アオノリュウゼツラン 青の竜舌蘭

mark

Flora of Mikawa

キジカクシ科 Asparagaceae リュウゼツラン属

別 名 リュウゼツラン
中国名 龙舌兰 long she lan
英 名 century plant , American aloe , blue agave , spiked aloe , flowering aloe , American centaury , American agave , American century plant
学 名 Agave americana L.
アオノリュウゼツランの蕾
アオノリュウゼツランの花
アオノリュウゼツランの花後
アオノリュウゼツランの苞
アオノリュウゼツランの花序
アオノリュウゼツランの花茎
アオノリュウゼツラン
アオノリュウゼツランの小球茎
アオノリュウゼツランの葉基部
アオノリュウゼツランの葉
花 期 春~夏
高 さ 1~2m
生活型 多年草
生育場所 栽培種
分 布 外来種  USA(アリゾナ州、テキサス州)、メキシコ原産
撮 影 浜名湖ガーデンンパーク 25.3.21
アオノリュウゼツランは世界中で栽培される多肉植物。1回結実性で花がめったに咲かず、花後に枯れる。属名のAgaveは、ギリシャ語で「立派な」または「高貴な」を意味するagauosに由来し、多くのアガベ種に見られる非常に高い花穂に由来する。写真は葉の縁に黄色の斑入りの品種。
 常緑の多肉植物。無茎または短い茎を持ち、普通は吸芽を持ち、幹は2m未満。ロゼットは叢生せず、高さ1~2m×幅2~3.7m。葉は30~40枚又はそれ以上つき、直立し、開き~斜上し、ときに反り返り、長さ80~200cm×幅15~25cm、葉身は明るい緑色~緑色または粉白緑色、ときに斑入りまたは交差帯(cross-zoned)があり、狭~広披針形、平滑で硬く、縁はほぼ直線状または波状~円鋸歯状、刺があり、歯は単歯、長さ5~10mm、間隔1~4cmでつき、葉先端の刺は暗褐色~帯灰色、円錐形または錐形、長さ2~6cm。花茎は高さ5~9(~12)m。花序は円錐花序、花後に少数の子球(小球茎)をつけ。苞は宿存性、三角形、長さ5~15cm。花序の側枝は15~35本、水平からわずかに斜上し、花序の末端部の1/3~1/2を占め、長さ10cm以上ある。花は直立し、長さ7~10.5cm。花被は黄色~緑黄色、花被筒部は漏斗形~円筒形、長さ8~20mm×幅12~20mm、花被片は直立し、等長、長さ20~35mm。雄しべは花被の長さの約2倍、長く突き出し、花糸は花被筒の中央より上に挿入され、直立し、黄色、長さ6~9cm。葯は黄色、長さ25~35mm。子房は長さ3~4.5cm、頸部は狭まり、長さ3~6(~8)mm。蒴果は短い小花柄があり、長円形、長さ3.5~8cm、先端は嘴状。種子は長さ6~8mm。2亜種がある。花期は春~夏。

リュウゼツラン属

  family Asparagaceae - genus Agave

 多年草又は一回結実性(一稔性)。茎は非常に短いか又は不明瞭。葉は基部のロゼットになり、大きく、丈夫、革質状肉質又はやや木質、多数の繊維を含み、縁に葉普通、刺があり、まれに全縁、先は刺がある。花茎(quiote:アガベの花茎)は分枝又は単純、高く、丈夫。花序は頂生、穂状花序又は円錐花序、ほとんどが非常に大きい。花被筒は短い。花被片は狭く、ほぼ等長。雄しべは花被の筒部又はのど部につく。花糸は糸状、普通、花被より長い。葯は多方向。子房は胚珠が多数。花柱は細い。柱頭は3裂。果実は蒴果、長円形、3バルブ、胞背裂開。種子は多数、黒色、薄く、扁平。英名はMangave , Century Plant。属名のAgaveは、ギリシャ語で「立派な」または「高貴な」を意味するagauosに由来し、多くのアガベ種に見られる非常に高い花穂に由来する。
 世界に約200種があり、アメリカ大陸の乾燥又は半乾燥地帯に分布する。

リュウゼツラン属の主な種と園芸品種

1 Agave americana L. アオノリュウゼツラン 青の竜舌蘭
 USA(アリゾナ州、テキサス州)、メキシコ原産。英名はcentury plant , American aloe , blue agave , spiked aloe , flowering aloe , American centaury , American agave , American century plant。中国名は龙舌兰 long she lan。
 無茎または短い茎を持ち、普通は吸芽を持ち、幹は2m未満。ロゼットは叢生せず、高さ1~2m×幅2~3.7m。葉は30~40枚又はそれ以上つき、直立し、開き~斜上し、ときに反り返り、長さ80~200cm×幅15~25cm、葉身は明るい緑色~緑色または粉白緑色、ときに斑入りまたは交差帯(cross-zoned)があり、狭~広披針形、平滑で硬く、縁はほぼ直線状または波状~円鋸歯状、刺があり、歯は単歯、長さ5~10mm、間隔1~4cmでつき、葉先端の刺は暗褐色~帯灰色、円錐形または錐形、長さ2~6cm。花茎は高さ5~9(~12)m。花序は円錐花序、花後に少数の子球(小球茎)をつけ。苞は宿存性、三角形、長さ5~15cm。花序の側枝は15~35本、水平からわずかに斜上し、花序の末端部の1/3~1/2を占め、長さ10cm以上ある。花は直立し、長さ7~10.5cm。花被は黄色~緑黄色、花被筒部は漏斗形~円筒形、長さ8~20mm×幅12~20mm、花被片は直立し、等長、長さ20~35mm。雄しべは花被の長さの約2倍、長く突き出し、花糸は花被筒の中央より上に挿入され、直立し、黄色、長さ6~9cm。葯は黄色、長さ25~35mm。子房は長さ3~4.5cm、頸部は狭まり、長さ3~6(~8)mm。蒴果は短い小花柄があり、長円形、長さ3.5~8cm、先端は嘴状。種子は長さ6~8mm。2亜種がある。花期は春~夏。
品種)'Cornelius' , 'Dwarf Alba' , 'Gainesville Blue' , 'Joanna' , 'Junction' , 'Marginata' (v)'(縁に黄色の斑入り) フイリリュウゼツラン 斑入り竜舌蘭 (var. variegata Hort. ex Hibberd.) , 'Marginata Aurea’, 'Marshmallow Cream' , 'Mediopicta' (v) , 'Mediopicta Alba'(v)華厳 , 'Mediopicta Aurea' (v) , 'Opal' , 'Striata' (v) , 'Variegata' (v) , 'Yellow Ribbons'
1-1 Agave americana subsp. americana
 アリゾナ州、テキサス州、メキシコ原産。
 植物体は無茎または短茎で、幹は2m未満。ロゼット葉は開いたり密集したりする。葉は直立、斜上、またはしばしば反り返り、長さ100~200cm×幅15~25cm、葉身は薄緑色~緑色または粉白灰色で、特に栽培種では黄色または帯白色の斑入りになることもあり、時に交差帯があり、披針形で、上面は平ら、基部付近にはやや溝があり、下面は基部付近が凸形であり、縁は直線状または波状~円鋸歯状、歯は長さ5~10mm。葉先端の刺は円錐形または錐形、長さ2~5cm。花茎は高さ5~9m。花序は側枝が15~35本ある。花は直径7~10cm。花被筒部は長さ8~20cm×幅12~20cm。子房は長さ3~4.5cm。蒴果は長さ4~8cm。種子は不明。2亜種があり、4変種が栽培されている。
1-2 Agave americana var. americana
  synonym Agave gracilispina Engelmann ex Trelease
 テキサス州、メキシコ東部原産。英名はCentury plant, maguey。標高200mの砂漠の低木地帯の砂地に生育する。
 植物体は無茎または短茎で、ロゼット花はやや密集する。葉はしばしば反り返り、長さ100~200cm、幅15~25cm。葉身は淡緑色から灰白色で、時に黄色または白っぽい斑入りとなる。縁は波打つように鋸歯があり、鋸歯は5~10mm。先端の棘は錐形、長さ3~5cm。花茎は高さ5~9m。花序は側枝が15~35本。花長さ7~10cm、花被筒は長さ8~20mm、子房は長さ3~4.5cm。蒴果は長さ4~5cm。種子は不明。2n=120。花期は春中頃~初夏。
 Agave americana var. americanaの園芸品種は、厳密にはA. americana subsp. subsp. protamericanaから派生したA. americana subsp. americanaの変種であり、米国および世界の他の地域で広く栽培されている。植物相の中では、南テキサス地域のみが原産地である。葉の斑入り模様に基づいて少なくとも5つの変種が命名されているが、いずれも正式な分類学上の認定に値するものではない。
1-3 Agave americana var. expansa (Jacobi) Gentry
  synonym Agave americana subsp. expansa (Jacobi) Hochstätter
  synonym Agave expansa Jacobi
 アリゾナ州、メキシコ原産。英名はSpreading century plant。標高500~1300mの砂漠の低木地帯や草原の砂地に生える。南アフリカ、オーストラリアに帰化している。
 植物は茎が短く、ロゼット葉が密生する。葉は直立し、長さ120~150cm、幅18~24cm、葉身は粉白灰~緑色で、典型的には交差帯があり、縁はほぼ直線状~円鋸歯状で、歯は長さ5~8mm、葉先端の刺は円錐形で、長さ2~3cm。花茎は高さ7~9m。花序は側枝が20~30本。花は長さ7~8.5cm、花被筒は長さ13~14mm。子房は長さ3.5~4cm。蒴果は認められない。種子は不明。2n=120。花期は晩春~初夏。
 野生の Agave americana var. expansaは、厳密にはsubsp. americanaの変種である。var. expansa から派生した栽培品種が西ヨーロッパに導入され、そこで初めて命名された。この栽培種は、アメリカ合衆国の温暖な地域で時折栽培されているが、帰化種ではない。var. expansa の果実は発見されてないが、それ自体がコロンブス以前の人々によって開発された初期の栽培品種であり、メキシコ東部の種の分布域よりはるかに西に定着したと考えられている。var. expansa の繁殖は完全に栄養繁殖である。
。 品種) 'Mediopicta Pallida'

1-4 Agave americana var. franzosini Sprenger アガベ・アメリカーナ・フランゾシニー

  synonym Agave franzosini (Sprenger) P.Sewell
  synonym Agave beaulueriana Jacobi
 メキシコ原産。栽培種であり、葉が波打ち、黒色の芽紋があるのが特徴である。
 大型の多肉植物。 高さ2.4m、幅3mで成長する。葉は通常、幅広で粉状の青灰色、大きな葉が優雅に波打ち~曲がり、葉の下部の下面に古い葉との接触で粉白層が擦り減った部分に暗緑色の模様が見られることが多く、この部分がほぼ帯黒色の斑入りになり、縁には大きな歯があり、葉先端の刺は暗褐色である。花はめったに咲かないが高い花茎の花序に黄色い花を咲かせる。開花後、本体は枯れる。株元からはあまり新しい芽を出さないが、根茎を形成し、成熟した本体のロゼットから数フィートも新しい芽が伸びることがある。これによって、簡単に繁殖させることができる。この種は野生では知られておらず、栽培植物でのみ記載されている。この植物には顕著な変異があり、おそらく実生の変異によるものである。ある品種は大きな歯が広く間隔を空けて並んでいるのに対し、他の品種はより小さな歯が密集する。葉の色も、驚くほど鮮やかな白灰色~薄い灰青色まで、様々な色が確認されている。アガベ・フランゾシニーは、1885年にドイツの植物学者カール・ルートヴィヒ・シュプレンガーが、現在はガルテン・フローラと呼ばれている『Deutsche Garten-Zeitung』誌で、イタリアのマッジョーレ湖イントラにあるヴィラ・フランゾシーニという庭園で育っていた植物から初めて記載された[San Marcos Growers]。

1-5 Agave americana var. oaxacensis Gentry アガベ・アメリカーナ・オアハケンシス

  synonym Agave americana subsp. oaxacensis (Gentry) Hochstätter

 メキシコ(オアハカ州、サンルイス・ポトシ州)原産。一般名はMaguey blanco(white maguey)。長い葉から繊維が採取され、蒸留酒メスカルの原料として利用される。個体数は少なく、分散しており、孤立した地域に生息している。テワカン渓谷とバルサス盆地東端が交わる地域でのみ栽培化されている。また、成長が早いが、成熟に最大20年かかるため、メスカルの生産量は限られる。
 ロゼットは高さ2m、幅3(~4)mまで。葉は真っ直ぐ、粉白色、縁の刺は小さいかまたは無い。花序は枝分かれし、高さ最大10mになる。繁殖は種子と吸芽による。花期は6~8月。

1-6 Agave americana subsp. protamericana Gentry

 テキサス州、メキシコ原産。英名はWild century plant, Maguey Serrano。標高200mの砂漠の低木地帯の砂地に生える。
 植物体は無茎または短茎で、幹は1m未満。ロゼットが開く。葉はしばしば反り返り、長さ80~135cm、幅17~22cm、葉身は淡緑色~灰白色、ときに交差帯があり、広披針形、上面は平らまたは溝があり、下面は凸形、縁は円鋸歯状で、歯は長さ5~10mm、葉先端の刺は錐形、長さ3~6cm。花茎は高さ6~8m。花序は側枝が15~20本。花は長さ7.5~9cm。花被筒は長さ15~20mm。子房は長さ4~4.5cm。蒴果は長さ3.5~4cm。種子は長さ7~8mm。花期は早春~初夏。テキサス州スター郡の亜種プロトアメリカナは、メキシコの個体群に見られるものよりも小型である。
品種) 'Big Blue' , 'Lemon Lime' (v)

2 Agave angustifolia Haw. アガベ・アングスティフォリア

 メキシコ、ベリーズ、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、パナマ原産。太平洋および北中部地域の標高1500 mまでのサバンナ、落葉樹林、低木地に広く分布する。
 亜花茎性植物、茎は退化または長さ20~60(~90)cm、一回結実性(monocarpic:一稔性)で、基部に円形につく。葉は長さ50~120cm×幅3.5~10cm、線形~披針形、硬く、斜上~水平に伸び、基部に向かって細くなり、厚くなり、葉縁は直線~波状、ときに薄い軟骨質で、淡緑色~灰緑色、鋸歯は長さ2~5mmで細く、折り畳まれ、赤褐色~暗褐色、間隔は不均一、先端の棘は長さ1.5~3.5cmで暗褐色、平らまたはわずかに溝があり、わずかに沿下する場合としない場合がある。円錐花序は高さ3~5(~7)m、開き、ときに小球根がつき、10~20本の散形花序枝をつける。花は長さ(45)50~65mm、緑色~黄色、すぐに枯れる。花筒部は漏斗形、花被片は不等長、長さ18~24mm×幅3~5mm。花糸は長さ35~45 mmで花筒の中央部に挿入される。葯は長さ(16)20~30mm、黄色。子房は円筒形、長さ20~30mm。蒴果は広卵形、長さ5cm×幅3cm、嘴状、柄があり、木質、暗褐色。種子は鈍い黒色、長さ9~12mm×幅7~8mm。花期と果期は12~1月。[Flora de Nicaragua, Manual de Plantas de Costa Rica]
 均一な緑色の葉を持つ典型的な形態に加えて、ニカラグアには、白または黄色の縁取りのある var. marginata Gentryも生息している。品種'Penca'は世界中で観賞用として栽培されている。

2-1 Agave angustifolia var. marginata hort. ex Gentry  アガベ・ハクセンコウ 白閃光

  synonym Agave angustifolia var. marginata hort. ex Gentry
  synonym Agave angustifolia 'Marginata'
 栽培種。英名はVariegated Caribbean Agave , narrow century plant。
 広く栽培され、リュウゼツラン属の中で最も知られた存在である。幹はごく短く、密な丸いロゼットになり、高さ30~60㎝になり、叢生し、高さ50~90㎝、幅50~120㎝になる。葉は栽培環境によってかなり長くなり、長さ60㎝以下(又はそれ以上)になり、硬い、剣形、凹面で外巻き又はひだがあり、青色又は青緑色、最も幅が広いところで幅5~10㎝、下3/1が明瞭に狭くなり、縁に薄い歯があり、先端に錐状円錐形の刺がある。葉は縁に白色の斑が入り、たまに内側がクリーム色の縞になる。
品種) 'Marginata' , 'Woodrowii'

3 Agave applanata K.Koch アガベ・アプラナータ
 メキシコ原産。流通名は孫悟空。種小名の「applanata」は、葉のロゼットが平らな葉で形成されていることに由来する。
 Agave applanata Lem. ex Jacobi は、「マゲイ maguey」または「ピタ pita」とも呼ばれ、アガベ亜属および Gentry (1982) の Dipetalae グループに属し、フランスの植物学者 Antoine Charles Lemaire によって記述されたが、正式に名前が発表されたことはなく、種名は植物学者で将軍の Georg Albano Von Jacobi によって 1864 年に Hamburger Garten-Blumenzeitung 誌 20: 550 (1864) で検証された。工芸品やロープ、紐などの繊維源として、かつては大規模に栽培されていたが、ロープ製造にプラスチックの代替品が利用できるようになったため、栽培量は大幅に減少した。現在では利用されておらず、IUCNレッドリスト絶滅危惧種(2013年)で「軽度懸念」に分類されている。
 常緑多肉植物で、短い主茎または茎のない茎に、100~200枚の棘のある葉が密集した大きなロゼットを形成する。ロゼットの高さは1.5~2m、直径2.5~3.5mに達し、葉は灰青色~灰緑色、線状披針形または長円形、非常に硬く、先端の棘は真っ直ぐまたは曲がり、縁に真っ直ぐまたは反り返った鋸歯がある。花茎は高さ10~14mに達し、花序は長円形の円錐花序で高さ4~8m。苞は大きく、反り返った披針形。蒴果は長円形。
品種) 'Cream Spike' クリームスパイク

