針形~円形、暗緑色のギボウシ状、紫色のまだらになる。花は高さ4.5㎝、紫色~褐紫色、花弁は直立し、爪部がある。萼は3個、後屈し、3個の葉の中心に無柄でつく。f. luteum は花が黄色。花期は4~5月。
品種) 'Arcadia'
20 Trillium rugelii Rendle トリリウム・ルゲーリ
USA東南部原産。英名はsouthern nodding trillium , illscented wakerobin。
品種) 'Orchard Pink'
21 Trillium smallii Maxim. コジマエンレイソウ 小島延齢草
synonym Trillium amabile Miyabe et Tatew.
日本(北海道)サハリン南部原産。和名は道南の松前町沖にある渡島小島(松前小島)に由来する。海岸付近や山地の樹林下などに生える。
エンレイソウ(2n=20)とオオバナノエンレイソウT.kamtschaticum (2n= 10)の絶滅した祖先型との雑種が倍数化することによって生じたと推定されている。6倍体(2n=30)。6倍体種であるコジマエンレイソウは花器の変異がエンレイソウ属中で最も顕著である。花弁は暗紫色、3~0個に変異する。また,花弁の形態は正常なものから一部が雄ずい化しているもの(antheroid)や、ほとんど完全に雄ずい化したもの(staminoid)まで、連続的な変異がある。さらに、雄しべも 3~6個と変異する。花弁と雄しべの形態・数は、3正常花弁+6雄しべの型、O花弁+5雄しべ、O花弁+6雄しべまで、連続的に変異する。これらの変異は同一個体上の花でも異なっており、直接的な遺伝的支配下にはない。また、これらの花器の形態的変異とは別に、淡緑色や暗紫色の子房・果実を持つ個体が存在する(参考6)
茎の高さ30~60㎝、直立する。葉は茎頂に3個輪生し、葉は菱形状円形。花は葉の上に単生し、直径3~4㎝、やや上向きに横向きにつく。萼片は3個、淡紅紫色を帯びた緑色、先が線鋭形、急に細くなる。花弁は暗紫色~紅紫色、発達するが、ないものや、不完全なものもあり、0~3個。子房は球形。花弁がない場合は、雄しべは3~6個、雌しべと同長か又は長い。葯は長く、花糸より長い。液果は卵形。稜があり、淡緑色。花期は4~5月。
ヒダカエンレイソウに似るが、ヒダカエンレイソウは萼片の先が三角状鋭形、雄しべの長さが短く、葯が花糸より短い。
21-1 Trillium smallii Maxim. var. atropurpureocarpum J.Samej. クロミノコジマエンレイソウ
果実が黒紫色になる変種
22 Trillium tschonoskii Maxim. ミヤマエンレイソウ 深山延齢草
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ブータン、ミャンマー。中国名は延龄草 yan ling cao。別名はシロバナエンレイソウ。
多年草。高さ15~50㎝。根茎は丈夫、短い。茎は株立ちになる。葉は無柄、茎頂に3枚輪生し、葉は菱状円形~広菱形、長さ6~15㎝×幅5~15 ㎝。葉に接するように花を1個だけつける。花序柄は長さ1~4㎝、花は直径3~4㎝。外花被片(萼片)は3個、緑色、狭卵形~卵状披針形、長さ1.5~2㎝×幅5~9mm、草質。内花被片(花弁)は3個、白色、まれに淡紫色(内花被片が白く、咲いてから花が次第にピンク色を帯びることも多い)、卵状披針形、長さ1.5~2.2㎝×幅4~6(~10)。雄しべは花被片の長さの約2/5、花糸は長さ4~5mm。葯は長さ3~4㎜、凸面形の葯隔をもつ。子房は円錐状卵形、長さ7~9mm×幅5~7mm。花柱の先は3裂。柱頭はかなり太い。液果は黒紫色、直径1.5~1.8㎝、多数の種子をもち、無毛。2n=20(4倍体)。花期は4~6月。果期は7~8月。
4倍体種のミヤマエンレイには、花やその他の形態的変異はほとんどない。ただし、花弁全体あるいは主脈周辺が薄ピンク色の個体が往々にして存在する。また、赤紫色の子房、果実を持つ変種の存在が知られている。(参考6)
22-1 Trillium tschonoskii Maxim. f. violaceum Makino ムラサキエンレイソウ
22-2 Trillium tschonoskii Maxim. var. atrorubens Miyabe et Tatew. エゾノミヤマエンレイソウ
23 Trillium x hagae Miyabe et Tatew. シラオイエンレイソウ 白老延齢草
日本固有種(北海道)。和名は発見地である北海道の白老町に由来する。
オオバナノエンレイソウ(2倍体)とミヤマエンレイソウ(4倍体)との交雑による3倍体と6倍体がある。
茎は高さ30~40㎝、全体に大型で、株立ちの傾向がある。花が白色で横向きに咲く傾向がある。雄しべの長さは雌しべより短く、葯の長さが花糸の約2倍(花糸と葯の長さの比=1:2)。子房の先端は紅紫色になり、オオバナノエンレイソウに似る。
3倍体、6倍体ともやや横向きに大きな白色の花をつけるが、特に顕著な変異はないようである。ただし、子房の色がクリーム色~淡緑色、及びそれらに紫色斑があるものなどのわずかの変異がある(参考6)。
(1) 3倍体(2n=15)シラオイエンレイソウ
北海道の広域に分布する。
