ミズトンボ 水蜻蛉

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Flora of Mikawa

ラン科  Orchidaceae ミズトンボ属

別 名 アオサギソウ
学 名 Habenaria sagittifera Reichb.f.
ミズトンボの花
ミズトンボの花
ミズトンボの花
ミズトンボ
ミズトンボ
花 期 7~9月
高 さ 40~70㎝
生活型 多年草
生育場所 丘陵地~山地の湿地
分 布 在来種(日本固有種) 北海道(南部)、本州、四国、九州
撮 影 海上の森   06.9.3
愛知県の絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。全国でも絶滅危惧Ⅱ類。三河地方では数箇所で確認されている。
 茎には3稜がある。葉は上部のものは鱗片状で、下部のものは線形で基部は茎を抱く。花は多数につき、対生し、長さ1~5㎝の卵形、鋸歯縁。花は直径約1㎝の淡緑色、多数つく。唇弁が十字形となるのが特徴である。距は垂れ下がり、先端が球状になる。
 オオミズトンボ Habenaria linearifolia は日本、朝鮮、中国、ロシアに分布し、花は白色。唇弁は十字形。中国名は线叶十字兰(xian ye shi zi lan) 。
 Habenaria schindleri =Habenaria sagittifera form. lacerata は朝鮮、中国に分布する。花が白色。唇弁は十字形、側裂片の先が繊維状に裂ける。中国名は十字兰(shi zi lan)。

ミズトンボ属

  family Orchidaceae - genus Habenaria

 地上生の草本。塊茎はほぼ球形、楕円形、または長円形、肉質、分裂せず、首に数本の細い根を持つ。茎は直立し、基部にしばしば筒状の鞘を持ち、上部の鞘には葉があり、ときに、上部に数個の苞状の葉がある。葉は1~数枚、緩く配置されるか、または房状になり、基部が狭まり抱茎の鞘になる。花序は総状花序、頂生、花が少数~多数つく。花は逆さまになる(resupinate)。萼片は離生。背萼片は花弁と輻合し、フードを形成する。側萼片は広がり、後屈する。花弁は単純または2裂する。唇弁はしばしば3裂し、基部にしばしば距があり、ときに袋状または距が無い。ずい柱は短く、両側にしばしば耳(仮雄しべ)がある。葯は直立し、明瞭な葯隔と2個の散開する葯室があり、それぞれの基部はしばしば突き出し、溝がある。花粉塊は2個、顆粒状粉状(granular-farinaceous)、細く裂け(sectile)、普通、それぞれが、長い花粉塊柄(caudicle)により、粘着体(viscidium)に付着する。粘着体は裸出し、比較的小さい。柱頭は2個、分離し、凸面状または長く、±こん棒形、ずい柱の基部にある。嘴状体(rostellum)は普通、丈夫で大きく、葯の基部の溝に平行な腕があり、±花粉塊柄を抱く。英名はbog orchid。
 世界に約600種あり、世界中に分布し、主に熱帯および亜熱帯地域に分布する。

