セイバンモロコシ 西蕃蜀黍
Flora of Mikawa
イネ科 Poaceae モロコシ属
中国名 | 石茅 shi mao |
英 名 | Johnsongrass |
学 名 | Sorghum halepense (L.) Pers. |
花 期 | 7~10月 |
高 さ | 50~200㎝ |
生活型 | 多年草 |
生育場所 | 荒地、道端 |
分 布 | 帰化種 インド、ニコバル諸島、スリランカ、西ヒマラヤ(ネパール)、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、パキスタン、アフガニスタン、北コーカサス、トランスコーカサス、ラオス、タイ、ベトナム、トルコ、中東(パレスチナ、サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、レバノン-シリア、オマーン、湾岸諸国)、ヨーロッパ(マデイラ、キプロス、東エーゲ海諸島)、北アフリカ(エジプト、アルジェリア、チャド、チュニジア、モロッコ、リビア、カーボベルデ、カナリア諸島)原産 |
撮 影 | 田原市 06.6.25 |
世界的に広く帰化してしまった畑の害草。日本で広がったのは戦後、現在では道端で普通に見られる。若葉には青酸が含まれ、牧草とはならないようである。
太い根茎が横に広がる。稈は0.5~2m、直径0.4~2㎝、節間は無毛、平滑、硬く、光沢があり、節に短い伏毛がある。葉は無毛、長さ10~80㎝×幅(0.5)1~4㎝で、中肋が太くて目立ち、縁はざらつく。葉舌は長さ2~6㎜、膜質、著しい縁毛がある。葉鞘は無毛、平滑。円錐花序は長さ10~50㎝×幅5~25㎝、、赤褐色、枝は半輪生状に1~4個。小穂は芒のない有梗(有柄)の雄性小穂2個又は1個と、大きくて芒のある無梗の両性小穂が対になっている。両性の無梗小穂は苞頴に包まれ長さ3.8~6.5㎜×幅1.5~2.3㎜。カルスは鈍形、毛がある。苞頴は長さ4~5㎜、光沢のあり、ほぼ革質、伏毛がある。上側の護頴は膜質、芒がないかまたは芒があり、芒は膝状に曲がり、長さ9~13(16)㎜、捻じれる。葯は長さ1.9~2.7㎜。小梗は長さ1.8~3.3㎜。有柄の雄性の小穂は長さ3.6~5.6㎜、苞穎は膜質~革質、芒は無い。頴果が熟してくると苞頴が黒褐色になり、光沢が増し、より硬くなり、穎果は長さ約3㎜、熟しても露出しない。2n=20, 40。いくつかの異倍数数も報告されている。
小穂の芒が見えないものは、品種のヒメモロコシであり、変種として分類するという見解もある。変異の範囲内として分類しない場合も多い。
トウモロコシZea mays L.は熱帯アメリカ原産のトウモロコシ属の食用や飼料用の作物であり、全く異なるものである。
多年草または一年草。根茎は有または無。稈は普通丈夫で直立する。葉身は線形~線状披針形。葉舌は縁毛があり、膜質。花序は大きな頂生の円錐花序、長い中心軸をもつ。一次の枝は単純または枝分かれし、対の小穂がつく短い密な総状花序をもつ。総状花序は壊れやすく(栽培種では丈夫)、花序軸の節間および小梗は細く、縁毛がある。無柄の小穂は背側が扁平。カルスは鈍形、毛があり、節間の先につく。第1苞穎は普通、革質、浅く凸面状で、側面が丸く、2本の竜骨があり、竜骨の上側に翼があり、普通、毛があり、先は膜質。第2苞穎は舟形、上側に竜骨がある。下側の小花は空の透明な護穎に退化する。上側の護穎は2歯があり、切れ込みから芒が出て、またはまれに芒がない。芒は2本膝状に曲がり、無毛。鱗被は縁毛がある。有柄の小穂はよく発達するか、または護穎に退化し、仏、無柄の小穂よりもはるかに狭く、芒は無い。
世界に約18種あり、旧世界の熱帯および亜熱帯に広く分布し、それ以外はアメリカに導入された種である。
synonym Sorghum bicolor (L.) Moench subsp. arundinaceum (Desv.) de Wet et J.R.Harlan
synonym Sorghum bicolor Moench subsp. verticilliflorum (Steud.)de Wet ex Wiersema & J.Dahlb.
synonym Andropogon sorghum var. aethiopicus Hack.
アフリカ(北部沿岸を除く)、マダガスカル、インド、西ヒマラヤ、東ヒマラヤに分布する野生系統種(spontaneous races)。西半球にも導入されている。英名はcommon wild sorghum , broomcorn。
1年草、まれに、短命の多年草。稈は高さ30~400㎝、丈夫[細い~丈夫]で、枝分かれし、節はほとんどが無毛、ときに毛がある。葉鞘は無毛。葉舌は膜質、縁に細かい毛のフリンジがあり、背に毛がある。葉身は様々、しばしば大きく、長さ5~75㎝×幅5~7㎜、広披針形、平らで、両面が無毛、帯白色の中肋が目立つ。円錐花序は長さ10~60㎝、広く広がる。主軸は角張り、無毛。一次枝は分岐し、節に毛がある。総状花序[総(rames)]は2~7[1~5]関節があり、花序軸の節間および小梗に直軟毛がある。無柄の小穂は長さ(4)7(9)[5~8]㎜、披針形~狭卵形(楕円形)。苞穎は革質、下位の(第1)苞穎は背側が扁平、狭卵形、縁に2竜骨があり、竜骨に翼があり、翼は上部で広がらないかまたはかすかに広がって苞穎の先のかなり下に微細な歯がある。歯は等形の3歯ではなく、白色の毛があり、ときに綿毛または 猛烈に毛があり、背が縦にわずかに凹む。上位の(第2)苞穎は無毛になるかまたは背にまばらな毛がある。下位の小花は空で、その護穎は長さ約5.5mm、披針形、縁に縁毛がある。上位の小花は両性、その護穎は長さ約3㎜、深裂し、裂片と縁に縁毛があり、芒がある。芒は長さ20㎜以下、無毛。内穎は長さ約2㎜。有柄の小穂は中性、長さ約6.5mm、線形~披針形。苞穎は紙質。下位の苞穎は無毛。上位の苞穎は不稔の苞穎よりわずかに短く、無毛。下位の護穎は無毛、先が切形。穎果は成熟時に露出しない。[ ]内はFlora of North America。
2 Sorghum bicolor (L.) Moench モロコシ 蜀黍
synonym Sorghum saccharatum var. bicolor (L.) Kerguélen
synonym Sorghum bicolor (L.) Moench subsp. bicolor ナミモロコシ
synonym Sorghum bicolor var. charisianum (Busse & Pilg.) Snowden
中央アフリカ(チャド、エチオピア、ガンビア、マリ、モーリタニア、ニジェール、スーダン)原産。熱帯で広く栽培され帰化している。中国名は高粱 gao liang。英名はsorghum , common sorghum。別名はソルガム、ナミモロコシ。沖縄ではトーチンと呼ばれる。
多数の種に分類されていた(約180種)が、最近はSorghum bicolorにまとめられている。過去にはヨシモロコシを野生種の亜種、ナミモロコシを栽培種の亜種に分類していたが、ヨシモロコシを別種として分けている。
一年草または短命の多年草。根茎は無く、しばしば分げつ(tillering:茎の根に近い節から新しく茎が発生すること)する。稈は直立し、高さ50~500cm以上、直径1~5cm、時には基部の上で枝分かれし、節は無毛または伏毛があり、節間は無毛。葉舌は先がほぼ円形、縁毛があり、長さ1~4 mm。葉身は長さ5~100 cm×幅5~100 mm、ときに無毛。 円錐花序は変化が多く、疎~密、外形が円筒形~ピラミッド形~倒卵形、長さ5~60cm×幅3~30 cm、主軸は長い~非常に短く、開きまたは狭まり、一次枝は1~5個の節に対の小穂をつける総状花序(rames;総)で終わる。 関節離断は普通、発生しないか、遅くなる。無柄の小穂は両性、長さ3~9㎜m×幅2~5㎜、楕円形~長円形。カルスは鈍形。苞穎は革質、無毛~密に粗毛がある、または毛があり、竜骨に普通、翼がある。第2苞穎は芒がなくまたは芒がある。芒は膝状に曲がり、捻じれ、長さ5~30mm。 葯は長さ2~2.8mm。 小梗は長さ1~2.6mm。有柄の小穂は線状披針形、長さ3~6 mm、普通は無柄の小穂よりも短く、雄性または不稔。 穎果は、しばしば熟すと、隙間のある苞穎の間から露出する。2n=20, 40。
