ネナシカズラ 根無葛

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Flora of Mikawa

ヒルガオ科 Convolvulaceae  ネナシカズラ属

英 名 Japanese dodder
中国名 金灯藤 jin deng teng
学 名 Cuscuta japonica Choisy
ネナシカズラの花序
ネナシカズラの花2
ネナシカズラの花
ネナシカズラ花後
ネナシカズラ花冠の鱗片
ネナシカズラ未熟な果実
ネナシカズラ熟した果実
ネナシカズラ
ネナシカズラ果実
ネナシカズラ種子
ネナシカズラ茎
花 期 8~10月
高 さ つる性
生活型 1年草
生育場所 丘陵、山地
分 布 在来種  北海道、本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、中国、ロシア、ベトナム
撮 影 設楽町 14.9.23
つる性の寄生植物で、葉緑素がなく、全体的に黄白色。長いつるを伸ばして寄主にからみつき、寄生根をだして養分を吸収する。茎は直径1~2㎜の針金状、淡黄色~紫色を帯び、紫色の斑点がある。葉は退化して長さ2㎜以下の鱗片状。長さ約3㎝以下の短い穂状花序に小さな花を多数つける。花は白色、長さ3~5㎜の鐘形、花冠の先が5裂し、裂片は尖る。花後に花冠は褐色になり、裂片は閉じ、後に脱落する。雄しべは5個、花冠の喉部(裂片と互生)につき、花糸はほとんど無い。葯は黄色。花冠内部の雄しべの下につく鱗片はへら状、先部が粗く裂ける。花柱は合着して1個、長さ約1.5㎜。柱頭は2裂し、ほぼ円錐形。萼は白色、萼片は5個、鈍頭、果時に残り、次第に落ちる。蒴果は長さ4~5㎜の楕円形、熟してくると褐色~赤紫色を帯び、1~4個の種子を入れる。蒴果が褐色になる前の色が白色と緑色の2タイプある。種子は長さ3~4㎜、黄色~褐色。
 ミドリネナシカズラ form. viridicaulis は茎が緑色の品種。
 タイワンネナシカズラ var. formosana もアメリカにも帰化している。花が長さ4~7㎜。柱頭が四角形。
 ハマネナシカズラ Cuscuta chinensis は海岸に生え、ハマゴウなどの他の植物に巻きついて寄生する。花冠は白色、長さ約3㎜、直径約2㎜、先が5裂し、裂片は反曲しない。雄しべ5個、雌しべ1個は花冠より短く、花冠から突き出ない。花柱は離生して2個。雄しべの真下の位置、花冠筒部の内面に、縁が房状になった長さ約1㎜の膜質の鱗片がある。萼は白色、先が5裂し、萼の中央脈が隆起する。花冠は花後に淡褐色になり、痩果が大きくなると、花冠の先が破れ、花柱が見えてくる。痩果が熟す頃には萼も淡褐色になる。種子は痩果に普通2~4個、長さ1~2㎜、卵形、淡褐色。2n= 28, 56
 マメダオシ Cuscuta australis はアメリカネナシカズラに似て茎が黄色で、茎がやや細い。花は白色、花冠裂片が花時に反曲せず、果時に反曲し、やや鈍頭。花柱は2個。
 アメリカネナシカズラ Cuscuta campestris も海岸にも多く、ハマネナシカズラより黄色が強い。萼が短く、中央脈が隆起しない。雄しべが花期に花冠から突き出る。

ネナシカズラ属

  family Convolvulaceae - genus Cuscuta

 寄生植物(parasitic)、帯黄色又は帯赤色、無毛。茎は絡み付き、糸状、寄主(host)から吸根(haustoria)により栄養を得る。葉は小さな鱗片に退化する。花は無柄又は短い花柄があり、ほとんどが球形の穂状花序、総状花序、又は束生の集散花序につき、4又は5数性。苞は小さいか又は無い。咢は合片咢(gamosepalous)、±深裂、又は咢片が離生。花冠は白色、帯ピンク色、又はクリーム色、つぼ形、筒状、球形、又は鐘形、筒部の基部の内側に雄しべ下の鱗片(infrastaminal scales)をもち、鱗片は縁が采状~小円鋸歯で膜質。雄しべは花冠裂片と同数、花冠の鱗片の上につき、花冠裂片に互生する。花粉は平滑。子房は2室。胚珠は各室に2個。花柱は1又は2本。柱頭は2個、類球形又は長くなり、ときに統合する。蒴果は卵形~球形、乾き又はときに肉質、横周裂開又は不規則に裂開する。種子は1~4個、無毛。胚は子葉が無く、糸状、螺旋状に曲がる。
 世界に約170種があり、主に北アメリカ、南アメリカに分布し、数種がアジア、ヨーロッパに分布する。

