ミドリハカタカラクサ 緑博多唐草
[別名] ノハカタカラクサ、トキワツユクサ(常盤露草)
[中国名] 白花紫露草 bai hua zi lu cao、
紫葉水竹草 zi ye shui zhu cao
[英名] white-flowered spiderwort, small-leaf spiderwort , wandering jew , inch plant
creeping Christian, green wandering Jew, inch plant, inch-plant
[学名] Tradescantia fluminensis Vell.
Tradescantia fluminensis Vell. 'Viridis'
Tradescantia albiflora Kunth
ツユクサ科 Commelinaceae  ムラサキツユクサ属
三河の植物観察
ミドリハカタカラクサの花序
ミドリハカタカラクサの鞘2
ミドリハカタカラクサの花
ミドリハカタカラクサの花
ミドリハカタカラクサの雄しべと毛
ミドリハカタカラクサの萼
ミドリハカタカラクサの果実
ミドリハカタカラクサの葉縁
ミドリハカタカラクサの鞘
ミドリハカタカラクサの斑入り
ミドリハカタカラクサの茎
ミドリハカタカラクサ
ミドリハカタカラクサの小さい花
ミドリハカタカラクサの果実
ミドリハカタカラクサの葉表
ミドリハカタカラクサの葉裏
ミドリハカタカラクサの平伏そろ茎の根
 ノハカタカラクサは別名トキワツユクサともいわれる。観賞用に昭和初期に白色の縦縞斑入りのシロフハカタカラクサTradescantia fluminensis 'Variegata' が輸入され、これの白斑が消えた緑色戻りが野生化したとされている。野生化の初期の頃は茎や花柄、葉裏などが紫色を帯び、結実するものであった(狭義のノハカタカラクサ)。最近、よく見られるものは全体に緑色で、全体に大きく、結実しないものである。この2タイプのうち、緑色で結実しないタイプをミドリハカタカラクサと呼び、分けるようになってきた。学名はTradescantia fluminensis Vell. 'Viridis' =Tradescantia viridis hort ex Gentil が採用されている。viridisはラテン語で緑色を意味する。 'Viridis'という園芸品種が売られていた訳ではなく、これもシロフハカタカラクサTradescantia fluminensis 'Variegata'の戻りともいわれている。広義にはミドリハカタカラクサを含めてノハカタカラクサという。シロフハカタカラクサに紫色を帯びるものと帯びないものなどがあり、三河で見られるものは完全に緑ではなく、茎の平伏する下部は紫色を帯び、少しだけ結実することもある。また、場所によっては黄白色の縦縞斑入りが少しだけ混じることがある。このため、学名はTradescantia fluminensist とした。
 オオトキワツユクサはシラフツユクサTradescantia fluminensis 'Albovittata' の緑戻りであり、全体に緑色で葉の大きいものである。Tradescantia albifloraとして別種に分類されていたこともあるが、現在はTradescantia fluminensisに含まれている。ただし、狭義に別種として分類していることもある。葉が長さ7~12㎝とされているが、最長17㎝の葉があった。
 ニュージーランド、オーストラリア、U.S.A.、などで野生化しているTradescantia fluminensis はほとんど結実せず、葉裏がわずかに紫色を帯びるものが多い。葉の形は卵形~楕円形~披針形など様々で、葉の長さは3~6㎝程度であり、Flora of north Americaでは長さ6~12㎝(おそらく、Tradescantia albifloraが含まれる)としている。花は直径1.5~2㎝。花弁は長さ7~10㎜。これに対してミドリハカタカラクサは葉裏まで緑色である。
