スズラン属は1種だけで3変種に分類されていたが、現在は独立種として分類されている。1種だけとする見解もあり、Flora of China ではこれによる。ドイツスズランはよく栽培されている。在来種のスズランの方が小型で普通高さ20㎝以下、花茎が葉より短い。ドイツスズランは普通高さ20～30㎝、花茎が葉と同長以上のことが多いといわれるが、変化が多く、野生では小さいものもあり、大きさでは区別は難しい。日本で栽培されているドイツスズランは雄しべの基部が紫色であり、判別できる。
　多年草。高さ10～30(37)㎝。密に群生する。葉（葉柄を含め）は長さ(5)15～40㎝×幅2.5～5㎝。葉柄（偽茎）は長さ(1)8～24㎝、葉身は長さ(3)9～20㎝、脈や細脈は葉の質が厚く透過光でかすかにある程度。花茎(花序を除き)は長さ10～23㎝。花序（花茎を除き）は最も下の鞘のある葉の長さの1/2～同長。花は芳香がある。苞は薄膜質、広披針形、長さ4～10㎜、花柄より短い。花被は長さ5～9(～11)㎜×幅(5～)8～11㎜、広鐘形、花被片は6個、白色（又はピンク色）、中肋が明瞭で白色、裂片は反曲し、長さ1～3㎜、微細な腺がある。花柄は長さ7～12㎜。葯は淡緑色、花糸より短い。液果は1～9個、直径6～12㎜、種子が1～5(6)個入る。種子はほぼ球形、直径3～4㎜。2n = 38.
　在来種のスズランは高さ20～30(35)㎝[20㎝以下ともいわれる]。密に群生する。根生葉が2枚(まれに3枚)個つく。葉柄（偽茎）は長さ8～20㎝。葉身は卵状楕円形、長さ10～18㎝×幅3～7㎝。葉の上面は濃緑色、下面は粉白色を帯び。花茎（花序を含め）は高さ16～25（30）㎝（花序を含めないと長さ10～15㎝）、花序に花が5～10数個下向きにつく。花には弱い芳香がある。苞は長さ5～6㎜、花柄よりかなり短い。花柄は長さ7～10㎜。花被は白色、幅約10㎜、鐘形、花被片は白色の1脈があり、先は鈍い。花糸は短く、基部ほど幅が広くなり、葯と同長。葯は黄色、類楕円形。花柱は突き出ない。胚珠は各花に3～17(平均12)個。液果は(黄橙色～)橙赤色～赤褐色に熟し、ほぼ球形、直径6～8㎜。2n=38。種子は果実に1～14個（平均4）。花期は5月下旬～6月（北海道）、低地では4～5月。果期は7～8月。2n=38
　アメリカスズラン Convallaria majalis var. montana = Convallaria majuscula (American lily-of-the-valley)　は葉が長さ20～50㎝、幅2.5～13㎝、葉柄が長さ10～30㎝、葉身は長さ10～26㎝。葉脈が透けて見える。花茎は長さ15～30㎝。花序は葉の1/2長。苞は披針形、長さ10～20㎜、花柄と同長又は長い。花被片は中肋が緑色。花柄は長さ7～11㎜。雄しべの花糸は葯より長い。2n=38。

スズラン属

　 family　Asparagaceae － genus　 Convallaria

　多年草、根茎をもつ。根茎は短く、1～2本の匍匐するストロンをもつ。全体に無毛。根はかなり細い。葉は2(～3)枚、根生し、長い葉柄がある。葉柄は直立し、跨状(equitant）になり偽茎を作り、下部は数個の円筒形の膜質の鞘になる。花茎は鞘の腋から生じ（側生）、無毛。花序は頂生の総状花序、緩く、少数～多数（5～15個）の花が片側につき、長さ10～30㎝。苞は膜質、早落性。花は両性、下向き、長い花柄がある。花被は広鐘形。花被片は合着し,筒を形成し、裂片はごく短い。雄しべは6本、花被筒の基部につき、突き出ない。花糸は短い。葯は底着、縦に裂開する。。子房は卵状球形、3室。胚珠は室に4～8個。花柱は長いが突き出ない。柱頭は小さく、弱く3裂～頭状。果実は液果、橙赤色。種子は数個、小さく、帯黄色～薄褐色。 x = 19
　世界に3種あり、北半球の温帯の、ユーラシア、北アメリカに分布する。
　Convallaria majalis L.1種だけがあり、その変種としてvar. majalis, var. keiskei , var. montana の3変種とする見解もある（lora of North America）が、KewscienceやThe Plant Listでは3種を独立種としている。Flora of ChinaではConvallaria majalisの1種だけとしている。