品種) '730'PBR , 'A101'PBR , 'African Black' , 'Amish Rainbow' , 'Apache Red Sugarcane' , 'Black Amber' , 'Black Falcon' , 'Br116'PBR , 'Broom Corn Multi-Color Sorghum' , 'Bsk12'PBR , 'Buster' , Caudatum Group , 'Cms17a'PBR , 'Colored Uprights' , 'Dale' , 'DKS41-50' , 'DKS44-20' , 'DKS53-53' , 'DKS53-67' , 'Domintor' , 'Dpg934'PBR , 'Dwarf Mayo' , 'Eclipse' , 'Enforcer' , 'Gila River Kana' , 'Gnome' , 'Gnoumanin' , 'Great Sorghum' , 'Honey Drip' , 'India Red Popping' , 'Iowa Sweet' , 'Kana' , 'King Milo' , 'King Sorghum Mix' , 'Liberty White' , 'Longfuliang 1' , 'Mayo' , 'Mennonite' , 'Onavas Red' , 'Pacific MR 32' , 'Pahat' , 'Pr88y92'PBR , 'Red Amber' , 'Red Broom Corn' , 'Rls0401'PBR , 'Rls0402' , 'Rls0501'PBR , 'Rls0502'PBR , 'Rls0504'PBR , 'Rls0701'PBR , 'Rls0903'PBR , 'Rls1001'PBR , 'Rls1002'PBR , 'Rls1003'PBR , 'Rls1006'PBR , 'Rls1101'PBR , 'Rls1102'PBR , 'Rls1201'PBR , 'Rls1207'PBR , 'Rls1301r'PBR , 'Rls1302r'PBR , 'Rls1401r'PBR , 'Rls1702b'PBR , 'Rls1704b'PBR , 'Rsk1'PBR , 'Rsk21'PBR , 'Rsk36'PBR , 'Sadje' , 'San Felipe Pueblo' , 'Sand Mountain' , 'Santa Fe Red' , 'Sk19'PBR , 'Sofin' , 'Striker' , 'Sugar Drip' , 'Sumac' , 'Sydney'PBR , 'Tarahumara Popping' , 'Tasagui' , 'Texas Black' , 'Tiedjan' , 'Tiger' , 'Tunisan' , 'Umbrella' , 'White African' , 'White Broom Corn' , 'Yellow Bonnet' , 'Yuantian No.1' , 'Yuanza 502'
3 Sorghum halepense (L.) Pers. セイバンモロコシ 西蕃蜀黍
synonym Sorghum propinquum auct. non (Kunth) Hitchc.
synonym Sorghum halepense (L.) Pers. var. propinquum sensu Ohwi
インド、ニコバル諸島、スリランカ、西ヒマラヤ(ネパール)、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、パキスタン、アフガニスタン、北コーカサス、トランスコーカサス、ラオス、タイ、ベトナム、トルコ、中東(パレスチナ、サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、レバノン-シリア、オマーン、湾岸諸国)、ヨーロッパ(マデイラ、キプロス、東エーゲ海諸島)、アフリカ(エジプト、アルジェリア、チャド、チュニジア、モロッコ、リビア、カーボベルデ、カナリア諸島)原産。中国名は石茅 shi mao。英名はJohnson Grass , Johnsongrass , Aleppo millet grass。別名はオオセイバンモロコシ。世界的に広く帰化してしまった畑の害草。日本で広がったのは戦後、現在では道端で普通に見られる。若葉には青酸が含まれ、牧草とはならないようである。
多年草。太い根茎が横に広がる。稈は0.5~2m、直径0.4~2㎝、節間は無毛、平滑、硬く、光沢があり、節に短い伏毛がある。葉は無毛、長さ10~80㎝×幅(0.5)1~4㎝で、中肋が太くて目立ち、縁はざらつく。葉舌は長さ2~6㎜、膜質、著しい縁毛がある。葉鞘は無毛、平滑。円錐花序は長さ10~50㎝×幅5~25㎝、、赤褐色、枝は半輪生状に1~4個。小穂は芒のない有梗(有柄)の雄性小穂2個又は1個と、大きくて芒のある無梗の両性小穂が対になっている。両性の無梗小穂は苞頴に包まれ長さ3.8~6.5㎜×幅1.5~2.3㎜。カルスは鈍形、毛がある。苞頴は長さ4~5㎜、光沢のあり、ほぼ革質、伏毛がある。上側の護頴は膜質、芒がないかまたは芒があり、芒は膝状に曲がり、長さ9~13(16)㎜、捻じれる。葯は長さ1.9~2.7㎜。小梗は長さ1.8~3.3㎜。有柄の雄性の小穂は長さ3.6~5.6㎜、苞穎は膜質~革質、芒は無い。頴果が熟してくると苞頴が黒褐色になり、光沢が増し、より硬くなり、穎果は長さ約3㎜、熟しても露出しない。2n=20, 40。いくつかの異倍数数も報告されている。
3-1 Sorghum halepense (L.) Pers. f. muticum (Hack.) C.E.Hubb. ヒメモロコシ 姫蜀黍
synonym Sorghum halepense (L.) Pers. var. muticum (Hack.) Honda
別名はノギナシセイバンモロコシ。
セイバンモロコシの小穂の芒が見えない品種である。変種として分類する見解もあり、変異の範囲内として分類しない見解もある。
4 Sorghum nitidum (Vahl) Pers. モロコシガヤ 蜀黍茅 広義
synonym Sorghum nitidum (Vahl) Pers. var. majus auct. non (Hack.) Ohwi
synonym Sorghum nitidum (Vahl) Pers. subsp. dichroanthum (Steud.) T.Koyama
日本(本州の紀伊半島以西、四国、九州、沖縄)、韓国、中国、台湾、ブータン、インド、インドネシア、ミャンマー、ニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ。 北東オーストラリア、太平洋諸島原産。中国名は光高粱 guang gao liang。牧草地、草が茂った丘の中腹、里山の棚田の土手、溜池土堤などの草地、ススキ草原などに生える。
多年草。緩い房状になる。稈は直立し、高さ0.6~2m、節は淡色の開出毛がある。 葉鞘は無毛または直軟毛がある。葉身は線形、長さ10~40(~50)㎝×幅0.4~1 ㎝、無毛からヒスパニック、基部にひげを生やしている。葉舌は長さ1~1.5mm。 円錐花序は外形が披針形、長さ15~30㎝、無毛だが、節に柔らかい毛がある。一次枝は輪生しい、単純で、屈曲性があり、長さ2~5㎝、下部は裸出する。 総状花序は枝の先につき、壊れやすく、2~4個の小穂の対で構成されている。節間と小梗には褐色の縁毛がある。無柄小穂は卵状披針形、長さ3.5~5 mm。第1苞穎は革質、熟すと黒褐色になり、光沢があり、中間より下部には光沢があり、上部と縁は褐色の剛毛がある。上側の護穎は芒が無または有、芒は長さ1~1.5㎝。小穂は普通、雄性、楕円形、長さ3~3.7 mm、紙質、薄褐色。花期および果期は夏~秋。2n=10, 20。
4-1 Sorghum nitidum (Vahl) Pers. var. dichroanthum (Steud.) Ohwi モロコシガヤ 蜀黍茅
本州(紀伊半島以西)、四国、九州、琉球;朝鮮半島(南部)、中国大陸(南部)、マレーシア。低地~低山の里山の明るい草地などに生える。
多年草。稈は房状になり、高さ50~100㎝、節に白色毛が輪生する。葉は長さ20~50㎝×幅5~10㎜、中央脈は白色で目立ち、縁は著しくざらつく。円錐花序は直立し、長さ10~25㎝、枝は各節に数個輪生し、長さ2~6cm、細く、波状に屈曲し、頂部に長さ1~1.5㎝の総を1個つける。総は数個の小穂がつき、節間に赤褐色の毛がある。無柄の小穂は広披針形、長さ4~5㎜、先は鋭形、黒褐色、革質で光沢があり、褐色の長毛に覆われる。有柄の第1小穂と無柄の第2小穂が対になってつき、第1小穂は雄性、ときに短い芒がある。第2小穂は両性で、護穎に長さ2~2.5㎜の芒がある。花期は9~11月。
