ミズタマソウ 水玉草

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Flora of Mikawa

アカバナ科 Onagraceae ミズタマソウ属

中国名 南方露珠草 nan fang lu zhu cao
学 名 Circaea mollis Sieb. et Zucc.
ミズタマソウの花序
ミズタマソウの無毛の蕾
ミズタマソウの開花初期
ミズタマソウの花弁
ミズタマソウの花柄の腺毛
ミズタマソウの花柄の腺毛
ミズタマソウの開出した萼片
ミズタマソウの果実
ミズタマソウの熟した果実
ミズタマソウ
ミズタマソウの熟した果実
ミズタマソウ葉表
ミズタマソウ葉裏
ミズタマソウ葉の基部が浅い心形
花 期 8~9月
高 さ 25~60(150)㎝
生活型 多年草
生育場所 山地の林内
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、東南アジア、インド、ロシア
撮 影 豊田市   12.9.6
  [果実]  12.10.24
和名は小さな丸い果実に白色の毛がつき、水玉のように見えることから。
 地下に匐枝を伸ばし広がる。茎は直立し、短い屈毛があり、節が赤色を帯びることが多い。葉は対生し、長さ3~16㎝、幅2~5.5㎝の卵状長楕円形、先は尖り、基部は円形、縁に浅い鋸歯があり、長い葉柄がつく。ときに葉の基部が浅い心形になることがある。茎頂や葉腋の総状花序に小さな花をつける。花弁は白色、2個、長さ0.7~1.8㎜、幅1~2.6㎜、先が2裂し、1/4~1/2まで切れ込む。萼片は緑色、無毛、2個つき、長さ1.6~2.9㎜、幅1~1.5㎜、花弁より大きい。雄しべ2個。柱頭は2裂。花柄の毛はまばらで、少ない。果実は2室、長さ2.6~3.5㎜(柄を含めて5~7㎜)、幅2~3.2㎜のやや扁平な球形の堅果、4本の縦溝があり、かぎ状毛が密生し、種子は2個入り、裂開しない。果柄は長さ5~7㎜。2n=22
 よく似たウシタキソウは全体に毛が多く、葉幅がやや広く、基部が心形。萼に毛が密生し、蕾の毛が目立つ。果実の縦溝が不明瞭。
 タニタデは茎が無毛で赤味を帯び、葉も無毛。水玉も赤味を帯びる。花弁の切れ込みが浅い。果実が細長く、果柄が長い。

ミズタマソウ属

  family Onagraceae - genus Circaea

 多年草、根茎があり、しばしば、大きいコロニーを作る。葉は葉柄があり、対生、花序では互生で苞状になる。花序は単純又は分枝する総状花序、主茎に頂生し、短い側枝の先につく。花は2数性、花筒(floral tube)をもつ。萼片と花弁は互生。花弁は倒心形又は倒角卵形(obtrullate)、先にノッチがあり、白色又はピンク色。雄しべは萼片に対生する。蜜腺は花筒の中にあるか又は肉質の円筒形又は輪状の盤のような花筒の開いた上に突き出る。子房は室が1又は2個。胚珠は各室に1個。花柱は雄しべの長さと同長又は長い。柱頭は2裂。果実は非裂開の蒴果、硬い鉤状の毛をもち、コルク質組織の目立つ列が有又は無。種子は平滑、紡錘形又は広棍棒形~狭卵形、内部の子房に±固く付着する。2n=22。
 世界に11種があり、北半球の温帯と北方樹林に分布する。

