ヤブレガサ 破れ傘

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Flora of Mikawa

キク科 Asteraceae ヤブレガサ属

英 名 shredded umbrella plant ,Palmate umbrella plant ,Palmate shredded umbrella plant
学 名 Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.
ヤブレガサの芽
ヤブレガサの芽2
ヤブレガサの蕾
ヤブレガサの頭花
ヤブレガサ
ヤブレガサ葉
花 期 7~10月
高 さ 60~80㎝
生活型 多年草
生育場所 林内
分 布 在来種  本州、四国、九州、朝鮮
撮 影 豊橋市 04.3.28
和名は芽吹きどきの様子が破れた傘のように見えることから。
 長い地下茎がある。根生葉は1個だけつく。葉は楯状につく長柄があり、直径30~50㎝の円形、掌状に7~9深裂する。葉柄の基部は茎を取り巻いて抱く。円錐花序に多数の頭花をつける。頭花は約10個の筒状花だけからなり、直径8~10㎜。総苞は長さ9~10㎜の円筒形。柱頭は開花時に反曲する。痩果は長さ約4㎜、多数の縦肋がある。冠毛は長さ約7㎜、汚れた白色。2n=52。
 モミジガサは葉柄が楯状につかず、基部の裂片が小さい。

ヤブレガサ属

 family Asteraceae - genus Syneilesis

 多年草、丈夫。根生葉は盾状、掌状に深裂し、長い葉柄があり、若い時に密に細かく縮れた毛がある。子葉は葉身が開く前に内巻き。茎葉は互生、葉柄は基部が抱茎。頭花は中心小花頭花(discoid:両性の筒状小花だけからなる頭花)[]。小花は筒形、多数、頂生の散房花序又は円錐花序につく。総苞は狭管状又は円筒状、基部に線形の小苞を2又は3個もつ。総苞片は5個、不等長。内総苞片は幅が広く、外総苞片は狭い。花托は平ら、無毛、ハチの巣状。小花は淡白色~淡赤色、両性、稔性、不規則に分裂する。葯は基部が矛形、付属体は短く尖る。花柱の枝は長く、外側に毛があり、先は鈍形又は三角形。痩果は円筒状、無毛、多数のうねがある。冠毛は多数、不等長又はほぼ等長、細かい剛毛状。実生は子葉が1個。
 世界に7種あり、東アジアに分布し、主に、中国、日本、朝鮮に分布する。

ヤブレガサ属 の主な種と園芸品種

1 Syneilesis aconitifolia (Bunge) Maxim. ホソバヤブレガサ 細葉破れ傘

 朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は兔儿伞 tu er san 。英名はshredded umbrella plant。斜面の林縁、道端に生える。
 多年草、直立し、高さ70~120㎝。根茎は平伏し、短く、多数のひげ根をもつ。茎は紫褐色、単純、無毛。茎葉は普通、2(~3)個つく。下部の葉は長い葉柄があり、盾状。葉柄は長さ10~16㎝、翼は無く、無毛、基部は抱茎。葉身は下面が灰色、上面は淡緑色、直径20~30㎝、掌状に深裂、裂片は7~9個、2回、2~3分裂し、裂片は幅2.5~8㎜、線状披針形、初め、後屈し、閉じた傘形、密にクモ毛状の綿毛があり、後に開いた傘形になり、無毛になり、先は尖鋭形、不規則に鋭形。中間の茎葉は葉柄が長さ2~6㎝。葉身は小さく、直径12~24㎝。裂片は4~5個。最も上部の葉は葉柄が無又は短く、苞状、披針形。頭花は多数、中心小花頭花(discoid)、密な複合の散房花序につき、直径6~7㎜。花序柄は長さ5~16㎜、少数の線形の小苞をもつ。総苞は筒形、長さ9~12㎜×幅5~7㎜、基部は無毛、縁は薄膜質。小花は8~10個、花冠はピンク白色、長さ約1㎝、筒部は狭く長さ3.5~4㎜、拡大部は狭い鐘形、裂片は5個。葯は紫色、基部は短い矛形。花柱の枝は長く、扁平、先は鈍形、ほうき状の微軟毛がある。痩果は円筒形、長さ5~6㎜、無毛、うねがある。冠毛は毛細管状の剛毛、汚白色~帯赤色、長さ8~10㎜。花期は6~7月。果期は8~10月。

