スズメノテッポウ 雀の鉄砲

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Flora of Mikawa

イネ科 Poaceae スズメノテッポウ属

中国名 看麦娘 kan mai niang  
英 名 orange foxtail, short-awn foxtail
学 名 Alopecurus aequalis Sobol var. amurensis(Komar.)Ohwi
Alopecurus aequalis Sobol. (広義)
スズメノテッポウの穂
スズメノテッポウの葉
スズメノテッポウの葉舌
スズメノテッポウの小穂
スズメノテッポウの果実
スズメノテッポウ
スズメノテッポウ小穂
花 期 4~6月
高 さ 20~40㎝
生活型 1,2年草
生育場所 水田、畔、畑
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、モンゴル、ロシア、中央アジア、西南アジア、ヨーロッパ、北アメリカ
撮 影 幸田町  07.5.4
スズメノテッポウは生育場所で「水田型」と「畑地型」の2タイプに分けられる。「水田型」は自家受粉し、大型(花序幅:5~7㎜、小穂長:3~3.5㎜)のタイプ、「畑地型」は小型(花序幅:3~5㎜、小穂長:2~2.7㎜)の他家受粉するタイプである。水田は稲作に合わせて一定の環境が保たれるため、自家受粉するタイプができたものと考えられている。
 この説によると自家受粉する「水田型」を狭義のスズメノテッポウ var. amurensis とし、「畑地型」をノハラスズメノテッポウ var. aequalis と2変種に分類する。
 小穂の長さで分けられるとしているが、判別は簡単ではない。水田の中でも大きい株、小さい株があり、水田への進入路では畑地型より花序幅が小さいものも普通に見られ、小穂も小さい。また、畑でも水田でも花序の長さ5.0㎝幅4.5㎜、小穂の長さ2.9~3㎜の中間の大きさのものもある。
 【広義のスズメノテッポウ】
 葉舌は長さ3~4㎜。花序は長さ3~8㎝、幅3~7㎜の円柱状で小穂は密集してつく。小穂は長さ2~4㎜の広卵形、1小花。苞頴は2個とも同形で、3脈があり、斜上する長毛がある。苞頴の基部はわずかに合着し、小花を包み込んでいて中の護頴がわずかに見える程度。突き出て見える葯(やく)は初めは白色に近く、花粉を出して黄~黄褐色に変わる特徴がある。護頴は苞頴と同長、背面の中央のやや基部寄りから芒を出す。芒は長さ約3㎜で、小穂の外へ0.5~1.5㎜出る程度である。内頴は無い。雄しべは2~3個(普通3個といわれている。)。果実は長さ1~1.4㎜、扁平、暗灰色。2n=14
 類似のセトガヤの芒は長さ約1㎝あり、小穂の外へつき出して、目立つ。また、セトガヤの葯の色は白く、スズメノテッポウのように黄~黄褐色にはならない。

スズメノテッポウ属

  family Poaceae - genus Alopecurus

 一年草または多年草。葉身は線形、平ら。葉舌は膜質。花序は穂状花序状の円錐花序、密な円筒形、多数の小穂が、密集してつく。小梗(pedicels)は非常に短く、先は杯状になる。小穂は雌性先熟(protogynous)、側部が強く扁平になり、小花は1個つき、小梗から全体で落ち、小軸の伸長は無い。両苞穎はほぼ等しく、、小花を包み、広披針形~長円形、膜質~薄い革質、明瞭な3脈があり、強く竜骨があり、竜骨には普通、縁毛があり、まれに翼があり、下部の縁はほぼ分離またはその長さの半分まで合着し、先は鈍形~鋭形または短い芒がある。護穎は広披針形~卵形、普通、薄い膜質、竜骨があり、不明瞭な5脈あり、平滑、無毛、下部の縁はしばしば合着し、下部の背から芒が出て、先は切形~鋭形。芒は短い場合は真っ直ぐ、または長い場合は膝状に曲がり、柱(下部)は平滑、普通、成熟すると捻じれ、剛毛はザラつく。内穎は無いか、または非常に小さい。鱗被は無い。子房は無毛。穎果は側面から見ると斜めの倒卵形になる。胚乳はときに液状になる。
 世界に約40種あり、北半球と南アメリカの温帯と寒帯に分布する。

