ヤマゼリ 山芹

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Flora of Mikawa

セリ科 Apiaceae ヤマゼリ属

中国名 山芹 shan qin
学 名 Ostericum sieboldii (Miq.) Nakai
ヤマゼリ花
ヤマゼリ花
ヤマゼリ小総苞片
ヤマゼリ果実
ヤマゼリ
ヤマゼリ花序
ヤマゼリ葉
花 期 9~10月
高 さ 50~150㎝
生活型 多年草
生育場所 山野
分 布 在来種  本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア
撮 影 設楽町  14.9.23
若葉は普通のセリのように食べられる。全体に普通、無毛。茎は中空、無毛~わずかに毛がある。葉柄は長さ5~20㎝。葉鞘は三角状卵形。葉は2~3回3出複葉、長さ20~45㎝、幅17~40㎝。小葉は質が薄く、長さは5~12㎝、幅3~6㎝の長卵形~長楕円形、無柄~短柄、丸味を帯びた粗い鋸歯があり、ときに鋸歯の縁に短毛がある。花は白色、花弁は先が内側に曲がる。大散形花序の柄は6~10本、やや不同長、4~5綾形で、稜は鋭く、ときに稜上に短毛がある。総苞片(大花序の苞片)は少数。小総苞片(小花序の苞片)は狭披針形、無毛、縁が膜質。萼歯はほぼ正3角形、果時まで宿存する。果実は2個の分果からなり、長さ5~7㎜のわずかに扁平な卵状楕円形。果実の翼(側隆条=側面の隆起線)は狭く、3本の背隆条(背面につく隆条線)もそれより狭い翼となる。2n=22。
 葉の縁及び脈上に短毛が散生するものはケヤマゼリという。

ヤマゼリ属

  family Apiaceae - genus Ostericum

 多年草。 茎は中空、縦肋がある。葉柄は鞘が膨らむ。葉身は2~3回3出羽状複葉。複散形花序、頂生および側生。苞はほとんどなく、披針形または線状披針形。小苞は数個、線形~線状披針形。萼歯は明瞭、三角形または卵形。果実は長円状卵形、基部は心形、背側が扁平、表面は多数の凸状の光沢のある斑点で覆われる。背隆条は目立ち、側隆条は広く薄い翼をもつ。油管は各溝に1~3個、合成面に2~8個。中果皮は薄く、成熟した果実は中空。種子は表面が平坦。分果柄(carpophore)は基部まで2分岐。
 世界に約10種あり、中央および東アジア、東ヨーロッパに分布する。中国には7種がある(3種が固有種)。

ヤマゼリ属の主な種と園芸品種

1 Ostericum florentii (Franch. et Sav. ex Maxim.) Kitag. ミヤマニンジン 深山人参

 日本固有種(本州の関東地方、中部地方の山地)。亜高山帯の草地に生える。
 多年草。高さ20~50㎝。地下に根茎があり、根は細くて長い。茎は細く、中部で枝分かれする。葉は2~3回羽状複葉。小葉は細かく切れ込み、裂片は披針形~線形で、頂裂片は側裂片より長い。茎頂および枝先に小さな複散形花序をつける。総苞片、小総苞片はともにあり、線形。花は白色の5弁花。果実は倒卵状円形、分果の背隆条は線状かまたは狭い翼になり、側隆条は薄くて広い翼になる。油管は背隆条の各溝に1個、合生面に2個ある。種子は熟すと果皮と離れる。花期は7~8月。

2 Ostericum grosseserratum (Maxim.) Kitag. ニオイウド 匂独活
 朝鮮、中国(安徽省、福建省、河北省、河南省、江蘇省、吉林省、遼寧省、青海省、陝西省、山西省、四川省、浙江省)、モンゴル原産。中国名は大齿山芹 da chi shan qin。標高300~2400mの草地の斜面、牧草地、川岸に生える。すべての部分に芳香油が含まれ、根には薬効があるとされる。一部の地域では、伝統的な中国薬「杜仲」の代用品として使用される。
 高さ80~120㎝。根は円筒形、褐色、単純または分枝する。茎は細い肋があり、基部は紫緑色、上部で分枝する。根生葉と下部の茎葉の葉柄は長さ4~18㎝、鞘は狭卵形、縁は白色の膜質。葉身は広三角状卵形、2~3回3出羽状複葉、一次羽片と二次羽片は小葉柄がある。小葉はほぼ無柄で、広卵形~菱状卵形、長さ2~5㎝×幅1.5~3㎝、基部は楔形、縁は2~4裂し、粗い白色の微突形の歯があり、先は鋭形~長い尖鋭形、両面の脈に沿って微細剛毛がある。散形花序は直径2~10㎝。苞は4~8個、線状披針形~披針形、長さ5~8㎜。大散形花序の柄は6~14本、長さ1.5~3㎝、不等長、ザラつく。小苞は5~10個、錐形~線状披針形。萼歯は三角状卵形、先が鋭形。花弁は白色、倒卵形、基部には爪部がある。果実は広楕円形、長さ4~6㎜×幅4~5.5㎜、背隆条は突出し、側隆条は広い翼状。油管は各溝に1個、合成面に2個。花期は7~9月。果期は8~10月。n=9。

3 Ostericum maximowiczii (F.Schmidt) Kitag. ホソバセンキュウ 細葉川芎

 朝鮮、中国(黒龍江省、吉林省、四川省)、サハリン、ロシア原産。中国名は全叶山芹 quan ye shan qin。標高2200~2300mの森林、草原、湿地、川岸に生える。
 長さ40~100cm。根茎は目立たないか、または細く匍匐する。茎は太さ2~5mm、薄く稜があり、上部でまばらに分枝し、無毛またはまばらに微細剛毛がある。根生葉および下部の茎葉は葉柄があり、葉柄は長さ3~10㎝、鞘は狭い。葉身は三角状卵形、長さ7~16㎝×幅5~13㎝、2~4回3出羽状複葉。最終裂片は線形~卵状披針形、長さ1~4㎜×幅0.5~0.9㎜、無毛または脈に沿って微細剛毛がある。中部および上部の茎葉は小さくなり、鞘は帯紫色、膨らむ。散形花序は直径3.5~7㎝、苞は1~3個、広披針形、長さ5~8㎜、縁は薄膜質。大散形花序の柄は10~17本、微細剛毛がある。小苞は5~7個、線状披針形、尖鋭形。小散形花序は花が10~30個つく。小花柄は無毛。萼歯は広三角状卵形、微細剛毛がある。花弁はほぼ円形、基部には爪部がある。果実は広卵形、長さ4~5.5㎜×幅3.5~5㎜、背隆条は突出し、縁の隆条は広い翼状、果体より幅が広い。油管は各溝に1個、合成面に2~4個。花期は8~9月。果期は9~10月。

3-1 Ostericum maximowiczii var. australe (Kom.) Kitag. コバノセンキュウ 小葉の川芎

 朝鮮、中国(黒龍江省、吉林省)、ロシア原産。中国名は大全叶山芹 da quan ye shan qin。森林、湿地に生える。
 葉の最終裂片は幅5~9㎜。

3-2 Ostericum maximowiczii var. filisectum (Y.C.Chu) R.H.Shan & C.Q.Yuan

 中国(黒龍江省)、ロシア原産。中国名は丝叶山芹 si ye shan qin。森林、湿地、川岸に生える。
 葉軸、葉柄、小葉柄には関節がある。
3-3 Ostericum maximowiczii var. maximowiczii
  synonym Ostericum praeteritum Kitag. チョウセンノダケ

  synonym Ostericum sieboldii var. praeteritum (Kitag.) C.C.Huang

  synonym Ostericum viridiflorum var. praeteritum (Kitag.) Y.H.Huang ex Y.J.Chen

 朝鮮、中国(黒龍江省、吉林省 [韓国、ロシア]。)、サハリン、ロシア原産。中国名は全叶山芹 quan ye shan qin。森林、湿地に生える。
 葉の最終裂片は線形または線状披針形、幅は1~4㎜。n=11。
※チョウセンノダケはsynonymとされている。葉の裂片の幅が広い。  中国名は狭叶山芹 xia ye shan qin。小葉は無柄、楕円形又は菱状卵形、長さ2.5~8㎝×幅1~3㎝、基部はくさび形。

4 Pachypleurum muliense R.H.Shan & F.T.Pu

  synonym  Ostericum maximowiczii var. alpinum C. Q. Yuan & R. H. Shan

 中国(四川省)原産。中国名は高山全叶山芹 gao shan quan ye shan qin。標高2200~2300mの山岳地帯の草原に生える。Flora of ChinaではOstericum maximowicziiの変種とされる。
 根茎は目立たず、根は細く、褐色。大散形花序の柄は10本未満。

5 Ostericum praeteritum Kitag. チョウセンノダケ 朝鮮野竹

  synonym Ostericum koreanum sensu Kitag, excl. basion.