ミズトンボ属の主な種と園芸品種

1 Habenaria ciliolaris Kraenzl. ネバリサギソウ 
 中国、台湾、ベトナム原産。中国名は毛葶玉凤花 mao ting yu feng hua。

2 Habenaria crassilabia Kraenzl. ニイジマトンボ 新島蜻蛉
  synonym Habenaria shweliensis auct. non W.W.Sm. et Banerji
  synonym Pecteilis crassilabia (Kraenzl.) M.A.Clem. & D.L.Jones   synonym Habenaria chejuensis Y.N.Lee et K.S.Lee
 日本(伊豆諸島新島)、韓国、中国原産。常緑と落葉広葉樹の混交林の明るい林下などに生える。
 地上生、完全に無毛、高さ13~28㎝。 偽塊茎(tuberoids)は楕円状円筒形、長さ12㎜、直径6~8㎜。根は少なく、円筒形で、長さ8㎜以下。茎は直立し、円柱形、基部に3~5枚の葉がつく。基部の鞘は3個、筒状、抱茎、膜質、最上部の鞘は葉身がつき、長さ12㎜。葉は3~5枚つき、長円状楕円形または倒披針形、先は鋭形~尖鋭形、やや革質、光沢があり(lucid)、基部は狭まり鞘になり、緑色、長さ51~84㎜×幅12~18㎜。花序は頂生、直立し、円柱形、6うねがあり、総状花序、やや緩く、花が8~15個つき、長さ10~25㎝。花序軸は花序柄より短い。鱗片は5個以下、散在し、披針形、先は鋭形、膜質、長さ11~25㎜。花の苞は、小花柄のつく子房の長さより長いかまたはほぼ同長、披針形、先は鋭形、膜質、長さ7~13㎜。花は淡黄緑色。小花柄のつき子房は狭卵形、6うねがあり、捻じれ、首が狭く、長さ7~10㎜×直径1.3㎜。背萼片は卵形、凹面状、外面に主脈があり(costate)、花弁とともにフードを形成し、先は鈍形、長さ3㎜。側萼片は斜めの卵形、凹面状、前に突き出し(porrect)、鈍形、長さ3.2㎜。花弁は斜めの長円形、波打ち、厚く、切形、長さ3㎜。唇弁は厚く、基部から3裂する。側裂片は長円状倒披針形、前に突き出し、側萼片に平行、鈍形、長さ3㎜。中裂片は披針形、上向きに曲がり、先は花弁に付着し、先は鈍形、長さ3.2㎜。距はこん棒形、垂れ下がり、前方に曲がり、小花柄つく子房より短く、長さ4.5mm。ずい柱は長さ1.5㎜、側部に耳があり、目立ち、しわがある。葯隔は狭い。柱頭はこん棒形。花粉塊は長さ2㎜。花期は8月下旬~10月上旬。

3 Habenaria cruciformis Ohwi イヌミズトンボ 
 朝鮮原産。

4 Habenaria dentata (Sw.) Schltr. ダイサギソウ 大鷺草
  synonym Habenaria miersiana Champ.
  synonym Habenaria dentata (Sw.) Schltr. var. tohoensis (Hayata) S.S.Ying
 日本(本州の関東以南の太平洋側、四国、九州)、中国、台湾、カンボジア、インド、ラオス、ミャンマー、ネパール、タイ、ベトナム原産。中国名は鹅毛玉凤花 e mao yu feng hua。別名はシマサギソウ、トウホサギソウ。斜面や谷沿いの林内に生える。
 高さ35~87cm。塊茎は長円状卵形~長円形、長さ2~5㎝×幅1~3㎝、肉質。茎は直立し、円柱形、丈夫で、疎に3~5枚の葉と数個の小葉のような苞をつける。葉身は長円形~狭楕円形、長さ5~15㎝×幅1.5~4㎝、基部は茎を抱き、乾くと縁が白色になり、先は鋭形または尖鋭形。総状花序はしばしば多数の花をつけ、長さ5~12㎝。花の苞は披針形、長さ2~3cm、基部の苞は子房の長さとほぼ同長、先は尖鋭形。子房は捻じれ、円柱形、小花柄を含んで長さ2~3㎝。花は白色。萼片と花弁は縁毛がある。背萼片は花弁とともにフードを形成し、直立し、広卵形、凹面状、長さ10~13㎜×幅7~8㎜、5脈があり、先は鋭形。側萼片は広がりまたは後屈し、斜めの卵形、長さ14~16㎜、5脈があり、先は鋭形。花弁はかま形状披針形、長さ8~9㎜×幅2~2.5㎜、2脈があり、分裂しない。唇弁は広卵形、長さ15~18㎜×幅12~16㎜、3裂する。側裂片はほぼ菱形または扇形、幅7~8㎜、先の縁は鋸歯状。中裂片は線状披針形または舌状披針形、長さ5~7㎜×幅1.5~3㎜、3脈があり、先は鈍形。距は垂れ下がり、中間より下は緑色、円筒状こん棒形、長さ3.5~4㎝、子房より長く、下半部にやや膝状に曲がり、わずかに曲がり、端が徐々に広がり、先は鈍形、口の周りに目立つ隆起がある。柱頭は長円形。花期は8~10月。2n=64。