【Tradescantia fluminensisの解説】
 多年草。茎は枝分かれし、腐葉中を根茎状に横に這い、先が直立~斜上し、又は傾伏する。葉は2列に互生し、無柄、基部は長さ(5)7~12㎜の鞘になる。葉身は披針状楕円形~卵状披針形~卵形~卵状長楕円、長さ(1.5)3~6(13)㎝、幅(1)~3(3.5)㎝、縁毛があり、先は鋭形、無毛。花序は枝先に頂生、花は束生し、15~20個の花をつける。苞は仏炎苞状、葉状、ときに縮小する。苞は2個つき、2個の無柄の散形状の集散花序が対になり、2個の苞の上に花が束生するように見える。花は明瞭な花柄があり、花柄は長さ1~1.5㎝、腺毛がある。萼片は長楕円形、長さ5~7㎜、中脈は腺のない軟毛(やや基部で腺毛も混じる)がある。花弁は3個、分離、白色、爪部がなく、長さ(4.5~7)7~10㎜。雄しべは6個、離生、花糸は白色、白色の毛が密生する。オーストラリア、ニュージーランド、アメリカなどで野生化しているものは普通、結実しない。果実は卵形の蒴果、3室、室に(1~)2個の種子がある。種子は灰色~黒色、並んだ窪みがある。2n= 40(2倍体 アルゼンチンのミシオネス州産)、2n=72(要注意外来生物に係る情報及び注意事項)、2n=60,72(ニュージーランド)、2n=108(Cambridge university)

【観察】
 三ヶ根山の麓には野生化した2タイプが見られる、明らかに大きさが異なる。隣接した群落もあった。①狭義のノハカタカラクサ:小形のタイプは原種に近いものと推定され、多数の結実が見られる。全体にやや小形で、茎や葉柄が赤紫色を帯びる。②ミドリハカタカラクサ:大形の緑色のタイプはほとんど結実しないが、近くに結実する小形のタイプの群生がある場所では、まれに結実し、種子もできるのではないかと推定される。花は小形のタイプの約2倍(ただし、直径1.3~1.7㎝の小さいものも混じることがある。)の大きさがある。枝を採取して部屋の中に放置しておいても、翌々日まで花が咲いたほど強い。葉の長さは3~6㎝といわれているが、7㎝ほどのものも混じり、花の無い茎につく大きなものは8㎝(最長9.5㎝、最大幅4.0㎝:豊川市内)を超える。葉が長さ7~12㎝の大きいものはオオトキワツユクアと別種に分類されることもあるが、10㎝以上ないとオオトキワツユクサとしない方がよい。萼の毛はバラツキがあり、長いものは1㎜を超えたものもみられる。これは狭義のノハカタカラクサにもみられる。ミドリハカタカラクサにはまれに黄白色の斑入りが見られることもあり、斑入りが緑色もどりを象徴している。
 ミドリハカタカラクサ 三ヶ根産麓のものは茎が枝分かれし、腐葉中を根茎状に横に這い、先が直立~斜上する。下部の横に這う茎の節から根を出し、節はやや膨らみ、節間の長さ3~9㎝、先は斜上し、少数、枝分かれする。這う茎の節の上には葉身の全くない筒状の鞘があり、斜上する茎の上部の鞘には葉身がつく。茎の上部の葉にほぼ対生して、葉鞘の中から長さ1~3㎝の花序枝や枝が出て分枝し、分枝した基部の1個には葉身の無い鞘がある(茎側につく場合と花序枝側につく場合がある)。ときに2本の枝が出る。この鞘は先が斜形で、先端が尖り、1本の帯状に短毛があり、縁に長毛がある。茎の色は緑色、下部の細く、這う部分の茎は赤紫褐色を帯びる。葉はほ2列に互生し、葉の基部は環状の鞘(茎の基部では節が膨らみ切れてしまう)になり、無柄、葉身は長さ30~70㎜、幅15~30㎜、花のつかない茎の葉は大きく、最大のものは長さ83㎜、幅36㎜(豊川市内のものは最大長さ95㎜、幅40㎜を確認)であり、楕円形~披針状卵形、先は鋭形、基部は広楔形~円形。葉縁は全縁、微細な縁毛(ルーペで確認可能)がある。葉の両面とも無毛、葉表は緑色、葉裏は淡緑色。葉の光沢は葉質が薄いため、乾き始めると葉表の光沢がやや弱くなりやすく、葉裏の光沢は強い。茎と鞘に幅が狭い1本の帯状に短毛があり、鞘の縁と葉身の基部に長毛があり、長いものは長さ3~4㎜。花序は頂生又は上部の葉に対生して花序枝を出し、先に苞(総苞ともいわれる)がつく。