スズメノテッポウ属の主な種と園芸品種

1 Alopecurus aequalis Sobol. スズメノテッポウ 雀の鉄砲 広義
  synonym Alopecurus aequalis Sobol. subsp. amurensis (Kom.) Hultén
  synonym Alopecurus amurensis (Kom.) Kom.
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、モンゴル、ロシア、中央アジア、西南アジア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は看麦娘 kan mai niang。英名はorange foxtail, short-awn foxtail。水田、畔、畑に生える。
 1,2年草。高さ20~40㎝。葉舌は長さ3~4㎜。花序は長さ3~8㎝、幅3~7㎜の円柱状で小穂は密集してつく。小穂は長さ2~4㎜の広卵形、1小花。苞頴は2個とも同形で、3脈があり、斜上する長毛がある。苞頴の基部はわずかに合着し、小花を包み込んでいて中の護頴がわずかに見える程度。突き出て見える葯(やく)は初めは白色に近く、花粉を出して黄~黄褐色に変わる特徴がある。護頴は苞頴と同長、背面の中央のやや基部寄りから芒を出す。芒は長さ約3㎜で、小穂の外へ0.5~1.5㎜出る程度である。内頴は無い。雄しべは2~3個(普通3個といわれている。)。果実は長さ1~1.4㎜、扁平、暗灰色。2n=14。花期は4~6月。
スズメノテッポウは生育場所で「水田型」と「畑地型」の2タイプに分けられる。「水田型」は自家受粉し、大型(花序幅:5~7㎜、小穂長:3~3.5㎜)のタイプ、「畑地型」は小型(花序幅:3~5㎜、小穂長:2~2.7㎜)の他家受粉するタイプである。水田は稲作に合わせて一定の環境が保たれるため、自家受粉するタイプができたものと考えられている。
 この説によると自家受粉する「水田型」を狭義のスズメノテッポウ var. amurensis とし、「畑地型」をノハラスズメノテッポウ var. aequalis と2変種に分類する。
1-1 Alopecurus aequalis Sobol. var. amurensis (Kom.) Ohwi スズメノテッポウ 狭義
 自家受粉する「水田型」。大型(花序幅:5~7㎜、小穂長:3~3.5㎜)。
1-2 Alopecurus aequalis Sobol. var. aequalis ノハラスズメノテッポウ 
 別名はハタスズメノテッポウ, キタスズメノテッポウ。
 他家受粉する「畑地型」。小型(花序幅:3~5㎜、小穂長:2~2.7㎜)。

2 Alopecurus alpinus Sm.
 アフガニスタン、イラン、イラク、キルギスタン、タジキスタン原産。英名はAlpine foxtail , Alpine meadow foxtail。

3 Alopecurus brachystachyus M.Bieb. コウアンスズメノテッポウ 
 中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は短穗看麦娘 duan sui kan mai niang。湿った山岳草原、高山草原、その他の湿った場所に生える。  多年草、細長い根茎がある。稈は単生し、直立し、高さ15~80㎝、3~5節がある。葉鞘は滑らかで、最上部の葉鞘は膨らむ。葉身は灰緑色、長さ3~15㎝×幅2~6㎜、下面は平滑、上面はザラつく。葉舌は長さ1~4㎜。 円錐花序は短く、広円筒形~卵形、長さ1.5~4㎝、黄緑色、紫色を帯びる。小穂は卵状楕円形、長さ3.5~5㎜。苞穎は薄い草質、竜骨は縁毛があり、毛は長さ1.5~2㎜の絹毛、側脈と側面は絹毛状の直軟毛があり、縁は基部の近くで合着し、先はほぼ鋭形、真っすぐまたは不明瞭に散開する。護穎は苞鋭と同長かそれよりわずかに短く、縁は下の2/5で合着し、下部の1/4~1/3に芒があり、先には微軟毛があり、斜めの切形。芒は小穂から4~8㎜突き出し、膝状に曲がる。葯は黄色、長さ2~2.5㎜。花期および果期は6~9月。