オオバナノエンレイソウ(T. camschatcense)とミヤマエンレイソウ(T. tschonoskii)との交雑により形成された3倍体(2n=15)。種子ができない。
(2) 6倍体(2n=30)シラオイエンレイソウ
北海道の平取と網走に分布する。
3倍体の染色体倍化により形成された6倍体(2n=30)。種子ができる。
24 Trillium x miyabeanum Tatew. ex J. et K.Samej. ヒダカエンレイソウ 日高延齢草
synonym Trillium x miyabeanum Tatew. ex J. et K.Samej. var. atropurpureocarpum J.Samej. synonym Trillium x miyabeanum Tatew. ex J. et K.Samej. f. albiflorum Soukup シロバナヒダカエンレイソウ
日本固有種(北海道、本州の中部地方)。山地の湿った場所に生える。和名は発見地の日高に由来する。
エンレイソウ(4倍体) とミヤマエンレイソウ(4倍体)との自然交雑種による4倍体(2n=20) 。
内花被片が紅紫色になるのが特徴ではあるが、大きさは不揃いで内花被片がない場合もある。雄しべが雌しべより短い。コジマエンレイソウ6倍体の場合は逆に雄しべが雌しべより長くなる。花期は4~5月。
25 Trillium x yezoense Tatew. ex J. et K.Samej. トカチエンレイソウ 十勝延齢草
synonym Trillium x yezoense Tatew. ex J. et K.Samej. var. atropurpureocarpum J.Samej.
エンレイソウとオオバナノエンレイソウとの自然交雑種で3倍体(2n= 15)で種子ができない。
花は暗紫色でヒダカエンレイソウ(4倍体)やコジマエンレイソウ(6倍体)と花が形態的に類似している(参考6)。コジマエンレイソウとの違いは子房の形が円錐状球形になり、コジマの場合は球形。
26 その他ハイブリッド
品種) 'Cairns' , 'Gothenburg Park' , 'Green Frost' , 'Hokkaido' , 'Jefferson Silver' , 'Jones Gap' , 'Julia' , 'Purple Haze' , 'Rankin' , 'Snowbunting' , 'Spencer' , 'The Smiths' , 'Val Mulvihill'
Trillium
Trillium
Trillium
Trillium
ヒダカエンレイソウ宮城県に産す(高橋英樹)
エンレイソウ属植物の花器の変異について(内野明徳)
六倍種コジマエンレイソウにおける染色体多型
林床植物の生活史モノグラフ研究ーエンレイソウ属植物を事例に
Published By: Missouri Botanical Garden Press
Trillium channellii, sp. nov. (Trilliaceae), in Japan, and T. camschatcense Ker Gawler,
Correct Name for the Asiatic Diploid Trillium
大会受賞講演 エンレイソウ属植物のゲノムと倍数性
茎の先に菱形の先が尖った3枚の葉を輪生する。葉は長さ10~20㎝の菱形、ユリ科ではあるが、葉には網状脈がある。葉の中心から立ち上がる花柄の先に花を1個だけつける。花は緑色~黒紫色の外花被片(蕚片)3個だけで、内花被(花弁)は普通無い。2n=20の4倍体であり。変異がある。
三河ではほとんど見られないものである。奥三河地方で見られるのはミヤマエンレイソウ(シロバナエンレイソウ)であり、3個の白い内花被片がある。
コジマエンレイソウTrillium amabile は北海道、サハリンに分布し、花が紅紫色、 外花被片3個があり、内花被片はあるものと、無いものがある。
エンレイソウ属
family Melanthiaceae - genus Trillium多年草、普通、丈夫な根茎がある。茎は直立し、単純で、基部に少数の茶色の鱗片状の鞘がある。葉は3個、頂部に輪生し、葉柄は無または短、菱状円形~卵形、主脈が3本又は5本と吻合する細脈(anastomosing veinlets)がある。花は両性、単生、頂生で、花序柄がある。花被片は6個、2輪につき、離生。 外側の花被片(萼片)は普通、緑色、宿存する。内側の花被片(花弁)は花弁状、紫色~白色、外花被片よりわずかに狭く、開花後に枯れた又は脱落する。雄しべは6本、花糸は短い。葯は底着、線形、非常に短い葯隔がある。子房は球形、3室; 胚珠は、各室あたり数個~多数。 花柱は短く、しばしば基部まで深く3裂する。果実は液果、球形~卵形。 種子は数個~多数、卵形、小さい。x=5。
世界に約46種があり、日本、韓国、中国、インド、シッキム、ブータン、ミャンマー、ネパール、ロシア、北アメリカに分布する。日本の自生種は交雑種を含めて9種が確認されている。
日本に現存する種はエンレイソウ(4倍体)、オオバナノエンレイソウ(2倍体)、ミヤマエンレイソウ(4倍体)の3種。それらの交雑種にはトカチエンレイソウ(3倍体)、ヒダカエンレイソウ(4倍体)、コジマエンレイソウ(6倍体)、カワユエンレイソウ(4倍体)、シラオイエンレイソウ(3倍体と6倍体)がある。
