タカサブロウ 高三郎

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Flora of Mikawa

キク科 Asteraceae タカサブロウ属

別 名 モトタカサブロウ
学 名 Eclipta thermalis Bunge
Eclipta prostrata auct. non (L.) L. 
タカサブロウの花
タカサブロウの総苞
タカサブロウ果実
タカサブロウ果実上面
タカサブロウの痩果
タカサブロウの茎
タカサブロウ
タカサブロウの葉
タカサブロウの葉裏
タカサブロウの葉の鋸歯
花 期 7~9月
高 さ 10~60㎝
生活型 1年草
生育場所 水田、道端、湿地、畑
分 布 在来種  本州、四国、九州
撮 影 幡豆町 09.7.24
アメリカタカサブロウとの分類がはっきりしなかった頃はタカサブロウと呼ばれていた。最近はアメリカタカサブロウと区別し、モトタカサブロウとも呼ばれている。タカサブロウの和名の由来は高三郎という人が、この草の茎を使って文字を書いたという説と、古名のタタラビソウが転訛したものという説があり、はっきりしない。モトタカサブロウは東アジアの湿潤温帯地域を起源とし、少なくとも弥生時代には日本にあったとされている史前帰化植物と推定されている。学名は以前はEclipta prostrataされていたが、Eclipta thermalisに訂正されている。
 茎は赤紫色で、伏した剛毛があり、下部は横に這い、枝分かれし、上部は直立する。葉は対生し、柄がなく、基部に向って幅がしだいに狭くなり、基部はやや広がる傾向がある。葉の鋸歯はアメリカタカサブロウより細かく、やや不明瞭。鋸歯の先端が赤味を帯びることがある。頭花は幅約7㎜。総苞片は2列で、先が三角状に尖り、アメリカタカサブロウより幅が広くて丸みを帯び、上から見ると、総苞片の間が比較的狭い。痩果は長さ2.6~2.9㎜、幅約1.7㎜の4綾形(舌状花では3綾形)で、側面の中心にこぶ状の突起があり、縁は平滑で翼状になる。痩果の上面は狭菱形。痩果の上面が緑色の未熟なうちは痩果の翼が白色である。モトタカサブロウとアメリカタカサブロウは同じような場所に生育し、混成する場合もある。混成する場合はモトタカサブロウが茎も太く、高くなる。アメリカタカサブロウは茎が細く、花が小さく、上部の葉は幅がやや狭く、鋸歯がやや明瞭。また、痩果がやや小さく、痩果の幅が狭く、側面の縁が凸凹である。

タカサブロウ属

  family Asteraceae - genus  Eclipta

 1年草又は多年草、直立し、分枝し、剛毛がある。葉は対生、歯がある。頭花は茎や枝先に頂生、又は腋生、花序柄があり、異性花。総苞は鐘形。総苞片は覆瓦状、約2列。花托は平ら又は凸面、パレアがあり、パレアは芒状。周辺小花は両性、ほとんどが稔性、花弁は小さく、2裂し、白色~帯黄色。中心小花は両性、花冠は筒状、緑白色~帯黄色、4又はまれに5裂する。葯は全縁又はごく短く、基部で2裂する。花柱の枝は鈍形、先にマミラがある(mammillate)。痩果は厚く、早く熟して落ち、周辺小花の痩果は3角(かど)があり、中心小花の痩果は扁平、4角(かど)がある。冠毛は無又は王冠又は2~3個の芒がつく。
 世界に約9種あり、ほとんどが温暖な温帯~熱帯の新世界に分布し、旧世界に導入されている。日本には1種自生する。

【タカサブロウ属の種】
Eclipta alatocarpa Melville [オーストラリア]
Eclipta alba (L.) Hassk []
Eclipta angustata Umemoto & H.Koyama

Eclipta elliptica DC.  [アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ]
Eclipta leiocarpa Cuatrec.  [南アメリカ(コロンビア)]
Eclipta megapotamica (Spreng.) Sch.Bip. ex S.F.Blake  アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ]
Eclipta paludicola Steud. [ブラジル]
Eclipta platyglossa F.Muell.  [オーストラリア]
Eclipta prostrata (L.) L.  [南アメリカ、北アメリカ]
Eclipta thermalis Bunge  [日本]
Eclipta turkica Yild. [トルコ]

