エンレイソウ 延齢草

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Flora of Mikawa

シュロソウ科 Melanthiaceae エンレイソウ属

学 名 Trillium apetalon Makino
 synonym Trillium smallii auct. non Maxim.
エンレイソウの花
エンレイソウの実
エンレイソウの葉
エンレイソウの葉2
エンレイソウ
花 期 4~7月
高 さ 20~40㎝
生活型 多年草
生育場所 山地の林下
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、千島、サハリン
撮 影 栂池自然園  07.7.27
エンレイソウは中国に自生しない。中国ではシロバナエンレイソウを延龄草(yan ling cao)といい、中国の漢方薬の延齢草根はシロバナエンレイソウの根茎である。旧分類ではユリ科に属した。
 茎の先に菱形の先が尖った3枚の葉を輪生する。葉は長さ10~20㎝の菱形、ユリ科ではあるが、葉には網状脈がある。葉の中心から立ち上がる花柄の先に花を1個だけつける。花は緑色~黒紫色の外花被片(蕚片)3個だけで、内花被(花弁)は普通無い。2n=20の4倍体であり。変異がある。
 三河ではほとんど見られないものである。奥三河地方で見られるのはミヤマエンレイソウ(シロバナエンレイソウ)であり、3個の白い内花被片がある。
 コジマエンレイソウTrillium amabile は北海道、サハリンに分布し、花が紅紫色、 外花被片3個があり、内花被片はあるものと、無いものがある。

エンレイソウ属

  family Melanthiaceae - genus Trillium

 多年草、普通、丈夫な根茎がある。茎は直立し、単純で、基部に少数の茶色の鱗片状の鞘がある。葉は3個、頂部に輪生し、葉柄は無または短、菱状円形~卵形、主脈が3本又は5本と吻合する細脈(anastomosing veinlets)がある。花は両性、単生、頂生で、花序柄がある。花被片は6個、2輪につき、離生。 外側の花被片(萼片)は普通、緑色、宿存する。内側の花被片(花弁)は花弁状、紫色~白色、外花被片よりわずかに狭く、開花後に枯れた又は脱落する。雄しべは6本、花糸は短い。葯は底着、線形、非常に短い葯隔がある。子房は球形、3室; 胚珠は、各室あたり数個~多数。 花柱は短く、しばしば基部まで深く3裂する。果実は液果、球形~卵形。 種子は数個~多数、卵形、小さい。x=5。
 世界に約46種があり、日本、韓国、中国、インド、シッキム、ブータン、ミャンマー、ネパール、ロシア、北アメリカに分布する。日本の自生種は交雑種を含めて9種が確認されている。
 日本に現存する種はエンレイソウ(4倍体)、オオバナノエンレイソウ(2倍体)、ミヤマエンレイソウ(4倍体)の3種。それらの交雑種にはトカチエンレイソウ(3倍体)、ヒダカエンレイソウ(4倍体)、コジマエンレイソウ(6倍体)、カワユエンレイソウ(4倍体)、シラオイエンレイソウ(3倍体と6倍体)がある。

エンレイソウ属の主な種と園芸品種

1 Trillium apetalon Makino エンレイソウ 延齢草
  synonym Trillium smallii auct. non Maxim.

  synonym Trillium apetalon Makino f. album J.Samej. トイシノエンレイソウ

  synonym Trillium apetalon Makino f. atropurpureocarpum Makino クロミノエンレイソウ

  synonym Trillium apetalon Makino f. rubrocarpum (J.Samej.) Yonek. アカミノエンレイソウ 

  synonym Trillium apetalon Makino var. viridipurpureocarpum (Makino) J.Samej.

  synonym Trillium apetalon Makino var. atropurpureocarpum (Makino) J.Samej.

 北海道、本州、四国、九州、千島、サハリン原産。
 多年草。高さ20~40㎝。茎の先に菱形の先が尖った3枚の葉を輪生する。葉は長さ10~20㎝の菱形、ユリ科ではあるが、葉には網状脈がある。葉の中心から立ち上がる花柄の先に花を1個だけつける。花は幅約2㎝、緑色~黒紫色の外花被片(蕚片)3個だけで、内花被片(花弁)は普通無い。2n=20(4倍体)。花期は4~7月。2倍体ではなく、4倍体で、変異があり、子房・果実の色に関しては淡緑色~緑色、緑色に紫斑があるもの、赤紫色、暗紫色のものなどがある。また、淡紅色の3花弁を有する品種の存在も報告されている。
 POWOでは下位分類を認めていない。
 トイシノエンレイソウは萼が澄んだ緑色。
 クロミノエンレイソウは黒実が黒色。
 アカミノエンレイソウは果実が赤色。
 アカバナノエンレイソウは花被片3個が淡紅色(f. tripetalum)。

2 Trillium camschatcense Ker Gawl. オオバナノエンレイソウ 大花の延齢草

  synonym Trillium kamtschaticum Pall. ex Miyabe

  synonym Trillium camschatcense Ker Gawl. f. plenum (J.Samej.) H.Nakai et Koji Ito ヤエザキオオバナノエンレイソウ

  synonym Trillium camschatcense Ker Gawl. f. violaceum (Miyabe et Tatew.) H.Nakai et Koji Ito ウスイロオオバナノエンレイソウ

  synonym Trillium camschatcense Ker Gawl. var. kurilense (Tatew.) H.Nakai et Koji Ito クロミノオオバナエンレイソウ

  synonym Trillium camschatcense Ker Gawl. var. soyanum (J.Samej.) H.Nakai et Koji Ito ソウヤエンレイソウ

 日本、朝鮮、中国、ロシア、北アメリカ原産。中国名は吉林延龄草 ji lin yan ling cao。
 多年草、高さ35~50㎝。 根茎は丈夫、短い。 茎は束生する。葉は 無柄、広菱状円形~卵状円形、長さ10~17㎝×幅7~17㎝。 花柄は長さ1.5~4cm。 花は上向きに咲き、幅3~5㎝。八重咲もある。外花被片は緑色、広披針形~長円状披針形、長さ3~3.5㎝×幅0.7~1.2㎝。内花被片は白色、楕円形~卵形、長さ3~3.8㎝×幅1~1.6㎝。雄しべは花被片の長さの約2/5。花糸は長さ3~4mm。葯は通常7~10mm、先にわずかに凸面状の葯隔がある。子房はほぼ円錐状卵形。柱頭はかなり太い。液果は卵状球形、直径1.8~2.8cm。 花期は6月。果期は8月。2n=10(2倍体), 24。
品種) 'Kamishihoro' , 'Nemuro' , 'Sapphoro' , 'Spangles' , 'Tsuzuki'
 POWOでは下位分類を認めていない。

(1) Trillium camschatcense Ker Gawl. f. plenum (J.Samej.) H.Nakai et Koji Ito ヤエザキオオバナノエンレイソウ 八重咲大花の延齢草

 八重咲品種。

(2) Trillium camschatcense Ker Gawl. f. violaceum (Miyabe et Tatew.) H.Nakai et Koji Ito ウスイロオオバナノエンレイソウ 薄色大花の延齢草

 内花被片が赤みを帯びるもの。内花被片が赤みを帯びるもの。

(3) Trillium camschatcense Ker Gawl. var. kurilense (Tatew.) H.Nakai et Koji Ito クロミノオオバナエンレイソウ 黒実の大花の延齢草

 雌しべや子房が紫色のもの。別名はチシマエンレイソウ。

(4) Trillium camschatcense Ker Gawl. var. soyanum (J.Samej.) H.Nakai et Koji Ito ソウヤエンレイソウ 宗谷延齢草