4-2 Sorghum nitidum (Vahl) Pers. var. nitidum コモロコシガヤ
現在では変種に分けない。
4-2-1 Sorghum nitidum (Vahl) Pers. var. nitidum f. aristatum C.E.Hubb. シラゲモロコシガヤ
5 Sorghum propinquum (Kunth) Hitchc.
中国、台湾 、インド、スリランカ、カンボジア、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ニューギニア、カロリン諸島、クック諸島、マリアナ諸島、原産。中国名は拟高粱 ni gao liang。
6 Sorghum virgatum (Hack.) Stapf
アフリカ(チャド、エジプト、マリ、モーリタニア、ニジェール、セネガル、スーダン)、中東(レバノン-シリア、パレスチナ)原産。
7 ハイブリッド
(2) Sorghum bicolor subsp. ×drummondii (Steud.) de Wet ex Davidse
synonym Sorghum sudanense (Piper) Stapf
東半球に普通で、USAにもみられる。英名はchicken corn , sudangrass。
一年草。稈は高さ4m以下、比較的頑丈。普通、総(rames)はほとんどが3~5節あり、ゆっくり、関節離脱する。無柄の小穂は長さ5~6㎜、披針形~楕円形。穎果は成熟時に露出しない。
8 その他ハイブリッド
品種) 'Allu Jola' , 'Dgc 303'PBR , 'Dgc307' , 'DKS26-60' , 'DKS28-05' , 'DKS29-28' , 'DKS36-06' , 'DKS37-07' , 'DKS38-88' , 'Nerum Boer Popping' , 'Rox Orange' , 'Samurai 1' , 'Samurai 2'
Sorghum bicolor (L.) Moench(栽培ソルガムと呼ばれる)の最古の考古学的な遺物は紀元前8000年のもので、ナイル川上流のナブタプラヤ(Nabta Playa)で発見された野生のソルガムで、栽培種ではなく、穀物が小さく、もろい花序軸をもつものである。栽培ソルガムはニジェール川流域で、紀元前7000年~5000年頃にかけて、野生のソルガムであるアルンジナセウム(arundinaceum)から栽培種化されたと考えられている。栽培ソルガムはアフリカ全土に広がり、その過程でエチオピアの高原から半乾燥サヘルまでの幅広い環境に適応する様々な栽培種が生まれた。その後、ソルガムはインドと中国に広がり、アメリカ大陸に渡り、最終的にオーストラリアにまで広がった。
栽培ソルガムの様々な栽培種は5つの基本系統種(basic races)とその組み合わせによる10の中間系統種(races)に分類される。それらは小穂/穂などの形態のみで分類され(Harlan&de Wet 1972)、特定の種まで遡ることができる。栽培ソルガムは全て2倍体 (2n=2x=20)であり、'grain sorghums'、'broomcorns'、'sweet sorghums'または'sorgo'などと呼ばれる多数の品種がある。
Race (1) Sorghum bicolor Bicolor race バイカラー(B)
synonym Sorghum bicolor (L.) Moench subsp. bicolor ナミモロコシ
最も基本のグレインソルガム grain sorghums (ソルガムきび)である。
バイカラー系統種(races)は、最も原始的なグレインソルガムであると考えられ、ヨシモロコシ(亜種 verticilliflorum)の複合体から進化したと考えられているが、その起源については不明ともいわれる。栽培化以来、それはアフリカおよびインド~インドネシアまでのアジアの多くの農業地域に広がっている。この系統は中型の開いた円錐花序が特徴であり、長くてわずかに硬い花序枝をもち、長く、包む苞穎が先につく。苞穎は厚く、革質で、脈が不明瞭。第1苞穎の先端は凹み、毛がある。有柄の小穂は宿存する。穀粒は楕円形~ほぼ球形だが、長くなり、一般にサイズが小さく、花序に宿存し、苞穎にしっかりと抱かれてほとんど包まれる。小梗は短い。種子、苞穎、植物の一部が一般的に高度に着色されている。この系統種は、収量がかなり少なく、高さが中程度で、大量に分げつ(tiller)する傾向がある。
亜系統) Bicolor , Dochna(甜高粱 tian gao liang) , Nervosum(コウリャン) , Nervosum-kaoliang , Nervosum-broomcorn , Sudanense(スーダングラス)
① Sorghum bicolor Dochna group サトウモロコシ
synonym Sorghum saccharatum (L.) Moench
synonym Sorghum dochna (Forssk.) Snowden
synonym Sorghum bicolor (L.) Moench‘dochna’ synonym Sorghum bicolor 'Saccharatum'
英名はsweet sorghum , forage sorghum , sorgos , Chinese sugar cane。中国名は甜高粱 tian gao liang。別名はカザリモロコシ。ほうきを作るために使用される品種を含み、中国では穀物や飼料用に広く栽培されている。茎がジューシーで甘く、飼料やサイレージ、甘味料を作るために利用される。 稈は甘いジュースを含む。円錐花序は長さ50cm以下。枝は総状花序または散房花序、下部のものは円錐花序の長さの半分またはそれ以上。 無柄の小穂は広楕円形~倒卵形。苞穎は甲殻質で、中間より上に条線状に脈がある。穀物は楕円形または楕円状長円形、苞穎に包まれるか、わずかに突き出る。 ホウキモロコシは高さ2~3m。葉は幅広く大きい。夏、茎頂に大きな円錐形の花穂をつける。小穂は長楕円形、長い屈折した芒(のぎ)があり黄褐色に熟す。果穂から箒を作る。花期は夏。 品種) 'Dulciusculum' サトウモロコシ , 'Hoki' ホウキモロコシ 箒蜀黍 , MN635(No33)
② Sorghum bicolor (L.) Moench Nervosum group コウリャン 高粱
synonym Sorghum nervosum Besser ex Schult.
synonym Sorghum bicolor (L.) Moench‘nervosum’
主に中国北部で穀物用に栽培されている。中国名は多脉高粱 duo mai gao liang。別名はコウリョウ。caudatum-bicolor系統種のものもある。
円錐花序は細長く、密で、外形が楕円形、長さ40㎝以下。無柄の小穂は楕円形~広楕円形。苞穎は紙質、全体に目立つ脈がある。穀物は広楕円形、苞穎を超えて突き出る。
③ Sorghum bicolor (L.) Moench nothosubsp. drummondii (Nees ex Steud.) de Wet ex Davidse スーダングラス
synonym Sorghum x drummondii (Nees ex Steud.) Millsp. et Chase
synonym Sorghum sudanense (Piper) Stapf
synonym Sorghum bicolor 'Sudan grass'
英名はgrass sorghum , sudan grass , wild sudan grass , garawi(Africa) , 'shattercane' 。牧草、サイレージ、干し草に使われる。 1年草、直立し、房状になり、高さ3m以下、直径3~9㎜、多数、疎に分枝し、しばしば支柱根(prop roots)があるが、根茎はなく、節に毛がある。葉は多数。葉鞘は大きく無毛。葉身は線形、先は漸尖形、長さ15~30(~60)cm×幅8~15(~25)㎜、無毛。葉舌は膜質、長さ約2㎜。円錐花序は長さが幅の2倍あり、卵状ピラミッド形、開き、長さ15~35(~75)cm、2次枝があり、ときに3次枝がある。小穂は対につく。無柄の小穂は長さ5.5~7.5㎜、小穂が最終的に落下するときに、花序軸の節間の上部が付着する。苞穎はまばらに毛があり、光沢があり、成熟するとほとんど無毛になる。上側の小花の護穎は芒があり、芒は長さ16㎜以下で、基部が捻じれる。有柄の小穂は、無柄の小穂とほぼ同長だが、幅が狭い。穎果は様々、苞穎に包まれ、穀物は成熟時に露出しない。
品種) 'Donetskaya 5' , 'Mironovskaya 8'
④ Sorghum bicolor 'Technicum'
synonym Sorghum vulgare var. technicum (Körn.) Jáv.
