ホトトギス 杜鵑草

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Flora of Mikawa

ユリ科 Liliaceae ホトトギス属

英 名 toad-lily, Japanese toad lily
学 名 Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook.
ホトトギスの青紫色の花
ホトトギスの紅紫色の花
ホトトギスの花拡大
ホトトギスの花
ホトトギスの果実
ホトトギス
ホトトギス葉
ホトトギス種子
花 期 8~9月
高 さ 40~100㎝
生活型 多年草
生育場所 山地のやや湿った場所
分 布 在来種(日本固有種)  北海道西南部、本州(関東以西)、四国、九州
撮 影 豊川市 12.10.4
和名は花弁の斑点模様が野鳥のホトトギスの胸の模様に似ていることに由来する。
 茎には上向きの毛が密生する。葉は互生し、毛が多く、長さ8~18㎝、幅2~5㎝の長楕円~披針形、先が尖り、基部は茎を抱く。花は葉脇につき、上向きに咲く。花披片は6個、平開せず、斜めに開く。外花被片3個は内花被片3個より幅が狭い。花柱は太く、柱頭が深く3裂し、先端がさらに2裂して平らに開く。花披片に紅紫色~青紫色の斑点があり、花柱や柱頭、花糸や葯の上側にも斑点がある。花被片の基部には橙色の班紋がある。雄しべ6個。果実は長さ4~5㎝、先が尖った三角柱状の蒴果、熟すと先端が小さく3裂する。種子は長さ約2.5㎜の扁平な先が尖った卵形、赤褐色、表面に細かな網目がある。2n=24,25,26。染色体数は地理的な変異があり、2n=24の多い地域と2n=26の多い地域がある。
 類似種にヤマジノホトトギスヤマホトトギスがあり、花被片の基部に橙色の班紋がなく、花糸に斑点がない。

ホトトギス属

  family Liliaceae - genus Tricyrtis

 多年草、根茎は短く、ときに長く、這う。茎は普通、直立または斜上、ときに上部で分枝する。葉は茎葉、互生し、無柄、普通±茎を抱く。 花序は密錐花序(thyrse)または密錐花序状(thyrsoid)。 花は両性、単生、派手。 花被は鐘形またはトランペット形。花被片は6個、離生、白色または黄色、帯紫色の斑点があり、普通、上部が反曲または後屈し、普通、早落性。外側の花被片は袋があるかまたは短い距がある。雄しべは6本、花被片の基部につく。花糸はわずかに扁平、、下部は輻合し、短い筒を作る。葯は背着し、多方向、外向き。子房は3室。胚珠は各室に多数。花柱は柱状。柱頭は3裂、広がり、先が割れる。果実は蒴果、広円筒形、3角(かど)があり、胞間裂開。種子は多数、卵形~円形、扁平、小さい。英名はtoad liily。
 世界に約18種あり、ヒマラヤから東アジアに分布する。

ホトトギス属の主な種と園芸品種

1 Tricyrtis affinis Makino ヤマジノホトトギス 山路の杜鵑草
  synonym Tricyrtis macropoda Miq. var. chiugokuensis (Koidz.) Ohwi
  synonym Tricyrtis macropoda Miq. subsp. affinis (Makino) Kitam.
  synonym Tricyrtis chiugokuensis Koidz.
  synonym Tricyrtis affinis Makino var. chiugokuensis (Koidz.) Ohwi
 多年草。高さ30~60㎝。茎には下向きの毛が密生する。葉は互生し、長さ8~18㎝、幅2~5㎝の長楕円形で、先がとがり、基部は茎を抱く。葉に暗色の斑点模様がある。花は上部の葉腋に上向きに単生、ときに2~3個つく。花披片は長さ1.5~2㎝、開出し、白色に紅紫色~紫色の斑点がまばらにつく。花柱は太く、斑点がなく、先端が深く3裂して平らに開き、裂片の先がさらに2裂し、裂片だけに紅紫色の斑点がある。雄しべは6個。3本の花糸は花柱の先の裂片の下側に沿い、残り3本が裂片の間に見える。花糸には斑点はない。花被片の幅や斑点の濃さには変化があり、白色のものはシロバナヤマジノホトギスという。2n=26。花期は8~10月。
品種) 'Black Leaf Form' , 'Early Bird' , 'Key Lime Pie' , 'Kohaku' , 'Lunar Landing' , 'Mangetsu' (v) , 'Meigetsu' , 'Meigetsu' (v) , 'Sansyoku' , 'Tricolor' , 'Variegata'
1-1 Tricyrtis affinis Makino f. albida (Makino) Okuyama シロバナヤマジノホトトギス 
 白花品種。