 子房は淡いクリーム色で先端部は緑色

3 Trillium catesbaei Elliott トリリウム・カテスバエリ
  synonym Trillium affine Rendle
 USA東部原産。英名はbashful trillium , Catesby's trillium , bashful wakerobin。
 根茎は短く、先に向かってかって先細になる。花茎は1~2本、断面は円形、高さ20~45㎝、細く、無毛。苞は普通、やや持ち上がり、花を露出する。葉身は緑色、上面は主脈が深く凹み、楕円状卵形、細長い葉柄状の基部を含み長さ6.5~15㎝×幅4~8㎝、葉の下部1/3は基部まで次第に細くなり、縁はしばしばわずかに隆起し、先は鈍い鋭形~尖鋭形。花は苞の下で開くか、又は反り返り、ほとんど直立しない。萼片はかま形状に反り返り、緑色または紫色の条線があり、線状披針形、長さ20~45mm×7~8mm、縁は±平ら、先は尖鋭形。花弁は上部がかま形状に反り返り、白色、ピンク色、またはローズ色、古くなるとピンク色に暗くなるか、又は色あせず、脈は見えるが彫り込まれず、楕円状長円形~長円状披針形、長さ3.5~5㎝×1~2+㎝、質が薄く、基部はやや覆瓦状、漏斗状の筒を作り、縁は波打ち、先は尖鋭形。雄しべは目立ち、反曲し、長さ16~25mm。花糸は白色、葯よりわずかに長くて狭い。葯は反り返り、明るい黄色、長さ5~14mm、太く、内向きに裂開する。子房は目立たず、白色、角(かど)のある卵形、深い6角(かど)があり、長さ4~12mm×3~7mm、細く、基部は狭い。花柱は長さ2~6mm。柱頭は目立ち、強くカールから直立し、基部で合着し、淡緑色または白色、分裂せず、長さ4~10mm、均一に薄い。花柄は下曲又は半曲し、まれに直立し、角(かど)があり、長さ2~4(~5)㎝。果実は漿果、帯緑色または帯白色、卵状球形、成熟すると角(かど)が目立たなくなり、直径1~1.5㎝、果肉が多いがジューシーではない。花期は春~夏(3月下旬~6月上旬)。
品種) 'Monroeco'

4 Trillium channellii I.Fukuda, J.D.Freeman et M.Itou カワユエンレイソウ 川湯延齢草

 北海道固有種。北海道川上郡弟子屈町の川湯温泉周辺の限定した区域だけに見られる。
  オオバナノエンレイソウとミヤマエンレイソウの特徴を持つことから、両種の4倍体の交雑種だといわれる。オオバナノエンレイソウの雄しべは雌しべよりも長く、葯は花糸の約3倍、カワユエンレイソウの雄しべは雌しべよりも短く、葯は花糸の長さの約2倍。
 2014~2016年の調査では川湯地方のエンレイソウ属植物はオオバナノエンレイソウ以外はいずれも6倍体シラオイエンレイソウしか見つからず、4倍体のカワユエンレイソウは発見され無かった。4倍体はオオバナノエンレイソウとシラオイエンレイソウとの交雑の可能性が示されている。
 根茎をもち、高さ30~50㎝、無毛。葉は長さ9~12㎝×幅7~14㎝、無柄、広楕円形、先は短い尖鋭形、基部はごく広い鈍形。花柄は長さ1.8~2.2㎝、真っすぐ、葉の上に直立する。花は比較的に小さく、口を大きく開け、花柄にほぼ垂直又はわずかに上向きの角度でつく。萼片は披針形、長さ19~44mm×幅9~18mm、緑色。花弁は卵形、長さ22~44mm×幅11~27㎜、白色。雄しべは直立。葯は長さ8~10㎜。花糸は長さ4~5mm。雌しべは長さ10~20mm、幅7~19mm。子房は円錐形、下部は白色で、帯紫色の柱頭の枝の基部の下にある先端は暗紫色。柱頭は上部で3本が広がり、帯黄色。果実は卵形~球形、緑色、柱頭が宿存する。花粉は球形、直径約18.6µm。2n(4x)=20。

5 Trillium chloropetalum (Torr.) Howell トリリウム・クロロペタルム

 カリフォルニア州原産。英名はgiant trillium , giant wakerobin , common trillium , American Wood Lily。
 茎は高さ20~70㎝。葉は無柄、長さ7~21㎝×幅7~18㎝、先は円形~鈍形、普通、弱く+-褐緑色の斑点がる。花は直立、無柄、普通、甘いバラのような芳香又はスパイシーな香りがある。萼片は長さ3.5~6.5㎝、披針形。花弁は直立又は内側に傾き、±雄しべを隠し、長さ6.5~10㎝、線状倒披針形~倒卵形、黄色~ピンク色~暗紫色、たまに、白色。 雄しべは長さ15~30mm、葯隔は紫色。子房は紫色。 果実は卵形、不明瞭な6角(かど)があり、赤紫色、果肉がある。n=5。花期は4~5月。
 根茎は±直立し、帯褐色、やや扁平で肥厚し、表面上は球根状で、先がかみ切られたようなギザギザに切れ(praemorse)、もろくない。花茎は1~3本、緑色、横断面は円形、長さ20~65㎝、丈夫。苞は地上から十分に離れた位置にあり、無柄(苞葉の葉身が狭くなると、苞がほぼ無柄のように見えることがある)。葉身は密~弱く、暗褐緑色のまだら模様があり、苞が成熟するにつれてまだら模様はより不明瞭から消失し、広卵形、長さ7~17.6㎝×幅7.4~17.7㎝、光沢はなく、先は鈍円形。花は直立し、バラのような香りがあり、スパイシー。萼片は苞の上部に開出・斜上し、緑色、披針形、長さ35~65㎜×幅7~12㎜、縁は全縁で平ら、先は鈍円形。花弁は長持ちし、直立し、輻合し、± 雄しべと子房を覆い、黄色、青銅色、栗色、褐色、濃紫色、赤褐色、ピンク色、暗紫赤色、紫がかった青銅色、まれに緑白色、螺旋状に捻じれず、脈は無く、倒披針形~倒卵形、長さ6.5~10㎝×幅1.5~2.5㎝、質が厚く、基部は楔形、縁は全縁、先は鋭形~ほぼ切形まで様々で、不規則に切れ込む。雄しべは直立し、帯紫色、長さ17~26㎜。花糸は紫色、長さ約4㎜、基部で最も広く、葯嚢よりかなり短い。葯は直立し、真っ直ぐで、±紫褐色、長さ 13~22㎜、内向きに裂開する。葯隔は紫色、真っ直ぐで、葯嚢より約1~1.5㎜長い。子房は紫色、卵形、6角(かど)があり、長さ6~12㎜。柱頭は小さく、散開または直立し、明瞭、紫色、錐形、長さ4~8㎜、肉質ではない。果実は赤紫色、香りは無く、卵形、不明瞭な6角(かど)があり、長さ2.5~3㎝、果肉質で多汁。2n=10。
 2変種がある。J. D. Freeman(1975)は、Trillium chloropetalumはT. albidumと異なり、葯嚢が内向型(外向型ではない)であること、および葯と子房組織に存在する紫色の色素がT. albidumにはないことを考察した。場所によっては、この2種の間に交雑が確実に起こっており、完全な範囲の中間種が存在する。この種はさらなる研究に値する。以下の変種は弱く分化しているため、おそらく削除する必要がある(Flora of North America)。
品種) 'Album' , 'Charlwood' , 'Giganteum' , 'Ice Cream' , 'Spetchly Park' , 'Spinners' , 'Val Mulvihill' , 'Volcano'
5-1 Trillium chloropetalum var. chloropetalum
 カリフォルニア州のサンマテオ郡とサンタクララ郡およびサンフランシスコ湾の東側沿いの郡、北はナパ郡とレイク郡に生息する。サンフランシスコ湾地域の東と南でより多く見られる。標高0~2000mのレッドウッドの森の渓谷の縁、渓谷沿いの開口部、伐採された森の茂みや絡み合い、落葉樹林の小川の平地、低木の茂み、砂丘の斜面の開けた森林、驚くほど開けた草原の茂みの島、ただし通常は季節の大半で土壌が湿っている場所など生息地は様々。  花弁は黄色、黄緑色、緑紫色、濃紫色、青銅色がかった緑色または褐色で、白色ではなく、紫色で隠されていても常に黄色の色素がある。花期はは晩冬~春(2月下旬~4月上旬または中旬)。
 J. D. Freeman(1975)は、var. chloropetalumのすべての植物が、化学的に、この植物が根元から枝分かれして生えていることを突き止めた。var. chloropetalumは花びらに黄色の色素があるが、紫色に隠れている可能性がある。限られた野外観察であるが、この変種は、var. giganteumよりも開花時期がやや短く、var. chloropetalumの苞は、その成長段階でわずかに金属光沢を呈するようである。
5-2 Trillium chloropetalum var. giganteum (Hook. & Arn.) Munz
  synonym Trillium giganteum (Hook. & Arn.) A.Heller
 カリフォルニア州原産。標高0~600mのレッドウッドの森の渓谷の縁、渓谷沿いの開口部、伐採された森の茂みや絡み合い、落葉樹林の小川の平地、低木の茂みの茂み、砂丘の開けた森林斜面、驚くほど開けた草原の茂みの島々など生息地は様々。通常は季節の大半を通じて土壌が湿ったままの場所に生える。
 花弁は緑白色~濃赤色または紫色で、黄色の色素はない。花期は晩冬~春(2月下旬~4月上旬または中旬)。
 var. giganteum はサンフランシスコ湾周辺に生息する。この変種の大きさを考えると、小名「giganteum」は適切である。観察した個体群では、var. chloropetalum よりも丈夫で、一般的に大きく、var. giganteum の狭い花弁の種は、広い花弁の種と混在する個体群がたまに見られ、いくつかの場所ではほぼ独占的に見られる。J. D. Freeman (1975) は、タイプ標本の花弁が細いことから、これらは交雑の影響を受けていない「純粋な」var. giganteum を表している可能性があると示唆した。

