ワチガイソウ 輪違草

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Flora of Mikawa

ナデシコ科 Caryophyllaceae ワチガイソウ属

中国名 异花孩儿参 yi hua hai er shen
学 名 Pseudostellaria heterantha (Maxim.) Pax.
ワチガイソウの花
ワチガイソウの花2
ワチガイソウの萼
ワチガイソウの茎の毛
ワチガイソウ
ワチガイソウの葉
花 期 4月
高 さ 5~15㎝
生活型 多年草
生育場所 山地の林縁、林内
分 布 在来種  本州(関東地方以西)、四国、九州、中国、ロシア
撮 影 面の木  07.5.12
湿った日陰を好み、面の木では林下の渓流沿いで見られる。茎は直立し、紫褐色を帯び、1または2列の白毛が生える。葉は対生し、長さ1~4㎝の倒披針形~卵状披針形。茎頂や葉腋の長い花柄の先に白色の5弁花を1個ずつ、つける。花弁は萼片より長い。花柄は長さ3~3.5㎝、毛がある。雄しべは10個、葯は紫~紫褐色。萼片は5個、長さ3~4㎜の披針形、毛がある。閉鎖花は基部の葉腋につき、花柄が短く、萼片4個、長さ2~3㎜、花弁はなく、雄しべ4~5個、花柱は非常に短く、柱頭は2岐。果実は長さ3.5~4㎜の卵形。
 混同しやすい類似のヒゲネワチガイソウは葉の幅が狭く、花柄に毛が生えない。
 ワダソウは上部の葉が集まってつき、花弁の先が凹む。
 ヒナワチガイソウは関東地方に稀にあり、小型で、茎や葉が細く軟弱。

ワチガイソウ属

  family Caryophyllaceae - genus Pseudostellaria

 多年草。塊根は筒状、紡錘形、卵形、又はほぼ球形。茎は直立~斜上、ときに匍匐する。葉は卵形~卵状披針形~線状披針形。托葉は無い。花は2型ある。開花受精花(chasmogamic flowers) は大きく、上部の葉腋に単生。苞は咢の基部を抱き、すぐに無くなる。花柄は長く、果実には無い。咢片は(4又は)5個。花弁は (4又は)5個、白色、全縁又は凹形。雄しべは(8又は)10本。子房は球形又は卵形、1室。胚珠は多数。花柱は(2又は)3本。柱頭は頭状。閉花受精花(cleistogamic flowers)は小さく、茎の下部の葉腋につく。花柄は短又はほぼ無。咢片は4(又は5)。花弁はごく小さく、膜質又は無。雄しべは減り、まれに2個。子房は球形又は卵形、1室、胚珠は多数。花柱は2~3本、蒴果は(2~) 3(~4)バルブ。種子は少数、大きく、やや扁平、いぼ状突起があるか又は平滑。胚は曲がる。
About 18 species: E and N Asia, one species in Europe, two species in North America; nine species (two endemic) in China.
 世界に約18種があり、アジア東部と北部に分布し、1種がヨーロッパ、2種が北アメリカに分布する。

ワチガイソウ属の主な種と園芸品種

1 Pseudostellaria davidii (Franch.) Pax  ツルワチガイ 蔓輪違
  synonym Pseudostellaria coreana (Nakai) Ohwi  タンナワチガイ 
 朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は蔓孩儿参 wan hai er shen。
 塊根は紡錘形。茎は匍匐し、傾伏し、長さ50㎝以下、細く、まばらに分枝し、毛が2本の線に並ぶ。葉はほぼ無柄。葉柄は長さ3~5mm。葉身は卵形、長さ1.5~3 ㎝×幅1~2㎝、基部は円形、縁毛があり、先は鋭形。開花受精花は腋生、花柄は長さ約3.8㎝、細く、1列の毛がある。咢片は5個、披針形、長さ約3mm、下面は中脈に毛がある。花弁は5個、狭卵形~倒披針形、長さは咢片の長さの約2倍、縁は全縁。雄しべは10本、花弁より短い。葯は紫色。花柱は(2又は)3本。閉花受精花は腋生、花柄は長さ約1㎝、毛がある。咢片は4個、狭披針形、約・長さ3mm×幅0.8~1㎜、毛がある。雄しべは減る。花柱は2本。蒴果は卵形、咢片よりわずかに長く、4バルブ。種子は腎形又はほぼ球形、長さ約1.5㎜、マミラがあり(乳頭状突起があり)、 尖った突起がある。花期は5~7月。果期は7~8月。

