タンポポ(蒲公英)

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Flora of Mikawa

キク科 Compositae タンポポ属

 在来のタンポポ(ニホンタンポポ)は分布地域によりエゾタンポポ、カントウタンポポ、、トウカイタンポポ(ヒロハタンポポ)、カンサイタンポポなどと呼ばれ、分類されてきた。分布の重なる地域では中間型も存在する。この分類には下記のように総苞片が重要ポイントとなっている。三河地域はトウカイタンポポの分布域にあたる。
 外来種のセイヨウタンポポは、在来種より花期が長く、単為生殖し、繁殖力が強いため在来種が減っているという報告が多数ある。特にカントウタンポポの減少が顕著なようである。外観的にはセイヨウタンポポは総苞外片が蕾の時から下向きに反曲することで区別できる。三河地域でも市街地ではほとんどセイヨウタンポポであるが、郊外ではトウカイタンポポがほとんどであるところも多い。しかし、セイヨウタンポポと在来タンポポの交雑がおき、外観がセイヨウタンポポでも純粋なセイヨウタンポポは少ないとの報告がある。
 シロバナタンポポは西日本を主の分布域とする在来種であるが、三河地方のものは、セイヨウタンポポと同じように市街地に多く、人為的に持ち込まれたものがほとんどだと考えられる。
 アカミタンポポはセイヨウタンポポと同様に外来種である。セイヨウタンポポに似て、全体に小型である。痩果が赤褐色で、小さい。
① トウカイタンポポ T.longeappendiculatum Nakai
 総苞外片、内片とも大きな角状突起がある。
 総苞外片の幅が狭く、内片と同幅
 総苞外片の長さは内片の2/3程度
② カントウタンポポ T.platycarpum Dahlst..
 総苞外片、内片とも角状突起がある。角状突起はトウカイタンポポより小さい。
 総苞外片の幅が内片の幅よりやや広い。
 総苞外片の長さは内片の1/2から2/3
③ カンサイタンポポ T. japonicum Koidz
 総苞外片、内片とも角状突起がほとんどない。
 総苞外片の幅が狭く、内片と同幅。
 総苞外片の長さは内片の1/2以下
④エゾタンポポ
 総苞外片、内片とも角状突起がほとんどない。
 総苞外片の幅が内片より広い。
 総苞外片の長さは内片の約1/2

三河地域の在来タンポポ(トウカイタンポポ)
 トウカイタンポポの標準タイプといえるものは少なく、様々である。トウカイタンポポの特徴の1つである総苞片の角状突起は内片、外片ともに大きくはっきりしているものが多いが、小さいものもある。総苞外片の幅は内片と同幅や2倍ほどあるものなど変異が多い。総苞外片の長さは、総苞からとり離してみると、内片の1/2~1/1であり、2/3程度のものが中間である。総苞外片は総苞にほとんど接してつくのが普通とされているが、やや離れているものも多く、横向きに開いているものも見られる。総苞の幅も場所ごとに異なり一定しない。葉の形は変化が多く、鋸歯の細かいものやほとんどないものが混在することも多い。花粉から判断すると①~④、⑦⑧がトウカイタンポポであり、⑤が雑種であった。⑥は未確認。総苞外片が開いているだけでは雑種とは言い切れない。

トウカイタンポポの総苞


トウカイタンポポの総苞1 トウカイタンポポの総苞2 トウカイタンポポの総苞3
①角状突起がやや小さく、外片の幅が広く、総苞の幅が狭い ②角状突起が小さく、外片と内片の長さが同長。総苞の緑色が濃い ③角状突起が大きく、外片の幅が広く、総苞の幅も広い
トウカイタンポポの総苞4 トウカイタンポポの総苞5 トウカイタンポポの総苞6
④角状突起が大きく、外片の幅が狭く、外片の長さが内片の1/2~2/3 ⑤外片の一部が下向きに反曲する。 ⑥外片が開出し、内片の角状突起が小さい。
トウカイタンポポの総苞7 トウカイタンポポの総苞8 シロバナタンポポの総苞1
⑦角状突起が大きく、外片が開出してやや下向きに曲がる。 ⑧角状突起が大きく、外片がやや下向きに曲がる。開花期 ⑨シロバナタンポポの総苞
外片が短く、角状突起が大きい。

花粉の顕微鏡観察


トウカイタンポポ③の花粉 トウカイタンポポ⑤の花粉 セイヨウタンポポの花粉
トウカイタンポポ③の花粉
④⑦⑧の花粉も同様
トウカイタンポポ⑤の花粉(雑種) セイヨウタンポポの花粉

トウカイタンポポの総苞片


 総苞外片と総苞内片をとりはずして比較した。
トウカイタンポポの総苞片1 トウカイタンポポの総苞片2 トウカイタンポポの総苞片の角状突起2
外片が内片の1/2 外片が内片の2/3~同長 総苞片の角状突起

三河地方のセイヨウタンポポ


 豊橋市内などの市街地や郊外でセイヨウタンポポを採取して観察した。市街地ではほとんどセイヨウタンポポばかりであり、郊外では、セイヨウタンポポとトウカイタンポポが混成していた。総苞外片の長さは総苞内片の1/2~2/3の長さで、総苞外片は波打つように横向き~下向きに曲がって先がやや持ち上がる。曲がる角度は上から90度~180度でばらつきがあり、あまり下向きにならないものも多かった。これは市街地のものも同じである。観察したものすべて、大きさに違いはあるものの総苞内片の先がくちばし状に曲がり、総苞外片の先の表面にこぶ状の小さな突起が見られた。
セイヨウタンポポの総苞7 セイヨウタンポポの総苞片 セイヨウタンポポの総苞外片の突起
セイヨウタンポポの総苞 セイヨウタンポポの総苞片 セイヨウタンポポの総苞外片の突起

痩果の比較


 タンポポの痩果を大きい順に並べて比較した。シロバナタンポポの痩果が最も大きく、アカミタンポポが最も小さい。トウカイタンポポの痩果はセイヨウタンポポの痩果より幅が広い。トウカイタンポポとセイヨウタンポポは長さがほぼ等しいが、総苞外片が短いものや、開出ぎみのものは、セイヨウタンポポより痩果が短いものも多い。痩果の色はシロバナタンポポやセイヨウタンポポに比べ、トウカイタンポポの痩果の方がはっきり淡色である。中の種子を比べるとトウカイタンポポだけ形が違い、幅が広く、種子の頭部にある膜の幅が広い。
タンポポの痩果の比較

タンポポの種子の比較