5 Habenaria iyoensis (Ohwi) Ohwi イヨトンボ 伊予蜻蛉
  synonym Habenaria taiwaniana T.P.Lin
 日本(本州の関東地方以西、四国、九州)、台湾原産。中国名は岩坡玉凤花 yan po yu feng hua。湿り気のある岩の多い土手、法面、疎林などに生える。
 高さ15~40cm。塊茎は長円形、長さ2~4㎝×幅1~1.5㎝、肉質。茎は直立し、円柱形、基部に5~7枚の房状の葉があり、上部に2つの苞状の葉がある。葉身は狭楕円形または広倒披針形、長さ8~10㎝×幅1.8~2㎝、基部は狭まり抱茎の鞘になり、先は鋭形。総状花序は密に多数の花がつき、長さ8~10㎝。花の苞は卵状披針形、長さ8~12㎜×幅約3㎜、基部の苞は子房の長さとほぼ同長。子房は捻じれ、円筒状紡錘形、小花柄を含めて長さ8~12㎜。花は帯緑色。背萼片は花弁とともにフードを形成し、直立し、広卵形、凹面状、長さ5~6㎜×幅3.8~4㎜、3脈があり、先は鈍形。側萼片は後屈し、斜めの卵形、長さ5~6㎜×幅2.2~3㎜、3脈があり、先は鋭形。花弁は狭かま状披針形、長さ5~6㎜×幅約2㎜、1脈があり、先は鈍形。唇弁は距があり、基部の上で3深裂する。側裂片は広がり、中裂片に対してほぼ直角になり、糸状、長さ7~15㎜。中裂片は線形、長さ7~9㎜、先は鈍形、垂れ下がり、わずかに曲がり、円筒形、長さ11~20㎜、子房より長く、先は鈍形。葯隔は幅がかなり広い。柱頭は長円形。花期は9~10月。2n=42。

6 Habenaria linearifolia Maxim. オオミズトンボ 大水蜻蛉
  synonym Habenaria sagittifera Rchb.f. var. linearifolia (Maxim.) Takeda
 日本(北海道、本州の関東地方以北)、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は线叶十字兰 xian ye shi zi lan。別名はサワトンボ。谷沿いの林内または草地に生える。
 高さ25~80㎝。塊茎は卵形または球形、肉質。茎は直立し、円柱形、中間の下に5~7枚の葉がつく。葉身は線形、長さ9~20㎝×幅3~7㎝、基部は抱茎の鞘になり、先は尖鋭形。総状花序は花が8~20個つき、長さ5~16㎝。花序軸は無毛。花の苞は披針形~卵状披針形、基部の苞は長さ約1.5㎝、子房より短く、先は長い尖鋭形。子房は捻じれ、わずかにアーチ状になり、円筒形、小花柄を含めて長さ1.8~2㎝、無毛。花は白色または緑白色、無毛。背萼片は花弁とともにフードを形成し、直立し、卵形または広卵形、凹面状、長さ5.5~6㎜×幅3.5~4㎜、5脈がある。側萼片は後屈し、斜めの卵形、長さ6~7㎜×幅4~5㎜、4~5脈があり、先はほぼ鋭形。花弁は2裂する。上側の裂片は長さ5~5.5㎜×幅3.5~4㎜。下側の裂片は短い歯であり、先は浅く2裂する。唇弁は広がり、長さ約15 mm、中間近くで3深裂し、±十字形、裂片は線形、長さ8~9㎜×幅0.5~0.6㎜。側裂片は中裂片に対して鋭角で広がり、先は房状へりになる。中列片は全縁。距は垂れ下がり、長さ2.5~3.5㎝、子房より長く、端に向かってわずかに厚くなり、先は鈍形。柱頭は長円形。花期は7~9月。2n=28。
6-1 Habenaria linearifolia Maxim. f. integriloba Ohwi チョウセンミズトンボ 

7 Habenaria lucida Wall. ex Lindl.   
  synonym Habenaria longiracema Fukuy.
  synonym Habenaria dilatata (Pursh) Hook. subsp. lucida (Wall. ex Lindl.) S.S.Ying
 中国、台湾、インド、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。中国名は细花玉凤花 xi hua yu feng hua。