ミズタマソウ属の主な種と園芸品種

1 Circaea alpina L. ミヤマタニタデ 深山谷蓼 広義
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾、北半球の温帯に広く分布。英名はenchanter's nightshade , small enchanter's nightshade 。中国名は高山露珠草 gao shan lu zhu cao 。北緯30~65度の森林では周北性だが、低緯度では高地に限られる。海抜5000m付近の森林、茂み、草の茂った高山地帯、涼しく湿った湿った場所、苔むした岩や丸太の上に生える。
 多年草、高さ3~50㎝、無毛または軟毛があり、茎には短い鎌状の毛があり、花序には短い腺毛がある。根茎は先で塊茎が太くなる。葉は菱形(trullate)または楕円形からほぼ円形まで極めて変異が多く、長さ1~11㎝×幅0.7~5.5(~8)cm、基部は狭い楔形~心形、縁はほぼ全縁から鋭い鋸歯があり、先は鋭形~短い尖鋭形。総状花序は頂生、長さ0.7~2~12(~17)㎝。小花柄は総状花序の軸に垂直(C. alpina subsp. caulescensおよびsubsp. angustifoliaの一部の植物)~斜上または直立し、基部に微細な剛毛状の小苞があるまたはない場合がある。芽は無毛、まれに無毛になる。花筒の長さはほとんど無いものから0.6㎜まで広範囲にわたる。萼片は広がるかわずかに反り返り、白色またはピンク色、ときに先端が紫色を帯び、まれに全体が紫色、長楕円形、卵形~広楕円形または三角状卵形、長さ0.8~2㎜×幅0.6~1.3㎜、無毛、先は円形~鈍形または先が丸い円錐形(mammiform)。花弁は白色、狭倒三角形、倒デルタ形、倒卵形~広倒卵形~凹んだ倒卵形、長さ0.5~2㎜×幅0.6~1.9㎜、先端の切れ込みは基本的にないか花弁の長さの半分まで。花弁裂片は円形から切形で、まれにいくらか円鋸歯状(C. alpina subsp. an gustifolia の場合)。雄しべは直立または斜上し、まれに広がり、花柱の長さと等しいかわずかに長い。蜜腺は完全に花筒内にあり目立たない。果時の小花柄および成熟した果実は長さ3.5~7.8㎜。果実は棍棒形または倒卵形で、長さ1.6~2.7㎜×幅0.5~1.2㎜、小柄に向かって滑らかに先細り、小室は1個、種子は1個、肋や溝はないが、小花柄は上面に沿って浅い溝として伸びる。2n=22 (C. alpina subsp. micrantha では不明)。
1-1 Circaea alpina L. subsp. alpina ミヤマタニタデ 深山谷蓼
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国(河北省、黒龍江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、山西省)、モンゴル、ロシア、カザフスタン、ミャンマー、ベトナム、トルコ、ヨーロッパ、北アメリカ原産。北半球の北緯30~65度の森林に広く分布するが、低緯度では高地に限られる。中国名は露珠草 lu zhu cao 。海抜2500m近くまでの湿地~湿潤地、苔むした岩や丸太の上に生える。
 多年草、高さ3~30cm。茎は無毛で、ときに花序に腺毛がある。葉は半透明で、卵形~広卵形、輪郭はまれに円形に近くなり、基部は心形~ほぼ心形、まれに切形または円形、縁は目立つ歯があり、先は短い尖鋭形~鋭形。花序は単純または基部に側花序をつけ、無毛~密に毛があり、短い腺毛がある。小花柄は花時に斜上または直立し、無毛で、基部に剛毛状の小苞がある。花は総状花序が伸長する前に開き、先端に密集する。芽は無毛。花筒はほとんどなく、長さ0.5㎜以下。萼片は長円形~卵形、ときに広楕円形、先は円形~鈍形またはわずかに先が丸い円錐形(mammiform)。花弁は白色、倒三角形~倒卵形、先端に切れ込みがあり、花弁の長さの1/4~1/2である。花弁裂片は円形。果実の鉤状毛は無着色。花期は6~8(~9)月。果期は7~9月。2n=22。
1-2 Circaea alpina subsp. angustifolia (Hand.-Mazz.) Boufford
 中国(四川省、西蔵、雲南省)原産。中国名は狭叶露珠草 xia ye lu zhu cao。標高2000~3600mの山地の湿った開けた場所、茂み、森林に生える。
 高さ7~35㎝。茎には毛がある。葉は光沢が鈍く、楕円形、菱形(trullate)、広菱形、または卵形、まれに広卵形、長さ1.4~4.5㎝×幅0.6~3㎝、基部は狭楔形~広楔形、縁は浅く小歯状、先は鋭形。花序は単純または基部に側総状花序があり、無毛または有毛、短い腺毛がある。小花柄は花時に斜上または総状花序の軸に垂直に散開し、無毛またはまれにまばらに短い腺毛がある。花は総状花序の伸長中または伸長後に開花し、±広く間隔が開き、基部に剛毛状の小苞(setaceous bracteole)がある。芽は無毛。花時に子房に鉤状毛がある。花筒は長さ0.2~0.3㎜。萼片は広卵形~長円状卵形、先は円形~鈍形。花弁は白色またはピンク色で、狭卵形~広卵形、先端の切れ込みは花弁の長さの1/5~1/3である。花弁裂片は円形~切形または微細な円鋸歯状である。果実の鉤状毛は紫色の色素を含む。花期は7~9(~10)月。果期は8~11月。2n=22。