スズラン属の主な種と園芸品種

1 Convallaria majalis L.　ドイツスズラン　独逸鈴蘭
　　synonym　Convallaria majalis L. var. majalis
　　synonym　Convallaria transcaucasIca Utkin ex Grossh　コーカサススズラン
　ヨーロッパ原産。英名はlily of the valley , European lily of the valley。別名はセイヨウスズラン、マヤスリ。観賞用によく栽培され、多くの園芸品種がある。
　高さ10～30(37)㎝。密に群生する。葉（葉柄を含め）は長さ(5)15～40㎝×幅2.5～5㎝。葉柄（偽茎）は長さ(1)8～24㎝、葉身は長さ(3)9～20㎝、脈や細脈は葉の質が厚く透過光でかすかにある程度。花茎(花序を除き)は長さ10～23㎝。花序（花茎を除き）は最も下の鞘のある葉の長さの1/2～同長。花は芳香がある。苞は薄膜質、広披針形、長さ4～10㎜、花柄より短い。花被は長さ5～9(～11)㎜×幅(5～)8～11㎜、広鐘形、花被片は6個、白色（又はピンク色）、中肋が明瞭で白色、裂片は反曲し、長さ1～3㎜、微細な腺がある。花柄は長さ7～12㎜。葯は淡緑色、花糸より短い。液果は1～9個、直径6～12㎜、種子が1～5(6)個入る。種子はほぼ球形、直径3～4㎜。2n = 38.
品種)　'Albolineata' (v) , 'Albomarginata' , 'Albostriata' (v) , 'Appalachian' , 'Aurea' , 'Aureovariegata' , 'Berlin Giant' , 'Blush' , 'Bordeaux' , 'Bridal Choice' , 'Cream da Mint' (v) , 'Dorien' , 'Einstrich , 'Fernwood's Golden Slippers' , 'Flore Pleno' (d) , 'Fortin's Giant' , 'Fruhlingszauber' , 'Geant de Fortin' , 'Gerard Debureaux' , 'Gesevauta' , 'Gigantea' , 'Gold Leaf' , 'Golden Jubilee' , 'Grandiflora' , 'Green Tapestry' (v) , 'Haldon Grange' (v) , 'Hardwick Hall' (v) , 'Heitmann' , 'Hitscherberger Riesenperle' , 'Hofheim' (v) , 'Jentsch's Triumph' (v) , 'Landgraaf' (v) , 'Lineata' (v) , 'Marcel' (v) , 'Mary Brooks' , 'Plant Pips' , Polish Beauty , 'Polska Pieknosc' (v) , 'Potsdam Stripe' (v) , 'Prolificans' , 'Robusta' , 'Rosea' , 'Rosea Plena' (d) , 'Silberconfolis' (v) , 'Theunissen' , 'Touch of Lemon' (v) , 'V.F.N. Christine' (v) , 'Variegata' (v) , 'Verwood Golden Slippers' , 'Vic Pawlowski's Gold' (v) , 'Vierlander Glockenspiel' , 'Viktor' , 'Viridistriatus' , 'White Margin' , 'Willimans Rosea' , 'Willimans White' , 'Zebra' (v)