8 Habenaria pantlingiana Kraenzl. ナメラサギソウ 滑鷺草
  synonym Habenaria longitentaculata Hayata
  synonym Habenaria cirrhifera Ohwi
 日本(琉球諸島)、中国、台湾、インド(シッキム)、ネパール、ベトナム原産。中国名は丝瓣玉凤花 si ban yu feng hua。別名はリュウキュウサギソウ。広葉樹林に生える。
 高さ40~70㎝。塊茎は長円形、長さ3~5㎝×幅1~2.5㎝、肉質。茎は直立し、円柱形、丈夫で、中間近くに6~7枚の葉があり、上部に2~7枚の苞状の葉がある。葉身は長円状披針形または倒卵状披針形、長さ13~15㎝×幅3.5~4.5㎝、基部は狭まり抱茎の鞘になり、先は鋭形または尖鋭形。総状花序は密に多数の花がつき、長さ8~20cm。花の苞は披針形、長さ18~24㎜×幅2.5~4㎜、子房の長さと同じかまたはそれより長く、先は長い尖鋭形。子房は捻じれ、円筒形、小花柄を含めて長さ1.8~2.2cm、無毛。花は緑色。背萼片は直立し、卵状披針形、凹面状、長さ1.2~1.5㎝×幅0.4~0.6㎝、3脈があり、先は長い尾状尖鋭形。側萼片は後屈し、わずかに斜めで、卵状披針形、長さ1.4~1.5㎝×幅0.4~0.6㎝、3脈があり、先は長い尾状尖鋭形。花弁は基部から2深裂する。裂片は二またに分かれて開き(divaricate)、糸状。上側の裂片は長さ1.1~1.4cm。下側の裂片は長さ1.8~2㎝。唇弁は基部から深く3裂する。裂片は糸状、長さ1.8~2.5cm×幅約0.8㎜、とき、中裂片は側裂片よりも短い。距は垂れ下がり、円筒形、長さ1.8~2.3㎝、子房の長さと同じかそれより長く、端に向かってわずかに厚くなる。花粉塊は長円形。粘着体(viscidium)は円形、小さい。柱頭はこん棒形。花期は8~10月。2n= 42, 42+2B。

9 Habenaria petelotii Gagnep. ハゴロモサギソウ 
  synonym Habenaria hosokawae Fukuy.
 中国、ベトナム原産。中国名は裂瓣玉凤花 lie ban yu feng hua。

10 Habenaria polytricha Rolfe イトヒキサギソウ 糸引鷺草
 日本(琉球諸島)、中国、台湾、フィリピン原産。中国名は丝裂玉凤花 si lie yu feng hua。林内に生える。
 高さ40~80㎝。塊茎は長円形、長さ3~5㎝×幅1~2.5㎝、肉質。茎は直立し、円柱形、丈夫で、中間付近に7または8(~10)枚の葉があり、葉の上部に3枚~多数の苞のような小葉があります。葉身は狭楕円形~長円状楕円形、長さ4~20㎝×幅2~6㎝、基部は狭まり抱茎の鞘になり、先は尖鋭形。総状花序は花が6~15(~40)個つき、長さ15~30㎝。花の苞は披針形、長さ10~12㎜、先は長い尖鋭形。子房は捻じれ、円柱形、小花柄を含めて長さ14~15㎜、無毛。花は緑白色。萼片は緑色。背萼片は楕円状披針形、凹面状、長さ8~9㎜×幅3~4㎜、3脈があり、先は芒状。側萼片は後屈し、斜めの卵形、長さ9~12㎜×5~6㎜、3脈があり、先は芒状。花弁は淡緑色または白色、深く2裂する。上側の裂片はもう一度2裂し、下側の裂片はもう一度3~5裂し、小裂片はすべて糸状、長さ14~17㎜。唇弁は淡緑色または白色、基部の上で3裂し、各裂片はもう一度20個以上の小葉に分裂し、小裂片は糸状、長さ14~18㎜。距は垂れ下がり、白色、円筒状こん棒形、長さ12~14㎜、子房よりも短く、端に向かってわずかに広がり、先は鈍形。柱頭は長円形。花期は8~10月。