1-3 Circaea alpina L. subsp. caulescens (Kom.) Tatew. ケミヤマタニタデ 毛深山谷蓼

  synonym Circaea caulescens (Kom.) Nakai ex H.Hara
  synonym Circaea alpina L. var. caulescens Kom.
  synonym Circaea alpina L. f. pilosula (H.Hara) Kitag.
  synonym Circaea alpina L. var. pilosula (H.Hara) H.Hara
  synonym Circaea x dubia H.Hara var. makinoi H.Hara
 日本、朝鮮、中国(安徽省、河北省、黒龍江省、吉林省、遼寧省、山東省、山西省)、モンゴル、ロシア原産。中国名は深山露珠草 shen shan lu zhu cao 。アジア南西部。海抜1500m付近の湿地、苔むした岩や丸太の上、冷温帯の落葉樹林や混交林、亜寒帯林の低地の乾燥した土壌に生える。
 高さ5~35㎝。茎には軟毛がある。葉は光沢がなく、卵形~広卵形~ほぼ三角形、長さ1.2~4.5㎝×幅0.6~3.5㎝、基部は円形~切形または心形、縁は浅い~顕著な歯があり、先は鋭形~短い尖鋭形。花序は無毛またはまれにまばらに腺毛がある。花柄は花時に斜上または総状花序の軸に垂直に散開し、無毛、基部に小さな小苞があるが、より一般的には小苞がなく短い腺突起がある。花は総状花序の伸長中または伸長後に開花し、花の間隔は±広くなる。芽は無毛。花時に子房に鉤状毛がある。花筒は長さ0.2~0.4㎜。萼片は狭卵形~広卵形または長円状卵形、先は円形~鈍形まれに先が丸い円錐形(mammiform)。花弁は白色またはピンク色、倒卵形~凹んだ倒卵形または倒三角形、先端の切れ込みは花弁の1/3~1/2の長さ。花弁裂片は円形。果実の鉤状毛は無色。花期は6~9月。果期は7~9月。2n=22。