4 Agave asperrima Jacobi アガベ・アスペリーマ
 メキシコ、テキサス州原産。英名はRough Agave , Rough Century Plant。標高500~1500(~1900)mの砂漠の低木地帯の砂質~砂利質、しばしば石灰質に生える。
 植物は無茎で、しばしば吸芽を出し、ロゼット葉は群生ではなく、長さ70~100cm×幅150~200cm。葉は広がって反り返り、大部分は反り返り、長さ60~110cm×幅12~18cm。葉身は明るい緑色~帯灰色で、芽紋(bud-prints)はなく、披針形、表面がザラつき硬く、背側は平らで、葉身の中央から基部にかけて深い溝があり、背側は凸状。縁は真っすぐで鋸歯があり、鋸歯は1個、通常は葉の下縁に沿って反り返り、長さ8~15mm、間隔1cm、頂端の刺は暗褐色~帯黒色、棘状~針状、長さ3~6cm。花茎は高さ4~7m。花序は円錐花序で、小球根はない。苞葉は宿存し、三角形、長さ3~10cm。花序の側枝は8~14本、やや斜上し、花序の上部1/3を占め、長さ10cm以上。花は花房あたり14~18個、直立し、長さ6~8cm。花被は黄色、花被筒部は円筒形、長さ13~18mm×幅14~16mm、拡大部の裂片は直立し、長さはほぼ等長で長さ18~26mm。雄しべは長く突き出る。花糸は花被筒の中央より少し上に挿入され、直立し、黄色、長さ5~6.5cm。葯は黄色、長さ24~30mm。子房は長さ3~4cm、頸部は狭まり、長さ4~6mm。蒴果は短い小柄があり、長楕円形、長さ4~5cm、先端は嘴状。種子は長さ6~7mm。2n=174。花期は晩春~夏。
 M. S. Cave (1964) は染色体数 n=74~93 を報告したが、H. S. Gentry (1982) は Cave の数のうち1つだけが var. asperrima に当てはまり、n=87 とした。[Flora of North America]
品種) 'Coahuila' , 'Koehres Form'

5 Agave atrovirens Karw. ex Salm-Dyck アガベ・アトロビレンス

 メキシコ原産。リビア、スペインに帰化。流通名は酒竜舌、黒夜叉、黒竜舌など。地元で食料や材料として利用するために野生から採取される。また、蒸留酒「メスカル」の製造のために野生から採取されることもある。この種の白っぽい品種は、メキシコで発酵酒プルケの製造のために栽培されている。また、生垣や境界標として、また急峻な段々畑の土壌を安定させるためにも栽培されている。
 無茎の常緑多肉植物で、高さ2~2.5m、直径3~4mにもなる、大きく開いたロゼット状の葉を形成する。成熟した植物は、約40~70枚の刺のある葉をつけ、それぞれの葉は長さ2m、基部付近の幅40cmにもなる。数年間成長した後、高さ12mにもなる花茎が伸び、花後にロゼットは枯れるが、通常、基部周辺に多数の子株を生じ、それらが新しい植物として成長する。
品種) 'Nana'

6 Agave attenuata Salm-Dyck アガベ・アテナータ
  synonym Agave attenuata subsp. attenuata
 メキシコ原産。英名はfox tail agave , lion's tail , swan's neck , elephant's trunk , spineless century plant , gooseneck succulent , soft Leaved agave , foxtail agave , dragon tree agave , swan's neck agave。流通名は初緑(ハツミドリ)。花序の上部が垂れ下がることからfox tail agaveと呼ばれる。
 特に若い植物や小型の植物は無茎のように見えることもあが、茎は成熟すると長さ50~150cmになり、古い乾燥した葉は落ちて木質の茎が見えるようになる。ロゼットは茎の頂部につく。葉は多数つき、長さ50~70cm×幅12~16cm、幅広く、卵形で、先細りになり、多肉質、ほとんどのアガベ属の葉よりも柔らかく、明るい灰白色~淡黄緑色、縁に鋸歯は無く、先端の棘もない。花序は密集した大きな総状花序で、数年かけて成長し、高さ2.5~3mに達し、緑黄色の小さな花を多数つけ、上部は下向きに垂れ下がる。他のアガベ属と同様に、一回結実性(monocarpic性)であり、茎の側面から花を咲かせて生き続けるのではなく、ロゼット全体が巨大な花序へと変化し、花は受粉と種子発育を経て数ヶ月後、枯れる。その後、植物の基部と総状花序の両方に多数の幼植物が芽生える。自然界では、花序が最終的に乾燥して地面に落ちると、そこから成長した幼植物は必然的に地面に根を張り、新たな群落を形成する。
品種) 'Agavws' (PBR) , 'Arboleda Blue' , 'Boutin Blue' , 'Huntington Blue' , 'Kara's Stripes' (v) , 'Raea's Gold' , 'Ray of Light' , 'Tandarra's Tiger' , Variegata’

7 Agave bovicornuta Gentry アガベ・ボビコルヌータ
 メキシコ原産。英名はCow's Horn Agave , Little Lettuce , Cowhorn Agave。メキシコ西部(ソノラ州、シナロア州、チワワ州)の標高900~1800mの岩の多い斜面に自生する。
 単生し、ロゼットは高さ75~90cm、幅120~150cmに成長する。葉は長さ60~75cm、幅13.8~16.3cm、黄緑色~緑色、中央部が最も幅広であり、縁には大きな濃赤褐色(または黄色、橙色、赤色)の鋸歯があり、鋸歯の一部は基部に向かって反り返り、他の部分は葉の先端に向かって反り返り、鋸歯の先端には短く頑丈な棘があり、葉の先端の棘は長い。広い葉の表面は、成長の中心から出てくる他の葉の縁によって作られた刻み目(ギザギザの芽の跡)で装飾され、新葉は魅力的なサテン仕上げ(絹状)になる。植物が成熟するまでには通常12年またはそれ以上かかり、高さ4.8~6.9mの枝分かれした花序を作り、長さ約5cmの黄色と緑色の花を多数つける。この植物は吸芽も小球根もつけないため、開花後に枯れ、増殖には組織培養などが使われる。
品種) 'Holstein'(斑入り) , Reggae Time™

8Agave bracteosa S.Watson ex Engelm. アガベ・ブラクテオーサ

 メキシコ原産。英名はspider agave , squid agave , Candelabrum Agave , Century Plant。別名はアガベ・ブラクテオッサ、イカアガベ。海抜900~1700mの高地に分布し、水はけがよく、明るいが日陰や保護された場所、例えば樹下や崖、岩の斜面(太陽に面していない側(に生える。
 アガベの中では小型。葉は無柄、緑色、多肉質、披針形、長さ50~70cm、基部が最も幅広く、幅3~5cm、縁には微細な鋸歯があるが、葉先には歯も棘もなく、葉先は細く、やや外巻きする傾向がある。花序は長さ1.2~1.7m、上部3分の1に白色または淡黄色の花が密につく。花被片は円盤状の花托から生じる。雄しべはかなり長い。
品種) 'Calamar' , 'Daddy Longlegs' , 'Monterrey Frost' , 'Squidget' , 'Stingray' , 'Variegata'

9 Agave chrysantha Peebles アガベ・クリサンサ
 アリゾナ州原産。英名はgoldenflower century plant , golden flowered agave。標高700~2100mの砂漠の低木林、草原、ピニオンジュニパー、オーク林など、花崗岩質または火山性土壌の砂質~砂利質の場所に生える。
 植物体は無茎で、ときどき吸芽を出す。ロゼットは単生またはまれに鞘状になり、長さ0.5~1.2m×幅0.8~1m、やや開いたものからやや密に生じる。葉は開き~斜上し、長さ40~75(~82)cm×幅(4~)8~10(~11)cm、葉身は淡色~灰白色、または黄緑色~緑色で、重なりはなく、線状披針形~披針形、硬く、上面に深い溝があり、下面は凸形、縁は波打つ~波状、棘があり、歯は単歯、明瞭で、長さ4~10mm、間隔(0.8~)1~3(~4)cmにつき、間隙歯が(0~)1~3(~5)個があり、ほとんどが縁の上部2/3に沿って存在する。葉の先端の刺は赤褐色または褐色~灰色、針状、長さ2.5~4.5cm。花茎は長さ4~7m。花序は狭~広円錐花序、開き、小球根はない。苞は宿存性があり、三角形、長さ1~5cm。花序の側枝は(6~)8~18本、やや斜上し、花序の末端部分の1/4~1/3を占め、長さ10cm以上。花は花房あたり12~21個、直立し、長さ3.5~6.5(~6.7)cm。花被は黄金色、筒部は浅くなく、鐘形、長さ6~18m×幅(7~)10~21(~26)mm、拡大部の裂片は直立し、開花中および開花後に宿存し、しばしば革質なり、強く不等長で、長さ(6~)9~15(~18)mm。雄しべは長く突き出る。花糸は花被筒のほぼ中央に2段に挿入され、直立し、淡黄色、長さ(3.2~)3.5~5cm。葯は黄色、長さ7~20mm。子房は長さ(1.4~)2.2~3(~3.3)cm、頸部はわずかに狭まり、幅(0.5~)4~6(~8)mm。蒴果は無柄または短柄があり、狭長円形~倒卵形、長さ3.5~5cm、先端には短い嘴を持つ。種子は長さ6~7mm。2n=60。花期は晩春~夏。
 Agave chrysanthaは、A. murpheyi、A. palmeri、A. parryi var. couesii、A. delamateriなどと交雑する。
品種) 'Black Canyon' , 'Giant' , 'Sedona Form'

10 Agave colorata Gentry ムサシボウ 武蔵坊
 メキシコ原産。スペイン語名はMescal Ceniza , Mezcal , Baogoa。別名はアガベ・コロラータ。ソノラ州北西部沿岸に生える。
 成長の遅い常緑多年生の多肉植物、高さ30~90cm、幅60~120cmまで成長する。肉厚でスプーンに近い形をした、粉青色の葉がロゼット状に広がる。葉には特に魅力的な重なった縞模様があります。ざらざらとした質感の葉は深い波形、縁には濃褐色の大きな鋸歯が並び、先端には太い棘がある。成熟すると(15年以上かかり)一度だけ花序をつける。花茎は高さ3mに達し、花序に深紅色の蕾が房状につき、黄色~オレンジ色の花を咲かせる。花後数日でロゼット状に開花します。このアガベは通常は単独で生育しますが、株元から子株や小球根を形成することがある。
品種) 'Misashibo'

11 Agave cundinamarcensis A.Berger アガベ・カンディナマルセンシス

 コロンビア原産。英名はmaguey , Cundinamarca Agave。別名はアガベ・クンディアマルケンシス、アガベ・ベネズエラ。アンデス山脈の狭い地域に分布が限定される。標高600~1300mの草原および乾燥地帯の低木の間に生える。地元では野生のものを食用および燃料源として利用するために採取され、観賞用に栽培されている。
 無茎の常緑多肉植物で、ロゼット状の葉を形成する。成熟した植物の葉は、長さ200cm、基部付近の幅45cmにもなる。数年間成長した後、花茎が伸び、その後ロゼットは枯れる。繁殖は種子または(入手可能な場合は)吸芽で比較的簡単に繁殖できる。吸芽は非常に鋭い棘と茎があり、通常、母株のすぐ近く、または真下にある。春または夏に根元の吸芽を取り、数日間乾燥させてから差し穂する。
品種) 'Condor'('Marginata':錦)

12 Agave cupreata Trel. & A.Berger アガベ・クプレアータ
 メキシコ原産。英名はdwarf cowhorn, maguey papalote(マゲイ・パパロテ)。流通名は奇巌城。メキシコのミチョアカン州とゲレロ州のリオ・バルサス流域の標高1200~1800mの山岳斜面にのみ生息する。地元ではマゲイ・パパロテとして知られるアガベ・クプレアタを収穫し、メスカル(mezcal:メキシコ原産の蒸留酒)を製造している。種小名はラテン語で「銅」を意味する「cupre」に由来し、この種の銅色の棘に因む。
 常緑多肉植物、高さ30~60cm、幅60~90cmのロゼットになる。葉は幅広の淡緑色、濃い銅色の棘があり、わずかに波打った縁に沿った大きな乳状突起(mammilate protrusions:teats)に棘がつき、濃色の鋸歯は淡緑色の葉とよく対照的で、葉が植物の中央にある新しい葉の縁に押し付けられた芽の刻印(bud imprinting)がよく見られる。長寿植物で、成熟年齢は様々であるが、一般的に5~15年であり、花茎は4~7mに達する。一回結実性(monocarpic:一稔性)で、吸芽を出さず、クローン繁殖は行わず、種子を生成した後に枯死する。
品種) 'Gray Form'

13 Agave demeesteriana Jacobi アガベ・デメエステリアナ
 メキシコ原産。英名はsmooth agave, dwarf century plant, spineless jade agave。フロリダに帰化している。別名はアガベ・ベネズエラ
 肉厚で滑らかな縁の葉が密集した高さ1m×幅0.9m程度の大きなロゼットを形成する。葉は剣形、長さ60~90cm、幅15cm以下になり、青緑色で、わずかにワックス状の光沢がある。他の多くのアガベ種とは異なり、棘がほとんどなく、主に葉の縁に小さく鋭い棘があるだけである。花茎は高さ4.5~6mにもなり、多数の花がつく。花被は筒状鐘形、黄緑色、花被片は浅い6個。雄しべは突き出し、花糸は黄緑色、葯が黄色で目立つ。花柱は突き出るが雄しべより短い。花期は春~初夏。
品種) 'Desert Sunset' , 'Silver Star' , 'Variegata'

14 Agave deserti Engelm. アガベ・デザーティ
 カリフォルニア州、メキシコ原産。英名はdesert agave , mescal , century plant , maguey。
 植物は無茎または短茎、まばらまたは多数に吸芽をつけ、幹は長さ0.2~0.4m。ロゼットは単生または多数、長さ30~70cm×幅40~80cm、密生~やや開く。葉は斜上し、基部が最も広く、長さ(20~)25~70cm×幅4.5~10cm、葉身は帯灰色、灰白色または青灰白色、黄緑色または帯緑色、ときに重なった紋(cross-zoned)があり、線状披針形~披針形、硬く、上面は凹状、下面は凸状、縁は真っすぐまたは波状~鋸歯状、棘があり、歯は単歯、弱く付着し、明瞭で、2種類あり、長さ2~3mmまたは(5~)6~8mm、間隔は(1~)1.5~3cm、先端の刺は明るい褐色または暗褐色~灰色、棘状~針状、長さ2~4cm。花茎は高さ2~6m。花序は円錐花序で、小球根はなく、開く。苞は宿存性、三角形で、長さ8~15cm。花序の側枝は6~15 本で、やや斜上し、花序の先端部1/5~1/4を占め、長さ10cm以上。花は花房あたり12~48個、直立し、長さ3~6cm。花被は黄色、花被筒部は浅く、鐘形または漏斗形、長さ3~10mm×幅9~15mm、拡大部の裂片は開花後まもなく萎れ、広がり、長さが等しく、長さ13~20mm。雄しべは長く突き出る。花糸は花被筒の中央上部または縁に不等に挿入され、直立し、黄色、長さ2.5~3.5(~4.2)cm。葯は黄色、長さ13~21mm。子房は長さ1.6~4cm、首部はわずかにせばまり、長さ4~6mm。蒴果は短い小花柄があり、卵形~長円形または倒卵形、長さ3.5~5.5cm、先は嘴状。種子は長さ5~6mm。
品種) 'Snow Devil'

15 Agave difformis A.Berger アガベ・ディフォルミス
 メキシコ原産。英名はAmerican Aloe, Century Plant。シエラ・マドレ・オリエンタル山脈の乾燥した斜面、標高1500~1900mの粗い石灰岩質の岩盤土壌に生える。
 比較的生育旺盛であるが、茎の長さは一定ではない。葉がロゼットを形成し、多肉質、間隔が広く、ほぼ無茎で、直径と高さは45~150cm。葉は長さ40~80cm、幅3~6cm、多形性で、長い剣形、直立または鎌形または曲がりくねり、硬く斜上し、淡青色~灰緑色、葉の上面の中央には幅広のクリームグリーンの帯があり、下面には濃い緑色の細い縞模様があり、縁は±波状で、白色、灰色、または褐色の硬いまたは分離可能な歯があり、通常長さ5~10mm、間隔2~3cmで、まれに重鋸歯で、時に小さな断続の鋸歯を有する。葉の先端の棘は通常長さ1~3cmで、非常に鋭く、円錐形棘状で、暗褐色~灰色である。蝋質の粉白色、棘がある、細長い花茎を生じ、花序の上部1/3に花をつける。花は長さ30~40mm、黄緑色とピンク色。花被筒は長さ2.5~3.5mm、花被裂片は等長で、長さ15~18mm。
品種) 'Azul' , 'Huntington'

16 Agave ellemeetiana Jacobi アガベ・エレミーティアナ
 メキシコ原産。英名はEllemeet’s Agave。
 茎がほとんど無く、比較的少数のロゼット状の葉を持ち、高さ60~150cm、幅60~90cm。葉は無柄、幅広く平らで柔らかく、光沢のある緑色、葉の先端に柔らかい棘がある。非常に短い花冠筒を持つ黄色の花を持つ。
 1865年の発表以来、A.ellemeetianaは野生では起源不明の栽培植物として知られており、近年まで生息地では再発見されていなかった(Köhres, 2008; Cházaro et al., 2012)。
品種) 'Satina'

17 Agave filifera Salm-Dyck アガベ・フィリフェラ
 メキシコ原産。メキシコ中部のケレタロ州からメキシコ州にかけて分布する。英名はthread leaf agave, thread agave。流通名は乱れ雪。非常に乾燥に強く、丈夫で、英国王立園芸協会のガーデンメリット賞を受賞している。
 常緑多年草、中型から小型。葉がロゼット状に、ほぼ球形~扁球形に密に60~100枚つき、左右対称の直径30~65(90)cmになる。葉は革質、濃い緑色~ブロンズグリーン、先端に硬い棘を持ち、葉身の縁に沿って特徴的な白色の糸状の繊維が自然に剥がれ、薄く、長さ15~30(~40)cm×幅2~4(~5)cm、cm、真っすぐな披針形で、基部に向かって細くなり、基部から葉身の中央にかけて両面が凸状で、表面に2~3本の芽紋(白い線:非常に装飾的な白い蕾の跡)がある。花序は高さ2.5~3.5mにもなり、小さな花が密集してつく。花は黄緑色~濃い紫色、長さ5.1cm以下。花期は秋~冬。
品種) 'Compacta' , 'Variegata' (v)

18 Agave fourcroydes Lem. アガベ・フオークロイデス
 メキシコ、グアテマラ原産。英名はhenequen , henequen agave。別名はエネケン、ヘネケン。マヤ・インディアンの古代繊維作物であるこの植物は、現在でも有用な繊維を得るためにメキシコで栽培されている。蒸留酒メスカルの製造にも用いられ、登録商標「サイザル」で販売されてる。中央アメリカ、西インド諸島、スペイン、イタリア、カナリア諸島、台湾などに導入されている。
 常緑多肉植物で、茎の先端にロゼット状の葉をつける。茎は高さ100~170cm、幅は25cmまでになる。葉は密につき、無柄、披針形、長さ100~180(~200)cm×幅8~12cm、縁には鋭い鋸歯があり、先端には鋭い棘がある。1回結実性で寿命が尽きる最後に、高さ5~7mの花茎が伸び、緑白色の花を咲かせる。個々のロゼットは開花後に枯れるが、複数の子株が成長を続ける。