6 Trillium cuneatum Raf. トリリウム・クネアツム
 USA南東部原産。英名はAmerican Wood Lily , Whippoorwill Toadshade。
 根茎は水平で、帯褐色、短く、太く、先端をかみ切られたような不規則な形になり(praemorse)、もろくない。花茎は1~5本、高さ16~45㎝、苞付近は平滑又は粗い。苞は地上にしっかりと保持され、無柄。葉身は紫緑色、弱く~強くまだらになり、まだらは古くなると不明瞭になり、卵形、卵状楕円形、たまに卵状円形、縁が重なり、長さ7~18.5㎝×幅7~13㎝、普通、中央より下で幅が最も広く、光沢はなく、基部は±円形、縁の上部の1/3は、先まで凸面状に湾曲し、先は尖鋭形~鋭形。花は苞の上に生じ、直立し、普通、良い香りがあり、かすかに、スパイシーで、傷つけたスイートシュラブ(カリカンサス)の葉の匂いを連想させ、まれに、かび臭いまたは不快な匂いがある。萼片は広く広がり、様々な緑色で、紫色の縞模様~すべて紫色で、長円状披針形、長さ27~60mm×幅7~13mm、縁は全縁、先は円形~鋭形。花弁は長持ちし、直立し、±輻合、雄しべと子房を±覆って隠し、栗色、栗紫色、褐紫色、ブロンズ色、緑紫色、明るい緑色、黄緑色、淡レモン黄色、または2色、たまにクローンでは上部が黄色で基部が紫色、花が開くとすぐに明るい銅色にあせ、特定の色のパターンは毎年一貫しており、黄色または緑色の場合を除いて、古くなると褐色の色調に色あせ、螺旋状に捻じれることは無く、形は様々で、楕円状倒卵形~倒披針形、長さ4~7㎝×0.9~2.7㎝、質感は厚く、中間又は中間の上で最も幅が広く、基部は狭くなり普通、くさび形、爪部はなく、縁は平らで、全縁、先は鋭形~円状鋭形~鈍形。雄しべは直立し、真っすぐで、褐茶色がかった紫緑色、長さ11~18mm。花糸は褐紫色、長さ1.5~3.5mm、基部で最も幅が広い。葯は直立し、真っすぐで、褐灰色、長さ7~14mm、側向裂開(latrorse)のまたはたまに内向き(introrse)。葯隔は真っすぐで、葯室を超えて伸びたとしても、かすか(0.5mm以下)。子房は栗色、卵形~花瓶形、熟すと弱く6角(かど)またはうねがあり、長さ12~15mm。柱頭は直立し、わずかに発散して広がり、分離、紫灰色、線状錐形~太い錐形、長さ4~15mm、肉質。果実は緑色または紫色の縞模様がり、卵形、非常に不明瞭な角(かど)があり、または角(かど)が見えなくなり、長さ約2㎝×幅1~1.5㎝、粉っぽいかまたは果肉があり、肉質で、ジューシーではない。2n=10。花期は3月上旬~4月中旬。
品種) 'Bobby Masterson' , 'Ghost' , 'Lexington' , 'Moonshine' , 'Oconee Red' , 'Oconee Yellow' , 'Pleasant Hill'

7 Trillium erectum L. トリリウム・エレクツム
 カナダ、USA原産。 英名はred trillium , wake robin, purple trillium , bethroot , stinking Benjamin。
 根茎は短く、太く、かみ切られたようなギザギザに切れる(praemorse)。花茎は1~2本、しばしば多数の子株が重なり合って塊になり、断面は円形、長さ15~60㎝、±丈夫で無毛。苞は無柄、葉身は明るい緑色で、暗色色素を持たず、主脈が目立ち、広菱形~卵状菱形、長さ5~20㎝×幅5~20㎝、幅は長さとほぼ同じで、中央付近で最大幅になり、基部は漸尖し、先は尖鋭形。花は直立、斜上、または下部にあるが、苞より上に付き、濡れた犬のような悪臭がある。花被片は開き、平らになる。萼片は平ら~先に溝があり、緑色、しばしば栗色の条線または栗色を帯び、ときに全体が暗栗色になり、披針形で尖鋭形、長さ10~50㎜、花弁と同数、花弁の幅の約1/2、葉質、縁は全縁、先は尖鋭形。花弁は広がり、萼片と同じ面にあるかわずかに斜上し、暗赤褐色、栗色、紫色、または白色、ときに淡黄色、上面の主脈は目立ち、やや刻まれて見え、通常は平ら、披針形、卵状披針形、またはときに卵形、長さ1.5~5㎝×幅1~3㎝、萼片幅の 2 倍、基部近くが最も広く、質感が濃く、先は尖鋭形。雄しべは直立またはわずかに反り返り、長さ5~15㎜。花糸は白色、帯ピンク色、または暗紫色、葯と同数だが地域個体群間で変化し、細い。葯は直立または弱く反り返り、暗栗色、灰栗色、または帯黄色、花粉が露出すると強い黄色になり、長さ5~12㎜、裂開は内向き。子房は白花型でさえ、暗紫色~栗色で、卵形、楕円形~球形で、6角(かど)があり、果実が熟すと角(かど)は非常に低く隆起し、長さ5~10㎜、基部に広く付着する。柱頭は反り返り、明瞭で、暗紫色、背側に裂片がなく、錐形で短く、長さ3~7㎜、花時に子房の長さの約1/2以下で、肉質。小花柄は真っ直ぐで、直立するか、苞の下でやや傾くが強く反り返らず、長さ1~10+㎝。果実は暗栗色、弱い果実の香りがあり、± 球形~わずかにピラミッド形、長さ1~1.6㎝×幅1~1.5㎝、多汁。 2n=10。
 2変種があり、花弁の色がvar. erectumは通常赤色、栗色または暗紫色。var. albumは花弁が白色。
品種) 'Beige' , 'Harvington Clone'