1-4 Circaea alpina L. subsp. imaicola (Asch. et Magn.) Kitam. タイワンミヤマタニタデ 台湾深山谷蓼

  synonym Circaea taiwaniana S.S.Ying
 中国(安徽省、甘粛省、貴州省、河南省、湖北省、江西省、青海省、陝西省、山西省、四川省、西蔵、雲南省、浙江省)、台湾、インド、ブータン、ネパール、アフガニスタン、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。中国名は高原露珠草 gao yuan lu zhu cao 。標高(1500~)2000~4000mの渓流沿いの涼しく湿った場所、茂み、山地の落葉樹林および針葉樹林に生える。
 高さ3.5~45cm。茎には密~疎に毛が生える。葉は卵形~広卵形、まれに円状卵形、長さ2~7㎝×幅1.4~4.5㎝、基部は切形~円形まれに広楔形~ほぼ心形、縁はほぼ全縁~ときに顕著な歯状、先は鋭形~短い尖鋭形。花序は単純または分枝し、短い腺毛があり、まれに無毛。花時の小花柄は直立または斜上し、無毛。花は総状花序の先端に密集し、総状花序軸が伸長する前に開花し、基部に小さな剛毛状の小苞がある。芽は無毛で、まれに無毛になる。子房は花時に鉤状毛がある。花筒はほとんど無く、長さ0.3㎜。萼片は長円形~卵形、先は円形~鈍形。花弁は白色またはピンク色で、輪郭は狭卵形~広卵形で、先端の切れ込みは花弁の1/4~1/2の長さ。花弁裂片は円形。果実の鉤状毛は無色。花期は7~9(~10)月。果期は8~11月。2n=22。
1-5 Circaea alpina subsp. micrantha (A.K.Skvortsov) Boufford
 中国(甘粛省、四川省、西蔵、雲南省)、インド、パキスタン、ネパール、ブータン、ミャンマー原産。中国名は高寒露珠草 gao han lu zhu cao。標高3100~5000mの湿った茂みや針葉樹林、草の茂った高山地帯に生える。
 高さ4~25㎝。茎は無毛または微細な毛があり、まれに密に毛がある。葉は半透明で、狭卵形~広三角形、長さ(1~)2~6.5㎝×幅0.8~4㎝、基部は心形、まれに切形、縁は鋭い歯状~鋸歯状、先は鋭形または短い尖鋭形。花序は単純な総状花序または基部から1~2個、まれにそれ以上の側生の総状花序を生じ、密~疎に腺毛がある。花時の小花柄は斜上または直立し、無毛または腺毛があり、基部に剛毛状の小苞がある。花は総状花序が伸長する前に開き、先端に密集する。花芽は無毛。子房は無毛または花時に微細な鉤状毛が生える。花筒はほとんど無く、長さは0.4㎜。萼片は卵形~広卵形~長円状卵形、先は円形または先が丸い円錐形(mammiform)。花弁は白色またはピンク色で、倒三角形~倒卵形で、先端の切れ込みはないか、花弁の長さの1/5まで。花弁裂片はあっても、切形~円形。果実の鉤状毛は無色だが、紫色の色素を含むこともある。花期は6~9(~10)月。果期は7~11月。染色体数は不明。
1-6 Circaea alpina subsp. pacifica (Asch. & Magnus) P.H.Raven
 北アメリカ(アラスカ、カナダ、USA)原産。標高(0~)200~2700(~2900)mの冷帯、温帯の落葉樹林および混合林、森林の縁、河川沿いに生える。  茎は堅く、円柱形、押してもほとんど平らにならず、軟毛があり、少なくとも数本の反り返った鎌形の毛(falcate hairs)がある。葉柄は長さ1.5~5㎝、葉身 は長さ3~7.5(~11)㎝×幅2.5~5.5(~8)㎝、縁はほぼ全縁~微細な小歯状、基部は通常円形~ほぼ心形、まれに心形、先は鋭形~短い尖鋭形。花序は通常密生するが、まれにまばらで、腺微軟毛がある。花は総状花序の先端に束生し、総状花序の軸が伸びる前に開花する。花筒は長さ0.3~0.6㎜、花弁の先端の切れ込みは花弁の1/4~1/3の長さ、小花柄と成熟果実を合わせた長さは3.5~6.5㎜。2n=22。花期は夏。

2 Circaea canadensis (L.) Hill
 日本、朝鮮、中国、ロシア、カザフスタン、北アメリカ原産。
 分子及び形態学的分析によりCircaea lutetiana Linnaeusは C. canadensisとは別種であることが示された。
2-1 Circaea canadensis (L.) Hill subsp. canadensis
  synonym Circaea lutetiana subsp. canadensis (L.) Asch. & Magnus
 北アメリカ原産。英名はeastern enchanter's nightshade, enchanter's nightshade。標高0~600mの冷涼な温帯落葉樹林および混合林、森林の縁、小川沿いに生える。
 草本植物は無毛で、先端に腺毛がある。匍匐茎の先端には塊茎がない。茎は長さ20~90cm。葉柄は長さ(1.3~)2.5~5.5cm、葉身は狭卵形~広卵形または長円形、長さ5~16㎝×幅2.5~8.5㎝、基部は心形~円形、縁は小歯状、先は鋭形~わずかに尖鋭形。花序は長さ2.5~30㎝。花は花序軸が伸長した後に開花し、± ゆるやかに間隔をあける。小花柄は花時に広がり、長さ2.5~6.5㎜、基部に微細な剛毛状の小苞がある。花筒は長さ(0.4~)0.7~1.2㎜、漏斗形、蜜腺は花筒開口部から0.2~0.7㎜突出する。萼片は緑色または紫色、広楕円形~長円形~長円状卵形、長さ1.9~3.8㎜×幅1.2~2.4㎜。花弁は通常白色、まれにピンク色、広三角形から広倒卵形、倒心形、または広倒卵形、長さ(1.3~)1.6~2.9㎜×幅(1.5~)2.2~4㎜。先端の切れ込みは花弁の長さの1/3から1/2よりわずかに長い。花糸は長さ1.2~2.8㎜、花粉は非常に稔性(80% 以上)がある。花柱は長さ2.5~5.5㎜、花時に柱頭は葯に囲まれる。蒴果は梨形~ほぼ球形で、丸く、通常斜め、コルク状の顕著な肋と深い溝が小花柄まであり、長さ2.8~4.5㎜×幅1.9~3.6㎜。小花柄と成熟果実を合わせた長さは6.3~11.2㎜。2n=22。花期は夏。