2 Tricyrtis chinensis Hir.Takah.bis オオヤマホトトギス 
  synonym Tricyrtis dilatata Nakai var. chinensis (Hir.Takah.) N.Tanaka
 中国原産。2001年に記載され、Flora of Chinaには解説は無い。
 多年草、1~2個の短い匍匐茎を地下にもつ。根は橙色のアントラキノン色素を含む。茎は直立し、単純な、1本、ほとんど曲がらず、長さ50~I50(~200)cm、斜め下向きの短い剛毛がある。葉は楕円形~倒卵形、長さ(6~)IO~20cm×幅(3~)5~8cm、基部は円形~心形、先は尖鋭形~尾状、無柄または茎を抱き、両面には剛毛があり、縁は全縁で剛毛があり、主脈には7~9個の明瞭な斑紋がある。花序は頂生、またはときに腋生、大きな集散花序で、2または3分枝し、花序柄がある。花序柄は長さ3~IO(~l5)cm。苞はOまたは1個。小花柄は長さ12~20(~25)㎜。花序柄および小花柄には剛毛(hispid to setose)があり、多くの場合、長い腺毛を伴う。各集散花序には花が(1~)2~5(~7)個つく。花被は基部から1/3が後ろに反り返る。花被片は白色~黄色で、上面に小さな紫色の斑点がある。外側の花被片は狭楕円形、長さは16~20mm×幅5~7㎜、基部に耳があり、袋があり、明瞭な小窩があり、先は尖鋭形、外面に長く細い腺毛および短い腺の無い毛がある。内側の花被片は披針形、長さ15~19㎜、中間で幅24mm、下部の最も広い部分で幅5~7mm、基部は矛形、先は尖鋭形、外面の中肋には長い腺毛と短毛がある。雄しべは6本。花糸は上部で反り返り、下部1/3にかなり密な毛があり、中間部に赤紫色の斑点があり、長さ18~22mm。葯は白色または帯紫色、長さ3㎜。子房は無毛、狭長円形、3稜形、長さ9~11㎜×幅2㎜。花柱は深く3分岐し、枝は反曲~開出、小さな紫斑と腺のあるいぼ状突起がある。蒴果は3稜形、無毛、胞間裂開。

3 Tricyrtis flava Maxim. キバナノホトトギス 黄花之杜鵑草
  synonym Tricyrtis flava Maxim. f. rubella Masam.
  synonym Tricyrtis kyusyuensis Masam.
 日本固有種。九州(宮崎県)に分布。英名はbright yellow toad lily , Dwarf Golden Toad Lily。山地の林縁、明るい林下Leaves 8-20cm long. Flowers yellow perianths each 30mm long, 多年草。高さ20~50㎝。茎は暗紫色で硬い毛が散生し、暗紫色。葉は互生し、長楕円形~長楕円状披針形、長さ8~20㎝、基部は漸尖し、茎をほとんど抱かず、先は鋭形、室はやや厚く、濃緑色、斑紋は普通ないが、ときにある。開花が2日続き、雄性先熟。花は上部の葉腋に上向きに1~2個つく。花序柄は長く、褐色の毛が密生し、長さ2~6㎝。花被片は卵状長楕円形、明るい黄色、長さ約3㎝、普通、斑点があり、斑点のなものは素心キバナホトトギスという。朔果は長さ約2.5㎝、三角柱状、先から裂開する。種子は直径約2.5㎜、扁平な楕円形、表面に格子模様がある。2n=26。花期は9~11月。
品種)  'Soshin'

4 Tricyrtis formosana Baker タイワンホトトギス 台湾杜鵑草
  synonym Tricyrtis stolonifera Matsum.
  synonym Tricyrtis formosana Baker var. stolonifera (Matsum.) Masam.
  synonym Tricyrtis formosana Baker var. grandiflora S.S.Ying
 西表島、台湾台湾に分布。中国名は油点草 tai wan you dian cao。英名はaiwanese toad lily , formosa toad-lily。山地のやや湿った場所に生える。
 多年草。高さ45~80㎝。茎は普通、屈曲し、無毛かわずかに毛がある。葉は互生し、長さ8~13㎝、幅2.5~4.5㎝の倒被針形又は狭い楕円状披針形~倒卵形、葉表は無毛に近く、葉裏は有毛、特に脈に沿って多い。葉の基部は茎を抱き、縁に毛があり、先は尖る。茎頂又は葉腋の集散花序にまばらに花をつける。小花梗は長さ1~6㎝、有毛。花はトランペット形、花被片は斜め上向きに開き、青紫白色、縁が濃く、表面に濃い紫色の斑点があり、披針形又は倒披針形~惰円形、長さ2~2.5㎝、裏面はやや暗紫色を帯び、まばらに毛がある。花被片の内面基部の橙色の斑紋はやや不明瞭、基部の両側の膨らみが黒色を帯びる。花柱や柱頭、花糸にも斑点がある。蒴果は長さ2.5~3.5㎝、幅5~6㎜。2n=26。花期は9~10月。
品種) 'Autumn Glow' (v) , 'Benifuji'紅富士 , 'Blushing Toad' , 'Dark Beauty' , 'Daruma' , 'Donkere Selectie' , 'Emperor' (v) , 'Empress' , 'Gates of Heaven' , 'Gilt Edge' (v) , 'Gilty Pleasure'PBR , 'Golden Festival' , 'Hatatogisa' , 'Hayley Cameron' , 'Ink Spot' , 'Kestrel' (v) , 'Lodge Farm' , Pink Freckles® , 'Purple Beauty' , 'Samurai' (v) , 'Seiryu' , 'Shelley's' , 'Shelly's' , 'Small Wonder' , 'Spotted Toad' , Stolonifera Group , Sunny Spirit™ , 'Taiwan Toad' , 'Taroko Toad' , 'Tiny Toad' , 'Variegata' (v) , 'Velvet Toad'
4-1 Tricyrtis formosana Baker var. glandulosa (T.Shimizu) T.S.Liu et S.S.Ying  タカネタイワンホトトギス 
  synonym Tricyrtis ravenii C.I.Peng et C.L.Tiang
品種)  'Blu-Shing Toad' , 'Long-Jen Violet' , 'W-Ho-ping Toad'

4-2 Tricyrtis formosana Baker x T. hirta Hook.f. ニワホトトギス 

5 Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook. ホトトギス 杜鵑草
  synonym Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook. var. saxicola Honda
  synonym Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook. var. minor Honda
  synonym Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook. f. atropurpurea Hisauti
  synonym Tricyrtis japonica Miq.
 日本固有種。北海道西南部、本州(関東以西)、四国、九州に分布。英名はJapanese toad lily , toad-lily, Japanese toad lily。山地のやや湿った場所に生える。
 多年草。高さ40~100㎝。茎には上向きの毛が密生する。葉は互生し、毛が多く、長さ8~18㎝、幅2~5㎝の長楕円~披針形、先が尖り、基部は茎を抱く。花は葉脇につき、上向きに咲く。花披片は6個、平開せず、斜めに開く。外花被片3個は内花被片3個より幅が狭い。花柱は太く、柱頭が深く3裂し、先端がさらに2裂して平らに開く。花披片に紅紫色~青紫色の斑点があり、花柱や柱頭、花糸や葯の上側にも斑点がある。花被片の基部には橙色の班紋がある。雄しべ6個。果実は長さ4~5㎝、先が尖った三角柱状の蒴果、熟すと先端が小さく3裂する。種子は長さ約2.5㎜の扁平な先が尖った卵形、赤褐色、表面に細かな網目がある。2n=24,25,26。染色体数は地理的な変異があり、2n=24の多い地域と2n=26の多い地域がある。花期は8~9月。 品種) 'Alba' , 'Albomarginata' (v) , 'Angel's Halo' , 'Autumn Surprise' , 'Blackberry Mousse' , 'Blue Wonder' , 'Doctor Hiraos' , 'Gilt Edge' , 'Gold Leaf' , 'Golden Gleam' , 'Hakurakuten'白楽天 , 'Kinkazan' , 'Kohaku' , 'Lightning Strike' , 'Makinoi Gold' , 'Matsukaze' , 'Miyazaki' , 'Miyazaki Gold' (v) , 'Moonlight' , 'Nana' , 'Ogon' , 'Raspberry Mousse' , 'Satsuma' , 'Silke' , 'Silver Blue' , 'Taiwan Abdane' , 'Taiwan Atrianne' , 'Togen' , 'Variegata' (v) , 'White Flame' (v) , 'White Towers'

5-1 Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook. f. albescens (Makino) Hiyama シロホトトギス
  synonym Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook. var. albescens Makino
 花がごく薄く、花弁が白色に近いピンク色、雄しべや雌しべがピンク色を帯びる。

5-2 Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook. f. nivea Hiyama ユキホトトギス 

5-3 Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook. var. masamunei (Makino) Masam. サツマホトトギス 
 九州に自生する。葉や茎に毛が無い。水無月は広く栽培される紺覆輪の斑入り品種。 品種)  'Minazuki'水無月 , 'Precious Medal', 黄金月

6 Tricyrtis ishiiana (Kitag. et T.Koyama) Ohwi et Okuyama サガミジョウロウホトトギス 相模上臈杜鵑草
  synonym Tricyrtis macrantha Maxim. var. ishiiana Kitag. et T.Koyama
 日本固有種。神奈川県に自生する。沢沿いの岩場から垂れ下がって生える。ジョウロウホトトギスに似るが小型で、外花被片の距が大きく、花は明らかに総状花序につく。
 多年草。茎の長さは30~60cm、垂れ下がる。葉は卵状披針形~披針形、長さ7~15㎝。花は明らかに総状花序をなし、やや散房状に2~5個、下向きにつく。花は黄色、長さ約3㎝の釣鐘形、花の内面には赤紫色の斑点が多数ある。外花被片には比較的大きい距がある。果実は上向きにつく。花期は8月下旬~9月中旬。
6-1 Tricyrtis ishiiana (Kitag. et T.Koyama) Ohwi et Okuyama var. surugensis T.Yamaz. スルガジョウロウホトトギス 駿河上臈杜鵑草
 静岡県で発見された。
 サガミジョウロウホトトギスよりさらに小型。外花被片の距は細く小さく、長さ2㎜×幅1~1.5㎜。葉裏の脈上に伏毛がある。苞は小さく卵状楕円形、鋭頭で長く伸びず、花時に長さ3~4㎜×幅2㎜、果時に長さ7~9㎜×幅4mm。葯は赤褐色。開花は約4日間、雄性先熟。

7 Tricyrtis lasiocarpa Matsum.  ケタイワンホトトギス 
  synonym Tricyrtis ovatifolia S.S.Ying
 台湾原産。中国名は毛果油点草 mao guo you dian cao。
品種) 'Royal Toad'

8 Tricyrtis latifolia Maxim. タマガワホトトギス 玉川杜鵑草
  synonym Tricyrtis latifolia Maxim. var. nikkomontana Hiyama
  synonym Tricyrtis latifolia Maxim. var. makinoana (Tatew.) Hiyama
 日本(本州、四国、九州)、中国原産。中国名は宽叶油点草 kuan ye you dian cao。林内、林縁に生える。
 多年草、高さ40~100㎝、茎は普通、無毛。 葉は倒卵形~卵形楕円形、長さ1~1.5 cm×幅4~8 mm、上面は無毛、下面はまばら~やや密なに毛があり、基部は深い心形、茎を抱き、先は尖鋭形~尾状。集散花序は頂生、ときに茎の上部に腋生し、花が数個~多数つく。花序軸および小花柄はパピラがある。小花柄は長さ1.5~3cm。花被片は斜めに外側に広がり、淡黄色、紫赤色の斑点があり、倒披針形~狭楕円形、長さ1.6~2cm×幅4~5mm。外側の花被片は基部に袋(距)がある。雄しべは長さ1.5~2cm。子房は無毛。蒴果は長さ3~3.5cm。花期および果期は6~9月。2n=26。
品種) Baker's form , 'Forbidden City' , 'Lightning Strike' , 'Saffron' , 'Yellow Sunrise'

9 Tricyrtis macrantha Maxim. ジョウロウホトトギス 上臈杜鵑草
 日本固有種。四国の太平洋側に分布する。山地の渓谷の湿った岩場や崖に生える。
 多年草。茎は長さ40~100㎝、弓なりに垂れ下がる。葉は幅広く、基部は片側だけが耳状になり(上側の耳が無い)、これがジョウロウホトトギスの特徴、光沢が少なく、毛がある。花は茎の上方の葉腋に単生し、明瞭な花序の形をとらない。花は平開しない釣り鐘形、長さ4~5㎝、明るい黄色、内側に赤紫色の斑点が多数あり、質は厚くてロウ状の光沢がある花期は10月上旬頃。
品種) 'Tosa'

10 Tricyrtis macranthopsis Masam. キイジョウロウホトトギス 紀伊上臈杜鵑草
  synonym Tricyrtis macrantha Maxim. var. macranthopsis (Masam.) Okuyama et T.Koyama
  synonym Tricyrtis macrantha Maxim. subsp. macranthopsis (Masam.) Kitam.
 日本固有種。紀伊半島に分布する。山地の渓谷の湿った岩場や崖に生える。
 多年草。茎の基部からは丈夫な根が多数出る。茎は分枝せず、垂れ下がり、長さ40~80cm、節が多く、節間は短く、上部には毛がまばらにある。葉は茎の左右に2列に互生し、幅が狭く、披針形、長さ12~18cm、基部は両側が耳状になり、茎を深く抱き、先は尖鋭形、下面には脈上に粗い毛がある。開花は約5日間、雄 性先熟。花は葉腋に単生し、ときに茎頂に1~2個、頂生し、明瞭な花序の形をとらない。花柄は花より短く、途中で曲がり、基部には小包が数個つく。小苞は披針形。花は重みで斜め下向きに咲き、半ばまで開く釣り鐘形。花被片は長さ約40mm、黄色、内側に紫褐色の斑点がある。外花被片は内片よりやや幅が狭く、基部に長さ4~5mmの距があり、先端には小角状の突起がある。雄しべは6本、花糸は長さ2cm、扁平、下部には小突起がある。葯は側裂開、 葯の向ぎを自由に変えられる丁字着。雌しべは花柱が長さ14mm、上部が3分岐し、その先端が2分岐し、球形の突起が多数ある。蒴果は長さ22~25mm、線状長楕円形。種子は広卵形、長さ約1mm。花期は8~10月。
品種) 'Juro' (d)

11 Tricyrtis macropoda Miq. ヤマホトトギス 山杜鵑草
  synonym Tricyrtis dilatata Nakai 朝鮮原産 チョウセンホトトギス
 北海道(西南部)、本州、四国、九州、中国原産。中国名は油点草 you dian cao。英名はlarge-stalked toad lily。
多年草。高さ40~70㎝。葉は互生し、長さ8~18㎝、幅2.5~5㎝の長楕円形、先が尖り、縁が波打つ。花は茎頂や上部の葉腋に散房状に枝分かれして数個、上向きにつく。枝分れが特徴である。小花柄は長さ1.4~3㎝。花披片は長さ1.5~2㎝、強く反曲することが多く、白色に紅紫色の斑点があり、花被片の基部の斑点が大きく密なことが多い。強く反り返った花被片内側が中凹みとなることも特徴である。雄しべは6個、長さ1.5~2㎝、花糸の外面や花柱の基部に斑点があるものやほとんどないものがある。花糸の上面(内面)には斑点はない。花柱は3個、長さ1~1.5㎝、柱頭は2裂。果実は長さ2~3㎝。2n=26。花期は7~9月。
品種) 'Crow Leaf' , 'Empress' , 'Tricolor' , 'Yungi Temple form'
11-1 Tricyrtis macropoda Miq. f. epunctata Akasawa ムテンヤマホトトギス 
  synonym Tricyrtis macropoda Miq. var. nomurae Hir.Takah.
 日本(四国)に分布する。別名はイヨホトトギス。

11-2 Tricyrtis macropoda Miq. var. bulbifera Y.Inoue, Nakamasu et Setoguchi ムカゴホトトギス 
 九州に分布。2020年記載の新変種。葉腋にムカゴをつける。

12 Tricyrtis maculata (D.Don) J.F.Macbr. ヒマラヤホトトギス 
  synonym Tricyrtis pilosa Wall. [Flora of China]
  synonym Tricyrtis viridula Hir.Takah.
  synonym Tricyrtis esquirolii (H.Lév.) H.Hara
 中国、ブータン、インド、ネパール原産。中国名は黄花油点草 huang hua you dian cao。英名はChinese Spotted Toad Lily。

13 Tricyrtis nana Yatabe チャボホトトギス 矮鶏杜鵑
  synonym Tricyrtis flava auct. non Maxim.
  synonym Tricyrtis flava Maxim. var. nana (Yatabe) Makino
 日本固有種。本州(東海地方~近畿地方)、四国、九州、屋久島に分布する。やや明るい林内に生える。
 小型の多年草本。高さ10~15㎝。根茎は短く、地中で垂直になり、節から丈夫な根を出す。茎は1本だけで直立し、硬い毛がある。葉は数枚、互生し、節間が短く、重なり合って2列につき、水平に広がる。葉身は倒卵状長楕円形、長さ6~12cm、基部は深く茎を抱き、先は尖鋭形、やや革質で、表面は平滑、光沢があり、しばしば、暗緑色の斑紋があり、上面が無毛、下面にはまばらに毛があり、とくに下部に多い。開花は1日、雌雄同熟。花は株に1~2個、頂生および葉腋に上向きにつく。花柄は短く、毛が密にある。花冠は広い漏斗形、直径約2㎝、黄色、花冠の内側に褐紫色の細かい斑点が散布する。花被片は6個、倒披針形、先は鋭形。外花被片は淡緑色、外面に細かな毛が一面にあり、先端の外側には小さな角状突起があり、基部は球状に膨らむ(小さな距)。内花被片は黄色、外花被片よりやや幅が広い。雄しべは6本、、先は弧状に反り返り、葯は背着。子房は細長い。花柱は上部で3分岐し、さらに先端が2裂、その表面に細かな毛が散在する。蒴果は披針形、3稜形、直立し、長さは約20mm。種子は倒卵形、扁平。花期は9月。
品種) 'Karasuba'烏葉 , 'Ginyou'銀葉 , 'Night Wing' , 'Purple leaf' , 'Raven's Back'

14 Tricyrtis ohsumiensis Masam.  タカクマホトトギス 高隈杜鵑
  synonym Tricyrtis flava Maxim. subsp. ohsumiensis (Masam.) Kitam.
 日本固有種。九州南部に分布。山地の湿った岩場に生える。和名は発見地の鹿児島県の高隈山に因む。
 多年草。高さ20~60㎝。茎は普通、斜上するが、ときにやや垂れる。全体にほとんど無毛。葉は互生し、広楕円形、長さ6~25㎝×幅4~8㎝、基部は茎を抱き、先は鋭形、やや質が厚く、淡緑色、ときに暗色の油点模様がある。花は茎先や葉腋に1~2個ずつ、上向きにつく。花はキバナノホトトギスに似るが、色はやや薄い。花被は直径3~4㎝。花被片は6個、平開し、淡黄色で暗紫褐色の細かい斑点がある。外花被片3個と内花被片3個は幅がほぼ同じで、外花被片の基部には小さな距がある。雄しべは6本、下部は合着して筒部を形成する。葯は楕円形。花糸や葯には斑点がない。花柱は太く、柱頭が深く3裂し、先端がさらに2裂して平らに開き、柱頭には赤色の斑点があり、腺のあるいぼ状突起がある。花期は9月中旬~10月上旬。
品種) 'Fukurin-fu' (v) , 'Lunar Eclipse' , 'Nakatsugawa' (v)

15 Tricyrtis perfoliata Masam. キバナノツキヌキホトトギス 黄花の突抜杜鵑草
 日本固有種。宮崎県の尾鈴山地だけに分布する。渓流の崖から垂れ下がって生える。
 多年草、長さ50~70㎝。茎はジグザグに屈曲する。葉は長さ8~17㎝、盾状に無柄でつき、茎が葉を貫いているように見え、葉先は長い尖鋭形、両面とも無毛で、光沢があり、葉脈は下面で明瞭。茎は葉の下面の太い中脈と合着し、合着点から、中脈の両側に細い脈が各3~4本、上部に平行に伸びるのが見える。花は葉の上面の茎との接合点(葉腋)に上向きにつき、花柄がある。花柄は長さ約1㎝。花は花被片が6個、斜開~平開し、直径約4㎝。花被片は長さ約2.5㎝、黄色、内面の上半部には赤褐色の細かい斑点があり、基部に赤褐色の斑点が輪状に見えるように密につく。外花被片の基部は小さく膨れる。雄しべは6本。花糸は上部で反り返る。柱頭は3裂し、反り返って広がり、さらに先端が小さく2裂し、小さな赤褐斑と腺のあるいぼ状突起がある。果実は長さ約3.5㎝、柱状3稜形の、先から裂開する。花期は9月下旬から10月初旬。
品種) 'Raspberry Mousse' , 'Spring Shine' (v)