ネナシカズラ属の主な種と園芸品種

1 Cuscuta australis R.Br.  マメダオシ  豆倒し
 アジア、ヨーロッパ、オーストラリア原産。中国名は南方菟丝子 nan fang tu si zi 。英名はAustralian dodder 。
 茎は金色、細く、直径約1㎜。花序は側生、小型の集散花序である団散花序(glomerule)、花は少数~多数つき、ほぼ無柄。苞は鱗片状。花柄は長さ1~2.5㎜。咢は円蓋形、花冠筒部の長さと同長。咢片は3~5個、長円形~円形、しばしば不等長、長さ0.8~1.8㎜、先は円形。花冠は白色又はクリーム白色、円蓋形、長さ約2㎜。花冠裂片は宿存し、直立、卵形~長円形。雄しべは花冠の湾入部につき、裂片より短い。鱗片は筒部より短く、深く、2分裂し、縁は采状になる。子房は扁球形。花柱は2本、等長又は不等長。柱頭は球形。蒴果は宿存する花冠に包まれ、扁球形、直径3~4㎜、不規則に裂開し、横周裂開ではない。種子は4個、帯褐色、卵形、長さ約1.5㎜、ザラつく。花期は7~10月。

2 Cuscuta campestris Yuncker  アメリカネナシカズラ
  synonym Cuscuta pentagona auct. non Engelm.
  synonym Cuscuta pentagona Engelm. var. calycina Engelm.
 北アメリカ、南アメリカ原産。中国名は原野菟丝子 yuan ye tu si zi 。英名はcommon dodder, golden dodder, field dodder , yellow dodder。海岸の砂地、河原、荒地に生える。
 1年草。つる性。茎は直径約1.5㎜の黄色の糸状で、他の草に巻きつき、多数の寄生根(こぶ状の突起)から養分を吸収する。寄生根の先端は三角形の楔形である。発芽時には通常の根があるが、寄生根で養分を吸収し始めると根は枯れてしまう。茎の途中が大きく膨れているのは虫えいである。葉は微小な鱗片状。花柄は長さ約1㎜。花冠は白色、直径約3㎜の球形、先が5裂し裂片が反曲する。雄しべは5個、花冠裂片の基部で花冠と合着し、花期には直立して突き出す。雄しべの真下の位置、花冠筒部の内面に、縁が房状になった長さ約1㎜の膜質の鱗片がある。葯は卵形、花糸より短い。花柱は2個、離生する。萼も白色、先が浅く5裂し、裂片の先が丸い。蒴果は直径2~3㎜、ほぼ球形。花柱、花冠、萼が果時にも残る。種子は長さ約2㎜、無毛。2n=56。花期は7~10月。

3 Cuscuta chinensis Lam.  ハマネナシカズラ  浜根無葛
 日本(本州の中部地方以西、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、インド、スリランカ、インドネシア、タイ、西南アジア、エチオピア、オーストラリア原産。中国芽鋭は菟丝子 tu si zi 。海岸の砂地、河原、荒地に生える。
 1年草。つる性の寄生植物で、葉緑素がなく、全体的に淡黄~紫褐色。茎は直径約1.5㎜の糸状、ハマゴウなどの他の植物に巻きついて寄生する。鱗片葉は薄膜質で卵形。花柄は長さ約1㎜。花冠は白色、長さ約3㎜、直径約2㎜、先が5裂し、裂片は反曲しない。雄しべ5個、雌しべ1個は花冠より短く、花冠から突き出ない。花柱は2個。雄しべの真下の位置、花冠筒部の内面に、縁が房状になった長さ約1㎜の膜質の鱗片がある。萼は白色、先が5裂し、萼の中央脈が隆起する。花冠は花後に淡褐色になり、痩果が大きくなると、花冠の先が破れ、花柱が見えてくる。痩果が熟す頃には萼も淡褐色になる。種子は痩果に普通2~4個、長さ1~2㎜、卵形、淡褐色。2n= 28, 56。花期は7~10月。

4 Cuscuta epilinum Weihe  アマダオシ  亜麻倒し
  synonym Cuscuta epilinum Weihe ex Boenn.
 カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、イラン原産。英名はflax dodder , flax dodder。世界に広く帰化。
 クシロネナシカズラに似るが、花が、普通、5裂し、咢裂片が尖る点、 大半がアマに寄生する点で区別される。
 茎は細い。花は密に束生し、果時に直径8~10㎜。咢片は先が急に鋭形、花冠を緩く包む。花冠は長さ3~3.5㎜(発育の悪いものは2㎜のものもある)。花冠裂片は花冠筒部より短く、広三角形、先は急に鋭形。雄しべは花冠裂片より短い。鱗片は質がごく薄く、花冠筒部の長さの約1/2、しばしば2裂し、先はまばらに采状になる。花柱はごく短く、柱頭の長さの1/2又はそれ以下、初め長さ0.5㎜、後に約1㎜になる。柱頭は短く、長さ約0.25㎜、太い。蒴果は扁球形、直径約3㎜、薄壁。

