タブノキ 椨の木

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Flora of Mikawa

クスノキ科 Lauraceae  タブノキ属

別 名 イヌグス、イヌクス
中国名 红楠 hong nan
学 名 Machilus thunbergii Sieb. et Zucc.
タブノキの花序の蕾
タブノキの花横
タブノキの腺体
タブノキ芽
タブノキ未熟な果実
タブノキ熟した果実
タブノキ種子
タブノキの幹
タブノキ
タブノキ花序
タブノキの花
タブノキ葉表
タブノキの葉裏
タブノキの葉裏拡大
花 期 4~6月
高 さ 15~20m
生活型 常緑高木
生育場所 海岸の林内、林縁
分 布 在来種   本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾
撮 影 鳳来寺山  03.8.2笠山  06.6.25
沿海地の極相林(樹種の構成がさほど変化しない状態になった林)の代表的な高木。
 樹皮は淡褐色~褐色の平滑、皮目が散在する。葉は互生し、長さ4.5~9(13)㎝、幅3~6㎝の倒卵状長楕円形、枝の先端に集まってつき、縁には鋸歯がなく、革質で厚く、光沢がある。葉裏は灰白色。葉柄は長さ1~3.5㎝、枝先の円錐花序に多数の花をつける。小花柄は長さ6~9㎜、赤くなることも多い。花は両性、直径約1㎝。花被片は黄緑色、6個、長さ約5㎜、内面に細毛があり、幅の広い内花被片3個の毛が多い。雄しべは9個。葯は黄色、葯室は4個。花糸は扁平で太い。雌しべ1個、蕾の頃は雄しべと同長であり、開花すると雄しべが長くなり、内側の3個の雄しべの間に隠れる。橙黄色の有柄の腺体が9個あり、内側の3個は腺体になった仮雄しべであり、腺体がスペード形。果実は直径8~9㎜、ほぼ球形の核果、花被が残り、光沢のある緑色から次第に黒紫色となって光沢がなくなり、8~9月頃に熟す。
 ヒメユズリハは葉裏の網状脈が明瞭。花が紫褐色。果実が球形で、冬に熟す。

タブノキ属

  family Lauraceae - genus Machilus

 常緑高木又は低木。葉は互生し、全縁、羽状脈。花序は普通、円錐花序、頂生、類頂生、又は小枝の基部近くから生じる。花序柄があり、まれに花序柄がない。花は両性、小又は大。花被筒は短い。花被片は6個が2列につき、等長~ほぼ等長、又はたまに、外側の花被片が内側の花被片より明瞭に小さくなり、普通、宿存し、まれに脱落性。稔性の雄しべは9個、3列につく。葯は4室。雄しべの1列目と2列目は腺がなく、葯は内向き。3列目の雄しべは腺があり、葯は外向き又は横向きi、腺は有柄又は無柄。仮雄しべは4列目につき、矢じり形。子房は無柄。柱頭は小さく、皿形又は頭形。果実は肉質、球形、まれに楕円形~長円形、花被片が基部に宿存し、後屈する。果時に花柄は大きくならないか又はわずかに大きくなる程度。
 世界に約100種があり、アジア南部~南東部の熱帯及び亜熱帯63に分布する。63種が中国の固有種。