1-1 Syneilesis aconitifolia (Bunge) Maxim. var. aconitifolia コヤブレガサ

 日本、朝鮮、中国、ロシアに分布。

1-2 Syneilesis aconitifolia (Bunge) Maxim. var. longilepis Kitam. タンバヤブレガサ 丹波破れ傘

 京都府船井郡日吉町胡麻郷(現:南丹市)にあり、1933年に採取された標本がある。現在は生育が確認されず、絶滅種とされた。
 花序は散房状花序。花茎の葉腋にむかごがつかない。

2 Syneilesis akagii Kadota et Mas.Saito ヒュウガヤブレガサ 日向破れ傘

 日本固有種(宮崎県、大分県南部、熊本県中部)。石灰岩地に多いが非石灰岩地にも生える。
 多年草、高さ70~100㎝。根茎は長さ1~2㎝×直径3㎜、水平に伸び、糸状の根をもつ。茎は直立、葉があり、 若い時は長い絹毛があり、後に無毛になり、うねがある。葉は茎葉、2~3個つく。下部の茎葉は円形、直径26~36㎝、上面は濃緑色、下面は粉白を帯び、掌状に7~9深裂し、両面ともほぼ無毛、盾状。裂片は狭い倒卵形~倒卵形、長さ13~17㎝×幅4.5~12㎝、鋸歯縁、中間で2裂し、ときに付加的に2裂片に分裂し、下面に細脈が隆起する。葉柄は長さ5~16㎝、無毛。中間又は上部の茎葉は円形状、直径15~22㎝、無毛、盾状、葉柄は長さ1~5㎝。花期は6~7月、頭花は長さ17~18㎜、緩い総状花序~円錐花序に数個~多数つく。花序柄は長さ8~11㎜。苞は2~3個つき、狭披針形、長さ1~2㎜、鱗片状。小花は頭花に12~13個、淡黄色、両性又は中心部で雌性。葯は褐色、長さ5㎜で、長さ約1㎜の尾をもつ。総苞は円筒形、長さ10~15㎜×直径4~6㎜、灰褐色、無毛。総苞片は5個、1列、狭倒卵形又は披針形。花冠は長さ10㎜、のど部は長さ8㎜、管部は2㎜。冠毛は長さ8~10㎜、汚灰色~赤灰色、ザラつく。痩果は広線形、長さ6~7㎜。
 ヒュウガヤブレガサはヤブレガサS. palmata (Thunb.) Maxim. に近いが、①総苞が灰褐色~淡紫褐色を帯び、長さ15~16㎜とより大型で、②葉の下面が緑白色で細脈が隆起してよく目立ち、③花冠がより長く、④痩果がより大型である点で区別される。花期も6~7月で、ヤブレガサよりも早い傾向がある。また、頭花には両性小花の他に雌性小花の存在が認められる。雌性小花は頭花の中心部にあり、葯が完全に退化している。(参考5)

3 Syneilesis hayatae Kitam. タカサゴヤブレガサ 高砂破れ傘
  synonym Syneilesis intermedia Kitam.
 台湾原産。中国名は台湾兔儿伞 tai wan tu er san。標高300~500mの森林の下層部に生える。
 多年草、根茎があり、根茎は平伏し、短い。 茎は直立し、高さ80~160㎝、直径約7㎜、下部は無毛、ときに葉腋に小球(bulblets)があり、上部は枝分かれした散房花序。茎葉は2枚、下部の茎葉は長い葉柄があり、葉柄は長さ20㎝まで、翼はなく、基部は抱茎。葉身は盾状円形、直径約35㎝、ほぼ革質、掌状に深裂し、裂片は5~9個、さらに2裂し、小裂片は幅15~20㎜、縁は不規則な鋸歯状、先は鋭形。中部の茎葉は小さく、裂片は少なく、短い葉柄がある。上部の茎葉は離れており、苞状、線状披針形、上部に向かって次第に小さくなり、先は尖鋭形。 頭花は多数、直径8~10㎜、頂生の複合散房花序につく。花序柄は長さ5~16㎜、苞は線形、長さ3~4㎜。総苞は筒形、長さ9~10㎜、基部には3~4個の線状の小苞がある。総苞片は単列、4~5個、長円形、無毛、縁は薄膜質、先は鈍形。 小花14~16個、花冠は白色、長さ1~1.3㎝、筒部は細く、長さ4~5㎜、先は5裂する。葯は黒紫色、基部は矛形。子房は円筒形、無毛。花柱の枝は細長く、先端は三角形で、微軟毛がある。冠毛は多数の剛毛(bristles)、帯赤色、長さ約1㎝、ほぼ等長。花期は5月。

4 Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim. ヤブレガサ 破れ傘
  synonym Syneilesis tagawae (Kitam.) Kitam. var. latifolia H.Koyama
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮原産。英名はshredded umbrella plant ,Palmate umbrella plant ,Palmate shredded umbrella plant。和名は芽吹きどきの様子が破れた傘のように見えることから。
 多年草。高さ60~80㎝。長い地下茎がある。根生葉は1個だけつく。葉は楯状につく長柄があり、直径30~50㎝の円形、掌状に7~9深裂する。葉柄の基部は茎を取り巻いて抱く。円錐花序に多数の頭花をつける。頭花は約10個の筒状花だけからなり、直径8~10㎜。総苞は長さ9~10㎜の円筒形。柱頭は開花時に反曲する。痩果は長さ約4㎜、多数の縦肋がある。冠毛は長さ約7㎜、汚白色。2n=52。林内に生える。花期は7~10月。
品種) 'Aka-fu' , 'Kiko' , 'Kikkou-fu' , 'Ogon')

5 Syneilesis subglabrata (Yamam. et Sasaki) Kitam. ハダカヤブレガサ 裸破れ傘

 台湾原産。中国名は高山兔儿伞 gao shan tu er san。標高1700~2800mの高山地帯に生える。
 茎は直立、線状、高さ50~85㎝、無毛、合生花序が上部で分枝し、短い毛がある。 茎葉は 3 枚または 4 枚、下部の葉は羽状である。 葉柄は 4 ~ 5 cm、基部は白く、節は絨毛状。葉身は下面が灰色、上面が緑色、円形、直径12~20(~25)㎝、肉厚、掌状に5~7裂し、裂片は倒卵形、2回2深裂し、小裂片は披針形、幅1~1.5㎝、両面にはまばら毛があり、縁はまばらに鋭い歯があり、先は尖鋭形。上部の茎葉は上部で次第に小さくなり、掌状深裂または3裂し、苞状、線状披針形。 頭花は多数、頂生の円錐花序につき、長さ約10㎜×幅6~8mm。花序柄は長さ1~4㎜、密に短毛があり、頂部に線形の苞が3個つく。総苞は筒形、長さ約8.5 ×幅5~7 mm。総苞片は一列、5個、長円形、長さ約8.5×幅2~3㎜、厚く、外側は無毛、先は鈍形、微軟毛がある。小花は6~8個、花冠は長さ8~9mm、5裂し、筒部は細く、長さ2~2.5mm。葯は黒紫色、基部は矛形。子房は円筒形、無毛。花柱の枝は細長く、先端には微軟毛がある。冠毛は多数の剛毛、汚白色、長さ7~8mm。花期は6月。果期は9月。

6 Syneilesis tagawae (Kitam.) Kitam. ヤブレガサモドキ 破れ傘擬
 日本固有種(兵庫県、高知県、愛媛県)。日当たりのよい草地に生える。
 多年草。高さ1~1.2m、長い地下茎がある。花茎の葉腋にムカゴをつける。茎下部の葉は楯状につき、円形、直径20~30㎝、掌状に6~8深裂し、裂片はしばしば2裂し、最終裂片は披針形、先は鋭形、縁にはわずかに鋸歯があるか又は全縁。花序は幅10~20㎝の散房花序、頂生する。頭花は直径7~10㎜。総苞は長さ8~10㎜。小花は頭花に9~11個つき、全て筒状花、花冠は淡紅紫色、長さ9~9.5㎜。痩果は円筒形、無毛。冠毛は汚白色、長さ7~8㎜。花期は7~8月。

6-1 Syneilesis tagawae (Kitam.) Kitam. var. latifolia H.Koyama ヒロハヤブレガサモドキ 広葉破れ傘擬

 愛媛県、高知県に分布。
 葉は楯状につき、円形、直径24~30㎝、裂片に不規則な鋸歯がある。花序の柄は広角度に開出する。

参考

1) GRIN
 Syneilesis
http://tn-grin.nat.tn/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=602
2) Flora of China
 Syneilesis
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=132089
3) Flora of North America
 Syneilesis
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=112000
4) Plants of the World Online | Kew Science
 Syneilesis
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:7615-1
5) 植物研究雑誌 第88巻 第6号 2013年12月: 339-345 (2013)
 九州産ヤブレガサ属(キク科)の1 新種,ヒュウガヤブレガサ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_088_339_345.pdf