ドクウツギ 毒空木

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Flora of Mikawa

ドクウツギ科 Coriariaceae  ドクウツギ属

別 名 イチロベエゴロシ
学 名 Coriaria japonica A. Gray
ドクウツギの雌花
ドクウツギの雄花
ドクウツギの果実
ドクウツギの果実3
ドクウツギの幹
ドクウツギ
ドクウツギ雌花序と雄花序
ドクウツギの葉
ドクウツギの葉表
ドクウツギの葉裏
花 期 4~5月
高 さ 1~2m
生活型 落葉低木
生育場所 山野、河原、岩礫地
分 布 在来種(日本固有種) 北海道、本州(近畿地方以北)
撮 影 面の木  13.5.15(花)  15.06.29(果実)
猛毒で知られている。トリカブト、ドクゼリと並ぶ日本三大有毒植物の1つといわれている。
 落葉低木、高さ1~2m。 幹は赤褐色、粒状の灰色の皮目があり、毒々しい。枝には4稜がある。葉も果実も有毒で、果実は甘いため中毒例が多いといわれている。葉は羽状複葉に見えるが、対生の単葉、無柄。葉身は長さ6~8㎝、幅2~3.5㎝の卵形、全縁、縁が波打ち、先は次第に尖り、基部は円形、両面とも無毛、3脈が目立つ。雌雄同株。葉腋から雌雄別々の総状花序を出す。雄花序は長さ2~5㎝。雌花序は長さ6~15㎝。花弁は長さ約1㎜、開花時には萼より小さい。雄花は萼片が長さ3.5㎜、雄しべ10個、葯は黄色。雌花は萼片が長さ約2㎜、心皮5個が離生する。果実は直径8~10㎜の液果状の痩果、多肉質に肥大した花弁に包まれ、5分果、初め赤色、熟すと黒紫色になる。中の分果(痩果)は長さ4~5㎜、褐色、表面に隆条がある。2n=40。花期は4~5月。

ドクウツギ属

  family Coriariaceae - genus Coriaria

 Coriaria1属だけの種であり、科と同じ。  傾伏の低木又は亜低木状の草本。いずれも猛毒成分を含む。マメ科の植物と同じように根粒菌と共生し、空中窒素を固定。小枝はうねがある。葉は対生又は輪生、全縁、托葉は脱落性、微小。花は小さく、両性又は単性、単生又は総状花序につく。萼片は5個、覆瓦状。花弁は5個、敷石状、萼片より小さく、肉質、中に竜骨があり、花後に大きなって、心皮を包み、偽核果(pseudodrupe)を作る。雄しべは10個、2列に並び、離生、花弁に対生する。葯は突き出し、大きく、2室、縦に裂開する。心皮は5~10個、分離。子房は上位、胚珠は質に1個、下垂胚珠、倒生胚珠。花柱は5個、離生、線形。柱頭は反曲。偽核果(蒴果)は扁球形(oblate)、熟すと赤色~黒色。胚乳は薄いか又は無い。胚は直立。
 世界に約15種があり、中国、ヒマラヤ地域~日本、フィリピン、太平洋諸島(ニュージーランド)、地中海沿岸地域、アメリカに分布する。

ドクウツギ属の主な種と園芸品種

1 Coriaria intermedia Matsum. タイワンドクウツギ 台湾毒空木

  synonym Coriaria japonica A.Gray subsp. intermedia (Matsum.) T.C.Huang et S.F.Huang

 台湾、フィリピン原産。中国名は台湾马桑 tai wan ma sang。標高2500m以下の森林、茂みに生える。
 低木で小型、高さ1~2m、よく分枝する。小枝は赤紫色で4角(かど)があり、レンズ形の皮目がある。芽鱗は卵形、長さ2~3mm、膜質。葉は対生し、葉柄は長さ1~2mm、基部で膨らんでパッド状に広がる。葉身は卵状披針形、長さ(2.5~)3.5~6.5(~7)cm×幅(1~)1.3~2.2(~3)cm、膜質または紙質、両面とも無毛、先端まで3脈があり、葉脈は下面に隆起し、上面でわずかに凹み、側脈は上面でわずかに凹み、基部は広楔形またはほぼ円形、縁は全縁、先端は尖鋭形。総状花序は腋生、長さ2~4cm、基部に多数の三角形の芽鱗がある。小花柄は長さ2~3mm。萼片は卵状円形、約・長さ2.5mm×幅2mm、縁は先端に縁飾りのある小歯があり、先は鈍形。花弁は線状長円形で小さく、長さ0.5~1㎜×幅約0.5mm。花糸は線形、長さ約5mm、内側に曲がる。葯は線状長円形、長さ約2.5㎜。雌花は不稔雄しべは有または無、心皮は5個、横方向に扁平、耳があり、約・長さ0.7mm×幅0.5mm、内側は中間で±統合する。花柱は直立し、長さ約1mm。柱頭はピンク色、長さ約1.5mm。果実は成熟すると赤色になり、球形、直径3~4mm。花期は1~4月。果期は5月~11月。2n=40。

