クモキリソウ 雲切草

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Flora of Mikawa

ラン科 Orchidaceae クモキリソウ属

学 名 Liparis kumokiri F.Maek.
クモキリソウの花序
クモキリソウの花
クモキリソウの花2
クモキリソウ葉縁
クモキリソウ
クモキリソウ葉
花 期 6~8月
高 さ 10~20㎝
生活型 多年草
生育場所 林内
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、ロシア
撮 影 津具村木地師住居跡  03.7.5
偽球茎は卵形、普通、葉が2個つく。葉は長さ5~12㎝、幅2.5~5㎝の卵状楕円形、縁は細かく波打つ。総状花序に5~15個の花をつける。花は淡緑色、まれに淡紫褐色~黒褐色。萼片は長さ6~7㎜、内巻きして細い。側花弁2個は長さ6~7㎜の狭線形。唇弁は長さ5~6㎜、幅が広く、先が巻き込む。蕊柱は長さ約3㎜、上端に狭い翼がある。2n=30
 ジガバチソウ Liparis krameri は葉の根元があまり立ち上がらなく、葉に網状の脈が見える。唇弁の幅も狭い。
 コクラン Liparis nervosa は世界に広く分布し、唇弁が長さ6~6.5㎜、幅4.5~5㎜、暗紫色、中央が凹み、反り返る。
 スズムシソウLiparis makinoana は日本、朝鮮、ロシアに分布し、唇弁が長さ12~18㎜と大きく、幅も広く、先が巻き込まない。台湾に分布するLiparis elongataは中国名は宝岛羊耳蒜(bao dao yang er suan) といいスズムシソウと同一ではないかともいわれている。
 セイタカスズムシソウ Liparis campylostalix Reichb= Liparis japonica は日本、朝鮮、中国、ロシアに分布し、スズムシソウに似て、草丈が高い。唇弁は長さ5~6㎜、幅3~3.5㎜、の先が巻き込まない。中国名は羊耳蒜(yang er suan) 。

クモキリソウ属

  family Orchidaceae - genus Liparis

 地上生(terrestrial)、岩生(lithophytic)、または着生(epiphytic)であり、根茎があり、まれに菌栄養性(mycotrophic)で葉は、縮小~鱗片状になる。茎は偽鱗茎(pseudobulbous)があり、ときに多数の節となり、肉質、束生または束生せず、若いときに不稔の苞に覆われる。葉は1~数枚、線形~卵形~楕円形、しなやかまたはしなやかでなく、質は薄い~革質、根生葉または茎葉(地上生種)、または偽鱗茎の先またはほぼ頂部の節から生じ(着生種)、基部に関節があるかまたは無い。花序は直立~垂れ下がり、総状花序、緩くまたは密に多くの花がつく。花の苞は宿存し、小さい。花は小または中型で、黄色、緑色、橙色、または紫色、しばしば半透明、普通、逆さになる(resupinate)。萼片は広がり、背萼片は分離、側萼片はときに、その長さの一部または全部が融合する。花弁は分離し、しばしば後屈し、しばしば線形で、萼片には似ない。唇弁はしばしば後屈し、、卵形、長円形、または扇形で、全縁または分裂し、普通、基部にカルスをもち、距は無い。ずい柱(column)はアーチ状に内曲し、こん棒形、長く、先に翼があり、ときに基部に翼がある。葯帽(anther cap)は細い花糸に取り付けられ、2室。花粉塊は4個は2対になり、ろう質(waxy)、卵形、両側が平らで、各対に小さな粘着体(viscidium)がある。嘴状体(rostellum)は質が薄く、鈍い。蒴果はほぼ球形~楕円形、しばしば±3本の鈍いうね(隆起)がある。  世界に約320種あり、熱帯アジア、ニューギニア、オーストラリア、南西太平洋の諸島、亜熱帯および熱帯アメリカに分布し、ヨーロッパに1種、北アメリカに2種ある。

クモキリソウ属の主な種と園芸品種

1 Liparis amabilis Fukuy.   
 台湾原産。中国名は白花羊耳蒜 bai hua yang er suan

2 Liparis auriculata Blume ex Miq. ギボウシラン 擬宝株蘭
  synonym Liparis yakusimensis Masam.
 日本(琉球列島)、台湾原産。中国名は玉簪羊耳蒜 yu zan yang er suan。 鬱蒼とした森内、湿った場所に生える。
 多年草、地上生、しばしば大きく群生する。偽鱗茎は3~5㎝離れて生え、卵形、わずかに扁平、長さ1~2×幅約1.5㎝。 葉は2枚つき、 葉柄は鞘状、長さ4~6㎝、関節は無い。葉身は卵形、広卵形、または心形、長さ4~10㎝×幅3~8㎝、基部は円形~心形、葉柄に沿下し、先は鋭形。花序は20~30㎝。花序軸は花が数個~10個以上つく。花の苞は披針形、長さ1.5~2.5mm。花は直径約1cm、帯緑色、帯紫色、または濃紫赤色。小花柄と子房は長さ5~6mm。背萼片は線形、長さ6~7mm×幅1.5~2mm、先は鋭形。側萼片は背萼片に似るが、わずかに短く幅が広い。花弁はほぼ糸状、約・長さ6mm×幅0.5mm。唇弁は円形または卵状円形、長さ5.5~6㎜×幅約5mm、基部の近くに2個三角形の小さなカルスがあり、先は円形か、またはときに短突起がある。ずい柱は先が反り返り、長さ3~5mm、細く、狭い翼があり、基部が広がる。花期は5~7月。

3 Liparis barbata Lindl.
  synonym Liparis indirae Manilal & C.S.Kumar
  synonym Liparis wrayi Hook.f.
 中国、台湾、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、パプアニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、太平洋の島々(サモア、バヌアツ)原産。中国名は须唇羊耳蒜 xu chun yang er suan。

4 Liparis bootanensis Griff. チケイラン 竹蕙蘭
  synonym Liparis uchiyamae Schltr. ウチヤマラン
  synonym Liparis bootanensis Griff. var. uchiyamae (Schltr.) S.S.Ying キノエササラン 
 日本(沖縄本島、石垣島、西表島)、中国、台湾、ブータン、インド北東部、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム原産。中国名は镰翅羊耳蒜 lian chi yang er suan。別名はウチヤマラン(内山蘭)、キノエササラン(木上笹蘭)。森林の縁、森林または日陰の木、谷に沿った岩または崖に生える。
 多年草、着生植物。偽鱗茎は密につき、卵形、卵状楕円形、または狭卵状円筒形、長さ0.8~1.8(~3)㎝×幅4~8mm。葉は1枚つく。葉柄は長さ1~7(~10)㎝、関節がある。葉身は狭長円状倒披針形、倒披針形、または狭楕円状長円形、長さ(5~)8~22㎝×幅(5~)11~33mm、紙質、葉柄に向かって狭まり、先は尖鋭形。花序は長さ7~24㎝。花序柄はやや扁平、両側に非常に狭い翼がある。花序軸はアーチ状または垂れ下がり、長さ5~12㎝、花が数個~20個つく。花の苞は狭披針形、長さ3~8(~13)mm。花はしばしば黄緑色で、ときに、わずかに褐色がかり、まれにほぼ白色。小花柄と子房は長さ4~15mm。背萼片は卵状披針形~長円状披針形、長さ5.2~8mm×幅1.3~2.3mm、先はほぼ鋭形~鈍形。側萼片は斜めの長円状披針形~楕円形、長さ5~7mm×幅1.5~2mm、先は鈍形。花弁は細い線形、長さ5.2~8mm×幅0.4~1mm。唇弁は広長円状倒卵形、長さ5~6.5mm×幅4~5.5mm、先の縁は全縁~わずかに不規則、先端は凹形~ほぼ切形状円形、広い短突起があり、基部に2個の様々な形のカルス(call)があり、横から見て、低く、丸く、三角形~掌状。ずい柱はアーチ形、長さ2.6~3.4mm、先は2個のかま形の三角形の翼がある。葯帽は長さ約1mm。蒴果は倒卵状楕円形、長さ8~10mm×幅5~6mm。果時の小花柄は長さ8~10mm。花期は8~10月。果期は3~5月。2n=38, 42。

5 Liparis cordifolia Hook.f. アリサンスズムシラン 
  synonym Liparis keitaoensis Hayata
 中国、台湾、ブータン、北インド、ネパール、ベトナム原産。中国名は心叶羊耳蒜 xin ye yang er suan 。

6 Liparis elliptica Wight コゴメキノエラン 小米樹上蘭
  synonym Cestichis platybulba (Hayata) Kudô
 日本(屋久島)、中国、台湾、インド、インドネシア、ミャンマー、ネパール、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、 太平洋諸島(フィジー、サモア)原産。中国名は扁球羊耳蒜 bian qiu yang er suan。
品種) 'Roger'

7 Liparis elongata Fukuy. ナガボノスズムシラン
  synonym Liparis derchiensis S.S.Ying
 台湾原産。中国名は宝岛羊耳蒜 bao dao yang er suan。

8 Liparis formosana Rchb.f. ユウコクラン 幽谷蘭
  synonym Liparis nervosa var. formosana (Rchb.f.) M.Hiroe
 日本(九州南部~沖縄)、香港、台湾原産。中国名は低地羊耳蒜 di di yang er suan 。広葉樹林下に生える。
 多年草、地上生。偽鱗茎は束生し、円筒形、長さ5~15cm×幅1~1.5cm。 葉は2~4枚つき、斜めの楕円形~卵形、長さ7~12cm×幅4~6cm、鋭形。 花序は長さ約30cm。花序柄は長さ約15cm、翼がある。花序軸は長さ約15cm、花が15~30個つく。花の苞は三角形、長さ2~3mm、先は鋭形。花は緑色、紫色または帯紫色を帯びる。小花柄と子房は長さ11~14mm、6本の鋭いうねがある。背萼片は披針形、長さ10~12×幅2~2.5 mm、3脈があり、先は鈍形。側萼片は斜めの長円状披針形、長さ7~9mm×幅3~4mm、3脈があり、先は鋭形。 花弁は線形、長さ9~10mm×幅約1mm、1脈がある。唇弁は倒卵状楕円形、約・長さ7mm×幅5mm、基部の上に2裂する直立したカルスがあり、先は鋭形。 ずい柱は曲がり、長さ4~5mm、先の2個の三角形、基部に切形の翼がある。花期は2~5月。
8-1 Liparis formosana Rchb.f. f. aureovariegata K.Nakaj.  コガネユウコクラン 黄金幽谷蘭
 葉が黄金色の斑入りの品種。
8-2 Liparis formosana Rchb.f. var. hachijoensis (Nakai) Ohwi シマササバラン 島笹葉蘭
 花も果実も少し小さい。唇弁の色は紫褐色であるがやや薄く、縁が緑色になる。


9 Liparis hostifolia (Koidz.) Koidz. ex Nakai シマクモキリソウ 縞雲切草
  synonym Liparis auriculata Blume ex Miq. var. hostifolia Koidz.
 日本(小笠原諸島父島、南硫黄島)固有種。
 1928年に記載された種(Sci. World (Chungking & Nanking) 26(4): 10 (1928))であり、1939年以降見つかっておらず、すでに絶滅した可能性が高いと考えられていた。平成29年の南硫黄島自然環境調査により採取され、国立科学博物館筑波実験植物園で平成29年11月に開花に成功した。
 形態のよく似たスズムシソウやセイタカスズムシソウと比べると、花色と開花期が異なる。開花時の高さ約12㎝。葉は2枚つき、長さ約9㎝。花は7個ほどつき、長さ約1㎝、緑色地に紫班が入る。花期は11月。

10 Liparis koreojaponica Tsutsumi, T.Yukawa, N.S.Lee, C.S.Lee et M.Kato オオフガクスズムシ 大富嶽鈴虫
  synonym Liparis makinoana Schltr. var. koreana auct. non Nakai
 日本(北海道)、朝鮮原産。別名はエゾノクモキリソウ。山地の林内の地上、岩上、落ちた木の幹の上などに生える。
 クモキリソウに似るが、クモキリソウでは、唇弁が小さい。
 地上生、岩上生。偽鱗茎は卵形、長さ1~2㎝。葉は2枚つき、卵状楕円形、鈍形またはほぼ鋭形、長さ10~20cm×幅2~6(~9)cm、2つ折になり、光沢があり、無毛、縁は全縁またはやや波うり、緑色。葉柄は長さ5~10cm、翼があり、葉身とほぼ同長。花序は頂生、総状花序、長さ15~35(~50)cm、花が4~16(~20)つく。花序軸は無毛、うねがあり、緑色。苞は卵形、先は鋭形、長さ1~5mm、緑色。小花柄のつく子房はこん棒形、捻じれ、長さ13~17mm、緑色、ときに基部が紫色を帯びる。背萼片は線状披針形、先はぼ鋭形、たまにわずかに外巻きし、直立またはやや反り返り、長さ10~11mm×幅2~2.5mm、帯紫色。側萼片は斜めの卵形または斜めの披針形、先はほぼ鋭形、やや外巻きし、上部が捻じれ、部分的に唇弁を包み込み、長さ9~11mm×幅2~3mm、帯紫色。花弁はかま形、線形、先は鈍形、強く外巻きし、垂れ下がり、ときにわずかに捻じれ、長さ10~12mm×幅0.5mm、帯紫色。唇弁は全縁または微細なギザギザがあり、卵状長円形、爪部があり、中間で強く反り返り、縁はときにわずかに外巻きし、先は鈍形または短突起があり、長さ9~12mm×幅6~9mm、帯紫色または緑紫色。ずい柱は円柱形、内曲し、円い翼があり、基部は広がり、腹側の基部に浅い溝があり、長さ5~6mm、緑色、腹側表面は淡緑色。花粉塊は4個、2対につき、ろう質(waxy)、黄色。葯帽は卵形、微突形、緑色。花期は6~7月。

11 Liparis krameri Franch. et Sav. ジガバチソウ 似我蜂草 広義
  synonym Leptorkis krameri (Franchet & Savatier) Kuntze
  synonym Liparis krameri var. viridis Makino.
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は尾唇羊耳蒜 wei chun yang er suan。林内に生える。
 多年草、地上生。偽鱗茎は小さく、±白色の膜質の鞘で囲まれる。葉は2枚つく。葉柄は鞘状、長さ0.5~3cm、関節はない。葉身は広卵形または卵形、長さ2~3(~8)cm×幅2~4cm、膜質または草質、基部は円形で葉柄に沿下し、縁は不規則な歯が顕著で、先は鈍形またはほぼ鋭形。花序は長さ6~7cmまたはそれ以上で、葉よりも著しく長い。花序柄は円筒形、わずかに扁平、狭い翼がある。花序軸は花が数個つく。花の苞は卵形、長さ約1mm。 花は緑色または紫赤色。小花柄と子房は長さ7~8mm。萼片は線形または線状披針形、長さ9~12mm×幅1.5~2mm、3脈があり、先はほぼ鋭形。 側萼片はわずかに斜め。花弁は糸状、長さ8~10mm×幅約0.5mm。唇弁は下部1/3が後屈し、ほぼ卵状長円形、長さ6~7mm、基部に大きな薄板のカルス(lamellate basal callus)があり、先は短い尖端があり、尾は長さ約1mm。 ずい柱はわずかにアーチ状になり、長さ2mm、ほぼ翼が無い。花期は6~7月。2n=30, 36。
11-1 Liparis krameri Franch. et Sav. var. krameri ジガバチソウ
  synonym Liparis krameri Franch. et Sav. var. shichitoana Ohwi

11-2 Liparis krameri Franch. et Sav. var. krameri f. albomarginata J.Ohara フクリンジガバチソウ 覆輪似我蜂草
 葉の斑入りで葉の周囲が白色になる覆輪の品種。

11-3 Liparis krameri Franch. et Sav. var. krameri f. viridis Makino アオジガバチソウ 青似我蜂草
 花が緑色の品種。

11-4 Liparis krameri Franch. et Sav. var. nikkoensis (Nakai) K.Inoue ヒメスズムシソウ 姫鈴虫草
  synonym Liparis nikkoensis Nakai
 日本の中部地方、関東地方、東北地方に分布する。亜高山帯~高山帯の草地や林縁に生える。
 クモイジガバチに似るが、唇弁が倒卵形で先端がほとんど巻き込まず、ふちに微細な突起がある。クモイジガバチは唇弁が倒三角形~倒心形で、先端中央部付近がで強く巻き込む。
 多年草。偽鱗茎は卵形、長さ4~7mm×直形3~4mm。葉は2枚が対生して根生し、披針形、長さ1.5~2cm×幅7~10mm、基部は漸尖し、縁は全縁、先はやや鈍形、葉脈は不明瞭。葉は対生し、2枚つく。花茎は直立し、高さ3~6cm、上部に3~4個の花をつける。小花柄と子房は長さ3~4mm、捻じれる。苞は卵形、長さ約1.5mm、先は鋭形。萼片は披針形、長さ約5mm、淡黄緑色。側花弁は長さ約3mm、帯黄色、糸状。唇弁は倒卵形、長さ約4㎜、縦の暗紫色の脈紋があり、縁には微細な突起があり、中央部は両縁が持ち上がり、上部はやや下屈し、先は円形で小突状に尖る。ずい柱は内曲し、黄色。葯は卵形。花期は6~7月。

12 Liparis kumokiri F.Maek. クモキリソウ 雲切草
 日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、ロシア原産。林内に生える。
 多年草、高さ10~20㎝。偽球茎は卵形、普通、葉が2個つく。葉は長さ5~12㎝、幅2.5~5㎝の卵状楕円形、縁は細かく波打つ。総状花序に5~15個の花をつける。花は淡緑色、まれに淡紫褐色~黒褐色。萼片は長さ6~7㎜、内巻きして細い。側花弁2個は長さ6~7㎜の狭線形。唇弁は長さ5~6㎜、幅が広く、先が巻き込む。蕊柱は長さ約3㎜、上端に狭い翼がある。2n=30。花期は6~8月。

13 Liparis liangzuensis T.P.Lin et W.M.Lin   
 台湾原産。中国名は良如羊耳蘭。

14 Liparis longiracemosa Tsutsumi, T.Yukawa et M.Kato  アキタスズムシソウ 秋田鈴虫草
 日本(北海道、本州、四国、九州)に分布する。落葉樹林または針葉落葉混合林の半開放のやや湿った場所に生える。
 L. makinoanaに似るが、唇弁が小さく、萼片が広く、花序の花がまばら。
 多年草、地上生。偽鱗茎は卵形、長さ1~3.5㎝。葉は2枚つき、卵状楕円形、鈍形またはほぼ鋭形、長さ10~20㎝×幅2~6(~9)㎝、2つ折りになり、光沢があり、無毛、縁は全縁またはやや波打ち、緑色。葉柄は長さ3~10㎝、翼がある。花序は頂生、総状花序、長さ15~40㎝、花が4~40個つく。花序軸は無毛、うねがあり、緑色。苞は卵形、先は鋭形、長さ1~5㎜、緑色。小花柄のつく子房はこん棒形、捻じれ、長さ10~20㎜、帯紫色。背萼片は線状披針形、先はほぼ鋭形、たまにわずかに外巻きし、直立またはやや反り返り、長さ8~11㎜×幅2.5~3.5㎜、帯紫色。側萼片は、斜めの卵形または斜めの披針形、先はほぼ鋭形、やや外巻きし、長さ8~11㎜×幅2.5~3.5㎜、帯紫色。花弁はかま形、線形、先は鈍形、強く外巻きし、垂れ下がり、ときにわずかに捻じれ、長さ9~12㎜×幅0.5~1.0㎜、帯紫色。唇弁は全縁または微細なギザギザがあり、卵形、基部で反り返り、先は鈍形、短突起があり、長さ8~10㎜×幅5~7㎜、暗紫色、帯紫色、または緑色。ずい柱は円柱形、内曲し、上部に円い翼があり、基部で広がり、腹側の基部に浅い溝があり、長さ4~5㎜、緑色、腹側の表面は淡緑色、基部は紫色。花粉塊は4個、2対につき、ろう質(waxy)、黄色。葯帽は先に嘴があり、緑色~帯紫色。花期は6~7月。

15 Liparis makinoana Schltr. セイタカスズムシソウ 背高鈴虫草
  synonym Liparis liliifolia (L.) Lich. ex Lindl. var. japonica (Miq.) T.Hashim.
  synonym Liparis japonica sensu Maxim.
  synonym Liparis fujisanensis F.Maek. ex F.Konta et S.Matsumoto フガクスズムシソウ 
  synonym Liparis koreana (Nakai) Nakai  コウライスズムシソウ 
 日本(北海道、本州)、朝鮮、ロシア原産。針葉樹林または落葉樹林の地上に生える。
 多年草、地上生。偽鱗茎は卵形、長さ1~3㎝。葉は2枚つき、卵状楕円形、先は鈍形またはほぼ鋭形、長さ7~20㎝×幅2~6㎝、2つ折りになり、光沢があり、無毛、縁は全縁またはやや波打ち、緑色。葉柄は長さ3~10㎝、翼がある。花序は頂生、総状花序、長さ10~35㎝、花が4~30個つく。花序軸は無毛、うねがあり、緑色。苞は卵形、先は鋭形、長さ1~5㎜、緑色。小花柄のつく子房は、こん棒形、捻じれ、長さ8~13㎜、緑色~帯紫色。背萼片は線状披針形、先はほぼ鋭形、たまにわずかに外巻きし、直立またはやや反り返り、長さ9~12㎜×幅2~2.5㎜、緑色。側萼片は、斜めの卵形または斜めの披針形、先はほぼ鋭形、やや外巻きし、長さ8~11㎜×幅2~3㎜、緑色。花弁はかま形、線形、先は鈍形、強く外巻きし、垂れ下がり、ときにわずかに捻じれ、長さ9~12㎜×幅0.5~1㎜、帯紫色。唇弁は全縁または微細なギザギザがあり、卵形、爪部があり、基部で強く反り返り、鈍形、先に短突起があり、長さ9~12㎜×幅6~9㎜、帯紫色または緑紫色。ずい柱は円柱形、内曲し、上部に円い翼があり、基部が広がり、腹側の基部に浅い溝があり、長さ4~5㎜、緑色、腹側の表面は淡緑色、基部は紫色。花粉塊は4個、2対につき、ろう質(waxy)、黄色。葯帽は先に嘴があり、緑色。花期は5~7月。
品種) 'Fuji' , 'Kuro Suzu'

16 Liparis nervosa (Thunb.) Lindl. コクラン 黒蘭
 本州(茨城県以南)、四国、九州、世界に広く分布。中国名は见血青 jian xue qing。英名はtall liparis。常緑樹の林内の地上に生える。
 常緑性、地上生のラン。地上に太い多肉質の円柱形の偽球茎をつくり、長さ2~8(10)㎝、幅5~7(10)㎜、多くの節があり、普通、鞘に包まれ、上部は露出する。葉は茎の頂部に集まって3~6個つく。葉柄は鞘状、長さ2~3(5)㎝、茎を抱き、長く、葉身との境は不明瞭。葉身は卵形~卵状楕円形、長さ5~11(16)㎝、幅3~5(8)㎝、膜質~草質、基部は収縮し、葉柄に沿下する。葉縁は全縁、ほとんど波打たず、葉先は類尖鋭形。花序はほぼ頂生し、長さ10~20(25)㎝、花序軸に数個~10(15)個の花をつけ、ごく狭い翼がある。苞は三角形、長さ1(~2)㎜。花は暗紫色~暗紫褐色。小花柄と子房は長さ8~16㎜。背萼片は線形~広線形、長さ8~10㎜、幅1.5~2㎜、目立たない3脈があり、縁は外巻きし、先は鈍形。側萼片は狭い卵状長楕円形、わずかに斜めになり、長さ6~7㎜、幅3~3.5㎜、3脈があり、先は鈍形。側花弁は反り返り、糸状、長さ7~8㎜、幅約0.5㎜、1脈。唇弁は長楕円状倒卵形、長さ6~6.5㎜、幅4.5~5㎜、基部は狭くなり、基部の両側に長楕円状の突起(calli)があり、先は切形、中央が凹形。ずい柱は長さ4~5㎜、どちらかといえば丈夫で、上部は明瞭又は不明瞭であり、狭い翼がある。蒴果は倒卵状長楕円形~狭楕円形、長さ10~15㎜、幅4~6㎜、種子を散布した後も長く残る。果柄は長さ4~7㎜。種子は長さ0.3~0.5㎜、白色で微細な狭い紡錘形、不定に曲がる。肉眼では白色の粉のように見える。2n=36,40,42。花期は6~7月。

17 Liparis nigra Seidenf.
  synonym Liparis macrantha Rolfe
 中国、東ヒマラヤ、タイ、ベトナム原産。中国名は大花羊耳蒜。
品種) 'Clare'

18 Liparis pterosepala N.S.Lee, C.S.Lee et K.S.Lee   
 朝鮮原産。

19 Liparis purpureoviridis Ridl. ex Burkill & Holttum
 マレーシア、インドネシア原産。
品種) 'Clare'

20 Liparis purpureovittata Tsutsumi, T.Yukawa et M.Kato シテンクモキリ 紫点蜘蛛切
 日本固有種。北海道、本州の東北地方・中部地方、四国に分布する。
 花が緑色のクモキリソウに似るが、唇弁の基部の溝が濃紫色になる。
 多年草、地上生。偽鱗茎は卵形、長さ1~2㎝。葉は2枚つき、卵状楕円形、縁は全縁またはやや波打ち。先は鈍形またはほぼ鋭形、長さ5~13㎝×幅2~5㎝、2つ折りになり、光沢があり、無毛、緑色。葉柄は長さ2~6cm、翼があり、葉身とほぼ同長。花序は頂生、総状花序、長さ10~25㎝、花が4~14個つく。花序軸は無毛、うねは緑色。苞は卵形、先が鋭形、長さ2~5㎜、緑色。 小花柄のつく子房はこん棒形、長さ8~11㎜、捻じれ、緑色、ときに、基部が紫色を帯る。背萼片は線状披針形、先はほぼ鋭形、たまにわずかに外巻きし、直立またはやや反り返り、長さ8~9㎜×幅2~2.5㎜、緑紫色。側萼片は斜めの卵形または斜めの披針形、先はほぼ鋭形、、外巻きし、上部は捻じれ、部分的に唇弁を包み込み、長さ7~9㎜×幅3~3.5㎜、緑紫色。花弁はかま形、線形、先は鈍形、強く外巻きし、垂れ下がる、ときにわずかに捻じれ、長さ8~9㎜×幅0.5㎜、帯紫色。唇弁は全縁またはギザギザになり、卵状長円形、短い爪部があり、中央で強く反曲し、返る、縁はときにわずかに外巻きし、基部はほぼ切形で基部の上で急に広がり、先は鈍形または短突起があり、長さ8~9㎜×幅6~7㎜、鈍い黄緑色、基部および中央の溝は薄紫色~暗紫色。ずい柱は円柱形、先は内曲し、円い翼があり、基部は長さ4~5㎜に広がり、腹側の表面は淡緑色、その他の部分は緑色。花粉塊は4個、2対につき、ろう質(waxy)の黄色。葯帽は卵形、微突形、緑色。花期は6~7月。

21 Liparis reckoniana T.C.Hsu   
 台湾原産。雲頂羊耳蒜

22 Liparis rubrotincta T.C.Hsu   
 台湾原産。絳唇羊耳蒜

23 Liparis sasakii Hayata ミヤマコクラン 深山黒蘭
  synonym Liparis krameri Franch. et Sav. var. sasakii (Hayata) T.Hashim.
 台湾原産。中国名は阿里山羊耳蒜 a li shan yang er suan。