2-2 Circaea canadensis (L.) Hill subsp. quadrisulcata (Maxim.) Boufford  エゾミズタマソウ 蝦夷水玉草

  synonym Circaea lutetiana L. subsp. quadrisulcata (Maxim.) Asch. et Magnus

  synonym Circaea quadrisulcata (Maxim.) Franch. et Sav.
  synonym Circaea lutetiana auct. non L.
  synonym Circaea x sterilis Boufford  ヤマタニタデ

  synonym Circaea x canadensis (L.) Hill var. rishiriensis H.Hara 

  synonym Circaea x intermedia auct. non Ehrh.
  synonym Circaea lutetiana auct. non L.
 日本(北海道、本州の関東地方北部、中国山地)、朝鮮、中国(河北省、黒龍江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル、山東省)、ロシア、カザフスタン原産。中国名は水珠草 shui zhu cao 。別名はヤマタニタデ。海抜0m付近~標高約1500mの冷温帯落葉樹林および落葉樹と亜寒帯の混合林に生える。
 高さ15~80㎝。根茎は塊茎ではない。茎は無毛又はまれに、まばらな鎌形の毛をもつ。葉は狭卵形~広卵形~長円状卵形、長さ4.5~12㎝×幅2~5㎝、基部は円形~類心形、まれに広楔形、縁には小歯があり、先は短い尖鋭形~長い尖鋭形。総状花序は長さ2.5~30㎝、単純又は基部で分枝する。花時の葉柄は総状花序の軸に垂直につき、有柄の腺毛をもち、基部に小苞は無い。花筒( floral tube)は長さ0.6~1㎜。咢片は後屈し、通常は紫色、長さ1.3~3.2㎜×幅1~1.7㎜。花弁は通常、ピンク色、長さ1~2㎜×幅1.4~2.5㎜、先のノッチは花弁の長さの1/3~1/2よりわずかに長い程度まで。蜜腺は目立ち、花筒を超えて突き出る。果時の花柄と熟した果実は長さ5.3~8.5㎜。果実はナシ形~類球形、長さ2.2~3.8㎜×幅1.8~3㎜、丸く、普通、斜め、花柄まで、目立つうねと深い溝がある。子房は2室。種子は2個。花期は6~8(~9)月。果期は7~9月。2n=22。

3 Circaea cordata Royle ウシタキソウ 牛滝草

  synonym Circaea kitagawae H.Hara
  synonym Circaea cardiophylla Makino
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、ロシア、インド、ネパール、パキスタン原産。中国名は露珠草lu zhu cao。山地の林内に生える。
 多年草。高さ20~60(150)㎝。全体に柔毛が密生する。茎は節も赤色を帯びない。葉は対生し、長さ5~12㎝、幅3~6㎝の卵形、浅鋸歯、長い葉柄があり、基部は心形。茎頂の総状花序に花を多数つける。総状花序は基長さ2~20㎝、基部で枝分かれする。萼片は淡緑色~白色、2個、長さ2~3.7㎜、幅1.4~2㎜の卵形、開出毛が密生し、蕾の毛が目立つ。花弁は白色、2個、長さ1~2.4㎜、幅1.2~3.1㎜の卵形、先が1/2~2/3まで2裂する。果実は2室、長さ3~3.9㎜、幅1.8~3.3㎜のやや扁平な水玉状、かぎ状毛が密生する。果柄は毛が密生し、長さ4.4~7㎜、果実の長さのほぼ2倍以下。花期は8~9月。

