ナベワリ 鍋割(鍋破)

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Flora of Mikawa

ビャクブ科 Stemonaceae ナベワリ属

学 名 Croomia heterosepala (Baker) Okuyama
ナベワリ花
ナベワリ花被片
ナベワリ雄しべ
ナベワリ花被片の裏
ナベワリ蕾
ナベワリ果実
ナベワリ茎
ナベワリ
ナベワリ花柄
ナベワリの葉表
ナベワリの葉裏
ナベワリの葉裏拡大
花 期 4~5月
高 さ 30~60㎝
生活型 多年草
生育場所 山地の林内
分 布 在来種(日本固有種) 本州(関東以西)、四国、九州
撮 影 鳳来町  04.4.10
和名は「舐め割り」が転じたもので、有毒で舐めると舌が割れるほど痛くなることに由来するといわれている。
 根茎は地中を横に這い、節がある。茎は無毛、直立し、紫色を帯びる。葉は茎の上部に4~5個が互生し、長さ6~15㎝の卵状惰円形、先は尖り、基部は浅い心形。葉脈が非常に深く、縦に5~9脈あり、縁が普通、細かく波打つ。葉腋に淡緑色の花を単生し、垂れ下がった細長い花柄の先に下向きに咲く。花柄は長さ3~5㎝。花被片は広卵形、4個が平開してつき、3個は長さ5~7㎜、下側の外花被片1個だけが大きく、長さ8~10㎜、表面に微細な乳頭状突起がある。雄しべは4個、花糸は短く、葯が黄赤色で目立つ。果実は卵円形、先が嘴状に尖る。種子は長さ約4㎜の惰円形。
 ナベワリ属には6種あり、うち5種が日本に自生する。
 ヒメナベワリ Croomia japonica は日本、中国に分布する。葉は4~5個つき、長さ5~11㎝、7~9脈がある。花が小さく、花被片は反曲し、長さ1.5~3.5(6)㎜、幅2.5~3㎜の卵形~卵状惰円形、4個はほぼ同形同大又は内花被片が外花被片より長い。花糸が長く、紫色を帯びることがある。
 コバナナベワリCroomia saitoana は宮崎県に分布し、ヒメナベワリより茎が太く、紫色を帯びる。葉は普通7~11個つき、3~5脈がある。苞は無い。ヒメナベワリより花が小さく、紫褐色を帯び、花糸が太くて短い。
 ヒュウガナベワリ Croomia hyugaensis は宮崎県に分布し、茎が緑色で、細く。葉は4~6個つき、ほぼ全縁、やや肉質、5~7脈がある。線形~さじ形の明瞭な苞がある。花がコバナナベワリよりやや大きく、花糸が長い。
 シコクナベワリCroomia kinoshitae は四国に分布し、花被片がほぼ同形同大、先端が微突端、平開する。花糸が細長くてわずかに湾曲し、黄緑色。葉縁に不規則な細かい鋸歯がある。
 北アメリカに分布するCroomia pauciflora は葉縁がでこぼこ。花被片が早落性、4個がほぼ同形同大、幅が狭く、しばしば紫色を帯びる。小花柄は長さ8~11㎜。

ナベワリ属

  family Stemonaceae - genus Croomia

 多年草。根茎が這い、節から発根する。根はわずかに肉質。茎は普通直立し、単一。下部の葉は鱗片状で、上部の葉は少数~数個、互生し、膜質。 総状花序は広がり、花が1~4個つき、花序柄は腋生、細い。小苞は小さく、鱗片状。花は小さい。雄しべは花被片の基部につく。花糸は太い。葯は背着、アーチ形になる。葯隔は付属体がない。子房は上位、卵形、扁平。胚珠は少数、胎座に先がつき、垂れ下がる。柱頭は頭状。蒴果は卵形、バルブがある。種子はほぼ球形、縦に肋があり、珠柄(funicle)に毛がある。
 世界に6種あり、日本、中国、北アメリカに分布し、日本に5種ある。