英名はbroom corn , Florence whisk , Italian whisk
種子が小さく、花序軸は非常に短いが、散形花序は長く、強い繊維状の枝をもち、長さ30~100㎝。花やほうきに使われる。 (2n=20)
Race (2) Sorghum bicolor Guinea race ギニア(G)
西アフリカに分布し、森林内に生える。南アフリカにも広がっている。 ギニア系統種は約3000年前に発生したといわれている。ギニアは西アフリカの森林地域で広く栽培され、野生のarundinaceumと同所性(sympatric)であることから、ギニア系統種は一次の森林の草である野生のarundinaceum系統種から別れて独立したと考えられている。しかしながら、verticilliflorum-aethiopicum複合体よりもarundinaceumとのより近い親和性は確認されていない。ギニアは森林内で生育するが、一次的には主にサバンナの穀物であり、おそらく、元になるバイカラー系統種からの初期の選抜系統種として西アフリカのサバンナで生まれたものであり、アフリカのサバンナ全体に広がり、南アジアでも広く栽培されている。また、南部アフリカのギニアは非常に酷似し、アフリカ南部の湿度の高い地域にも類似系統種が存在するため、ギニアの起源の場所は西アフリカと推定されている。 ギニア系統種は、長く、ゆるく、鈍く、垂れ下がった円錐花序が特徴。 無柄の小穂は成熟すると開き、穀物が露出する。苞穎は内巻き、広く開き、毛のある芒が目立つ。有柄の小穂は宿存性と脱落性の両方がある。 穀物は小~中程度で、両凸面形で、ほぼ卵形だが、平らになるものもあり、色は薄い傾向があり、わずかに着色するものもある。株は高さが中~高で、収量は少ない傾向がある。 亜系統) Conspicuum , Guineense , Margaritiferum , Roxburghii
Race (3) Sorghum bicolor Caudatum race カウダツム(C)
Caudatum系統種はアフリカのチャリナイル言語の話者と密接に関連しており、ナイジェリア北東部、チャド、スーダン、エチオピア、ウガンダに広く分布している。カウダツムは主に初期に栽培ソルガムが栽培された地域に分布が限定されており、このため、初期のナミモロコシ(ソルガム栽培種)と野生のソルガム複合体との交配に由来すると考えられている。この系統がインドでは発生せず、この地域で発生したすべてがギニアとデュラの交配から発生したわけではないため、ギニアやデュラよりも若くなければならないと考えられる。カウダツムは農業的に最も重要な系統種の1つであり、高収量と優れた種子品質を有するための遺伝子を提供する。これは、世界中の現代の育種プログラムにおいて最も重要な遺伝資源の1つになっている。
カウダツム系統種は円錐花序が中型~大型、長円形、密集~わずかに開き、毛があり、丈夫な花序と硬い一次枝をもつ。無柄の小穂は卵形~楕円形、一方、有柄の小穂は脱落性。苞穎は革質、有毛、大きな穀粒よりも短い。穀粒は片側が平らで、反対側が丸いかまたは膨らみ(亀の背中)、普通、チョーク白色または着色される。 多くは劣性スプレッダー遺伝子を持つ。 草丈は一般に中程度~高く、普通、高収量である。
亜系統) Caudatum , Caudatum-kaura , Caudatum-nigricans , Dobbs , Nigricans , Nigricans-feterita , Sumac , Zerazera
Race (4) Sorghum bicolor Kafir race カフィア(K)
synonym Sorghum caffrorum (Retz.) P. Beauv.
synonym Sorghum bicolor var. feterita
カフィア系統種はアフリカ南部が主な分布域で、ナイジェリア北部にも広く分布する。起源を裏付ける明らかな証拠はないが、それは北アフリカの初期のソルガム栽培種に由来し、主にアフリカのバンツー語を話す人々(Bantu speakers)によって南に運ばれたと考えられている。その分布と形態が野生のverticilliflorumと類似しているともいわれている。
カフィア系統種は茎は乾き、硬く、ジューシーではない。円錐花序が直立し、細長く、ほとんどが半小型で円筒形であるのが特徴。 枝と無柄の小穂は毛があるが、苞穎は成熟時にほとんど光沢がある。苞穎は中程度の革質であり、穀粒よりもはるかに短く、広楕円形、ときに扁平になり、平らまたは両凸面になる。株は中程度の高さで、一般的に高収量である。
亜系統) Caffrorum
Race (5) Sorghum bicolor Durra race デュラ(D)
synonym Sorghum durra (Forssk.) Stapf
エチオピア、スーダン、サハラ砂漠の西部に分布し、インドで栽培されている。
デュラ系統種はヨシモロコシ(野生のモロコシ)の遺伝子移入から生じた可能性があることが示唆されている。デュラは初期のソルガム栽培種から選抜されたものであり、紀元前3000年以前にインドに導入されたものと推定されている。エチオピアでは野生型のデュラ系統種が連続的に分布するため、エチオピアで発生したことは明確で、モロコシが野生の形態で侵入し、より乾燥した条件に適応して、デュラ系統種が発達したと考えられている。 デュラはスーダンを通って西に移動し、サハラの南縁の下側のより乾燥した地域をに広がり、その後、アフリカの角を通って最終的にインドに移動したと推定されている。 デュラは系統種は円錐花序が硬く、密で小型であるのが特徴である。円錐花序は、卵形~長円形~菱形であり、密にビロード状の毛で覆われる。花序柄はしばしば後ろに反曲するが、たまに直立する。円錐花序の枝は短く、半直立で毛がある。花序軸は長いものから隠れるものまで様々である。有柄の小穂は大きく、宿存するが、無柄の小穂は倒卵状楕円形~菱形。苞穎は下半分の上が革質であり、中央の横しわによりわずか~強く凹む。 苞穎の下半分には強い脈があり、先が紙質。苞穎は薄く着色する傾向がある。穀粒は一般的に中型~大型で、両凸面形、先が広く、基部がくさび形。株は高さが中程度~高く、質が良い。 亜系統) Cernuum(セルナム=アズキモロコシ) , Nandyal
① Sorghum bicolor 'Cernuum' アズキモロコシ
synonym Sorghum cernuum (Ard.) Host
synonym Sorghum bicolor Durra group
中国の新疆ウイグル自治区で穀物と飼料のために栽培されている。中国名は弯头高粱 wan tou gao liang。
円錐花序は楕円形または卵状楕円形、密集し、長さ8~20㎝、湾曲または直立する。無柄の小穂は広卵形、帯白色。苞穎は薄い紙質、横しわがあり、密に白色の絨毛があるか無毛になる。穀粒は淡色、ほぼ円形~円形、普通、かなり平らで、苞穎を超えて突き出る。
Race (6) guinea-bicolor (GB)
亜系統) Dochna-honey[Lure No.28] , Dochna-roxburghii[Narkatia Shittajpur]
Race (7) caudatum-bicolor (CB)
亜系統) Caudatum-bicolor[A112-3] , Caudatum-dochna[255 Triter] , Nigricans-bicolor[J73]
Race (8) kafir-bicolor (KB)
亜系統) bicolor-kafir[Lura] , Dochna-kafir[Uki No.37]
Race (9) durra-bicolor (DB)
synonym Sorghum subglabrescens (Steud.) Schweinf. & Asch.