4 Circaea erubescens Franch. et Sav. タニタデ 谷蓼
 日本(北海道、本州、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は谷蓼 gu liao 。渓流沿に生える。
 多年草。高さ10~60(120)㎝。茎が普通、紅紫色を帯びる。茎、葉は無毛。葉は対生し、長さ2.5~10㎝、幅1~6㎝の卵形~披針形、先が尖り、基部は円形~浅い心形。葉縁に波状の鋸歯がある。基部で枝分かれする長さ2~20㎝の円錐花序に花をまばらにつける。萼に毛がなく蕾は無毛。萼片は紅紫色を帯び、長さ0.6~2.5㎜、幅0.8~1.2㎜、普通、花弁より長い。花弁は白色~淡紅色、2個つき、長さ0.8~1.7㎜、幅0.7~1㎜、先の切れ込みが花弁の1/10~1/5と浅く、やや波状になる。雄しべ2個。柱頭は2裂。果実(堅果)は2室、長さ1.7~3.2㎜、幅1.2~2.1㎜の倒卵形、縦溝が少なく、先が鉤状に曲がった毛が密に生え、水玉のように見える。果柄は無毛、長さ6~12㎜、果実の長さの2倍より長い。果実は熟しても裂開しない。花期は7~9月。2n=22。

5 Circaea glabrescens (Pamp.) Hand.-Mazz. 
  synonym Circaea cordata var. glabrescens Pamp.
 中国(甘粛省、西湖北省、陝西省、山西省、四川省)、台湾原産。中国名は秃梗露珠草 tu geng lu zhu cao。標高700~2500mの落葉樹林に生える。
 高さ12~80㎝、短く柔らかな鎌状に反り返った毛があり、まれに無毛。根茎は塊茎ではない。葉は狭卵形~広卵形で、長さ3.7~11㎝×幅1.8~5㎝、基部は円形またはまれにほぼ心形、縁は小歯状、先は尖鋭形~短い尖鋭形。総状花序は単純または基部で分岐し、長さ2~18㎝。花時の小花柄は総状花序の軸に垂直で無毛、その下部に剛毛状の小苞がある。芽は一般に軟毛があり、数本の長く真っ直ぐ~わずかに曲がった毛があり、たまに短い鉤状の毛がある。花筒は長さ0.9~1.3㎜。萼片は花時に反り返り、ピンク色または緑白色、長円形~ほぼ卵形、長さ1.8~3.3㎜×幅1.2~1.7㎜、先は鋭形または鈍形。花弁はピンク色、外形は扁円形~広倒卵形で、長さ1~1.9㎜×幅1.3~2.6㎜、先は倒心形、先端の切れ込みは花弁の約1/2の長さ。花弁裂片は広く円形。雄しべは開出し、花柱より短い。蜜腺は花筒内に完全に収まっており、目立たない。果時の小花柄と成熟果実は長さ4.5~8.5㎜。果実は長さ2.5~3.3㎜×厚さ1.6~1.8㎜、室は2個、種子は2個、倒卵形~梨形で、小花柄に向かって滑らかに細くなり、肋や溝はないが、小花柄から浅い溝が伸びる。種子は室ごとに1個。花期は7~8月。果期は8~9月。2n=22。