苞は仏炎苞状、2個が接してほぼ水平につき、無柄、対生でなく、上側が小さく、基部が距のように膨らむ。対の花序は一体になり1個の花序のように見え、花が15~20個程度(ほとんど結実せず、花が開花後すぐに枯れ落ちてしまうため、わかりにくい)、束生する。花は少しずつ咲き、普通、花序に1~2個ずつ咲く。花は幅(花弁の先端を結ぶ三角形に最長辺の長さ)12~18(19)㎜、花には明瞭な柄があり、花柄は長さ6~12㎜、上部に腺毛があり、基部に膜状の小苞がある。萼片は長さ5~7㎜、中脈には腺のない長さ0.2~1.1㎜の軟毛がある。花弁は3個つき分離、白色、三角状卵形、長さ7~10(11)㎜、、幅5~7㎜。雄しべは6個、花糸は細く、白色、基部に多数の細い長毛があり長毛は花糸とほぼ同長。葯は黄色、類扇形、扇形の左右の葯隔の端に楕円形の葯室がつき、先が裂開する。花粉は黄色。雌しべは1個。花柱は長さ約4㎜、白色。子房は長さ約1.5㎜、白色。果実は胞背裂開蒴果、まだ未熟であったため果実の大きさ、種子は確認していない。
[花期] 5~8月
[草丈] 40~60㎝(長さ約1m以下)
[生活型] 多年草
[生育場所] 道端、林縁、路傍、林床、水辺など、やや湿った日陰
[分布] 帰化種  南アメリカ(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)原産
[撮影] 蒲郡市 16.6.3
【ムラサキツユクサ属】
多年草、根茎は無い(根茎に似たrhizomatousとも表現される)、茎は傾伏、斜上、又は直立。葉はらせん状又は2列につき、さそり形花序(散形花序に似た対の集散花序ともいわれる)が偽頂生又は側生、単生、束生又は円錐花序をなし、無柄。苞は仏炎苞状。小苞は宿存性。花は放射相称花。萼片は分離又は基部で合着、舟形。花弁は分離又は基部で癒合する爪部がある。白色、ピンク色、卵形。雄しべ6個、すべて授粉能力があり、ほとんど等長又は花弁の前の3個が短い。花糸は無毛又は毛がある。葯室は楕円形~長楕円形、縦に裂開する。子房は3室、胚珠は室に2個。蒴果は3室、卵形。種子は室に(1又は)2個、類錐体、しわがあり、網状。へそは線形、小さい。

<類似種>
 ●原種 Tradescantia fluminensis(native species)
 詳細が不明であるが、ブラジルの原種は葉が大きく、葉が長さ12㎝に近く、花が直径約2㎝である。アルゼンチンの原種は葉が長さ1~6㎝、花が直径約1.5㎝とやや小さい。
 ポルトガル語名 nome vulgar, Erva-da-fortuna, Erva-galinha
 スペイン語名 Amor de hombre, Leandro Gómez,
         Santa lucía blanca ,
 ● シロフハカタカラクサTradescantia fluminensis 'Variegata'は 葉が波打ち、白色の縦縞斑が入る。中国名は花叶水竹草。いろいろなタイプがある。茎や花柄は紅紫色を帯び、葉裏などが淡紅紫色を帯び、花は直径約1㎝と小さい。全く紫色を帯びないものや白色でなく、黄色の縦縞班のものもある。ノハカタカラクサの茎や花柄が紅紫色のものがシロフハカタカラクサの茎が紅紫色のタイプの白班が消えた緑戻りであり、原種に近く、結実が多い。
 ●ミドリハカタカラクサTradescantia fluminensis Vell. 'Viridis' という。Viridisは緑のという意味。シロフハカタカラクサの白班がなくなった戻りであると考えられている。Green wandering Jewといわれる。日本の帰化植物によれば葉身は長さ3~6㎝。ノハカタカラクサの茎や花柄が緑色のタイプである。ほとんど結実しない。これが世界中で野生化しているものと思われる。オオトキワツユクサとの違いが葉の大きさと毛の長さであり、葉の長さは両者ともノハカタカラクサの範囲に入る。