5 Cuscuta epithymum (L.) Murray  ツメクサダオシ 爪草倒し
 西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ原産。北アメリカ、南アメリカ、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどに帰化し、日本でも野生化している。英名はclover dodder , common dodder , dodder , lesser dodder , clover dodder
 葉や根が無い寄生植物。葉は小さな鱗片に退化している。茎は無毛、糸状(太さ0.25~0.4㎜)、黄色、赤色、又は紫色。花は7~25個、束生し、無柄で、小型の球形につく(小型の団散花序)。花は長さ2.5~3.0㎜、咢片は5個、花弁は5個。咢は杯形、咢片は長さが幅より長い。花冠筒部は咢より長い。雄しべは花冠から突き出す(花時に雄しべが花冠裂片から突出するのが特徴)。葯は楕円形。花柱は子房の頂部から伸び、普通、子房と同長。果実は球形の蒴果、横周裂開する(circumscissile)し、枯れた花冠から突き出る。種子は各蒴果に4個、小さく、直径約1㎜。

6 Cuscuta europaea L.  クシロネナシカズラ 釧路根無蔓
 日本(北海道)、中国、インド、カシミール、西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ、北アメリカ、南アメリカ原産。中国名は欧洲菟丝子 ou zhou tu si zi 。英名はgreater dodder。
  つる性の寄生植物。茎は帯黄色又は帯赤色、糸状、無毛。初め地上に生えるが、寄主に巻きつくと根が無くなる。葉は鱗片状。花序は側生、小型の団散花序(glomerule)。花が少数~多数つく。花柄は長さ1.5㎜以下。咢は円蓋形。咢片は4又は5個、三角状卵形、ときに、不等長、長さ約1.5㎜。花冠はピンク色、つぼ形、長さ2.5~3㎜。花冠裂片は4個、ときに5個、宿存し、しばしば、後屈し、三角状卵形。雄しべは花冠の切れ込みの下につく。花糸は葯長より長い。葯は卵状円形。鱗片はごく薄く、倒卵形、2裂又はときに全縁、控えめに縁が采状になる。子房はほぼ球形。花柱は2本。柱頭は散開又は曲がり、糸状、花柱とほぼ同長又は短い。蒴果は枯れた花冠に覆われ、ほぼ球形、直径約3㎜、横周裂開する(circumscissile)。種子はしばしば4個、淡褐色、楕円形、長さ約1㎜、ザラつく。2n=14。花期 は7~8月。

7 Cuscuta japonica Choisy  ネナシカズラ  根無葛
 日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、ロシア、ベトナム原産。中国名は金灯藤 jin deng teng。英名はJapanese dodder。
 1年草。つる性の寄生植物で、葉緑素がなく、全体的に黄白色。長いつるを伸ばして寄主にからみつき、寄生根をだして養分を吸収する。茎は直径1~2㎜の針金状、淡黄色~紫色を帯び、紫色の斑点がある。葉は退化して長さ2㎜以下の鱗片状。長さ約3㎝以下の短い穂状花序に小さな花を多数つける。花は白色、長さ3~5㎜の鐘形、花冠の先が5裂し、裂片は尖る。花後に花冠は褐色になり、裂片は閉じ、後に脱落する。雄しべは5個、花冠の喉部(裂片と互生)につき、花糸はほとんど無い。葯は黄色。花冠内部の雄しべの下につく鱗片はへら状、先部が粗く裂ける。花柱は合着して1個、長さ約1.5㎜。柱頭は2裂し、ほぼ円錐形。萼は白色、萼片は5個、鈍頭、果時に残り、次第に落ちる。蒴果は長さ4~5㎜の楕円形、熟してくると褐色~赤紫色を帯び、1~4個の種子を入れる。蒴果が褐色になる前の色が白色と緑色の2タイプある。種子は長さ3~4㎜、黄色~褐色。花期は8~10月。
7-1 Cuscuta japonica Choisy f. viridicaulis (Honda) Sugim.  ミドリネナシカズラ  緑根無葛
 茎が緑色の品種。茎に赤紫の斑点が多いものは茎が赤く見える。果実も緑色。

7-2 Cuscuta japonica Choisy var. formosana (Hayata) Yuncker  タイワンネナシカズラ
 台湾原産。中国名は台湾菟丝子 tai wan tu si zi
 花冠は長さ4~8㎜。花柱の裂片は4稜形。

参考

1) Flora of China
 Cuscuta
 http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=108730
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Cuscuta
 http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30005574-2
3)GRIN
 Cuscuta
 https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=3194
4)雑草研究 Vol. 26 p44-51(1981)
 ネナシカズラ属の検索について
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/weed1962/26/1/26_1_44/_pdf