19 Agave funkiana K.Koch & C.D.Bouché  アガベ ファンキアナ
 メキシコ原産。英名はIxtle de Jaumave。和名は噴怒竜。標高500~2100mの乾燥したマツ・オーク・オーク林の石灰岩、また乾生低木林や熱帯乾燥林に生える。野生から採取されるだけでなく、「イクストル」または「タンピコ繊維」として知られる繊維のために商業的に大量に栽培されていたが、天然繊維がプラスチックに代替されて以来、栽培は減少している。このほか、蒸留酒メスカルの原料にも使われ、観賞用としても栽培されることも多い。
 ほぼ無茎の常緑多肉植物、高さ(45~)60~90(~150)cm、直径(45~)120~180cmのロゼットを形成する。葉は多肉質で、間隔が広く、長さ40~80cm、幅3~6cm、多形性、長い針状で、直線または鎌形または蛇行し、硬く上向き、淡青色~灰緑色、葉の上面中央には幅広のクリーム緑色の帯があり、下面には濃緑色の細い縞模様があり、縁は±波状で、白色、灰色、または褐色の硬いまたは分離可能な鋸歯があり、鋸歯の数は様々、鋸歯の長さは一般に5~10mm、間隔は2~3cmで、まれに重鋸歯になり、小さな断続鋸歯が見られることがある。葉の先端の棘は一般に長さ1~3cmで、非常に鋭く、円錐形または棘状で、暗褐色~灰色。花茎は高さ3.5~4.5m、穂状花序状の細い、蝋質で粉白色の花序をつけ、上部1/3に花をつける。花被は長さ30~40mm、黄緑色とピンク色。花被筒部は長さ2.5~3.5mm、花被片は等長で、長さ15~18mm。花後にロゼットは枯れるが、通常、自由に芽を出し、それらは成長を続ける。
品種) 'Blue Haze' , 'Fatal Attraction' , 'Hakuro Shiro Fukurin'

20 Agave garciae-mendozae Galván & L.Hern. アガベ・ガルシアメンドーサ

 メキシコ原産。英名はGarcia Mendoza's Agave。小種名はメキシコの植物学者アビサイ・ガルシア=メンドーサにちなんで名付けられた。標高1800~2350mの山岳斜面の岩場の露頭にある石灰岩土壌、特に峡谷底の乾生低木地帯、そしてオーク地帯とマツ・オーク地帯の中間地帯に生息する。
 アガベ・ガルシアエ・メンドーサ(Agave garciae-mendozae)は、中型のアガベで、緑がかった葉が整然としたロゼット状に広がり、葉の縁には白っぽいまたは赤みがかった小さな棘がある。  ほぼ無茎のロゼット状に広がる多年生植物、単生またはほぼ単生。成熟した個体と幼植物は、しばしば顕著に異なる。ロゼットは高さ75~115(~130)cm、直径100~175cmになり、成熟葉は(30~)50~80枚つく。葉は長さ33~78cm×幅6~13cm、披針形、柔軟性があり、濃緑色~灰緑色、縁は角質で、灰色から暗赤褐色、容易に分離し、歯は様々、真っすぐ~曲がり、長さ7~14mm、三角形で灰色、先端は赤褐色、しばしば二次歯を有し、葉先端の棘は円錐形~錐形、長さ4.8cmまで、灰色、上面に溝があり、下面に竜骨があり、葉に沿下する。花期は夏(6~8月)、果期は秋(9月以降)。花序は穂状の円錐花序で高さ5.5mに達し、花序柄は赤緑色~灰緑色。苞葉は長さ23cmまで、長三角形、乾膜質(chartaceous)~紙質、花の苞は長さ2.6cmまで、卵形~尖鋭形、赤色を帯びる。花は2~3個束生し、長さ2.8~3.9cm、薄緑色~黄緑色で、やや粉白色を帯びる。花筒は短く、広い漏斗形、花被片は花筒より長い。花糸は長さ3.8~4.5cm、葯は長さ10~13mm、黄色または緑黄色。蒴果は長円形または長円状楕円形、長さ(1.5~)1.7~2cm、幅9~11mm、先端は短く尖る。
 近縁種:アガベ・ホリダ(Agave horrida)およびアガベ・ケルチョベイ(Agave kerchovei)と近縁であり、アガベ・ホリダ(Agave horrida)の亜種ペロテンシス(Agave kerchovei)と非常によく似ている。
品種) 'Valle de los Fantasmas Form'

21 Agave geminiflora (Tagl.) Ker Gawl. アガベ・ジェミニフローラ

 メキシコ原産。メキシコのナヤリット州とハリスコ州の固有種。英名はtwin flower agave , twin flower century plant。別名は双花リュウゼツラン。流通名は王妃乱れ雪。標高900~1200mのオーク林に生える。種名は花が対につくことに由来する。葉の縁に棘がなく、葉の縁にカールした白色の繊維がある点で、アガベ・フィリフェラ(Agave filifera)と似ているが、葉が細く線形である。
 ロゼットは高さ60~90cm、幅も同じくらいの密集した球形になる。葉は100~200枚つき、長さ60~90cm、幅1.2cm以下、線形で適度に柔軟性があり、濃緑色で、無毛、白い角質の線があり、カールした白色の糸状の繊維が縁にほつれる。植物が成熟すると、高さ2.4~3mの直立する花茎に枝分かれのない穂状花序をつけ、対の花を多数、密につける。花は長さ5~6cm、鮮やかな黄色。開花後に親株が枯れると、古い葉の間から時折新しい吸芽がいくつか出てくる。花期は秋。
品種) 'Leaping Lizards' , Rasta Man™ , 'Spaghetti Strap'

22 Agave gentryi B.Ullrich アガベ・ジェントリー
 メキシコ原産。英名はGentry's Agave, Gentry's Century Plant, Hardy Agave。標高2300~3300mの山頂のマツ・オーク林の下層植生として生育する。
 中型~大型のアガベで、葉の縁と先端に鋭い棘がある。アガベ・モンタナと非常によく似ており、ジェントリーとモンタナの分布域境界は重なり、どちらも非常に耐寒性があり、イギリスでは屋外で容易に栽培できる。
 ロゼットは大きく密で、高さ122cmまで、幅はそれ以上になり、明るい光沢のある緑色、頂部につく。葉は長さ45~85(~100)cm、幅17~26cm、光沢のある灰緑色~暗アップル緑色で、芽の跡(bud imprints)がはっきりと残り、葉の縁には乳頭状突起と歯があり、内側に丸まって顎のような形になる。品種の'Jaws'ジョーズは、短い赤い歯の間に非常に深い洞があり、サメの口に似ており、標準種よりも栽培がはるかに一般的である。
 アガティムス・ジェントリー(Agathymus gentryi)の幼虫は、最も暑い砂漠山脈のアガベ・ジェントリー(Agave gentryi)とアガベ・デザルティ(Agave deserti)の林の周囲を少数飛翔し、幼虫はこれらのアガベに穴を開け、餌を食べる。
品種) 'Jaws'ジョーズ(短い赤い歯の間に非常に深い洞があり、サメの口に似ている) , 'Jeffrey'

23 Agave gigantensis Gentry アガベ・ギガンテンシス
 メキシコ原産。英名はSierra de la Giganta Agave。メキシコ西部のバハ・カリフォルニア・スル州半島、シエラ・デ・ラ・ヒガンタ山脈に生息する。米国南部、アリゾナ州フェニックス近郊にも導入されている。温暖で乾燥した気候の砂漠地帯を好み、主にオーク林に生育し、硬い土壌と岩の多い起伏のある地にも生育する。アガベ・ソブリアと混同されてきた。アガベ・ソブリアは灰色~灰緑色の葉と細いアーチ状の花序を持つ。
 単生し、ロゼットが高さ約1m、幅約1.2mになる。葉は濃緑色で、大きく平滑で非常に厚く、縁には灰色と白色の大きな鋸歯があり、間隔は6~8cm、鋸歯は植物の中心から様々な方向へ伸びる。花期には葉は紫色や赤色に変わる。花茎は比較的太く、頑丈で直立し、高さ約4~5m。花茎の上部4分の1から3分の1に集まって円錐花序をつけ、まばらな各花序枝の先に密集して花がつく。
品種) 'Rancho Soledad'

24 Agave gracilipes Trel. アガベ・グラシリペス(
 メキシコ、ニューメキシコ州原産。英名はMaguey de Pastizal。流通名は住吉神。標高1200~1900mの草原、砂漠の低木林、ピニオンジュニパーの林地などの、砂利質から岩質、しばしば石灰質の場所に生える。
 植物は無茎で、まばらに吸芽を出す。ロゼットは通常単生し、長さ30~40cm×幅70~80cm、密生する。葉は斜上し、長さ18~30cm×幅4.5~7cm、葉身は粉白色で黄緑色~灰緑色、交差帯(cross-zoned)はなく、披針形~広披針形、硬く、上面は先端に向かって凹み、下面は凸状、縁は真っ直ぐで、刺があり、歯は単歯、明瞭、長さ2~8mm、間隔1.5~2.5cm、葉先端の刺は赤褐色~灰色、針状、長さ2.5~5cm。花茎は高さ(1.8~)4~5m。花序は狭くまたはやや広く円錐花序状で、密生し、小球根はない。苞は宿存し、披針形、長さ1~3(~5)cm。花序の側枝は30~40本、わずかに斜上し、花序の末端1/3~1/2を占め、長さ10cmを超えるか、または末端1/4に7~20本の側枝しかなく、側枝は短く1.8~3.5mである。花は花房あたり6~45個で、直立し、長さ4~5.5(~5.8)cm。花被は蕾では赤色で、開花時に黄色~黄緑色になり、花被筒部は広鐘形、長さ4~7mm×幅9~15mm、拡大部の裂片は上向きに広がり、長さはわずかに不等で長さ14~18mm。雄しべは長く突き出る。花糸は花被筒の縁のすぐ下に挿入され、直立し、黄色、長さ(2.8~)3~4.5cm。葯は黄色、長さ16~20mm。子房は長さ2.5~3.2cm、頸部は狭まり、長さ3~5mm。蒴果は無柄または短柄で、長楕円形、長さ2.7~4.4cm、先端は嘴状。種子は5~6.5mm。2n=60。花期は夏~初秋。  Agave gracilipesは、おそらくA. lechuguillaとA. parryi subsp. neomexicanaとの古代の雑種と考えられる。実際、A. gracilipesとA. lechuguillaの雑種は現在でも発生しているようである。しかし、A. gracilipesの個体群が細胞学的に徹底的に研究されるまでは、この分類群を雑種種と分類することには慎重である[Flora of North America]。
品種) 'Culberson Kids'

25 Agave guadalajarana Trel. アガベ・グアダラハラナ
 メキシコ原産。英名はGuadalajara Agave, Maguey Plateado, Maguey Chato。
 ロゼットを形成する多肉植物、ロゼットは高さ30~60cm、直径30~60(~まれに90)cmまでになる。葉は灰(銀)緑色~青灰色、新芽の跡が印象的な斑紋になり、幅広、縁に褐色の鋭い歯があり、先端は鈍く、太く長い暗褐色~帯黒色の刺を持つ。花は筒状で長さ6cmまで、淡緑色、先端部分が紫がかり、短い花序枝の先に房状につく。花茎は春に現れ、最大で5mの高さなる。花後にロゼットは枯死する。また、このアガベはアガベ イナエクイデンス(Agave inaequidens)と非常によく似ており、しばしば混同され、アガベ・パリー(Agave parryi)の近縁種としても知られている。アガベ・パリー(Agave parryi)やアガベ・ティタノタ(Agave titanota)よりも小型で密生したこの種は、幅が45~60cmを超えることはほとんどない。
品種) 'Jalisco' , 'Leon' , 'Mediopicta' , 'Trelease'

26 Agave guiengola Gentry アガベ・グイエンゴーラ
 メキシコ原産。英名はCreme Brulee Agave , Silvery Agave , Whale's Tail Agave。メキシコ南部のオアハカ州の固有種、海抜100~1000mの石灰岩の斜面に生育する。種小名のguiengolaは、この種が最初に発見された山、Cerro Guiengolaに因む。
 無茎の大型の常緑の多肉植物。成長が比較的早く、自生地では主に単生であるが、栽培されている一般的なクローン株は、大量に吸芽を出す。ロゼットは高さ90~120cm、長さ120~180cmになる。葉は少数で成熟時には約25~30枚、他のアガベよりも水平に広がり、長さ30~55cm、柔らかく多肉質で厚く、かすかな青白色、基部は非常に広く、卵形~卵状披針形、先端は褐色で細くなり、上面はほぼ平らで、先端には細い溝があり、葉の縁には、暗色で様々な鋸歯状の歯が少数~多数、大小交互に並ぶ。葉の大きさや色にも多少の変異がある。成熟すると、ロゼットの基部近くから長さ150~200cmの穂状花序を付ける。花は目立たない黄色、長さ33~35mm、ほとんど筒状ではなく、明瞭な花被片があり、基部に花糸が挿入される。この花はハチドリを引き寄せる。花期は春~夏。典型的には、成熟期に15~25年に一度だけ開花し、開花後に主冠は枯れる。蒴果は長さ22~24mm、長円形で壁が薄い。
品種) 'Creme Brulee' , 'Platinum'

27 Agave gypsophila Gentry アガベ・ジプソフィラ
 メキシコ原産。メキシコのゲレロ州の固有種。英名はgypsum century plant, blue wave agave, mauritius hemp, gypsum agave。種小名gypsophilaは「石膏を好む」という意味で、生育地である岩石質の岩盤に由来する。標高370~960mの熱帯低地落葉樹林の岩の多い渓谷、石灰岩または石膏岩に生息する。
 小型で主に単生の多肉植物、ロゼットは高さ・幅とも60~90(~100)cm。葉は少数、成熟したロゼットでは10~11(~30)枚つき、長さ45~100(~110)cm、幅7~12cm、線状披針形、一般に弓状に伸び、弱く、脆く、平滑、明瞭な交差帯(cross-zoned)はなく、繊維は少なく、厚く、基部近くでわずかに狭まり、下面は深く凸状、上面は平らで、粗く、粉白色、縁は波状、密に鋸歯があり、小さな突起があり、縁の歯は弱く、長さ1~2mmで、小さな歯が断続的にあり、葉先端の刺は円錐形で非常に小さく、長さ9~11mm、暗褐色で、反り返らない。花茎は高さ2~3m、円錐花序は直立または湾曲し、花茎の上部につく、花序枝は広がり、小花序は小さく、少数花が付き、栽培種では小球根がつく。花は黄色~橙色、長さ31~34mm。小花柄は屈曲し、小さな苞葉がつく。子房は紡錘形、長さ18~20mm、頸部に溝がある。花被は黄色、花被筒は広漏斗形、長さ4~5mm、花被片はほぼ等長、長さ10~11mm。花糸は長さ20~25mm。葯は長さ11~12mm、黄色。花期は2~6月。果期は3~7月。
品種) 'Ivory Curls' , 'Marginata'

28 Agave havardiana Trel. アガベ・ハバディアーナ
 メキシコ、テキサス州原産。英名はHavard's Agave, Havard agave。標高1200~2000mの草原、砂漠の低木林、ピニオンジュニパー、オークの林地などの砂利質から岩質、しばしば石灰質の場所に生える。
 植物は無茎で、まばらに吸芽を持つ。ロゼットは通常単生し、高さ(40~)50~80cm×幅(50~)100~150cm、やや開く。葉は斜上し、長さ30~60(~70)cm×幅15~27cm、葉身は灰白色~灰緑色、交差帯(cross-zoned)はなく、披針形~広披針形、硬く、上面は凹形、下面は凸形、縁は真っすぐ刺があり、歯は単歯、明瞭、長さ(5~)7~10mm、歯の間隔は1.5~2cm、葉の先端の刺は暗褐色~灰色、刺は長さ3~5(~10)cm。花茎は高さ2~7m。花序は円錐花序で、小球根はなく、花は密につく。苞は宿存し、披針形、長さ(3~)5~10cm。花序の側枝は12~20本つき、やや斜上し、花序の先端1/2~2/3を占め、長さ10cm以上ある。花は各花房あたり21~48個、直立し、長さ6.8~9cm。花被は黄色~黄緑色、花被筒は漏斗形、長さ14~22mm、幅15~22mm、花被片は直立し、やや不等長、長さ18~24mm。雄しべは長く突き出る。花糸は花被筒のほぼ中央付近に不規則に挿入され、直立し、黄色、長さ5~6.5cm。葯は黄色、長さ25~30mm。子房は長さ3~4cm、頸部は狭まり、長さ2~8mm。蒴果は短い小花柄があり、長楕円形~倒卵形、長さ4~5.7cm、先端は嘴状。種子は長さ6~7mm。花期は夏~初秋。
 Agave havardianaはA. lechuguillaと交雑してA. × glomerulifloraを形成し、A. × glomerulifloraとも交雑することがある。
品種) 'Big Bend Giant' , 'Glass Mountains' , 'Raulston Arboretum Form'

29 Agave horrida Lem. ex Jacobi アガベ・ホリダ
 メキシコ原産。英名はPerote Agave。山岳地帯に生える。
 ロゼット状の葉を持つ多肉植物で、高さは最大60cmになる。葉は幅広の剣形、濃緑色で、鋸歯は小さい時は茶褐色で成株になると灰白色になり、葉の縁と先には鋭い刺がある。花は黄色で、長い花序に集まってつき、高さは2mに以上になる。開花に10年以上要し、開花後に結実し枯れる。果実は青緑色の蒴果。
29-1 Agave horrida subsp. horrida アガベ・ホリダ・ホリダ
 流通名は不動剣。別名はアリゾニカ。

29-2 Agave horrida subsp. perotensis B.Ullrich アガベ・ホリダ・ペロテンシス

 メキシコ原産。英名はPerote Agave。
 この亜種は、典型的なアガベ・ホリダよりもやや大きく、ロゼットが密集する。
 ロゼットは高さ30~60cm、幅60~90cm。花は高さ約3~4.5mの細く先細りの花序の上部3分の1に、短い枝に2個ずつ集まって螺旋状につく。
品種) 'San Luis Potosi Form' , 'Limon Form'