タカサブロウ属の主な種

1 Eclipta angustata Umemoto & H. Koyama
 日本(九州、沖縄)、中国、台湾、インド、ネパール、タイ、ベトナム、フィリピン、シンガポール、インドネシア、マレーシア に分布。
  1年草、剛毛があり、根はひげ根。茎は平伏、ときに直立し、高さ60㎝以下、又は斜上、しばしば節からひげ根を出す。葉は対生、単葉、披針形~槍状楕円形~槍状線形、長さ2~10㎝×幅4~25㎜、先は鋭形、基部は漸尖形、縁はわずかに小鋸歯があるか又はほぼ全縁、両面に硬い伏した直軟毛(pilose)がある。花序は腋生及び頂生。花序柄は細く、長さ0.5~4㎝。 頭花は放射状頭花( radiate)、花後に幅約9㎜ 、花托は平ら状、わずかに凸面、パレアがある。パレアは線形、やや剛毛状、脆く、伏した軟毛があり、中央のパレアはときに、欠ける。総苞は球状鐘形、高さ約5㎜×直径約5㎜。総苞片は2列、外総苞片は草質又は先端が草質、ほぼ等長。内総苞片は狭く、短い。周辺小花は頭花に多数、2~3列につき、雌性、花弁(rays)は白色、披針形、長さ2.5~3㎜×幅約0.4㎜、先は2裂、基部の筒部は長さ0.2~0.5㎜。中心小花は頭花に約30個、両性、稔性、花冠は白色、筒状、長さ約1.5㎜、先はほとんどが4歯、基部の筒部は長さ0.4㎜。痩果は厚く、長さ2~2.5(~2.8)㎜×幅約0.8㎜、粗く、しばしば3稜形で1面が総苞片に対生い、又は4稜形で頭花の半径方向に扁平。冠毛は王冠がほとんどすたれ、縁から離れ、又は痩果が切形。2n = 22。花期は12~8月。
Strigose, annual herbs from fibrous roots; stems prostrate, sometimes erect to 60 cm tall, or

2 Eclipta prostrata (L.) L.   アメリカタカサブロウ
  synonym Eclipta alba (L.) Hassk.
  synonym Eclipta alba f. prostrata (L.) Hassk
 インド、フィリピン、ニューカレドニア、タイ、インドネシア
 北アメリカ、南アメリカ原産。英名はfalse daisy , white eclipta , eclipta , white twinheads。中国名は鳢肠 li chang 。道端、湿地、水田、荒地などに生える。
 1年草。高さ20~70cm。茎には伏した剛毛があり、下部は横に這い、よく枝分かれし、上部は直立する。葉は対生し、ほとんど柄がなく、下部の葉は幅がしだいに狭くなり、翼状となる。葉の鋸歯は上部の葉まで明らかであることが多い。頭花は幅約5㎜、総苞片の先は三角状に尖って幅が狭く、上から見ると総苞片の間が離れている。痩果は長さ2.1~2.5㎜、幅約1.1㎜の4綾形(舌状花では3綾形)、側面にこぶ状の突起があり、縁には凸凹(うね)がある。痩果の上面は菱形。痩果の上面が緑色の未熟なものに、黒色のしみが出る。2n=22。花期は8~10月。

【Flora of Chinaの解説】
 1年草、茎は直立、斜上、又は平伏、高さ60(~100)㎝以下、剛毛状の直軟毛があり、基部で分枝する。葉は披針形、長さ3~10㎝×幅0.5~2.5㎝、紙質、両面に密に剛毛状の軟毛があり、基部は狭くなり、無柄又は短葉柄があり、縁は小鋸歯縁、先は次第に尖鋭形。頭花は幅約6㎜、花序柄は細く、長さ2~4.5㎝。総苞は球状鐘形、長さ約5㎜×幅6~7㎜、紙質、果時に幅11㎜以下まで大きくなる。総苞片は5~6個、2列、長円形、鋭形。外総苞片は長い。周辺小花は2列、花弁は長さ2.5~3㎜×幅約0.4㎜、2裂又は全縁。中心小花は多数、花冠は長さ約1.5㎜、4裂する。痩果は約・長さ2.8㎜×幅1.5㎜、縁にはうねがある。花期は6~9月。

【The Jepson Herbariumの解説】
 ±全体に剛毛がある。茎は10~100㎝。葉身は長さ2~10㎝、線形、披針形、又は狭楕円形、全縁又は短い歯があり、先端は鋭形。花序柄は長さ0~15+㎜。総苞は直径4~10㎜。総苞片は長さ4~5㎜、鋭形。周辺小花の花冠は長さ1.5~3㎜。中心小花の花冠は長さ1.5~2㎜。痩果は長さ1.7~2.2㎜、倒卵形、平滑又は±こぶがある。冠毛は長さ0.2㎜以下。2n=22。花期は通年。、
【Flora of North America】
 葉身味は長さ2~10㎝×幅4~30+㎜。周辺小花の花弁は長さ約2㎜、中心小花の花冠は長さ約1.5㎜。痩果は長さ約2.5㎜。2n = 22。(E. albaとして)