2 Coriaria japonica A.Gray ドクウツギ 毒空木
 日本固有種。北海道、本州の近畿地方以北に分布する。山野、河原、岩礫地に生える。
 落葉低木、高さ1~2m。 幹は赤褐色、粒状の灰色の皮目があり、毒々しい。枝には4稜がある。葉も果実も有毒で、果実は甘いため中毒例が多いといわれている。葉は羽状複葉に見えるが、対生の単葉、無柄。葉身は長さ6~8㎝、幅2~3.5㎝の卵形、全縁、縁が波打ち、先は次第に尖り、基部は円形、両面とも無毛、3脈が目立つ。雌雄同株。葉腋から雌雄別々の総状花序を出す。雄花序は長さ2~5㎝。雌花序は長さ6~15㎝。花弁は長さ約1㎜、開花時には萼より小さい。雄花は萼片が長さ3.5㎜、雄しべ10個、葯は黄色。雌花は萼片が長さ約2㎜、心皮5個が離生する。果実は直径8~10㎜の液果状の痩果、多肉質に肥大した花弁に包まれ、5分果、初め赤色、熟すと黒紫色になる。中の分果(痩果)は長さ4~5㎜、褐色、表面に隆条がある。2n=40。花期は4~5月。

3 Coriaria myrtifolia L. セイヨウドクウツギ 西洋毒空木
 地中海沿岸地域(アルジェリア、バレアレス、フランス、ギリシャ、イタリア、モロッコ、スペイン)原産。英名はEnglish redoul。地中海沿岸の林縁に生える。この植物には、タンニンに加えて、有毒物質および脳刺激物質であるセスキテルペン、コリアミルチンが含まれている。
 低木、高さ2~3(4) m。稔性の茎は直立し、木質。枝は断面がほぼ四角形、帯灰色、無毛。花のつく側枝は直立・開出し、一般に成長が限定される。徒長枝のシュートは1m以上になり、豊富で、直立またはアーチ状になり、葉が密につく。葉は対生または3~4個が輪生し、葉身は長さ(10)20~33mm×幅(3)9~12mm、披針形~卵形、先は±鋭形、3脈があり、無毛、ほぼ革質、明るい緑色、沿下し、翼は非常に狭い。托葉は無い。徒長枝の茎の葉はより大きく、長さ55~75mm×幅20~35mm、より柔らかい。花序は長さ3~8cm、通常長さ10~30cmの側枝の先端につき、小枝は短い。苞は約・長さ10mm×幅5mm、±楕円形、凹凸面形、宿存性。花は単性または両性で、帯緑色。小花柄は長さ1~2(10)mm、花後に長くなる。小苞は0~3個、通常互生する。萼片は長さ約1.5mm、広卵形。花弁は萼片よりやや短く、広卵形。雄しべは長く、雄花では突き出すが、雌花では非常に縮小している。雄しべは花後に長くなり、突き出るようになる。葯は長さ約2mm。子房は長さ約1mm。花柱は長さ5~6mm。偽果(pseudocarp)は長さ15~20mm、断面は五角形に近く、花弁と萼片が膨らみ、うねがあり、光沢があり、背が赤緑色、最終的にはほぼ黒色になる。痩果は長さ3.5~5mm×幅2~3mm、±梨形、光沢があり、黒色で、背には同心円状のアーチの形の肋が付く。2n20, 40, 約80。 花期は(3~)4~6(~9)月。