30 Agave impressa Gentry アガベ・インプレッサ
 メキシコ原産。英名はGreen Giant Agave, Masparillo , Bud-Printed Leaves Agave。シナロア州エスクイナパ近郊の狭い地域に分布する。標高100~300mの夏は暑く湿度が高く、冬は温暖で乾燥した熱帯地域の開けた森林の火山岩の間や野草の間に生息する。種名は若葉が互いに接触した際に、蝋質の堆積物によって形成される、刺のある葉縁の刻印模様または印刷模様(impressed or printed patterns)に因む。
 ロゼットは左右対称、通常、単生し、半茎状です。古いロゼットの下部の腋からときに二次芽が発生する。葉は開出して広がり、線形~披針形、長さ約40~60cm、幅約5~9cm。淡黄緑色~赤色になり、表面に目立つ白色の芽紋(bud-printing)があり、上面は平らまたは中空で、下部は凸形であり、肉厚で粘性の樹液をもち、繊維質は少なく、。縁は角質で連続し、幅2~3mm、淡灰色~暗灰色。鈍い鋸歯は等間隔で並び、大部分は長さ3~5mm、間隔が1~1.5cm、直線またはわずかに湾曲し、縁は灰色で平らであり、葉先端の刺は太く、長さ3~5cm、葉先は鋭形または鈍形、基部上部は平らで幅広、まれに溝がある。花序は総状花序で直立し、穂状花序状となり、高さ2~3m、先端から基部近くまで緑黄色の花つけ、ほぼ基部から開花し、基部には密に苞葉を持つ。花は2股に分かれた長さ2~2.5cmの細い小花柄に2~3個ずつつく。蕾は緑色。花被筒部は短く、深さ1.5~2mm、先端の幅は7mm、花被片は等長で細く、長さ17~18mm、幅4~5mm、斜上し、部分的に反り返り、線状楕円形、外側は平ら、内側は幅が広い。花糸は非常に細く平らで、長さ35~40mmの白色、長さ15~16mmの黄色。葯は黄色、長さ35~40mm。子房は細く、長さ17~20mm、直径4mm、紡錘形。蒴果は細長い卵形~長円形、長さ15~18mm、厚さ8~10mm、鋭く尖った嘴を持つ。花期は晩冬~早春(1~3月)。
品種) 'Green Giant' , 'Impressive'

31 Agave isthmensis A.García-Mend. & F.Palma アガベ・イシスメンシス

 メキシコ原産。英名はDwarf Butterfly Agave。別名はドワーフバタフライアガベ。
 小型、ロゼットは高さは30cm未満。葉は長さ10~13cm、幅5~7.5cmの幅広、粉白状の灰青色、基部に向かって細くなり、先端付近で最も幅が広くなり、縁は丸みのある鋸歯があり、目立つ暗赤褐色~黒色の歯と刺があり、葉先端の刺は長い。1回結実性で花後に枯れるが、簡単に株が増え、離れた場所でも芽を出す傾向がある。花茎は高さ150~200cmになり、短い花序枝に黄色い花をつける。
品種) 'Hoi Raiz' , 'kabutogani' , 'Ohi Raijin'王妃雷神 no.21421 , 'Rum Runner'

32 Agave lechuguilla Torr. アガベ・レチュギラ
 メキシコ、ニューメキシコ州原産。英名は英名はLechuguilla。流通名は白磁路(Hakujiro)。lechuguillaはチワワ語で「小さなレタス」の意味である。チワワ砂漠(Chihuahuan Desert)の優先種、標高500~1400mの砂漠の低木地帯の砂利質から岩質の石灰質地に生える。「イストル」または「イクストル」と呼ばれる硬い繊維の主原料となり、繊維はロープに使用され、「タンピコ繊維」という商品名で知られる。この植物は牛、ヤギ、ヒツジにとって有毒である。
 植物は無茎で、しばしば吸芽を出す。ロゼットは開いて群生し、長さ30~40cm×幅50~60cm。葉はほとんどが斜上~直立し、長さ(25~)30~50cm×幅2~4(~5.2)cm、葉身は明るい緑色~黄緑色、時にチェック模様があるが芽紋はなく、線状披針形、硬く、上面は先に向かって凹み、下面は基部に向かって凸状になり、縁は真っすぐで簡単に離れ、糸状体はなく、顕著に棘があり、歯は単歯で長さ2~6mm、ほとんどの場合(1~)2~4cm 離れ、まれに欠く。葉頂端の刺は帯灰色、円錐形~刺状で、長さ1.5~4.5cm。花茎は高さ(2~)2.5~3.5m。花序は穂状花序状で、先端の1/2に密に花がつく。苞は脱落性で線形、長さ1~3cm。花序柄(枝)は長さ2~5mm、稀に20~150mm。花は1花房に2~3個つき、直立またはわずかに反り返り、長さ(2.4~)3~4.5cm。花被は黄色で、しばしば赤色または紫色を帯び、花被筒部は鐘形、長さ1.5~4mm×幅6~12mm、拡大部の裂片は斜上し、長さほぼ等長、長さ11~20mm。雄しべは長く突き出る。花糸は花被筒の縁に付き、広がり、黄色~帯赤色、長さ2.5~4.2cm。葯は淡黄色、長さ(11~)15~20mm。子房は長さ(0.8~)1.5~2.2cm、頸部は長さ(2~)4~8.5mmと狭くなる。蒴果は無柄または短柄があり、長円形、長さ1.8~2.5(~3)cm、先は嘴状。種子は長さ4.5~6mm。2n=110~120。花期は春中頃~晩夏(5~7月)。
 A. havardiana、A. neomexicana、A. gracilipes、A. × glomerulifloraと交雑する。
品種) 'Franklin Mountains'

33 Agave lophantha Schiede アガベ・ロファンサ
  synonym Agave univittata Haw. アガベ・ユニビタータ
 メキシコ、テキサス原産。英名はthorn-crested century plant , thorn-crested agave , striped agave , Maguey Mezortillo。海抜0~100mの砂地の平地に生える。POWOでは学名をAgave lophantha Schiedeとしている。
 植物は無茎で、普通吸芽を出す。ロゼットは密に叢生し、長さ30~60cm×幅50~100cm。葉は大部分が直立し、長さ30~40(~70)cm×幅3~4.5(~5)cm、葉身は明るい緑色~黄緑色、芽紋(bud-prints)はなく、線状披針形、硬く、上面は平らから先に向かって凹み、下面は基部に向かって凸形になり、縁は波打ち~円鋸歯状になり、糸状体はなく、容易に分離せず、顕著に棘があり、歯は単歯またはときに複歯で、長さ4~6(~8)mm、間隔は1~2cm、葉先端の刺は帯赤色~帯灰色、錐形、長さ1~1.5(~2)cm。花茎は長さ3~4.5(~5)m。花序は穂状花序状、先端の1/2に密に花がつく。苞は脱落性、針状、長さ3~5cm。花序柄は長さ4cm以下。花は短い小花柄に1個、または花房あたり2~7個つき、直立し、長さ3.5~4(~4.5)cm。花被は緑白色~黄緑色、花被筒部は鐘形、長さ2~4mm×幅8~10mm花被片は直立またはわずかに広がり、長さはほぼ等長、長さ14~20mm。雄しべは長く突き出る。花糸は花被筒の縁に付き、広がり、帯緑色またはラベンダー色、長さ3~4.5cm。葯は淡黄色、長さ15~20mm。子房は長さ1.8~2.2cm、頸部は長さ5~7mmに狭まる。蒴果は無柄または短い小花柄があり、長さ1.8~2.5cmの長楕円形、または直径1.5~2cmの球形で、先端は嘴状。種子は長さ5~6mm。2n=60。花期は春。
 Agave lophanthaという学名は、C. J. W. Schiede (Linnaea 4: 582. 1829) によって記載されているが、解説がない。C. S. Kunth (Enum. Pl. 5: 838. 1850) がこの学名を検証したが、それ以前にはA. univittataという学名が提案されていた。どちらの学名も模型化されておらず、信頼できる資料も知られていない。H. S. Gentry (1982) は誤ってA. lophanthaという学名を留保したが、現在では広く用いられている。A. J. Breitung (1959) が最初にA. univittataという学名を採用したため、Flora of North AmericaではA. univittataとしている[Flora of North America]。
品種) 'Band Aid' , 'Hansoti08' (PBR) , 'La Bufa Baby' , 'Miniskirt' , 'Multigreen' , 'Quadricolor'(v)[AGM] , 'Ruth's Gray Sword' , 'Splendida' (v)

34 Agave mapisaga Trel. アガベ・マピサガ
  synonym Agave salmiana var. angustifolia A.Berger
  synonym Agave mapisaga var. lisa Gentry
  synonym Agave mapisaga subsp. lisa (Gentry) Hochstätter
 メキシコ原産。 英名はGiant Maquey。別名はジャイアントアガベ。標高1900~2700メートルの緩やかな傾斜地や平坦な土地で栽培されている。特にメキシコのイダルゴ州ではAgave mapisaga Trel. とAgave salmiana Otto ex Salm-Dyckが集中的に栽培されている、この地域はトランスメキシコ火山帯に挟まれており、チワワ砂漠の最南端の分布域であるメスキタル渓谷とアクトパン渓谷が孤立して存在し、これらの渓谷は乾燥性低木林と多肉植物種に覆われている。この種は数千年にわたり栽培されており、アガベの野生種および栽培種は、多様な伝統的用途に利用されてきた。例えば、樹液(「アグアミエル」)を抽出してアルコール発酵飲料「プルケ」を製造したり、「メスカル」のような蒸留酒が製造されている。また、サポニンなどの代謝産物は、様々な工業プロセスや消費財の原料化学物質として利用されている。アガベ・サルミアナは、野生個体群が栽培プランテーションに継続的に導入された結果、形態的に大きな多様性を有している。一方、アガベ・マピサガは、激しい人為的淘汰によって形態が均質化している。
 常緑多肉植物で、短い幹を持つものもあり、高さ2~2.5m、直径2.5~4.5mのロゼットを形成する。葉はロゼットに30~50枚つき、成熟すると長さ150~250cm、基部付近の幅20~30cm、縁に小さな歯と先端に暗褐色の刺がある。数年間成長すると、高さ5~9mにもなる枝分かれした花茎が伸び、花が咲き、花後後ロゼットは枯れる。しかし、通常、この植物は基部周辺から多数の幼植物を生じ、新たな植物として成長する。
品種) 'Variegata'

35 Agave macroacantha Zucc. アガベ・マクロアカンサ
  synonym Agave flavescens var. macroacantha (Zucc.) Jacobi
 メキシコ原産。英名はblack-spined agave , large-thorned agave。別名は黒棘アガベ。流通名は八荒殿(ハッコウデン)。王立園芸協会のガーデン・メリット賞を受賞している。オアハカ州とプエブラ州のテワカン近郊の不毛の岩場に生える。
 吸芽を出し、高さ約60cm、幅1.5mの密集した群落を形成する、中型のロゼットは幅約25~48cmになり、無茎または非常に短い茎があり、等間隔で並んだ細い葉がつき、植物の中心からまっすぐ放射状に伸びる。葉は長さ54cm以下、幅が2~3cmと細長く、多肉質で青灰色~黄緑色、葉の縁は非常に真っすぐで、小さな暗褐色の鋸歯があり、葉の先端には太くて目立つ長さ2.5~3.8cmの暗褐色~黒色の刺がある。植物が開花し始めると、中央の葉は魅力的な赤みがかった色になり、そこから暗赤色の花序が現れ始める。花茎は丈夫で、高さ1.8~3mになり、花序の側枝は10~14本つき、花は小さく、灰色と赤色で、房状に咲く。
品種)  'Blue Ribbon'(黄覆輪) , 'Pablo's Choice' , 'Short Leaf' , 'Verde'

36 Agave maculata Regel アガベ・マクラータ
 メキシコ(コアウイラ州、ヌエボ・レオン州、タマウリパス州)、テキサス州原産。英名はTexas tuberose , spice lily。標高0~300mに生える。根茎は、テキサス州で細かく刻んで石鹸やシャンプーの原料として利用されており、観賞用として販売されることもある。
 根茎は円筒形。葉は広がり、多肉質で、長さ36cmまで×幅0.6~2.5cm、葉身は緑色または褐色の斑点があり、灰白色で溝があり、線状披針形で脆く、縁には小さくまばらな軟骨性の鋸歯がある。花茎は高さ42~131cm、花序は花時に長さ40cmまでになり、7~33個の花がつく。花は直立し、通常無柄で、強い甘い香りがある。花被は淡黄色または白色、ピンク色~バラ色になる。花被筒は漏斗形で、子房と同等か長く、長さ0.6~2.6cm。花被片は反り返り、長さ0.9~1.9cm×幅0.3~0.5cm。花糸は蕾の先端近くで曲がり、花被筒の上部近くに挿入され、花被筒から0.8~2.2cm突き出る。子房および花柱は花被筒より0.5~2.2cm長く、通常は雄しべより短い。柱頭は白色、棍棒状ではなく、深く3裂​​し、裂片は反り返る。蒴果は楕円形、長さ1.1~2.4cm×幅1~1.5cm。花期は3~5月(春)、6~8月(夏)、9~11月(秋)。
品種) 'Hondo Robusto' , 'Silver Leopard'

37 Agave marmorata Roezl アガベ マルモラータ
 メキシコ原産。英名はMarbled Agave , Marble Leaf Agave。Marbled Agaveは、灰色がかった大理石のような色合いと、葉の横縞に由来する。
 成長の遅い中型の常緑多肉植物、ロゼットは単生し、高さ90~120cm、幅120~180cmまでになる。葉は30~50枚、渦巻き状につき、葉は大きく幅広く、青灰色、淡い青と灰緑色の縞模様がく見られ、中心に直立する円錐形の葉の周囲から葉が開くと、カラフルな縞模様が目立ち、葉の縁には深い鋸歯があり、歯先に鋭い刺が並ぶ。1回結実性。成熟した植物は一度だけ開花して花後に枯れる。頂部から花茎が出て、高さ6mに達する。穂状花序に、鮮やかな黄金色の花を房状につける。花は蜜を豊富に含み、ミツバチ、ハチドリ、チョウにより受粉する。 品種) 'Gelagpapla' (PBR) , 'Papilio platanoides'

38 Agave maximiliana Baker アガベ・マキシミリアーナ
 メキシコ(ドゥランゴ州、ハリスコ州、ナヤリット州、シナロア州、サカテカス州)原産。英名は Raicilla , Century Plant。標高930~2380mの熱帯落葉樹林の乾燥した岩の多い斜面、および乾燥した石灰質または火成火山性土壌のオークやマツの森に群生する。食料、薬用、ハリスコ州特産の蒸留酒メスカル(mezcal)「ライシージャ(raicilla)」の製造に使われ、現在ではかなり大規模に栽培されている。
 常緑で無茎または短茎の多肉植物で、直径約160cmのロゼットを形成する。成熟した植物の葉はライムグリーン色、長さ40~80cm、基部付近の幅は10~20cmになり、葉縁と葉先に銅色の強く鋭い刺を持つ。数年間成長した後、高さ約5~8mの花茎が伸び、花が咲き、その後ロゼットは枯れる。種子によってのみ繁殖する。花期は1~5月。
品種) 'Katharinae'

39 Agave megalodonta García-Mend. & D.Sandoval アガベ・メガロドンタ

 メキシコ原産。以下の解説は、ガルシア・メンドーサら(2019)の基論文を補足したものである。
 植物は単生のロゼットになり、高さ90~120cm、幅1.2~1.5mまで成長するが、大きくなることは稀である。葉は黄緑色~濃緑色、、触ると平滑で、剣形、長楕円状披針形、卵形披針形、または卵形、長さ60~90cm、最大幅60~90cm、最大幅7.5~13cm、先端は長く尖り、縁の歯は大きく、チョコレートブラウン~灰色または白色、様々な形で湾曲、鉤状、または屈曲し、先端が稀に二尖歯となり、葉に目立つ芽紋がある、葉先の刺は大きくて丈夫、チョコレートブラウン色~灰色または白色、長さ5~7.6cmである。花茎は高さ4.5~6mに達し、上部の穂状花序に花がつく。花は淡黄色~緑黄色で、長さ3~5cm。花期は12~1月。

40 Agave microceps (Kimnach) A.Vázquez & Cházaro アガベ・ミクロケプス

  synonym Agave filifera subsp. multifilifera (Gentry) B.Ullrich
 メキシコ(シナロア州)原産。英名はcompact thread-leaf century plant。矮性種で、標高210~450mの急峻な火山性斜面に生える。流通名は'Compacta'。以前はAgave filifera subsp. multifiliferaに含められていた。
 ロゼットは群生し、地植えの古い群落は幅が90cmにも達することがある。各ロゼットは小型矮性、幅15~30cm。葉は短くやや幅広、緑色、縁には印象的な白い糸状繊維がつき、葉の中央には白色の模様があり、葉の先端には赤みがかった鋭い棘がある。
品種) 'Compacta'

41 Agave mitis Mart. アガベ・ミティス
  synonym Agave celsii Hook.
  synonym Agave mitis var. albicans (Jacobi) A.Terracc.
  synonym Agave mitis var. albidior (Salm-Dyck) B.Ullrich
 メキシコ(コアウイラ州南東部、ヌエボ・レオン州南部、タマウリパス州西部および南西部、サン・ルイス・ポトシ州南西部、グアナファト州北東部、ケレタロ州北東部、イダルゴ州北部および中部、プエブラ州北部)原産。英名はMitis Agave , Mitis Century Plant, Maguey Blanco(var. albidior)。標高460~2440mの乾燥した砂漠の低木地帯や開けた山岳地帯の低木地帯から日陰の湿潤な岩の崖まで分布し、ほとんどが石灰岩の露頭、また河川沿いの茂み、雲霧林に生息し、まれに着生することもある。
 ロゼット葉は腋生で分岐し、大きく長寿命の密集した群落を形成する。葉は卵形、長楕円形、またはへら形で、斜上または外側へ曲がり、厚い軟かい肉質、先は短い尖鋭形、ときに波打ち、下面は凸形、上面には溝があるかまたは凹形、長さ30~60(~70)cm×幅7~13cm、緑色~薄灰粉白色、縁は直線または±波状、縁の歯は小さく、しばしば2尖端があり、ときに縁毛状の突起があり、突起は長さ1~3mm、帯白色~赤褐色、密に並び、葉の先端は刺針状で、弱く、長さ10~20mm、褐色を帯び、葉の先端に沿って1~6cm以上、沿下する。花序は長さ1.5~2.5m、穂状花序状(常に?)、先端のロゼット葉の下の腋枝から出る。花序柄には密に、紙質の三角形で先が長い尾状の宿存する苞があり、苞は長さ1.5~7cm、稔性部分には密にあり、結実期には緩くなり、部分花序には双の花が付く。花は肉質で長さ40~60mm。花被は外側が緑色、内側は黄色~帯赤色またはラベンダー色~帯紫色。花被筒部は漏斗形で壁が厚く、3角(かど)があり、6本の溝があり、長さ10~17mm×幅10~12mm(先端で)、花被裂片は線状披針形、厚い肉質、斜上~反り返り、先は短い尖鋭形、僧帽形(cucullate)、先端は腺綿毛状(glandular-floccose)で、不等長、長さ12~18mm×幅5~8mm、内側には幅広い肉質の竜骨がある。花糸は長さ40~60mm、帯白色で細かな淡紫色の縞をもち~帯黄色~帯褐色、または褐紫色で、花被筒部の先に挿入される。葯はほとんどが 偏心性(excentric)、長さ17~22mm、黄色、(帯)緑色、赤色または褐色で、開花前は黄色、褐色、紫褐色または暗紫色である。子房は3角(かど)があり円筒形、6溝があり、基部と先端は切形、長さ13~20mm、頸部はない。花柱は太くて短く、花糸と同じか長く、淡色で紫色の斑点があり、先端に向かって赤色を帯び、紫褐色。柱頭は弱く3裂する。果実は角張った卵形、壁は厚く、長さ18~25mm×幅9~12mm、表面が粗く、濃褐色、嘴がある。種子は半球形、長さ3~4mm×幅2~3mm、黒色、よく発達した完全な縁翼を持つ。2n=60(Cave 1964)。花期は3~7月。
品種) 'Multicolor' , 'Nova' , 'San Ysidro Lane'(var. albidior) , 'Silver Anniversary'(var. albidior) , 'UCB'(var. albidior)