タブノキ属の主な種と園芸品種

1 Machilus boninensis Koidz.  オガサワラアオグス 小笠原青楠
 小笠原諸島原産。別名はテリハコブガシ、ムニンイヌグス。
小笠原諸島にはタブノキ属の固有種が広く分布し、オガサワラアオグス(M. boninensis)、コブガシ(M. Kobu) 、タブガシ(M. pseudokobu)の3種に分類されているが、3種の中間型や、同種であっても列島間で形態が一部異なっている。詳細な形態分類では5グループあるとも報告されている。(参考3)。
2 Machilus japonica Siebold et Zucc. ex Blume  アオガシ 青樫
 日本(本州の関東・中部地方以西、四国、九州)、朝鮮、台湾原産。中国名は长叶润楠 chang ye run nan。別名はホソバタブ。広葉樹林に生える。
 常緑高木。小枝は太い。芽鱗は覆瓦状、毛があり、ほぼ無毛~無毛になる。葉柄は太く、長さ0.8~3㎝。葉身は光沢があり、長円状倒披針形、卵状倒披針形、又は倒披針形、長さ10~22㎝×幅2.5~8.5㎝、革質~薄い革質、下面は微軟毛があるか無毛 、上面は無毛、中脈は下面に隆起し、上面で凹み、側脈は7~15対、細脈は両面で不明瞭かわずかに明瞭、葉の基部はくさび形~漸尖形、先は尖鋭形、鋭形、又は短い尾状。花序は小枝の基部に生じ、長さ20㎝以下、無毛。花序柄は長さ3~15㎝。総苞片は緑黄色又は帯薄赤色。花柄は長さ0.4~1㎝。花被片は外側が無毛~ほぼ無毛、内側に毛がある。雄しべは無毛。3列目の花糸は長さ約2.3mm、有柄の腺があり、柄には毛がある。子房と花柱は無毛。柱頭は頭状。果実は扁球形、直径約1.2㎝、花被片が宿存し、後屈する。花期は1~4月。果期は8~10月。
2-1 Machilus japonica Siebold et Zucc. ex Blume var. kusanoi (Hayata) J.C.Liao  オオバタブ 
  synonym Machilus kusanoi Hayata


3 Machilus kobu Maxim.  コブガシ 瘤樫
 小笠原諸島~火山列島(硫黄島)

4 Machilus konishii Hayata  コニシタブ 
 台湾原産。中国名は台湾赛楠 tai wan sai nan。

5 Machilus obovatifolia (Hayata) Kaneh. et Sasaki  ヒメタブ 
 台湾原産。中国名は倒卵叶润楠 dao luan ye run nan。

6 Machilus philippinensis Merr.  ウスバタブ ⇒ニッケイ属(Cinnamomum)
  synonym Machilus acuminatissima (Hayata) Kaneh. ニッケイ属
  synonym Cinnamomum philippinense (Merrill) C. E. Chang  台湾、フィリピン原産。中国名は菲律宾樟树 fei lü bin zhang shu。別名はアリサンタブ。

7 Machilus pseudokobu Koidz.  タブガシ 椨樫
 小笠原諸島~火山列島(硫黄島)原産。別名はテリハコブガシ。

8 Machilus thunbergii Siebold et Zucc.  タブノキ 椨の木
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は红楠 hong nan。別名はイヌグス、イヌクス。
 常緑高木、高さ15~20m。樹皮は淡褐色~褐色の平滑、皮目が散在する。葉は互生し、長さ4.5~9(13)㎝、幅3~6㎝の倒卵状長楕円形、枝の先端に集まってつき、縁には鋸歯がなく、革質で厚く、光沢がある。葉裏は灰白色。葉柄は長さ1~3.5㎝、枝先の円錐花序に多数の花をつける。小花柄は長さ6~9㎜、赤くなることも多い。花は両性、直径約1㎝。花被片は黄緑色、6個、長さ約5㎜、内面に細毛があり、幅の広い内花被片3個の毛が多い。雄しべは9個。葯は黄色、葯室は4個。花糸は扁平で太い。雌しべ1個、蕾の頃は雄しべと同長であり、開花すると雄しべが長くなり、内側の3個の雄しべの間に隠れる。橙黄色の有柄の腺体が9個あり、内側の3個は腺体になった仮雄しべであり、腺体がスペード形。果実は直径8~9㎜、ほぼ球形の核果、花被が残り、光沢のある緑色から次第に黒紫色となって光沢がなくなり、8~9月頃に熟す。花期は4~6月。

9 Machilus zuihoensis Hayata  ニオイタブ 
 台湾原産。中国名は香润楠 xiang run nan。

9-1 Machilus zuihoensis Hayata var. mushaensis (F.Y.Lu) Y.C.Liu  ムシャタブ
  synonym Machilus mushaensis F. Y. Lu
 台湾原産。中国名は青叶润楠 qing ye run nan

参考

1) Flora of China
 Machilus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=119262
2) Kew Science
 Machilus
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:21446-1
3) 小笠原研究年報 (31), 77-89, 2007
 小笠原産タブノキ属植物の形態変異について
https://tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp