ウラジロハナヒリノキ 裏白嚏の木

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Flora of Mikawa

ツツジ科 Ericaceae ハナヒリノキ属

別 名 コシノハナヒリノキ
学 名 Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. hypoleuca (Nakai) H.Hara
Leucothoe grayana Maxim. var. hypoleuca Nakai
ウラジロハナヒリノキの花
ウラジロハナヒリノキの花2
ウラジロハナヒリノキの萼
ウラジロハナヒリノキ
ウラジロハナヒリノキ花序
花 期 7~8月
高 さ 10~50㎝
生活型 落葉低木
生育場所 低山~亜高山の尾根、岩場
分 布 在来種(日本固有種)  本州(東北地方~中部地方、近畿地方北部、中国地方)
撮 影 八方尾根  07.7.28
ハナヒリノキより高地に生え、小型。
 葉は互生し、長さ1.5~6㎝、卵状楕円形~楕円形、先が尖り、基部は円形。葉裏は白色を帯びる。枝先に長い総状花序を伸ばし、つぶれた壺形の淡緑色の花を下向きにつける。花冠の先は5裂し、捲れ上がる。花序軸は無毛。果実は蒴果で、上向きになる。

ハナヒリノキ属

  family Ericaceae - genus Eubotryoides

 世界に約1種だけ、日本の固有種。

ハナヒリノキ属の主な種と園芸品種

1 Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara  ハナヒリノキ 嚏の木 広義
  synonym Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. oblongifolia (Miq.) H.Hara
  synonym Leucothoe grayana Maxim. var. oblongifolia (Miq.) Ohwi
 日本固有種(北海道、本州の近畿地方以北)。山地の岩地や、尾根すじなどの林縁に生える。愛知県の絶滅危惧Ⅱ類。
 落葉性の低木。高さ0.5~1.3m。若枝はやや扁平。葉は互生し、葉柄は長さ1~2mm。葉身は楕円形~長楕円形、長さ3~15㎝×幅1.5~5.5㎝、先端は短い鋭形、基部は円形~浅い心形、紙質、で両面にやや硬い毛を散生し、縁には微細な鋸歯があり、鋸歯の先端に長さ約0.5㎜の毛がある。総状花序は長さ5~15㎝、新枝の先に頂生し、多数の花を下向きにつける。花序軸には短い毛がやや密生する。苞は線形~線状披針形であるが、基部のものは葉状になる。萼は長さ約1㎜で、先は5深裂し、裂片は3角状卵形。花冠は緑白色、つぼ形で長さ3~4mm、先は5浅裂し、裂片は反曲する。雄しべは10本。果実は蒴果、扁球形、幅4~5mm、5室あり、赤紫色に熟す。種子は細かく、両端に多数の毛状突起がある。花期は6月中旬~7月下旬。
1-1 Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. grayana  ハナヒリノキ 
  synonym Leucothoe grayana Maxim. var. grayana
1-2 Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. glabra (Komatsu ex Nakai) H.Hara エゾウラジロハナヒリノキ 
  synonym Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. yezoensis (Tatew.) H.Hara
  synonym Leucothoe grayana Maxim. var. glabra Komatsu ex Nakai
  synonym Leucothoe grayana Maxim. var. yezoensis Tatew.
 北海道、本州(山形県、宮城県以北)に分布。別名はヒロハハナヒリノキ。山地の日当たりのよい低木林内や岩地に生える。
 落葉低木、高さ0.5~1.5m。葉身は幅が広く、卵円形~広楕円形、長さ4~10㎝×幅2.5~7㎝、下面は白色を帯び、無毛または毛を散生する。花序軸は無毛。花期は6~8月。
1-3 Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. hypoleuca (Nakai) H.Hara  ウラジロハナヒリノキ 裏白嚔の木
  synonym Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. glaucina (Koidz. ex Komatsu) H.Hara
  synonym Leucothoe grayana Maxim. var. hypoleuca Nakai
  synonym Leucothoe grayana Maxim. var. glaucina (Koidz. ex Komatsu) Koidz. ex Nakai
 本州(東北地方~中部地方、近畿地方北部、中国地方)に分布。別名はコシノハナヒリノキ。山地の日当たりのよい低木林内や岩地に生育する。
 ナヒリノキより高地にへ生え、小型。葉は互生し、長さ1.5~6㎝、卵状楕円形~楕円形、先が尖り、基部は円形。葉裏は白色を帯びる。枝先に長い総状花序を伸ばし、つぶれた壺形の淡緑色の花を下向きにつける。花冠の先は5裂し、捲れ上がる。花序軸は無毛。果実は蒴果で、上向きになる。
1-4 Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. parvifolia H.Hara ヒメハナヒリノキ 
  synonym Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. iwanoi Ajima et Satomi
  synonym Leucothoe grayana Maxim. var. parvifolia (H.Hara) Ohwi
  synonym Leucothoe grayana Maxim. f. parvifolia (H.Hara) T.Yamaz., nom. nud.
 本州の日光山地、秩父山地、南アルプス、北アルプスを中心に分布し、新潟県や福島県でもまれに見られる。岩場に生える。
 小型で樹高が低く、葉が小さい。
1-5 Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. pruinosa H.Hara  ウスユキハナヒリノキ 
  synonym Leucothoe grayana Maxim. var. pruinosa (H.Hara) Ohwi
 ハナヒリノキとウラジロハナヒリノキの中間型。葉裏が白色で、花序軸に毛がある。
1-6 Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara var. venosa (Nakai) H.Hara  ハコネハナヒリノキ 
  synonym Leucothoe grayana Maxim. f. venosa (Nakai) T.Yamaz., nom. nud.
  synonym Leucothoe grayana Maxim. var. venosa Nakai
 箱根周辺の山地(神奈川県の箱根山や丹沢山、静岡県の富士山や愛鷹山)に分布する。山地の風衝草原、岩場、礫地に生える。
 高さが低く、約1m。枝は著しく分枝する。葉が小さく、葉に長さ1mmほどの長い縁毛がある。花序は今年枝に頂生し、淡緑色でつぼ形の花を多数つける。葯に芒は無い。