16 Tricyrtis puberula Nakai et Kitag.  マンシュウホトトギス 
  synonym Tricyrtis pseudolatifolia Hir.Takah. et H.Koyama 
中国原産。  偽1年草。地下の茎(根茎)は1~3本、長さ4.5㎝以下(栽培時)、1年生、先端にラメート(ramet:クローン)を形成する。主なひげ根は橙色を帯び、その上に無数の微細な濃橙色の斑点がまばらにある。茎は直立し、単純、無毛、ときに上部に微軟毛があり、長さ70㎝(または、花序軸を含めて長さ95㎝)になる。茎葉は楕円形から狭楕円形、卵形または長円形、先は尖鋭形、基部は短く漸尖~鈍形または心形、両面に微軟毛があり、長さ10~17㎝×幅3~9.5㎜。集散花序は頂生、しばしば茎の上部に腋生する。花序柄と花柄には密に腺毛がある。花は1集散花序あたり12個までで、開花は2日間続き、直径2.5~3.4㎝、芳香は無い。花被片は、開花初日に基部の約3分の1から水平に広がり、開花2日目に徐々に斜上し、淡緑色または淡黄緑色で、普通、基部を除いて紫褐色または赤紫色の細かい斑点があり、橙黄色の斑点は識別できないかまたはほぼ基部にかすかにある。外側の花被片は狭楕円状倒披針形、基部に蜜腺があり、長さ16~21㎜×幅6~8.5㎜、外側に腺毛がある。内側の花被片は狭三角状披針形、基部は亜矛形、長さ15~22㎜、中間の幅は3~5㎜(亜矛形に拡張した基部では幅5.5~6.5㎜)、外側の中脈に腺毛がある。雄しべは6本。花糸は上部で外側へ曲がり、下半分に短い後ろ向きの毛があり、色素性(赤紫色)の斑点はなく、基部で側部が統合し、長さ17~24mm。葯は長円形または狭楕円形、外向き、クリーム色、わずかに鈍い紫色を帯び、長さ(3.5~)4~5.5㎜。雌しべは1個、花柱は下部が柱状、上部は3分岐し、各分岐はさらに上部で2分岐する。枝は淡緑色または淡黄緑色で、多数の微細な赤紫色の斑点とやや細い 嚢状毛(bladder hairs)がある。花柱基部の柱状部は長さ3~5㎜、3分岐の枝は長さ4.5~7.5㎜、尖端の2分岐の小枝は長さ3~5㎜。子房は線状披針形、三稜形、淡緑色、長さ10~13㎜。蒴果は長楕円状披針形または披針形、先は鋭形またはほぼ尖鋭形、三稜形、長さ2.5~4.1㎝×幅6~9㎜、上部で胞間裂開する。種子は卵形または楕円状卵形、鋭形、扁平、暗褐色で、長さ2.5~3.3㎜×幅1.5~2mm。花期は6~7月。

17 Tricyrtis setouchiensis Hir.Takah. セトウチホトトギス 瀬戸内杜鵑草
 日本固有種。瀬戸内海沿岸(本州の大阪府・和歌山県・兵庫県・岡山県・山口県)に分布。山野のやや湿った林縁や草地に生える。  多年草、高さ30~50㎝、斜上し、崖では垂れ下がる。根にはアントラキノン系の色素があり、黄色を帯びる。茎には下向きの毛がある。葉は互生し、卵状楕円形~狭長楕円形、長さ8~18㎝、長楕円形、上面には荒い毛があり、下脈上と縁にも毛が多い。花は茎頂および葉腋に1~2個(数個)ずつつき、白色、花被片はほぼ平開し、長さ約2㎝、紫色の斑点があり、下部に黄色の斑点がある。雄しべは6本、紫色の斑点がある。雌しべは柱頭が3分岐して、反り返って広がり、さらに先端が小さく2裂し、紫色の斑点がある。花期は遅く、8~10月