4 Alopecurus carolinianus Walter ヒメスズメノテッポウ 姫雀の鉄砲
 カナダ、USA原産。英名はCarolina foxtail , tufted foxtail。湿った場所に生える。
 1年草。房状になる。稈は高さ5~50cm、直立または傾伏。葉舌は長さ2.8~4.5 mm、鈍形。葉身は長さ3~15 cm×幅0.9~3mm。上部の葉鞘は膨らまずまたはわずかに膨らむ。円錐花序は長さ1~7 cm×幅3~6 mm、常に密集している。苞穎は2個、長さ1~3㎜と1mm、基部で合着し、全体が膜質、まばらに毛があり、下部で広がらず、竜骨に翼が無く縁毛があり、先は鈍形、淡緑色~淡黄色。護穎は長さ1.9~2.7㎜、下部1/2が合着し、無毛、先は鈍形。芒は長さ3~6.5㎜、膝状に曲がり、護柄穎を1.6~4㎜超える。葯は長さ0.3~1㎜、黄色またはオレンジ色。穎果は長さ1~1.5㎜。 2n=14。果期は6~7月。

5 Alopecurus japonicus Steud. セトガヤ 瀬戸茅、背戸茅
  synonym Alopecurus malacostachyus A.Gray
 本州、四国、九州、朝鮮、中国原産。中国名は日本看麦娘 ri ben kan mai niang。英名はJapanese foxtail。水田に生える。
 2年草。高さ25~60㎝。全体に無毛、平滑。茎は直立し、叢生する。葉は長さ4~15㎝、幅4~6㎜の線形、先端が指頭状。葉舌は卵形。最上部の葉鞘は花序を包む。花序は長さ3~6㎝、幅5~8㎜の円柱状、スズメノテッポウと形がよく似ている。小穂は淡黄緑色、長さ5~6㎜の扁平な狭卵形。第1、第2苞頴は同形、3脈があり、中央脈に毛がある。護頴の芒(のぎ)は背面の中央のやや基部寄りから出て、長さ7~10㎜あり、小穂の外へ5~7㎜ほどつき出して、目立つ。葯(やく)は長さ約1㎜、白色。果実は長さ約2㎜の左右が狭い扁平。花期は4~5月。

6 Alopecurus longearistatus Maxim. ヒゲナガスズメノテッポウ 髭長雀の鉄砲
 中国、ロシア原産。中国名は长芒看麦娘 chang mang kan mai niang。湿った砂浜または泥だらけの川岸や湖岸に生える。
 1年草。緩く房状になる。稈は膝状に曲がり斜上し、高さ15~30cm。 葉鞘は緩く、平滑、無毛、上部の葉鞘はときに膨らむ。葉身は柔らかく、長さ3~9 cm×幅1~3.5 mm、下面は平滑、無毛、上面は密にうねがあり、細かくザラつく。葉舌は長さ2~4mm。円錐花序は狭円筒形、長さ4~7㎝、淡緑色、細長い芒に絨毛があり、基部はしばしば最上部の葉鞘に包まれる。小穂は狭長円形、長さ2.5~3mm。苞鋭は膜質、平滑、竜骨と側脈には縁毛があり、縁は基部で合着し、先は鈍形。護穎は苞穎と同長かそれよりわずかに長く、縁は中間より下で合着し、下部の1/4~1/3から芒が出て、先は鈍形。 芒は小穂から3mm以上突き出し、真っすぐ。葯は橙色、長さ0.4~0.8mm。花期および果期は5~6月。2n=14。