8 Trillium flexipes Raf. トリリウム・フレキシペス
 カナダ、USA原産。英名はnodding wakerobin , bent trillium , drooping trillium。標高 100~600 mの樹木が茂った斜面、落葉樹林の氾濫原、特に石灰岩の上に生える。
 根茎はやや直立し、太く、先端をかみ切られたようになる(praemorse)。花茎は1個の根茎から1~数本つき、断面は円形、長さ2~5㎜、無毛。苞は無柄。葉身は緑色で赤色や栗色の基調はなく、菱形、長さ7~25㎝×幅7~25㎝、しばしば幅が長より広く、基部は中央より少し上から漸尖し、先は尖鋭形。花は小花柄の頂上で約90°曲がり、上向きではなく外向きを向くか、強く傾斜した小花柄に付く。萼片は弱く反り返り、緑色、披針形、長さ14~45㎜、花弁より短いかかろうじて同じ、縁は全縁、先は尖鋭形。花弁は平らか上部1/2が反り返り、乳白色、2色ではなく、脈は顕著に刻まれ、卵状披針形~広卵形、長さ2~5㎝×幅1~4㎝、質感は重く、縁は全縁、先は鋭形。雄しべは大きく、± 直立し、長さ9~23㎜。花糸は白色、葯の長さの1/2未満で、細い。葯は真っ直ぐかわずかに反り返り、乳白色または黄色、長さ5~18㎜、厚く、±内向きに裂開する。子房は白色、卵形~フラスコ形、強く6角(かど)があり、長さ5~16㎜×幅4~12㎜、基部で広く付着する。柱頭は反り​返り、明瞭だが密に集まり、白色、内側に裂片がなく、線状錐形、短く、太く、長さ4~13㎜、± 子房と同長、肉質。小花柄は堅く、直立し、水平に伸びるか、苞の下に垂れ下がり、まれに反り返り、長さ4~12㎝。果実は漿果状、バラ色~紫赤色、熟した果実の香りがあり、卵形~頂部がややピラミッド形、強く角張り、長さ2~3.5㎝×幅1~3㎝、熟すと非常に多汁である。2n=10。花期は春(4~6月上旬)。
品種) 'Harvington Dusky Pink' , 'Harvington Select' , 'Harvington Selection'

9 Trillium foetidissimum J. D. Freeman トリリウム・フォエチディッシムム

 ミシシッピ州、ルイジアナ州原産。英名はMississippi river wakerobin , stinking trillium , fetid trillium。標高40~50mの川の断崖、峡谷、氾濫原、低地、豊かな森林、路肩、シルト、砂質沖積土、黄土、高地の乾燥したオークと松の森に生える。
 根茎は水平、帯褐色、太く、短く、先端がかみ切られたようで(praemorse)、もろくない。花茎は1~2本、緑色~栗色、横断面は円形、長さ8~28㎝、基部にはパピラがある。苞葉はしばしば水平になり、地上からかなり上につき、無柄。葉身は明るい緑色または青銅色がかった緑色で、暗緑色の斑が強くあり、中央に明るい緑色の縞がある。斑点は成長とともに不明瞭になるが、ほとんどの種ほど目立たず、楕円形~卵形、まれに±円形、長さ6.7~12㎝×幅3.8~6㎝、光沢はなく、基部は均一に先細りして広い付着部になり、先は鈍鋭形。花は苞葉に直接つき、特に強い日光が当たると腐った肉のような臭いがする。萼片は苞葉の上につき、ほぼ水平に伸び、緑色または緑色に暗栗色の条線があり、披針形、長さ16~40㎜×幅4~6㎜、質感が厚く、縁は全縁、先は鋭形。花弁は宿存し、直立、基部から先にかけて非常に緩やかに湾曲し、±輻合し(connivent)、± 雄しべと子房を覆い、ピンク紫色、明るい紫色~赤紫色、褐紫色、まれに黄色、経年で帯褐色の色調に退色し、螺旋状に捻じれず、経年で巻き込まず、脈は刻まれず、狭楕円形~線状披針形、長さ2~5㎝×幅0.3~0.5㎝、質感が厚く、光沢がなく、縁は全縁、平らで、先は鋭形。雄しべは比較的突出し、直立し、長さ9~25㎜。花糸は暗栗色、長さ3~6㎜、基部が広がる。葯は真っ直ぐで、暗栗色~黒色、長さ8~15㎜、裂開は内向き。葯隔は真っ直ぐで、葯嚢から1~1.5㎜伸びる。子房は赤紫色、卵形、断面は六角形で、長さ5~12㎜、広く付着する。柱頭は直立し、散開して反曲し、明瞭、暗紫色で、錐形、子房とほぼ同じ長さで、肉質である。果実は紫褐色、卵形、少なくとも先端は6角(かど)があり、肉質。花期は晩冬~早春(3月上旬[まれに2月]~4月上旬)。
品種) 'Adams' , 'Woodville'

10 Trillium gracile J.D.Freeman トリリウム・グラキール
 テキサス州、ルイジアナ州原産。英名はSabine river wakerobin , slender trillium , graceful trillium。標高0~10mの成熟した松林と広葉樹林、分断された川床の土手と尾根、やや濃い日陰、低い砂地の平原に生える。
 根茎は水平、帯褐色、太く、短く、先端がかみ切られたようで(praemorse)、もろくない。花茎は1~3本、横断面は円形、長さ16~35㎝、細く、無毛。苞葉は地面から十分に上にあり、無柄。葉身は暗緑色のまだらがありまだらは年齢とともに不明瞭になり、楕円形卵形~倒卵形、長さ6~8.5㎝×幅2.6~4㎝、基部は円形、先は鈍形または円形、まれに鋭形。花はかび臭または菌臭がある。萼片は苞葉の上に現れ、基部は花茎の軸に対して直角、広く広がり、先端は反り返り、上面は暗紫色、披針形~長円形、長さ20~25㎜×幅4~5㎜、縁は全縁、先は鈍形。花弁は長く残り、直立し、弱く輻合し、少なくとも部分的に雄しべを覆い、暗紫色または栗色、まれに黄色、螺旋状に捻じれず、線状楕円形~倒披針形、長さ2~4㎝×幅0.3~0.8㎝、質が±厚く、縁は全縁、平ら、先は鋭形。雄しべは直立し、長さ12~16.5㎜。花糸は紫色、長さ2~3㎜、細い。葯は直立し、真っすぐで、紫色~黄色、長さ10~15㎜、細く、裂開は内向き。葯隔は真っすぐで、葯嚢を0.1~1㎜越える。子房は紫色、卵形、3角(かど)があり、長さ4~11㎜。柱頭は直立し、広がり反り返り、明瞭で、紫色~帯白色、無柄、錐形、長さ2~4㎜、肉質、基部が太くなる。果実は濃緑紫色、香りは報告されず、卵形、3角(かど)の性質を隠すほど膨らみ、長さ1㎝、果肉が多く、湿っている。開花は春(4月上旬~中旬)。
品種) 'Hunter' , 'Shelbyville'