4 Coriaria napalensis Wall. ヒマラヤドクウツギ 
 中国(甘粛省、広西チワン族自治区、貴州省、河南省、香港、湖北省、湖南省、江蘇省、陝西省、四川省、西蔵、雲南省)、ブータン、インド、カシミール、ミャンマー、ネパール、パキスタン原産。中国名は马桑 ma sang。標高200~3200mの茂み、山の斜面に生える。
 低木、高さ1.5~2.5m、枝は水平に広がり、小枝は四角形または狭く4翼がある。若い枝は赤紫色、微軟毛があるかまたは無毛になる。古い枝は紫褐色、はっきりと目立つ皮目がある。芽鱗は赤紫色、卵形または卵状三角形、長さ1~2mm、膜質、無毛。葉は対生。葉柄は紫色、長さ2~3mm、微軟毛があり、基部でパッド状に膨らむ。葉身は楕円形または広楕円形、長さ2.5~8×幅1.5~4cm、紙質~薄い革質、両面とも無毛または中脈と側脈に微軟毛があり、先端まで3本の脈があり、葉脈は下面で隆起し、上面でわずかに陥入し、基部は円形、縁は全縁、先は鋭形。花序は腋生。雄花序は長さ1.5~2.5 cm、密に多数の花がつき、花は葉の展開より先に咲き、花序軸には腺のある微軟毛がある。苞と小苞は卵形~円形、約・長さ2.5mm×幅2mm、膜質、半透明、凹面形、縁は上向きに縁飾りにある小歯状。小花柄は長さ約1mm、無毛。萼片は卵形、長さ1.5~2mm×幅1~1.5mm、縁は半透明、縁飾りのある小歯状。花弁は卵形、非常に小さく、長さ約0.3mm。花糸は線形、長さ約1mm、花時に伸長し、長さ3~3.5mm。葯は長円形、長さ約2mm。雌しべは小さく、不稔。雌花序は葉の展開と同時に花が開き、長さ4~6cm、花序軸は腺のある微軟毛がある。苞は帯紫色、長さ約4mm。小花柄は長さ1.5~2.5mm。萼片は雄花と同様。花弁は小さく肉質。雄しべは短く、花糸は長さ約0.5mm。心皮は5個、扁平、耳があり、約・長さ0.7mm×幅0.5mm。花柱は長さ約1mm、柱頭は紫赤色。果実は成熟すると赤色~濃紫色または紫黒色になり、ほぼ球形、直径4~6mm。種子は卵状長円形。花期は2~5月。果期は5~8月。2n=40。

1 Coriaria terminalis Hemsley コリアリア・テルミナリス
 中国(四川省、西蔵、雲南省)、インド、ネパール、ブータン原産。中国名は草马桑 cao ma sang。標高1800~3700mの山の斜面の茂みに生える。
草本植物は亜低木で、高さ0.5~1m、枝は少数、小枝は四角形またはわずかに狭い翼があり、帯紫色の腺毛がある。葉は無柄または短い葉柄がある。葉身は、下部の葉では広卵形またはほぼ円形、長さ4~6(~7.5)cm×幅3~5cm、上部の葉または側枝の葉は卵状披針形または長円状披針形、長さ2.5~4cm×幅約1.5cm、紙質、両面に腺毛があり、基部に(3~)5~9脈があり、基部は心形で半抱茎またはほぼ円形、縁に腺毛の縁毛があり、先は鋭形または円形で、先端が微突形。総状花序は頂生、長さ12.5~21cm、花序軸は紫赤色、白色の腺毛がある。花は小さく、単性で雌雄同株である。苞は紫色で、披針形、長さ3~4mm。小花柄は長さ3~6mm、果時に長さ1.2cmまで伸び、腺毛がある。萼片は広卵形、卵形、または卵状披針形、長さ2.5~3mm×幅1.3~2.5mm、外側は灰白色の細点があり、縁は半透明、先は尖鋭形または鋭形。花弁は卵形で小さく、長さ1~1.5mm×幅約0.6mm、肉質で、花後に大きくなる。花糸は線形、長さ約0.8mm、葯は長円形、長さ2~2.5mm。心皮は5個、側方に潰れ、長さ約1mm、花柱は短い、柱頭は長さ約2mm。果実は成熟すると紫赤色~黒色になり、直径2.5~3 mm。 花期は5~6月。果期は7~9月。2n=40。

参考

1) Flora of China
 Dopatrium
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110810
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Dopatrium junceum
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:12042-1
3) Flora Iberica
 Coriaria myrtifolia L.
http://www.floraiberica.es/floraiberica/texto/imprenta/tomoIX/09_117_00_01_Coriariaceae_2010_09_20.pdf