イワナンテン属

  family Ericaceae - genus Leucothoe

 低木。茎は直立または広がり、無毛またはまばらに短い毛があり、無毛になり、枝には銀色の鱗片は無い。葉は葉柄があり、宿存する。葉身は長円形、披針形、倒披針形、または楕円形、革質、縁は全縁または刺のある細鋸歯があり、平坦、表面は粉白でなく、銀色の鱗片がなく、無毛または下面に毛があり、脈は網結脈(reticulodromous:二次脈が繰り返し分枝し、細かい網状になる)。花序は腋生、束生または単生の総状花序(葉はない)、花が8~60個つく(前年の木に生じる)。(小苞は2個、中間または下部につき、部分的に花柄を覆う。花は5数性。萼片が5個、わずかに合着し、披針状卵形~広卵形、短い。花弁は5個、ほぼ全長が合着し、白色、花冠は円筒形~つぼ形、花弁は筒部よりはるかに短く、反り返る。雄しべは8(~10)本、花冠筒部よりもはるかに短く、突き出さない。花糸は真っすぐで、扁平、無毛または有毛。距は無い。葯は長円形、半葯は上部で分離し、それぞれの頂部の孔から裂開し、下部~花糸の接合部に2本の細い芒が有りまたは無いこともある。雌しべは5心皮。子房は上位、無毛、偽10室、各1室に胚珠が多数。(花柱は雄しべよりほとんど長くない)柱頭は5裂、頭状~盾状。果実は蒴果、胞背裂開、扁球形、乾いている。種子は約60~120個、楕円形、長円形、または角(かど)があり、扁平またはくさび形。種皮は平滑で光沢があり、網目がありまたはパピラがある。x=11。英名はdog hobble。
 世界に6種あり、東アジア、北アメリカに分布する、日本に1種、中国に2種ある。

イワナンテン属の主な種と園芸品種

1 Leucothoe axillaris (Lam.) D.Don セイヨウイワナンテン
 USA東部原産。英名はwamp dog-laurel , coastal dog-hobble。別名はアメリカイワナンテン。
 高さ1~2 m、枝は広がる。葉は葉柄が長さ5~10mm。葉身は長円形、披針形、倒披針形、または楕円形、長さ3~8cm、縁は全縁または刺のある細鋸歯があり、鋭形角~急に短く尖鋭形、下面は無毛またはまばらに毛がある。花序は束生または単生、花序柄はなく、密、花が8~30個つき、長さ2~4(~5)cm。苞は±脱落性、卵形、長さ2~2.5mm。花柄は長さ2.2~2.5mm。花は萼片が帯白色、広卵形で、長さ1.5~2mm、先は鈍形または円形。花冠は円筒形、長さ6~8mm。花糸は開出する毛があり、パピラがある。葯は長さ0.7~1.2mm、2本の芒をもち、半葯は上部が散開する。子房は無毛。蒴果は幅(4.5~)5~6mm。種子は角(かど)がある。 種皮は硬く、パピラがある。2n=22。花期は春初旬~中旬。
品種) 'Aurea' , 'Carinella' , 'Curly Red'PBR , 'E.H. Wilson' , 'Greensprite' , 'Opstal 55'PBR , 'Opstal20'PBR , Red Lips , 'Redsprite' , 'Royal Red' , 'Royal Ruby' , 'Scarletta' , 'Tricolor' (v) , Twisting Red ('Opstal20'PBR)