ナベワリ属の主な種と園芸品種

1 Croomia heterosepala (Baker) Okuyama  ナベワリ 鍋割(鍋破)
 日本固有種。本州(関東以西)、四国、九州に分布する。山地の林内に生える。  多年草。高さ30~60㎝。根茎は地中を横に這い、節がある。茎は無毛、直立し、紫色を帯びる。葉は茎の上部に4~5個が互生し、長さ6~15㎝の卵状惰円形、先は尖り、基部は浅い心形。葉脈が非常に深く、縦に5~9脈あり、縁が普通、細かく波打つ。葉腋に淡緑色の花を単生し、垂れ下がった細長い花柄の先に下向きに咲く。花柄は長さ3~5㎝。花被片は広卵形、4個が平開してつき、3個は長さ5~7㎜、下側の外花被片1個だけが大きく、長さ8~10㎜、表面に微細な乳頭状突起がある。雄しべは4個、花糸は短く、葯が黄赤色で目立つ。果実は卵円形、先が嘴状に尖る。種子は長さ約4㎜の惰円形。花期は4~5月。
2 Croomia hyugaensis Kadota et Mas.Saito  ヒュウガナベワリ 日向鍋割
 日本固有種。宮崎県に分布する。
 多年草、高さ30~45㎝。根茎は地下にあり、水平、長さ10㎝まで、ネックレス形、節間は長さ約5㎜、根は糸状、肉質(carnose)、直径2~2.5㎜、束生する。茎はほぼ直立し、無毛、単純、上下する。根生葉は黄白色、長さ約1cm、卵状長円形、膜質、鱗片状。下部の茎葉は、薄黄緑色、膜質、鱗片状、鞘状。上部の茎葉は4~6個、茎の上部につき、互生する。葉身はやや肉質で、上面は薄緑色、下面は粉白を帯び、光沢があり、卵状長円形、長さ9~13㎝×幅4~8㎝、5~7脈があり、先は鋭形、基部は切形~浅い心形。葉柄は長さ0.5~2㎝、無毛、茎を抱かず、耳は無く、沿下する。花期は4~5月。花は直径7~10㎜、腋生、単生、苞がある。花序柄は長さ3~5.5㎝、無毛、関節があり、基部が太くなる。苞は明瞭、長さ1~5㎜、線形~へら形。花被片は4個、十字形、はば等長、上半分が黄緑色、下半分が褐紫色、三角状卵形、長さ約5㎜×幅2~3㎜、多少、後屈し、縁は強く反り返り、パピラがあり、結実期に宿存する。雄しべは4本、花糸は暗褐紫色、円筒形、長さ3~4㎜×直径1~1.5㎜、パピラがある。葯は広長円形、底着。花柱は小さい。固定されています。

3 Croomia japonica Miq. ヒメナベワリ 姫鍋割
  synonym Croomia kiusiana Makino
 日本、中国原産。中国名は黄精叶钩吻 huang jing ye gou wen。
 根は太さ約2㎜。茎は高さ14~45㎝、肋がある。下部の葉は4~5個、鞘になる。上部の葉は3~5個つき、葉柄は紫色、長さ0.5~1.5㎝。葉身は卵形~卵状長円形、長さ5~11㎝×幅3.5~8㎝、脈は7~9本、基部はわずかに心形で沿下し、縁はわずかに粗く、先は短い鋭形。 総状花序は花が1~4個つく。花柄は長さ0.8~4㎝、中間の上に関節がある。苞は長さ約3㎜、1脈がある。花被片は十字形に配置され、広卵形~卵状長円形、ほぼ等長または内側の花被片は外側より長く、長さ1.5~3.5(~6)㎜×幅2.5~3mm、宿存し、縁は反り返り、パピラがある。花糸は微細なパピラがある。葯は楕円形、アーチ状。蒴果は卵形、長さ1.6~1㎝×幅0.8~1.2㎝、2バルブがある。