エンレイソウ属の主な種と園芸品種
1 Trillium apetalon Makino エンレイソウ 延齢草synonym Trillium smallii auct. non Maxim.
北海道、本州、四国、九州、千島、サハリン 多年草。高さ20~40㎝。茎の先に菱形の先が尖った3枚の葉を輪生する。葉は長さ10~20㎝の菱形、ユリ科ではあるが、葉には網状脈がある。葉の中心から立ち上がる花柄の先に花を1個だけつける。花は幅約2㎝、緑色~黒紫色の外花被片(蕚片)3個だけで、内花被片(花弁)は普通無い。2n=20(4倍体)。花期は4~7月。2倍体ではなく、4倍体で、変異があり、子房・果実の色に関しては淡緑色~緑色、緑色に紫斑があるもの、赤紫色、暗紫色のものなどがある。また、淡紅色の3花弁を有する品種の存在も報告されている。
1-1 Trillium apetalon Makino f. album J.Samej. トイシノエンレイソウ
萼が澄んだ緑色の品種。
1-2 Trillium apetalon Makino f. atropurpureocarpum Makino クロミノエンレイソウ
synonym Trillium apetalon Makino var. atropurpureocarpum (Makino) J.Samej.
synonym Trillium apetalon Makino var. viridipurpureocarpum (Makino) J.Samej.
1-3 Trillium apetalon Makino f. rubrocarpum (J.Samej.) Yonek. アカミノエンレイソウ
synonym Trillium apetalon Makino var. rubrocarpum J.Samej.
1-4 Trillium apetalon Makino f. tripetalum J.Samej. アカバナノエンレイソウ
淡紅色の3花弁を有する品種。
2 Trillium camschatcense Ker Gawl. オオバナノエンレイソウ 大花の延齢草
synonym Trillium kamtschaticum Pall. ex Miyabe
日本、朝鮮、中国、ロシア、北アメリカ原産。中国名は吉林延龄草 ji lin yan ling cao。
多年草、高さ35~50㎝。 根茎は丈夫、短い。 茎は束生する。葉は 無柄、広菱状円形~卵状円形、長さ10~17㎝×幅7~17㎝。 花柄は長さ1.5~4cm。 花は上向きに咲き、幅3~5㎝。 外花被片は緑色、広披針形~長円状披針形、長さ3~3.5㎝×幅0.7~1.2㎝。内花被片は白色、楕円形~卵形、長さ3~3.8㎝×幅1~1.6㎝。雄しべは花被片の長さの約2/5。花糸は長さ3~4mm。葯は通常7~10mm、先にわずかに凸面状の葯隔がある。子房はほぼ円錐状卵形。柱頭はかなり太い。液果は卵状球形、直径1.8~2.8cm。 花期は6月。果期は8月。2n=10(2倍体)、24。
品種) 'Kamishihoro' , 'Nemuro' , 'Sapphoro' , 'Spangles' , 'Tsuzuki'
2-1 Trillium camschatcense Ker Gawl. f. plenum (J.Samej.) H.Nakai et Koji Ito ヤエザキオオバナノエンレイソウ
八重咲品種。
2-2 Trillium camschatcense Ker Gawl. f. violaceum (Miyabe et Tatew.) H.Nakai et Koji Ito ウスイロオオバナノエンレイソウ
2-3 Trillium camschatcense Ker Gawl. var. kurilense (Tatew.) H.Nakai et Koji Ito クロミノオオバナエンレイソウ
雌しべや子房が紫色のもの。別名はチシマエンレイソウ。
2-4 Trillium camschatcense Ker Gawl. var. soyanum (J.Samej.) H.Nakai et Koji Ito ソウヤエンレイソウ
3 Trillium catesbaei Elliott トリリウム・カテスバエリ
synonym Trillium affine Rendle
USA東部原産。英名はbashful trillium , Catesby's trillium , bashful wakerobin。
根茎は短く、先に向かってかって先細になる。花茎は1~2本、断面は円形、高さ20~45㎝、細く、無毛。苞は普通、やや持ち上がり、花を露出する。葉身は緑色、上面は主脈が深く凹み、楕円状卵形、細長い葉柄状の基部を含み長さ6.5~15㎝×幅4~8㎝、葉の下部1/3は基部まで次第に細くなり、縁はしばしばわずかに隆起し、先は鈍い鋭形~尖鋭形。花は苞の下で開くか、又は反り返り、ほとんど直立しない。萼片はかま形状に反り返り、緑色または紫色の条線があり、線状披針形、長さ20~45mm×7~8mm、縁は±平ら、先は尖鋭形。花弁は上部がかま形状に反り返り、白色、ピンク色、またはローズ色、古くなるとピンク色に暗くなるか、又は色あせず、脈は見えるが彫り込まれず、楕円状長円形~長円状披針形、長さ3.5~5㎝×1~2+㎝、質が薄く、基部はやや覆瓦状、漏斗状の筒を作り、縁は波打ち、先は尖鋭形。雄しべは目立ち、反曲し、長さ16~25mm。花糸は白色、葯よりわずかに長くて狭い。葯は反り返り、明るい黄色、長さ5~14mm、太く、内向きに裂開する。子房は目立たず、白色、角(かど)のある卵形、深い6角(かど)があり、長さ4~12mm×3~7mm、細く、基部は狭い。花柱は長さ2~6mm。柱頭は目立ち、強くカールから直立し、基部で合着し、淡緑色または白色、分裂せず、長さ4~10mm、均一に薄い。花柄は下曲又は半曲し、まれに直立し、角(かど)があり、長さ2~4(~5)㎝。果実は漿果、帯緑色または帯白色、卵状球形、成熟すると角(かど)が目立たなくなり、直径1~1.5㎝、果肉が多いがジューシーではない。花期は春~夏(3月下旬~6月上旬)。