11 Habenaria radiata (Thunb.) Spreng. サギソウ 鷺草
  synonym Pecteilis radiata (Thunberg) Rafinesque サギソウ属
  synonym Orchis radiata Thunberg
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国、ロシア原産。狭叶白蝶兰 xia ye bai die lan。英名はwhite egret flower , fringed orchid , sagisō。
多年草、細く、高さ18~37㎝。塊茎は楕円形~ほぼ球形、長さ0.8~2×幅0.5~1㎝。茎は細く、基部に1~2個の筒状の鞘があり、茎葉が3~5個、間隔を空けてつき、上部に1~3個の不稔の苞がある。葉は線形~狭披針形、長さ4~10㎝×幅0.3~0.8㎝、先は尖鋭形。不稔の苞は線形、長さ1.5~4㎝×幅0.2~0.5㎝、先は尖鋭形。花序軸は長さ3.5cm、花が1個または2個つく。花の苞は卵状披針形、長さ7~12㎜、子房より短く、先は尖鋭形。花は白色、大きい。小花柄と子房は長さ10~15㎜、わずかにうねがあり、無毛。背萼片はほぼ直立し、淡緑色で、狭卵形、長さ7~10㎜×幅2~3㎜、5~7脈があり、先は鋭形。側萼片は広がり、淡緑色、狭卵形、わずかに斜め、長さ8~10㎜×幅2~4㎜、5~7脈があり、先は鋭形。花弁は直立し、背萼片と輻合し(connivent)、白色、卵形、斜め、長さ10~12㎜×幅3.5~6㎜、外側の縁は歯~浅い房状へりがあり、先はほぼ鋭形。唇弁は不規則な扇形、長さ13~18㎜×幅16~25㎜。側裂片は斜め扇形、長さ8~12㎜×幅6~10㎜、外側の縁は深い房状へりの不規則な切れ込みがある。中裂片は線形、長さ5~10㎜×幅1~2㎜、わずかに肉質、全縁、先はほぼ鈍形。距は垂れ下がり、真っすぐ~わずかに前側に曲がり、長さ25~40㎜×幅約1.5㎜、細く、先でわずかに広がり、先は鈍形。花期は7~8月。2n=32, 48。
12 Habenaria rhodocheila Hance
中国、インド(アッサム)、カンボジア、ミャンマー、ラオス、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム原産。中国名は橙黄玉凤花 cheng huang yu feng hua。
品種) 'NGO-Yellow'

13 Habenaria sagittifera Rchb.f. ミズトンボ 水蜻蛉
 日本固有種。北海道(南部)、本州、四国、九州に分布。別名はアオサギソウ。丘陵地~山地の湿地に生える。
多年草、高さ40~70㎝。茎には3稜がある。葉は上部のものは鱗片状で、下部のものは線形で基部は茎を抱く。花は多数につき、対生し、長さ1~5㎝の卵形、鋸歯縁。花は直径約1㎝の淡緑色、多数つく。唇弁が十字形となるのが特徴である。距は垂れ下がり、先端が球状になる。花期は7~9月。

14 Habenaria stenopetala Lindl. ナガバサギソウ 長葉鷺草
  synonym Habenaria linearipetala Hayata
  synonym Habenaria delessertiana Kraenzl.
  synonym Habenaria amanoana Ohwi
 日本(琉球諸島)、中国、台湾、インド、カシミール、ネパール、フィリピン、タイ、ベトナム原産。中国名は狭瓣玉凤花 xia ban yu feng hua。別名はテツオサギソウ。広葉樹林内または林縁に生える。
 高さ40~89㎝。塊茎は長円形または狭楕円形、長さ2~5㎝×幅1~2㎝、肉質。茎は直立し、円柱形、丈夫で、中間近くに5~8枚の葉があり、上部に多数の苞状の葉がある。葉身は楕円形または長円形~長円状披針形、長さ8~16㎝×幅3~5.5㎝、基部は狭まり抱茎の鞘になり、先は鋭形または尖鋭形。総状花序は密に多数の花をつけ、長さ10~20㎝。花の苞は披針形または卵状披針形、長さ1.5~2.8㎝×0.4~0.6㎝、しばしば花より長く、先は芒状。子房は捻じれ、円筒状紡錘形、小花柄を含めて長さ1.5~2.2cm、無毛。花は緑色または緑白色。背萼片は直立し、卵状楕円形、凹面状、長さ1.4~1.6㎝×幅0.4~0.5㎝、3脈があり、先は長い尖鋭形または尾状で芒状。側萼片は後屈し、斜めの卵形、長さ1.6~1.8㎝×幅0.5~0.6㎝、3脈があり、先は尖鋭形または尾状で芒状。花弁は背萼片よりわずかに短くて狭く、2裂する。上側の裂片は線形、長さ10~13㎜×幅1~1.8㎜、1脈があり、先は尖鋭形。下側の裂片は狭かま形、小さく、長さ約2.5㎜。唇弁は帯褐色、長さ10~15㎜、基部から3深裂する。側裂片は線形または錐形、中裂片より短い。中裂片は線形または舌形、側裂片よりも幅が広く、垂れ下がり、円筒形、長さ15~26㎜、子房の長さと同じかそれより長く、先は鈍形。柱頭は長円状こん棒形。花期は8~10月。2n=40, 42。