42 Agave multifilifera Gentry アガベ・ムルチフィリフェラ
  synonym Agave filifera subs. multifilifera (Gentry) B.Ullrich
 メキシコ(ソノラ州、チワワ州、ドゥランゴ州、シナロア州)原産。英名はwhite thread agave, Chahuiqui。標高1400~2200mのマツとオークの森に覆われた岩の多い崖に生える。
 常緑多肉植物。ロゼット葉は通常、単生し、密集した半球形、高さ100cm、幅約150cmまでになり、成熟すると短い幹が発達し、長さ50~80cmになる。ロゼットに葉が200枚以上つき、葉は緑色、細く硬く、基部付近の幅12~35mm、刺があり、葉の縁に、巻き毛のような白い糸状の繊維が多数つく。数年間成長すると、高さ5m、直径20cmにもなる花茎が伸びる。花後にロゼットは枯れる。
品種) 'Basaseachic Falls' , 'Cardos Compacta' , 'Marginata' 笹の雪 , 'Starshine' , 'Starshine'Chahuiqui
 葉縁に白色の糸状繊維がつく類似種
(1) Agave filifera Salm-Dyck アガベ・フィリフェラ

(2) Agave geminiflora (Tagl.) Ker Gawl. アガベ・ジェミニフローラ

 葉は線形、長さ60~90cm、幅1.2cm以下。

(3) Agave microceps (Kimnach) A.Vázquez & Cházaro アガベ・ミクロケプス

(4) Agave schidigera Lem.  アガベ・シジゲラ

43 Agave murpheyi Gibson アガベ・ムルフェイー
 アリゾナ州、メキシコ原産。英名はmurphey agave , murphey's century plant , hohokam agave。ホホカム族が食用としていたアガベ・ムルフェイーは、コロンブス以前の農耕地および定住地周辺でのみ知られている。標高400~1000mの砂漠の低木地帯の排水路付近に自生する。
 植物は無茎で、自由に吸芽を出す。ロゼットは群生し、長さ60~120cm×幅80~140cm、開く。葉は斜上し、長さ50~80cm×幅6~10cm、葉身は薄粉白緑色~黄緑色、しばしば薄く交差帯(cross-zoned)があり、へら形で堅く、上面は先にが凹み、下面は基部が凸形、縁は波打つように伸び、刺があり、鋸歯は単歯、明瞭で、ほとんどが長さ3~4mm、歯の間隔は約1~2cmあり、葉の先端の刺は暗褐色~帯灰色、円錐形で、長さ1.2~2cm。花茎は高さ3~4m。花序は狭い円錐花序状で、多数、小球根がつく。苞は宿存し、三角形、長さ10~15cm。花序の側枝は10~16本、やや斜上し、花序の上部1/4を占め、長さ10cm以上ある。花は花房あたり12~21個つき、直立し、長さ(5.1~)6~7.5cm。花被はクリーム色、先は紫褐色または褐色、花被筒部はつぼ形、長さ14~20mm×幅(11~)14~19mm、花被片は直立し、不等長、長さ(14~)15~20mm。雄しべは長く突き出る。花糸は花被筒の中央またはそのやや上に不等に挿入され、直立し、黄色、長さ(3.3~)4.5~5cm。葯は黄色、長さ(16~)22~25mm。子房は長さ(1.8~)2.2~4cm、頸部はやや狭まり、長さ(0.5~)4~6mm。蒴果は短小花柄があり、倒卵形~長円形または卵形、長さ5~7cm、先は短い嘴状。種子は長さ(7~)9~11mm。2n=60。花期は晩冬~春。
 アリゾナ州ではアガベ・ムルフェイはA. chrysanthaと交雑する。
品種) 'Engard'

44 Agave nizandensis Cutak アガベ・ニザンデンシス
 メキシコ原産。英名はNizanda Agave。急な石灰岩の斜面の乾燥した森林に生える。
 小型で特徴的な、低く生え、ほぼ無刺、幅30~60cmのロゼットが開いた房を作り、匍匐茎によってゆっくりと広がる。ロゼットには数枚の細い葉があり、大きく広がった後、下向きに反り返る。葉は細く、長さ15~30cm、幅約2.5cm、濃緑色で、中央に淡色の縞模様があり、明るい光の下では、葉は濃紫色~ほぼ黒色に変わるが、常に明るい中央の縞模様は残る。葉の上面は平らまたはわずかに凹み、下面は凸状になり、縁には間隔をあけてわずかに微細な鋸歯があり、葉先端の棘は赤色で鋭くない。花茎は高さ60~90cmに伸び、上部に穂状花序をつけ、花序枝の部分花序は小さな頭状の散形花序、多数の花がつく。花は黄緑色~帯緑色。葯は黄色。
品種) 'Double Stripe'

45 Agave obscura Schiede ex Schltdl. アガベ・アガベ・オブスキュラ

 メキシコ原産。英名はdark-flowered agave , black thorn agave , red-flowered hardy agave , Whale's Tongue。主に標高1200~2700mのオークやマツ・オークの森、またはマツを含む火山性溶岩流に生育する。野生から採取され、食用として地元で利用されることもある。また、有用な繊維が採れる。
 無茎の常緑多肉植物、葉が広く広がるロゼットは幅1mまでなる。葉は広線形~卵形、長さ35~65cm、幅7~12cm、縁には赤い鋸歯があり、先端には長い棘がある。数年間成長した後、高さ2~3(~5)mほどの花茎が伸び、細長い花序の上部4分の1に螺旋状に密集して花がつく。花は濃い紫色、赤色、または黄色、長さ4cmまで。花後にロゼットは枯れるが、根元から複数の子株を出し、それらは新しい植物として成長する。
品種) 'Red Skyline'

46 Agave ocahui Gentry アガベ・オカヒー
 メキシコ原産。英名はOcahui , Ocahui Century Plant , Amolillo , Ocahui Agave , Ojahui。砂漠や乾いた低木地に生える。
 多年生多肉植物、通常は単生し、密なロゼットを形る。ロゼットは最大で高さ50cm、直径1.2mまで成長する。葉は剣形、狭く、長さ30~45c、幅2~3cm、暗緑色、非常に厚く硬く、葉身と縁は平滑で縁は歯がなく、縁は赤褐色、先端の刺は鋭く、長さ2.5cmまで、灰褐色、容易に曲がる。花茎は高さ4.5mまで、穂状花序は枝分かれせず、鮮やかな黄色い花を密につける。花後にロゼットは枯れる。
品種) 'Wavy Gravy' , 'Variegated Miniature'

47 Agave oteroi G.D.Starr & T.J.Davis アガベ・オテロイ
 メキシコ原産。英名はSierra Mixteca Agave。プエブラ州とオアハカ州のシエラ・ミシュテカ山脈に分布し、標高975~1160mの川の堤防沿いの露出した斜面や岩場の露頭など、浅い土壌から深い土壌まで生える。種名は、この印象的なアガベの種子を初めて収集したフェリペ・オテロに因む。
 多年草で、単独または吸枝を出し、葉はのロゼットは高さ30~70cm、直径45~100cmになる。葉はロゼットあたり20~50枚で、長さ25~45cm、中央より上部の最も幅広部分の幅は9~14cm、広倒卵形~倒披針形、硬く、平滑~わずかに粗く(asperous)、厚く海綿質で、緑色~暗緑色、たまに鈍い緑色、通常、淡黄色または緑黄色の中央の縞があり、上面は平ら~深く凹み、下面は凸状であり、葉の縁は真っすぐで、軽く波打つ~不規則に波打ち、まれに深く円鋸歯があり、しばしば、先端に向かってカップ状になって内巻きするし、大きく、下面は木質であり、縁の歯は長さ2~30mm、大きい歯はより多く、薄く~厚く、小さい歯は葉の基部に向き、歯は非常に狭い間隔かより離れており、小さな間隙歯は有または無、まっすぐから様々に曲がり、新葉では赤褐色~褐色、古い葉では老化すると灰色になり、両面に深い芽紋があることが多く、葉先端の刺は長さ20~30mmで、下半分に幅広く浅い溝があり、溝は狭くなって深くなり、丸く錐状になり、新葉では赤褐色~褐色、古い葉では老化すると灰色になる。花序は長さ2.4~3.5m。不稔の花序柄は長さ1~2.5mで、全長の約半分から3分の2を占める。下部の苞は長さ105~120mm、基部の幅14~15mmで、先端近くでは幅1~2mmに細くなり、長さ27~30mm、基部の幅3~5mmに小さくなり、先端近くでは幅1mmに急速に細くなる。稔性の穂状花序は長さ0.9~1.75mで、茎の全長の約3分の1から2分の1を占め、黄色~黄緑色の花が密集し、ときに、赤色や赤紫色を帯びる。花は節当たり2個、長さ36~46mm。小花柄は長さ3~6mm。花蕾は緑色。花被は外側が緑色で、縁はときに明るい緑色、黄緑色、または黄色、完全に開いた内側は黄色または明るい黄緑色、開花時にカップ形~狭い鐘形になる。子房は長さ15~18mm、頸部は長さ2~5mm。花被筒部は長さ2~3mm、幅4~5mm。花被片は長さ17~20mm、幅5~8mm。花糸は長さ40~55mm、黄色または緑色。葯は黄色または緑黄色。花期は12月~2月。果期は2~6月。
品種) 'Banana Peel' , 'Black and Blue' , 'Filigree' , 'Filigree Devil' , 'Genryu Kifukurin' , 'Kyoto' , 'Lanky Wanky' , 'Mean Streak' , 'Solar Eclipse' , 'Snaggle Tooth' , 'Sunburst'

48 Agave ovatifolia G.D.Starr & Villarreal アガベ・オバティフォリア

  synonym Agave noah A.B.Nickels
 メキシコ原産。英名はwhale's tongue agave。メキシコ北部チワワ砂漠のヌエボ・レオン地方の標高1000~2000mの高地に自生する。種小名はラテン語で卵を意味する「ovatus」と、葉を意味する「folius」に由来し、葉の形に由来する。
 常緑多肉植物、単生で、子株は生じない。ロゼットは大きく、密、対称的、基部につき、成熟すると高さ90cm、幅120cmになる。葉は魅力的な青灰色、厚く硬く、平滑、わずかにカップ状になり、長さ60cmまでになり、縁に沿って灰色の湾曲した棘があり、先端には鋭い棘がある。各ロゼットは通常10~20年の間に一度だけ花をつける。ロゼットから1本の巨大な花茎、高さ4.3mまでに伸び、各茎から15~20本の側枝が伸び、各側枝には黄緑色の花が房状につく。花期は通常夏(6~8月)
品種) 'Beluga' , 'Blue Dreams' , 'Frosty Blue' , 'Killer' , 'Lava Flow' , 'Narwhal' , 'Orca' , 'Sierra Lampazos' , 'Vanzie'

49 Agave palmeri Engelm.  アガベ・パルメリー
 アリゾナ州、ニューメキシコ州、メキシコ原産。英名はPalmer's Agav, Palmer agave。流通名は屈原の舞扇。標高900~2000mのオーク林や草原の石灰岩上の砂質~砂利質地に生える。
 植物は無茎で、まれに吸芽を出す。ロゼットは通常単生し、群生せず、長さ40~130cm×幅70~130cm、開く。葉は斜上~広がり、長さ35~92cm×幅3.5~19cm、葉身は淡色~灰緑色または緑色で、ときに赤みを帯びることもあり、交差帯(cross-zoned)はなく、線状披針形~披針形、硬く、上面は先に向かって凹み、下面は基部に向かって凸状人あり、縁は直線または多少波打ち、刺があり、歯は単歯、明瞭で、しっかりと付着し、長さ3~6mm、間隔は(0.5~)1~2cm離れ、間隙歯は4~6個で、ほとんどが縁の上部2/3に沿って存在し、先端は顕著に湾曲せず、刺は赤褐色~褐色、針状、長さ3~6cm。花茎は高さ(1.7~)4~6.5(~7.2)m。花序は広円錐花序で、小球根はなく、開く。苞葉は宿存性、三角形、長さ1~5cm。花序の側枝は8~26(~32)個で、やや斜上し、花序の先端部の1/3を占め、長さ10cm以上。花は花房あたり8~16個つき、直立し、長さ4.5~7.5cm。花被はクリーム色~淡黄色または淡緑色、花被筒部は浅くなく、つぼ形、長さ10~18mm×幅10~16mm、花被片は宿存し、開花中および開花後にしばしば革質で、直立し、強く不等長で、長さ(6~)9~18mm、先端はしばしば栗色を帯びる。雄しべは長く突き出る。花糸は花被筒の中央より上と縁近くの2か所に挿入され、直立し、淡黄色または帯赤色、長さ4~5.5(~5.8)cm。葯は黄色、長さ11~25mm。子房は長さ1.8~3.6cm、頸部はわずかに狭まり、長さ0.5~4~6mm。蒴果は短い小花柄があり、長さ3.5~6cm、先は短~長嘴状。種子は長さ5~7mm。2n=60。花期は晩春~夏。
 Agave palmeriはアリゾナ州でA. chrysanthaと交雑する。
品種) 'Cutty Shark'

50 Agave parrasana A.Berger アガベ・パラサナ
 メキシコ原産。英名はcabbage head agave , cabbage head century plant。メキシコのコアフリオ地方にのみ分布し、標高1400~2400mの石灰岩の斜面、チャパラル(低木林)やマツ・オーク林に生育する。耐寒性があり、日当たりの良いサボテンガーデンなどの屋外で栽培される人気植物であり、王立園芸協会のガーデン・メリット賞を受賞している。
 成長の遅い常緑多肉植物。ロゼットは小さく左右対称、キャベツに似た直径約60cm、大きいものは100cmに達する。葉は肉厚、灰緑色~青灰色、短く幅広でほぼ円形、縁には鋭い棘があり、先端には長い赤色の棘があり、葉には前の葉の斑紋がある。花茎は高さ3~4m、先に穂状花序をつけ、花序の側枝は12~15本。花は開花時に赤色~帯紫色、その後、黄色の変化する。高い花茎は、アスパラガスの大きな枝に似ており、センチュリープラントに似ているが、センチュリープラントは長く鋭い葉を持つ。種子を生じ、まれに子株を形成する。
品種) 'Fireball' , 'Hidden Wonder' , 'Impressionist' , 'Meat Claw' , 'Sea Star' , 'Triumphant'

51 Agave parryi Engelm. subsp. parryi アガベ・パリー
 アリゾナ州、ニューメキシコ州、テキサス州、メキシコ原産。英名はParry's Agave。別名はアガベ・パリー。流通名は吉祥天(キッショウテン)。
 植物は無茎で、自由に吸芽を出す。ロゼットは単生または叢生、長さ3.5~7.5cm×幅4~8.5cm、やや開く~密。葉は斜上~直立し、長さ7~65cm×幅4~20cm、葉身は灰白色~薄緑色、交差帯はなく、線状披針形~披針形または広卵形、硬く、上面はほぼ平面~先に向かって凹形、下面は凸形、縁は真っすぐまたは波状、まれに無歯、歯は単歯、明瞭、長さ3~7(~8)mm、間隔1~3cmにつき、葉先端の刺は暗褐色~灰色、錐形または針状、長さ1.5~4cm。花茎は高さ(2~)3~6m。花序は広い円錐花序で、やや開く~密、小球根はつかない。苞は宿存し、三角形、長さ3~10cm。花序の側枝は(7~)10~36本、水平~わずかに斜上し、花序の先端部の半分を占め、長さ10cm以上。花は1花房につき27~48個、直立し、長さ4.3~8.1cm。花被は蕾ではピンク色~赤色または赤色~オレンジ色、開花時には黄色~黄緑色になり、花被筒部は鐘形、長さ6~18mm×幅11~21mm、花被片は直立~斜上し、長さは不等、長さ13~27mm。雄しべは長く突き出る。花糸は花被筒中央より上~縁の直下に(ときに不規則に)挿入され、直立し、黄色または緑色、長さ3.5~5.8cm。葯は黄色、長さ12~34mm。子房は(2~)3~4.5(~4.8)cm、頸はわずかに狭まり、長さ4~9mm。蒴果は短柄があり、卵形または長円形~倒卵形、長さ2.5~5cm、先端は嘴状。種子は長さ7~8mm。[Flora of North America]
品種) 'Alba Marginata' , 'Border Guard' , 'Chihuahua Form' , 'Cream Soda' , 'Cream Spike' (v) , Estrella™ , 'J.C. Raulston' , 'Ohi-kissho-ten-nishiki' (v) , 'Variegata' (v)
51-1 Agave parryi var. couesii (Engelm. ex Trel.) Kearney & Peebles
  synonym Agave couesii Engelm. ex Trel.
 アリゾナ州原産。英名はCoues agave。標高1100~2100mの草原、チャパラル、ピニオンジュニパー、オークの林内の砂利質地に生える。
 ロゼットは高さ35~55cm×幅40~65cm。葉は長さ25~42(~47)cm×幅6.5~11cm、葉身は卵形。花は長さ4.3~5.5(~6)cm、花被筒部は長さ6~9mm、花被片は長さ13~21mm。花糸は長さ3.3~4.4mm。子房は長さ2~3.4cm。2n=120。花期は晩春~初夏。
 変種couesiiはアリゾナ州でA. chrysanthaと交雑する。
品種) 'Excelsior' , 'Wakefield'
51-2 Agave parryi var. huachucensis (Baker) Little
 アリゾナ州、メキシコ北西部原産。英名はHuachuca Agave。標高1500~2200mのオークやマツの林内の砂利質の場所に生育する。広く栽培されている。
 ロゼットは高さ45~75cm×幅75~85cm。葉は長さ32~65cm×幅10~20cm、葉身は卵形。花は長さ6.2~8.1cm。花被筒部は長さ8~9 mm、花被片は長さ20~27 mm。花糸は長さ4.6~5.8cm。子房は長さ3.4~4.7cm。花期は春中頃~初夏。