品種) 'Monroeco'
4 Trillium channellii I.Fukuda, J.D.Freeman et M.Itou カワユエンレイソウ 川湯延齢草
北海道固有種。北海道川上郡弟子屈町の川湯温泉周辺の限定した区域だけに見られる。
オオバナノエンレイソウとミヤマエンレイソウの特徴を持つことから、両種の4倍体の交雑種だといわれる。オオバナノエンレイソウの雄しべは雌しべよりも長く、葯は花糸の約3倍、カワユエンレイソウの雄しべは雌しべよりも短く、葯は花糸の長さの約2倍。
2014~2016年の調査では川湯地方のエンレイソウ属植物はオオバナノエンレイソウ以外はいずれも6倍体シラオイエンレイソウしか見つからず、4倍体のカワユエンレイソウは発見され無かった。4倍体はオオバナノエンレイソウとシラオイエンレイソウとの交雑の可能性が示されている。
根茎をもち、高さ30~50㎝、無毛。葉は長さ9~12㎝×幅7~14㎝、無柄、広楕円形、先は短い尖鋭形、基部はごく広い鈍形。花柄は長さ1.8~2.2㎝、真っすぐ、葉の上に直立する。花は比較的に小さく、口を大きく開け、花柄にほぼ垂直又はわずかに上向きの角度でつく。萼片は披針形、長さ19~44mm×幅9~18mm、緑色。花弁は卵形、長さ22~44mm×幅11~27㎜、白色。雄しべは直立。葯は長さ8~10㎜。花糸は長さ4~5mm。雌しべは長さ10~20mm、幅7~19mm。子房は円錐形、下部は白色で、帯紫色の柱頭の枝の基部の下にある先端は暗紫色。柱頭は上部で3本が広がり、帯黄色。果実は卵形~球形、緑色、柱頭が宿存する。花粉は球形、直径約18.6µm。2n(4x)=20。
5 Trillium chloropetalum (Torr.) Howell トリリウム・クロロペタルム
カリフォルニア州原産。英名はgiant trillium , giant wakerobin , common trillium , American Wood Lily。
茎は高さ20~70㎝。葉は無柄、長さ7~21㎝×幅7~18㎝、先は円形~鈍形、普通、弱く+-褐緑色の斑点がる。花は直立、無柄、普通、甘いバラのような芳香又はスパイシーな香りがある。萼片は長さ3.5~6.5㎝、披針形。花弁は直立又は内側に傾き、±雄しべを隠し、長さ6.5~10㎝、線状倒披針形~倒卵形、黄色~ピンク色~暗紫色、たまに、白色。 雄しべは長さ15~30mm、葯隔は紫色。子房は紫色。 果実は卵形、不明瞭な6角(かど)があり、赤紫色、果肉がある。n=5。花期は4~5月。
品種) 'Album' , 'Charlwood' , 'Giganteum' , 'Ice Cream' , 'Spetchly Park' , 'Spinners' , 'Val Mulvihill' , 'Volcano'
5-1 Trillium chloropetalum var. giganteum (Hook. & Arn.) Munz
synonym Trillium giganteum (Hook. & Arn.) A.Heller
カリフォルニア州原産。
6 Trillium cuneatum Raf. トリリウム・クネアツム
USA南東部原産。英名はAmerican Wood Lily , Whippoorwill Toadshade。
根茎は水平で、帯褐色、短く、太く、先端をかみ切られたような不規則な形になり、もろくない。花茎は1~5本、高さ16~45㎝、苞付近は平滑又は粗い。苞は地上にしっかりと保持され、無柄。葉身は紫緑色、弱く~強くまだらになり、まだらは古くなると不明瞭になり、卵形、卵状楕円形、たまに卵状円形、縁が重なり、長さ7~18.5㎝×幅7~13㎝、普通、中央より下で幅が最も広く、光沢はなく、基部は±円形、縁の上部の1/3は、先まで凸面状に湾曲し、先は尖鋭形~鋭形。花は苞の上に生じ、直立し、普通、良い香りがあり、かすかに、スパイシーで、傷つけたスイートシュラブ(カリカンサス)の葉の匂いを連想させ、まれに、かび臭いまたは不快な匂いがある。萼片は広く広がり、様々な緑色で、紫色の縞模様~すべて紫色で、長円状披針形、長さ27~60mm×幅7~13mm、縁は全縁、先は円形~鋭形。花弁は長持ちし、直立し、±輻合、雄しべと子房を±覆って隠し、栗色、栗紫色、褐紫色、ブロンズ色、緑紫色、明るい緑色、黄緑色、淡レモン黄色、または2色、たまにクローンでは上部が黄色で基部が紫色、花が開くとすぐに明るい銅色にあせ、特定の色のパターンは毎年一貫しており、黄色または緑色の場合を除いて、古くなると褐色の色調に色あせ、螺旋状に捻じれることは無く、形は様々で、楕円状倒卵形~倒披針形、長さ4~7㎝×0.9~2.7㎝、質感は厚く、中間又は中間の上で最も幅が広く、基部は狭くなり普通、くさび形、爪部はなく、縁は平らで、全縁、先は鋭形~円状鋭形~鈍形。