11 Trillium grandiflorum (Michx.) Salisb. トリリウム・グランディフローラム

 北アメリカ(カナダ、USA)に広く分布。英名はgreat white trillium , great white trillium , white wake-robin , wood lily , large-flowered trillium 。
 根茎は短く、太く、先端をかみ切られたような不規則な形になる(praemorse)。花茎は(1~)2~3(~多数)本、断面が丸く、高さ15~30+㎝、太く、無毛。苞は無柄またはほぼ無柄(たまに基部が弱いくさび形。葉身は暗緑色、初期には栗色を帯、卵状菱形、長さ12~20㎝×幅8~15㎝、先は尖鋭形。花は外側を向き、直立、無臭。萼は広がり、平ら、緑色、ごくまれに栗紫色の条線があり、披針形、長さ20~55㎜×幅12~23㎜、縁は全縁、先は尖鋭形または鋭形。花弁は基部に直立し、中央よりやや上で曲がって、強く漏斗形の花冠を生じ、子房と花柱の基部を覆い隠し、白色またはまれにピンク色、V字型や他の斑紋は無く、鈍いピンク紫色に退色し、内側の表面の脈が目立つが、彫り込まれていないように見え、形は様々に変化し、披針形~長円形~倒卵形、またはまれに、ほぼ円形、側面はしばしば平行、長さ4~7.5㎝×幅2~4㎝、質が薄く、基部は急に漸尖し、縁は基部で重なり、 巻き、上部の1/2が波打つ波状、先は±尖鋭形。雄しべは真っすぐまたはほとんど反曲せず、長さ9~27㎜。花糸は白色、葯よりもはるかに短く、比較的細い。葯はわずかに反り返り、淡黄色、花粉が露出すると強い黄色、長く、長さ5~16㎜、細く、内向きに裂開する。子房が目立たず、淡緑色または白色、卵形、6角(かど)があり、長さ8~18㎜、基底の付着が子房の幅より狭い。花柱はわずかに長さ0.5~2㎜でかろうじて統合し、または単に密接した集団で分離する。柱頭は直立し、広がり、弱く基部で合着し、淡緑白色、均一に線形、長さ3~18㎜、子房と同長またはそれを超え、細い。花柄は直立状斜上~強く直立し、長さ2~8+cm。果実は淡緑色、無臭、±球形、不明瞭な6角(かど)があり、長さ1.2~1.6㎝×幅0.8~1.4㎝、粉っぽく、湿る(ジューシーではない)。2n=10。花期は4~6月。
品種) 'Beige' , 'Flore-Pleno' , Gothenburg pink , 'Jenny Rhodes' , 'Kath's Dwarf' , 'Quicksilver' , 'Roseum' , 'Snowbunting' (d)

12 Trillium × komarovii H.Nakai & Koji Ito スイフンエンレイソウ 

  synonym Trillium rhombifolium Kom.
  synonym Trillium camschatcense auct. non Ker Gawl.
 ロシア原産。針葉樹から落葉樹林に生える。
 多年草、高さ50㎝以下。葉は無柄で、3輪生し、長さ15㎝×幅12㎝以下、広楕円形状の不規則な菱形、先は尖る。花は直径7㎝以下、花柄は長さ3㎝以下。外側の花被片は3個、長円形、緑色。内側の花被片は3個、外側の花被片よりも大きく、楕円形、白色。2n=6x=30。

13 Trillium lancifolium Raf.
 USA南東部(アラバマ州、フロリダ州、ジョージア州、サウスカロライナ州、テネシー州)原産。英名はlanceleaf wakerobin , lance-leaved trillium , narrow-leaved trillium。標高20~200mの沖積土、氾濫原、岩の多い高地の森林、藪の茂み、サトウキビの茂み、暗い日陰、または薄く開けた森林に生える。
 根茎は水平、白色、非常に細長く、もろく、節間は長い。花茎は1~2本、断面は円形、長さ15~32㎝、苞葉の約2.5~3倍の長さがあり、細く、無毛。苞葉はしばしば下向きになることが多いが、葉は地面から十分に離れ、無柄。葉身は暗緑色のまだら模様があり、斑点は古くなるにつれて不明瞭になり、披針形~狭披針状楕円形、長さ5~8.3㎝×幅2~3.3㎝、光沢はなく、先は鈍形または鋭形。花は直立し、匂いは報告されていない。萼片は基部で反り返り、葉と±同一面まで下降し、葉に互生し、緑色、披針形、長さ13~20㎜×幅5~7㎜、縁は全縁、先は鋭形。花弁は長宿存し、直立し、±輻合し(connivent)、雄しべと子房を完全には覆い隠さず、栗赤色、紫色、緑がかった黄褐色(greenish tan)、または2色、爪部は基部が暗赤栗色、しばしば捻じれ、線形~狭へら形、長さ2.8~6.6㎝×幅2~4㎝、中央より上が最大幅で、厚い質感があり、基部に爪部があり、縁は全縁、先は鋭形、爪は伸長した拡大部の約1/2の長さ。雄しべは内曲し、長さ13~21㎜。花糸は紫色、細い。葯は弱く~強く内曲し、紫色、長さ4~6㎜、± 細く、内向きに裂開する。葯隔は弱く~強く内曲し、紫色、葯より1㎜突出する。子房は暗紫色、卵状菱形、6角(かど)があり、長さ6~7㎜。柱頭は直立し、やや散開反曲し、明瞭で、紫色、ほぼ線形、不明瞭な錐形、長さ3~4㎜、弱く肉質。果実は漿果、帯紫色、無臭、6角があり、果実は翼のように見える長い角(かど)のある襞があり、長さ0.7~1.2㎝、果肉質。2n=10。花期は冬~春(2~5月上旬)。
品種) 'Lancelot' , 'Shotgun Wedding'

14 Trillium ludovicianum Harb. トリリウム・ルドビキアヌム
 ルイジアナ州、ミシシッピ州原産。英名はLouisiana wakerobin。標高50~500mの低地の平原、小川沿いの氾濫原、氾濫原につながる急峻な渓谷斜面、松とブナの混交林に生える。
 根茎は±水平、帯褐色、短く、太く、先端がかみ切られたようで(praemorse)、もろくない。花茎は1~3個、横断面は円形、長さ14~26㎝、±細く、無毛。苞葉は地面から十分に上につき、無柄。葉身は濃いブロンズグリーン色のまだら斑が強くあり、しばしば中央に明るい条線があり、斑紋は古くなるにつれてやや不明瞭になり、披針形~卵形、長さ5.3~9.5㎝× 幅2.3~5㎝、光沢はなく、遠位1/3の縁は先端に向かって凸曲し、先は円形~鋭形。花は直立し、腐肉の臭いがする。萼片は苞葉の上に広がり、緑色で、披針形~倒披針形、長さ19~35㎜× 幅2.7~4㎜、縁は全縁、先は円形~鋭形、ときに弱く反り返る。花弁は長く宿存し、わずかに内向きに湾曲し、直立して広がり、弱く輻合し(connivent)、± 雄しべと子房を覆い、暗栗色、帯紫色、または鈍い帯緑色、または2色で、基部は紫色、先は灰緑色、螺旋状にねじれず、倒披針状線形、長さ3.5~5.5㎝×幅0.4~0.8㎝、厚い質感があり、基部は厚くなり、弱く爪部になり、縁は全縁、先は鋭形。 雄しべは直立し、真っすぐ、長さ10~18㎜。花糸はオリーブ色がかったオレンジ色、長さ2~3㎜、基部が広がる。葯は直立し、真っすぐ、オリーブ色~オレンジ色、長さ7~20㎜、細く、裂開は側向き。葯隔はオリーブ色~オレンジ色で、真っすぐ、葯嚢を越えてほとんど伸びない。子房は紫色、卵形、6角があり、長さ8~9㎜。柱頭は直立し、先端は広がるかコイル状に巻き、明瞭で、淡紫色、錐形、長さ3~6㎜、±肉質。果実は暗紫緑色、ほとんどまたは全く臭いがなく、卵形、6角(かど)があり、果肉質。花期は晩冬~早春(3月上旬~4月)。
品種) 'Bently'

