バンクシア・セラータはヤマモガシ科バンクシア属の常緑低木又は高木。葉の幅が狭く縁がギザギザの鋭い鋸の歯状で、saw banksiaとも呼ばれる。花は初め円筒状の花被の先に葯がついた雄しべが伸び、クリーム色で先が灰色。花被が4個に分かれ曲がると、先端に小さな丸い花粉プレゼンターのついた雌しべが真っすぐ伸び、淡黄色になる。その後は赤茶色になり成熟し、花後は次第に灰黒色になる。
　常緑低木又は高木、高さ16m以下、ときに海岸では3m以下になる。樹皮は疣状、±もろく、灰褐色。小枝には±綿毛がある。葉は互生、密につき、長円形～狭倒卵形、長さ5～20㎝×幅15～40㎜、先は切形だが微突起があり、基部は漸尖し、縁には歯があるが、基部から1～5㎝には無く、下面はさび色の綿毛があるが、ほぼ無毛になる。花序は長さ7～15㎝。花被は長さ約40mm、クリーム灰色、宿存する。花柱はやさしく曲がり、クリーム色、宿存し、果時に下向きに外側へ曲がる。袋果は30個以下、長さ20～35㎜、明瞭に突き出る。花期は5～10月。

バンクシア属

　 family　Proteaceae － genus Banksia

　高木又は低木又は平伏して這い、ときに木質の塊茎がある。小枝と若葉は毛がある。葉は普通、互生し、ときに輪生、単葉、縁は全縁又は歯があり、丈夫で革質、葉柄はほぼ無～明瞭に有り、上面と下面は色が異なり(discolorous)、上面は普通、無毛になり、下面は普通、毛があり、淡色。花序は円筒形～卵形、普通、頂生、密に、多数の花がつき、しばしば若枝の輪が基部につく。花序軸は木質、長い。花は普通、左右相称、無柄、対につく。各花には花の苞(小苞)が基部につき、各花の対は普通の苞が基部に1個つく。花被片は初め、密着して筒になり、後に花被片4個すべてが普通、離生する。葯は花被の頂部につきほぼ無柄、短突起がある。子房上位の腺体が4個あり、小さく、膜質。子房は無柄、胚珠は2個。花柱は長く、真っすぐ、曲がり、又は鈎状、先端はほとんど広がらない。花粉プレゼンター(pollen presenter：レウコスペルムム属などにも見られる花柱の先端にある部分、開花期に突き出される)は普通、直立。柱頭は葯の後に成熟する。果実は2種子をもつ袋果、2個の木質のバルブに裂開する。少数～多数の袋果が横につき、も木質の果序に部分的に埋め込まれる。種子は2個、頂部に翼があり、その間に平らな木質のプレート(separator)をもつ。(花は参考4の図解参照)
　世界に約174種あり、ニューギニアの1種を除いてすべてオーストラリアに分布する。英名はAustralian honeysuckle。

バンクシア属の主な種と園芸品種

1 Banksia ericifolia L.f.　バンクシア・エリキフォリア
　オーストラリア（ ニューサウスウェールズ州）原産。英名はheath-leaved banksia , lantern banksia , Wadanggari 。
　低木又は小高木、高さ6m以下。木質の塊茎は無く、基部は1本。樹皮は±コルク質、灰褐色。小枝は平滑で皮目がある。葉は互生し、無柄、密集し、線形、長さ0.9～2㎝、しばしば長さ約1㎝×幅約1㎜になり、先は切形又はノッチがあり、両側の縁に歯があり、基部は漸尖して縁が外巻きし、全縁。下面は綿毛がある。花序(conflorescences)は普通、長さ10～20㎝。花被は長さ16～28mm、金褐色、しばしば基部に向かって藤色になり、宿存する。花柱は先の下が鈎状、黄色～橙赤色、宿存する。袋果は多数、±長円形、長さ約15～20mm、上面は凸面、両側に明瞭なうねがあり、火で普通、開く。花期は8～12月。
品種)　'Fireworks' , 'Golden Girl' , 'Limelight' , 'Red Rover'

2 Banksia integrifolia L.f.　バンクシア・インテグリフォリア
　オーストラリア（ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州）原産。英名はcoast banksia。
　高木、高さ5～25m、直立する。樹皮は灰褐色、厚く、粗く、モザイク状。小枝は条線があり、細かい毛がある。葉はしばしば輪生し、披針形～倒披針形、長さ4～10㎝×幅1～3.5㎝、上面と下面は色が異なり(discolorous)、上面は暗緑色、鈍く～光沢があり、下面は白色の綿毛があり、中脈と2次脈は初め、さび色の毛があり、先は鋭形～鈍形、ときに凹形、微突形、縁は全縁又は少数の短い歯があり(若葉や亜成葉)、平ら又はわずかに反曲する。葉柄は長さ4～10㎜。花序は花時に長さ6～12㎝×幅5～8㎝。花被片は長さ22～29mm、淡黄色、毛があり、脱落性。花柱はわずかに曲がり、帯黄色、脱落性。袋果は多数、長さ7～15mm、初め、綿毛状の租毛があり、上部の毛はやがて無毛になる。花期から8～10ヶ月後に自然に開く。種子の体は多少、三日月形、長さ6～10㎜、翼は長さ10～20㎜。花期は5～10月。
品種)　'Roller Coaster'

3 Banksia paludosa R.Br.　バンクシア・パルドサ
　オーストラリア（ニューサウスウェールズ州）原産。英名はswamp banksia。
　多数の枝を出し、普通、高さ1.5m以下。あるいは木質の塊茎がないなら、高さ5m以下。木質の塊茎は有又は無。樹皮は±平滑。小枝はさび色の綿毛があり、すぐに無毛になる。葉は輪生又は互生、狭披針形～狭卵形、長さ4～13㎝×幅10～30㎜、先は鈍形で短い微突があり、基部は漸尖し、縁は全縁～歯状、下面は白色の綿毛があり、中脈と側脈には帯黄色～褐色の綿毛があり、±無毛になる。葉柄は長さ5～13㎜。花序(conflorescences)は長さ7～13㎝。花被は長さ16～20㎜、金褐色で、花後に金色になり宿存する。花柱は先近くがわずかに曲がる以外は真っすぐ、金色～クリーム色、±宿存する。袋果は60個以下、長さ9～18㎜、広く隙間があり、普通、焦げるまで閉じたままである。花期は8～11月(オーストラリアでは4～7月)。
品種)　'Little Pal'

4 Banksia praemorsa Andrews　バンクシア・プラエモルサ
　オーストラリア（西オーストラリア州）原産。英名はcut-leaf banksia。
　高木又は低木、高さ1.5～4m。小枝は有毛。葉は葉柄があり、互生し、長さ20～60mm×幅8～20mm、毛がある。葉柄は長さ10～12mm。葉身は平ら、中間の上で幅が最も広く、浅く羽状分裂し、明瞭に先に向かって歯が尖り、両側に2～8裂片をもち、縁は平ら。花序は綿毛(マット状又はもつれた柔らかい綿毛)又は粗毛(長くザラつき、粗い) があり、黄色。花被は長30～38mm、無毛、芒は無い。雌しべは長さ31～38mm、曲がる。花柱は無毛。袋果は無毛、楕円形、長さ18～20mm。花期は11～12(～2月)月(オーストラリアでは7～8(～10)月)。
品種)　'Red'