51-3 Agave parryi subsp. neomexicana (Wooton & Standl.) B.Ullrich

 ニューメキシコ州、テキサス州、メキシコ原産。英名はNew Mexico Agave。標高1600~2100mの草原や砂漠の低木地帯の砂利質から岩の多い場所に生育する。メスカレロ・アパッチ族は花を焼いて甘く粘り気のある食料源としていた。
 ロゼットは頂部が平ら、長さ35~45cm×幅40~60cm。葉は斜上し、長さ17~45cm×幅40~120cm。葉身は披針形、縁は真っすぐ、鋸歯は長さ5~7mm、間隔は1~3cmあき、先端の刺は暗褐色、鋸歯状または針状、長さ2.5~3cm。花茎は高さ(2~)3~4.5m。花序は側枝が(7~)10~17本、わずかに斜上する。花は長さ5.5~6.7cm。花被は蕾では赤色~橙色、開花時には黄色~黄緑色、花被筒は長さ12~18mm、花被片は直立~斜上し、長さ15~20mm×幅3~4mm。花糸は(ときに不規則に)花被筒中央より上に挿入され、緑色、長さ3.5~4.5cm。子房は頸部が長さ4~7mm。蒴果は長円形、長さ2.5~3.5cm。2n=120。四倍体と報告されている。花期は春中旬~初夏。
品種) 'Culberson Giant', 'Sunspot'
51-4 Agave parryi subsp. parryi
 アメリカ合衆国南西部、メキシコ北西部に分布する。
 ロゼットは球形、高さ35~75cm×幅40~85cm。葉は斜上~直立し、長さ(18~)25~65cm×幅(4.5~)6.5~20cm、葉身は線形~披針形~広卵形、縁は真っすぐまたは波状、鋸歯は長さ3~7(~8)mm、間隔1~2cmにつき、葉先端の刺は暗褐色~灰色、針状、長さ1.5~3cm。花茎は高さ4~6m。花序の側枝は20~36本、水平~わずかに斜上する。花は長さ4.3~8.1cm。花被は蕾ではピンク色~赤色、開花時には黄色になり、花被筒部は長さ6~12mm、花被片は直立し、長さ13~27mm×幅4~6(~7)mm。子房の頸部は長さ6~9mm。蒴果は卵形または長円形~倒卵形、長さ3.5~5cm。
 B. UllrichUllrichは、var. huachucensisとvar. couesiiを Agave parryi subsp. parryi のシノニムに分類した。(1992) 51-5 Agave parryi var. truncata Gentry
 メキシコ原産。英名はArtichoke Agave。
 ロゼットは高さ30~60cm、幅は60~90cm、葉が密につく。葉は銀青色、基本変種より丸く、幅広くて短く、厚みがあり、縁に直立する鋭い棘があり、葉先の刺は長い。
品種) 'Bed of Nails' , 'Lime Streak' , Retro Choke™

52 Agave parviflora Torr. アガベ・パルビフローラ
 アリゾナ州、メキシコ原産。英名はsmall-flowered agave。別名は姫乱れ雪。標高900~1500mの主に砂漠の草原やオーク林などの開けた岩場の斜面に生える。
 植物は無茎で、自由に吸芽を出す。ロゼットは単生または叢生、長さ10~15cm×幅15~20cm。葉は斜上~直立し、長さ6~10cm×幅0.8~1cm、葉身は暗緑色で両面に白色の芽紋(bud-prints)があり、長円状線形、堅く、上面は先に向かって平ら、下面は基部に向かって凸状、縁は真っすぐで、基部近くに小歯があり、糸状体があり(filiferous)、繊維は白色で、しっかりとカールし、葉先は急に尖鋭形になり、刺は褐色から灰白色、錐形、長さ0.5~0.8cm。花茎は高さ1~1.8m。花序は穂状花序状で、先端の1/2に緩く花がつく。苞は脱落性、狭三角形、長さ1~3cm。花序柄は長さ2mm未満。花は花房あたり2~4個つき、強く反り返り、長さ1.4~1.7cm。花被はクリーム色~淡黄色、花被筒部はつぼ形、長さ5~7mm×幅4.5~5.5mm、花被片は直立~内向きに曲がり、長さ2~3.5mm。雄しべはわずかに突出す。花糸は筒部基部より1mm上に挿入され、直立し、クリーム色、長さ0.9~1.4cm。葯は黄色、長さ5~8mm。子房は長さ0.6~0.9cm、頸部はわずかに狭まり、長さ2mm。蒴果は無柄~短小花柄があり、長さ0.6~1cm、球形、先端は短い嘴状。種子は長さ2.5~3mm。2n=60。花期は晩春~晩夏。
品種) 'Minor' , 'Pinpoint' , 'Pin Up Girl'

53 Agave pedunculifera Trel. アガベ・ペドゥンクリフェラ
  synonym Agave attenuata var. dentata J.Verschaff.
  synonym Agave attenuata subsp. dentata (J.Verschaff.) B.Ullrich
  synonym Agave dentata Baker
 メキシコ原産。メキシコのシナロア州、ドゥランゴ州、ナヤリット州、ハリスコ州に分布し、火山起源の岩の切り立った崖面に沿って生える。英名はSoft Agave。この植物はアガベ・アテヌアータに最も近縁で、アガベ・アテヌアータと比較して、より無茎性(茎や幹がない)で、葉の縁に小さな鋸歯がある点で異なる。アガベ・アテヌアータは、直立して外側に伸びる長い茎にロゼットがつく。
 年をとらないと直立せず、より無茎性、ロゼットは主に単生し、幅120(~150)cmになる。葉は広倒披針形~まれに楕円形、長さ80.0~90.0cm×幅11.0~15.0cm、オリーブ色~青緑色、柔らかく、反り返り、縁には小さな柔らかい鋸歯(微細な歯状)があり、細く尖った先端の刺は長さ約10mm、鋭く見えるが、柔らかく簡単に曲がる。花茎は太く直立し、長さ2~3m。長い穂状花序に多数の花をつける。花は節に4個ずつつき、淡黄色、長さ3.7~5.2cm。花糸は長さ40.0~55.0mm。花柱は長さ20~27mm。
品種) 'Durango'
54 Agave potatorum Zucc. アガベ・ポタトルム
 メキシコ原産。英名はdrunkard agave , butterfly agavem。流通名は雷神(ライジン)。
 小型のリュウゼツラン、単生又はゆっくり叢生し、茎は普通、無く又は非常に短く、小型の開いた対称の多肉質のロゼットになる。非常に多形であり、多くの栽培品種が作られている。ロゼットは完全に成長して直径10~90㎝。 葉は、少数~多数、色も変化があり緑色~黄緑色~ほぼ白色の粉白を帯びた灰色又は帯青色。通常、卵形~短い披針形だが、変化が多い。葉は普通、ロゼットに30~80個、柔らかい肉質だが、やや堅く、基部は厚く、狭くなり、卵形、長円形、又は短い披針形、だが、形、大きさ、色が変わりやすく、ほとんどが長さ20~40㎝×幅9~18㎝、緑色~青灰色~薄銀灰色、先付近はわずかに後屈し、しばしば捻じれるか又はわずかに波打ち、先端の赤色を帯びた暗褐色の刺は長さ2.5㎝以下、縁の刺は短く、しばしば小突起状といわれ、しばしば明瞭な乳頭(teats)をもち、縁の歯は普通、さび色又は帯黄色、長さ0.6~1.3mm、0.5~2.5㎝離れてつく。葉はまた、目立たない派手な蕾の痕跡をもつ。長い穂状花序は総状花序又は円錐花序からなり、長さ3~6m花は薄緑色で赤色を帯びる。基部につく苞は赤色。花期は夏。
品種) 'Becky'ベッキー , 'Bluewinds' , 'Cameron Blue'キャメロンブルー , 'Cameron Form' , 'Cherry Swizzle' , 'Cubic' , 'Desert Diamond' , 'El Camaron' , 'Funkalicious' dwarf , 'Gary Fisher' , 'Glow Light' , 'kissho kan' 吉祥冠錦 , 'Houou' 鳳凰 , 'Huuraijin' 風来神 , 'Ice Cream' , 'Mariscal' , 'Ohi Raijin Shiro Nakafu' , 'Portillo Nejapa' , 'Shoji Raijin' , 'Snowfall' , 'Swizzle Stick'

55 Agave quiotepecensis García-Mend. & S.Franco アガベ・クイオテペケンシス

 メキシコ原産。オアハカ北部の川沿いに自生する。2019年に新種として記載された。
 植物は単生の無茎のロゼット葉で、高さ1.4~1.5m、幅1.4~1.5m、長さ2~2.5mと記載されているが、2か所で生育する植物の観察と計測では、かなり小さく、高さ2~3.75m、幅0.6~1.1m、長さ1.1~1.6mであった。ロゼット葉は20~50枚(稀にそれ以上)つく。葉は長披針形~卵状披針形、葉身中央より少し上の幅が最も広く、長さ45~90cm、幅10~17cm、腹面は触ると平滑~粗く、雨季には薄黄緑色~暗緑色、ときに鈍い粉白緑色を呈し、乾季には赤色または紫色を帯び、通常、中央に目立つ淡黄色または緑黄色の縞模様があり、縁は木質部が連続して真っすぐ、軽度の波状、不規則な波状、または深い円鋸歯状で、小~大の様々な湾曲の歯があり、新葉では濃いチョコレートブラウン色、古葉では若い植物でも白色に変わる。葉先端の刺は丈夫で、長さ約5cm、新葉では濃いチョコレートブラウン色、古葉では白色または灰色になる。花茎は高さ3~4.8mまで、密な穂状花序がつき、茎の先端部の85~100%が深い稔性部となる。この深い稔性部は、アガベ・カルシフィラにも見られる珍しく際立った特徴である。花は緑黄色、長さ約5cm。雄しべは黄色であるが、ときに赤みがかる。花期は12~3月の乾季。種子は雨季にちょうど間に合う3~6月に成熟する。

56 Agave rosalesii A.Vázquez アガベ・ロサレシー
 メキシコ原産。グリーン川流域に生える。Agavero rosalesii はアガベ・ペドゥンクリフェラ(Agave pedunculifera)と類似しているが、花序の長さ、花などが異なる。
 ロゼットは子株をもたない。葉が卵状尖鋭形または披針形であり、長さ43.0~60.0cm×幅14.0~30.0cm、葉の縦横比は2.6~3.2、縁が鋸歯状、先端の刺は長さ2.0~3.0mm。花序の長さは3.2~3.5m。小花柄は長さ4.0~5.0mm。花は長さ3.3~3.5cm。花の色は黄色。花被筒は明瞭。花被片は反り返って巻き、長さ19.0~22.0mm×幅6.5~7.0mm。節当たりの花数は2個。花糸は長さ60.0~65.0mm。花柱は長さ40.0~53mm。

57 Agave salmiana Otto ex Salm-Dyck アガベ・サルミアナ
 メキシコ原産。英名はmaguey pulquero, green maguey。標高1550~3000の乾葉低木林および乾燥林、多くの場合、石灰岩土壌に生育する。Agave mapisaga Trel. と同様にAgave salmiana Otto ex Salm-Dyckもメキシコの国民的飲料である発酵アルコール飲料のプルケなどの製造のために栽培されている。
 常緑多肉植物で、短い幹を持つものもあり、高さ200~280cm、直径200~500cmのロゼットになる。葉はロゼットに30~70枚つき、長さ100~220cm、基部付近の幅20~35cm、厚く、暗緑色、縁と先端に強い刺があり、先端の刺は長い。葉が展開すると、下の葉に跡が残る。ほとんどのアガベと同様に、本種は1回結実性、一度だけ開花すると枯れてしまうが、基部に多数の幼植物を生じ、新しい植物として成長する。開花までは15~25年で、花茎が直立し、通常高さ4~8mになり、黄緑色の花をつける。大きいものは花序全体の高さが16mに達し、そのうち花茎は約12m、円錐花序は4mという記録もある。最大では花序全体が全長19mに達したという報告もある。これは、既知の植物の花序の中で最も高い花序であるといわれている。
品種) 'Butterfingers' , 'Green Giant' , 'La Florida' , 'Mediopicta Aurea' , 'Tony's Tiger'

57-1 Agave salmiana subsp. crassispina (Trel.) Gentry

 大型の変種。葉は厚く、堅く、広くて緑色、縁は波打ちや歯があり、長い棘がある。野生個体は栽培品種よりも茎や葉が細い。

57-2 Agave salmiana var. ferox (K.Koch) Gentry

 英名はGiant Agave。栽培でよく見られる巨大なアガベであり、ロゼットがつぼ形になり、葉はよく揃り、幅35cmまたはそれ以上になる。変種名feroxは、硬くて長い(最大 8cm)頂部の刺に由来する。変種 ferox は、変種 salmiana と混交する。
 多年生で、非常に大きな常緑ロゼットを作る多肉植物で、多数の吸芽を形成し、吸芽を除去しないと大規模な群落を形成することがある。1回結実性。茎は短く太い。ロゼットは大きく、葉は緩やかに広がる。葉は長さ1~2m、幅20~35cm以上、広披針形~倒披針形で、基部に向かって狭まり、上部は先細りになり、先端は鋭形、硬く平滑、灰緑色~灰白色で、基部下面は深く凸状で、上面は凹状~溝状で、先端はS字状に湾曲し、縁は蛇行し、縁の刺は褐色~灰褐色、長さ1~2cm(刺が立つ肉質の乳頭状突起を含む)、葉の基部で合流し、中央の刺は2~3cm離れ、上部の刺は7~8cm離れる。葉先端の刺は長さ5~10cmで、上部の長さの半分以上に黒褐色の溝があり、長く沿下し、ときに葉身の中央まで重厚な角質の縁となる。丈夫な円錐花序をつける。花序柄は大きな肉質の苞が密に重なり、高さは(6~)7~8(~9)m。円錐花序は幅広く、茎の上部に15~20個の大きな散形花序をつける。花は粗い肉質で長さ8~11cm、蕾ではしばしば帯赤色だが、開花すると黄色または緑黄色になる。子房は緑色で長さ50~60mm、太い円筒形。花被筒部は大きな漏斗形、深さ21~24mm、幅20mm、厚壁である。花被片は二形性で狭く、内向きに曲がり、内側の花被片は2~3mm短く、高い肉質の竜骨を持ち、薄い無色の縁で縁取られる。外側の花被片は長さ21~25mm×幅6mm、基部が膨らむ。花糸は長さ55~70mm、花被筒の中央より上方に挿入される。葯は長さ30~35mmで黄色。雌しべは雄しべより長く伸びる。花期は春(自生地では3月下旬~6月が主な開花期とみられる)。適切な条件下では10年で開花する。蒴果は長さ5.5~7cm×幅2~2.2cm、柄があり、嘴があり、木質で、褐色。種子は長さ8~9mm×幅6~7mm、黒色で涙形。
品種) 'Grey Form' , 'Marginata' (v) , 'Medio Picta' , 'Variegata'
57-3 Agave salmiana subsp. salmiana

58 Agave schidigera Lem.  アガベ・シジゲラ
  synonym Agave filifera var. schidigera (Lem.) A.Terracc.
  synonym Agave filifera subs. schidigera (Lem.) B.Ullrich
 メキシコ(チワワ州、ドゥランゴ州、シナロア州、ソノラ州)原産。英名は century plant。センチュリープラントという名は、開花するまでに100年かかることを示唆している。標高900~2500mのオーク林内の、急峻な壁のある崖や開けた露出した場所に生える。アガベ・フィリフェラ(Agave filifera)に少し似るが、ほとんど、単生、ゆっくりと着実に吸芽を伸ばし、葉はA. filiferaよりもやや幅広である。一方、A. filiferaは枝分かれが激しい。
 茎のないロゼットを形成する小型または中型の多肉植物。ロゼットは幅60~90cm、高さ60cm。非常に対称的な形状で、まっすぐな葉はわずかに湾曲した葉を持つ個体群もあり、対称性を損なうことがある。葉は長さ30~45cm、最大幅2.5cm、縁はあらゆる方向に広がる薄く白色の縮れた繊維(糸状体)で装飾され、ときに非常に密につき、縁の鋸歯はないが、葉の先端の刺は非常に鋭く、葉の色は(同じ株内でも)暗緑色~青銅色がかった緑色まで様々で、非常に装飾的な白色の芽紋(bud imprints)が見られ、芽紋の色調は変化し、樹齢を重ねるにつれてより顕著になる。基部のロゼット葉の中央から、1本の太く直立した花茎が出て、3~3.5mの高さになり、先端近くで水平に枝分かれし、枝の先端に円錐花序状に密に花をつける。花は黄緑色~緑黄色(~濃紫色)、長さ5~7.5cm。毎年背の高い花穂を伸ばすものもあるが、通常は10~25年の間に一度だけ開花し、開花後に主幹は枯れる。根元の吸芽から新しい植物が成長するものもあるが、まれである。花期は晩春~初夏。
品種) 'Black Widow' , Durango Delight™ , 'Royal Flush' , 'Shira-ito-no-ohi' (v)白糸の王妃 , 'White Stripe' (v)