2 Leucothoe keiskei Miq. イワナンテン 岩南天
 日本固有種(本州の関東以西、主に紀伊半島、中部地方南部、関東地方西部)。別名はイワツバキ。岩場に垂れ下がって生える。
 小型の常緑低木。茎が分枝し、枝が垂れ下がり、枝は長さ30~150cmに達し、少数、分枝し、無毛。葉は互生し、葉柄は長さ8~12㎜。葉身は卵形~卵状披針形、長さ5~9㎝×幅1.5~3㎝、厚い革質、光沢があり、基部は円形、先は尾状尖鋭形、縁には荒い細鋸歯がある。総状花序は前年の枝の葉腋につき、長さ1~9㎝、花が1~7個、垂れ下がってつく。苞及び小苞は広卵形で長さ約1㎜。小苞は2個、花柄の基部につく。花柄は長さ7~12㎜、果時に太くなる。萼は長さ約3mm、5裂する。萼片は先が鈍形、縁に細かい縁毛がある。花冠は白色、円筒形、長さ17~23mm、先は5裂する。花冠裂片は反曲する。雄しべは10本、花糸には毛が密にある。葯は2個の半葯があり、頂部の孔から裂開し、下部に芒がそれぞれ2本ずつつく。花柱は長さ13~18㎜。朔果は扁球形(みかん形)、直径約7mm、5裂する。花期は7~8月。
品種) Burning Love ('Opstal50'PBR) , Halloween ('Opstal16'PBR) , 'Minor' , 'Opstal16'PBR , 'Royal Ruby'

3 Leucothoe fontanesiana (Steud.) Sleumer アメリカイワナンテン 
  synonym Leucothoe catesbaei sensu A.Gray
 USA東部原産。英名はMountain dog-laurel , Mountain dog-hobble , switch-ivy。別名はセイヨウイワナンテン。
 高さ1~2m、枝は広がっています。 葉:葉柄は長さ10~15mm。葉身は長円形、披針形、倒披針形、または楕円形、長さ3~8㎝、縁は全縁または刺のある細鋸歯縁、鋭形から長尖鋭形、下面はまばらに直軟毛がある。花序は束生または単生、花序柄は無く、密、花が20~60個つき、長さ4~10㎝。苞は±宿存性、卵状三角形、長さ1.7~2.2mm。花柄は長さ2~2.5mm。花は萼片が帯白色、披針状卵形、長さ1.7~2mm、先は鋭形またはほぼ鋭形。花冠は円筒形、長さ5~7mm。花糸はパピラがあり、(ときに開出毛もある)。葯は長さ1.2~1.5mm、半葯は先が散開する。子房は無毛。蒴果は幅5~6mm。種子は楕円形または長円形。種皮は硬く、網目がある。2n=22。花期は春中旬。
品種) 'Blule1801'PBR , 'Girard's Rainbow' (v) , 'Howw'PBR , 'Lovita' , 'Makijaz'PBR (v) , 'Nana' , 'Rainbow' (v) , 'Red Pimpernel' , 'Rollissonii' , 'Scarletta' , 'Schnup2'PBR , Simsalabim ('Schnup2'PBR) , 'Trivar' , 'Twisting Red' , Whitewater ('Howw'PBR) (v)

4 Agarista populifolia (Lam.) Judd ⇒アガリスタ属
  synonym Lyonia acuminata (Aiton) K.Koch
  synonym Leucothoe acuminata (Aiton) G.Don
  synonym Leucothoe walteri (Willd.) N.C.Melvin
 USA東部原産。英名はAmerican pipe-stem wood。American pipe-stem wood。
品種) 'Hokus Pokus' (v) , 'Nana' , 'Red Pimpernel'

5 その他ハイブリッド
品種) Carinella ('Zebekot') , 'Lipsbolwi'PBR , 'Little Flames'PBR , Lovita ('Zebonard') , 'Red Curl' , Red Lips ('Lipsbolwi'PBR) , Scarletta ('Zeblid')[AGM] , 'Zebonard'

参考

1) レッドデータブック愛知
 ハナヒリノキ Eubotryoides grayana (Maxim.) H.Hara
http://kankyojoho.pref.aichi.jp/rdb/pdf/plants/species/ikansoku/%E3%83%8F%E3%83%8A%E3%83%92%E3%83%AA%E3%83%8E%E3%82%AD.pdf
2) Plants of the World Online
 Eubotryoides
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:14741-1
3) 植物研究雑誌 17(9): 556–556(1941)
 はなひりのきノ中毒事件 (松田孫治)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_017_556_556_1.pdf
4) 神奈川県植物誌
 ハコネハナヒリノキ
5) Flora of China
 Leucothoe
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=118461
6) Flora of North America
 Leucothoe
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=118461