15 Habenaria yezoensis H.Hara ヒメミズトンボ 姫水蜻蛉 広義
 日本(北海道、本州の関東地方北部)、千島列島に分布。
15-1 Habenaria yezoensis H.Hara var. yezoensis ヒメミズトンボ 姫水蜻蛉 狭義
  synonym Habenaria linearifolia Maxim. var. brachycentra H.Hara
 日本(北海道、本州の関東地方北部)、千島列島に分布。花が小さく、唇弁が十字形、淡緑色。距が緑白色で、長さが4mm程度と短い。
 根は塊茎、楕円形または長円形。茎は直立し、細く、高さ25~50㎝、葉が6~7枚つく。最も下部の鞘状の葉(vaginiformia)は、膜質、先が鋭い。下部の葉は直立し、広がり、線状披針形、長さ6~11㎝×幅4~6㎜、幅が広く、先が鋭形、基部に長い鞘があり、3脈がある。小さい上部の葉は次第に披針形の苞になる。総状花序は緩く、花が2~8個つき、長さ10㎝以下、無毛。苞は披針形、先は鋭形、基部が広く、子房より短い。花はこの属の種の中では小さい。背萼片は直立し、白色、無毛、広卵形、長さ4mm×幅4㎜、幅が広く、先はわずかに鈍形、わずかに後屈し、3脈がある。側萼片は開出し、帯緑色、かま状卵形、長さ5㎜×幅4㎜、3脈があり、中央が明瞭に緑色になる。側花弁は直立し、白色、無毛、楕円形、長さ4㎜×幅2㎜以下、先はかなり鈍形。唇弁は垂れ下がる多肉質の淡緑色の長さ約1㎝の十字形、中裂片は約・長さ6㎜×幅1㎜、側裂片はかま状線形、先は後屈~開出、ほぼ不均一の微細な鋸歯がある。中裂片はほぼ鋭形。距(calcar)は基部が帯緑色、先が白色、湾曲して厚くなり、長さ約4mm、子房の長さよりはるかに短い(オゼノサワトンボは距が約15㎜)。ずい柱は高さ約2mm。葯は直立し、葯隔は正方形、幅約2mm。粘着体(glandula) は2個、楕円形、葯の合着した基部につく。柱頭の裂片は2個、突き出す。唇弁の基部に2個の肉質の付属体があり、突き出し、長さ約2㎜、柱頭の裂片より長く、先は付着し、基部は離れ、それらの間に微細な歯がある。子房は円筒状紡錘形、普通、長さ1.5㎝、無毛。花期は7~8月。(参考5:1935年の原記載ラテン語、訳の不明部分がある。)
15-2 Habenaria yezoensis H.Hara var. longicalcarata Miyabe et Tatew. オゼノサワトンボ 尾瀬の沢蜻蛉
  synonym Habenaria linearifolia Maxim. var. longicalcarata (Miyabe et Tatew.) K.Inoue
  synonym Habenaria linearifolia Maxim. [Kewscience]
 日本(北海道、本州の関東地方北部)、千島列島に分布。
 ヒメミズトンボで距が長さ15mm程度で長いもの。北海道、国後島、尾瀬において自生が知られている。

16 ハイブリッド
品種) Habenaria Jiaho Yellow Bird gx 'Victoria Village'
 Habenaria rhodocheila(orange) × Habenaria medusa(マレーシア産)

参考

1) Flora of China
 Habenaria
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=114408
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Habenaria
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:325751-2
3) World Flora Online
 Habenaria
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000016635;jsessionid=642931CE4F2993AF510A13471BC18174
4) World Checklist of Vascular Plants
 Habenaria
https://wcvp.science.kew.org/
5) 植物研究雑誌 11巻7号 509-514(1935)
 45) Habenaria yezoensis H.ARA, s13. nov.
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_011_509_514.pdf
6) Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. B, 37(2), pp. 95–99, May 22, 2011
 日本新産のラン科植物種ニイジマトンボ
https://www.kahaku.go.jp/research/publication/botany/download/37_2/BNMNS_B370206.pdf
7) Sapporo Nat. Hist. Soc. 15: 49 (1937) 札幌博物学会会報 第15巻 第2号 p49
 173. Habenaria yezoensis var. longicalcarata
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/64220/1/TSNHS15_02.pdf