※ アメリカタカサブロウは北アメリカ、南アメリカ原産であり、世界に広く帰化している。学名はEclipta prostrata (L.) L.とされ、Eclipta alba (L.) HasskはEclipta prostrata (L.) L. のsynonymとされている。2007年の研究報告により、 Eclipta angustata が新種として報告され(参考5)、その中でEclipta prostrata とEclipta albaが別種として解説されている。しかし、KewsienceやFlora of Chinaでは広義にEclipta prostrataとし、Eclipta thermalis もまた、別種として認めていない。The Plant ListなどではEclipta thermalisを独立種としている。


2-1 【狭義のEclipta prostrata (L.) L. 】 
  synonym Eclipta zippeliana Blume オニタカサブロウ
 インド半島に主に分布し、インドネシア、フィリピン、ニューカレドニア、タイ、ミャンマーなどアジア南東部に散在分布する。茎、花序柄、葉の主脈に柔らかい長い毛があり、痩果は長円形~倒卵形で、こぶが少しある。
 1年草、直立又は平伏。茎は帯赤色、斜上し、高さ5~45㎝、しばしば節からひげ根を出し、硬い伏した及び開出する直軟毛(pilose)がある。葉は対生、単葉、楕円状披針形、長さ0.75~5.5㎝×幅1.5~15㎜、先は狭い鋭形、基部は狭くなり、短い葉柄があり、縁は大きな鋸歯があり、両面に硬い伏した直軟毛( pilose)がある。花序は上部の葉腋の短い花序柄の上に1~2個つく。花序柄は細く、長さ0.5~4㎝。 頭花は放射状頭花( radiate)、花後に幅約6㎜ 、果時に幅約9㎜。
花托は平ら状、わずかに凸面、パレアがある。パレアは線形、長さ3~3.5㎜、伏した軟毛がある。総苞は鐘形、高さ約5㎜×直径3~5㎜。総苞片は2列。外総苞片は草質、長円状卵形長さ4~6㎜×幅1.5~3㎜、先は鋭形、硬い伏した直軟毛(pilose)覆われる。内総苞片は狭く、短い。周辺小花は頭花に多数、2~3列につき、雌性、花弁(rays)は白色、披針形、長さ1.5~2.5㎜×幅約0.25㎜、先は2裂、微細な毛があり、基部の筒部は長さ0.5㎜。中心小花は頭花に10~15個、両性、花冠は白色、筒状、長さ1.5~1.75㎜、先は4裂。痩果は長円形又は倒卵形、長さ3~3.5㎜幅約1.5㎜、3稜形、又は扁平、各面の中央にこぶの縦の1列をもち、縁は薄くなり、いくつかのこぶをもち、先は切形、まばらに微細な軟毛がある。冠毛は2個の小さい弱い鱗片で長さ約0.25㎜。2n = 22。花期は12~8月、おそらく通年。

2-2 【狭義のEclipta alba (L.) Hassk.】
  synonym Eclipta prostrata auct. non (L.) L.
 アメリカ原産。日本の各地に帰化。第2次大戦後の1948年の神戸がおそらく最初の日本での確認地。
 1年草、剛毛があり、根はひげ根。茎は平伏、斜上、ときに直立し、高さ80㎝以下、しばしば節からひげ根を出す。葉は対生、単葉、披針形~披針状線形、長さ2~15㎝×幅0.4~3㎝、先は尖鋭形、基部は漸尖形、縁は明瞭な歯があり、両面に硬い伏した直軟毛(pilose)がある。花序は腋生及び頂生。 頭花は放射状頭花( radiate)、花後に幅8~10㎜ 、花托は平ら又はわずかに凸面、パレアがある。パレアは細く、もろく、やや剛毛状、中央のパレアはときに、欠ける。総苞は球状鐘形、高さ4~5㎜×直径4~5㎜。総苞片は1~2列、外総苞片は草質又は先端が草質、ほぼ等長。内総苞片は狭く、短い。周辺小花は頭花に多数、2~3列につき、雌性、稔性、花弁(rays)は白色、披針形、長さ1.8~2.5㎜×幅約0.3㎜、先は2裂、基部の筒部は長さ0.2~0.3㎜。中心小花は頭花に約30個、両性、稔性、花冠は白色、筒状、長さ約1.3㎜、先はほとんどが4歯、基部の筒部は長さ0.3㎜。痩果は角(かど)のある倒卵形、長さ2~2.5(~2.8)㎜、粗く、しばしば3稜形で1面が総苞片に対生い、他は通常4稜形で頭花の半径方向にやや扁平。冠毛はすたれた王冠に近い。2n = 22。花期は7~11月。