2 Pseudostellaria ebracteata (Kom.) N.S.Pavlova  イワワチガイソウ 岩輪違
  sunonym Pseudostellaria rupestris auct. non (Turcz.) Pax
  sunonym Stellaria ebracteata Kom.
 朝鮮、中国(満州)、ロシア原産。

3 Pseudostellaria heterantha (Maxim.) Pax  ワチガイソウ 輪違草
  synonym Pseudostellaria maximowicziana (Franch. et Sav.) Pax
  synonym Pseudostellaria bulbosa (Nakai) Ohwi  カヤサンワチガイソウ 
 日本(本州の関東地方以西)、四国、九州、中国、ロシア原産。中国名は异花孩儿参 yi hua hai er shen。
 多年草、高さ5~15㎝。湿った日陰を好み、面の木では林下の渓流沿いで見られる。茎は直立し、紫褐色を帯び、1または2列の白毛が生える。葉は対生し、長さ1~4㎝の倒披針形~卵状披針形。茎頂や葉腋の長い花柄の先に白色の5弁花を1個ずつ、つける。花弁は萼片より長い。花柄は長さ3~3.5㎝、毛がある。雄しべは10個、葯は紫~紫褐色。萼片は5個、長さ3~4㎜の披針形、毛がある。閉鎖花は基部の葉腋につき、花柄が短く、萼片4個、長さ2~3㎜、花弁はなく、雄しべ4~5個、花柱は非常に短く、柱頭は2岐。果実は長さ3.5~4㎜の卵形。花期は4月。

3-1 Pseudostellaria heterantha (Maxim.) Pax var. linearifolia (Takeda) Nemoto  ヒナワチガイソウ 雛輪違草
  synonym Pseudostellaria musashiensis Hiyama
 関東地方に稀にあり、小型で、茎や葉が細く軟弱。

4 Pseudostellaria heterophylla (Miq.) Pax  ワダソウ 和田草
  synonym Pseudostellaria bulbosa (Nakai) Ohwi  カヤサンワチガイソウ 
 日本(本州の岩手県以南、九州北部)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は孩儿参 hai er shen。別名はヒメワダソウ。
 塊根は白色、わずかに灰黄色、長い紡錘形。茎は1本、直立し、高さ(8~)15~20㎝、2本の線に毛が生える。下部の葉は普通、1又は2対つき、へら形~倒披針形、基部は漸尖し、葉柄となり、先は鈍形。中間の葉は長さ3~4㎝×幅5~8mm。上部の葉は2~3対つき、十字対生、おおよそ、広卵形、長さ3~6㎝×幅1~2㎝、下面は脈に直軟毛があり、上面は無毛、基部は漸尖し、先は尖鋭形。開花受精花は腋生、単生又は集散花序につく。花柄は長さ1~2(~4)㎝、毛がある。咢片は5個、披針形、長さ約5mm、外面は軟毛があり、縁毛がある。花弁は5個、長円形又は倒卵形、長さ7~8mm、縁は全縁、わずかに歯があるか又は凹形。雄しべは10本、花弁より短い。子房は卵形。花柱は3本、雄しべよりわずかに長い。柱頭は頭状。 閉花受精花(閉鎖花)は腋生、花柄は短い。咢片は4個、直軟毛がある。花弁は無い。雄しべは2本。花柱は3本。蒴果は卵形、裂開せず又は3バルブに裂開する。種子は褐色、長円状腎形~扁平な腎形~扁平な円形、長さ約1.5㎜、いぼ状突起がある。花期は4~7月。果期は7~8月。