6 Circaea lutetiana L
 ヨーロッパ、ロシア、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、イラン、レバノン、シリア、トルコ、北アフリカ(アルジェリア、チュニジア)原産。英名はenchanter's-nightshade , common enchanter’s nightshade , broad-leaved enchanter's nightshade。森林内の深い日陰と湿った環境の窒素含有粘土に生える。
 多年草、高さ20~70㎝、冬には地上部が枯れて地下茎が残る。茎は細く、緑色、柔らかい毛が生えており、花序でよく分枝する。葉は対生し、単葉、広披針形、長さ4~10cm、上部に鋸歯があり、基部は円形まれにわずかに心形、光沢は無く鈍い。葉柄は全体に毛がある。花は白色または帯赤色、2 枚の花弁があり、長さ(1.5~)2~4㎜、2深裂し、長さは萼とほぼ同じ。雄しべは2本。柱頭は2裂する。花茎には腺毛が突き出ており、常に苞は無い。果実は長さ3~4㎜×幅2~2.5㎜、洋ナシ形、鉤状の剛毛がある。花期は6~8月( Flora Helvetica 2018)。
品種) 'Caveat Emptor' (v)

7 Circaea mollis Siebold et Zucc. ミズタマソウ 水玉草
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、東南アジア、インド、ロシア原産。中国名は南方露珠草 nan fang lu zhu cao。山地の林内に葉柄r。
 多年草。高さ25~60(150)㎝。地下に匐枝を伸ばし広がる。茎は直立し、短い屈毛があり、節が赤色を帯びることが多い。葉は対生し、長さ3~16㎝、幅2~5.5㎝の卵状長楕円形、先は尖り、基部は円形、縁に浅い鋸歯があり、長い葉柄がつく。ときに葉の基部が浅い心形になることがある。茎頂や葉腋の総状花序に小さな花をつける。花弁は白色、2個、長さ0.7~1.8㎜、幅1~2.6㎜、先が2裂し、1/4~1/2まで切れ込む。萼片は緑色、無毛、2個つき、長さ1.6~2.9㎜、幅1~1.5㎜、花弁より大きい。雄しべ2個。柱頭は2裂。花柄の毛はまばらで、少ない。果実は2室、長さ2.6~3.5㎜(柄を含めて5~7㎜)、幅2~3.2㎜のやや扁平な球形の堅果、4本の縦溝があり、かぎ状毛が密生し、種子は2個入り、裂開しない。果柄は長さ5~7㎜。花期は8~9月。2n=22。

7-1 Circaea mollis Siebold et Zucc. f. montana Hiyama ミヤマミズタマソウ 深山水玉草

 長野県、山梨県に分布。山地に生える。
 ミズタマソウの葉には常に長さ0.2㎜末満の短かい少し曲った毛があるが、ミヤマミズタマソウは葉に直立する長さ0.5~0.7㎜の毛があり、葉の裏面にも同様な毛がある。認められる。

8 ハイブリッド
(1) Circaea x decipiens Boufford  タニタデモドキ
 タニタデとエゾミズタマソウとの交雑種
(2) Circaea x dubia H.Hara  オオタニタデ
 タニタデとウシタキソウとの自然交雑種
(3) Circaea x mentiens Boufford  マルヤマタニタデ
 タニタデとミヤマタニタデとの交雑種
(4) Circaea x ovata (Honda) Boufford  ヒロハノミズタマソウ
  synonym Circaea mollis Siebold et Zucc. var. ovata (Honda) H.Hara
  synonym Circaea x hybrida auct. non Hand.-Mazz. 
  synonym Circaea mollis Siebold et Zucc. f. ovata (Honda) Okuyama 
 ウシタキソウとミズタマソウの自然交雑種
(5) Circaea x skvortsovii Boufford  ハヤチネミズタマソウ
 ウシタキソウとエゾミズタマソウとの自然交雑種

(6) Circaea erubescens Franch. et Sav. x C. mollis Siebold et Zucc. ミズタマタニタデ

 タニタデとエゾミズタマソウとの交雑種

参考

1) Flora of China
 Circaea
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=107126
2) GRIN
 Circaea
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=2622
3)Flora of North America
 Circaea
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=107126
4)Plants of the World Online | Kewscience
 Circaea
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:60436661-2
5)日本産ミズタマソウ属 - CiNii 論文
 日本産ミズタマソウ属  The Genus Circaea (Onagraceae) in Japan
https://ci.nii.ac.jp/naid/110003761068
6)植物研究雑誌 J. J. B. 33: 145 (1958)
 桧山庫三:ミズタマソウの一品種
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/33/5/33_33_5_4256/_pdf/-char/ja