15 Trillium ovatum Pursh トリリウム・オバツム
 北アメリカ西部(USA,カナダ)原産。英名はPacific trillium , western wakerobin , western white trillium, western trillium。
 根茎は半直立~水平、短く、頑丈、先端がかみ切られたようになる(praemorse)。花茎は1~2本、丸く、長さ20~50㎝、±細く、無毛。苞葉は無柄またはほぼ無柄、または短い葉柄がある。葉身は緑色、ときにしみやまだらがあり、主脈は目立ち、卵状菱形、長さ7~12㎝×幅5~20㎝、開花中も拡大し続け、基部は円形、先は尖鋭形。花は直立またはうなづき垂れ下がり、臭いは無い。萼片は水平に広がり、緑色、披針形~長円状披針形、長さ15~50㎜×幅6~20㎜、縁は全縁、先は鋭形。花弁は直立・斜上し、通常基部から幅広く広がり、雌しべ全体が露出し、白色、またはピンク色や淡紅色の斑点があり、V字型の斑点がなく、バラピンク色、紫色、または暗赤色に退色し、脈は深く刻まれず、±線形~広倒卵形、長さ1.5~7㎝×幅1~4㎝、中央または中央より上で最も広く、質は薄く、縁は平らから波状、先は尖鋭形。雄しべは突出し、わずかに反り返って広がる~真っ直ぐ、長さ10~18㎜。花糸は白色、葯より短く、細い。葯は黄色、長さ4~16㎜、細く、裂開は側向き~内向き。子房は緑色または白色、卵形、6角(かど)があり、長さ5~12㎜、付着部は子房幅の± 3/4。柱頭は反り返り、基部でほとんど合着せず、緑白色または白色、線形、上面は裂けず、長さ6~10㎜、均一に細い。小花柄は直立または傾斜し、長さ2~6㎝。果実は漿果、緑色または白色、±無臭、広卵形、不明瞭な翼があり、長さ1.2~2.8㎝×幅0.7~1.9㎝、果肉質で湿潤。2n=10。
 2変種がある。
15-1 Trillium ovatum var. ovatum
 ユタ州、ブリティッシュコロンビア州、カリフォルニア州、コロラド州、アイダホ州、モンタナ州、オレゴン州、ワシントン州、ワイオミング州に分布。標高60~1600mの針葉樹林および針葉樹と落葉樹の混交林、ハンノキの茂み、低木地帯に生える。
 苞は無柄。花は直立する。花弁は披針形~倒卵形、長さ1.5~7㎝×幅1~4㎝。小花柄は直立する。花期は晩冬~春(2月下旬~4月)。
15-2 Trillium ovatum var. oettingeri (Munz & Thorne) Case
 カリフォルニア州に分布。標高 1200~2000 mの針葉樹林または混合山地林に生える。
 苞には明らかに短い柄がある。花は垂れ下がり、花弁は線形~線形披針形、長さ0.5~2.4㎝×幅0.2~0.6㎝。小花柄は±傾斜からほぼ水平。花期は春~夏(5~7月)
品種) 'Edith' , 'Kenmore' , 'Roy Elliott' , 'Tillicum' , 'Wayne Roberts'

16 Trillium pusillum Michx. トリリウム・プシルム
 USA原産。英名はdwarf trillium , least trillium , dwarf wakerobin , American Wood Lily。
 花期は3~5月初旬。
 根茎は水平に伸び、分枝し、細い。花茎は1~2本、横断面は円形、長さ7~20㎝、細く、開花後に丈が高く丈夫になり、無毛。苞は非常に短い柄があり、ほぼ無柄または無柄。葉身は暗緑色で、若いときは栗色の基調を持ち、まだらはなく、基部から主脈が3~5本あり、長円形~披針状鈍形、長さ2.5~8+㎝×幅1~3㎝、光沢はなく、先は鈍形。花は苞の上につき、直立し、無臭からわずかに甘い香りがする、小花柄があるかまたは無柄。萼片は目立ち、花弁と同じ平面に広がり、暗緑色で、若いときは栗色の基調を持ち、長円状披針形、長さ15~30㎜×幅5~10㎜、縁は全縁、先は鈍形~強く丸みを帯びる。花弁は存続が短く、開出・斜上し、雄しべと子房が露出し、上部の半分が弱く反り返り、白色、下面は濃いバラ色に老化し、脈は刻まれていないが、花弁の主脈は明瞭に見え、長円形~狭披針形、長さ1.5~3㎝×幅0.5~1.5㎝、質は薄く、基部より上が最も広く、縁は強く波打つ。花弁の幅と波打つ程度は個体間および集団間でかなり変動し、先は鈍形~弱く尖鋭形。雄しべは直立して広がり、長さ8~10㎜。花糸はピンク紫色~白色、±葯と同長程度かわずかに短く、細い。葯は±真っすぐ、淡ラベンダー色または黄色、長さ3~8(~10)㎜、花糸より太く、裂開は内向き。葯隔は葯嚢を超えて伸びない。子房は目立ち、白色、卵形、不明瞭な6角(かど)があり、長さ2.5~8㎜、付着部は子房より細い。柱頭は花柱と合流し(confluent)、緑白色~白色、上部は3裂し、裂片は線形(糸状)で、長く広がり、長さ3~12㎜、均一に細く糸状。小花柄は堅く、直立または傾斜し、長さ0.5~2㎝、または無いか大幅に縮小する。果実は白色または淡緑色、卵形、長さ1~1.5㎝、果肉があり、水分があるが、ジューシーではない。2n=10。
 2変種がある。
品種) 'Roadrunner'
16-1 Trillium pusillum var. pusillum
 アラバマ州、アーカンソー州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ミズーリ州、ノースカロライナ州、オクラホマ州、サウスカロライナ州、テネシー州、テキサス州に分布。標高0~600mの低湿地の森林で、時には水生植物が生い茂り、落葉樹林が混在し、ブナやオークの森のチャート質岩や分解中の頁岩が見られることが多い場所に生える。
 花は小花柄があり、小花柄は通常長さ0.5~2㎝。花期は春(3月~5月初旬)。
16-1 Trillium pusillum var. virginianum Fernald
 メリーランド州、ノースカロライナ州、バージニア州、ウェストバージニア州に分布。標高0~300 mの小川沿いの低湿地林の酸性土壌、アカカエデ (Acer rubrum) の沼地に生える。春は非常に湿潤な丘の上に群生することが多く、ミズゴケが生えている可能性がある。
 花は無柄またはほぼ半無柄で、小花柄はある場合は、長さ0.1~0.3㎝。花期は春(3月~ 5月初旬)。

17 Trillium rivale S. Watson 

  synonym Pseudotrillium rivale (S.Watson) S.B.Farmer プセウドトリリウム属

 カリフォルニア州、オレゴン州原産。英名はbrook wakerobin , brook wake-robin , brook trillium , Klamath wake-robin , Klamath trillium。
 根茎は水平、短く、先端をかみ切られたような不規則な形をし(praemorse)、肉質。花茎は1~2本、断面が丸く、高さ4~15㎝、細く、無毛。苞は明らかに柄がある。葉身は青緑色で、たまに、主脈に沿って銀緑色の斑紋があり、卵状披針形、長さ1.5~8㎝×幅0.8~6㎝、やや質が厚く、光沢があり、基部は浅く~深い心形、先は尖鋭形。葉柄は長さ(0.5~)1~3(~6)㎝。花は直立し、受粉後、苞の下で急速に反り返り、±無臭。萼片が目立ち、広がり、緑色、弱い溝があり、長円形又は先が先細になり、普通、花弁より短くて狭く、長さ10~23mm×幅4~8mm、縁は全縁、先は円形で短突起がある。花弁は直立~広がり、反曲せず又は上部の1/2だけが反曲し、白色(まれに淡ピンク色)、普通、暗茜紫色(madder-purple)の斑点があり、まれに、ほとんど全体が茜紫色になり、色は古くなっても変化せず、脈は目立たず、卵状心形~ほぼ円形、先は中央より上が鈍く先細になり、長さ1.3~2.8㎝×幅1~2.4㎝、質が±薄く、基部は丸みを帯びたくさび形、縁は全縁、ほとんど波打たず、先は±尖頭の尖鋭形。雄しべは直立し、長さ5~12㎜。花糸は白色、はぼ葯と同長。葯は真っすぐ、黄色、長さ3~6mm、裂開、±外向き。葯隔は葯室を超えて広がらない。子房は乳白色、卵形、弱く6角(かど)があるが、対が密接し、3角(かど)に見え、短く、長さ3~9mm×幅約4mm、広く取り付けられた葯によりやや不明瞭になる。柱頭は反曲し、少なくとも乾燥した標本では±裂片が内側に見え、基部で合着~分離して密集し、白色またはクリーム色、長さ2~4mm、太さ均一、肉質。小花柄は開花時に強く直立し、受粉後に伸びて苞の下で強く反り返り、長さ2.5~11 cm。果実は緑白色、無臭、球形、長さ0.9~1.2㎝×幅0.8~1㎝、果肉が多く、ジューシーでは無い。2n=10。花期は春(3月上旬~6月上旬)。夏に枯れる。
品種) (Purple Heart Group) 'Purple Heart' , 'Del Norte' , 'Reticulate-leaved Group , 'Roseum' , 'Verne Ahiers' , 'Winifred Murray' , Winifred Murray Group