4 Croomia kinoshitae Kadota  シコクナベワリ 四国鍋割
 四国の固有種。
 多年草、高さ40~58cm。根茎はほぼ地下にあり、水平、長さ5㎝まで、ネックレス形、節間は長さ3~5(~18)㎜、根は糸状、肉質、直径2~2.5㎜、束生する。茎は下半分が直立し、上半分は下降し、単純、茎の下2/3が紫色を帯び、無毛、浅く波打つ(fulcate)。根生葉は黄白色、長さ約1cm、卵状長円形、膜質、鱗片状。下部の茎葉は淡黄白色で半透明、膜質、鱗片状、鞘状になる。上部の茎葉は4~個、茎の上部につき、互生し、葉身は膜質であるが縁がわずかに厚く、上面は薄緑色、下面は粉白を帯び、光沢があり、卵状長円形~狭卵形、長さ7~14cm×幅2.5~7.5cm、5~7脈があり、先は尖鋭形、基部は切形~浅い心形、ときにくさび形、縁には小鋸歯がある。葉柄は長さ1.5~2.5㎝、無毛、茎を抱き、わずかに耳があり、短く沿下する。花は直径8~16㎜、腋生、緩い集散花序に花が2~3個、またはときに花が単生し、苞がある。花序柄は長さ3~5㎝、無毛、関節があり、基部が厚くなる。苞は小さく、膜質、長さ1~2㎜、披針形。花被片は4個、十字形、形と大きさがほぼ等しく、黄緑色、広卵形、長さ5~8㎜×幅3~5㎜、先が尖頭形、開出し、パピラがあり、結実期間中宿存する。雄しべは4本、花糸は黄緑色、円筒形、長さ1㎜、直径約1㎜、わずかに内向きに曲がり、パピラがある。葯は長円形、長さ1.5㎜、底着。花柱は小さい。蒴果は扁球形、直径約1.2cm、嘴は長さ約5㎜。花期は5~7月。

5 Croomia pauciflora (Nuttall) Torrey
 USA(フロリダ州、アラバマ州、ジョージア州、ルイジアナ州)原産。
 多年草、高さ28㎝以下。根茎は広範囲に広がり、節間は8~10㎝。根生葉は1~2個、根茎および空中茎の下部5cmから出て、条線がある(平行脈から)。茎葉は 対生する。葉柄は溝があり(channeled)、長さ3~4.5㎝。葉身は卵形、長さ7~8 cm、基部は心形、縁はザラつき、先は尖頭状鈍形。花は花被が幅約1cm、花被片は早落性、帯緑色、しばしば紫色を帯び、舌形~卵形。花糸は太い。子房は約。長さ1㎜×幅1.5㎜。花柄は長さ8~11㎜、関節は基部から約2/3の位置にある。蒴果は球形、直径1㎝以下。花期は春。
品種) 'Portersville'(Small-Flowered Croomia)

6 Croomia saitoana Kadota  コバナナベワリ 小花鍋割
 日本固有種。九州(宮崎県)に分布する。山地の林内に生える。
 多年草、高さ45~60cmの草本。地下茎地下茎、水平、長さ10㎝まで、ネックレス形、節間は長さ2~3㎜、根は糸状、肉質、直径約2㎜、束生する。茎は直立し、無毛、単純、浅く波打つ(fulcate)。根生葉は黄白色、長さ約1cm、卵状長円形、膜質、鱗片状。下部の茎葉は薄黄緑色、膜質、鱗片状、鞘状になる。上部の茎葉は6~9個、茎の上部に位置し、互生する。葉身は膜質であるが縁が厚くなり、上面は薄緑色、下面は粉白を帯び、光沢があり、卵状長円形、長さ5.5~16㎝×幅2.5~8㎝、5~9脈があり、先は鋭形、基部は切形~浅い心形。葉柄は長さ1.5~3㎝、無毛、茎を抱き、わずかに耳があり、沿下する。花は直径4~5㎜、腋生、単生、またはまれに緩い集散花序に2個つき、苞がある。花序柄は長さ3~5㎝、無毛、関節があり、基部が太くなる。苞は小さく、長さ0.5~1㎜、披針形。花被片は4個、十字形、ほぼ等しく、上半分は暗褐紫色または黄緑色、下半分は褐紫色、三角状卵形、約・長さ3㎜×幅2㎜、多少、後屈し、縁は強く反り返り、パピラがあり、結実期の間宿存する。雄しべは4本。花糸は暗褐紫色、円筒形、長さ1~1.5㎜×直径1㎜、パピラがある。葯は広長円形、底着。花柱は小さい。花期は4~5月。

参考

1) Flora of China
 Croomia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=108414
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Croomia
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:34087-1
3) World Flora Online
 Croomia
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000009755
4) Flora of North America
 Croomia
http://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=23256
5) 植物研究雑誌 第85巻 第5号 277-288 2010
 門田裕一,斉藤政美:宮崎県産ナベワリ属(ビャクブ科)の 2 新種
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_085_277_288.pdf
6) 植物研究雑誌 87(2), 79-84, 2012-04
 四国産ナベワリ属(ビャクブ科)の1新種,シコクナベワリ
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_085_277_288.pdf