synonym Sorghum vulgare var. subglabrescens (Steudel) A.F.Hill
東アフリカ、アラビアに分布。英名はmilo , African milo。
Race (10) guinea-caudatum (GC)
亜系統) Caudatum-guineense[Col , ElObeid8-1 , Koeky] , Nigricans-guineense[Nyan Dok]
Race (11) guinea-kafir (GK)
亜系統) Caffrorum-roxburghii[Nebraska6350]
Race (12) guinea-durra (GD)
亜系統) Durra-roxburghii[Karkatia Salimpur] , Durra-membranaceum[Col. El Obeid 8-2 , Frerik]
Race (13) kafir-caudatum (KC)
亜系統) Caudatum-durra[J-16] , Nigricans-durra[Bonkum] , Durra-nigricans[Feterita Fuyoumi]
Race (15) kafir-durra (KD)
亜系統) Durra-feterita/kaura[Unnamed R1,38]
Sorghum
Sorghum
DSorghum
Sorghum
Sorghum
Sorghum (annual)
cultivated Sorghum
Sorghum subglabrescens Race
太い根茎が横に広がる。稈は0.5~2m、直径0.4~2㎝、節間は無毛、平滑、硬く、光沢があり、節に短い伏毛がある。葉は無毛、長さ10~80㎝×幅(0.5)1~4㎝で、中肋が太くて目立ち、縁はざらつく。葉舌は長さ2~6㎜、膜質、著しい縁毛がある。葉鞘は無毛、平滑。円錐花序は長さ10~50㎝×幅5~25㎝、、赤褐色、枝は半輪生状に1~4個。小穂は芒のない有梗(有柄)の雄性小穂2個又は1個と、大きくて芒のある無梗の両性小穂が対になっている。両性の無梗小穂は苞頴に包まれ長さ3.8~6.5㎜×幅1.5~2.3㎜。カルスは鈍形、毛がある。苞頴は長さ4~5㎜、光沢のあり、ほぼ革質、伏毛がある。上側の護頴は膜質、芒がないかまたは芒があり、芒は膝状に曲がり、長さ9~13(16)㎜、捻じれる。葯は長さ1.9~2.7㎜。小梗は長さ1.8~3.3㎜。有柄の雄性の小穂は長さ3.6~5.6㎜、苞穎は膜質~革質、芒は無い。頴果が熟してくると苞頴が黒褐色になり、光沢が増し、より硬くなり、穎果は長さ約3㎜、熟しても露出しない。2n=20, 40。いくつかの異倍数数も報告されている。
小穂の芒が見えないものは、品種のヒメモロコシであり、変種として分類するという見解もある。変異の範囲内として分類しない場合も多い。
トウモロコシZea mays L.は熱帯アメリカ原産のトウモロコシ属の食用や飼料用の作物であり、全く異なるものである。
モロコシ属
family Poaceae - genus Sorghum多年草または一年草。根茎は有または無。稈は普通丈夫で直立する。葉身は線形~線状披針形。葉舌は縁毛があり、膜質。花序は大きな頂生の円錐花序、長い中心軸をもつ。一次の枝は単純または枝分かれし、対の小穂がつく短い密な総状花序をもつ。総状花序は壊れやすく(栽培種では丈夫)、花序軸の節間および小梗は細く、縁毛がある。無柄の小穂は背側が扁平。カルスは鈍形、毛があり、節間の先につく。第1苞穎は普通、革質、浅く凸面状で、側面が丸く、2本の竜骨があり、竜骨の上側に翼があり、普通、毛があり、先は膜質。第2苞穎は舟形、上側に竜骨がある。下側の小花は空の透明な護穎に退化する。上側の護穎は2歯があり、切れ込みから芒が出て、またはまれに芒がない。芒は2本膝状に曲がり、無毛。鱗被は縁毛がある。有柄の小穂はよく発達するか、または護穎に退化し、仏、無柄の小穂よりもはるかに狭く、芒は無い。
世界に約18種あり、旧世界の熱帯および亜熱帯に広く分布し、それ以外はアメリカに導入された種である。
モロコシ属の主な種と園芸品種
1 Sorghum arundinaceum (Desv.) Stapf ヨシモロコシ 葦蜀黍synonym Sorghum bicolor (L.) Moench subsp. arundinaceum (Desv.) de Wet et J.R.Harlan
synonym Sorghum bicolor Moench subsp. verticilliflorum (Steud.)de Wet ex Wiersema & J.Dahlb.
synonym Andropogon sorghum var. aethiopicus Hack.
アフリカ(北部沿岸を除く)、マダガスカル、インド、西ヒマラヤ、東ヒマラヤに分布する野生系統種(spontaneous races)。西半球にも導入されている。英名はcommon wild sorghum , broomcorn。
1年草、まれに、短命の多年草。稈は高さ30~400㎝、丈夫[細い~丈夫]で、枝分かれし、節はほとんどが無毛、ときに毛がある。葉鞘は無毛。葉舌は膜質、縁に細かい毛のフリンジがあり、背に毛がある。葉身は様々、しばしば大きく、長さ5~75㎝×幅5~7㎜、広披針形、平らで、両面が無毛、帯白色の中肋が目立つ。円錐花序は長さ10~60㎝、広く広がる。主軸は角張り、無毛。一次枝は分岐し、節に毛がある。総状花序[総(rames)]は2~7[1~5]関節があり、花序軸の節間および小梗に直軟毛がある。無柄の小穂は長さ(4)7(9)[5~8]㎜、披針形~狭卵形(楕円形)。苞穎は革質、下位の(第1)苞穎は背側が扁平、狭卵形、縁に2竜骨があり、竜骨に翼があり、翼は上部で広がらないかまたはかすかに広がって苞穎の先のかなり下に微細な歯がある。歯は等形の3歯ではなく、白色の毛があり、ときに綿毛または 猛烈に毛があり、背が縦にわずかに凹む。上位の(第2)苞穎は無毛になるかまたは背にまばらな毛がある。下位の小花は空で、その護穎は長さ約5.5mm、披針形、縁に縁毛がある。上位の小花は両性、その護穎は長さ約3㎜、深裂し、裂片と縁に縁毛があり、芒がある。芒は長さ20㎜以下、無毛。内穎は長さ約2㎜。有柄の小穂は中性、長さ約6.5mm、線形~披針形。苞穎は紙質。下位の苞穎は無毛。上位の苞穎は不稔の苞穎よりわずかに短く、無毛。下位の護穎は無毛、先が切形。穎果は成熟時に露出しない。[ ]内はFlora of North America。
2 Sorghum bicolor (L.) Moench モロコシ 蜀黍
synonym Sorghum saccharatum var. bicolor (L.) Kerguélen
synonym Sorghum bicolor (L.) Moench subsp. bicolor ナミモロコシ
synonym Sorghum bicolor var. charisianum (Busse & Pilg.) Snowden
中央アフリカ(チャド、エチオピア、ガンビア、マリ、モーリタニア、ニジェール、スーダン)原産。熱帯で広く栽培され帰化している。中国名は高粱 gao liang。英名はsorghum , common sorghum。別名はソルガム、ナミモロコシ。沖縄ではトーチンと呼ばれる。
多数の種に分類されていた(約180種)が、最近はSorghum bicolorにまとめられている。過去にはヨシモロコシを野生種の亜種、ナミモロコシを栽培種の亜種に分類していたが、ヨシモロコシを別種として分けている。
一年草または短命の多年草。根茎は無く、しばしば分げつ(tillering:茎の根に近い節から新しく茎が発生すること)する。稈は直立し、高さ50~500cm以上、直径1~5cm、時には基部の上で枝分かれし、節は無毛または伏毛があり、節間は無毛。葉舌は先がほぼ円形、縁毛があり、長さ1~4 mm。葉身は長さ5~100 cm×幅5~100 mm、ときに無毛。 円錐花序は変化が多く、疎~密、外形が円筒形~ピラミッド形~倒卵形、長さ5~60cm×幅3~30 cm、主軸は長い~非常に短く、開きまたは狭まり、一次枝は1~5個の節に対の小穂をつける総状花序(rames;総)で終わる。 関節離断は普通、発生しないか、遅くなる。無柄の小穂は両性、長さ3~9㎜m×幅2~5㎜、楕円形~長円形。カルスは鈍形。苞穎は革質、無毛~密に粗毛がある、または毛があり、竜骨に普通、翼がある。第2苞穎は芒がなくまたは芒がある。芒は膝状に曲がり、捻じれ、長さ5~30mm。 葯は長さ2~2.8mm。 小梗は長さ1~2.6mm。有柄の小穂は線状披針形、長さ3~6 mm、普通は無柄の小穂よりも短く、雄性または不稔。 穎果は、しばしば熟すと、隙間のある苞穎の間から露出する。2n=20, 40。
品種) '730'PBR , 'A101'PBR , 'African Black' , 'Amish Rainbow' , 'Apache Red Sugarcane' , 'Black Amber' , 'Black Falcon' , 'Br116'PBR , 'Broom Corn Multi-Color Sorghum' , 'Bsk12'PBR , 'Buster' , Caudatum Group , 'Cms17a'PBR , 'Colored Uprights' , 'Dale' , 'DKS41-50' , 'DKS44-20' , 'DKS53-53' , 'DKS53-67' , 'Domintor' , 'Dpg934'PBR , 'Dwarf Mayo' , 'Eclipse' , 'Enforcer' , 'Gila River Kana' , 'Gnome' , 'Gnoumanin' , 'Great Sorghum' , 'Honey Drip' , 'India Red Popping' , 'Iowa Sweet' , 'Kana' , 'King Milo' , 'King Sorghum Mix' , 'Liberty White' , 'Longfuliang 1' , 'Mayo' , 'Mennonite' , 'Onavas Red' , 'Pacific MR 32' , 'Pahat' , 'Pr88y92'PBR , 'Red Amber' , 'Red Broom Corn' , 'Rls0401'PBR , 'Rls0402' , 'Rls0501'PBR , 'Rls0502'PBR , 'Rls0504'PBR , 'Rls0701'PBR , 'Rls0903'PBR , 'Rls1001'PBR , 'Rls1002'PBR , 'Rls1003'PBR , 'Rls1006'PBR , 'Rls1101'PBR , 'Rls1102'PBR , 'Rls1201'PBR , 'Rls1207'PBR , 'Rls1301r'PBR , 'Rls1302r'PBR , 'Rls1401r'PBR , 'Rls1702b'PBR , 'Rls1704b'PBR , 'Rsk1'PBR , 'Rsk21'PBR , 'Rsk36'PBR , 'Sadje' , 'San Felipe Pueblo' , 'Sand Mountain' , 'Santa Fe Red' , 'Sk19'PBR , 'Sofin' , 'Striker' , 'Sugar Drip' , 'Sumac' , 'Sydney'PBR , 'Tarahumara Popping' , 'Tasagui' , 'Texas Black' , 'Tiedjan' , 'Tiger' , 'Tunisan' , 'Umbrella' , 'White African' , 'White Broom Corn' , 'Yellow Bonnet' , 'Yuantian No.1' , 'Yuanza 502'
3 Sorghum halepense (L.) Pers. セイバンモロコシ 西蕃蜀黍
synonym Sorghum propinquum auct. non (Kunth) Hitchc.