雄しべは直立し、真っすぐで、褐茶色がかった紫緑色、長さ11~18mm。花糸は褐紫色、長さ1.5~3.5mm、基部で最も幅が広い。葯は直立し、真っすぐで、褐灰色、長さ7~14mm、側向裂開(latrorse)のまたはたまに内向き(introrse)。葯隔は真っすぐで、葯室を超えて伸びたとしても、かすか(0.5mm以下)。子房は栗色、卵形~花瓶形、熟すと弱く6角(かど)またはうねがあり、長さ12~15mm。柱頭は直立し、わずかに発散して広がり、分離、紫灰色、線状錐形~太い錐形、長さ4~15mm、肉質。果実は緑色または紫色の縞模様がり、卵形、非常に不明瞭な角(かど)があり、または角(かど)が見えなくなり、長さ約2㎝×幅1~1.5㎝、粉っぽいかまたは果肉があり、肉質で、ジューシーではない。2n=10。花期は3月上旬~4月中旬。
品種) 'Bobby Masterson' , 'Ghost' , 'Lexington' , 'Moonshine' , 'Oconee Red' , 'Oconee Yellow' , 'Pleasant Hill'
7 Trillium erectum L. トリリウム・エレクツム
カナダ、USA原産。 英名はred trillium , wake robin, purple trillium , bethroot , stinking Benjamin。
品種) 'Beige' , 'Harvington Clone'
8 Trillium flexipes Raf. トリリウム・フレキシペス
カナダ、USA原産。英名はnodding wakerobin , bent trillium , drooping trillium。
品種) 'Harvington Dusky Pink' , 'Harvington Select' , 'Harvington Selection'
9 Trillium foetidissimum J. D. Freeman トリリウム・フォエチディッシムム
ミシシッピ州、ルイジアナ州原産。英名はMississippi river wakerobin , stinking trillium , fetid trillium
品種) 'Adams' , 'Woodville'
10 Trillium gracile J.D.Freeman
テキサス州、ルイジアナ州原産。英名はSabine river wakerobin , slender trillium , graceful trillium。
品種) 'Hunter' , 'Shelbyville'
11 Trillium grandiflorum (Michx.) Salisb. トリリウム・グランディフローラム
北アメリカ(カナダ、USA)に広く分布。英名はgreat white trillium , great white trillium , white wake-robin , wood lily , large-flowered trillium 。
根茎は短く、太く、先端をかみ切られたような不規則な形になる。花茎は(1~)2~3(~多数)本、断面が丸く、高さ15~30+㎝、太く、無毛。苞は無柄またはほぼ無柄(たまに基部が弱いくさび形。葉身は暗緑色、初期には栗色を帯、卵状菱形、長さ12~20㎝×幅8~15㎝、先は尖鋭形。花は外側を向き、直立、無臭。萼は広がり、平ら、緑色、ごくまれに栗紫色の条線があり、披針形、長さ20~55㎜×幅12~23㎜、縁は全縁、先は尖鋭形または鋭形。花弁は基部に直立し、中央よりやや上で曲がって、強く漏斗形の花冠を生じ、子房と花柱の基部を覆い隠し、白色またはまれにピンク色、V字型や他の斑紋は無く、鈍いピンク紫色に退色し、内側の表面の脈が目立つが、彫り込まれていないように見え、形は様々に変化し、披針形~長円形~倒卵形、またはまれに、ほぼ円形、側面はしばしば平行、長さ4~7.5㎝×幅2~4㎝、質が薄く、基部は急に漸尖し、縁は基部で重なり、 巻き、上部の1/2が波打つ波状、先は±尖鋭形。雄しべは真っすぐまたはほとんど反曲せず、長さ9~27㎜。花糸は白色、葯よりもはるかに短く、比較的細い。葯はわずかに反り返り、淡黄色、花粉が露出すると強い黄色、長く、長さ5~16㎜、細く、内向きに裂開する。子房が目立たず、淡緑色または白色、卵形、6角(かど)があり、長さ8~18㎜、基底の付着が子房の幅より狭い。花柱はわずかに長さ0.5~2㎜でかろうじて統合し、または単に密接した集団で分離する。柱頭は直立し、広がり、弱く基部で合着し、淡緑白色、均一に線形、長さ3~18㎜、子房と同長またはそれを超え、細い。花柄は直立状斜上~強く直立し、長さ2~8+cm。果実は淡緑色、無臭、±球形、不明瞭な6角(かど)があり、長さ1.2~1.6㎝×幅0.8~1.4㎝、粉っぽく、湿る(ジューシーではない)。2n=10。花期は4~6月。
品種) 'Beige' , 'Flore-Pleno' , Gothenburg pink , 'Jenny Rhodes' , 'Kath's Dwarf' , 'Quicksilver' , 'Roseum' , 'Snowbunting' (d)
12 Trillium × komarovii H.Nakai & Koji Ito スイフンエンレイソウ
synonym Trillium rhombifolium Kom.