 ●オオトキワユツクサTradescantia albiflora ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ原産。英名はwater spiderwort。 しばしばTradescantia fluminensisと混同され、オーストラリアにも帰化しているとしていたが現在は誤りとし、The Plant List では同義語として整理されている。日本では下記のシラフツユクサの白斑の消えた、緑戻りをオオトキワツユクサとしている。Tradescantia albiflora を従来どおり別種として認める見解では、シラフツユクサの学名はTradescantia albiflora 'Albovittata'とされる。静岡などでオオトキワユツクサの逸出が報告されている。葉は披針形~長楕円形、質が薄く、葉縁の毛が目立つ。萼の長毛が長さ約1㎜あり、紫色を帯びない。葉の長さは長さ7~12㎝と解説されることが多いが、実測では長さ(7)11~13.5㎝程度、最長の葉は17㎝あった。
 ●シラフツユクサTradescantia fluminensis 'Albovittata' はオオトキワツユクサの白色の縦縞斑入り栽培種。中国名は銀線水竹草(yin xian shui zhu cao)、英名はgiant white inch plant 。名前はラテン語の alba (white) 、viattala (belt)に由来する。一部の専門家はTradescantia albifloraの栽培種と考え、他の専門家はTradescantia fluminensis とTradescantia crassula とのハイブリッドと考えている。(Missouri Botanical Garden )。これの緑戻りはオオトキワユツクサとされてる。全体に大きく、緑色に白色の縦縞がつき、裏面は紫色を帯びることがある。全体に紫色を帯びるものは'Tricolor'。
 ●Tradescantia crassula は英名が succulent spiderwort、white-flowered tradescantiaという。ブラジル南部、ウルグアイ、アルゼンチンのミシオネス州の原産。フロリダに帰化している。多年草、茎は傾伏し、長さ約90㎝以下、普通、緑色、ときに紫色を帯び、節から根を出す。葉身は長さ12~25㎝、幅2~3.5㎝、縁毛があり、先は鋭形、無毛。花序は頂生と上部の葉に腋生、1茎に2~4対の集散花序をつける。苞は葉状又は縮小することがよくある(特に腋生の花序)。花は明瞭な花柄があり、花柄は長さ5~7㎜、腺毛があり、特に先付近に多い。萼片は長さ5~7㎜、中脈に腺のある又は無い軟毛がある。花弁は白色、長さ9㎜。雄しべは離生、白色、白色の毛が密生する。
 ●ブライダルベールGibasis pellucidaは葉の幅が細く、花がまばらな花序につき、花弁が長さ3~4㎜と小さく、花弁が円形にい。萼片は花弁の間からほとんど突き出ない。雄しべの花糸の中間と基部に短毛が環状につく。

 ※参考
 (1)愛知県の資料 6主要移入種の現状・植物  P194
   (移入種リストに掲載された移入種の形態的な特徴など)
 (2)環境省 要注意外来生物リスト
   要注意外来生物に係る情報及び注意事項2-30
 (3)Invasive Species Compendium cabi
 (4)Flora of North America
 (5)Jepson eFlora
 (6)Floridata
 (7)Weeds Australia
 (8)Plant Net (Australia)
 (9)Keys Queensland Government(Australia)
 (10)New Zealand Plant Conservation Network
 (11)Flora Bonaerense: Santa Lucia blanca アルゼンチン
 (12)Missouri Botanical Garden
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