18 Tricyrtis suzukii Masam.  ミヤマホトトギス 
 台湾原産。中国名は侧花油点草 ce hua you dian cao。

19 その他ハイブリッド
品種) 'Abdane' , 'Akizora' , 'Alice Staub' , 'Amanagowa'天の川(キバナノツキヌキホトトギス×シロホトトギス) , 'Angel's Halo' , 'Blackberry Mousse' , 'Blue Wonder' , 'Blueberry Mousse' , 'Chocolate Mousse' , 'Citronella' , 'Cumberland' , 'Dai Nagon'大納言 , 'Dark Beauty' , 'Dark Blotch' , 'Eco Gold Spangles' , 'Eco Yellow Spangles' , 'Edo no Hana' , 'Emily' , 'Empress' , 'Empress' dwarf variety , 'Gilt Edge' , 'Gold Rush' , 'Golden Gleam' , 'Golden Leopard' , 'Hakuro'白露(ハクロ) , 'Harlequin' , 'Hatatogisa' , 'Hiki-yuri' , 'Hobane' , 'Huji-no-yuki'富士の雪 , 'Imperial Banner' (v) , 'Innotripf'PBR , 'Ivory Queen' , 'Jasmin' , 'Kinkaku'金閣 , 'Kinkazan' , 'Kohaku'琥珀杜鵑(ジョウロウホトトギス×ヤマホトトギス) , 'Komon' , 'Kurobana' , 'Lemon Lime' (v) , 'Lemon Twist' , 'Lightning Strike' (v) , 'Lilac Towers' , 'Matukaze'松風(タイワンホトトギスとホトトギスとの交雑種) , 'Manten-no-hoshi' , 'Mine-no-yuki'峰の雪 , 'Momoe' , 'Momoyama' , 'Moonlight Treasure' , 'Niitaka'百恵(ももえ) , 'Omokage' , 'Oniji' , 'Orihime' , Pink Freckles ('Innotripf'PBR) , 'Purple Beauty' , 'Raspberry Mousse' , 'Sagiri' , 'Sharkskin' , 'Shikin' , 'Shiko' , 'Shikou'紫光 , 'Shimone' , 'Shinalins' , 'Shining Light' , 'Shining Light' , 'Shirohototogisu' , 'Shisui'紫酔 , 'Shizuka Gozen' , 'Shuugetu' 秋月, 'Sinonome' , 'Skyrocket' , 'Snow Fountain' , 'Taipei Silk' , 'Taipei Silk'PBR , 'Taiwan Adbane' , 'Tojen' , 'Toki Hokai' , 'Toki-no-mai' , 'Tosui' , 'Tresahor White' , 'Tresahor Yellow' , 'Variegata' (_affinis_ hybrid) (v) , 'Washfields' , 'White Towers' , 'White Towers' spotted , 'White Waves' (v) , 'Worley Hybrids' , 'Yellow Sunrise' , 'Yosei'妖精

参考

1) Flora of China
 Tricyrtis
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=133597
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Tricyrtis
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:331300-2
3) World Flora Online
 Tricyrtis
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000039103
4) 植物研究雑誌 33(8): 251–255(1958)
 北川政夫・小山鉄夫:ジョウロウホトトギスの変異
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_033_251_255.pdf
5) 植物研究雑誌 35(7) p218(1960)
 サガミジョウロウホトトギス(スルガジョワロウホトトギス)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_035_218_218.pdf
6)植物研究雑誌 37(11): 351–352(1962)
 山崎敬:スルガジョワロウホトトギス
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_037_351_352.pdf
7)植物分類,地理 44 (2) p141-150 (1993)
 キイジョウロウホトトギスとスルガジョウロウホトトギスの花部生態学 高橋 弘
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunruichiri/44/2/44_KJ00001079004/_article/-char/ja/
8) Acta Phytotaxonomica et Geobotanica 2001年 52巻 1号 p35-40
 Tricyrtis chinensis Hir. Takah. (Liliaceae), A New Species from Southeast China
https://www.jstage.jst.go.jp/article/apg/52/1/52_KJ00003256631/_article/-char/ja