18 Trillium sessile L. トリリウム・セシール
 USA(アラバマ州、アーカンソー州、イリノイ州、インディアナ州、カンザス州、ケンタッキー州、メリーランド州、ミシガン州、ミズーリ州、ニューヨーク州、ノースカロライナ州、オハイオ州、オクラホマ州、ペンシルベニア州、テネシー州、バージニア州、ウェストバージニア州)原産。英名はsessile trillium , toad trillium , toadshade。標高100~300mの豊かな森林地帯、石灰岩地帯、石灰質土壌、氾濫原、川岸、粘土質沖積土、あまり肥沃でない土壌、高く乾燥した石灰岩林、軽い放牧地、柵で囲まれた場所、伐採後の灌木地帯に生える。
 根茎は水平、帯褐色、太く、先端をかみ切られたようで(praemorse)、肉質。花茎は1~3本、横断面は円形、長さ8~25㎝、細く~太く、無毛。苞葉は地上から十分に高くつき、無柄。葉身は緑色~青緑色、斑が濃いもの~まばらで、斑紋は古くなるにつれ不明瞭になり、楕円形~ほぼ円形、長さ4~10㎝×幅2~8㎝、基部は広く付き、先は丸みを帯びた尖鋭形~鈍く平行な側部の尖鋭形(基部は広い付着部にかけて丸みを帯びる)。花は直立し、刺激臭があり、スパイシー。萼片は苞葉の上に広がり、緑色で栗色の様々な条線があり、披針形~倒披針形、長さ9~35㎜×幅4~8㎜、縁は全縁、先は丸みを帯びた尖鋭形。花弁は長く、直立し、±隠れ、±雄しべと子房を覆い、栗色、褐栗色、緑色、または黄緑色、螺旋状に捻じれず、倒披針形~楕円形、ときにほぼ円形、長さ1.7~3.5㎝×幅0.7~2㎝、質は厚く、基部の付着部近くで狭まるが、実際には爪部ではなく、縁は全縁、先は次第に丸みを帯び先細りから鋭形になる。雄しべは真っ直ぐで、長さ10~23㎜。花糸は赤紫色、長さ2~5㎜、基部が広がる。葯は直立し、真っ直ぐ、灰紫色、長さ9~16㎜、厚く、内向きに裂開する。葯隔は紫褐色、真っ直ぐで、葯嚢より 2~5+㎜突出する。子房は基部が緑白色で、先は紫色、卵形~球形、6角(かど)があり、柱頭に向かってピラミッド状に狭まり、長さ4~8.5㎜。柱頭は直立し、散開・反曲し、明瞭で、紫色、錐形、長さ1~5㎜、± 肉質。果実は漿果、暗緑紫色、無臭、ほぼ球形、6角(かど)があり、角はやや翼状になり、果肉が多く、水分は少ない。2n=10。花期は春(3~5月上旬)。
品種) 'Rubrum'

19 Trillium recurvatum L.C.Beck トリリウム・レクルバツム
 USA原産。英名はwood lily , prairie trillium , toadshade , bloody butcher , bloody nose trillium。
 多年草、高さ37.5㎝以下。根茎があり、群生し、茎は直立し、太い。葉は土が乾くと夏に枯れる。葉は3個輪生、披針形~円形、暗緑色のギボウシ状、紫色のまだらになる。花は高さ4.5㎝、紫色~褐紫色、花弁は直立し、爪部がある。萼は3個、後屈し、3個の葉の中心に無柄でつく。f. luteum は花が黄色。花期は4~5月。
品種) 'Arcadia'

20 Trillium rugelii Rendle トリリウム・ルゲーリ
 USA東南部原産(アラバマ州、ジョージア州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、テネシー州)。英名はsouthern nodding trillium , illscented wakerobin。標高200~700mの落葉樹林の丘陵と入り江、内側の山麓地帯、主に川岸や平地に沿った沖積土に生える。
 根茎は短く、太く、先端が先細で尖る。花茎は1~3本、横断面は円形、長さ15~40㎝、丈夫で無毛。苞葉は無柄~ほぼ無柄、葉身は明るい緑色、葉脈は刻まれず、菱形、幅が長さより広く、長さ6~15㎝×幅6~16㎝、光沢はなく、基部は漸尖し、先は尖鋭形。花は苞葉の下で強く反り返る。萼片は花弁より短く、花弁にやや隠れる、広がり、緑色、ごく稀に赤色の条線が入る、披針状楕円形、長さ15~40㎜×幅7~17㎜、縁は全縁、先は尖鋭形。花弁はほとんどの種で上部1/2が反り返り(アラバマ産の種では花弁がやや狭く、基部の直上で強く反り返り)、白色、まれに2色で基部はバラ色、または暗紫色と白色、上面の脈は目立ち、広卵状楕円形、長さ2.5~5㎝×幅0.8~3.5㎝、質感が重く、縁は全縁で波打たず、先は急に尖鋭形。雄しべはほぼ真っ直ぐ、長さ8~18㎜。花糸は濃紫色、長さ2~8㎜、細い。葯はほぼ真っ直ぐ、暗紫色、長さ12~16㎜、薄く、内側に裂開する。葯隔は葯嚢を超えて伸びない。子房は明瞭、紫色の条線がありまたは上部または全体が栗色になり、フラスコ形、6角(かど)があり、長さ14~17㎜。柱頭は反り返り、明瞭、濃い紫色で、背側に裂け目がなく、短形、長さ2~5㎜、肉質。小花柄は苞葉の下で強く反り返り、長さ1~7㎝以上。果実は漿果、暗赤紫色、かすかに果実の香りがし、卵形~球形、長さ1.7㎝×幅2㎝、肉質で多汁。2n=10。花期は春中頃(4月中旬~5月)。
品種) 'Orchard Pink'