synonym Trillium camschatcense auct. non Ker Gawl.
ロシア原産。針葉樹から落葉樹林に生える。
多年草、高さ50㎝以下。葉は無柄で、3輪生し、長さ15㎝×幅12㎝いか、広楕円形状の不規則な菱形、先は尖る。花は直径7㎝以下、花柄は長さ3㎝以下。外側の花被片は3個、長円形、緑色。内側の花被片は3個、外側の花被片よりも大きく、楕円形、白色。2n=6x=30。
13 Trillium lancifolium Raf.
USA南東部原産。英名はlanceleaf wakerobin , lance-leaved trillium , narrow-leaved trillium。
品種) 'Lancelot' , 'Shotgun Wedding'
14 Trillium ludovicianum Harb.
ルイジアナ州、ミシシッピ州原産。英名はLouisiana wakerobin。
品種) 'Bently'
15 Trillium ovatum Pursh
北アメリカ西部(USA,カナダ)原産。英名はPacific trillium , western wakerobin , western white trillium, western trillium。
品種) 'Edith' , 'Kenmore' , 'Roy Elliott' , 'Tillicum' , 'Wayne Roberts'
16 Trillium pusillum Michx.
USA原産。dwarf trillium , least trillium , dwarf wakerobin , American Wood Lily
花期は3~5月初旬。
品種) 'Roadrunner'
17 Trillium rivale S. Watson
synonym Pseudotrillium rivale (S.Watson) S.B.Farmer プセウドトリリウム属
カリフォルニア州、オレゴン州原産。英名はbrook wakerobin , brook wake-robin , brook trillium , Klamath wake-robin , Klamath trillium。
根茎は水平、短く、先端をかみ切られたような不規則な形をし(praemorse)、肉質。花茎は1~2本、断面が丸く、高さ4~15㎝、細く、無毛。苞は明らかに柄がある。葉身は青緑色で、たまに、主脈に沿って銀緑色の斑紋があり、卵状披針形、長さ1.5~8㎝×幅0.8~6㎝、やや質が厚く、光沢があり、基部は浅く~深い心形、先は尖鋭形。葉柄は長さ(0.5~)1~3(~6)㎝。花は直立し、受粉後、苞の下で急速に反り返り、±無臭。萼片が目立ち、広がり、緑色、弱い溝があり、長円形又は先が先細になり、普通、花弁より短くて狭く、長さ10~23mm×幅4~8mm、縁は全縁、先は円形で短突起がある。花弁は直立~広がり、反曲せず又は上部の1/2だけが反曲し、白色(まれに淡ピンク色)、普通、暗茜紫色(madder-purple)の斑点があり、まれに、ほとんど全体が茜紫色になり、色は古くなっても変化せず、脈は目立たず、卵状心形~ほぼ円形、先は中央より上が鈍く先細になり、長さ1.3~2.8㎝×幅1~2.4㎝、質が±薄く、基部は丸みを帯びたくさび形、縁は全縁、ほとんど波打たず、先は±尖頭の尖鋭形。雄しべは直立し、長さ5~12㎜。花糸は白色、はぼ葯と同長。葯は真っすぐ、黄色、長さ3~6mm、裂開、±外向き。葯隔は葯室を超えて広がらない。子房は乳白色、卵形、弱く6角(かど)があるが、対が密接し、3角(かど)に見え、短く、長さ3~9mm×幅約4mm、広く取り付けられた葯によりやや不明瞭になる。柱頭は反曲し、少なくとも乾燥した標本では±裂片が内側に見え、基部で合着~分離して密集し、白色またはクリーム色、長さ2~4mm、太さ均一、肉質。小花柄は開花時に強く直立し、受粉後に伸びて苞の下で強く反り返り、長さ2.5~11 cm。果実は緑白色、無臭、球形、長さ0.9~1.2㎝×幅0.8~1㎝、果肉が多く、ジューシーでは無い。2n=10。花期は春(3月上旬~6月上旬)。夏に枯れる。
品種) (Purple Heart Group) 'Purple Heart' , 'Del Norte' , 'Reticulate-leaved Group , 'Roseum' , 'Verne Ahiers' , 'Winifred Murray' , Winifred Murray Group
18 Trillium sessile L. トリリウム・セシール
USA原産。英名はsessile trillium , toad trillium , toadshade。
品種) 'Rubrum'
19 Trillium recurvatum L.C.Beck トリリウム・レクルバツム
USA原産。英名はwood lily , prairie trillium , toadshade , bloody butcher , bloody nose trillium。
多年草、高さ37.5㎝以下。根茎があり、群生し、茎は直立し、太い。葉は土が乾くと夏に枯れる。葉は3個輪生、披針形~円形、暗緑色のギボウシ状、紫色のまだらになる。花は高さ4.5㎝、紫色~褐紫色、花弁は直立し、爪部がある。萼は3個、後屈し、3個の葉の中心に無柄でつく。f. luteum は花が黄色。花期は4~5月。