synonym Sorghum halepense (L.) Pers. var. propinquum sensu Ohwi
インド、ニコバル諸島、スリランカ、西ヒマラヤ(ネパール)、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、パキスタン、アフガニスタン、北コーカサス、トランスコーカサス、ラオス、タイ、ベトナム、トルコ、中東(パレスチナ、サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、レバノン-シリア、オマーン、湾岸諸国)、ヨーロッパ(マデイラ、キプロス、東エーゲ海諸島)、アフリカ(エジプト、アルジェリア、チャド、チュニジア、モロッコ、リビア、カーボベルデ、カナリア諸島)原産。中国名は石茅 shi mao。英名はJohnson Grass , Johnsongrass , Aleppo millet grass。別名はオオセイバンモロコシ。世界的に広く帰化してしまった畑の害草。日本で広がったのは戦後、現在では道端で普通に見られる。若葉には青酸が含まれ、牧草とはならないようである。
多年草。太い根茎が横に広がる。稈は0.5~2m、直径0.4~2㎝、節間は無毛、平滑、硬く、光沢があり、節に短い伏毛がある。葉は無毛、長さ10~80㎝×幅(0.5)1~4㎝で、中肋が太くて目立ち、縁はざらつく。葉舌は長さ2~6㎜、膜質、著しい縁毛がある。葉鞘は無毛、平滑。円錐花序は長さ10~50㎝×幅5~25㎝、、赤褐色、枝は半輪生状に1~4個。小穂は芒のない有梗(有柄)の雄性小穂2個又は1個と、大きくて芒のある無梗の両性小穂が対になっている。両性の無梗小穂は苞頴に包まれ長さ3.8~6.5㎜×幅1.5~2.3㎜。カルスは鈍形、毛がある。苞頴は長さ4~5㎜、光沢のあり、ほぼ革質、伏毛がある。上側の護頴は膜質、芒がないかまたは芒があり、芒は膝状に曲がり、長さ9~13(16)㎜、捻じれる。葯は長さ1.9~2.7㎜。小梗は長さ1.8~3.3㎜。有柄の雄性の小穂は長さ3.6~5.6㎜、苞穎は膜質~革質、芒は無い。頴果が熟してくると苞頴が黒褐色になり、光沢が増し、より硬くなり、穎果は長さ約3㎜、熟しても露出しない。2n=20, 40。いくつかの異倍数数も報告されている。
3-1 Sorghum halepense (L.) Pers. f. muticum (Hack.) C.E.Hubb. ヒメモロコシ 姫蜀黍
synonym Sorghum halepense (L.) Pers. var. muticum (Hack.) Honda
別名はノギナシセイバンモロコシ。
セイバンモロコシの小穂の芒が見えない品種である。変種として分類する見解もあり、変異の範囲内として分類しない見解もある。
4 Sorghum nitidum (Vahl) Pers. モロコシガヤ 蜀黍茅 広義
synonym Sorghum nitidum (Vahl) Pers. var. majus auct. non (Hack.) Ohwi
synonym Sorghum nitidum (Vahl) Pers. subsp. dichroanthum (Steud.) T.Koyama
日本(本州の紀伊半島以西、四国、九州、沖縄)、韓国、中国、台湾、ブータン、インド、インドネシア、ミャンマー、ニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ。 北東オーストラリア、太平洋諸島原産。中国名は光高粱 guang gao liang。牧草地、草が茂った丘の中腹、里山の棚田の土手、溜池土堤などの草地、ススキ草原などに生える。
多年草。緩い房状になる。稈は直立し、高さ0.6~2m、節は淡色の開出毛がある。 葉鞘は無毛または直軟毛がある。葉身は線形、長さ10~40(~50)㎝×幅0.4~1 ㎝、無毛からヒスパニック、基部にひげを生やしている。葉舌は長さ1~1.5mm。 円錐花序は外形が披針形、長さ15~30㎝、無毛だが、節に柔らかい毛がある。一次枝は輪生しい、単純で、屈曲性があり、長さ2~5㎝、下部は裸出する。 総状花序は枝の先につき、壊れやすく、2~4個の小穂の対で構成されている。節間と小梗には褐色の縁毛がある。無柄小穂は卵状披針形、長さ3.5~5 mm。第1苞穎は革質、熟すと黒褐色になり、光沢があり、中間より下部には光沢があり、上部と縁は褐色の剛毛がある。上側の護穎は芒が無または有、芒は長さ1~1.5㎝。小穂は普通、雄性、楕円形、長さ3~3.7 mm、紙質、薄褐色。花期および果期は夏~秋。2n=10, 20。
4-1 Sorghum nitidum (Vahl) Pers. var. dichroanthum (Steud.) Ohwi モロコシガヤ 蜀黍茅
本州(紀伊半島以西)、四国、九州、琉球;朝鮮半島(南部)、中国大陸(南部)、マレーシア。低地~低山の里山の明るい草地などに生える。
多年草。稈は房状になり、高さ50~100㎝、節に白色毛が輪生する。葉は長さ20~50㎝×幅5~10㎜、中央脈は白色で目立ち、縁は著しくざらつく。円錐花序は直立し、長さ10~25㎝、枝は各節に数個輪生し、長さ2~6cm、細く、波状に屈曲し、頂部に長さ1~1.5㎝の総を1個つける。総は数個の小穂がつき、節間に赤褐色の毛がある。無柄の小穂は広披針形、長さ4~5㎜、先は鋭形、黒褐色、革質で光沢があり、褐色の長毛に覆われる。有柄の第1小穂と無柄の第2小穂が対になってつき、第1小穂は雄性、ときに短い芒がある。第2小穂は両性で、護穎に長さ2~2.5㎜の芒がある。花期は9~11月。