5 Pseudostellaria japonica (Korsh.) Pax  ナンブワチガイソウ 南部輪違草
 日本(本州の岩手県・宮城県・福島県・栃木県・茨城県・長野県)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は毛脉孩儿参 mao mai hai er shen。
 塊根は紡錘形。茎は直立、高さ15~20㎝、不分枝、毛が2本の線につく。根生葉は披針形、長さ1.5~2.5㎝×幅2~3mm。中間と上部の葉はほぼ無柄、卵形~広卵形、長さ1.5~3㎝×幅1~2㎝、両面にまばらに毛があり、基部は円形、縁毛があり、先は鋭形。開花受精花は単生又は集散花序につく。花柄は長さ1.5~2.5㎝、細く、毛がある。咢片は5個、披針形、長さ3~3.5㎜×幅1.5~2㎜、縁と下面の中脈にまばらに長毛があり、縁は膜質。花弁は5個、倒卵形~広楕円状倒卵形、、長さ約5㎜、 咢片の長さの約2倍、基部は漸尖形、先は凹形。雄しべは10本、花弁より短く、葯は紫褐色。子房は卵形。花柱は3本。閉鎖花は腋生。花柄は細い。蒴果は卵形、咢片より長く、3バルブ。種子は褐色、卵形、わずかに扁平、長さ約1㎜、マミラがあり、尖った突起をもち、突起の先は剛毛状。花期は5~6月。果期は7~8月。

6 Pseudostellaria okamotoi Ohwi  チイサンワチガイソウ 
 朝鮮原産。

7 Pseudostellaria palibiniana (Takeda) Ohwi  ヒゲネワチガイソウ 髭根輪違草
  synonym Pseudostellaria longipedicellata S.T.Lee, K.I.Heo et S.C.Kim  ナガエワダソウ
  synonym Pseudostellaria okamotoi var. longipedicellata (S. Lee, K. I. Heo & S. C. Kim) H. Jo
 日本(本州の東北地方南部~中部地方)、朝鮮原産。愛知県絶滅危惧種 ⅠB類
 ヒゲネワチガイソウは葉の幅が狭く、花柄に毛が生えない。
多年草。高さ10~20cm。茎は直立し、2列の線に軟毛が生える。根は1~4本がやや肥厚する。葉は対生し、上部の 2対は広披針形~長卵形、長さ 2.5~4cm、他の葉は倒披針形。花は単生、個頂生する。花柄は長さ2~3cm、無毛。花弁は5~7 個、白色、倒披針形、先は鈍形、長さ6~7㎜。閉鎖花は茎の下部につく。蒴果は球形、直径約6㎜。花期は4~5 月。
7-1 Pseudostellaria palibiniana var. gageodoensis M.Kim & H.Jo
 朝鮮に分布。
7-2 Pseudostellaria palibiniana f. hallasanensis H.Jo
 朝鮮に分布。
7-3 Pseudostellaria palibiniana f. oreumiana H.Jo
 朝鮮に分布。

8 Pseudostellaria setulosa Ohwi  フチゲワダソウ 縁毛和田草
 朝鮮原産。

9 Pseudostellaria sylvatica (Maxim.) Pax  クシロワチガイソウ 釧路輪違草
 日本(北海道、本州の青森県・岩手県・栃木県)、朝鮮、中国、ロシア、ブータン原産。中国名は细叶孩儿参 xi ye hai er shen。
 塊根は普通、数個、並び(数珠形)、狭い卵形又は短い紡錘形。茎は直立し、高さ15~25㎝、4角(かど)があり、毛は2列の線につく。葉は無柄、線形~披針状線形、長さ3~5(~7)㎝×幅2~3(~5)mm、質が薄く、基部に縁毛があり、下面は灰青色、中脈は目立つ。開花受精花は単生又は2出集散花序につく。花柄は長さ5~15mm、細い。咢片は5個、緑色、披針形、外面は毛があり、縁は膜質、先は尖鋭形。花弁は5個、倒卵形、咢片よりわずかに長く、先は2裂。雄しべは花弁より短い。葯は褐色。花柱は2又は3本、普通、突き出る。閉花受精花(閉鎖花)は腋生又は短いシュートに頂生。咢片は狭披針形、外面は毛があり、先は尖鋭形。花弁は無い。蒴果は卵形、咢片よりわずかに長く、3バルブ。種子は腎形、長さ約1.5mm、いぼ状突起があり、先は芒のある突起。花期と果期は6~7月。

参考

1) Flora of China
 Pseudostellaria
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=127262
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Pseudostellaria
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30079009-2