品種) 'Arcadia'
20 Trillium rugelii Rendle トリリウム・ルゲーリ
USA東南部原産。英名はsouthern nodding trillium , illscented wakerobin。
品種) 'Orchard Pink'
21 Trillium smallii Maxim. コジマエンレイソウ 小島延齢草
synonym Trillium amabile Miyabe et Tatew.
日本(北海道)サハリン南部原産。和名は道南の松前町沖にある渡島小島(松前小島)に由来する。海岸付近や山地の樹林下などに生える。
エンレイソウ(2n=20)とオオバナノエンレイソウT.kamtschaticum (2n= 10)の絶滅した祖先型との雑種が倍数化することによって生じたと推定されている。6倍体(2n=30)。6倍体種であるコジマエンレイソウは花器の変異がエンレイソウ属中で最も顕著である。花弁は暗紫色、3~0個に変異する。また,花弁の形態は正常なものから一部が雄ずい化しているもの(antheroid)や、ほとんど完全に雄ずい化したもの(staminoid)まで、連続的な変異がある。さらに、雄しべも 3~6個と変異する。花弁と雄しべの形態・数は、3正常花弁+6雄しべの型、O花弁+5雄しべ、O花弁+6雄しべまで、連続的に変異する。これらの変異は同一個体上の花でも異なっており、直接的な遺伝的支配下にはない。また、これらの花器の形態的変異とは別に、淡緑色や暗紫色の子房・果実を持つ個体が存在する(参考6)
茎の高さ30~60㎝、直立する。葉は茎頂に3個輪生し、葉は菱形状円形。花は葉の上に単生し、直径3~4㎝、やや上向きに横向きにつく。萼片は3個、淡紅紫色を帯びた緑色、先が線鋭形、急に細くなる。花弁は暗紫色~紅紫色、発達するが、ないものや、不完全なものもあり、0~3個。子房は球形。花弁がない場合は、雄しべは3~6個、雌しべと同長か又は長い。葯は長く、花糸より長い。液果は卵形。稜があり、淡緑色。花期は4~5月。
ヒダカエンレイソウに似るが、ヒダカエンレイソウは萼片の先が三角状鋭形、雄しべの長さが短く、葯が花糸より短い。
21-1 Trillium smallii Maxim. var. atropurpureocarpum J.Samej. クロミノコジマエンレイソウ
果実が黒紫色になる変種
22 Trillium tschonoskii Maxim. ミヤマエンレイソウ 深山延齢草
日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ブータン、ミャンマー。中国名は延龄草 yan ling cao。別名はシロバナエンレイソウ。
多年草。高さ15~50㎝。根茎は丈夫、短い。茎は株立ちになる。葉は無柄、茎頂に3枚輪生し、葉は菱状円形~広菱形、長さ6~15㎝×幅5~15 ㎝。葉に接するように花を1個だけつける。花序柄は長さ1~4㎝、花は直径3~4㎝。外花被片(萼片)は3個、緑色、狭卵形~卵状披針形、長さ1.5~2㎝×幅5~9mm、草質。内花被片(花弁)は3個、白色、まれに淡紫色(内花被片が白く、咲いてから花が次第にピンク色を帯びることも多い)、卵状披針形、長さ1.5~2.2㎝×幅4~6(~10)。雄しべは花被片の長さの約2/5、花糸は長さ4~5mm。葯は長さ3~4㎜、凸面形の葯隔をもつ。子房は円錐状卵形、長さ7~9mm×幅5~7mm。花柱の先は3裂。柱頭はかなり太い。液果は黒紫色、直径1.5~1.8㎝、多数の種子をもち、無毛。2n=20(4倍体)。花期は4~6月。果期は7~8月。
4倍体種のミヤマエンレイには、花やその他の形態的変異はほとんどない。ただし、花弁全体あるいは主脈周辺が薄ピンク色の個体が往々にして存在する。また、赤紫色の子房、果実を持つ変種の存在が知られている。(参考6)
22-1 Trillium tschonoskii Maxim. f. violaceum Makino ムラサキエンレイソウ
22-2 Trillium tschonoskii Maxim. var. atrorubens Miyabe et Tatew. エゾノミヤマエンレイソウ
23 Trillium x hagae Miyabe et Tatew. シラオイエンレイソウ 白老延齢草
日本固有種(北海道)。和名は発見地である北海道の白老町に由来する。
オオバナノエンレイソウ(2倍体)とミヤマエンレイソウ(4倍体)との交雑による3倍体と6倍体がある。
茎は高さ30~40㎝、全体に大型で、株立ちの傾向がある。花が白色で横向きに咲く傾向がある。雄しべの長さは雌しべより短く、葯の長さが花糸の約2倍(花糸と葯の長さの比=1:2)。子房の先端は紅紫色になり、オオバナノエンレイソウに似る。
3倍体、6倍体ともやや横向きに大きな白色の花をつけるが、特に顕著な変異はないようである。ただし、子房の色がクリーム色~淡緑色、及びそれらに紫色斑があるものなどのわずかの変異がある(参考6)。
(1) 3倍体(2n=15)シラオイエンレイソウ
北海道の広域に分布する。
オオバナノエンレイソウ(T. camschatcense)とミヤマエンレイソウ(T. tschonoskii)との交雑により形成された3倍体(2n=15)。種子ができない。
(2) 6倍体(2n=30)シラオイエンレイソウ
北海道の平取と網走に分布する。