  synonym Ostericum viridiflorum (Turcz.) Kitag. var. praeteritum (Kitag.) Y.H.Huang ex Y.J.Chen

  synonym Ostericum sieboldii (Miq.) Nakai var. praeteritum (Kitag.) Y.Huei Huang

 朝鮮、中国(吉林省、黒龍江省、内モンゴル自治区)原産。中国名は狭叶山芹 xia ye shan qin。森林や森林近くの草原に生える。POWOではOstericum maximowiczii var. maximowicziiのsynonymとされ、中国ではOstericum sieboldii var. praeteritum Kitag.とされている。
 Ostericum sieboldiiとの主な違いは、葉が通常より密集し、ほとんどの葉の幅がより狭く、最下部の羽片が著しく短く、最終裂片が通常無柄または短い柄を持ち、楕円形、長楕円形またはほぼ菱形、長さ2.5~8㎝×幅1~3㎝、先は鋭形~尖鋭形、基部は通常楔形。

6 Ostericum sieboldii (Miq.) Nakai ヤマゼリ 山芹
 本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は山芹 shan qin。若葉は普通のセリのように食べられる。山野に生える。
 多年草、高さ50~150㎝。全体に普通、無毛。茎は中空、無毛~わずかに毛がある。葉柄は長さ5~20㎝。葉鞘は三角状卵形。葉は2~3回3出複葉、長さ20~45㎝、幅17~40㎝。小葉は質が薄く、長さは5~12㎝、幅3~6㎝の長卵形~長楕円形、無柄~短柄、丸味を帯びた粗い鋸歯があり、ときに鋸歯の縁に短毛がある。花は白色、花弁は先が内側に曲がる。大散形花序の柄は6~10本、やや不同長、4~5綾形で、稜は鋭く、ときに稜上に短毛がある。総苞片(大花序の苞片)は少数。小総苞片(小花序の苞片)は狭披針形、無毛、縁が膜質。萼歯はほぼ正3角形、果時まで宿存する。果実は2個の分果からなり、長さ5~7㎜のわずかに扁平な卵状楕円形。果実の翼(側隆条=側面の隆起線)は狭く、3本の背隆条(背面につく隆条線)もそれより狭い翼となる。2n=22。花期は9~10月。
6-1 Ostericum sieboldii (Miq.) Nakai f. hirtulum (Hiyama) H.Hara ケヤマゼリ 毛山芹
 葉の縁及び脈上に短毛が散生するもの。

6-2 Ostericum sieboldii (Miq.) Nakai f. roseum Hiyama ハナヤマゼリ 花山芹

 山梨県北都留郡上野原町鶴島で発見されたもの。
 ヤマゼリで鮮かな淡紅紫色の花のもの、爪部を除けば花弁全体が濃淡のない同一色調で発色する。

7 Ostericum viridiflorum (Turcz.) Kitag. ミドリノダケ 緑野竹
 中国(黒竜江省、吉林省、遼寧省)、ロシア原産。中国名は绿花山芹 lü hua shan qin。標高800~1100mの湿った牧草地、川辺、小川の岸辺に生える。若い植物は春野菜として食べられる。
 高さ0.5~1m。根は円錐形で黄褐色、分枝する。茎は紫緑色で角(かど)が鋭く、軟毛がある。葉柄は長さ約10㎝、断面が鋭い三角形、鞘は三角形卵形。葉身は三角状卵形、長さ10~15㎝×幅15~20㎝、2回羽状複葉、羽片は長い小葉柄がある。小葉はほぼ無柄、卵形または長円形、長さ4~7(~10)㎝×幅2~4(~6)㎝、基部は切形または斜めの広楔形、縁には白色の尖った鋸歯があり、先は尖鋭形、下面の脈がザラつく。中央の散形花序は幅4~9㎝、花序柄は非常に短く、側方の散形花序は対生または輪生(cyclic)、花序柄は長く、ザラつく。苞は2~3個、披針形、長さ約1㎝。大散形花序の柄は10~18本、長さ1~2㎝、不均等、微細剛毛がある。小苞は3~9個、線状披針形。小散形花序には花が10~20個つく。小花柄は微細剛毛がある。萼歯は卵形。花弁は緑色または緑白色、卵形。果実は楕円形、長さ4~6㎜×幅2.5~4㎜、背隆条は鋭く顕著で、側隆条は幅広、油管は各溝に1個、合成面に2個。花期は7~8月。果期は8~9月。n=11。

参考

1) Flora of China
 Ostericum
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=123357
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Ostericum
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:40324-1
3) World Flora Online
 Ostericum
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000027411
4) 植物研究雑誌 J. Jpn. Bot. 38(3): 86–86(1963)
 檜山庫三 : バラ色のヤマゼリ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_038_86_86.pdf
5) 植物研究雑誌 J. Jpn. Bot. 76(6): 307–320(2001)
 山崎敬 : 日本のセリ科植物Ⅲ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_076_307_320.pdf