24 Liparis suzumushi Tsusumi, T.Yukawa et M.Kato スズムシソウ 鈴虫草
  synonym Liparis makinoana auct. non Schltr.
  synonym Liparis japonica (Miq.) Maxim. var. makinoana sensu M.Hiroe
  synonym Liparis liliiflora auct. non (L.) A.Rich. ex Lindl.
 First published in Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Tokyo, B. 45: 109 (2019)
 北海道南部、本州、四国、朝鮮、ロシア原産。林内に生える。
 L. makinoanaとL. longirace mosaに似ているが、花期が異なる(5~6月)、花序が短く(長さ10~25㎝)、唇弁が大きい(長さ14~17㎜、幅11~15㎜)。  偽鱗茎は卵形、長さ1~3㎝。葉は2枚つき、卵状楕円形、先は鈍形またはほぼ鋭形、長さ10~20㎝×幅2~6(~9)㎝、2つ折りになり、光沢があり、無毛、縁は全縁またはやや波状、緑色。葉柄は長さ3~10㎝、翼がある。花序は頂生、総状花序。花茎は長さ10~25㎝、花が4~16個つく。花序軸は無毛、うねがあり、緑色。苞は卵形、先は鋭形、長さ1~5㎜、緑色。小花柄のつく子房はこん棒形、捻じれ、長さ12~19㎜、帯紫色。背萼片は線状披針形、ほぼ鋭形、たまにわずかに外巻きし、直立またはやや反り返り、長さ13~16㎜×幅3.5~4㎜、緑色~帯紫色。側萼片は、斜めの卵形または斜めの披針形、先はほぼ鋭形、やや外巻き、長さ13~16㎜×幅3.5~4㎜、帯緑色。花弁はかま形、線形、先は鈍形、強く外巻きし、垂れ下がり、時にはわずかに捻じれ、長さ13~16㎜×幅0.5~1.0㎜、帯紫色。唇弁は全縁または微細なぎざぎざになり、広卵形、爪部があり、基部近くで強く反曲し、鈍形または切形、先端には短突起があり、長さ14~17㎜×幅11~15㎜、帯紫色または緑紫色。ずい柱は円柱形、内曲し、上部に丸い翼があり、基部は広がり、腹側の基部に浅い溝があり、長さ5.5~7㎜、緑色、腹側の表面は淡緑色、基部は紫色。花粉塊は4個、2対につき、ろう質(waxy)、黄色。葯帽は先に嘴があり、緑色。花期は5~6月。

25 Liparis truncata F.Maek. ex T.Hashim. クモイジガバチ 雲居似我蜂
 日本固有種。本州、九州に分布。ブナやトチノキなどの夏緑広葉樹の樹幹上大木の樹幹に着生する
 多年草、着生、高さ3~10㎝。偽鱗茎は卵形。葉は2枚つき、卵形、縁は全縁で波打ち、表面に縦じわがあり、光沢があり。花は紫褐色、側花弁は横に張り出し、側萼片は前方に突き出る。唇弁は倒三角形~倒心形、基部はやや樋状に両縁が上がり、中央部付近は広がり、先が短く下屈または巻き、先端は切形で短突起があり、唇弁全体に縦の紫褐色の脈紋がある。唇弁の内側基部にあるカルス(肉質隆起)は、正面から見るとほぼ三角形にみえる。花期は7~8月。

26 Liparis yongnoana N.S.Lee, C.S.Lee et K.S.Lee   
 朝鮮原産。

参考

1) Flora of China
 Liparis
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=118682
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Liparis
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:331229-2
3) World Flora Online
 Liparis
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000012430
4) Flora of North America
 Liparis
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=118682
5) World Checklist of Vascular Plants
 Liparis
https://wcvp.science.kew.org/
6) Bull.Natl.Mus.Nat.Sci.,Ser.B,45(3), pp.107–118,2019
 Taxonomic Reappraisal of Liparis japonica and L. makinoana
 (Orchidaceae)
https://www.kahaku.go.jp/research/publication/botany/download/45_3/L_BNMNS_B45-3_107.pdf
7) Acta Phytotax,Geobot.S9(3):211-218(2008)
 A New SpeciesofLiparisfrom Japan and Korea Liparis koreojaponic
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/59/3/59_KJ00005124835/_pdf/-char/ja
8) Taiwania, 58(1): 1–6, 2013
 Two New Species of Liparis (Orchidaceae) from Taiwan L. reckoniana, L. rubrotincta
https://taiwania.ntu.edu.tw/pdf/tai.2013.58.1.pdf
9) ActaPhytotax.Geebot, 59 C:73-77 (2008)
 Liparis purpureovittata (Orchidaceae) : a New Species from Japan
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/59/1/59_KJ00004899890/_pdf/-char/en