4-2 Sorghum nitidum (Vahl) Pers. var. nitidum コモロコシガヤ
現在では変種に分けない。
4-2-1 Sorghum nitidum (Vahl) Pers. var. nitidum f. aristatum C.E.Hubb. シラゲモロコシガヤ
5 Sorghum propinquum (Kunth) Hitchc.
中国、台湾 、インド、スリランカ、カンボジア、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ニューギニア、カロリン諸島、クック諸島、マリアナ諸島、原産。中国名は拟高粱 ni gao liang。
6 Sorghum virgatum (Hack.) Stapf
アフリカ(チャド、エジプト、マリ、モーリタニア、ニジェール、セネガル、スーダン)、中東(レバノン-シリア、パレスチナ)原産。
7 ハイブリッド
(2) Sorghum bicolor subsp. ×drummondii (Steud.) de Wet ex Davidse
synonym Sorghum sudanense (Piper) Stapf
東半球に普通で、USAにもみられる。英名はchicken corn , sudangrass。
一年草。稈は高さ4m以下、比較的頑丈。普通、総(rames)はほとんどが3~5節あり、ゆっくり、関節離脱する。無柄の小穂は長さ5~6㎜、披針形~楕円形。穎果は成熟時に露出しない。
8 その他ハイブリッド
品種) 'Allu Jola' , 'Dgc 303'PBR , 'Dgc307' , 'DKS26-60' , 'DKS28-05' , 'DKS29-28' , 'DKS36-06' , 'DKS37-07' , 'DKS38-88' , 'Nerum Boer Popping' , 'Rox Orange' , 'Samurai 1' , 'Samurai 2'
モロコシ[栽培ソルガム]の系統分類
(参考7)Sorghum bicolor (L.) Moench(栽培ソルガムと呼ばれる)の最古の考古学的な遺物は紀元前8000年のもので、ナイル川上流のナブタプラヤ(Nabta Playa)で発見された野生のソルガムで、栽培種ではなく、穀物が小さく、もろい花序軸をもつものである。栽培ソルガムはニジェール川流域で、紀元前7000年~5000年頃にかけて、野生のソルガムであるアルンジナセウム(arundinaceum)から栽培種化されたと考えられている。栽培ソルガムはアフリカ全土に広がり、その過程でエチオピアの高原から半乾燥サヘルまでの幅広い環境に適応する様々な栽培種が生まれた。その後、ソルガムはインドと中国に広がり、アメリカ大陸に渡り、最終的にオーストラリアにまで広がった。
栽培ソルガムの様々な栽培種は5つの基本系統種(basic races)とその組み合わせによる10の中間系統種(races)に分類される。それらは小穂/穂などの形態のみで分類され(Harlan&de Wet 1972)、特定の種まで遡ることができる。栽培ソルガムは全て2倍体 (2n=2x=20)であり、'grain sorghums'、'broomcorns'、'sweet sorghums'または'sorgo'などと呼ばれる多数の品種がある。
5基準系統種 major races(basic races)
Race (1) Sorghum bicolor Bicolor race バイカラー(B)
synonym Sorghum bicolor (L.) Moench subsp. bicolor ナミモロコシ
最も基本のグレインソルガム grain sorghums (ソルガムきび)である。
バイカラー系統種(races)は、最も原始的なグレインソルガムであると考えられ、ヨシモロコシ(亜種 verticilliflorum)の複合体から進化したと考えられているが、その起源については不明ともいわれる。栽培化以来、それはアフリカおよびインド~インドネシアまでのアジアの多くの農業地域に広がっている。この系統は中型の開いた円錐花序が特徴であり、長くてわずかに硬い花序枝をもち、長く、包む苞穎が先につく。苞穎は厚く、革質で、脈が不明瞭。第1苞穎の先端は凹み、毛がある。有柄の小穂は宿存する。穀粒は楕円形~ほぼ球形だが、長くなり、一般にサイズが小さく、花序に宿存し、苞穎にしっかりと抱かれてほとんど包まれる。小梗は短い。種子、苞穎、植物の一部が一般的に高度に着色されている。この系統種は、収量がかなり少なく、高さが中程度で、大量に分げつ(tiller)する傾向がある。
亜系統) Bicolor , Dochna(甜高粱 tian gao liang) , Nervosum(コウリャン) , Nervosum-kaoliang , Nervosum-broomcorn , Sudanense(スーダングラス)
① Sorghum bicolor Dochna group サトウモロコシ
synonym Sorghum saccharatum (L.) Moench
synonym Sorghum dochna (Forssk.) Snowden
synonym Sorghum bicolor (L.) Moench‘dochna’ synonym Sorghum bicolor 'Saccharatum'
英名はsweet sorghum , forage sorghum , sorgos , Chinese sugar cane。中国名は甜高粱 tian gao liang。別名はカザリモロコシ。ほうきを作るために使用される品種を含み、中国では穀物や飼料用に広く栽培されている。茎がジューシーで甘く、飼料やサイレージ、甘味料を作るために利用される。 稈は甘いジュースを含む。円錐花序は長さ50cm以下。枝は総状花序または散房花序、下部のものは円錐花序の長さの半分またはそれ以上。 無柄の小穂は広楕円形~倒卵形。苞穎は甲殻質で、中間より上に条線状に脈がある。穀物は楕円形または楕円状長円形、苞穎に包まれるか、わずかに突き出る。 ホウキモロコシは高さ2~3m。葉は幅広く大きい。夏、茎頂に大きな円錐形の花穂をつける。小穂は長楕円形、長い屈折した芒(のぎ)があり黄褐色に熟す。果穂から箒を作る。花期は夏。 品種) 'Dulciusculum' サトウモロコシ , 'Hoki' ホウキモロコシ 箒蜀黍 , MN635(No33)
② Sorghum bicolor (L.) Moench Nervosum group コウリャン 高粱
synonym Sorghum nervosum Besser ex Schult.
synonym Sorghum bicolor (L.) Moench‘nervosum’
主に中国北部で穀物用に栽培されている。中国名は多脉高粱 duo mai gao liang。別名はコウリョウ。caudatum-bicolor系統種のものもある。
円錐花序は細長く、密で、外形が楕円形、長さ40㎝以下。無柄の小穂は楕円形~広楕円形。苞穎は紙質、全体に目立つ脈がある。穀物は広楕円形、苞穎を超えて突き出る。
③ Sorghum bicolor (L.) Moench nothosubsp. drummondii (Nees ex Steud.) de Wet ex Davidse スーダングラス
synonym Sorghum x drummondii (Nees ex Steud.) Millsp. et Chase
synonym Sorghum sudanense (Piper) Stapf
synonym Sorghum bicolor 'Sudan grass'
英名はgrass sorghum , sudan grass , wild sudan grass , garawi(Africa) , 'shattercane' 。牧草、サイレージ、干し草に使われる。 1年草、直立し、房状になり、高さ3m以下、直径3~9㎜、多数、疎に分枝し、しばしば支柱根(prop roots)があるが、根茎はなく、節に毛がある。葉は多数。葉鞘は大きく無毛。葉身は線形、先は漸尖形、長さ15~30(~60)cm×幅8~15(~25)㎜、無毛。葉舌は膜質、長さ約2㎜。円錐花序は長さが幅の2倍あり、卵状ピラミッド形、開き、長さ15~35(~75)cm、2次枝があり、ときに3次枝がある。小穂は対につく。無柄の小穂は長さ5.5~7.5㎜、小穂が最終的に落下するときに、花序軸の節間の上部が付着する。苞穎はまばらに毛があり、光沢があり、成熟するとほとんど無毛になる。上側の小花の護穎は芒があり、芒は長さ16㎜以下で、基部が捻じれる。有柄の小穂は、無柄の小穂とほぼ同長だが、幅が狭い。穎果は様々、苞穎に包まれ、穀物は成熟時に露出しない。
品種) 'Donetskaya 5' , 'Mironovskaya 8'
④ Sorghum bicolor 'Technicum'
synonym Sorghum vulgare var. technicum (Körn.) Jáv.
英名はbroom corn , Florence whisk , Italian whisk
種子が小さく、花序軸は非常に短いが、散形花序は長く、強い繊維状の枝をもち、長さ30~100㎝。花やほうきに使われる。 (2n=20)
Race (2) Sorghum bicolor Guinea race ギニア(G)
西アフリカに分布し、森林内に生える。南アフリカにも広がっている。 ギニア系統種は約3000年前に発生したといわれている。ギニアは西アフリカの森林地域で広く栽培され、野生のarundinaceumと同所性(sympatric)であることから、ギニア系統種は一次の森林の草である野生のarundinaceum系統種から別れて独立したと考えられている。しかしながら、verticilliflorum-aethiopicum複合体よりもarundinaceumとのより近い親和性は確認されていない。ギニアは森林内で生育するが、一次的には主にサバンナの穀物であり、おそらく、元になるバイカラー系統種からの初期の選抜系統種として西アフリカのサバンナで生まれたものであり、アフリカのサバンナ全体に広がり、南アジアでも広く栽培されている。また、南部アフリカのギニアは非常に酷似し、アフリカ南部の湿度の高い地域にも類似系統種が存在するため、ギニアの起源の場所は西アフリカと推定されている。 ギニア系統種は、長く、ゆるく、鈍く、垂れ下がった円錐花序が特徴。 無柄の小穂は成熟すると開き、穀物が露出する。苞穎は内巻き、広く開き、毛のある芒が目立つ。有柄の小穂は宿存性と脱落性の両方がある。 穀物は小~中程度で、両凸面形で、ほぼ卵形だが、平らになるものもあり、色は薄い傾向があり、わずかに着色するものもある。株は高さが中~高で、収量は少ない傾向がある。 亜系統) Conspicuum , Guineense , Margaritiferum , Roxburghii
Race (3) Sorghum bicolor Caudatum race カウダツム(C)
Caudatum系統種はアフリカのチャリナイル言語の話者と密接に関連しており、ナイジェリア北東部、チャド、スーダン、エチオピア、ウガンダに広く分布している。カウダツムは主に初期に栽培ソルガムが栽培された地域に分布が限定されており、このため、初期のナミモロコシ(ソルガム栽培種)と野生のソルガム複合体との交配に由来すると考えられている。この系統がインドでは発生せず、この地域で発生したすべてがギニアとデュラの交配から発生したわけではないため、ギニアやデュラよりも若くなければならないと考えられる。カウダツムは農業的に最も重要な系統種の1つであり、高収量と優れた種子品質を有するための遺伝子を提供する。これは、世界中の現代の育種プログラムにおいて最も重要な遺伝資源の1つになっている。
カウダツム系統種は円錐花序が中型~大型、長円形、密集~わずかに開き、毛があり、丈夫な花序と硬い一次枝をもつ。無柄の小穂は卵形~楕円形、一方、有柄の小穂は脱落性。苞穎は革質、有毛、大きな穀粒よりも短い。穀粒は片側が平らで、反対側が丸いかまたは膨らみ(亀の背中)、普通、チョーク白色または着色される。 多くは劣性スプレッダー遺伝子を持つ。 草丈は一般に中程度~高く、普通、高収量である。
亜系統) Caudatum , Caudatum-kaura , Caudatum-nigricans , Dobbs , Nigricans , Nigricans-feterita , Sumac , Zerazera
Race (4) Sorghum bicolor Kafir race カフィア(K)
synonym Sorghum caffrorum (Retz.) P. Beauv.