7 Alopecurus magellanicus Lam. チシマヤリクサ 千島槍草
  synonym Alopecurus alpinus Sm. subsp. stejnegeri (Vasey) Hultén
  synonym Alopecurus stejnegeri Vasey
  synonym Alopecurus borealis Trin.
 亜北極のユーラシアの北東部~北アメリカ、エクアドルから南アメリカ、亜南極諸島に広く分布する。英名はfoxtail boreal , foxtail vulpin , alpin vulpin boreale , alpine foxtail。
 多年草。短い根茎がある。稈は高さ(6)10~80㎝、直立または傾伏。葉舌は長さ1~2㎜、切形。葉身は長さ4~22㎝×幅2.5~7mm。上部の葉鞘は膨らむ。 円錐花序は長さ1~5cm×幅8~14mm。苞鋭は長さ3~5mm、下部の1/8で合着し、膜質、全体に密に直軟毛があり、竜骨には翼がなく、縁毛があり、先は鋭く平行。護穎は長さ2.5~4.5mm、下部1/2~2/3で合着し、下部は無毛、上部に細かい毛があり、先は普通、鈍形、ときに切形。芒は長さ2~6(8)mm、膝状に曲がり、護穎を0~5㎜超える。葯は長さ2.3~3mm、黄色。 穎果は長さ0.7~2mm。 2n=98, 100, 105, 112, 117, 119, 約120。
品種) 'Glaucus'

8 Alopecurus myosuroides Huds. ノスズメノテッポウ 野雀の鉄砲
 カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、ロシア、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は大穗看麦娘 da sui kan mai niang。英名はblackgrass , slender foxtail , black twitch。畑地、牧草地、市街地などに帰化している。
 1年草。房状になる。稈は直立または膝状に曲がって斜上し、高さ最大80cm以下。葉鞘は平滑、無毛、上部の葉鞘はわずかに膨らむ。葉身は長さ3~16 cm×幅2~9㎜、無毛、下面は平滑らかまたはザラつき、上面はザラつく。葉舌は長さ2~5㎜。円錐花序は狭円筒形、長さ10 cm以下、先に向かって先細になり、黄緑色、淡緑色、または帯紫色。小穂は狭長円形、長さ4.5~7.5㎜。苞穎は革質、点状のザラつきがあり、竜骨には狭い翼があり、翼は下部に短い直軟毛があり、上部はザラつき、側脈は基部の近くに非常に短くい直軟毛があり、縁は下部1/3~1/2が合着し、先は鋭形。護穎は苞穎よりわずかに長く、縁は下部1/3~1/2が合着し、基部近くから芒が出て、先は鋭形。芒は小穂から4~8㎜突き出し、膝状に曲がる。葯は淡黄色、長さ2.5~4㎜。2n=14。

9 Alopecurus pratensis L. オオスズメノテッポウ 大雀の鉄砲
 中国、カザフスタン、キルギスタン、モンゴル、ロシア、タジキスタ ン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は大看麦娘 da kan mai niang。英名はmeadow foxtail。別名はヨウシュセトガヤ。山地の牧草地、林縁、川の谷などに生える。牧草として導入されたものが野生化している。
 多年生、緩く房状になり、短い根茎がある。稈は直立し、基部でわずかに膝状に曲がり、高さ100㎝以下、3~5節がある。葉鞘は緩く、平滑、わずかに膨らむ。葉身は長さ5~25㎝×幅3~10㎜、下面は平滑、上面は細かくザラつく。葉舌は長さ2~4㎜。円錐花序は円筒形、長さ3~8㎝、灰緑色。小穂は楕円形、長さ46 mm。苞穎は草質、平滑、竜骨は堅く、縁毛があり、側脈には短い直軟毛があり、縁は下部の1/3が合着し、先は鋭形、わずかに収束する。護穎は苞穎の長さと同長かまたはわずかに短く、縁は中間より下が合着し、下から1/4に芒があり、先には微軟毛があり、ほぼ鋭形。芒は小穂から3~6㎜突き出し、弱く膝状に曲がり、下部の柱は捻じれない。葯は黄色、長さ2~3.5㎜。花期および果期は4~8月。2n=28。
品種) 'Aureovariegatus' (v) , 'Aureus' , 'No Overtaking' (v) , 'Variegatus'

参考

1) Flora of China
 Alopecurus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=101178
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Alopecurus
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:17424-1
3) World Flora Online
 Alopecurus
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000001354;jsessionid=4055B6442104FEF6517E5CE8E3B7F9C9
4) World Checklist of Vascular Plants
 Alopecurus
https://wcvp.science.kew.org/
5) FNA - Flora of North America
 Alopecurus
http://floranorthamerica.org/Alopecurus