59 Agave schottii Engelm. アガベ・ショッティ
 アリゾナ州、メキシコ原産。英名はSchott's Century Plant , Shin Dagger , Amole , Amolillo originates。
 植物は無茎で、自由に吸芽を出す。ロゼットは単生または密に叢生し、長さ30~60cm×幅60~120cm。葉は大部分が直立し、基部近くで最も幅が広く、長さ20~40(~50)cm×幅0.7~2.5cm、葉身は黄緑色または濃緑色で、両面に目立つ白い芽紋が有または無、線形で堅く、上面は平らまたは先に向かってやや凹み、下面は基部に向かって凸形または深く凸形、縁は真っすぐで、糸状または無糸状、棘は無く、繊維は直立または広がり、まばらで、白色、糸状、脆く、葉の先は尖鋭形または長尖鋭形、刺は褐色または帯灰色がかった針状で、長さ0.8~1.9cm。花茎は高さ1.6~4 m。花序は穂状花序状またはほぼ穂状花序状~狭い総状花序状の円錐花序、先端1/4~1/2に緩く花がつく。苞は脱落性で狭三角形、長さ2~4cm。花序柄は長さ4cm以下。花は花房あたり1個または2~3(~6)個、直立し、長さ(2.9~)3~5cm。花被は黄色、花被筒部は漏斗形、長さ8~11(~14)mm×幅5~8(~13)mm、花被片は直立~内向きに曲がり、ほぼ等長、長さ(7~)11~16mm。雄しべはわずかに突き出る。花糸は花被筒の高い位置、筒部基部より6~13mm上の1~2段目に挿入され、直立し、黄色、長さ1.5~2.2cm。葯は淡黄色~濃黄色、長さ(7.5~)10~17mm。子房は長さ0.8~1.6cm、頸部は狭窄し、長さ3~9mm。蒴果は短い小花柄があり倒卵形、長さ1~2.2cm、先端は丸みを帯びる~嘴状。種子は長さ3~3.5mm。
品種) 'Cochise Stronghold Form'
59-1 Agave schottii var. schottii
 アリゾナ州、ニューメキシコ州、メキシコ(ソノラ州)原産。英名はSchott agave。標高900~2000mの砂利質~岩質の場所で、主に砂漠の低木林、草原、ビャクシンやオークの林に生える。
 葉幅0.7~1.2cm。葉身は黄緑色で両面に顕著な芽紋があり、縁は糸状体があり、先端の刺は帯灰色、弱く脆く、長さ0.8~1.2cm。花茎は高さ1.6~2.5m。花序は穂状花序状、花序柄は長さ2mm未満。花は花房あたり1個または2~3個、長さ2.9~4.2cm。花被筒部は長さ8~11(~14)mm×幅5~8mm、花被片は淡黄色。花糸は花被基部より6~13mm上に挿入される。子房は長さ0.8~1.5cm。2n=60, 120。花期は晩春~晩夏。

59-2 Agave schottii var. treleasei (Toumey) Kearney & Peebles

 アリゾナ州原産。英名はTrelease agave。標高1100~2000mの主に砂漠の低木林、草原、ジュニパーやオークの林地に生息する。
 葉幅1.2~2.5cm、葉身は濃緑色で芽紋がなく、縁には糸状体がなく、先端の刺は褐色で、太く硬く、長さ1.2~1.9cm。花茎は高さ2~4m。花序は匍匐状から狭総状花序状。花序柄は長さ0.4~4cm。花は1花房に2~6個つき、長さ3.5~5cm。花被筒部は約・長さ11mm×幅13mm、花被片は濃黄色。花糸は花被基部より8mm上に挿入される。子房は長さ1.6cm。花期は晩春~夏。
 Agave schottii var. treleasei は、A. chrysantha または A. palmeri と A. schottii var. schottii との交雑種起源である可能性がある。

60 Agave sebastiana Greene アガベ・セバスティアナ
  synonym Agave disjuncta Trel.
 メキシコ原産。英名はCedros Island Agave。北部のセドロス島でのみ自生が確認されている。Agave shawiiの類似種。  大型の多肉植物。短い茎をもち、ロゼットは直径約1.2mになる。葉は青灰色、硬い肉質、堅くまっすぐで、典型的には短く幅広い。刺は太く、開いた溝があり、沿下する。刺は大きく、基部から徐々に細くなる。花茎は非常に太く、三角状の密着した苞に覆われる。円錐花序は短く、堅く、花はほぼ水平の長い2次枝にほぼ頭状に密に房状につき、短い小花柄がある。花は漏斗形で大きい。雄しべは長く突き出し、花糸は花被筒の上部4分の1あたりに挿入される。蒴果は木質。 品種) 'Silver Lining'

61 Agave shawii Engelm. アガベ・シャウイー
 メキシコ、カリフォルニア州原産。英名はcoastal agave , Shaw's Agave。Shaw agave。標高0~100mの沿岸の断崖、沿岸セージの低木林とチャパラルに生える。
 植物は短い茎を持ち、葉腋から出芽し、断片化した仰向けクローンまたは時に単生のロゼットを形成し、幹は直立または横臥し、長さ2m 未満。ロゼットは単生または叢生、高さ8~200cm×幅100~250cm。葉は斜上し、長さ20~50cm×幅8~20cm、葉身は光沢のある明るい緑色から濃い緑色で、交差帯はなく、狭卵形で硬く、上面は平らまたは少なくとも先端に向かってわずかに窪み、下面は凸形、縁はまっすぐで刺があり、歯は単歯、明瞭で、ほとんどが長さ5~6mm、間隔1~2cm以上、先端の刺は暗い赤褐色~灰色、針状で、長さ2~4cm。花茎は高さ2~4m。花序は側枝が8~14本、水平~斜上し、花序の先端1/4~1/2を占め、長さ10cm以上。花は花房あたり35~75個、直立し、長さ6~10cm。花被は黄色~帯赤色で、特に萎縮時に顕著。花被筒部は広漏斗形、長さ12~19mm、幅15~22mm、花被片は直立し、長さは不等、長さ17~40mm。雄しべは長く突き出る。花糸は花被筒部中央付近に挿入され、直立し、黄色で、長さ4.3~7cm。葯は黄色、長さ20~35mm。子房は長さ3~5cmで、頸部はわずかに狭まり、長さ6~15mm。蒴果は短い小花柄があり、長倒卵形~長円形、長さ5.5~7cm、先端は短~長嘴状。種子は長さ4~7mm。2n=60。花期は冬~春中頃。  アガベ・シャウィは20世紀初頭、南カリフォルニアに豊富に生息していた。しかし、その後、無制限の採取と生息地の破壊により、個体数は大幅に減少した。1969年までに、カリフォルニア州では、ポイント・ロマ(サウスダコタ州デトロイト州モラン)の米海軍管轄区域内でのみ生息すると考えられていた。現在、在来個体群はティファナ北部のボーダー・フィールズ州立公園にのみ確認されているが、他の地域にも導入されている。
品種) 'Blue Flame'(A. shawii x A. attenuata)

62 Agave sisalana Perrine サイザル 
 メキシコ原産。中国名は剑麻 jian ma。英名はsisal(サイザル)。別名はサイザルアサ、サイザルソウ。
 茎は短く、太い。葉は普通、200~250個、花序が発達する前に基部のロゼットにつき、若い時に粉白を帯び、後に暗青緑色、剣形、真っすぐ、普通、長さ1~1.5m ×幅 10~15㎝、肉質、上面は凹面、下面は凸面、縁に刺は無く、まれに刺があり、先は真っすぐで、先端に赤褐色の2~3㎝の刺をもつ。円錐花序は長さ6m以下、丈夫、普通、花後に子球(bulblets)をつける。花は強い臭いがある。花柄は長さ5~10mm。花被は黄緑色。花被筒は長さ1.5~2.5㎝。花被片は倒卵状倒披針形、長さ1.2~2㎝×幅0.6~0.8㎝。雄しべは花被片の基部につく。花糸は黄色、長さ6~8㎝。葯は長さ約2.5㎝。子房は長円形、長さ約3㎝。花柱は細く、長さ6~7㎝。柱頭はわずかに頭状。蒴果は長円形、長さ約6㎝×幅2~2.5㎝。
品種) 'Hildana' , 'Marguerita Madness' , 'Mediopicta' , 'Variegata' (v) , 'Vegas Strip'

63 Agave sobria Brandegee アガベ・ソブリア
 メキシコ原産。ロレート南部、メキシコ湾沿岸のクエスタ・ラ・アグア・ベルデなどに生息するアガベ・ソブリア(亜種ソブリア)は植物標本が、アガベ・ギガンテンシス(Agave gigantensis)として保管され、アガベ・ギガンテンシスの記載が混同されきた。
 直径50~150cmの小型から中型のロゼットを形成し、通常は群生し、明るい粉白色の葉が少数つく。葉は線形~披針形、長く尖り、真っすぐ~反り返り、ほとんどが長さ45~80cm、幅5~10cmで、しばしば横縞(cross-banded)が入り、縁は波状~乳頭状で、長さ5~10mmの刺は真っ直ぐまたは反り返り、刺の基部は灰色で先端は赤みを帯び、葉先の刺は長さ3~6cmである。花茎は細く、時には湾曲し、時にはねじれ、平らからやや弓状になり、高さ2.5~4.0m、12~20本の短い側花序枝がある。
 これに対し、アガベ・ギガンテンシスは単生し、ロゼットが高さ約1m、幅約1.2mになる。葉は濃緑色で、大きく平滑で非常に厚く、縁には灰色と白色の大きな鋸歯があり、間隔は6~8cm、鋸歯は植物の中心から様々な方向へ伸びる。花期には葉は紫色や赤色に変わる。花茎は比較的太く、頑丈で直立し、高さ約4~5m。3亜種がある。
63-1 Agave sobria subsp. frailensis Gentry
63-2 Agave sobria subsp. roseana (Trel.) Gentry
63-3 Agave sobria subsp. sobria

64 Agave stricta Salm-Dyck アガベ・ストリクタ
 メキシコ原産。英名はhedgehog agave , globe agave , needle leaf agave , needle agave。流通名は吹上(フキアゲ)。メキシコ南部のプエブラ州とオアハカ州の熱帯乾燥林および低木林の開けた石灰質斜面に生える。ラテン語の種小名「stricta」は「直立した」という意味である。王立園芸協会のガーデンメリット賞を受賞している。
 常緑多肉植物、短く横臥し、枝分かれした主幹を持つ。成長すると針山のような子株をつける。各枝の先端には、高さ40~70cm、直径60~80cmのロゼットの葉が密集する。各ロゼットには葉が100枚以上つき、葉は長さ20~35cm、基部付近の幅1cm程度の細い線形、刺があり、先端は鋭く尖る。数年間成長した後、ロゼットから高さ2~3mにもなる花茎を伸ばし、赤紫色の花をつける。花期に葉が赤みを帯びることがある。花後にロゼットは枯れてしまう。
品種) 'Nana' , 'Live Wires', 'Rubura'赤吹上

65 Agave tenuifolia Zamudio & E.Sánchez アガベ・テヌイフォリア
 メキシコ原産。ケレタロ州北東部のハルパン・デ・セラ市とランダ・デ・マタモロス市でのみ知られている。
 多年生(multiannual)で無茎、根茎により叢生、または腋生で分枝する。ロゼットは緩く、高さ50~90cm、直径110~140cmである。葉はロゼットあたり30~90枚つき、長さ30~130cm、中央付近の最も広い部分の幅は2.5~5mmであり、基部はスプーン状で幅は16~44mmであり、長線形、明るい緑色~暗緑色または灰緑色であり、上下面に竜骨があり、断面は四角形であり、顕著な横紋があり、若いときは直立しているが、成長するにつれて弓状に湾曲し、縁は幅1mm未満で明るい緑色または無色になり、短い小鋸歯があり、縁の歯(小歯)は長さ0.5mm未満である。葉先端の刺は長さ4~10mm、円錐状錐形、上面は平らで下面は角張り、赤褐色~暗褐色。花序は長さ92~230cm。不稔(花のつかない部分)の花序柄は花茎の全長の1/2~2/3。下部の苞は長さ(40~)70~123(~250)mm、基部の幅(4~)8~10mm。花の苞は三角形、長さ8~18mm、基部の幅1~3mm、先端は長く細くなる。稔性の部分は穂状で、茎の全長の1/3~1/2。花は双生(対につき)、19~44対、軸上で広く離れ、大部分は1~3cm間隔で、筒形、緑黄色、長さ20~34mm。小花柄は長さ1mm。花芽は緑色。子房は鋭形の円筒形、長さ6~12mm、幅5~9mm、頸部はない。花被筒部は長さ12~18mm、幅5~9mm。花被片は緑色で縁が緑白色、長さ3~7mm、幅3~5mm、卵長円形、外花被片が内花被片より1~2mm長く、先は鈍形、僧帽形。花糸は長さ20~35mm、花被片の裂片の先端より短く突出し、花被筒の中央直下に挿入され、赤色または赤紫色。葯は長さ7~13mmで、中央にまたはわずかに偏心して付き、黄色または赤紫色。花柱は長さ19~25mmで、赤紫色。蒴果は長さ11~18mm、幅9~13mm、広三角形、基部は切形、先端は短い短突起形。種子は長さ3mm、幅4~5mm、半球形で黒色、平滑、縁は薄く、側面のへそに切れ込みがある。
品種) `Blue` , 'Snaggle Tooth'

66 Agave tequilana Weber  テキーラーリュウゼツラン
 メキシコ原産。英名はTequila agave , blue agave , Weber blue agave
  Agave angustifoliaによく似ているが、葉が大きく、茎が太く、花序は重く、花が大きく、筒が短い。メキソコのハリスコ州のテキーラ町で栽培さ、蒸留酒(焼酎)のテキーラが作られている。
 多年草、一回結実性、中型、直径1.2~1.8(~4)mのロゼットになる。花茎は5~8年で出て枯れるが、栽培ではしばしば花が咲くまでに10~25年(ときに50年)かかる。茎は短く、太く、長さ30~60㎝。葉は長さ90~120㎝×幅8~12㎝、披針形(槍形lance-shaped )、基部は狭く、厚くなり、上部は堅くなり、水平に保たれ、肉質、尖り、繊維状、一般的に粉白を帯び帯青色~銀緑色、ストレスのある状態では赤くなり、ときに混ざった状態がある。縁は刺があり、真っすぐ~波打ち~さざ波状、歯は薄~暗褐色、均等に間が開き1~2㎝離れ、歯は長さ3~6㎜、細い先端は曲がり、基部は低いピラミッド形、端の鋭い刺は暗褐色、長さ1~2㎝、上部は扁平又は開いた溝がある。アスパラガスのような花茎(quiote:アガベの花茎)は円錐花序状の散形花序、高さ5~6(~10)m、密に20~25個の枝をもち、大きな拡散性の2複合の散形花序、それぞれ数百個の花をつける。花は長さ68~75㎜、雄性先熟。花被の筒部は漏斗形、長さ10mm。花被片は等長、長さ25~28㎜、緑色、先端は紫色。雄性先熟。雄しべは6本、花被片の基部につく。子房は長さ32~38mm、下位、3区画に分かれ、頂部の花柱は長く、柱頭は湿り、首は短くくびれない。花期は夏。2n=60。
品種) 'Lemeno' , 'Tequila Sunrise' , 'Variegata'

67 Agave titanota Gentry アガベ・チタノタ
 メキシコ(オアハカ州、プエブラ州)原産。英名はchalk agave。流通名は鳳凰。標高500~1420mの砂漠の低木林や熱帯乾燥林の石灰岩の岩だらけの渓谷や斜面、石灰岩起源の褐色土壌に生える。野生種は蒸留酒メスカル(mezcal)の製造に利用され、しばしば観賞用としても栽培される。英国王立園芸協会のガーデン・メリット賞を受賞している。
 中型の常緑多肉植物。ロゼットは単生し、ときに子株ができ、高さ30~60cm、幅60~90cmに達する。葉はロゼットに20~30枚つき、幅広の白緑色、長さ30~60cm、基部付近の幅12~15cm、通常、基部に向かって細くなり、先端に向かって最も幅が広くなり、縁には様々な棘がある。成熟した植物は、太い花茎が高さ3~6mに直立し、長い穂状花序に多数の花が密につく。花は雄しべと雌しべが長く突き出し、黄色。花後に枯れるが、時折、基部から複数の幼植物が成長し、新たな植物として成長する。
品種) 'Caesar'シーザー, 'Blackwhale'黒鯨 , 'Dwarf'姫厳龍 , 'Felipe Otero' , 'Filigree', 'Solar Eclipse' , 'White Fire'白火焔 , 'White Ice', 'White Whale'白鯨 , hort. Fo 076(強刺アガベ)

68 Agave toumeyana Trelease アガベ・トウメヤナ
 アリゾナ州原産。
 植物は無茎で、自由に吸芽を出す。ロゼットは密に叢生し、高さ(3~)10~50cm×幅15~60]cm。葉は斜上~直立し、長さ(3~)9​​~46cm×幅0.5~2cm、葉身は薄緑色~黄緑色または暗緑色で両面に白い芽紋(bud-prints)があり、線形~線状披針形、堅く、上面は先に向が平らで、下面は基部に向かって凸形になり、縁は真っすぐで、まれに小歯があり、糸状の繊維は目立ち、白色で、湾曲し、まれにまばらまたは無く、歯は葉身の基部1/2または基部近くにまばらにあるかまたは無く、先は鋭形~長い尖鋭形、刺は褐色~帯灰色、錐形~糸状、長さ0.6~2cm。花茎は高さ1.5~3 m。花序は穂状花序状で、先端1/3に緩く~やや密に花がつく。苞は脱落性、線状三角形、長さ1~3.5cm。花序柄は長さ5mm以下。花は1個または2個、わずかに反り返り、長さ1.6~2.8cm。花被は緑白色、花被筒は鐘形、長さ3~4.5mm×幅6~10mm、花被片は直立または内向きに曲がり、ほぼ等長、長さ6.5~10mm。雄しべはわずかに突き出る。花糸は花被筒の基部から1~3.5mm上に挿入され、直立し、白色、長さ1.1~1.7cm。葯は淡黄色、長さ7~16mm。子房は長さ0.8~1.6cm、頸部はわずかに狭まり、長さ3~7mm。蒴果は無柄で長円形、長さ0.9~1.5cm、先に短い嘴がある。種子は長さ2.5~3mm。2変種がある。どちらの変種もアガベ・クリサンサ(Agave chrysantha)と交雑する。

68-1 Agave toumeyana var. toumeyanaアガベ・トウメヤナ・トウメヤナラ

 アリゾナ州原産。英名はToumey agave。標高600~1500mの開けた砂利地~岩質の石灰岩または玄武岩の斜面にある大部分は砂漠の低木林、チャパラル、ピニオンジュニパーの林に生える。
 成熟するとロゼットは40~70枚の葉をつけ、淡緑色~帯黄色、頂部は丸い。葉は長さ19~46cm、幅は1.2~2cm、縁に歯は無くまたは基部付近と基部にのみ歯がある。花は直径2.1~2.8cm、花被片は長さ8~10mm。花糸は長さ1.2~1.7cm、子房は長さ1~1.6cm。2n=120。花期は晩春~夏。

68-2 Agave toumeyana Trel. var. bella Breitung アガベ・トウメヤナ・ベラ

 アリゾナ州原産。英名はFairy Ring Agave。流通名は中乱雪。標高800~1700mの開けた砂利地~岩質の石灰岩または玄武岩の斜面の砂漠の低木林、チャパラル、ピニオンジュニパーの林に生える。
 成熟するとロゼットは100~200枚の葉がつき、淡緑色で頂部は平ら。葉は長さ(3~)9​​~20(~27)cm×幅0.5~1.2cm、縁は中ほどより下に鋸歯がある。花は直径1.6~2.1cm、花被片は長さ6.5~7mm。花糸は長さ1.1~1.3cm、子房は長さ0.8~1.2cm。2n=60。開期は晩春。
品種) 'Gila'

69 Agave vera-cruz Mill. アガベ・ベラクルーズ
 メキシコ原産。英名はVera cruz aloe , moon's agave , blue elephant aloe , railway aloe。標高1800~1900mの熱帯性乾燥低木地帯に生える。繊維を得るために栽培されている。インドに帰化し、荒れ地、道端、鉄道の土手などに生える。本種は、IUCNレッドリスト絶滅危惧種(2020年)において「野生絶滅」に分類された。
 常緑の茎が非常に短い多肉植物である。ロゼットは高さ120~180cm、直径200~340cmになり、成熟した植物には葉が約60~80枚つく。葉は長さ110~150cm、基部付近の幅は12~18cm。数年間成長した後、高さ6~8mにもなる花茎が伸びる、開花と結実後に枯死するが、たまに子株(offsets)をつけ、元のロゼット花が枯れた後も成長を続ける。原産地では開花までに約7~15年かかり、寒冷な気候ではさらに長くかかる。
品種) 'Variegata'

70 Agave vilmoriniana A.Berger アガベ・ビルモリニアナ
 メキシコ(ソノラ州、ドゥランゴ州、ハリスコ州、アクアスカリエンテス州)原産。英名はoctopus agave, midas agave。別名はタコアシアガベ、 オクトパスアガベ。標高600~1700mの暗い火山性の崖やバランカ(barrancas:深い峡谷)の急峻な岩山の斜面に広大なコロニーを形成する。サポゲニンの一種であるスミラゲネンの含有量が最も高い植物の一つであり、メキシコでは、この葉の繊維から石鹸を含むブラシが作られている。
 中型から大型の多肉植物。単生で、子株を形成しない。ロゼットは高さ90~120cm、幅150~200cm。葉は細長く、長さ90cm以下×幅7~10cm、多肉質で、淡青緑色~黄緑色、線状披針形、上面に深い溝があり、反り返り、弓状に曲がり、捻じれ、タコの足に似ているため、octopus agaveと呼ばれる。葉の縁はほぼ平滑、縁にわずかに柔らかい鋸歯があり、先端の棘は比較的柔らかい。花茎は太く、直立し、高さ3~6(~9)mになり、先に穂状花序をつける。花は黄金色。1回結実性、花後にはロゼットは枯れ、蒴果に多数の種子ができ、花茎に大量の栄養芽(小球茎:幼植物)がつく。幼植物は地面に落ちて根を張り、新しい植物として成長する。オクトパスアガベは成長が早く、植え付け後わずか4年で開花することもあるが、通常は7~10年かかる。花期は春~夏。
品種) 'Stained Glass' , 'Variegata'

71 Agave victorae-reginae T.Moore アガベ・ビクトラエレギナエ
 メキシコ原産。英名はRoyal Agave, Queen Victoria Agave。
 成長の遅い多年草、最も美しいリュウゼツランの1つ。品種が多く、縁が黒色のKing Ferdinand's agaveや縁が黄色のものもあり、普通は縁が白色である。流通名は笹の雪(ササノユキ)。
 ロゼットは球形、直径30~40(45)㎝、野生では50~70㎝になり(普通、高さ22㎝以下)、普通、単生、しばしばオフセットを出す(群生、匍匐茎がある)。葉は短く、長さ15~20㎝×幅3㎝以下、堅く、厚く、3稜形、暗緑色、鮮やかな白色の縁をもつ(目立つ縦の白色の斑紋がユニークで、わずかに隆起し、葉の小さな縁班状)、縁に刺はなく、短い黒色の刺が葉の先端だけにある。葉は密集して重なるようにつき、球形のロゼットになる。花序は穂状花序、高さ2~4m、様々な色の花を多数、対につけ、しばしば紫赤色。花期は夏。他のリュウゼツランと同じように、生育期間が長く、約20~30年に花をつけ、短い時間で枯れる。
品種) 'Albomarginata' , 'Bustamante' , 'Compacta' , 'Golden Princess' (v) , 'Golden Surprise' , 'Huasteca Canyon' , 'Kazo Bana' , 'Kizan' , 'Lemonade' , 'Marginata Pallida' , 'Mediopicta Aurea' , 'Minima' , 'Porcupine' , 'Ring of Gold' , 'Sasanoyuki Shiro Fukurin' , 'Shin Yukiyama' , 'Tora Fu' , 'Variegata'

72 Agave vivipara L. アガベ・ビビパラ
  synonym Agave bulbifera Salm-Dyck
  synonym Agave candelabrum Tod.
  synonym Agave cantala (Haw.) Salm-Dyck
 西インド諸島(アルバ、オランダ領アンティル)原産。英名はCaribbean agave。流通名は日閃光、薄葉竜舌蘭。インド、ネパール、パキスタン、バングラデシュンなどに帰化している。海抜0~200mまでの乾生低木地帯に生える。A. angustifoliaとよく似ている。
 無茎の、常緑多肉植物。ロゼットを作り、中程度の生育速度、高さ1m×直径1mまで成長し、ときに短い幹を発達させ、自由に弓状に曲がる。葉は狭線形~披針形、長さ40~75cm、先端の刺は長さ2.4~4cm、上面は平ら、縁の刺は黒色で、長さ2~5cm、黒色の三角状の基部から上向きに湾曲、蛇行、または反り返る。花茎は高さ3m以上に達し、苞は広がる。花は淡緑色、花被は先が薄黄色になり、花被片は長さ約2cm。蒴果はほぼ球形~広卵形、長さ3~5cm。開花後、花序の枝にしばしば多数の小球茎が生じる。  A. vivipara と A. angustifolia を別種とみなす研究者は、A. angustifolia の葉は細く、硬く直立し、棘は中程度に間隔を空け、球果ではなく蒴果を形成すると指摘している。A. vivipara の葉は短く反り返り、棘は短い間隔を空け、球果を有するとされていいる。(García-Mendoza and Chiang, 2003)。
 A. vivipara と A. angustifolia を 2 つの異なる種として扱う著者は、A. vivipara がリーワード諸島 (キュラソー島、アルバ島、ボネール島) およびベネズエラ沿岸の他の島々に生息する (Wijnands、1983) のに対し、A. angustifolia はアメリカ大陸に限定され (Gentry、1982; García-Mendoza 他、1993)、アンティル諸島に導入された (García-Mendoza および Chiang、2003) と考えている。[参考13] 品種) 'Marginata'

73 Agave weberi J.F.Cels ex J.Poiss. アガベ・ウェベリー
 メキシコ北東部および中部原産。フロリダ州、テキサス州に帰化、英名はMaguey Liso , Weber's Agave , Weber's Century Plant。別名は鳴神。標高100~300mの草や低木のある砂地に生える。観賞用、プルケ、繊維用などに頻繁に栽培されている。
 植物は茎が短く、普通吸芽をつけ、根茎を持たず、幹の長さは0.4~1m。ロゼット葉は束生せず、長さ120~140cm×幅200~300cm。葉は直立または反り返り、長さ110~160cm×幅12~18cm、葉身は緑色または灰緑色または黄緑色で、交差帯がなく、披針形で柔軟で、上面は凹面または少なくとも先端に向かって溝があり、下面はわずかに凸面、縁は真っすぐ、細かい繊維状になり、基部近くのみに微細な歯があるかまたは歯はなく、歯は1~2mmの単棘で、間隔は1cm未満。葉先端の刺は褐色~帯灰色、錐形、長さ3~4.5cm。花茎は高さ6.5~8m。花序は円錐花序であり開き、ときに小球根を持つ。苞は宿存し、三角形で長さ0.5~2cm。花序の側枝は15~25本で、水平またはわずかに斜上し、花序の先端1/3~1/2を占め、長さ10cm以上。花房あたり15~27個の花が直立し、長さ7~8cm。花被は黄色、花被筒部はつぼ形、長さ15~20mm、幅14~19mm、花裂片は直立し、等長で長さ20~24mm。雄しべは長く突き出る。花糸は花被筒部の中央付近に挿入され、直立し、黄色~黄緑色、長さ5.5~6cm。葯は黄色、長さ30~31mm。子房は長さ3.3~4cm、頸部は狭窄せず、長さ2~4mm。蒴果は短い小花柄があり、長さ5.5cmの長楕円形、先端は嘴状。種子は不明。花期は晩春~初夏。
品種) 'Arizona Star' , 'Jim Prine' , 'LimeLight' , 'Purple Heart' , 'Streaked' , 'Warlord'

74 Agave wocomahi Gentry アガベ・ワコマヒー
 メキシコ原産。英名はOjcome , Wocomahi Agave。標高1400~2500mの森林地帯や石灰岩の斜面に生える。
 中型から大型の多肉植物。この植物は子株を作らず、種子によってのみ繁殖する。ロゼットは直径1.5~2m、高さ0.8~1.3m、単生し、成熟すると陥没し開き、基部の葉が左右対称に開く。葉は幅広で肉厚、やや硬く、平滑、長さ30~90cm×幅9~25cm、披針形で、まれに卵形、基部に向かってやや狭まり、平らで、成長すると上向きから陥没し、暗緑色、灰緑色または粉白緑色、縁は真っすぐ~波状で、縁に長さ1~2cmの大きな暗褐色の鋸歯があり、不規則に曲がり、葉身中央より下ではしばしば下向きに曲がり、間に小さな鋸歯が不規則にあり、葉先端の刺は丈夫で、長さ3~6cm、通常は湾曲し、扁平または上面が空洞になり、短く~長く沿下する。花序は円錐花序で、燭台状(candelabra-like)、開き、高さ3~5mに達する。花茎は細く、中央部に伏した苞がつき、長さ15~20cm、上部1/3に8~15個の側花序がある。花は長さ65~85mm、黄色で直立する。子房は円筒形、長さ34~40mm、薄緑色。花被筒部は溝があり、漏斗形、薄黄色。花被片は長さ15~23mm、幅5mm、黄色で直立し、線形、先端はフード状で、外花被片はときに先端が赤く、内花被片はより短く、顕著な竜骨がある。花糸は長さ60~65mm、葯は黄色で大きく、長さ26~34mm。雌しべには大きな柱頭がある。自家不稔性で、交配受精が必要である。果実は細長い蒴果、長さ50~60mm×直径15mm以上。種子は長さ7mm×幅4.5~5mm、光沢のある黒色。
品種) 'Basaseachic'

75 Agave xylonacantha Salm-Dyck アガベ・キシロナカンンサ
 メキシコ原産。英名は saw leaf agave , shark tooth agave。
 直径最大180cmのロゼットを形成する。葉は剣形、長さ最大90cm、幅7.5cmに達し、先端には長さ約4~5cmの棘があ、葉の縁には、幅最大3cmの棘があり、縁が波打つような外観である。花茎は高さ3.3mに達する。花は直径3.5cmまでで、帯緑色の花被片を持つ。
品種) 'Blue'(葉が青緑色) , 'Frostbite'(縁に乳黄色の斑入り)

76 Agave x glomeruliflora (Engelm.) A.Berger
 メキシコ、テキサス州原産。英名はChisos Mountains Agave
 Agave havardiana と Agave lechuguillaの自然交雑種。
品種) 'Chisos Affair' , 'Guadalupe Mountains'

77 その他ハイブリッド
品種) 'Amigo Jambo' , 'Anderson' , 'Arctic Fox' , 'Aristocrat' , 'Aureo-Marginata' , 'Aztec King' , 'Azul' , 'Bad Hair Day' , 'Band on the Run' , 'Bellville' , 'Black Magic' , 'Blazing Saddles' , 'Bleached Blonde' , 'Bloodlines' , 'Bloodspot' , 'Blue Bola Select' , 'Blue Brian' , 'Blue Dart' , 'Blue Flame' , 'Blue Glow' , 'Blue Mammoth' , 'Blue Rapture' , 'Bluebell Giants' , 'Brian's Guadacolorata' , 'Cameron Blue' , 'Cappuccino' , 'Carl's Dwarf' , 'Carnival' , 'Catch a Wave' , 'Center of Attention' , 'Cherry Chocolate Chip' , 'Chisum' , 'Chunky Monkey' , 'Clusterfest' , 'Coffee Jitters' , 'Confederate Rose' , 'Cornelius' , 'Crazy Cowlick' , 'Crazy Horse' , 'Desert Dawn' , 'Desert Dragon' , 'Desert Love' , 'Dragon Toes' , 'Dreadlocks' , 'Durango Fandango' , 'El Chichon' , 'Electric Cheetah' , 'Emerald Giants' , 'Espresso' , 'Falling Waters' , 'Felipe Otero' , 'Femme Fatale' , 'Fiercely Fabulous' , 'Fountain Surprise' , 'Freckles and Speckles' , 'Frosted Elegance' , 'Funky Toes' , 'Gatorade' , 'Globe' , 'Golden Glow' , 'Goldstrike' , 'Green Bull' , 'Green Goblet' , 'Grey Gator' , 'Hacksaw' , 'Hammer Time' , 'Helen Wynans' , horrida 'Perotensis' , 'Huasteca Giant' , 'Inca Warrior' , 'Inkblot' , 'Iron Man') , 'Jaguar' , 'Joe Hoak' , 'Joe Hoak' (v) , 'Jumping Jacks' , 'Kaleidoscope' (v) , 'Kichijokan' , 'Kissho Kan' , 'Kissho Kan Nishiki' , 'La Escondida' , 'Lavender Lady' , lecheguilla 'El Paso' , 'Lemon Lime' , 'Leopoldii' , 'Little Penguins' , 'Logan Calhoun' , 'Macho Mocha' , 'Mako Shark' , 'Man of Steel' , 'Mateo' , 'Mayan Queen' , 'Mazatzal' , 'Mint Chocholate Chip' , 'Mission to Mars' , 'Moon Disc' , 'Moon Shadow' , 'Moonglow' , 'Mr. Ripple' , 'Mustard Shark' , 'My Dog Spot' , 'Navajo Princess' (v) , 'Night Owl' , 'Nizanda Warrior , 'Nova' , 'Oh Victory' , 'Ohi Raijin Fukurin Nishiki' , 'Painted Desert' , 'Painted Nails' , 'Parracolorata' , 'Pineapple Express' , 'Pineapress' , 'Pointed Traveler' , 'Praying Hands' , 'Purple People Eater' , 'Quasimoto Streaker' , 'Queen's Whalecome' , 'Racing Stripes' , Ray of Light = 'Agavws' (PBR) , 'Red Edge' , 'Red Margin' , 'Red Wing' , 'Reiner's Selection' , 'Ripple Effect' , 'Risner Bill' , 'Rosa Gorda' , 'Royal Spine' , 'Saltillo' , 'Sawtooth' , 'Sea Star' , 'Shadow Dancer' , 'Shadow Waltz' , 'Shaka Zulu' , 'Shark Bite' , 'Sharkskin' , 'Sharkskin Shoes' , shawii 'Marginata' , 'Silver Fox' , 'Silver Surfer' , 'Snow Glow' , 'Snow Leopard' , 'Sonoita Vineyards' , 'Sponge Paint' , 'Spot' , 'Spotify' , 'Spotty Dotty' , 'Stairway to Heaven' , 'Straight and Narrow' , 'Streaker' , 'Sumifu Ryu Setsukan' , 'Sun Glow' , 'Thunderbird' , 'Tooth Fairy' , 'Tradewinds' , 'Trio Sentinel' , 'Twisted Tongue' , 'Whale Tale' , 'X-Rays' , 'Yavapai County'

参考

1) Flora of China
 Agave
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=100796
2) Flora of North America
 Agave
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=100796
3) LLIFLE
 Agave potatorum Zucc.
http://www.llifle.com/Encyclopedia/SUCCULENTS/Family/Agavaceae/540/Agave_potatorum
4) Plants of the World Online | Kew Science
 Agave
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:325900-2
5) Cactus and Succulent Journal 93(3) p225-235(2021)
Agaves of Oaxaca: Part One Two Recently Described Species: Agave megalodonta and Agave quiotepecensis
https://www.researchgate.net/publication/354340891_Agaves_of_Oaxaca_Part_One_Two_Recently_Described_Species_Agave_megalodonta_and_Agave_quiotepecensis
6) Cactus and Succulent Journal 86(1):4-11 (2014)
 The Real Agave gigantensis in Baja California Sur, Mexico
https://www.researchgate.net/publication/265784032_The_Real_Agave_gigantensis_in_Baja_California_Sur_Mexico
7) Bradleya 34(34):200-216(2016)
 A review of Agave mitis (Asparagaceae/Agavaceae)
https://www.researchgate.net/publication/308985855_A_review_of_Agave_mitis_AsparagaceaeAgavaceae
8) Cactus and Succulent Journal 91(2):134-143(2019)
 Agave oteroi (Asparagaceae/Agavoideae)
https://www.researchgate.net/publication/333616566_Agave_oteroi_AsparagaceaeAgavoideae_a_new_species_from_North-central_Oaxaca_Mexico
9) FloraFinder.or
 Agave parrasana Berger
https://www.florafinder.org/Species/Agave_parrasana.php
10) Botany • 2022 Agave rosalesiir
 A New Species from the Mixteca Alta of western Oaxaca, Mexico
https://novataxa.blogspot.com/2024/05/inermes.html
11) Cactus and Succulent Journal 93(4) p273-2085(2021)
A cryptic new species of Agave (Asparagaceae/Agavoideae)and an amplied description of Agave tenuifolia
https://www.researchgate.net/publication/356876739_A_Cryptic_New_Species_of_Agave_AsparagaceaeAgavoideae_and_an_Amplified_Description_of_Agave_tenuifolia
12) Missouri Botanical Garden Annual Report, Vol.1911, p37-65
 The Agaves of Lower California
https://www.jstor.org/stable/pdf/2400113.pdf
13) CABI Compendium
 Agave vivipara (Caribbean agave)
https://www.cabidigitallibrary.org/doi/full/10.1079/cabicompendium.119789