synonym Sorghum bicolor var. feterita
カフィア系統種はアフリカ南部が主な分布域で、ナイジェリア北部にも広く分布する。起源を裏付ける明らかな証拠はないが、それは北アフリカの初期のソルガム栽培種に由来し、主にアフリカのバンツー語を話す人々(Bantu speakers)によって南に運ばれたと考えられている。その分布と形態が野生のverticilliflorumと類似しているともいわれている。
カフィア系統種は茎は乾き、硬く、ジューシーではない。円錐花序が直立し、細長く、ほとんどが半小型で円筒形であるのが特徴。 枝と無柄の小穂は毛があるが、苞穎は成熟時にほとんど光沢がある。苞穎は中程度の革質であり、穀粒よりもはるかに短く、広楕円形、ときに扁平になり、平らまたは両凸面になる。株は中程度の高さで、一般的に高収量である。
亜系統) Caffrorum
Race (5) Sorghum bicolor Durra race デュラ(D)
synonym Sorghum durra (Forssk.) Stapf
エチオピア、スーダン、サハラ砂漠の西部に分布し、インドで栽培されている。
デュラ系統種はヨシモロコシ(野生のモロコシ)の遺伝子移入から生じた可能性があることが示唆されている。デュラは初期のソルガム栽培種から選抜されたものであり、紀元前3000年以前にインドに導入されたものと推定されている。エチオピアでは野生型のデュラ系統種が連続的に分布するため、エチオピアで発生したことは明確で、モロコシが野生の形態で侵入し、より乾燥した条件に適応して、デュラ系統種が発達したと考えられている。 デュラはスーダンを通って西に移動し、サハラの南縁の下側のより乾燥した地域をに広がり、その後、アフリカの角を通って最終的にインドに移動したと推定されている。 デュラは系統種は円錐花序が硬く、密で小型であるのが特徴である。円錐花序は、卵形~長円形~菱形であり、密にビロード状の毛で覆われる。花序柄はしばしば後ろに反曲するが、たまに直立する。円錐花序の枝は短く、半直立で毛がある。花序軸は長いものから隠れるものまで様々である。有柄の小穂は大きく、宿存するが、無柄の小穂は倒卵状楕円形~菱形。苞穎は下半分の上が革質であり、中央の横しわによりわずか~強く凹む。 苞穎の下半分には強い脈があり、先が紙質。苞穎は薄く着色する傾向がある。穀粒は一般的に中型~大型で、両凸面形、先が広く、基部がくさび形。株は高さが中程度~高く、質が良い。 亜系統) Cernuum(セルナム=アズキモロコシ) , Nandyal
① Sorghum bicolor 'Cernuum' アズキモロコシ
synonym Sorghum cernuum (Ard.) Host
synonym Sorghum bicolor Durra group
中国の新疆ウイグル自治区で穀物と飼料のために栽培されている。中国名は弯头高粱 wan tou gao liang。
円錐花序は楕円形または卵状楕円形、密集し、長さ8~20㎝、湾曲または直立する。無柄の小穂は広卵形、帯白色。苞穎は薄い紙質、横しわがあり、密に白色の絨毛があるか無毛になる。穀粒は淡色、ほぼ円形~円形、普通、かなり平らで、苞穎を超えて突き出る。
【中間種】基準種の組み合わせ
Race (6) guinea-bicolor (GB)
亜系統) Dochna-honey[Lure No.28] , Dochna-roxburghii[Narkatia Shittajpur]
Race (7) caudatum-bicolor (CB)
亜系統) Caudatum-bicolor[A112-3] , Caudatum-dochna[255 Triter] , Nigricans-bicolor[J73]
Race (8) kafir-bicolor (KB)
亜系統) bicolor-kafir[Lura] , Dochna-kafir[Uki No.37]
Race (9) durra-bicolor (DB)
亜系統) Dochna-bicolor[Getetie No.78] , Dochna-durra[Sweet Sorghum Jones] , Durra-dochna[Unnamed-R1,4] , Subglabrescence[Aklamoi Red , Col.R-71] , Subglabrescence-milo
① Sorghum bicolor Subglabrescenssynonym Sorghum subglabrescens (Steud.) Schweinf. & Asch.
synonym Sorghum vulgare var. subglabrescens (Steudel) A.F.Hill
東アフリカ、アラビアに分布。英名はmilo , African milo。
Race (10) guinea-caudatum (GC)
亜系統) Caudatum-guineense[Col , ElObeid8-1 , Koeky] , Nigricans-guineense[Nyan Dok]
Race (11) guinea-kafir (GK)
亜系統) Caffrorum-roxburghii[Nebraska6350]
Race (12) guinea-durra (GD)
亜系統) Durra-roxburghii[Karkatia Salimpur] , Durra-membranaceum[Col. El Obeid 8-2 , Frerik]
Race (13) kafir-caudatum (KC)
亜系統) Caudatum-kafir[Monshal] , Caffrorum-birdproof[Framiola DL/59/1539] , Caffrorum-darso[EC21360, G29] , Caffrorum-feterita[Suki PS2985]
Race (14) durra-caudatum (DC)亜系統) Caudatum-durra[J-16] , Nigricans-durra[Bonkum] , Durra-nigricans[Feterita Fuyoumi]
Race (15) kafir-durra (KD)
亜系統) Durra-feterita/kaura[Unnamed R1,38]
参考
1) Flora of ChinaSorghum
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=130722
2) Plants of the World Online| KewscienceSorghum
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:331290-2
3) World Flora OnlineDSorghum
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000035801;jsessionid=2240DDA25D8EE73A36912793312EDFBC
4) World Checklist of Vascular PlantsSorghum
https://wcvp.science.kew.org/
5) FNA - Flora of North AmericaSorghum
http://beta.floranorthamerica.org/Sorghum
6) Tropical ForagesSorghum (annual)
https://www.tropicalforages.info/text/entities/sorghum_annual.htm
7) Achieving sustainable cultivation of sorghum Volume 1 (pp.3-65)
Classifying the genetic diversity of sorghum: a revised classification of sorghum
https://www.researchgate.net/publication/326272541_Classifying_the_genetic_diversity_of_sorghum_a_revised_classification_of_sorghum
8) Office of the Gene Technology Regulator
The Biology of Sorghum bicolor (L.) Moench subsp. bicolor (Sorghum)
https://www.ogtr.gov.au/sites/default/files/files/2021-07/the_biology_of_sorghum.pdf
9) cultivated Sorghum - ICRISATcultivated Sorghum
http://www.icrisat.org/what-we-do/crops/sorghum/Taxonomy/taxdetails.htm
10) Breeding Sorghum for Diverse End UsesSorghum subglabrescens Race
https://books.google.co.jp/books?id=2aRqDwAAQBAJ&pg=PA36&lpg=PA36&dq=Sorghum+subglabrescens%E3%80%80Race&source=bl&ots=bR3WW4pORw&sig=ACfU3U2LAskxCRU5-cRmucqXoETmWpifCw&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwiDub-eyJX3AhVLDN4KHaHvB7oQ6AF6BAgCEAM#v=onepage&q=Sorghum%20subglabrescens%E3%80%80Race&f=false