3倍体の染色体倍化により形成された6倍体(2n=30)。種子ができる。
24 Trillium x miyabeanum Tatew. ex J. et K.Samej. ヒダカエンレイソウ 日高延齢草
synonym Trillium x miyabeanum Tatew. ex J. et K.Samej. var. atropurpureocarpum J.Samej. synonym Trillium x miyabeanum Tatew. ex J. et K.Samej. f. albiflorum Soukup シロバナヒダカエンレイソウ
日本固有種(北海道、本州の中部地方)。山地の湿った場所に生える。和名は発見地の日高に由来する。
エンレイソウ(4倍体) とミヤマエンレイソウ(4倍体)との自然交雑種による4倍体(2n=20) 。
内花被片が紅紫色になるのが特徴ではあるが、大きさは不揃いで内花被片がない場合もある。雄しべが雌しべより短い。コジマエンレイソウ6倍体の場合は逆に雄しべが雌しべより長くなる。花期は4~5月。
25 Trillium x yezoense Tatew. ex J. et K.Samej. トカチエンレイソウ 十勝延齢草
synonym Trillium x yezoense Tatew. ex J. et K.Samej. var. atropurpureocarpum J.Samej.
エンレイソウとオオバナノエンレイソウとの自然交雑種で3倍体(2n= 15)で種子ができない。
花は暗紫色でヒダカエンレイソウ(4倍体)やコジマエンレイソウ(6倍体)と花が形態的に類似している(参考6)。コジマエンレイソウとの違いは子房の形が円錐状球形になり、コジマの場合は球形。
26 その他ハイブリッド
品種) 'Cairns' , 'Gothenburg Park' , 'Green Frost' , 'Hokkaido' , 'Jefferson Silver' , 'Jones Gap' , 'Julia' , 'Purple Haze' , 'Rankin' , 'Snowbunting' , 'Spencer' , 'The Smiths' , 'Val Mulvihill'
参考
1) Flora of ChinaTrillium
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=133668
2) Flora of North AmericaTrillium
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=133668
3) Plants of the World Online | Kew ScienceTrillium
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:24857-1
4) World Flora OnlineTrillium
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000039193
5) 植物研究雑誌第 60巻 第4号 124–128(1985)ヒダカエンレイソウ宮城県に産す(高橋英樹)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_060_124_128.pdf
6) 植物研究雑誌第60(6): 183–185(1985)エンレイソウ属植物の花器の変異について(内野明徳)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_060_183_185.pdf
7) The Japanese journal of genetics 55巻2号 p109-120 (1980年)六倍種コジマエンレイソウにおける染色体多型
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010210749.pdf
8) 26291087 研究成果報告書 - KAKEN林床植物の生活史モノグラフ研究ーエンレイソウ属植物を事例に
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-26291087/26291087seika.pdf
9) Novon Vol. 6, No. 2 (Summer, 1996), pp. 164-171 (8 pages)Published By: Missouri Botanical Garden Press
Trillium channellii, sp. nov. (Trilliaceae), in Japan, and T. camschatcense Ker Gawler,
Correct Name for the Asiatic Diploid Trillium
https://www.jstor.org/stable/3391914?origin=crossref
10) Plants of the World Online | Kew Science大会受賞講演 エンレイソウ属植物のゲノムと倍数性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ggs1921/29/5-6/29_5-6_228/_pdf/-char/ja