5 Banksia robur Cav.　バンクシア・ロブル
　オーストラリア（ ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州）原産。英名はSwamp Banksia , broad-leaved banksia。別名はワンプバンクシア。海岸近くの沼地や砂地に生える。
　低木、木質の塊茎をもち、高さ1～2m。小枝にはさび色の綿毛がある。葉は互生し、倒卵形～楕円形、普通、長さ12～30cm×幅5～9cm、先は切形～凹形で小突形、基部はくさび形、縁は歯があるか、ときにほとんど全縁、下面は白色の綿毛があり、主脈に帯褐色の毛がある。花序は長さ10～17㎝×幅5～6㎝。花被は長さ20～25mm、緑クリーム色の爪部と金属緑色の拡大部をもち、花後に褐色になり、宿存する。花柱はほとんど真っすぐで、クリーム色～淡緑色、宿存する。袋果は100個以下、長さ10～16㎜、綿毛があり、焦げると開く。花期は5～11月。

6 Banksia serrata L.f.　バンクシア・セラータ
　オーストラリア（ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州、タスマニア州、ビクトリア州）原産。英名はsaw banksia , Old Man Banksia , Wiriyagan。
　常緑低木又は高木、高さ16m以下、ときに海岸では3m以下になる。樹皮は疣状、±もろく、灰褐色。小枝には±綿毛がある。葉は互生、密につき、長円形～狭倒卵形、長さ5～20㎝×幅15～40㎜、先は切形だが微突起があり、基部は漸尖し、縁には歯があるが、基部から1～5㎝には無く、下面はさび色の綿毛があるが、ほぼ無毛になる。花序は長さ7～15㎝。花被は長さ約40mm、クリーム灰色、宿存する。花柱はやさしく曲がり、クリーム色、宿存し、果時に下向きに外側へ曲がる。袋果は30個以下、長さ20～35㎜、明瞭に突き出る。花期は5～10月。
品種)　'Pygmy Possum' , 'Superman'

7 Banksia spinulosa Sm. バンクシア・スピヌローサ
　オーストラリア（ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州）原産。英名はhairpin banksia 。
　低木、茎を多数出し、高さ3m以下、矮性のものは高さ1～1.5m。木質の塊茎をもつ。樹皮は平滑～モザイク状、灰褐色。小枝は綿毛～租毛がある。葉は互生し、散生し、狭線形～長円形～狭楕円形、長さ3～10㎝×幅1～10㎜、先は鈍形～切形、基部はくさび形、縁は平ら～反曲～後ろ巻き、微突形、普通、上部に歯があり、下面は目立たないか又は目立つ。葉柄は長さ1～3mm。花序(conflorescences)は長さ6～15㎝。花被は長さ20～30㎜、黄色又は黄金色、宿存する。花柱は先端の下で鈎状になり、全体に黄色又は上部が暗赤色～紫黒色、1年以内に落ちる。袋果は100個以下、ごく密につき、長さ10～24㎜、火で開き、自然にも開く。花期は11～12月(オーストラリアでは4～8月)。
7-1 Banksia spinulosa var. collina (R.Br.) A.S.George
　高さ2～5m。
　英名はhill banksia , golden candlesticks。
品種)　'Carnarvon Gold'(高さ2～5m) , 'Stumpy Gold'(高さ40㎝以下)
7-1 Banksia spinulosa var. cunninghamii (Sieber ex Rchb.) A.S.George
　　synonym　Banksia cunninghamii Sieber ex Rchb.
　ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州原産。
品種)　'Lemon Glow'(高さ2～3m、花はレモンイエロー色)

8 その他ハイブリッド
品種)　'Celia Rosser' ,'Giant Candles'(Banksia spinulosa × ericifolia) , 'Lemon Glow' , 'Limelight' , 'Pygmy Possum' , 'Roller Coaster' , 'Superman' , 'Yellow Wing'(Banksia 'Giant Candles' × Banksia spinulosa var. collina )

参考

1) Flora of Victoria
　Banksia 2) Plants of the World Online | Kew Science
　Banksia L.f. 3) NEW SOUTH WALES FLORA ONLINE
　Genus Banksia 4) Australian National Botanic Gardens and Centre for Australian National Biodiversity Research
　Genus Banksia　花の図解がある