2 Convallaria keiskei Miq.　　 スズラン　鈴蘭
　　synonym　Convallaria majalis L. var. keiskei (Miq.) Makino　
　　synonym　Convallaria majalis L. var. manshurica Kom.　
　　synonym　Convallaria majalis subsp. manschurica (Kom.) Bordz.
　　synonym　Convallaria manschurica (Kom.) Knorring
　　synonym　Convallaria majalis auct. non L.
　　synonym　Convallaria japonica Greene
　日本(北海道、本州の広島県以東、九州）、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、ミャンマー原産。中国名は铃兰 ling lan、君影草 jun ying cao。英名はJapanese lily of the valley , Asian Lily of the Valley。別名はキミカゲソウ(君影草)、ニホンスズラン（日本鈴蘭）、極東スズラン。草地に生える。
　多年草。高さ20～30(35)㎝。密に群生する。根生葉が2枚(まれに3枚)個つく。葉柄（偽茎）は長さ8～20㎝。葉身は卵状楕円形、長さ10～18㎝×幅3～7㎝、基部が茎を抱き鞘状の偽茎になる。葉の上面は濃緑色、下面は粉白色を帯び、基部は楔形、 先は尖る。冬は葉が枯れる。花茎（花序を含め）は高さ16～25（30）㎝（花序を含めないと長さ10～15㎝）、花序はわずかにアーチ状に曲がり、花が5～10数個下向きにつく。花には弱い芳香があり、花冠の基部に蜜腺がある。苞は披針形、長さ5～6㎜、花柄よりかなり短い。花柄は曲がり、長さ7～10㎜、先に関節がある。花被は白色、幅約10㎜、鐘形、花被片は6個、小さく、反り返り、白色の1脈があり、先は鈍い。雄しべは6本、突き出ない。 花糸は短く、基部ほど幅が広くなり、葯と同長。葯は黄色、類楕円形。花柱は突き出ない。胚珠は各花に3～17(平均12)個。液果は(黄橙色～)橙赤色～赤褐色に熟し、ほぼ球形、直径6～8㎜。2n=38。種子は果実に1～14個（平均4）。花期は5月下旬～6月（北海道）、低地では4～5月。果期は7～8月。2n=38
品種)　'Marginata' (v) , 'Shiro-shima-fu' ,‘Soft Stripes’(v)

【flora of ChinaのConvallaria majalisの解説】
　高さ18～30㎝、無毛。葉柄は長さ8～20㎝。葉身は下面が粉白色、楕円形～卵状披針形、長さ7～20㎝×幅3～8.5㎝、基部がくさび形、先はほぼ鋭形～尖鋭形。花茎はわずかにアーチ状に曲がり、長さ15～30㎝（花序を含め）。苞は披針形、長さ3～6㎜、花柄よりかなり短い。花柄は長さ0.6～1.5㎝、先に関節がある。花被は白色、長さ5～7㎜×幅5～7㎜、花被片は卵状デルタ形、約・長さ2㎜×幅2㎜、1脈があり、先は鈍形。雄しべは長さ約4㎜。花糸は基部に向かって次第に幅が広くなる。葯は類球形。花柱は円柱形、長さ2.5～3㎜。液果は熟すと赤色、直径6～12㎜。花期は5～7月。果期は7～9月。2n=38

3 Convallaria pseudomajalis W.Bartram　 アメリカスズラン　亜米利加鈴蘭
　　synonym　Convallaria majalis L. var. montana (Raf.) H.E.Ahles
　　synonym　Convallaria montana Raf.
　　synonym　Convallaria majuscula Greene
　　synonym　Convallaria majalis L. subsp. majuscula (Greene) Gandhi
　USA東部原産。英名はAmerican lily-of-the-valley , Appalachian Lily-of-the-valley
　高さ10～30㎝。散生し、小さく群生する。葉（葉柄を含め)が長さ20～50㎝×幅5～13㎝、葉柄が長さ10～30㎝、葉身は夏の終わりに黄色になり、葉脈は強く、脈や細脈が透過光で透けて見え、長さ10～26㎝。花茎は長さ15～30㎝。花序（花茎を除く）は最下の葉の1/2長以下。苞は披針形、長さ(8)10～20㎜、花柄と同長又は長い。花被片は6個、白色、中肋が緑色。花柄は長さ7～11㎜。雄しべの花糸は葯より長い。液果は赤く熟し、直径6～12㎜。種子は1～5個、扁球形又はレンズ形、2n=38。

参考

1）Flora o China
　Convallaria 　 2) Plants of the World Online | Kew Science
　Convallaria 　 3）GRIN
　Convallaria 　 4）Flora of North America
　Convallaria 　 5）NOMENCLATURAL AND TAXONOMIC ANALYSIS OF CONVALLARIA MAJALIS, C. MAJUSCULA, 　AND C. MONTANA (RUSCACEAE/LILIACEAE) 　 6）Flora Europaea VOLUME 5 ALISMATACEAE TO ORCHIDACEAE
　floraEuropaeaVol5_OCRr.pdf
7）北方山草 19　p78-83 (2002)
　ユリ科スズランの日本の南限分布　札幌市　松井洋 　 8）Convallaria majalis var. keiskei 　 9）June 2006 ・ Plant Species Biology 21(2):119 - 126
　Life‐history monographs of Japanese plants. 6: Convallaria keiskei Miq. (Convallariaceae)