3 Eclipta thermalis Bunge   タカサブロウ 高三郎
  synonym Eclipta prostrata auct. non (L.) L.
 日本(本州、四国、九州、沖縄)、中国原産。別名はモトタカサブロウ(元高三郎)。水田、道端、湿地、畑などに生える。
 1年草。高さ10~60㎝。茎は赤紫色で、伏した剛毛があり、下部は横に這い、枝分かれし、しばしば節~根を出し、上部は直立する。葉は対生し、柄がなく、葉身は類長円形~披針形、長さ2~13㎝幅0.4~3.3㎝、先は鋭形、基部は漸尖形(基部はやや広がる傾向がある)、縁はほぼ全縁、多少、小歯があり(葉の鋸歯はアメリカタカサブロウより細かく、やや不明瞭、鋸歯の先端が赤味を帯びることがある)、両面に硬い伏した直軟毛(pilose)がある。花序は腋生及び頂生。頭花は放射状頭花( radiate)、幅約7㎜、花後に幅9~12㎜。花托は平ら又はわずかに凸面、パレアがある。パレアは細く、もろく、やや剛毛状、中央のパレアはときに、欠ける。総苞は球状鐘形、高さ約5㎜×直径約5㎜。総苞片は2列、外総苞片は草質又は先端が草質、ほぼ等長。内総苞片は狭く、短い(先が三角状に尖り、アメリカタカサブロウより幅が広くて丸みを帯び、上から見ると、総苞片の間が比較的狭い。)。周辺小花は頭花に多数、2~3列につき、雌性、稔性、花弁(rays)は白色、披針形、長さ1.7~2.0㎜×幅約0.3㎜。中心小花は頭花に約25個、両性、稔性、、花冠は白色、筒状、長さ約1.3㎜、先はほとんどが4歯、基部の筒部は長さ0.3㎜。痩果はほぼ倒卵形、長さ2~2.8㎜、平滑な翼以外は粗く、しばしば3稜形で1面が総苞片に対生するか、または通常4稜形で頭花の半径方向にやや扁平。冠毛はすたれた王冠状、普通、2個のかなり長い芒をもつ。 2n = 22。花期は7~11月。
 痩果は長さ2.6~2.9㎜、幅約1.7㎜の4綾形(舌状花では3綾形)で、側面の中心にこぶ状の突起があり、縁は平滑で翼状になる。痩果の上面は狭菱形。痩果の上面が緑色の未熟なうちは痩果の翼が白色である。モトタカサブロウとアメリカタカサブロウは同じような場所に生育し、混成する場合もある。混成する場合はモトタカサブロウが茎も太く、高くなる。アメリカタカサブロウは茎が細く、花が小さく、上部の葉は幅がやや狭く、鋸歯がやや明瞭。また、痩果がやや小さく、痩果の幅が狭く、側面の縁が凸凹である。花期は7~9月。

Eclipta prostrata 類似種の区別(参考5)

1. 茎と葉に長い開出する多細胞の毛がある。葉はほぼ無柄、縁は波打つ。
 痩果は少数のこぶがあり、普通、中央の縦の1列に並ぶ。
........狭義の E. prostrata 
1. 茎と葉は伏した4細胞の毛をもつ。
 葉は無柄、縁は波打つ又は波打たない。
 痩果は多数もこぶをもち、中央に多少数列の縦につく

2. 葉縁は波打つ。痩果は角張り倒卵形、表面全体が粗い
........2. 狭義のE. alba 
2. 葉縁は波打たない。痩果は倒卵形又は類倒卵形、中央だけが粗く、
 両面が平滑

3. 痩果は倒卵形、薄褐色、こぶはやや不明瞭。葉は類長円形~披針形、
 葉縁は多少、小歯状
........3. E. thermalis 
3. 痩果は類倒卵形、金褐色、こぶは明瞭。葉は披針形~線状披針形、
 葉縁は多少、全縁
........4. E. angustata 

参考

1) Flora of Chinar
 Eclipta
 http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=117867
2) GRIN
  Eclipta
  https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=4114
3)Flora of North America
  Eclipta
  http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=117867
4) Plants of the World Online - Kewscience
 Eclipta
 http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:326241-2
5) A new species of Eclipta (Compositae: Heliantheae) and its allies in eastern Asia
 THAI FOR. BULL. (BOT.) 35: 108-118. 2007. SHINYA UMEMOTO & HIROSHIGE KOYAMA
 E. angustata Eclipta alba , Eclipta prostrata , E. thermalis
 24209-Article Text-53109-1-10-20141125.pdf
6)The Jepson Herbarium
 Eclipta prostrata
 https://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=2527