21 Trillium smallii Maxim. コジマエンレイソウ 小島延齢草
  synonym Trillium amabile Miyabe et Tatew.
 日本(北海道)サハリン南部原産。和名は道南の松前町沖にある渡島小島(松前小島)に由来する。海岸付近や山地の樹林下などに生える。
 エンレイソウ(2n=20)とオオバナノエンレイソウT.kamtschaticum (2n= 10)の絶滅した祖先型との雑種が倍数化することによって生じたと推定されている。6倍体(2n=30)。6倍体種であるコジマエンレイソウは花器の変異がエンレイソウ属中で最も顕著である。花弁は暗紫色、3~0個に変異する。また,花弁の形態は正常なものから一部が雄ずい化しているもの(antheroid)や、ほとんど完全に雄ずい化したもの(staminoid)まで、連続的な変異がある。さらに、雄しべも 3~6個と変異する。花弁と雄しべの形態・数は、3正常花弁+6雄しべの型、O花弁+5雄しべ、O花弁+6雄しべまで、連続的に変異する。これらの変異は同一個体上の花でも異なっており、直接的な遺伝的支配下にはない。また、これらの花器の形態的変異とは別に、淡緑色や暗紫色の子房・果実を持つ個体が存在する(参考6)
 茎の高さ30~60㎝、直立する。葉は茎頂に3個輪生し、葉は菱形状円形。花は葉の上に単生し、直径3~4㎝、やや上向きに横向きにつく。萼片は3個、淡紅紫色を帯びた緑色、先が線鋭形、急に細くなる。花弁は暗紫色~紅紫色、発達するが、ないものや、不完全なものもあり、0~3個。子房は球形。花弁がない場合は、雄しべは3~6個、雌しべと同長か又は長い。葯は長く、花糸より長い。液果は卵形。稜があり、淡緑色。花期は4~5月。
 ヒダカエンレイソウに似るが、ヒダカエンレイソウは萼片の先が三角状鋭形、雄しべの長さが短く、葯が花糸より短い。

21-1 Trillium smallii Maxim. var. atropurpureocarpum J.Samej. クロミノコジマエンレイソウ 黒実の小島延齢草

 果実が黒紫色になる変種

22 Trillium tschonoskii Maxim. ミヤマエンレイソウ 深山延齢草

  synonym Trillium tschonoskii Maxim. f. violaceum Makino ムラサキエンレイソウ

  synonym Trillium tschonoskii Maxim. var. atrorubens Miyabe et Tatew. エゾノミヤマエンレイソウ

 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ブータン、ミャンマー。中国名は延龄草 yan ling cao。別名はシロバナエンレイソウ。
 多年草。高さ15~50㎝。根茎は丈夫、短い。茎は株立ちになる。葉は無柄、茎頂に3枚輪生し、葉は菱状円形~広菱形、長さ6~15㎝×幅5~15 ㎝。葉に接するように花を1個だけつける。花序柄は長さ1~4㎝、花は直径3~4㎝。外花被片(萼片)は3個、緑色、狭卵形~卵状披針形、長さ1.5~2㎝×幅5~9mm、草質。内花被片(花弁)は3個、白色、まれに淡紫色(内花被片が白く、咲いてから花が次第にピンク色を帯びることも多い)、卵状披針形、長さ1.5~2.2㎝×幅4~6(~10)。雄しべは花被片の長さの約2/5、花糸は長さ4~5mm。葯は長さ3~4㎜、凸面形の葯隔をもつ。子房は円錐状卵形、長さ7~9mm×幅5~7mm。花柱の先は3裂。柱頭はかなり太い。液果は黒紫色、直径1.5~1.8㎝、多数の種子をもち、無毛。2n=20(4倍体)。花期は4~6月。果期は7~8月。
 4倍体種のミヤマエンレイには、花やその他の形態的変異はほとんどない。ただし、花弁全体あるいは主脈周辺が薄ピンク色の個体が往々にして存在する。また、赤紫色の子房、果実を持つ変種の存在が知られている。(参考6)

23 Trillium x hagae Miyabe et Tatew. シラオイエンレイソウ 白老延齢草
 日本固有種(北海道)。和名は発見地である北海道の白老町に由来する。
 オオバナノエンレイソウ(2倍体)とミヤマエンレイソウ(4倍体)との交雑による3倍体と6倍体がある。
 茎は高さ30~40㎝、全体に大型で、株立ちの傾向がある。花が白色で横向きに咲く傾向がある。雄しべの長さは雌しべより短く、葯の長さが花糸の約2倍(花糸と葯の長さの比=1:2)。子房の先端は紅紫色になり、オオバナノエンレイソウに似る。
 3倍体、6倍体ともやや横向きに大きな白色の花をつけるが、特に顕著な変異はないようである。ただし、子房の色がクリーム色~淡緑色、及びそれらに紫色斑があるものなどのわずかの変異がある(参考6)。
(1) 3倍体(2n=15)シラオイエンレイソウ
 北海道の広域に分布する。
 オオバナノエンレイソウ(T. camschatcense)とミヤマエンレイソウ(T. tschonoskii)との交雑により形成された3倍体(2n=15)。種子ができない。
(2) 6倍体(2n=30)シラオイエンレイソウ
 北海道の平取と網走に分布する。
 3倍体の染色体倍化により形成された6倍体(2n=30)。種子ができる。

24 Trillium x miyabeanum Tatew. ex J. et K.Samej. ヒダカエンレイソウ 日高延齢草

  synonym Trillium x miyabeanum Tatew. ex J. et K.Samej. var. atropurpureocarpum J.Samej.

  synonym Trillium x miyabeanum Tatew. ex J. et K.Samej. f. albiflorum Soukup シロバナヒダカエンレイソウ

 日本固有種(北海道、本州の中部地方)。山地の湿った場所に生える。和名は発見地の日高に由来する。
 エンレイソウ(4倍体) とミヤマエンレイソウ(4倍体)との自然交雑種による4倍体(2n=20) 。
 内花被片が紅紫色になるのが特徴ではあるが、大きさは不揃いで内花被片がない場合もある。雄しべが雌しべより短い。コジマエンレイソウ6倍体の場合は逆に雄しべが雌しべより長くなる。花期は4~5月。

25 Trillium x yezoense Tatew. ex J. et K.Samej. トカチエンレイソウ 十勝延齢草

  synonym Trillium x yezoense Tatew. ex J. et K.Samej. var. atropurpureocarpum J.Samej.

 エンレイソウとオオバナノエンレイソウとの自然交雑種で3倍体(2n= 15)で種子ができない。
  花は暗紫色でヒダカエンレイソウ(4倍体)やコジマエンレイソウ(6倍体)と花が形態的に類似している(参考6)。コジマエンレイソウとの違いは子房の形が円錐状球形になり、コジマの場合は球形。

26 その他ハイブリッド
品種) 'Cairns' , 'Gothenburg Park' , 'Green Frost' , 'Hokkaido' , 'Jefferson Silver' , 'Jones Gap' , 'Julia' , 'Purple Haze' , 'Rankin' , 'Snowbunting' , 'Spencer' , 'The Smiths' , 'Val Mulvihill'

参考

1) Flora of China
 Trillium
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=133668
2) Flora of North America
 Trillium
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=133668
3) Plants of the World Online | Kew Science
 Trillium
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:24857-1
4) World Flora Online
 Trillium
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000039193
5) 植物研究雑誌第 60巻 第4号 124–128(1985)
 ヒダカエンレイソウ宮城県に産す(高橋英樹)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_060_124_128.pdf
6) 植物研究雑誌第60(6): 183–185(1985)
 エンレイソウ属植物の花器の変異について(内野明徳)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_060_183_185.pdf
7) The Japanese journal of genetics 55巻2号 p109-120 (1980年)
 六倍種コジマエンレイソウにおける染色体多型
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010210749.pdf
8) 26291087 研究成果報告書 - KAKEN
 林床植物の生活史モノグラフ研究ーエンレイソウ属植物を事例に
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-26291087/26291087seika.pdf
9) Novon Vol. 6, No. 2 (Summer, 1996), pp. 164-171 (8 pages)
 Published By: Missouri Botanical Garden Press
 Trillium channellii, sp. nov. (Trilliaceae), in Japan, and T. camschatcense Ker Gawler,
 Correct Name for the Asiatic Diploid Trillium
https://www.jstor.org/stable/3391914?origin=crossref
10) Plants of the World Online | Kew Science
  大会受賞講演 エンレイソウ属植物のゲノムと倍数性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ggs1921/29/5-6/29_5-6_228/_pdf/-char/ja